説明

電源装置

【課題】電源装置において封止構造の簡素化を実現することができる技術を提供する。
【解決手段】電源装置1は、実装された抵抗器11、ダイオード12およびコンデンサ13を囲うように形成されたスリット15を有する基板10と、スリット15を貫通して抵抗器11、ダイオード12およびコンデンサ13を囲い隔壁となる隔壁部材30と、隔壁部材30に囲まれた充填領域Aに充填された充填材40とを備える。充填材40は、基板10の両面に形成された充填領域に充填されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の技術としては、例えば特許文献1がある。特許文献1に記載の部品実装基板の保護構造では、電子部品を基板上に実装し、電子部品を樹脂で被覆して保護するようにした部品実装基板の保護構造において、電子部品をエポキシ樹脂などで封止する部品群と、アクリル系樹脂などをコーティングする部品群とに分けて基板上にそれぞれ実装している。
【特許文献1】特開2002−271002号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、電源装置における封止構造の簡素化を実現することができる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
請求項1に記載の発明は、実装された電子部品を囲うように形成されたスリットを有する基板と、前記スリットを貫通して前記電子部品を囲い隔壁となる隔壁部材と、前記隔壁部材に囲まれた領域に充填された充填材とを備えることを特徴とする電源装置である。
【0005】
請求項2に記載の発明は、電子部品が実装された基板と、前記基板が貫通するスリットを有し、前記電子部品を囲い隔壁となる隔壁部材と、前記隔壁部材に囲まれた領域に充填された充填材とを備えることを特徴とする電源装置である。
【0006】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記隔壁部材が前記スリットを貫通して前記基板の両面から突出することにより、前記領域が前記基板の両面に形成され、前記充填材は前記基板の両面に形成された前記領域に充填されていることを特徴とする。
【0007】
請求項4に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、前記基板が前記スリットを貫通して、前記隔壁部材が前記基板の両面から突出することにより、前記領域が前記基板の両面に形成され、前記充填材は前記基板の両面に形成された前記領域に充填されていることを特徴とする。
【0008】
請求項5に記載の発明は、請求項1または3に記載の発明において、前記領域は前記基板の内側に配置されていることを特徴とする。
【0009】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載の発明において、前記領域は前記基板の縁に接していることを特徴とする。
【0010】
請求項7に記載の発明は、請求項1〜6のいずれか一項に記載の発明において、前記隔壁部材と前記基板を組み付けるためのブラケットまたは前記基板を収納するケースとを一体化したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、電源装置における封止構造の簡素化を実現することができる。
【0012】
請求項2に記載の発明によれば、電源装置における封止構造の簡素化を実現することができる。
【0013】
請求項3に記載の発明によれば、基板の他方の面側の絶縁性を確保できる。
【0014】
請求項4に記載の発明によれば、基板の他方の面側の絶縁性を確保できる。
【0015】
請求項5に記載の発明によれば、基板の回路レイアウトの設計自由度を向上させることができる。
【0016】
請求項6に記載の発明によれば、基板の回路レイアウトの設計自由度を向上させることができる。
【0017】
請求項7に記載の発明によれば、電源装置の組み立てを比較的容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
(1)第1の実施形態
(電源装置の概略構成)
以下、電源装置の一実施形態について図面を参照して説明する。図1は第1の実施形態にかかる電源装置を示す概略図であり、図2は電源装置を示す上面図であり、図3は電源装置を示す図2におけるX−X断面図である。
【0019】
電源装置1は、基板10と、ケース20と、隔壁部材30と、充填材40とで大略構成されている。電源装置1は、圧電効果により交流電圧を昇圧する圧電トランスを用いた電源装置である。電源装置1は、例えば、スキャナ機能、FAX機能、複写機能またはこれらの機能などを備えた画像形成装置などに備えられるものである。
【0020】
基板10は、合成樹脂により矩形板状に形成されている。基板10には、図1に示すように、電子部品の例として抵抗器11、ダイオード12およびコンデンサ13が実装されている。抵抗器11、ダイオード12およびコンデンサ13はそれぞれ、端子11a、11bおよび11cを有している。抵抗器11、ダイオード12およびコンデンサ13の実装方法の一例としては、図3に示すように、基板10の一方の面側から接続孔14に挿入した端子11a、11bおよび11cを基板10の他方の面側で半田付けして固定する。
【0021】
抵抗器11、ダイオード12およびコンデンサ13が配置されている部分は、基板10上のその他の部分に比べて、高圧となる場合がある。つまり、抵抗器11、ダイオード12およびコンデンサ13の本体がある基板10の一方の面側および半田付けした部分がある基板10の他方の面側で高圧となる場合がある。また、抵抗器11、ダイオード12およびコンデンサ13が高圧となる場合、抵抗器11、ダイオード12およびコンデンサ13が配置されている部分の周囲の基板10上に形成されたプリント配線も高圧となる。
【0022】
基板10には、四隅にねじSを貫通させるための図示省略した貫通孔が形成されている。基板10には、抵抗器11、ダイオード12およびコンデンサ13を囲うようにスリット15が形成されている。スリット15は、図1に示すように、基板10の内側で基板10の中央部分に形成されている。スリット15は、平面視でコ字状に形成されたスリット同士を互いに開口側を向き合わせて形成されている。これは、入力するおよび出力するための配線を一方のスリット15と他方のスリット15との間に形成するためである。したがって、スリット15とスリット15との隙間を1個形成してもよいし、2個以上形成してもよい。
【0023】
ケース20は、図1および図2に示すように、アルミニウムなどの金属やプラスチック樹脂等の絶縁材により有底箱状に形成されている。ケース20には、四隅に基板10を支持して固定するための支持部21が設けられている。支持部21には、ねじSが嵌る図示省略したねじ孔が形成されている。ケース20は、基板10を収納する。具体的には、支持部21が基板10を支持した状態で、ねじSにより基板10が支持部21に固定されている。
【0024】
隔壁部材30は、図1および図2に示すように、ケース20の内側でケース20の中央部分に、ケース20に一体化されて設けられている。具体的には、隔壁部材30は、溶接によりケース20に固定されている。隔壁部材30は、平面視でコ字状に形成された板部材を互いに開口側を向き合わせて設置されている。隔壁部材30は、基板10をケース20に収納する際、基板10のスリット15を貫通する。隔壁部材30は、スリット15を貫通して抵抗器11、ダイオード12およびコンデンサ13を囲い隔壁となる。つまり、隔壁部材30は、充填材40が充填される充填領域Aを形成する。また、隔壁部材30は、基板10をケース20に収納する際、ケース20に対する基板10の挿入位置を規定するガイドの役目となる。
【0025】
隔壁部材30は、図3に示すように、スリット15を貫通して基板10の両面から突出している。隔壁部材30が基板10の両面から突出することにより、充填領域Aが基板10の両面に形成されている。隔壁部材30は、基板10の一方の面側では隔壁部材30と隔壁部材30との隙間が形成されているが、基板10の他方の面側では密閉されている。
【0026】
なお、隔壁部材30がケース20に一体化されるその他の例としては、ケース20と一体成型される場合や、ねじや接着剤などによりケース20に固定される場合などがある。また、隔壁部材30は、平面視でコ字状に形成されている場合に限らず、平面視で半円形に形成されている場合など、電子部品を囲い隔壁となる形状であればよい。
【0027】
充填材40は、エポキシ樹脂やシリコーンゴムなどの樹脂材料により構成されている。充填材40は、図2および図3に示すように、絶縁性を強化するため充填領域Aに充填されている。つまり、充填材40は、基板10の両面に形成された充填領域Aに充填されている。充填材40は、液体の水に比べて粘度が高いため、隔壁部材30と隔壁部材30との隙間から流出しない。なお、隔壁部材30と隔壁部材30との隙間をシーリング材や板材などで塞いでもよい。
【0028】
充填材40は、抵抗器11、ダイオード12およびコンデンサ13の端子11a、11bおよび11cを含め、抵抗器11、ダイオード12およびコンデンサ13全体を覆っている。また、充填材40は、図3に示すように、基板10の一方の面および他方の面の両面を覆っている。つまり、充填材40は、抵抗器11、ダイオード12およびコンデンサ13全体のみならず、抵抗器11、ダイオード12およびコンデンサ13が配置されている部分の周囲の基板10上に形成されたプリント配線も覆っている。
【0029】
充填材40の充填方法の一例としては、基板10をケース20に収納した状態で、充填領域A側のスリット15の幅を広くして、基板10の一方の面側から基板10の他方の面側に充填材40を流出させて充填する。充填材40の充填方法のその他の一例としては、基板10をケース20に収納した状態で、基板10の充填領域A内に孔部を形成して、基板10の一方の面側から基板10の他方の面側に充填材40を流出させて充填する。充填材40の充填方法のその他の一例としては、隔壁部材30がケース20に固定されていない状態において、基板10に対して隔壁部材30を固定しておき、基板10の一方の面側に充填材40を充填して充填材40が固化した後、基板10の他方の面側に充填材40を充填する。なお、充填材40の充填方法としては、上記の充填方法に限られず、基板10の両面を覆うように充填材40を充填することができればよい。
【0030】
(第1の実施形態の優位性)
第1の実施形態の電源装置1によれば、電源装置1における封止構造の簡素化を実現することができる。また、第1の実施形態の電源装置1によれば、充填材40は基板10の両面に形成された充填領域Aに充填されているため、抵抗器11、ダイオード12およびコンデンサ13が配置されている部分の周囲の基板10上に形成されたプリント配線を覆うこととなり、基板10の他方の面側の絶縁性が確保される。
【0031】
また、第1の実施形態の電源装置1によれば、充填領域Aが基板10の内側に配置されているため、基板10の回路レイアウトの設計自由度が向上する。また、第1の実施形態の電源装置1によれば、隔壁部材30と基板10を収納するケース20とを一体化したため、隔壁部材30を一体化したケース20に基板10を収納して充填材40を充填すればよいので、電源装置1の組み立てが比較的容易に行われる。
【0032】
(2)第2の実施形態
第2の実施形態は、上記第1の実施形態の充填領域の位置を変更したものである。したがって、主に充填領域の位置について説明し、第1の実施形態と同様な構成の説明は省略する。図4は、第2の実施形態にかかる電源装置を示す上面図である。
【0033】
電源装置2の基板50には、図4に示すように、図示省略した抵抗器、ダイオードおよびコンデンサを囲うようにスリット55が形成されている。スリット55は、平面視でL字状に形成された一端が、基板50の縁50aに接続するように形成されている。つまり、スリット55は、基板50の隅に形成されている。
【0034】
隔壁部材60は、図4に示すように、平面視でL字状に形成された一端が、ケース20の側面に固定されている。隔壁部材60は、基板50をケース20に収納する際、基板50のスリット55を貫通する。隔壁部材30は、スリット55を貫通して図示省略した抵抗器、ダイオードおよびコンデンサを囲い隔壁となる。隔壁部材30は、ケース20の側面とで充填材40が充填される充填領域Bを形成する。つまり、充填領域Bは、基板50の縁50aに接している。
【0035】
第2の実施形態によれば、充填領域Bが基板50の縁50aに接しているため、基板50の端部にコンデンサなどの電子部品を配置する場合などにも対応することが可能となる。
【0036】
(3)第3の実施形態
第3の実施形態は、上記第1の実施形態の隔壁部材および充填領域の位置などを変更したものである。したがって、主に隔壁部材および充填領域の位置について説明し、第1の実施形態と同様な構成の説明は省略する。図5は第3の実施形態にかかる電源装置を示す斜視図であり、図6は第3の実施形態にかかる電源装置の変形例を示す斜視図である。
【0037】
電源装置3の基板70には、図5に示すように、図示省略した抵抗器、ダイオードおよびコンデンサの周囲にスリット75が形成されている。スリット75は、基板70の縁70aに間隔をあけ、かつ基板70の縁70aから基板70の内側に向けて2本形成されている。
【0038】
隔壁部材の一例としてケース80は、図5に示すように、有底箱状に形成されている。ケース80は、基板70のスリット75を貫通して装填されている。ケース80は、スリット75を貫通して図示省略した抵抗器、ダイオードおよびコンデンサを囲い隔壁となる。ケース80は、図示省略した充填材が充填される充填領域Cを形成する。充填領域Cは、基板70の縁70aに接している。充填材の充填方法の一例としては、重力方向においてケース80の底を下側にして充填材を充填する。
【0039】
第3の実施形態によれば、基板70の縁70aに沿った部分が閉塞されて外観が向上する。
【0040】
なお、図6に示すように、基板90にスリットを形成せずに、隔壁部材の一例としてケース100にスリット105を形成してもよい。この場合、スリット105は、基板60がスリット105を貫通して装填された際、ケース100の内側の空間を2等分するような位置に設けられている。ケース100は、基板90がスリット105を貫通して、基板10の両面から突出している。ケース100が基板90の両面から突出することにより、充填領域Cが基板90の両面に形成されている。図示省略した充填材は、基板90の両面に形成された充填領域Cに充填されている。
【0041】
この場合の充填材の充填方法の一例としては、基板90とケース100との隙間をシーリング材などにより補填し、重力方向においてケース100の底を下側にして充填材を充填する。この実施形態によれば、電源装置における封止構造の簡素化を実現することができる。
【0042】
(4)第4の実施形態
第4の実施形態は、上記第1の実施形態を変更したものである。したがって、第1の実施形態と同様な構成の説明は省略する。図7は、第4の実施形態にかかる電源装置を示す斜視図である。
【0043】
電源装置4は、装置やケースなどに基板10を取り付けるためのブラケット110を備えている。ブラケット110は、隔壁部材30と一体化されている。隔壁部材30とブラケット110が一体化される例としては、ブラケット110と一体成型される場合や、溶接、ねじや接着剤などによりブラケット110に固定される場合などがある。
【0044】
第4の実施形態の電源装置1によれば、隔壁部材30とブラケット110とを一体化したため、隔壁部材30を一体化したブラケット110に基板10を固定して充填材40を充填した後、基板10が固定されたブラケット110を装置などに固定すればよいので、電源装置4の組み立てが比較的容易に行われる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、スキャナ機能、FAX機能、複写機能またはこれらの機能を備えた画像形成装置などに利用することができる。さらには、樹脂剤による封止部を有する電源基板及び電源装置に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】第1の実施形態にかかる電源装置を示す概略図である。
【図2】電源装置を示す上面図である。
【図3】図3は電源装置を示す図2におけるX−X断面図である。
【図4】第2の実施形態にかかる電源装置を示す上面図である。
【図5】第3の実施形態にかかる電源装置を示す斜視図である。
【図6】第3の実施形態にかかる電源装置の変形例を示す斜視図である。
【図7】第4の実施形態にかかる電源装置を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0047】
1…電源装置、10…基板、11…抵抗器、12…ダイオード、13…コンデンサ、15…スリット、20…ケース、30…隔壁部材、40…充填材、80…ケース、90…基板、100…ケース、105…スリット、A…充填領域。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
実装された電子部品を囲うように形成されたスリットを有する基板と、
前記スリットを貫通して前記電子部品を囲い隔壁となる隔壁部材と、
前記隔壁部材に囲まれた領域に充填された充填材と
を備えることを特徴とする電源装置。
【請求項2】
電子部品が実装された基板と、
前記基板が貫通するスリットを有し、前記電子部品を囲い隔壁となる隔壁部材と、
前記隔壁部材に囲まれた領域に充填された充填材と
を備えることを特徴とする電源装置。
【請求項3】
前記隔壁部材が前記スリットを貫通して前記基板の両面から突出することにより、前記領域が前記基板の両面に形成され、
前記充填材は前記基板の両面に形成された前記領域に充填されていることを特徴とする請求項1に記載の電源装置。
【請求項4】
前記基板が前記スリットを貫通して、前記隔壁部材が前記基板の両面から突出することにより、前記領域が前記基板の両面に形成され、
前記充填材は前記基板の両面に形成された前記領域に充填されていることを特徴とする請求項2に記載の電源装置。
【請求項5】
前記領域は前記基板の内側に配置されていることを特徴とする請求項1または3に記載の電源装置。
【請求項6】
前記領域は前記基板の縁に接していることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の電源装置。
【請求項7】
前記隔壁部材と前記基板を組み付けるためのブラケットまたは前記基板を収納するケースとを一体化したことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の電源装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−166653(P2010−166653A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−5425(P2009−5425)
【出願日】平成21年1月14日(2009.1.14)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】