説明

電源装置における温度センサの組付構造

【課題】温度センサをバッテリセルに安定して確実に組み付けることができると共に、周囲温度の影響を受けにくく、精度よくバッテリの温度を測定することのできる温度センサの組付構造を提供する。
【解決手段】複数のバッテリセル1を集合させたバッテリ集合体2と、バッテリ集合体に装着されることでバッテリセル1を直列接続するモジュール部品20と、バッテリセルの温度を測定する温度センサ10と、を具備し、バッテリセルに測温穴3を設け、温度センサに、測温穴に挿入される棒状の測温部11を設けると共に弾性アーム13を設け、測温穴に温度センサの測温部を挿入した状態で、モジュール部品をバッテリ集合体に装着することにより、モジュール部品の押え壁23によって弾性アームをバッテリセル側に押圧して、温度センサを固定した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のバッテリセルを集合させたバッテリ集合体と、バッテリセルを直列接続するモジュール部品と、バッテリセルの温度を測定する温度センサと、を備えた電源装置における温度センサの組付構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、ハイブリッド自動車や電気自動車などに搭載されるバッテリ(電源装置)は、複数のバッテリセルを集合させたバッテリ集合体の形態で搭載されている。これらの複数のバッテリセルは、バッテリの出力電圧を高めるために、モジュール部品に設けられたバスバーで電気的に直列に接続されている。また、この種のバッテリ集合体やモジュール部品よりなる電源装置には、バッテリセルの過充電や過放電を防止するためにバッテリセルの温度を測定する温度センサが組み付けられている。
【0003】
図5および図6は特許文献1に記載された従来の温度センサの取付構造を示す図である。
【0004】
図5において、バッテリ集合体100は、一列に配列された複数のバッテリセル101と、これら複数のバッテリセル101を保持するケース105およびバンド106とから構成されており、各バッテリセル101の上面に、プラスとマイナスの端子102a、102bが設けられている。モジュール部品110は、プレート状の絶縁材料製のモジュール本体111と、複数のバスバー112〜114とからなり、モジュール部品110をバッテリ集合体100に装着することで、バスバー112〜114によって複数のバッテリセル101を電気的に直列に接続できるようになっている。
【0005】
温度センサ120は、モジュール本体111に形成されたセンサ取付孔115に装着されており、図6に示すように、モジュール部品110をバッテリ集合体100に装着したときに、バッテリセル101の上面101aに接触する測温部121と、測温部121の上側に設けられた弾性アーム122とを有している。センサ取付孔115の内周には、弾性アーム122をバッテリセル101側に押圧し、それにより、測温部121をバッテリセル101の上面101aに密着させる押え壁116が設けられている。
【0006】
この温度センサの組付構造では、予めモジュール部品110に温度センサ120を組み付け、その後でモジュール部品110をバッテリ集合体100に装着することにより、温度センサ120をバッテリセル101に組み付けることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−176601号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、特許文献1に記載された従来の温度センサの組付構造では、モジュール部品110と温度センサ120のガタツキにより、温度センサ120をバッテリセル101上の適正な位置に組み付けることが難しいという問題があった。また、従来の温度センサ120は、バッテリセル101の表面の温度を測定するようになっていたため、周囲温度の影響を受けやすく、測定誤差が大きいという問題があった。
【0009】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、温度センサをバッテリセルに安定して確実に組み付けることができると共に、周囲温度の影響を受けにくく、精度よくバッテリの温度を測定することのできる温度センサの組付構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の上記目的は、下記の構成により達成される。
(1) 複数のバッテリセルを集合させたバッテリ集合体と、該バッテリ集合体に装着されることで前記複数のバッテリセルを直列接続するモジュール部品と、前記バッテリ集合体を構成する複数のバッテリセルのうちの少なくとも1つのバッテリセルの温度を測定する温度センサと、を具備した電源装置における前記温度センサの組付構造において、
前記温度センサにより温度を測定する対象の前記バッテリセルに測温穴を設け、
前記温度センサに、前記測温穴に挿入される棒状の測温部を設けると共に、前記測温穴に前記測温部を挿入したとき前記測温穴の外部に露出するセンサ頭部に、前記測温穴の開口の周縁壁に沿って延びる弾性アームを設け、
前記測温穴に前記温度センサの測温部を挿入した状態で、前記モジュール部品を前記バッテリ集合体に装着することにより、前記モジュール部品の押え壁によって前記弾性アームを前記バッテリセル側に押圧し、それにより、前記温度センサをバッテリセルに固定したことを特徴とする電源装置における温度センサの組付構造。
【0011】
(2) 前記弾性アームが、前記モジュール部品の押え壁によって押圧されたとき、前記モジュール部品の押え壁に押圧接触する第1接触部と前記バッテリセルの測温穴の開口の周縁壁に押圧接触する第2接触部とを有すると共に、前記押え壁による押圧力が作用したとき前記第1接触部と前記第2接触部の間の押圧力作用方向における距離が変化するように弾性変形可能とされており、前記弾性アームが前記モジュール部品の押え壁と前記バッテリセルの測温穴の開口の周縁壁との間に挟まれることで、前記温度センサがバッテリセルに固定されていることを特徴とする上記(1)に記載の電源装置における温度センサの組付構造。
【0012】
(3) 前記弾性アームが、前記モジュール部品の押え壁によって押圧されたとき、前記モジュール部品の押え壁に押圧接触する第1接触部を有しており、前記モジュール部品の押え壁に、前記第1接触部の位置ズレを防止するリブが突設されていることを特徴とする上記(1)または(2)に記載の電源装置における温度センサの組付構造。
【0013】
(4) 上記(1)に記載の温度センサの組付構造を用いて、温度センサをバッテリセルに組み付ける温度センサの組付方法であって、
前記バッテリ集合体側の測温穴に温度センサの測温部を挿入し、
前記測温穴に前記温度センサの測温部を挿入した状態で、前記モジュール部品を前記バッテリ集合体に装着することにより、前記モジュール部品の押え壁によって前記弾性アームを前記バッテリセル側に押圧し、それにより、前記温度センサをバッテリセルに固定する、
ことを特徴とする温度センサの組付方法。
【0014】
上記(1)の構成の組付構造によれば、予め温度センサの測温部をバッテリセルに形成した測温穴に挿入し、その状態でモジュール部品をバッテリ集合体に装着することにより、モジュール部品の押え壁で弾性アームをバッテリセル側に押圧し、それにより、温度センサをバッテリセルに固定しているので、温度センサをガタツキなく安定して確実に組み付けることができると共に、組付が簡単であり、作業効率の向上が図れる。また、測温穴の内部に温度センサの測温部を挿入して温度を測るので、周囲温度の影響を受けにくく、バッテリセルの内部温度を精度よく測定することができる。
【0015】
上記(2)の構成の組付構造によれば、弾性アームをモジュール部品とバッテリセルとで挟み込むことで温度センサをバッテリセルに固定しているので、無理な力を加えることなく、温度センサを安定してバッテリセルに固定することができる。
【0016】
上記(3)の構成の組付構造によれば、モジュール部品の押え壁にリブを設けたので、組付時および組付後の温度センサの位置ずれ防止を図ることができる。
【0017】
上記(4)の構成の組付方法によれば、予め温度センサの測温部をバッテリセルに形成した測温穴に挿入し、その状態でモジュール部品をバッテリ集合体に装着することにより、モジュール部品の押え壁で弾性アームをバッテリセル側に押圧し、それにより、温度センサをバッテリセルに固定するので、温度センサをガタツキなく安定して確実に組み付けることができると共に、組付が簡単であり、作業効率の向上が図れる。また、測温穴の内部に温度センサの測温部を挿入して温度を測るので、周囲温度の影響を受けにくく、バッテリセルの内部温度を精度よく測定することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、温度センサをバッテリセルにガタツキなく安定して確実に組み付けることができると共に、組み付けが簡単であり、作業効率の向上が図れる。また、測温穴の内部に温度センサの測温部を挿入して温度を測るので、周囲温度の影響を受けにくく、バッテリセルの内部温度を精度よく測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】(a)は本発明の実施形態におけるモジュール部品の構成を示す断面図、(b)は温度センサの構成を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施形態におけるバッテリ集合体の各バッテリセルに温度センサを組み付けた状態を示す斜視図である。
【図3】図2のIII−III矢視断面図である。
【図4】(a)は前記バッテリセルに温度センサを組み付けた状態を示す要部断面図、(b)はその上でモジュール部品をバッテリ集合体に装着することによって、温度センサを固定した状態を示す断面図である。
【図5】従来の温度センサの組付構造の分解斜視図である。
【図6】同従来の組付構造の腰部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1(a)は実施形態におけるモジュール部品の構成を示す断面図、(b)は温度センサの構成を示す斜視図、図2は実施形態におけるバッテリ集合体の各バッテリセルに温度センサを組み付けた状態を示す斜視図、図3は図2のIII−III矢視断面図、図4(a)はバッテリセルに温度センサを組み付けた状態を示す要部断面図、(b)はその上でモジュール部品をバッテリ集合体に装着することによって、温度センサを固定した状態を示す断面図である。
【0021】
本実施形態の温度センサの組付構造は、図2に示すように、複数のバッテリセル1を一列に配列して集合させたバッテリ集合体2と、図1(a)および図4(b)に示すように、バッテリ集合体2に装着されることで複数のバッテリセル1を直列接続するモジュール部品20と、図1〜図4に示すように、バッテリ集合体2を構成する複数のバッテリセル1の温度をそれぞれ測定する温度センサ10と、を具備した電源装置に適用されたものである。
【0022】
図3に示すように、温度センサ10により温度を測定する対象のバッテリセル1には測温穴3が設けられている。また、温度センサ10は、図1(b)および図3に示すように、先端側(図において下端側)に測温穴3に挿入される棒状の測温部11を有すると共に、測温穴3に測温部11を挿入したとき測温穴3の外部に露出するセンサ頭部12に、測温穴3の開口の周縁壁(バッテリセル1の上壁面)に沿って延びる弾性アーム13を有している。弾性アーム13は、180度対向した位置に一対設けられている。また、センサ頭部12の上面には、端子14が突設されている。
【0023】
モジュール部品20は、図1(a)に示すように、プレート状の絶縁材料製のモジュール本体21と、モジュール本体21に保持された図示しないバスバーとからなり、モジュール部品20をバッテリ集合体2に装着することで、バスバーによって複数のバッテリセル1を電気的に直列接続できるようになっている。モジュール本体21には、センサ装着孔22が設けられており、センサ装着孔22の内周に、温度センサ10の一対の弾性アーム13をバッテリセル1側に押圧する押え壁23が設けられている。また、モジュール本体21の下面には、モジュール部品20をバッテリ集合体2に装着する際にガイド作用をなすガイド突起27と、装着状態でモジュール部品20をバッテリ集合体2にロックするロック部26とが設けられている。
【0024】
図4(a)、(b)に示すように、温度センサ10の弾性アーム13は、モジュール部品20の押え壁23によって押圧されたとき、モジュール部品20の押え壁23に押圧接触する第1接触部13aと、バッテリセル1の測温穴3の開口の周縁壁(上壁面1a)に押圧接触する第2接触部13bとを有している。弾性アーム13は、逆への字状の断面形状に形成されており、アーム先端が第1接触部13aとして構成され、アーム屈曲部が第2接触部13bとして構成され、押え壁23による押圧力が作用したとき、第1接触部13aと第2接触部13bの間の押圧力作用方向における距離が変化するように弾性変形可能とされている。
【0025】
そして、測温穴3に温度センサ10の測温部11を挿入した状態で、モジュール部品20をバッテリ集合体2に装着することにより、モジュール部品20の押え壁23によって弾性アーム13がバッテリセル1側に押圧され、それにより、温度センサ10がバッテリセル1に固定されている。即ち、弾性アーム13がモジュール部品20の押え壁23とバッテリセル1の測温穴3の開口の周縁壁(上壁面1a)との間に挟まれることによって、温度センサ10がバッテリセル1に固定されている。なお、モジュール部品20の押え壁23の先端にはリブ23aが突設されており、このリブ23aによって第1接触部13aの位置ズレが防止されている。
【0026】
この温度センサの組付構造を作製する場合は、まず、図2、図3および図4(a)に示すように、温度センサ10の測温部11をバッテリセル1に形成した測温穴3に挿入する。次に、その状態で図4(b)に示すように、モジュール部品20をバッテリ集合体2に装着する。モジュール部品20の装着の際には、ガイド27で位置決めしながらバッテリ集合体2の適正位置に取り付けて、ロック部26によりロックする。
【0027】
そうすることによって、モジュール部品20の押え壁23により弾性アーム13をバッテリセル1側に押圧することができ、それにより、弾性アーム13をモジュール部品20とバッテリセル1とで挟み込むことができて、温度センサ10をバッテリセル1に固定することができる。この状態で、センサ頭部12に突設した端子14に電線を接続することにより、測定信号を外部に取り出すことができる。
【0028】
このように、本実施形態の温度センサ10の組付構造によれば、予め温度センサ10の測温部11をバッテリセル1に形成した測温穴3に挿入し、その状態でモジュール部品20をバッテリ集合体2に装着することにより、モジュール部品20の押え壁23で弾性アーム13をバッテリセル1側に押圧し、それにより、温度センサ10をバッテリセル1に固定しているので、温度センサ10をガタツキなく安定して確実に組み付けることができると共に、組付が簡単であり、作業効率の向上が図れる。また、測温穴3の内部に温度センサ10の測温部11を挿入して温度を測るので、周囲温度の影響を受けにくく、バッテリセル1の内部温度を精度よく測定することができる。
【0029】
また、弾性アーム13をモジュール部品20とバッテリセル1とで挟み込むことで温度センサ10をバッテリセル1に固定しているので、無理な力を加えることなく、温度センサ10を安定してバッテリセル1に固定することができる。また、モジュール部品20の押え壁23にリブ23aを設けているので、組み付け時および組み付け後の温度センサ10の位置ずれ防止を図ることができる。
【0030】
また、モジュール部品20にガイド27を設けているので、バッテリ集合体2へのモジュール部品20の組み付けを容易且つ適正に行うことができる。
【0031】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0032】
例えば、上記実施形態では、全部のバッテリセル1に温度センサ10を組み付けた場合を示したが、特定のバッテリセル1だけに温度センサ10を組み付けてもよい。
【符号の説明】
【0033】
1 バッテリセル
1a 上壁面(測温穴の開口の周縁壁)
2 バッテリ集合体
3 測温穴
10 温度センサ
11 測温部
12 センサ頭部
13 弾性アーム
13a 第1接触部
13b 第2接触部
20 モジュール部品
23 押え壁
23a リブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のバッテリセルを集合させたバッテリ集合体と、該バッテリ集合体に装着されることで前記複数のバッテリセルを直列接続するモジュール部品と、前記バッテリ集合体を構成する複数のバッテリセルのうちの少なくとも1つのバッテリセルの温度を測定する温度センサと、を具備した電源装置における前記温度センサの組付構造において、
前記温度センサにより温度を測定する対象の前記バッテリセルに測温穴を設け、
前記温度センサに、前記測温穴に挿入される棒状の測温部を設けると共に、前記測温穴に前記測温部を挿入したとき前記測温穴の外部に露出するセンサ頭部に、前記測温穴の開口の周縁壁に沿って延びる弾性アームを設け、
前記測温穴に前記温度センサの測温部を挿入した状態で、前記モジュール部品を前記バッテリ集合体に装着することにより、前記モジュール部品の押え壁によって前記弾性アームを前記バッテリセル側に押圧し、それにより、前記温度センサをバッテリセルに固定したことを特徴とする電源装置における温度センサの組付構造。
【請求項2】
前記弾性アームが、前記モジュール部品の押え壁によって押圧されたとき、前記モジュール部品の押え壁に押圧接触する第1接触部と前記バッテリセルの測温穴の開口の周縁壁に押圧接触する第2接触部とを有すると共に、前記押え壁による押圧力が作用したとき前記第1接触部と前記第2接触部の間の押圧力作用方向における距離が変化するように弾性変形可能とされており、前記弾性アームが前記モジュール部品の押え壁と前記バッテリセルの測温穴の開口の周縁壁との間に挟まれることで、前記温度センサがバッテリセルに固定されていることを特徴とする請求項1に記載の電源装置における温度センサの組付構造。
【請求項3】
前記弾性アームが、前記モジュール部品の押え壁によって押圧されたとき、前記モジュール部品の押え壁に押圧接触する第1接触部を有しており、前記モジュール部品の押え壁に、前記第1接触部の位置ズレを防止するリブが突設されていることを特徴とする請求項1または2に記載の電源装置における温度センサの組付構造。
【請求項4】
請求項1に記載の温度センサの組付構造を用いて、温度センサをバッテリセルに組み付ける温度センサの組付方法であって、
前記バッテリ集合体側の測温穴に温度センサの測温部を挿入し、
前記測温穴に前記温度センサの測温部を挿入した状態で、前記モジュール部品を前記バッテリ集合体に装着することにより、前記モジュール部品の押え壁によって前記弾性アームを前記バッテリセル側に押圧し、それにより、前記温度センサをバッテリセルに固定する、
ことを特徴とする温度センサの組付方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−225844(P2012−225844A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−95300(P2011−95300)
【出願日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】