説明

電源装置

【課題】 大小2つの直流電圧を生成して、無停電で負荷にそれぞれ供給する場合、電池からの電力を有効に活用することを可能にする電源装置を提供する。
【解決手段】 電池14の電圧を3.3[V]に変換して3.3V負荷220に供給するDC/DCステップアップコンバータ18と、DC/DCステップダウンコンバータ13の入力側に接続されているFET16Aと、電池14とDC/DCステップアップコンバータ18との間に接続されているFET16B、16Cと、制御部17とを備える。制御部17は、商用電源201が断のときに、FET16Aを操作して、DC/DCステップダウンコンバータ13に対する5.6[V]の供給を停止すると共に、FET16B、16Cを操作して、電池14の電圧をDC/DCステップアップコンバータ18に供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複数の負荷に直流を供給する電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
直流を供給する電源装置には、電子機器に設けられているものがある。この電源装置は、商用電源から直流電圧を生成して、電子機器の各回路つまり負荷に直流電圧を供給する。例えば、電子機器がコンピュータである場合、商用電源が瞬断などで停電して、電源装置からの直流電圧の供給が停止すると、コンピュータが処理中のデータに影響を与える場合がある。このようなことを防ぐために、電源装置が電池を内蔵している場合がある(例えば、特許文献1参照。)。こうした電源装置は、UPS(Uninterruptible Power Supply:無停電電源装置)と呼ばれ、商用電源が停電しても、直流電圧をコンピュータの各回路に一定時間供給する。
【0003】
UPSは、コンピュータの他にも、各種の電子機器に用いられている。例えば電子機器が防災無線装置である場合、図12に示すように、電源装置100は、AC100[V]の商用電源201から5.6[V]の直流電圧と3.3[V]の直流電圧とを生成し、各直流電圧を5.6V負荷210と3.3V負荷220とにそれぞれ無停電で供給する。このために、電源装置100は、商用電源201を利用するために、AC/DCユニット101とダイオード102とDC/DCステップダウンコンバータ103とを備えている。さらに、電源装置100は、無停電で直流電圧を供給するために、予備用の電池104とDC/DCステップアップコンバータ105とを備えている。
【0004】
AC/DCユニット101は、AC100[V]の商用電源201から5.9[V]の直流電圧を生成して出力する電源回路である。通常、AC/DCユニット101が出力する5.9[V]の直流電圧は、誤差が0〜+5[%]に設定されている。つまり、AC/DCユニット101からの出力は、5.9[V]より高めになる。AC/DCユニット101からの出力は、ダイオード102を経て、5.6V負荷210に供給される。つまり、ダイオード102で5.6[V]に降下した直流電圧が供給される。また、AC/DCユニット101からの直流電圧は、ダイオード102を経てDC/DCステップダウンコンバータ103に加えられる。DC/DCステップダウンコンバータ103は、5.6[V]の直流電圧を3.3[V]の直流電圧に変換する電源回路である。DC/DCステップダウンコンバータ103は、生成した直流電圧を3.3V負荷220に供給する。
【0005】
一方、DC/DCステップアップコンバータ105は、電池104からの直流電圧を5.6[V]の直流電圧に変換する電源回路である。電池104は電流を供給すると、その直流電圧が例えば3.2[V]から2.2[V]まで変化するので、DC/DCステップアップコンバータ105が出力する5.6[V]の直流電圧は、誤差が0〜−5[%]になる。つまり、DC/DCステップアップコンバータ105からの出力は、5.6[V]より低めになる。したがって、DC/DCステップアップコンバータ105からの出力は、ダイオード102を経てAC/DCユニット101からの出力される5.6[V]より低くなるので、DC/DCステップアップコンバータ105は無負荷状態で待機することになる。
【0006】
ところで、商用電源201が停電になると、AC/DCユニット101からの直流電圧が低下するので、ダイオード102がオフとなり、無負荷状態で待機していたDC/DCステップアップコンバータ105が、直流電圧を5.6V負荷210に供給する。また、DC/DCステップダウンコンバータ103は、DC/DCステップアップコンバータ105からの直流電圧を3.3[V]の直流電圧に変換し、この直流電圧を3.3V負荷220に供給する。
【0007】
この後、商用電源201が復旧すると、AC/DCユニット101からの出力は上昇して、AC/DCユニット101は、誤差が0〜+5[%]の範囲の、5.9[V]の直流電圧を出力する。これにより、ダイオード102がオンになり、再び、AC/DCユニット101からの直流電圧が5.6V負荷210とDC/DCステップダウンコンバータ103とに供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000−14043号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、先に述べた電源装置100には次の課題がある。つまり、従来の電源装置100は、停電時に電池104からの直流電圧を変換して、5.6[V]と3.3[V]の電圧を生成し、5.6V負荷210と3.3V負荷220に供給する。このとき、電源装置100は、DC/DCステップアップコンバータ105とDC/DCステップダウンコンバータ103とにより、3.3[V]の直流電圧を生成する。
【0010】
このように、防災無線装置などに使用される従来の電源装置は、予備用の電池を利用して2つの負荷に直流電圧を供給する場合、1段目のコンバータで高い方の直流電圧を生成して一方の負荷に供給し、2段目のコンバータを用いて、1段目のコンバータで生成した直流電圧から低い方の直流電圧を生成して他方の負荷に供給する。つまり、大小2つの直流電圧を生成して負荷にそれぞれ供給する場合、低い方の直流電圧を生成するために、従来の電源装置は2段のコンバータを用いる。このために、従来の電源装置は効率が悪く、電池からの電力を活用する際に無駄を生じている。
【0011】
この発明の目的は、前記の課題を解決し、大小2つの直流電圧を生成して、無停電で負荷にそれぞれ供給する場合、電池からの電力を有効に活用することを可能にする電源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記の課題を解決するために、請求項1の発明は、交流電源からの交流を第1変換部が、予備用の電池の電圧と異なる、直流の第1電圧に変換すると共に電池の電圧を第2変換部が第1電圧に変換し、2つの第1電圧の中でレベルが高い方を第1負荷に供給し、第1負荷に供給されている第1電圧を第3変換部が、電池の電圧とわずかに異なる直流の第2電圧に変換して第2負荷に供給する電源装置において、電池の電圧を第2電圧に変換して第2負荷に供給する第4変換部と、第3変換部の入力側に接続されている第1スイッチ部と、電池と第4変換部との間に接続されている第2スイッチ部と、交流電源が正常のときに、第1スイッチ部を操作して、第1電圧を第3変換部に供給すると共に、第2スイッチ部を操作して、第4変換部に対する電池の電圧の供給を停止し、交流電源が断のときに、第1スイッチ部を操作して、第3変換部に対する第1電圧の供給を停止すると共に、第2スイッチ部を操作して、電池の電圧を第4変換部に供給する制御部と、を備えることを特徴とする電源装置である。
【0013】
請求項1の発明では、交流電源が正常のときに、制御部は、第1スイッチ部を操作して、第1電圧を第3変換部に供給すると共に、第2スイッチ部を操作して、第4変換部に対する電池の電圧の供給を停止する。また、交流電源が断のときに、制御部は、第1スイッチ部を操作して、第3変換部に対する第1電圧の供給を停止すると共に、第2スイッチ部を操作して、電池の電圧を第4変換部に供給する。これにより、交流電源が断のときには、第4変換部が電池の電圧を第2電圧に変換して、第2負荷に加える。
【0014】
請求項2の発明は、請求項1に記載の電源装置において、第1電圧は電池の電圧より高い直流の高電圧であり、第2電圧は電池の電圧よりわずかに高い直流の低電圧であることを特徴とする。
【0015】
請求項3の発明は、請求項1または2に記載の電源装置において、制御部は、交流電源が断の場合に電池の電圧が所定値に比べて大きいとき、第1スイッチ部を操作して、第2変換部からの高いレベルの第1電圧を、第3変換部に供給すると共に第1スイッチ部を操作して、第4変換部に対する電池の電圧の供給を停止し、電池の電圧が所定値に比べて小さくなると、第3変換部に対する第1電圧の供給を停止すると共に電池の電圧を第4変換部に供給する、ことを特徴とする。
【0016】
請求項4の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の電源装置において、制御部は、交流電源が断の場合に電池の電圧が所定電圧から第4変換部の入力を規定する電圧までの範囲にあるとき、第3変換部および第4変換部の出力する第2電圧の中でレベルが高い方を第2負荷に出力する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
請求項1および請求項2の発明によれば、交流電源が断のときに、第3変換部に対する電圧の供給を停止すると共に、予備用の電池の電圧を第4変換部に供給するので、1段の変換部を使用して第2電圧(低電圧)を生成して、第2負荷に供給することができる。これにより、交流電源が断のときに、電池の効率的な使用を可能にする。
【0018】
請求項3の発明によれば、交流電源が断の場合に、電池の電圧が所定値より小さくなると、第4変換部に電池の電圧を加えるので、第4変換部は、電池の電圧とわずかに異なる第2電圧(低電圧)を、確実に生成して出力することができる。
【0019】
請求項4の発明によれば、制御部は、交流電源が断の場合に、電池の電圧が所定電圧から第4変換部の入力を規定する電圧までの範囲にあるとき、つまり、電池電圧が第4変換部の入力を規定する電圧より低いが、所定電圧より高いときに、2段の変換部を用いて電池を使い、電池の出力を規定値より低くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施の形態1による電源装置を示すブロック図である。
【図2】制御部を拡大した回路図である。
【図3】素子の特性を示す図であり、図3(a)はゲートの特性を示す特性図、図3(b)はFETの特性を示す特性図である。
【図4】電圧供給の経路を示す図である。
【図5】電圧供給の経路を示す図である。
【図6】電圧供給の経路を示す図である。
【図7】電圧供給の経路を示す図である。
【図8】電圧供給の経路を示す図である。
【図9】電圧供給の経路を示す図である。
【図10】ユニット出力および電池出力を時間経過で表した図である。
【図11】ユニット出力を時間経過で表した図である。
【図12】従来の電源装置を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、この発明の実施の形態について、図面を用いて詳しく説明する。以下の実施の形態では、この発明による電源装置を防災無線装置に用いた場合を例としている。
【0022】
(実施の形態1)
この実施の形態による電源装置を図1に示す。図1の電源装置10は、AC100[V]の商用電源201から5.6[V]の直流電圧と3.3[V]の直流電圧とを生成し、各直流電圧を5.6V負荷210と3.3V負荷220とにそれぞれ無停電で供給する。このために、電源装置10は、AC/DCユニット11と、ダイオード12、19と、DC/DCステップダウンコンバータ13と、電池14と、DC/DCステップアップコンバータ15、18と、FET(Field Effect Transistor)16A〜16Cと、制御部17とを備えている。
【0023】
これらの構成の中で、AC/DCユニット11、ダイオード12、DC/DCステップダウンコンバータ13、電池14およびDC/DCステップアップコンバータ15は図12のAC/DCユニット101、ダイオード102、DC/DCステップダウンコンバータ103、電池104およびDC/DCステップアップコンバータ105と同じであるので、これらの説明を省略する。
【0024】
DC/DCステップアップコンバータ18は、電池14の直流電圧を3.3[V]の直流電圧に変換する電源回路である。DC/DCステップアップコンバータ18は低い電圧を高い電圧に変換するので、入力の上限値(以下、「コンバータ入力上限値」という)が決められている。そして、DC/DCステップアップコンバータ18は、コンバータ入力上限値以下の入力で使用される。ダイオード19は、DC/DCステップダウンコンバータ13から出力される直流電圧に応じてオン・オフをする。
【0025】
FET16A〜16Cは、PチャンネルMOF(Metal Oxide Semiconductor)トランジスタであり、オン・オフをするスイッチ素子として動作する。つまり、FET16A〜16Cのゲート(G)の電圧がソース(S)の電圧より低くなると、ドレイン(D)とソースとの間がオンになる。FET16A〜16Cのオン・オフは、制御部17によって制御される。
【0026】
制御部17は、制御回路17A〜17Cを備えている。制御回路17AはFET16Aのオン・オフを行い、制御回路17BはFET16Bのオン・オフを行う。また、制御回路17CはFET16Cのオン・オフを行う。
【0027】
制御部17の制御回路17Aは、図2の拡大図に示すように、抵抗17A、17Aと、コンパレータ17Aと、NORゲートとして機能するゲート17Aとを備えている。抵抗17Aと抵抗17Aとは、DC/DCステップアップコンバータ18またはダイオード19の出力する、3.3[V]の直流電圧を分割して、電池14が出力する電圧(以下、「電池出力」という)のレベルを判定するための電池出力規定値V1を生成する。コンパレータ17Aは、電池出力と電池出力規定値V1とを比較する。そして、電池出力が電池出力規定値V1より高い場合にハイレベルの電圧を出力し、電池出力が電池出力規定値V1以下である場合にはロウレベルの電圧を出力する。ゲート17Aは、AC/DCユニット11の出力(以下、「ユニット出力」という)と、コンパレータ17Aの電圧とにより、ロウレベルまたはハイレベルの電圧を出力する。つまり、ゲート17Aは、
a1.AC/DCユニット11のユニット出力が、ゲート17Aのしきい値Vtを超えているとき、
a2.電池14の電池出力が電池出力規定値V1を超えているとき、
にロウレベルの電圧を出力する。また、ゲート17Aは、
a3.AC/DCユニット11のユニット出力がしきい値Vt以下のとき、かつ、電池14の電池出力が電池出力規定値V1以下のとき、
にハイレベルの電圧を出力する。なお、ゲート17Aでは、図3(a)に示すように、入力側のしきい値Vtを基準にして、ハイレベル・ロウレベルの出力が決定される。
【0028】
制御回路17Aからの出力に応じて、FET16Aはオン・オフをする。つまり、FET16Aは、
a4.AC/DCユニット11のユニット出力がしきい値Vtを超えているとき、
a5.電池14の電池出力が電池出力規定値V1を超えているとき、
にオンになる。また、FET16Aは、
a6.AC/DCユニット11のユニット出力がしきい値Vt以下のとき、かつ、電池14の電池出力が電池出力規定値V1以下のとき、
にオフになる。
【0029】
制御部17の制御回路17Bは、抵抗17B、17Bから成る。抵抗17Bと抵抗17Bとは、AC/DCユニット11のユニット出力を分割して、分割電圧を生成する。制御回路17Bが制御するFET16Bは、図3(b)に示すように、ゲート(G)の電圧がソース(S)の電圧より低くなると、ソースとドレイン(D)との間がオンになり、ドレイン電流が流れる。このとき、FET16Bは、しきい値Vtを持ち、ゲート(G)の電圧がしきい値Vtより高いと、ドレイン電流が流れない。この状態はFET16Bのオフである。また、ゲート(G)の電圧がしきい値Vtより低くなると、ドレイン電流が流れる。この状態はFET16Bのオンである。この実施の形態では、ユニット出力が、あらかじめ決定されている交流側規定値V2になったときに、抵抗17Bと抵抗17Bによる分割電圧がしきい値Vtになるように、抵抗17Bと抵抗17Bの値が選択されている。
【0030】
制御回路17Bからの出力電圧に応じて、FET16Bはオン・オフをする。つまり、FET16Bは、
b1.ユニット出力が交流側規定値V2より低いとき、
にオンになる。また、FET16Bは、
b2.ユニット出力が交流側規定値V2以上のとき、
オフになる。
【0031】
制御部17の制御回路17Cは、抵抗17C、17Cと、コンパレータ17Cとを備えている。抵抗17Cと抵抗17Cとは、3.3[V]の直流電圧を分割して、DC/DCステップアップコンバータ18に対する入力を判定するためのコンバータ入力上限値V1を生成する。コンパレータ17Cは、電池出力とコンバータ入力上限値V1とを比較する。そして、電池出力がコンバータ入力上限値V1より高い場合にハイレベルの電圧を出力し、電池出力が低い場合にはロウレベルの電圧を出力する。
【0032】
制御回路17Cからの出力電圧に応じて、FET16Cはオン・オフをする。つまり、FET16Cは、
c1.電池出力がコンバータ入力上限値V1以下のとき、
にオンになる。また、FET16Cは、
c2.電池出力がコンバータ入力上限値V1を超えているとき、
にオフになる。
【0033】
このように、制御部17は、
d1.電池出力規定値V1
d2.交流側規定値V2
d3.コンバータ入力上限値V1
d4.しきい値Vt
を用いて、
e1.AC/DCユニット11のユニット出力
e2.電池14の電池出力
のレベルを判定する。そして、判定結果を基にして、FET16A〜16Cのオン・オフを行う。なお、この実施の形態では、
電池出力規定値V1<コンバータ入力上限値V1
しきい値Vt<交流側規定値V2
のように設定されている。
【0034】
次に、この実施の形態の動作について、FET16A〜16Cのオン・オフを示す図4〜図9を用いて説明する。通常、商用電源201が正常のとき、商用電源201は交流電圧をAC/DCユニット11に供給する。これにより、図4に示すように、AC/DCユニット11は、5.9[V]のユニット出力をダイオード12に加える。
【0035】
一方、DC/DCステップアップコンバータ15は、電池14の電池出力を5.6[V]の直流電圧に変換して出力する。DC/DCステップアップコンバータ15が出力する5.6[V]の直流電圧は誤差が0〜−5[%]であり、AC/DCユニット11が出力する5.9[V]の直流電圧は誤差が0〜+5[%]に設定されている。これにより、DC/DCステップアップコンバータ15の出力はダイオード12の出力に比べて低いので、DC/DCステップアップコンバータ15は無負荷状態で待機している。つまり、ダイオード12はオンになって、5.6[V]のユニット出力を5.6V負荷210に加える。5.6[V]の直流電圧は、経路R1により、5.6V負荷210に加えられる。
【0036】
そして、AC/DCユニット11が5.9[V]のユニット出力を出し、かつ、電池14の電池出力も高いので、上記a4の条件と、上記b2の条件と、上記c2の条件とにより、制御部17は、FET16A〜16Cを、
FET16A・・・オン
FET16B・・・オフ
FET16C・・・オフ
の状態にする。FET16Aがオンになっているので、ダイオード12はユニット出力をDC/DCステップダウンコンバータ13に加える。DC/DCステップダウンコンバータ13は、5.6[V]のユニット出力を3.6[V]の直流電圧に変換し、この電圧をダイオード19に加える。ダイオード19はオンになって、3.3[V]の直流電圧を3.3V負荷220に加える。つまり、3.3[V]の直流電圧は、経路R2(図4)により、3.3V負荷220に加えられる。
【0037】
こうした状態のときに、商用電源201が停電になり、図10に示すように、停電直後の時間T1で、AC/DCユニット11からのユニット出力が低下し、ダイオード12がオフになる。これにより、図5に示すように、停電直後には、無負荷状態で待機していたDC/DCステップアップコンバータ15が5.6[V]の直流電圧を5.6V負荷210に加える。つまり、5.6[V]の直流電圧は経路R11により5.6V負荷210に加えられる。
【0038】
同時に、停電直後の時間T1(図10)で、AC/DCユニット11のユニット出力が低下したが、電池14が電流供給の開始直後であるので、電池出力が電池出力規定値V1を超えている。したがって、上記a5の条件により、制御部17は、FET16Aをオンにした状態を保つ。これにより、DC/DCステップアップコンバータ15からの直流電圧がDC/DCステップダウンコンバータ13に加えられる。DC/DCステップダウンコンバータ13は、ダイオード19を経て、3.3[V]の直流電圧を3.3V負荷220に加える。つまり、3.3[V]の直流電圧は、経路R12(図5)により3.3V負荷220に加えられる。
【0039】
また、停電直後の時間T1で、AC/DCユニット11からの5.9[V]のユニット出力が低下する。そして、ユニット出力(図10)が交流側規定値V2より低くなると、制御部17は、上記b1の条件により、FET16Bをオンにする。さらに、電池14が電流供給の開始直後であるので、コンバータ入力上限値V1を電池出力が超えている。したがって、制御部17は、上記c2の条件により、FET16Cをオフの状態に保つ。つまり、FET16A〜16Cは、停電直後に、
FET16A・・・オン
FET16B・・・オン
FET16C・・・オフ
の状態になる。
【0040】
停電してから時間T2(T1<T2)が経過し(図10)、電池14が電流供給を続けると、電池14の電池出力が低下して、コンバータ入力上限値V1以下になる。つまり、電池出力がDC/DCステップアップコンバータ18の入力の上限値以下になる。これにより、制御部17は、上記c1の条件により、FET16Cをオンにする。つまり、図6に示すように、停電してから時間T2が経過すると、FET16A〜16Cは、
FET16A・・・オン
FET16B・・・オン
FET16C・・・オン
の状態になる。DC/DCステップアップコンバータ18は、経路21により、電池14からの電池出力を3.3[V]の直流電圧に変換して出力する。一方、ダイオード19も経路12により、DC/DCステップダウンコンバータ13の直流電圧を3.3[V]の直流電圧にして出力する。ここで、ダイオード19からの直流電圧がDC/DCステップアップコンバータ18からの直流電圧に比べて高いと、ダイオード19からの直流電圧が3.3V負荷220に加えられる。そして、DC/DCステップアップコンバータ18は無負荷状態で待機している。また、その逆の場合も発生する。つまり、3.3V負荷220には、DC/DCステップダウンコンバータ13からの出力およびDC/DCステップアップコンバータ18からの出力の中の高い方が加えられる。
【0041】
停電してから時間T3(T2<T3)が経過し、さらに、電池14が電流供給を続けると、電池14の電池出力が低下して、電池出力(図10)が電池出力規定値V1以下になる。このとき、制御部17は、上記a6の条件により、FET16Aをオフにする。つまり、図7に示すように、制御部17は、FET16A〜16Cを、
FET16A・・・オフ
FET16B・・・オン
FET16C・・・オン
の状態にする。これにより、DC/DCステップアップコンバータ18からの3.3[V]の直流電圧が、経路31(図7)により、3.3V負荷220に加えられる。
【0042】
こうして、停電時に電池出力が電池出力規定値V1以下になると、電池14からの電力が利用される。このとき、5.6V負荷210に対してはDC/DCステップアップコンバータ15を経て5.6[V]の直流電圧が加えられる。また、3.3V負荷220に対しては、DC/DCステップアップコンバータ18を経て3.3[V]の直流電圧が加えられる。
【0043】
この後、商用電源201が復旧し、AC/DCユニット11がユニット出力を上昇していく。そして、図11に示すように、時間T11が経過すると、ユニット出力がゲート17Aのしきい値Vtを超える。制御部17は、上記a4の条件により、図8に示すように、FET16Aをオンにする。つまり、FET16A〜16Cは、
FET16A・・・オン
FET16B・・・オン
FET16C・・・オン
の状態になる。これにより、5.6V負荷210およびDC/DCステップダウンコンバータ13に対して、ダイオード12からのユニット出力およびDC/DCステップアップコンバータ15からの出力の中の高い方が加えられる。経路R21を経て5.6[V]の直流電圧がDC/DCステップダウンコンバータ13に加えられると、DC/DCステップダウンコンバータ13は、3.6[V]の直流電圧の生成を開始して、ダイオード19に出力する。このとき、3.3V負荷220には、ダイオード19からの出力およびDC/DCステップアップコンバータ18からの出力の中の高い方が加えられる。
【0044】
商用電源201が復旧して時間T12(図11)が経過すると、AC/DCユニット11がユニット出力をさらに上昇し、交流側規定値V2以上になる。制御部17は、上記b2の条件により、図9に示すように、FET16Bをオフにする。つまり、FET16A〜16Cは、
FET16A・・・オン
FET16B・・・オフ
FET16C・・・オン
の状態になる。これにより、DC/DCステップアップコンバータ18は出力を停止し、3.3V負荷220にはダイオード19からの出力が加えられる。そして、AC/DCユニット11の出力が5.9[V]に戻ると、ダイオード12からの出力が5.6V負荷210に加えられると共にDC/DCステップダウンコンバータ13に加えられる。
【0045】
この後、電池14の再充電などによって、電池14の電池出力が高くなると、上記c2の条件により、FET16Cがオフになる。つまり、FET16A〜16Cは、
FET16A・・・オン
FET16B・・・オフ
FET16C・・・オフ
の状態になり、商用電源201による直流電圧の通常の供給に戻る。
【0046】
こうして、この実施の形態によれば、商用電源201が断になって、3.3V負荷220に3.3[V]の直流電圧を供給するとき、電池14の電池出力は、DC/DCステップアップコンバータ18によって、3.3[V]に変換される。つまり、従来の電源装置100に比べて、1段のコンバータ(DC/DCステップアップコンバータ18)により、効率よく電池14から3.3[V]を生成することができる。この結果、電池14を用いた供給時間を延長することができる。この場合、電池14の電圧がコンバータ入力上限値V11より高い場合には、制御部17がFET16B、16Cを制御して、電池14の出力をDC/DCステップアップコンバータ18に加えないようにし、また、電池14の出力が電池出力規定値V12より高い場合には、DC/DCステップアップコンバータ15とDC/DCステップダウンコンバータ13を用いて、電池14を使用し、電池14の電圧の低下を行っている。
【0047】
(実施の形態2)
実施の形態1では、抵抗17A、17A、17B、17B、17C、17Cと、コンパレータ17A、17Cと、ゲート17Aとを組み合わせて制御部17を形成した。この実施の形態では、こうした回路の代わりに、例えばCPU、RAM、ROM、I/Oなどが1つのチップに組み込まれたICを用いて、制御部17を形成する。そして、
d1.AC/DCユニット11のユニット出力
d2.電池14の電池出力
d3.DC/DCステップアップコンバータ18の入力の上限値
を基にして、FET16A〜16Cのオン・オフを行うためのプログラムをROMに記憶する。
【0048】
こうした実施の形態により、制御部17を複数製作する場合に、多数の部品の取り付けを不要にし、プログラムを複写するだけでよい。また、電池出力規定値V1、コンバータ入力上限値V1や交流側規定値V2などの変更も、プログラムを変更するだけで、簡便に行うことができる。
【0049】
以上、この発明の実施の各形態を詳述してきたが、具体的な構成は各実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。例えば、各実施の形態では、5.6V負荷210と3.3V負荷220とに直流電圧を供給する場合を説明したが、負荷は特にこれに限定されることはない。例えば、電池14の直流電圧の範囲である2.2[V]から3.2[V]までの間で、DC/DCステップアップコンバータ15の出力、DC/DCステップアップコンバータ18の出力、およびDC/DCステップアップコンバータ15の出力を基にするDC/DCステップダウンコンバータ13の出力を得ることができれば、5.6V負荷210と3.3V負荷220とは任意である。
【0050】
また、各実施の形態では、電源装置を防災無線装置に用いた場合を例としているが、特にこれに限定されることはない。例えばデジタル回路とアナログ回路に対して直流電圧を別に供給する電子機器のように、各種の電子機器にこの発明を用いることが可能である。
【符号の説明】
【0051】
10 電源装置
11 AC/DCユニット(第1変換部)
12 ダイオード(第1変換部)
13 DC/DCステップダウンコンバータ(第3変換部)
14 電池
15 DC/DCステップアップコンバータ(第2変換部)
16A FET(第1スイッチ部)
16B、16C FET(第2スイッチ部)
17 制御部
18 DC/DCステップアップコンバータ(第4変換部)
19 ダイオード(第3変換部)
210 5.6V負荷(第1負荷)
220 3.3V負荷(第2負荷)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電源からの交流を第1変換部が、予備用の電池の電圧と異なる、直流の第1電圧に変換すると共に電池の電圧を第2変換部が第1電圧に変換し、2つの第1電圧の中でレベルが高い方を第1負荷に供給し、第1負荷に供給されている第1電圧を第3変換部が、電池の電圧とわずかに異なる直流の第2電圧に変換して第2負荷に供給する電源装置において、
電池の電圧を第2電圧に変換して第2負荷に供給する第4変換部と、
第3変換部の入力側に接続されている第1スイッチ部と、
電池と第4変換部との間に接続されている第2スイッチ部と、
交流電源が正常のときに、第1スイッチ部を操作して、第1電圧を第3変換部に供給すると共に、第2スイッチ部を操作して、第4変換部に対する電池の電圧の供給を停止し、交流電源が断のときに、第1スイッチ部を操作して、第3変換部に対する第1電圧の供給を停止すると共に、第2スイッチ部を操作して、電池の電圧を第4変換部に供給する制御部と、
を備えることを特徴とする電源装置。
【請求項2】
第1電圧は電池の電圧より高い直流の高電圧であり、第2電圧は電池の電圧よりわずかに高い直流の低電圧であることを特徴とする請求項1に記載の電源装置。
【請求項3】
制御部は、交流電源が断の場合に電池の電圧が所定値に比べて大きいとき、第1スイッチ部を操作して、第2変換部からの高いレベルの第1電圧を、第3変換部に供給すると共に第1スイッチ部を操作して、第4変換部に対する電池の電圧の供給を停止し、電池の電圧が所定値に比べて小さくなると、第3変換部に対する第1電圧の供給を停止すると共に電池の電圧を第4変換部に供給する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の電源装置。
【請求項4】
制御部は、交流電源が断の場合に電池の電圧が所定電圧から第4変換部の入力を規定する電圧までの範囲にあるとき、第3変換部および第4変換部の出力する第2電圧の中でレベルが高い方を第2負荷に出力する、
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−161864(P2010−161864A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−2002(P2009−2002)
【出願日】平成21年1月7日(2009.1.7)
【出願人】(000004330)日本無線株式会社 (1,186)
【Fターム(参考)】