説明

電源装置及び画像形成装置

【課題】電力が無駄に熱に変換されることが無く、消費電力を削減できる電源装置を提供するものである。
【解決手段】本発明の電源装置は、オン信号と帰還信号とが入力され駆動信号を生成するパルス幅変調制御回路100と、パルス幅変調制御回路100からの駆動信号が入力されスイッチング動作を行うスイッチング素子101と、このスイッチング素子101によるスイッチング動作に伴う電流が流される1次巻線111と、1次巻線111が巻回されるトランス磁心115と、トランス磁心115に巻回される2次巻線112と、トランス磁心115に巻回される3次巻線113と、2次巻線112に生じる電流を整流する整流素子D1とコンデンサC1とからなる整流回路と、3次巻線113に生じる電流を整流する整流素子D2とコンデンサC2とからなる整流回路と、コンデンサC1間の電位差と、コンデンサC2間の電位差とを加算して出力する吐出側端子と、を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリーニング装置におけるクリーニング部材や、このクリーニング部材からトナーを回収する回収ローラなどのローラ類に電圧を発生する電源装置及び画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置においては、トナーなどの現像剤をクリーニングするためのクリーニング装置が用いられる。このためのクリーニング部材や、このクリーニング部材からトナーを回収する回収ローラなどのローラ類には、所定の電圧を印加することによって、トナーを吸引することが行われている。
【0003】
例えば、特許文献1(特開2004−101659号公報)にはクリーニング装置6の一例が開示されている。同公報図2に示されるように、像担持体(感光体)1上の転写残トナーTを、感光体1上から清掃する為のブラシローラ8、トナー回収ローラ9、クリーニングブレード10によって、クリーニング装置6が構成されている。そして、トナー回収ローラ9には、高圧電源13によって直流電圧が印加される。これによってブラシローラ8にもトナー回収ローラ9を介して、トナー回収ローラ9よりも低い電圧が印加されている。
【特許文献1】特開2004−101659号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
トナー回収ローラ9に対して、高圧電源13で直流電圧を印加する特許文献1に記載の方式のものでは、像担持体(感光体)1が帯電してしまう、という問題を有するものである。そこで、これを回避するために、ブラシローラ(クリーニング部材)とトナー回収ローラの双方に積極的に電位を与える構成を出願人らは提案をしている。
【0005】
ブラシローラ(クリーニング部材)とトナー回収ローラの双方に積極的に電位差を与える理由としては以下のようなものもある。画像形成装置の高画質化のために、トナーの円形度を高め、トナーの粒径を小さくする開発が積極的に進められている。そのため、転写残トナーをクリーニングするクリーニング装置のクリーニング性能を高めることも必要となっている。このような高性能なクリーニング装置では、転写残トナーTを、像担持体1上から清掃するためのブラシローラ8と、トナー回収ローラ9との間に、積極的に電位差を与え、静電気力により、微細なトナーをクリーニングするようにする必要があるのである。
【0006】
ところで、このようなクリーニング装置に高電圧を与える電源装置は、消費電力が大きい。また、回路構成が複雑で、特殊な電子部品を必要とし、形状が大きく、コストが高いという課題があった。
【0007】
以下、電源装置の前記技術課題に対する背景を説明する。図8、図9に示す2つの回路図は、クリーニング装置に対する高電圧バイアス印加を説明する図である。図8、図9共、負荷Aは、ブラシローラ8、トナー回収ローラ9間の電流経路を示す。図8、図9共、負荷Bは、ブラシローラ8、像担持体1間の電流経路を示す。
【0008】
また、図8では、吐出側端子がトナー回収ローラ9に、吸込側端子がブラシローラ8に、それぞれ接続される。図9では、吐出側端子がブラシローラ8に、吸込側端子がトナー
回収ローラ9に、それぞれ接続される。
【0009】
これは、転写残トナーTの帯電電荷極性により、クリーニングバイアス極性の設定が反転するためである。また、画像形成装置の装置構成により、感光体の帯電極性が逆極性であり、図8、図9の電池記号の極性が反転するクリーニングバイアス設定もある。このような反転した極性の印加バイアスの回路図を示したものが図10、11である。
【0010】
負荷Bは、感光体上の絶縁性の感光層への充電・放電電流、転写残トナーTの移動に伴う電荷移動の電流が主体で、抵抗が大きく、流れる電流は少ない。負荷Aは、抵抗性のブラシローラ8、トナー回収ローラ9のニップ部に流れるため、抵抗が小さく、流れる電流は多い。そのため、図8、図9の吸込側高圧電源は、図示した吸込電流を消費する能力を必要とする。一般的な高圧電源は、2次電池と異なり、エネルギーを吐出する能力のみ有し、エネルギーを吸収する(吸込電流を消費する)能力は、有しておらず、別途電流吸収回路を設ける必要がある。
【0011】
例えば、負荷Bの印加電圧/電流を1kV/100uA、負荷Aの印加電圧/電流を200V/1.1mAとすると、図8において、吸込電流,(電力)は、1.1mA−100uA=1mA,(1mA×1kV=1W)となる。200V×1.1mA=0.22Wの電力を負荷Aに供給するために、吸込電流回路は、1mA×1kV=1Wの電力を消費し、電力効率が悪い。
【0012】
以上より、高電圧が掛かった負荷から、高圧電源側に、吸込電流が流れ込む回路構成なので、吸込電流値、高電圧値の積である電力が、高圧電源側で無駄に熱に変換され、高圧電源及び画像形成装置の消費電力が大きい、という問題があった。高電圧を熱に変換する吸込電流消費回路が、高圧電源側に必要で、高耐圧トランジスタ等の特殊電子部品が必要となり、画像形成装置の高圧電源部を大型化し、コストが高い、という問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0013】
そのために、本発明に係る電源装置は、オン信号と帰還信号とが入力され駆動信号を生成する制御回路と、前記制御回路からの駆動信号が入力されスイッチング動作を行うスイッチング素子と、前記スイッチング素子によるスイッチング動作に伴う電流が流される1次巻線と、前記1次巻線が巻回されるトランス磁心と、前記トランス磁心に巻回される2次巻線と、前記トランス磁心に巻回される3次巻線と、前記2次巻線に生じる電流を整流する第1整流素子と第1コンデンサとからなる整流回路と、前記3次巻線に生じる電流を整流する第2整流素子と第2コンデンサとからなる整流回路と、前記第1コンデンサの端子間の電位差と、前記第2コンデンサの端子間の電位差とを加算して出力する端子と、を有することを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係る電源装置は、オン信号と帰還信号とが入力され駆動信号を生成する制御回路と、前記制御回路からの駆動信号が入力されスイッチング動作を行うスイッチング素子と、前記スイッチング素子によるスイッチング動作に伴う電流が流される1次巻線と、前記1次巻線が巻回されるトランス磁心と、前記トランス磁心に巻回される2次巻線と、前記トランス磁心に巻回される3次巻線と、前記2次巻線に生じる電流を整流する第1整流素子と第1コンデンサとからなる整流回路と、前記3次巻線に生じる電流を整流する第2整流素子と第2コンデンサとからなる整流回路と、前記第1コンデンサの端子間の電位差と、前記第2コンデンサの端子間の電位差とを減算して出力する端子と、を有することを特徴とする。
【0015】
また、本発明に係る電源装置は、前記第1コンデンサ又は前記第2コンデンサの電位を分圧する抵抗と、当該抵抗によって分圧された電位を帰還信号として用いることを特徴と
する。
【0016】
また、本発明に係る電源装置は、前記制御回路はパルス幅変調制御を行うことを特徴とする。
【0017】
また、本発明に係る電源装置は、オン信号と帰還信号とが入力され駆動信号を生成する制御回路と、前記制御回路からの駆動信号が入力されスイッチング動作を行うスイッチング素子と、前記スイッチング素子によるスイッチング動作に伴う電流が流される1次巻線と、前記1次巻線が巻回されるトランス磁心と、前記トランス磁心に巻回される巻線と、前記巻線に生じる電流を整流する整流素子と、前記整流素子によって整流された電流を電荷として蓄電するコンデンサとからなる、3つ以上の昇圧ブロックと、前記3つ以上の昇圧ブロックに生じるそれぞれの電位差を、任意に加算及び/又は減算して出力する端子と、を有することを特徴とする。
【0018】
また、本発明に係る画像形成装置は、前記のいずれかに記載の電源装置を用いたことを特徴とする。
【0019】
また、本発明に係る画像形成装置は、現像剤からなる像を担持する像担持体と、前記像担持体上の現像剤をクーリングするクリーニング部材と、前記クリーニング部材から現像剤を回収する回収ローラと、オン信号と帰還信号とが入力され駆動信号を生成する制御回路と、前記制御回路からの駆動信号が入力されスイッチング動作を行うスイッチング素子と、前記スイッチング素子によるスイッチング動作に伴う電流が流される1次巻線と、前記1次巻線が巻回されるトランス磁心と、前記トランス磁心に巻回される2次巻線と、前記トランス磁心に巻回される3次巻線と、前記2次巻線に生じる電流を整流する第1整流素子と第1コンデンサとからなる整流回路と、前記3次巻線に生じる電流を整流する第2整流素子と第2コンデンサとからなる整流回路と、を有し、前記第1コンデンサの電位と前記第2コンデンサの電位とを加算した電位を前記回収ローラまたは前記クリーニング部材のいずれか一方に印加し、前記第1コンデンサの電位を前記クリーニング部材または前記回収ローラのいずれか他方に印加することを特徴とする置。
【0020】
また、本発明に係る画像形成装置は、現像剤からなる像を担持する像担持体と、前記像担持体上の現像剤をクーリングするクリーニング部材と、前記クリーニング部材から現像剤を回収する回収ローラと、オン信号と帰還信号とが入力され駆動信号を生成する制御回路と、前記制御回路からの駆動信号が入力されスイッチング動作を行うスイッチング素子と、前記スイッチング素子によるスイッチング動作に伴う電流が流される1次巻線と、前記1次巻線が巻回されるトランス磁心と、前記トランス磁心に巻回される2次巻線と、前記トランス磁心に巻回される3次巻線と、前記2次巻線に生じる電流を整流する第1整流素子と第1コンデンサとからなる整流回路と、前記3次巻線に生じる電流を整流する第2整流素子と第2コンデンサとからなる整流回路と、を有し、前記第1コンデンサの電位と前記第2コンデンサの電位とを減算した電位を前記回収ローラまたは前記クリーニング部材のいずれか一方に印加し、前記第1コンデンサの電位を前記クリーニング部材または前記回収ローラのいずれか他方に印加することを特徴とする。
【0021】
本発明の電源装置及びそれを用いた画像形成装置によれば、高電圧が掛かった負荷から、高圧電源側に、吸込電流が流れ込まない回路構成なので、吸込電流値、高電圧値の積である電力が、高圧電源側で無駄に熱に変換されることが無く、高圧電源及び画像形成装置の消費電力を削減できる。
【0022】
また、本発明の電源装置及びそれを用いた画像形成装置によれば、高電圧を熱に変換する吸込電流消費回路が、高圧電源側に不要なので、高耐圧トランジスタ等の特殊電子部品
が不要となり、画像形成装置の高圧電源部を小型化、低コスト化できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。図1は本発明の電源装置が用いられた画像形成装置の一部を示す図である。
トナーを画像形成用の現像剤として用いる画像形成装置の感光体周辺の構成についてのみ示したものである。用紙への転写や、用紙上のトナー定着などについては示していないが、これらはいずれも周知の技術を用いることができる。
【0024】
感光体10は、外周面に感光層が形成された円筒状の部材からなる感光体ドラムであり、図に示すように時計回りの方向に回転する。該感光体10の表層の感光層は、例えばアモルファスシリコン感光体で構成される。帯電器11は、感光体10と現像ローラ20とのニップ部より感光体10の回転方向の上流側に配置され、図示しない電源装置から電圧が印加され、感光体10を帯電させる。露光ユニット12は、コロナ帯電器からなる帯電器11より感光体10の回転方向の下流側において、帯電器11によって帯電された感光体10上にレーザ光を照射し、感光体10上に潜像を形成する。
【0025】
中間転写ベルト40は、エンドレスのベルトであり、不図示の駆動ローラとテンションローラに張架され駆動ローラにより回転駆動される。この中間転写ベルト40は、一次転写部50で感光体10と当接し、感光体10からトナー像が転写される。一次転写ローラ51は、一次転写部50におけるバックアップローラである。
【0026】
なお、フルカラーの画像形成装置を構成する際には、イェロー用の感光体10Y、マゼンタ用の感光体10M、シアン用の感光体10C、ブラック用の感光体10Kを準備しておき、現像された感光体10Y、10M、10C、10K上の各色のトナー像を中間転写ベルト40上に順次重ねて転写し、フルカラーのトナー像を形成する。
【0027】
1次転写部50において転写されなかった感光体10上の残留トナーは、クリーニング装置4にてクリーニングされるようになっている。このためのクリーニング装置4は、回転可能に設けられたブラシローラ4a(特許請求の範囲におけるクリーニング部材に相当)を有している。このブラシローラ4aは多数のブラシ毛4bを有しており、これらのブラシ毛4bが感光体10の表面に当接して配設されている。ブラシローラ4aは、感光体10の回転と順回転(感光体10とブラシ毛4bとの当接部で感光体10の回転の接線方向の速度の向きとブラシ毛4bの回転の接線方向の速度の向きとが同じ向き)または感光体10の回転と逆回転(感光体10の前述の速度の向きとブラシ毛4bの前述の速度の向きとが逆向き)で回転するようにされている。
【0028】
また、クリーニング装置4は、回転可能に設けられた回収ローラ4cを有している。この回収ローラ4cは、ブラシローラ4aのブラシ毛4bに当接して配設されている。回収ローラ4cは、ブラシローラ4aの回転と順回転(前述と同様の意味)で回転するようにされている。
【0029】
さらに、クリーニング装置4は、回収ローラ4cに当接するクリーニングブレード4dを有している。このクリーニングブレード4dは、回収ローラ4cに付着したトナーを回収ローラ4cから掻き落として回収する。クリーニングブレード4dには、従来周知慣用のクリーニングブレードを用いることができる。
【0030】
クリーニング装置4におけるブラシローラ4aには、感光体10からトナーを引き寄せるためのバイアス電圧V1が、また、回収ローラ4cには、ブラシローラ4aからトナーを引き寄せるためのバイアス電圧V2が印加される。これらのバイアス電圧の間には、|
V2|>|V1|の関係がある。
【0031】
なお、本実施形態が例としている画像形成装置においては、負帯電トナーを用いて画像形成が行われる。もちろん、正帯電トナーを用いて画像形成を行うこともできる。以下の説明では、画像形成装置は負帯電トナーを用いるものとして説明するが、正帯電トナーを用いる場合には、以下の説明の各部材に印加する電位を逆極性とすればよい。
【0032】
また、本実施形態では、クリーニング装置によるクリーニング対象としては、感光体10を例にとり説明するが、クリーニング対象としてはこれに限らず、例えば、中間転写ベルト40などの像担持体一般とすることができる。
【0033】
次に、以上のようなクリーニング装置4に印加するバイアス電圧を発生する電源装置について説明する。図2は本発明の実施の形態に係る電源装置の回路図である。図2において、100はパルス幅変調(PWM)制御回路、101はスイッチング素子、110はトランス、111は1次巻線、112は2次巻線、113は3次巻線、115はトランス磁心、D1はダイオード(第1整流素子)、D2はダイオード(第2整流素子)、C1はコンダンサ(第1コンデンサ)、C2はコンダンサ(第2コンデンサ)、R1、R2、R3は抵抗をそれぞれ示している。
【0034】
本発明の実施形態に係る電源装置は、画像形成装置本体より例えば24V電源を供給される。パルス幅変調(PWM)制御回路100は、ON信号が画像形成装置本体より与えられると、自励発振、或いは、他励発振により、駆動信号を発生する。また、パルス幅変調(PWM)制御回路100は、帰還信号が入力され、目標値に対する帰還制御が行われる。
【0035】
スイッチング素子101は例えばトランジスタQ1などにより構成する。パルス幅変調(PWM)制御回路100が発生する駆動信号は、トランジスタQ1のベースを駆動し、トランジスタQ1のコレクタにより、トランス110の1次巻線111が励磁される。
【0036】
なお、本実施形態においては、スイッチング素子101を駆動するために制御回路として、パルス幅変調(PWM)制御回路100を用いる例について説明したが、スイッチング素子101を駆動するための制御はパルス幅変調(PWM)制御以外の周知のものを用いることができる。トランス110は、一つのトランス磁心115に対して、1次巻線111、2次巻線112、3次巻線113が巻回される構成となっている。そして、トランス110の1次巻線111がスイッチング素子101によるスイッチング電流によって励磁されると、トランス110の2次巻線112に励起された脈流は、ダイオードD1によって整流され、整流された電流はコンデンサC1に電荷として蓄電される。このように、トランス110の2次巻線112に励起された電流は、ダイオードD1と、コンデンサC1とからなる整流回路で直流高電圧に変換される。同様に、トランス110の3次巻線113に励起された脈流は、ダイオードD2と、コンデンサC2とからなる整流回路で直流高電圧に変換される。
【0037】
コンデンサC1に得られた直流高電圧は、抵抗R1、抵抗R3により分圧され、パルス幅変調(PWM)制御回路100に帰還信号として帰還され、パルス幅変調(PWM)制御回路100において、出力高電圧が一定となる様に定電圧制御が実施される。
【0038】
また、抵抗R2は、コンデンサC2に蓄えられた電荷を放電する機能を有する。抵抗R2に出力される電圧は、パルス幅変調(PWM)制御回路100に帰還されていないが、同一トランス内では、1次巻線、2次巻線、3次巻線の巻数比に比例した電圧が励起される性質により、概略の精度を得ることが出来る。
【0039】
パルス幅変調(PWM)制御回路100への電圧帰還は、コンデンサC2に得られた直流高電圧に対して抵抗R2の他端に抵抗R1を接続変更して行うことも出来る。吸込側端子、吐出側端子の出力電圧精度をより高めたい直流高電圧側に抵抗R1を接続し、パルス幅変調(PWM)制御回路100に電圧帰還するのがより好ましい実施形態である。
【0040】
以上のような電源装置の回路構成によれば、吐出側端子には、コンデンサC1の端子間の電位差と、コンデンサC2の端子間の電位差と、が加算されて出力される。ブラシローラ4aが接続される吸込側端子の電圧をV1、回収ローラ4cが接続される吐出側端子の電圧をV2とすると、吐出側端子のV2は、V1より高い電圧となる。なお、図2の回路図において、トナーの特性によっては、極性を反転させた回路構成とすることもできる。このような極性を反転させた回路構成の場合も含めると、|V2|>|V1|の関係があるといえる。なお、トナーの帯電極性や感光体の帯電特性に応じて、吸込側端子に回収ローラ4cを接続して電圧V1を印加し、吐出側端子にブラシローラ4aを接続して電圧V2を印加するようにしてもよい。
【0041】
図2の回路図を、図8の回路図と対応するようにして表現しものが、図3に示す図である。従来技術と大きく異なる点は、接地電位に対し、フローティングした電位に設けられた電源の存在である。電池を複数本接続すれば、このような回路構成は可能であるが、電子写真装置に必要な高電圧を確保することは、容易では無い。そこで、図2に示すような回路図の電源装置を用いる。図3において、負荷Aは、ブラシローラ4a、回収ローラ4c間の電流経路を示す。また、負荷Bは、ブラシローラ4a、感光体10間の電流経路を示す。
【0042】
以上のような電源装置及びそれを用いた画像形成装置によれば、高電圧が掛かった負荷から、高圧電源側に、吸込電流が流れ込まない回路構成なので、吸込電流値、高電圧値の積である電力が、高圧電源側で無駄に熱に変換されることが無く、高圧電源及び画像形成装置の消費電力を削減できる。また、本発明の電源装置及びそれを用いた画像形成装置によれば、高電圧を熱に変換する吸込電流消費回路が、高圧電源側に不要なので、高耐圧トランジスタ等の特殊電子部品が不要となり、画像形成装置の高圧電源部を小型化、低コスト化できる。
【0043】
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。図4は本発明の第2の実施形態に係る電源装置の回路図である。図3に示す実施形態と同様の回路記号、参照番号の構成は、先の実施形態と同様のものを示している。図2記載の回路と異なるのは結線であり、図4に示す他の実施形態に係る電源装置の回路構成によれば、吐出側端子には、コンデンサC1の端子間の電位差と、コンデンサC2の端子間の電位差と、が減算されて出力される。図4の回路図を、図9の回路図と対応するようにして表現したものが、図5に示す図である。このような他の実施形態によっても、先の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0044】
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。図6は本発明の第3の実施形態に係る電源装置の回路図である。図6に示す電源装置においては、トランス110のトランス磁心115には、さらに4次巻線114が設けられており、トランス110の4次巻線114に励起された脈流電圧は、ダイオードD3、コンデンサC3の整流回路で直流高電圧に変換される。
【0045】
そして、吐出側端子には、コンデンサC1の端子間の電位差と、コンデンサC2の端子間の電位差と、コンデンサC3の端子間の電位差と、が加算されて出力される。吐出/吸込側端子には、コンデンサC1の端子間の電位差と、コンデンサC2の端子間の電位差と
、が加算されて出力される。
【0046】
なお、本実施形態においては、それぞれの電位差を加算するものについて示しているが、本発明は、ぞれぞれの電位差の加算、減算を任意に行い得るものである。
【0047】
以上のような電源装置は、高圧出力を3系統有するものであり、例えば、ブラシローラ4a、回収ローラ4c、クリーニングブレード4dのそれぞれに電位差を有す高電圧を与えたい場合に好適な実施例である。
【0048】
また、2次巻線112、3次巻線113、4次巻線114の極性及び、ダイオードD1、D2、D3の極性を反転させることにより、任意の極性の組合せの複数の高電圧出力を得ることができる。前記した実施形態と回路図の同一記号部は、同様の機能を有す為に、説明を割愛する。
【0049】
高圧トランスの4次巻線114に励起された脈流電圧は、ダイオードD3、コンデンサC3の整流回路で直流高電圧に変換される。抵抗R3は、コンデンサC3に蓄えられた電荷を放電する機能を有する。抵抗R3に出力される電圧は、パルス幅変調(PWM)制御回路100に帰還されていないが、同一トランス110内では、1次巻線111、2次巻線112、3次巻線113、4次巻線114の巻数比に比例した電圧が励起される性質により、概略の精度を得る事が出来る。パルス幅変調(PWM)制御回路100への電圧帰還は、抵抗R3の両端の何れかに抵抗R1を接続変更して行う事も出来る。吸込側端子、吐出側端子の出力電圧精度をより高めたい側に抵抗R1を接続し、パルス幅変調(PWM)制御回路100に電圧帰還するのがより好ましい実施形態である。
【0050】
以上のような電源装置及びそれを用いた画像形成装置によれば、複数の高圧出力をあたかも複数の電池の任意接続により、得ているが如く高圧電源回路が構成できる。これにより、高電圧を熱に変換する吸込電流消費回路が、高圧電源側に不要となる。
【0051】
次に本発明の第4の実施形態について説明する。図7は本発明の電源装置を画像形成装置の帯電器に用いた例を示す図である。図7において示す帯電器11はスコロトロン帯電器であり、11aはワイヤ、11bはグリッドを示している。そして、電源装置としては、図2の回路図に示すものが用いられており、ワイヤ11aには吐出側端子が、グリッド11bには吸込側端子が接続されるものである。すなわち、ワイヤ11aはV2とされ、グリッド11bはV1とされる。なお、電源装置としては、図3の回路図に示すものを用いてもよい。
【0052】
帯電器11としてスコロトロン帯電器を用いる場合、グリッド11bの電位の管理がより重要であり、その意味においても、抵抗R1、抵抗R3により分圧された電位が、パルス幅変調(PWM)制御回路100に帰還信号として帰還されることが望ましい。
【0053】
本発明の電源装置は、帯電器の高圧電源として用いることができ、このような場合においても、吸込電流値、高電圧値の積である電力が、高圧電源側で無駄に熱に変換されることが無く、高圧電源及び画像形成装置の消費電力を削減できる。また、高電圧を熱に変換する吸込電流消費回路が、高圧電源側に不要なので、高耐圧トランジスタ等の特殊電子部品が不要となり、画像形成装置の高圧電源部を小型化、低コスト化できる。
【0054】
以上において、種々の実施形態を示したが、本発明の電源装置を特開2007−171342号公報や特開2008−96872号公報などの液体現像剤を用いた画像形成装置に用いることもできる。液体現像剤を用いた画像形成装置は、感光体上に形成した潜像を液体現像剤によって現像する現像ローラ及びこの現像ローラ上の液体現像剤中のトナー粒
子を現像ローラ表面に凝集させるトナー圧縮ローラを有しており、現像ローラには吸込側端子(V1)が、トナー圧縮ローラには吐出側端子(V2)が接続され、電源装置によってそれぞれのバイアス電圧V1、V2を印加しているものである。なお、電源装置としては、図3の回路図に示すものを用いてもよい。このような場合においても、吸込電流値、高電圧値の積である電力が、高圧電源側で無駄に熱に変換されることが無く、高圧電源及び画像形成装置の消費電力を削減できる。また、高電圧を熱に変換する吸込電流消費回路が、高圧電源側に不要なので、高耐圧トランジスタ等の特殊電子部品が不要となり、画像形成装置の高圧電源部を小型化、低コスト化できる。
【0055】
以上において、種々の実施形態を示したが、それぞれの実施形態の構成要素を適宜組み合わせて構成した実施形態についても、本発明の範疇に含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の第1の実施形態に係わる電源装置が用いられた画像形成装置の一部を示す図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る電源装置の回路図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る電源装置の回路を模式的に表現する図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に係る電源装置の回路図である。
【図5】本発明の第3の実施形態に係る電源装置の回路を模式的に表現する図である。
【図6】本発明の第4の実施形態に係る電源装置の回路図である。
【図7】本発明の電源装置を画像形成装置の帯電器に用いた例を示す図である。
【図8】クリーニング装置に対する高電圧バイアス印加を説明する回路図である。
【図9】クリーニング装置に対する高電圧バイアス印加を説明する回路図である。
【図10】クリーニング装置に対する高電圧バイアス印加を説明する回路図である。
【図11】クリーニング装置に対する高電圧バイアス印加を説明する回路図である。
【符号の説明】
【0057】
4・・・クリーニング装置、4a・・・ブラシローラ、4b・・・ブラシ毛、4c・・・回収ローラ、4d・・・クリーニングブレード、10・・・感光体、11・・・帯電器、11a・・・ワイヤ、11b・・・グリッド、12・・・露光ユニット、20・・・現像ローラ、40・・・中間転写ベルト、50・・・1次転写部、51・・・一次転写ローラ、100・・・パルス幅変調(PWM)制御回路、101・・・スイッチング素子、110・・・トランス、111・・・1次巻線、112・・・2次巻線、113・・・3次巻線、114・・・4次巻線、115・・・トランス磁心、D1、D2、D3・・・整流素子、C1、C2、C3・・・コンデンサ、R1、R2、R3、R4・・・抵抗

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オン信号と帰還信号とが入力され駆動信号を生成する制御回路と、
前記制御回路からの駆動信号が入力されスイッチング動作を行うスイッチング素子と、
前記スイッチング素子によるスイッチング動作に伴う電流が流される1次巻線と、
前記1次巻線が巻回されるトランス磁心と、
前記トランス磁心に巻回される2次巻線と、
前記トランス磁心に巻回される3次巻線と、
前記2次巻線に生じる電流を整流する第1整流素子と第1コンデンサとからなる整流回路と、
前記3次巻線に生じる電流を整流する第2整流素子と第2コンデンサとからなる整流回路と、
前記第1コンデンサの端子間の電位差と、前記第2コンデンサの端子間の電位差とを加算して出力する端子と、を有することを特徴とする電源装置。
【請求項2】
オン信号と帰還信号とが入力され駆動信号を生成する制御回路と、
前記制御回路からの駆動信号が入力されスイッチング動作を行うスイッチング素子と、
前記スイッチング素子によるスイッチング動作に伴う電流が流される1次巻線と、
前記1次巻線が巻回されるトランス磁心と、
前記トランス磁心に巻回される2次巻線と、
前記トランス磁心に巻回される3次巻線と、
前記2次巻線に生じる電流を整流する第1整流素子と第1コンデンサとからなる整流回路と、
前記3次巻線に生じる電流を整流する第2整流素子と第2コンデンサとからなる整流回路と
前記第1コンデンサの端子間の電位差と、前記第2コンデンサの端子間の電位差とを減算して出力する端子と、を有することを特徴とする電源装置。
【請求項3】
前記第1コンデンサ又は前記第2コンデンサの電位を分圧する抵抗と、当該抵抗によって分圧された電位を帰還信号として用いることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電源装置。
【請求項4】
前記制御回路はパルス幅変調制御を行うことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の電源装置。
【請求項5】
オン信号と帰還信号とが入力され駆動信号を生成する制御回路と、
前記制御回路からの駆動信号が入力されスイッチング動作を行うスイッチング素子と、
前記スイッチング素子によるスイッチング動作に伴う電流が流される1次巻線と、
前記1次巻線が巻回されるトランス磁心と、
前記トランス磁心に巻回される巻線と、前記巻線に生じる電流を整流する整流素子と、前記整流素子によって整流された電流を電荷として蓄電するコンデンサとからなる、3つ以上の昇圧ブロックと、
前記3つ以上の昇圧ブロックに生じるそれぞれの電位差を、任意に加算及び/又は減算して出力する端子と、を有することを特徴とする電源装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の電源装置を用いたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
現像剤からなる像を担持する像担持体と、
前記像担持体上の現像剤をクーリングするクリーニング部材と、
前記クリーニング部材から現像剤を回収する回収ローラと、
オン信号と帰還信号とが入力され駆動信号を生成する制御回路と、
前記制御回路からの駆動信号が入力されスイッチング動作を行うスイッチング素子と、
前記スイッチング素子によるスイッチング動作に伴う電流が流される1次巻線と、
前記1次巻線が巻回されるトランス磁心と、
前記トランス磁心に巻回される2次巻線と、
前記トランス磁心に巻回される3次巻線と、
前記2次巻線に生じる電流を整流する第1整流素子と第1コンデンサとからなる整流回路と、
前記3次巻線に生じる電流を整流する第2整流素子と第2コンデンサとからなる整流回路と、を有し、
前記第1コンデンサの電位と前記第2コンデンサの電位とを加算した電位を前記回収ローラまたは前記クリーニング部材のいずれか一方に印加し、前記第1コンデンサの電位を前記クリーニング部材または前記回収ローラのいずれか他方に印加することを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
現像剤からなる像を担持する像担持体と、
前記像担持体上の現像剤をクーリングするクリーニング部材と、
前記クリーニング部材から現像剤を回収する回収ローラと、
オン信号と帰還信号とが入力され駆動信号を生成する制御回路と、
前記制御回路からの駆動信号が入力されスイッチング動作を行うスイッチング素子と、
前記スイッチング素子によるスイッチング動作に伴う電流が流される1次巻線と、
前記1次巻線が巻回されるトランス磁心と、
前記トランス磁心に巻回される2次巻線と、
前記トランス磁心に巻回される3次巻線と、
前記2次巻線に生じる電流を整流する第1整流素子と第1コンデンサとからなる整流回路と、
前記3次巻線に生じる電流を整流する第2整流素子と第2コンデンサとからなる整流回路と、を有し、
前記第1コンデンサの電位と前記第2コンデンサの電位とを減算した電位を前記回収ローラまたは前記クリーニング部材のいずれか一方に印加し、前記第1コンデンサの電位を前記クリーニング部材または前記回収ローラのいずれか他方に印加することを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−63216(P2010−63216A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−224262(P2008−224262)
【出願日】平成20年9月2日(2008.9.2)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】