説明

電源装置

【課題】電源回路が並列接続された直流の大電流を供給する電源装置において、特定の電源回路への電流集中を抑え、電源回路のそれぞれの出力電流が均等にすることができる電源装置を提供することを目的としている。
【解決手段】電源装置は、電源回路部10及び電流バランス制御回路部20からなり、電源回路部10は、並列に接続された複数(n台)の電源回路1,2,・・・,nと、これら電源回路1,2,・・・,nの出力部の出力電流I1,I2,・・・,In及び並列出力部の負荷電流Ioを計測する電流検出回路CT1,CT2,・・・,CTn,CT0と、電流バランス制御回路部20からの制御信号GS1,GS2,・・・,GSnを入力する電源回路1,2,・・・,nの制御端子G1,G2,・・・,Gnと、により構成されている。これにより、電源回路のそれぞれの出力電流を均等にすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の電源回路が並列運転され、負荷に直流の大電流を高精度に供給するための電流バランス制御回路を有する電源装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
出力電流が大きく効率の優れた電源を得るためには、電源回路を多並列構成とする必要がある。しかしながら、電源回路を多並列構成として直流大電流を出力する電源装置では、各電源回路のインピーダンス特性を均等にしなければならず、例えば、電源回路に使用される半導体素子の特性を合わせることが必要である。また、半導体素子の特性を合わせても、微少なインピーダンスの差異により、多並列構成とした電源回路に流れる電流にアンバランスが生じる。さらに、各半導体素子の劣化速度が異なり、時間経過に伴い各電源回路に流れる電流のアンバランスが増大する。その結果、半導体素子の特性、インピーダンスのばらつきにより、1つの電源回路に電流が集中する可能性があり、更には、半導体素子が損傷される場合がある。
【0003】
この対策として、例えば、特許文献1に示す従来の電源装置およびその並列運転制御回路においては、各電源モジュールの出力電流をバランスさせる制御を行うため、各電源モジュールの出力電圧を均等化することで出力電流が均等化されるという考えに基づき、各電源モジュールの出力端に逆流防止ダイオードを設置し、抵抗を介して逆流防止ダイオードのアノード電圧を制御回路に入力し、各電源モジュールのアノード電圧が等しくなるように各ゲート幅を制御し、出力電流のバランス制御を実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−69814号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の電源装置およびその並列運転制御回路では、各電源モジュールの出力端にダイオードを設置し、ダイオードのアノード電圧を検出し電流バランス制御を行っているので、直流の大電流を出力する電源装置においては、容量的な理由から電源モジュールの出力端(大電流ライン)にダイオードを設置することが困難であり、かつ装置効率が低下するという問題があった。また、ダイオードの特性のばらつきにより、必ずしも出力電流が十分に均等化されないという問題もあった。
【0006】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、電源回路が並列接続された直流の大電流を供給する電源装置において、特定の電源回路への電流集中を抑え、電源回路のそれぞれの出力電流が均等にすることができる電源装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の電源装置は、並列接続されて負荷に電流を供給する複数の電源回路と、前記複数の電源回路のそれぞれの出力電流及び前記負荷電流を計測する電流計測回路と、予め目標負荷電流が設定され、この目標負荷電流を前記電源回路数で割った目標出力電流を算出するとともに、前記負荷電流と前記目標負荷電流との差電流及び前記目標出力電流と前記複数の電源回路のそれぞれの出力電流との差電流を算出し、これら差電流に基づいて、前記負荷電流が前記目標負荷電流に合致するよう、かつ、前記
複数の電源回路のそれぞれの出力電流が均等になるように制御する電流バランス制御回路と、を備えたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の電源装置によれば、電流バランス制御により各電源回路の出力電流を調整し、すべての出力電流が均等になるように制御することによって、特定の電源回路への電流集中を抑え、電源回路の半導体素子の劣化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施の形態1に係る電源装置の電源回路部の回路ブロック図である。
【図2】実施の形態1に係る電源装置の電流バランス制御回路部の回路ブロック図である。
【図3】実施の形態1における電流バランス制御のフロー図である。
【図4】実施の形態1に係る電源装置の出力電流を示す図である。
【図5】実施の形態2に係る電源装置の電流バランス制御回路部の回路ブロック図である。
【図6】実施の形態2における電流バランス制御のフロー図である。
【図7】実施の形態2に係る電源装置の出力電流を示す図である。
【図8】実施の形態3に係る電源装置の電流バランス制御回路部の回路ブロック図である。
【図9】実施の形態3に係る電源装置の出力電流を示す図である。
【図10】実施の形態4に係る電源装置の電流バランス制御回路部の回路ブロック図である。
【図11】実施の形態4に係る電源装置の出力電流を示す図である。
【図12】実施の形態5に係る電源装置の電流バランス制御回路部の回路ブロック図である。
【図13】実施の形態5に係る電源装置の他の実施態様を示す電流バランス制御回路部の回路ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態に係る電源装置について、図1〜図13を参照して説明する。
【0011】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る電源装置の電源回路部の回路ブロック図であり、図2は、実施の形態1に係る電源装置の電流バランス制御回路部の回路ブロック図であり、図3は、実施の形態1における電流バランス制御のフロー図であり、また、図4は、実施の形態1に係る電源装置の出力電流を示す図である。
【0012】
図1及び図2に示すように、電源装置は、電源回路部10及び電流バランス制御回路部20からなり、電源回路部10は、並列に接続された複数(n台)の電源回路1,2,・・・,nと、これら電源回路1,2,・・・,nの出力部の出力電流I1,I2,・・・,In及び並列出力部の負荷電流Ioを計測する電流検出回路CT1,CT2,・・・,CTn,CT0と、電流バランス制御回路部20からの制御信号GS1,GS2,・・・,GSnを入力する電源回路1,2,・・・,nの制御端子G1,G2,・・・,Gnと、により構成されている。
【0013】
また、電流バランス制御回路部20は、目標負荷電流Irefから目標出力電流Iref/nを算出する目標出力電流演算回路24と、電流検出回路CT1,CT2,・・・,CTnにより計測された電源回路1,2,・・・,nの出力電流I1,I2,・・・,I
nと目標出力電流Iref/nとの差電流ΔI1,ΔI2,・・・,ΔInを算出する差電流演算回路22と、この差電流ΔI1,ΔI2,・・・,ΔInを安定化させるPI制御回路23と、電流検出回路CT0により計測された電源回路1,2,・・・,nの並列出力(負荷電流)I0と目標負荷電流Irefとの差電流ΔI0を算出する差電流演算回路21と、この差電流ΔI0を安定化させるPI制御回路25と、PI制御回路22及びPI制御回路25から出力される差電流ΔIにより電流バランス制御された出力電流を指令する出力電流指令回路26と、三角波を発生させるキャリア波発生回路27と、出力電流指令回路26から出力される指令値に基づき三角波からPWMパルス波(矩形波)の制御信号GS1,GS2,・・・,GSnを出力する制御信号出力回路28と、により構成されている。
【0014】
次に、実施の形態1に係る電源装置の動作について、図1から図4を用いて説明する。電流検出回路CT1,CT2,・・・,CTnで計測された電源回路1,2,・・・,nの出力電流I1,I2,・・・,Inを均等にバランスさせるために、電流検出回路CT0で計測された負荷電流I0を目標負荷電流Irefに合わせるために、電流バランス制御回路部20が行う処理内容について、図3の電流バランス制御のフロー図を用いて説明する。
【0015】
まず、電流バランス制御回路部20にて、電流検出回路CT1,CT2,・・・,CTn,CT0により電源回路1,2,・・・,nの出力電流I1,I2,・・・,Inと負荷電流I0を計測する(S1)。次に、差電流演算回路21では、出力電流I1,I2,・・・,Inの目標出力電流Iref/nが算出され(S2)、また、差電流演算回路22では、目標出力電流Iref/nと計測された出力電流I1,I2,・・・,Inとが各々比較され、各出力電流をバランスさせるため目標出力電流Iref/nと出力電流I1,I2,・・・,Inとの差(差電流ΔI)ΔI1,ΔI2,・・・,ΔInが算出される(S3)。続いて、目標負荷電流Irefと実測値である負荷電流I0との差電流Δ0が算出される(S4)。また、差電流ΔIの急激な変動を抑えるためPI制御回路23にて安定化された後、出力電流指令回路26に出力される。同時に、差電流Δ0は、PI制御回路25にて安定化された後、出力電流指令回路26に出力される。さらに、出力電流指令回路26では、目標負荷電流Irefに合わせた負荷電流I0を流すため、差電流ΔI1,ΔI2,・・・,ΔInから差電流Δ0が各々減算処理され、出力電流I1,I2,・・・,Inの電流をバランスさせる出力電流指令値が算出され、制御信号出力回路28に出力される(S5)。最後に、制御信号出力回路28では、キャリア波発生回路27にて生成された三角波と出力電流指令回路26から出力された出力電流指令値が比較され、電源回路1,2,・・・,nを駆動させるためのPWMパルス波の制御信号GS1,GS2,・・・,GSnが生成され、制御端子G1,G2,・・・,Gnに出力される(S6)。以下、これが繰り返される。
【0016】
これにより、電源装置の電源回路1,2,・・・,nに電流バランス制御回路部20を組み込むことで、各電源回路1,2,・・・,nのインピーダンスに依存する出力電流I1,I2,・・・,Inのアンバランスが改善され、均等化される(図4)。図4(a)は、従来の電源装置の電流バランス制御による出力電流I1,I2,・・・,Inと負荷電流I0の時間変化を示す。図4(b)は、本実施の形態1の電源回路部10による出力電流I1,I2,・・・,Inと負荷電流I0の時間変化を示す。同じ負荷電流I0に対して、従来の電源装置では、ダイオードの特性のばらつきにより電源回路1,2,・・・,nの出力電流I1,I2,・・・,In間の調整がされず、アンバランスのままであるが、本実施の形態1の電源装置による電流バランス制御では、電源回路1,2,・・・,nの出力電流I1,I2,・・・,Inはそれぞれ目標出力電流Iref/nに調整されて同じ出力電流となり、電源回路間の電流のアンバランスは生じていない。
【0017】
なお、電流検出回路CT1,CT2,・・・,CTn,CT0としては、例えば、ホールCT(Hall current Transformer)がある。ホールCTの他、他のCTや電流計等も利用することができる。
【0018】
このように、実施の形態1に係る電源装置では、電流バランス制御により各電源回路の出力電流を調整し、すべての出力電流が均等になるように制御することによって、特定の電源回路への電流集中を抑え、電源回路の半導体素子の劣化を抑制することができるという顕著な効果がある。
【0019】
実施の形態2.
図5は、実施の形態2に係る電源装置の電流バランス制御回路部の回路ブロック図であり、図6は、実施の形態2における電流バランス制御のフロー図であり、また、図7は、実施の形態2に係る電源装置の出力電流を示す図である。
【0020】
図5に示す実施の形態2に係る電源装置の電流バランス制御回路部と図2に示す実施の形態1の電流バランス制御回路部の回路との違いは、電源回路1,2,・・・,nと負荷電流I0の電流検出回路CT1,CT2,・・・,CTn,CT0に、断線検出回路D1,D2,・・・,Dn,D0が設けられている点と、制御信号出力回路28の出力側に制御信号遮断回路29が設けられている点と、これら断線検出回路D1,D2,・・・,Dnの出力がOR回路30に接続されており、OR回路30の出力が制御信号遮断回路30に接続されている点である。他の構成要素は実施の形態1と同様であるので説明を省略する。
【0021】
次に、実施の形態2に係る電源装置の動作について、図5、図6及び図7を用いて説明する。実施の形態2では、電流検出回路が断線した場合に、電源回路の制御がうまくいかず、電源回路間の出力電流のバランスが崩れることを防ぐために電源装置を安全に遮断するものである。断線検出回路D1,D2,・・・,Dn,D0を有する電流バランス制御回路部20が行う処理内容について、図6の電流バランス制御のフロー図を用いて説明する。
【0022】
まず、電流バランス制御回路部20にて、電流検出回路CT1,CT2,・・・,CTn,CT0により電源回路1,2,・・・,nの出力電流I1,I2,・・・,Inと負荷電流I0を計測する(S1)。次に、断線検出回路D1,D2,・・・,Dn,D0により電流検出回路CT1,CT2,・・・,CTn,CT0のいずれかが断線しているかどうか判定する(S7)。断線が検出された場合には、すべての電源回路1,2,・・・,nの出力を停止させる(S8)。断線が検出されなかった場合には、実施の形態1と同様、S2からS6により、電源回路1,2,・・・,nの出力電流I1,I2,・・・,Inのアンバランスが改善され、均等化される。
【0023】
図5に示すように、特定の電源回路に出力電流が集中することを防止する目的で、断線検出回路D1,D2,・・・,Dn,D0(断線した場合、プルアップ電圧が出力される回路)が設けられている。上述したように、断線検出回路D1,D2,・・・,Dn,D0を追加することで、電流検出回路CT1,CT2,・・・,CTn,CT0の断線時には、OR回路30の出力がL電位(低電位)となり、制御信号遮断回路29により制御信号出力回路28の出力を遮断し、制御信号GS1,GS2,・・・,GSnのすべての出力を停止する。
【0024】
上記実施の形態1では、電流バランス制御回路部20により電源回路1,2,・・・,nの出力電流I1,I2,・・・,Inはそれぞれ目標出力電流Iref/nに調整されて同じ電流とされ、電源回路1,2,・・・,n間の出力電流I1,I2,・・・,In
にアンバランスを生じさせない場合について述べたが、電流検出回路CT1,CT2,・・・,CTn,CT0のいずれかが断線した場合(ここでは、電流検出回路CTnが断線した場合を例にとる)には、電流バランス制御回路部20により断線した電流検出回路CTnの電源回路nに出力電流Inを増加させるように制御が作用する。つまり、制御信号GSnのオン時間を長くしようと制御が働く。
【0025】
図7に、断線検出機構の有無による出力電流I1,I2,・・・,In及び負荷電流I0の時間変化を示す。図7(a)に示すように、電流検出回路CTnに断線が発生し、断線検出回路Dnがない場合には、断線した時間Tから電源回路1nの出力電流Inが増大し、他の電源回路1,2,・・・,n−1の出力電流I1,I2,・・・,In−1は減少する。すなわち、電流検出回路CTnが断線した電源回路nの半導体素子に電流が集中する結果となる。この結果、特定の電源回路へ電流が集中することによって、電源回路の半導体素子の劣化を引き起こすことになる。これに対して、図7(b)に示すように、電流検出回路CTnに断線検出回路Dnが設けられている場合には、電流検出回路CTnの断線を検出した時間Tで、すべての電源回路1,2,・・・,nが停止される。これにより、断線検出機構を設けておくことで、電流検出回路に断線が生じた場合に該当する電源回路に電流が集中する現象を回避することができる。
【0026】
このように、実施の形態2に係る電源装置では、電流検出回路に断線検出回路を設け、電流検出回路が断線した場合には、すべての電源回路の出力電流を遮断することにより、実施の形態1と同様の効果を有すると共に、電流検出回路の断線時に該当する電源回路の半導体素子に電流が集中する現象を回避して、電源回路の半導体素子の劣化を保護し、電源装置の信頼性を向上させることができるという顕著な効果がある。
【0027】
実施の形態3.
図8は、実施の形態3に係る電源装置の電流バランス制御回路部の回路ブロック図であり、また、図9は、実施の形態3に係る電源装置の出力電流を示す図である。
【0028】
図8に示す実施の形態3に係る電源装置の電流バランス制御回路部と図5に示す実施の形態2の電流バランス制御回路部の回路との違いは、OR回路30がなく、制御信号遮断回路29の替わりに電源回路1,2,・・・,n毎に制御信号遮断回路291,292,・・・,29nが設けられ、断線検出回路D1,D2,・・・,Dnのそれぞれの出力に接続されている点である。また、断線検出回路D0の出力は、すべての制御信号遮断回路291,292,・・・,29nに接続されている。他の構成要素は実施の形態2と同様であるので説明を省略する。
【0029】
次に、実施の形態3に係る電源装置の動作について、図8及び図9を用いて説明する。実施の形態3では、電流検出回路が断線した場合に、該当する電源回路を遮断し、他の電源回路で出力電流を補完し、負荷電流を一定に保つものである。
【0030】
まず、電流バランス制御回路部20にて、電流検出回路CT1,CT2,・・・,CTn,CT0により電源回路1,2,・・・,nの出力電流I1,I2,・・・,Inと負荷電流I0を計測する。続いて、断線検出回路D1,D2,・・・,Dn,D0により電流検出回路CT1,CT2,・・・,CTn,CT0のいずれかが断線しているかどうか判定する。断線が検出された場合には、制御信号遮断回路291,292,・・・,29nにより該当する電源回路1,2,・・・,nの出力を停止させるとともに、他の電源回路により出力電流を補完し、負荷電流I0を一定に保つ。断線が検出されなかった場合には、実施の形態1と同様、電源回路1,2,・・・,nの出力電流I1,I2,・・・,Inのアンバランスが改善され、均等化される。
【0031】
図8に示すように、特定の電源回路に出力電流が集中することを防止する目的で、断線検出回路D1,D2,・・・,Dn,D0(断線した場合、プルアップ電圧が出力される回路)が設けられている点は実施の形態2と同様であるが、断線検出回路D1,D2,・・・,Dn毎にそれぞれ制御信号遮断回路291,292,・・・,29nを設けることで、電流検出回路CT1,CT2,・・・,CTnのいずれかが断線した場合には、断線した電源回路1,2,・・・,nの該当する電源回路の制御端子G1,G2,・・・,Gnの制御信号GS1,GS2,・・・,GSnのみを遮断することができる。
【0032】
また、例えば、電源回路nの電流検出回路CTnが断線したとすると、該当する制御端子Gnの制御信号GSnのみを遮断した後、残りの電源回路1,2,・・・,n−1で負荷に出力を供給し、かつ、出力電流II,I2,・・・,In−1をバランスさせるために、目標出力電流演算回路24の割数をnからn−1に変更し、変更された目標負荷電流Iref’に合わせて制御信号GS1,GS2,・・・,GSn−1を出力する。以上の処理を組み込むことで、特定の電流検出回路が断線しても、残りの電源回路で補完し、負荷に出力電流を供給し、かつ、電流バランス制御を継続することができる。
【0033】
図9(a)に、電流検出回路CTnが断線した場合における出力電流I,2,・・・,n及び負荷電流I0の時間変化を示す。図9(a)に示すように、時間Tで電流検出回路CTnに断線が発生したとすると、出力電流Inが遮断され、それに伴って残りの電源回路1,2,・・・,n−1の出力電流I1,I2,・・・,In−1がバランスを採りながら増加し、電源回路nの出力電流Inの不足分が補完される。図9(b)に、制御端子G1,G2,・・・,Gn−1に入力される制御信号GS1,GS2,・・・,GSn−1を示す。また、図9(c)に、制御端子Gnの制御信号GSnを示す。これにより、特定の電流検出回路が断線しても該当する電源回路の半導体素子に電流が集中する現象を回避することができ、半導体素子の劣化を引き起こすことを阻止することができる。また、特定の電流検出回路が断線しても、継続して安定的に負荷に電力を供給することができる。
【0034】
このように、実施の形態3に係る電源装置では、電流検出回路に断線検出回路を設け、電流検出回路が断線した場合には、当該電源回路の出力電流を遮断し、残りの電源回路の出力電流により補完させることで、実施の形態1と同様の効果を有すると共に、特定の電流検出回路が断線しても、不足分を他の電源回路で補完して継続して安定的に負荷に電力を供給することができ、電源装置の信頼性を向上させることができるという顕著な効果がある。
【0035】
実施の形態4.
図10は、実施の形態4に係る電源装置の電流バランス制御回路部の回路ブロック図であり、また、図11は、実施の形態4に係る電源装置の出力電流を示す図である。
【0036】
図10に示す実施の形態4に係る電源装置の電流バランス制御回路部と図5に示す実施の形態2の電流バランス制御回路部の回路との違いは、電源回路1,2,・・・,nの電流検出回路CT1,CT2,・・・,CTnの断線検出回路D1,D2,・・・,Dnの替わりに、電流検出回路CT1,CT2,・・・,CTnと出力電流指令回路26の出力側との間に出力電流・指令信号比較回路C1、C2,・・・,Cnが設けられている点と、これら出力電流・指令信号比較回路C1、C2,・・・,Cnの出力がOR回路30に接続されており、OR回路30の制御信号遮断回路29に接続されている点である。他の構成要素は実施の形態2と同様であるので説明を省略する。
【0037】
次に、実施の形態4における電源装置の動作について、図10及び図11を用いて説明する。実施の形態4では、実施の形態2の断線検出回路の替わりに出力電流・指令信号比
較回路を用い、電流検出回路が断線した場合に、電源回路の制御がうまくいかず、電源回路間の出力電流のバランスが崩れることを防ぐために電源装置を安全に遮断するものである。
【0038】
図5で示す実施の形態2では、特定の電源回路に出力電流が集中することを防止する目的で、断線検出機能として電流検出回路の出力側に断線検出回路が設けられていたが、図10に示すように、実施の形態4では、断線検出回路の替わりに出力電流・指令信号比較回路が設けられている。これは、電流検出回路CT1,CT2,・・・,CTnにより検出された電源回路1,2,・・・,nの出力電流Im(Im1,Im2,・・・,Imn)と指令出力電流Ig(制御出力電流指令信号のパルス幅から換算、Ig1,Ig2,・・・,Ign)とを比較することで電流検出回路CT1,CT2,・・・,CTnの断線を検出するものである。図11(a)に、出力電流I1,I2,・・・,Inを、図11(b)に、指令出力電流Igと出力電流Imを、図11(c)に指令出力電流Igと出力電流Imの差電流ΔIcの時間変化を示す。
【0039】
例えば、電流検出回路CTnが断線した場合に電源回路nの指令出力電流Ignの制御信号のPWMパルス幅が増加するのに対して、計測された出力電流Imnが変化しないことを利用し、双方の差電流ΔIc(=Ign―Imn)から断線を検出するもので、差電流ΔIcが所定の上限値ΔImaxを超えた場合に電流検出回路CTnが断線したものと判定する(図11(c))。このように、出力電流・指令信号比較回路C1、C2,・・・,Cnで電流検出回路CT1,CT2,・・・,CTnのいずれかの断線が検出されると、OR回路30の出力がL電位となり、制御信号遮断回路29により制御信号GS1,GS2,・・・,GSnのすべての出力を停止する。これにより、電源回路1,2,・・・,nのすべての出力電流が停止される。これにより、実施の形態2と同様に電流検出回路の断線を検出することができる。
【0040】
実施の形態2と同様、図11(a)に示すように、電流検出回路CT1,CT2,・・・,CTnに出力電流・指令信号比較回路C1、C2,・・・,Cnによる断線検出機能がない場合には、例えば、電流検出回路CTnで断線が発生したとすると、断線した時間T1から電源回路nの出力電流Inが増大し、他の電源回路1,2,・・・,n−1の出力電流I1,I2,・・・,In−1は減少する。すなわち、断線した電流検出回路CTnの電源回路nの半導体素子に電流が集中する結果となる。この結果、特定の電源回路へ電流が集中することによって、電源回路の半導体素子の劣化を引き起こすことになる。これに対して、図11(c)に示すように、電流検出回路CTnに出力電流・指令信号比較回路Cnが設けられている場合には、電流検出回路CTnの断線を検出した時間T2で、すべての出力電流I1,I2,・・・,Inが遮断される。従って、電流検出回路に断線検出機能として出力電流・指令信号比較回路を設けることにより、電流検出回路に断線が発生しても、1つの電源回路に電流が集中する現象を回避することができる。
【0041】
このように、実施の形態4に係る電源装置では、出力電流・指令信号比較回路による電流検出回路の断線検出機能を設け、電流検出回路が断線した場合には、すべての電源回路の出力電流を遮断することにより、実施の形態1と同様の効果を有すると共に、電流検出回路の断線時に該当する電源回路の半導体素子に電流が集中する現象を回避して、電源回路の半導体素子の劣化を保護し、電源装置の信頼性を向上させることができるという顕著な効果がある。
【0042】
実施の形態5.
図12は、実施の形態5に係る電源装置の電流バランス制御回路部の回路ブロック図である。
【0043】
図12に示す実施の形態5に係る電源装置の電流バランス制御回路部と図5に示す実施の形態2の電流バランス制御回路部の回路との違いは、電源回路1,2,・・・,nと負荷電流I0の電流検出回路CT1,CT2,・・・,CTn,CT0に断線検出回路D1,D2,・・・,Dn,D0の替わりに過電流検出回路R1,R2,・・・,Rn,R0が設けられており、これら断線検出回路D1,D2,・・・,Dn,D0の出力がOR回路30に接続されており、OR回路30の制御信号遮断回路29に接続されている点である。他の構成要素は実施の形態2と同様であるので説明を省略する。
【0044】
次に、実施の形態5に係る電源装置の動作について、図12を用いて説明する。実施の形態5では、電源回路に不具合が発生し、該当する電源回路の出力電流が増大し、設定された上限を超えた場合に、電源回路の制御がうまくいかず、電源回路間の出力電流のバランスが崩れることを防ぐために電源装置を安全に遮断するものである。
【0045】
電流検出回路CT1,CT2,・・・,CTn,CT0に接続された過電流検出回路R1,R2,・・・,Rn,R0により電源回路1,2,・・・,nのいずれかの出力電流I1,I2,・・・,Inが増大しているかどうかを検出し、予め設定された出力電流を超える場合には、該当する電源回路に不具合が発生しているものと判定する。不具合が発生していると判定された場合には、すべての電源回路1,2,・・・,nの出力を停止させる。不具合が検出されない場合には、実施の形態1と同様、電源回路1,2,・・・,nの出力電流I1,I2,・・・,Inのアンバランスが改善され、均等化される。
【0046】
このように、実施の形態5に係る電源装置では、電流検出回路に過電流検出機能を設け、電源回路に不具合が発生した場合には、すべての電源回路の出力電流を遮断することにより、実施の形態1と同様の効果を有すると共に、不具合が発生した電源回路の半導体素子に電流が集中する現象を回避して、電源回路の半導体素子の劣化を保護し、電源装置の信頼性を向上させることができるという顕著な効果がある。
【0047】
また、図13は、実施の形態5に係る電源装置の他の実施態様を示す電流バランス制御回路部の回路ブロック図である。この実施態様では、電流検出回路CT1,CT2,・・・,CTn,CT0に断線検出回路D1,D2,・・・,Dn,D0及び過電流検出回路R1,R2,・・・,Rn,R0が接続されたもので、電流検出回路CT1,CT2,・・・,CTn,CT0に断線検出と電源回路1,2,・・・,nの不具合検出の両方の機能を有するものである。さらに、実施の形態3と同様、制御信号遮断回路を電源回路毎に設けることにより、電流検出回路が断線したり、電源回路に不具合が発生したりした場合に、該当する電源回路を遮断し、他の電源回路で出力電流を補完し、負荷電流を一定に保つこともできる。
【0048】
なお、図において、同一符号は、同一または相当部分を示す。
【符号の説明】
【0049】
1,2,・・・,n 電源回路
10 電源回路部
20 電流バランス制御回路部
21,22 差電流演算回路
23,25 PI制御回路
26 出力電流指令回路
27 キャリア波発生回路
28 制御信号出力回路
29 制御信号遮断回路
30 OR回路
C1,C2,・・・,Cn 出力電流・指令信号比較回路
CT0,CT1,CT2,・・・,CTn 電流検出回路
D0,D1,D2,・・・,Dn 断線検出回路
G1,G2,・・・,Gn 制御端子
GS1,GS2,・・・,GSn 制御信号
I1,I2,・・・,In 出力電流
R0,R1,R2,・・・,Rn 過電流検出回路



【特許請求の範囲】
【請求項1】
並列接続されて負荷に電流を供給する複数の電源回路と、
前記複数の電源回路のそれぞれの出力電流及び前記負荷電流を計測する電流計測回路と、
予め目標負荷電流が設定され、この目標負荷電流を前記電源回路数で割った目標出力電流を算出するとともに、前記負荷電流と前記目標負荷電流との差電流及び前記目標出力電流と前記複数の電源回路のそれぞれの出力電流との差電流を算出し、これら差電流に基づいて、前記負荷電流が前記目標負荷電流に合致するよう、かつ、前記複数の電源回路のそれぞれの出力電流が均等になるように制御する電流バランス制御回路と、を備えたことを特徴とする電源装置。
【請求項2】
前記電流計測回路のそれぞれには、前記電流計測回路が断線しているかどうかを判定する断線検出手段が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の電源装置。
【請求項3】
前記断線検出手段は、前記電源回路の出力電流と前記電流バランス制御回路から出される指令出力電流とを比較する比較回路で構成されるものであり、前記指令出力電流に対して、前記出力電流が応答しない場合には、当該電流計測回路が断線していると判定するものであることを特徴とする請求項2に記載の電源装置。
【請求項4】
前記電流計測回路のそれぞれには、前記電源回路の出力電流が所定の電流を超えているかどうかを判定する過電流検出手段が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の電源装置。
【請求項5】
前記電流計測回路のいずれかにおいて、断線もしくは過電流が検出された場合には、すべての前記電源回路の出力を遮断することを特徴とする請求項2から請求項4のいずれか1項に記載の電源装置。
【請求項6】
前記電流計測回路のいずれかにおいて、断線もしくは過電流が検知された場合には、該当する前記電源回路のみ出力を遮断し、前記断線もしくは過電流が検出された電流計測回路に該当する前記電源回路の出力電流分を他の前記電源回路の出力電流にて補完させることを特徴とする請求項2から請求項4のいずれか1項に記載の電源装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−244866(P2012−244866A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−115527(P2011−115527)
【出願日】平成23年5月24日(2011.5.24)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】