電界放出デバイス用炭素膜
【課題】平形カソードの製造に利用される、特定の物理的特性を示す電界放出膜を提供すること。
【解決手段】電界放出カソードとして用いられる炭素膜(703)は、基板(803)上の薄い炭素膜の層である。炭素膜は、25〜165cm-1の半値全幅値(FWHM)を有する、1578cm-1〜1620cm-1の範囲のUVラマンバンドを有する。炭素膜は、300ナノメートルより薄くてもよい。膜が堆積される基板は、導電性、非導電性のどちらでもよい。非導電基板の場合、基板は、連続的な導電層または導電性材料の緻密な網構造のいずれかでコーティングされ得る。
【解決手段】電界放出カソードとして用いられる炭素膜(703)は、基板(803)上の薄い炭素膜の層である。炭素膜は、25〜165cm-1の半値全幅値(FWHM)を有する、1578cm-1〜1620cm-1の範囲のUVラマンバンドを有する。炭素膜は、300ナノメートルより薄くてもよい。膜が堆積される基板は、導電性、非導電性のどちらでもよい。非導電基板の場合、基板は、連続的な導電層または導電性材料の緻密な網構造のいずれかでコーティングされ得る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(技術分野)
本発明は、電界放出デバイス一般に関し、特に特定の性質を示す炭素放出膜に関連する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
電界放出デバイスは、製造の単純さが望まれるフラットパネルディスプレーおよびその他のタイプのディスプレーシステムなどの、より単純かつ効率的な電界放出デバイスの実現を約束するものである。平形カソードを利用する電界放出デバイスは、マイクロチップ型の構造を必要とするカソードよりも好まれる。従って、当該技術分野において、上記のような平形カソードにおける使用に実用的である、より良好でかつ効率的な電界放出材が必要とされている。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0003】
(発明の要旨)
本発明は、平形カソードの製造に利用される、特定の物理的特性を示す電界放出膜を提供する。244ナノメートル(「nm」)かつ2〜7ミリワット(「mW」)の励起ソースを用いた場合、1100〜1850cm-1以内の波数において、本炭素膜は、1578〜1620cm-1の範囲で25〜165cm-1の半値全幅値(「FWHM」)を有する明確な紫外線(「UV」)ラマンバンドを有している。さらに、1318〜1340cm-1の範囲で、少なくとも18cm-1のFWHMを有するより小規模の線もあり得る。また、1360〜1420cm-1の間の広帯域バンド(FWHM>180cm-1)が存在する場合もある。この広帯域バンドは、独立したバンド、あるいは1580cm-1付近の励起線の肩部(shoulder)のいずれかとして出現し得る。可視ラマンにおいて、これらの膜は、炭素D/G対バンドをそれぞれ1350cm-1および1580cm-1周辺で示す。
【0004】
炭素膜は、300ナノメートルより薄くてもよい。膜が堆積される基板は、導電性、非導電性のどちらでもよい。非導電基板の場合、基板は、連続的な導電層または導電性材料の緻密な網構造のいずれかでコーティングされ得る。
【0005】
炭素層は、化学蒸着、物理蒸着、電気分解、印刷あるいは塗装により、堆積可能である。膜は、連続的あるいは非連続的であり得、それぞれ300ナノメートル未満のサイズを有する粒子の緻密なアレイを有し得る。
【0006】
以下に記す発明の詳細がより理解されやすいように、本発明における特徴および技術的利点の大まかな概要を上記に略述した。本発明における請求の範囲の主題を成す、本発明の更なる特徴および利点を以下に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
(発明の詳細な説明)
本発明およびその利点がより十分に理解されるように、以下、添付の図面を参照して説明する。
【0008】
本発明が完全に理解されるため、以下、多くの詳細な説明を述べる。しかしながら、こ
のような具体的な詳細なしに本発明が実践され得ることは、当業者に明らかであろう。その他の場合、本発明を不必要に不明瞭なものとしないように、周知の回路はブロック図の形で示されている。大部分において、タイミングの考慮などに関する詳細は、当該分野における通常の技術を有する者の理解の範囲内であり、また本発明を完全に理解する上でそのような詳細な説明が必要でない限り、省略されている。
【0009】
図7に、本発明に従い、炭素膜703を用いて製造した電界放出デバイスを示している。基板701上に導電層702が堆積され、その上に炭素層703が堆積されている。アノードは、ガラス基板であり得る基板704と、インジウム酸化スズであり得る導電層705と、炭素層703から放出される電子を受けとる蛍光体層706とを含んでいる。電子は、アノードおよびカソード間の適切な電界に反応して、層703から放出される。図7のデバイスは、ダイオード構造として示されているが、1つ以上のグリッドが含まれ得る。このデバイスは、電界放出ランプ、あるいはマトリックスアドレスが可能なカラーディスプレイを製造する際に使用し得る。このような構造のさらなる説明については、米国特許第5,449,970号および第5,548,185号を参照されたい。これらは、本明細書において、参考のために援用する。
【0010】
図8において、炭素層703は、熱いフィラメントによって補助された化学蒸着(「CVD」)プロセスを用いて堆積し得る。基板803(必要であればこの上に導電層702が堆積される)は、CVD反応器802中のホルダー801上に載置される。水素ガス805が、反応器802におよそ10分間未満、流入される。次に、メタンのパーセンテージが50%未満である、水素805およびメタン806の混合物が、反応器802の中に1時間未満、流入される。上記工程におけるよりもメタンのパーセンテージが低い、別の水素805およびメタン806の混合物が、反応器802に2時間未満、流入される。そして、CVD反応器802内において、水素805のフローが15分未満行われる。
【0011】
少量の酸素、窒素、あるいはホウ素ドーパントが、上記ガス流に含まれてもよい。
【0012】
フィラメント804の温度は、1600℃〜2400℃の範囲に設定され、基板803の温度は、600℃〜1000℃の間に設定されている。堆積圧力は、5〜300torrの間である。
【0013】
このプロセスから得られる炭素膜は、従来技術のダイアモンド状の炭素あるいはCVDダイアモンド膜に比べて、優れた放出特性を示す。上記の方法で堆積された3つのサンプルの炭素膜上において、UVラマンスペクトルが測定された。244nmおよび2〜7mWの励起ソースを用い、1100cm-1〜1850cm-1の周波数内で、上記の方法で製造された炭素膜は、1578cm-1〜1620cm-1の範囲で、25〜165cm-1のFWHMを有する明確なUVラマンバンドを有する。また、1318〜1340cm-1の範囲で、18cm-1より大きいFWHMを有する、より小規模の線も存在し得る。1360〜1410cm-1の間には、180cm-1よりも大きいFWHMを有するバンドも時々存在する。
【0014】
上記説明の炭素層は、熱いフィラメントで補助されたCVDプロセスにて堆積されたが、炭素層は、物理的蒸着、電気分解、印刷あるいは塗装にて堆積し得る。炭素膜は、連続的あるいは非連続的であり得、各々300ナノメートル未満のサイズである粒子の緻密なアレイを有し得る。
【0015】
以上のように、上記説明の方法にて、炭素膜の3つのサンプルが堆積された。図1に示される第1の例におけるラマンスペクトルは、1580.8cm-1において、FWHMが89.7cm-1の明確なUVラマンバンドを有する。また、1329.7cm-1において
、FWHMが24.6cm-1の、ずっと小規模な線がある。
【0016】
第2の炭素層サンプルのUVラマンスペクトルをテストした。これを図2に示す。この例は、1583.4cm-1において、FWHMが45.3cm-1のUVラマンバンドを示した。
【0017】
第3の炭素層サンプルのUVラマンスペクトルは、図3に示すように測定された。この炭素層は、1612.2cm-1において、FWHMが77cm-1の明確なUVラマンバンドを有していた。この膜は、1408cm-1の肩部も示した。
【0018】
図4〜6は、図1〜3に示される3つの炭素膜サンプルのそれぞれの蛍光体スクリーンイメージの写真である。これらのスクリーンイメージは、図7の電界放出デバイスと同様な電界放出デバイスから得られたものである。図1のラマンスペクトルに対応する図4の蛍光体スクリーンイメージは、5.3ボルト/マイクロメーターの電界によって得られたものである。
【0019】
図2のUVラマンスペクトルに対応する図5の蛍光体スクリーンイメージは、6.3ボルト/マイクロメーターの電界によって得られたものである。
【0020】
図3のUVラマンスペクトルに対応する図6の蛍光体スクリーンイメージは、5.7ボルト/マイクロメーターの電界によって得られたものである。
【0021】
本発明の炭素膜は薄く(300ナノメートル未満)、アモルフォス、非常に無秩序な黒鉛状炭素、ならびにいくらかの不規則なsp3結合炭素および秩序立ったsp3結合炭素の、独特な組み合わせからなっている。これらの膜における秩序立ったsp3結合炭素(す
なわち、ダイアモンド構造)の成分あるいは量は非常に小さいため、UVラマンスペクトルは従来の可視ラマンスペクトルに比べ25倍もダイアモンド/黒鉛状炭素比に対して敏感であるという事実にもかかわらず、一般的な機器動作条件において、UVラマンスペクトル中の1332cm-1周辺の明白なラマン励起線はほとんどの場合出現しないか、あるいは、出現したとしてもsp2結合炭素のそれよりも小規模である(図1〜3参照)。
【0022】
秩序立ったsp3の結合炭素の領域サイズは、そのラマン線のFWHMおよび周波数偏
移から判断すると、おそらく60オングストローム未満である(図1参照)。これらの膜におけるsp3結合、特にアモルフォスsp3の存在は、周波数の上方偏移および/または図3に示されるような、1580cm-1周辺の典型的なsp3炭素励起線の低周波側の強
い肩部から、推測されることが多い。この肩部は、1580cm-1線がそれほど強くない場合、1360〜1410cm-1の範囲で180cm-1より大きいFWHMを有する広帯域バンドとして時々出現し得る。いくつかの膜においては、若干の上方周波数偏移および幅広化が見られるほぼ典型的な黒鉛状炭素線が出現したものもあった。これは、膜中にsp3結合炭素の成分がほとんどなく、黒鉛状炭素構造がより多く存在することを示してい
る(図2参照)。
【0023】
図10〜12は、図1〜3をそれぞれ参照して説明した3つのサンプル上における、可視ラマンスペクトルである。可視ラマンスペクトルは、514.5ナノメートル、10ミリワットの励起ソースによって得られた。これらの3つのラマンスペクトルは、およそ1350cm-1(Dピーク)および1580cm-1(Gピーク)において、D/Gペアピークを明らかに示している。典型的には、本発明の炭素膜のDピークは、1340cm-1〜1380cm-1の間であり、Gピークは1578cm-1〜1620cm-1の間である。
【0024】
電界放出アプリケーションに適していると報告されている従来の炭素膜には、CVDあ
るいは欠陥補強(defect enriched)CVDダイアモンド膜(窒素またはホウ素ドープあるいはイオン注入されたダイアモンド膜など)および、主にsp3結合を
有するダイアモンド状炭素(DLC)膜がある。大部分がダイアモンド結合炭素からなり、領域サイズが60オングストロームよりもずっと大きいCVDあるいは欠陥CVDダイアモンド膜は、典型的には、1332cm-1近傍においてFWHMが18cm-1未満である主ダイアモンド励起線を示し、そして1580cm-1近傍において、170cm-1より大きいFWHMを有し、広帯域であるがしばしばより小規模であるバンドを、UVラマンスペクトル中において示す。きめの細かいCVDダイアモンド膜が、可視ラマン中で時々1332cm-1近傍において微弱あるいはほとんど視認できない偏移をしばしば示すことを示す報告がされてきたが、ダイアモンドおよび黒鉛状炭素率に対するUVラマンの超感受性により、微粒子状CVDダイアモンド膜のUVラマンは、強く鋭いダイアモンド線を示すことに、留意されたい。すなわち、本発明でクレームされる膜は、ダイアモンド構造がより少ない。ほとんどの場合、この膜の存在は、UVラマンによってでさえまったく検出されない。
【0025】
DLC膜は、sp2とsp3結合が混合したアモルフォス炭素である。DLC膜を作製する方法に依存して、膜中のsp3/sp2結合比は、大部分sp2の状態から大部分sp3の状態へと大幅に変化し得る。長い間広く受け入れられている仮説として、これらの膜の中にsp3クラスターが存在し、そしてこれらのクラスターはダイアモンドに類似している
ため、負の電子親和力を有する、とされている。上記の仮説に基づいて、sp3結合を主
とするDLC膜が、電界放出アプリケーションに適するとされてきた。これらのDLC膜のUVラマンスペクトルも、1580〜1620cm-1において励起線を示すが、それらの可視ラマンは1580cm-1線(Gバンド)および1350cm-1線(Dバンド)のいずれをも示さない。むしろ、はっきりとした非対称性と1510〜1600cm-1の間に位置する広帯域バンドを有する。さらに、UVラマンにおいてでさえ、これらのsp3結
合を主とするDLC膜は常に、およそ1150cm-1にピークを有する別の広帯域バンドあるいは肩部を有し、これらの1580cm-1線のFWHMは、しばしば165cm-1よりも大きい。この1150cm-1における第2のバンドは、従来技術のDLC膜と本発明の炭素膜との間に、さらなる相違点を提供するものである。図9はDLC膜のラマンスペクトルを示しており、可視ラマン中1510〜1600cm-1の間に位置する非対称バンドが示され、このピークは、フォトンエネルギーがUVラマンスペクトルに増大されるにつれ、1600cm-1に偏移している。さらなる議論は、本明細書において参考のために援用する以下の文献に見出される:Resonant Raman Scattering of Amorphous Carbon and Polycrystalline Diamond Films、J. Wagner、 M. Ramsteiner、 Ch. WildおよびP. Koidl、Physical Review B、1989、July 15、Vol.40、pp.1817;Ultraviolet Raman Spectroscopy Characterizes Chemical Vapor Deposition Diamond Film Growth and Oxidation、Richard W. Bornettら、Journal
of Applied Physics、77(11)、June、1995、pp.5996;そして、UV Studies of Tetrahedral Bonding in Diamond−Like Amorphous Carbon、V. L. Merkuluvら、Physical Review Letters、June、1997、pp.4869。
【0026】
上記説明において、UVラマンスペクトルにおける、ピーク位置、線幅、線形状およびそれらの強度比は、本炭素膜の結合構造について特徴的である。本発明において示される、周波数およびFWHM範囲、ならびに線形状および強度比は、従来技術において電界エミッターとして利用されていない、秩序的あるいは無秩序のsp2およびsp3の結合構造
を持つ炭素膜群を表すものである。図1〜6は、優れた電界放出特性を示した、この炭素膜群のうち3つの例を示すものである。
【0027】
開示した特定のラマンスペクトルを有する本発明の炭素膜の利点としては、2ボルト/マイクロメートル未満の抽出電界(extraction electric field)で放出が可能な膜であること、10ボルト/マイクロメートルにおいて少なくとも104部位/センチメートル2の放出部位密度を有する炭素膜であること、ならびに100ミリアンペア/センチメートル2以上の電流密度が提供可能な炭素膜であることが含まれる
。この放出特性により、これらの炭素膜は、非常に均一な高性能電界放出電子デバイス用として特に望ましい。ここで強調しておきたいのは、従来技術によるいくつかのダイアモンドまたはDLC膜のなかには、同等の電界放出が可能、あるいは同等の電流密度をもたらすことが可能とするものもあるとの報告がこれまであったとしても、それらの膜の放出部位密度に関する報告は一度もないことである。実際、小数の放出部位が示されるのみのことがしばしばであり、放出電流密度の報告は、それらのわずかな部位から集めた電流をもとに推測されたものである。本明細書において開示する炭素膜は、表面全体に均一に放出を行う。
【0028】
本発明およびその利点を詳細に説明したが、様々な変更、置換および改変が、特許請求の範囲に定義する本発明の精神および範囲を逸脱することなく行われるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】図1は、本発明のカソードの1例のUVラマンスペクトルである。
【図2】図2は、本発明のカソードの別の例のUVラマンスペクトルである。
【図3】図3は、本発明のカソードの1例の別のUVラマンスペクトルである。
【図4】図4は、図1にUVラマンスペクトルを図示した放出炭素膜の、蛍光体スクリーンイメージである。
【図5】図5は、図2にUVラマンスペクトルを図示した放出炭素膜の、蛍光体スクリーンイメージである。
【図6】図6は、図3にUVラマンスペクトルを図示した放出炭素膜の、蛍光体スクリーンイメージである。
【図7】図7は、本発明を実施した電界放出デバイスである。
【図8】図8は、本発明の炭素膜を堆積するための装置である。
【図9】図9は、従来技術のDLC膜のラマンスペクトルのグラフである。
【図10】図10は、図1の示すカソード例の、可視ラマンスペクトルである。
【図11】図11は、図2の示すカソード例の、可視ラマンスペクトルである。
【図12】図12は、図3の示すカソード例の、可視ラマンスペクトルである。
【技術分野】
【0001】
(技術分野)
本発明は、電界放出デバイス一般に関し、特に特定の性質を示す炭素放出膜に関連する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
電界放出デバイスは、製造の単純さが望まれるフラットパネルディスプレーおよびその他のタイプのディスプレーシステムなどの、より単純かつ効率的な電界放出デバイスの実現を約束するものである。平形カソードを利用する電界放出デバイスは、マイクロチップ型の構造を必要とするカソードよりも好まれる。従って、当該技術分野において、上記のような平形カソードにおける使用に実用的である、より良好でかつ効率的な電界放出材が必要とされている。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0003】
(発明の要旨)
本発明は、平形カソードの製造に利用される、特定の物理的特性を示す電界放出膜を提供する。244ナノメートル(「nm」)かつ2〜7ミリワット(「mW」)の励起ソースを用いた場合、1100〜1850cm-1以内の波数において、本炭素膜は、1578〜1620cm-1の範囲で25〜165cm-1の半値全幅値(「FWHM」)を有する明確な紫外線(「UV」)ラマンバンドを有している。さらに、1318〜1340cm-1の範囲で、少なくとも18cm-1のFWHMを有するより小規模の線もあり得る。また、1360〜1420cm-1の間の広帯域バンド(FWHM>180cm-1)が存在する場合もある。この広帯域バンドは、独立したバンド、あるいは1580cm-1付近の励起線の肩部(shoulder)のいずれかとして出現し得る。可視ラマンにおいて、これらの膜は、炭素D/G対バンドをそれぞれ1350cm-1および1580cm-1周辺で示す。
【0004】
炭素膜は、300ナノメートルより薄くてもよい。膜が堆積される基板は、導電性、非導電性のどちらでもよい。非導電基板の場合、基板は、連続的な導電層または導電性材料の緻密な網構造のいずれかでコーティングされ得る。
【0005】
炭素層は、化学蒸着、物理蒸着、電気分解、印刷あるいは塗装により、堆積可能である。膜は、連続的あるいは非連続的であり得、それぞれ300ナノメートル未満のサイズを有する粒子の緻密なアレイを有し得る。
【0006】
以下に記す発明の詳細がより理解されやすいように、本発明における特徴および技術的利点の大まかな概要を上記に略述した。本発明における請求の範囲の主題を成す、本発明の更なる特徴および利点を以下に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
(発明の詳細な説明)
本発明およびその利点がより十分に理解されるように、以下、添付の図面を参照して説明する。
【0008】
本発明が完全に理解されるため、以下、多くの詳細な説明を述べる。しかしながら、こ
のような具体的な詳細なしに本発明が実践され得ることは、当業者に明らかであろう。その他の場合、本発明を不必要に不明瞭なものとしないように、周知の回路はブロック図の形で示されている。大部分において、タイミングの考慮などに関する詳細は、当該分野における通常の技術を有する者の理解の範囲内であり、また本発明を完全に理解する上でそのような詳細な説明が必要でない限り、省略されている。
【0009】
図7に、本発明に従い、炭素膜703を用いて製造した電界放出デバイスを示している。基板701上に導電層702が堆積され、その上に炭素層703が堆積されている。アノードは、ガラス基板であり得る基板704と、インジウム酸化スズであり得る導電層705と、炭素層703から放出される電子を受けとる蛍光体層706とを含んでいる。電子は、アノードおよびカソード間の適切な電界に反応して、層703から放出される。図7のデバイスは、ダイオード構造として示されているが、1つ以上のグリッドが含まれ得る。このデバイスは、電界放出ランプ、あるいはマトリックスアドレスが可能なカラーディスプレイを製造する際に使用し得る。このような構造のさらなる説明については、米国特許第5,449,970号および第5,548,185号を参照されたい。これらは、本明細書において、参考のために援用する。
【0010】
図8において、炭素層703は、熱いフィラメントによって補助された化学蒸着(「CVD」)プロセスを用いて堆積し得る。基板803(必要であればこの上に導電層702が堆積される)は、CVD反応器802中のホルダー801上に載置される。水素ガス805が、反応器802におよそ10分間未満、流入される。次に、メタンのパーセンテージが50%未満である、水素805およびメタン806の混合物が、反応器802の中に1時間未満、流入される。上記工程におけるよりもメタンのパーセンテージが低い、別の水素805およびメタン806の混合物が、反応器802に2時間未満、流入される。そして、CVD反応器802内において、水素805のフローが15分未満行われる。
【0011】
少量の酸素、窒素、あるいはホウ素ドーパントが、上記ガス流に含まれてもよい。
【0012】
フィラメント804の温度は、1600℃〜2400℃の範囲に設定され、基板803の温度は、600℃〜1000℃の間に設定されている。堆積圧力は、5〜300torrの間である。
【0013】
このプロセスから得られる炭素膜は、従来技術のダイアモンド状の炭素あるいはCVDダイアモンド膜に比べて、優れた放出特性を示す。上記の方法で堆積された3つのサンプルの炭素膜上において、UVラマンスペクトルが測定された。244nmおよび2〜7mWの励起ソースを用い、1100cm-1〜1850cm-1の周波数内で、上記の方法で製造された炭素膜は、1578cm-1〜1620cm-1の範囲で、25〜165cm-1のFWHMを有する明確なUVラマンバンドを有する。また、1318〜1340cm-1の範囲で、18cm-1より大きいFWHMを有する、より小規模の線も存在し得る。1360〜1410cm-1の間には、180cm-1よりも大きいFWHMを有するバンドも時々存在する。
【0014】
上記説明の炭素層は、熱いフィラメントで補助されたCVDプロセスにて堆積されたが、炭素層は、物理的蒸着、電気分解、印刷あるいは塗装にて堆積し得る。炭素膜は、連続的あるいは非連続的であり得、各々300ナノメートル未満のサイズである粒子の緻密なアレイを有し得る。
【0015】
以上のように、上記説明の方法にて、炭素膜の3つのサンプルが堆積された。図1に示される第1の例におけるラマンスペクトルは、1580.8cm-1において、FWHMが89.7cm-1の明確なUVラマンバンドを有する。また、1329.7cm-1において
、FWHMが24.6cm-1の、ずっと小規模な線がある。
【0016】
第2の炭素層サンプルのUVラマンスペクトルをテストした。これを図2に示す。この例は、1583.4cm-1において、FWHMが45.3cm-1のUVラマンバンドを示した。
【0017】
第3の炭素層サンプルのUVラマンスペクトルは、図3に示すように測定された。この炭素層は、1612.2cm-1において、FWHMが77cm-1の明確なUVラマンバンドを有していた。この膜は、1408cm-1の肩部も示した。
【0018】
図4〜6は、図1〜3に示される3つの炭素膜サンプルのそれぞれの蛍光体スクリーンイメージの写真である。これらのスクリーンイメージは、図7の電界放出デバイスと同様な電界放出デバイスから得られたものである。図1のラマンスペクトルに対応する図4の蛍光体スクリーンイメージは、5.3ボルト/マイクロメーターの電界によって得られたものである。
【0019】
図2のUVラマンスペクトルに対応する図5の蛍光体スクリーンイメージは、6.3ボルト/マイクロメーターの電界によって得られたものである。
【0020】
図3のUVラマンスペクトルに対応する図6の蛍光体スクリーンイメージは、5.7ボルト/マイクロメーターの電界によって得られたものである。
【0021】
本発明の炭素膜は薄く(300ナノメートル未満)、アモルフォス、非常に無秩序な黒鉛状炭素、ならびにいくらかの不規則なsp3結合炭素および秩序立ったsp3結合炭素の、独特な組み合わせからなっている。これらの膜における秩序立ったsp3結合炭素(す
なわち、ダイアモンド構造)の成分あるいは量は非常に小さいため、UVラマンスペクトルは従来の可視ラマンスペクトルに比べ25倍もダイアモンド/黒鉛状炭素比に対して敏感であるという事実にもかかわらず、一般的な機器動作条件において、UVラマンスペクトル中の1332cm-1周辺の明白なラマン励起線はほとんどの場合出現しないか、あるいは、出現したとしてもsp2結合炭素のそれよりも小規模である(図1〜3参照)。
【0022】
秩序立ったsp3の結合炭素の領域サイズは、そのラマン線のFWHMおよび周波数偏
移から判断すると、おそらく60オングストローム未満である(図1参照)。これらの膜におけるsp3結合、特にアモルフォスsp3の存在は、周波数の上方偏移および/または図3に示されるような、1580cm-1周辺の典型的なsp3炭素励起線の低周波側の強
い肩部から、推測されることが多い。この肩部は、1580cm-1線がそれほど強くない場合、1360〜1410cm-1の範囲で180cm-1より大きいFWHMを有する広帯域バンドとして時々出現し得る。いくつかの膜においては、若干の上方周波数偏移および幅広化が見られるほぼ典型的な黒鉛状炭素線が出現したものもあった。これは、膜中にsp3結合炭素の成分がほとんどなく、黒鉛状炭素構造がより多く存在することを示してい
る(図2参照)。
【0023】
図10〜12は、図1〜3をそれぞれ参照して説明した3つのサンプル上における、可視ラマンスペクトルである。可視ラマンスペクトルは、514.5ナノメートル、10ミリワットの励起ソースによって得られた。これらの3つのラマンスペクトルは、およそ1350cm-1(Dピーク)および1580cm-1(Gピーク)において、D/Gペアピークを明らかに示している。典型的には、本発明の炭素膜のDピークは、1340cm-1〜1380cm-1の間であり、Gピークは1578cm-1〜1620cm-1の間である。
【0024】
電界放出アプリケーションに適していると報告されている従来の炭素膜には、CVDあ
るいは欠陥補強(defect enriched)CVDダイアモンド膜(窒素またはホウ素ドープあるいはイオン注入されたダイアモンド膜など)および、主にsp3結合を
有するダイアモンド状炭素(DLC)膜がある。大部分がダイアモンド結合炭素からなり、領域サイズが60オングストロームよりもずっと大きいCVDあるいは欠陥CVDダイアモンド膜は、典型的には、1332cm-1近傍においてFWHMが18cm-1未満である主ダイアモンド励起線を示し、そして1580cm-1近傍において、170cm-1より大きいFWHMを有し、広帯域であるがしばしばより小規模であるバンドを、UVラマンスペクトル中において示す。きめの細かいCVDダイアモンド膜が、可視ラマン中で時々1332cm-1近傍において微弱あるいはほとんど視認できない偏移をしばしば示すことを示す報告がされてきたが、ダイアモンドおよび黒鉛状炭素率に対するUVラマンの超感受性により、微粒子状CVDダイアモンド膜のUVラマンは、強く鋭いダイアモンド線を示すことに、留意されたい。すなわち、本発明でクレームされる膜は、ダイアモンド構造がより少ない。ほとんどの場合、この膜の存在は、UVラマンによってでさえまったく検出されない。
【0025】
DLC膜は、sp2とsp3結合が混合したアモルフォス炭素である。DLC膜を作製する方法に依存して、膜中のsp3/sp2結合比は、大部分sp2の状態から大部分sp3の状態へと大幅に変化し得る。長い間広く受け入れられている仮説として、これらの膜の中にsp3クラスターが存在し、そしてこれらのクラスターはダイアモンドに類似している
ため、負の電子親和力を有する、とされている。上記の仮説に基づいて、sp3結合を主
とするDLC膜が、電界放出アプリケーションに適するとされてきた。これらのDLC膜のUVラマンスペクトルも、1580〜1620cm-1において励起線を示すが、それらの可視ラマンは1580cm-1線(Gバンド)および1350cm-1線(Dバンド)のいずれをも示さない。むしろ、はっきりとした非対称性と1510〜1600cm-1の間に位置する広帯域バンドを有する。さらに、UVラマンにおいてでさえ、これらのsp3結
合を主とするDLC膜は常に、およそ1150cm-1にピークを有する別の広帯域バンドあるいは肩部を有し、これらの1580cm-1線のFWHMは、しばしば165cm-1よりも大きい。この1150cm-1における第2のバンドは、従来技術のDLC膜と本発明の炭素膜との間に、さらなる相違点を提供するものである。図9はDLC膜のラマンスペクトルを示しており、可視ラマン中1510〜1600cm-1の間に位置する非対称バンドが示され、このピークは、フォトンエネルギーがUVラマンスペクトルに増大されるにつれ、1600cm-1に偏移している。さらなる議論は、本明細書において参考のために援用する以下の文献に見出される:Resonant Raman Scattering of Amorphous Carbon and Polycrystalline Diamond Films、J. Wagner、 M. Ramsteiner、 Ch. WildおよびP. Koidl、Physical Review B、1989、July 15、Vol.40、pp.1817;Ultraviolet Raman Spectroscopy Characterizes Chemical Vapor Deposition Diamond Film Growth and Oxidation、Richard W. Bornettら、Journal
of Applied Physics、77(11)、June、1995、pp.5996;そして、UV Studies of Tetrahedral Bonding in Diamond−Like Amorphous Carbon、V. L. Merkuluvら、Physical Review Letters、June、1997、pp.4869。
【0026】
上記説明において、UVラマンスペクトルにおける、ピーク位置、線幅、線形状およびそれらの強度比は、本炭素膜の結合構造について特徴的である。本発明において示される、周波数およびFWHM範囲、ならびに線形状および強度比は、従来技術において電界エミッターとして利用されていない、秩序的あるいは無秩序のsp2およびsp3の結合構造
を持つ炭素膜群を表すものである。図1〜6は、優れた電界放出特性を示した、この炭素膜群のうち3つの例を示すものである。
【0027】
開示した特定のラマンスペクトルを有する本発明の炭素膜の利点としては、2ボルト/マイクロメートル未満の抽出電界(extraction electric field)で放出が可能な膜であること、10ボルト/マイクロメートルにおいて少なくとも104部位/センチメートル2の放出部位密度を有する炭素膜であること、ならびに100ミリアンペア/センチメートル2以上の電流密度が提供可能な炭素膜であることが含まれる
。この放出特性により、これらの炭素膜は、非常に均一な高性能電界放出電子デバイス用として特に望ましい。ここで強調しておきたいのは、従来技術によるいくつかのダイアモンドまたはDLC膜のなかには、同等の電界放出が可能、あるいは同等の電流密度をもたらすことが可能とするものもあるとの報告がこれまであったとしても、それらの膜の放出部位密度に関する報告は一度もないことである。実際、小数の放出部位が示されるのみのことがしばしばであり、放出電流密度の報告は、それらのわずかな部位から集めた電流をもとに推測されたものである。本明細書において開示する炭素膜は、表面全体に均一に放出を行う。
【0028】
本発明およびその利点を詳細に説明したが、様々な変更、置換および改変が、特許請求の範囲に定義する本発明の精神および範囲を逸脱することなく行われるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】図1は、本発明のカソードの1例のUVラマンスペクトルである。
【図2】図2は、本発明のカソードの別の例のUVラマンスペクトルである。
【図3】図3は、本発明のカソードの1例の別のUVラマンスペクトルである。
【図4】図4は、図1にUVラマンスペクトルを図示した放出炭素膜の、蛍光体スクリーンイメージである。
【図5】図5は、図2にUVラマンスペクトルを図示した放出炭素膜の、蛍光体スクリーンイメージである。
【図6】図6は、図3にUVラマンスペクトルを図示した放出炭素膜の、蛍光体スクリーンイメージである。
【図7】図7は、本発明を実施した電界放出デバイスである。
【図8】図8は、本発明の炭素膜を堆積するための装置である。
【図9】図9は、従来技術のDLC膜のラマンスペクトルのグラフである。
【図10】図10は、図1の示すカソード例の、可視ラマンスペクトルである。
【図11】図11は、図2の示すカソード例の、可視ラマンスペクトルである。
【図12】図12は、図3の示すカソード例の、可視ラマンスペクトルである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の基板上に蛍光体を有するアノードと、
第2の基板上に炭素膜の層を有するカソードとを有し、
前記炭素膜は、1578cm−1〜1620cm−1の範囲の第1のUVラマンバンドを有し、
前記第1のUVラマンバンドは、25cm−1〜165cm−1の半値全幅値(FWHM)を有し、
前記炭素膜は、前記炭素膜の表面全体から電子を均一に放出する、高性能電界放出電子デバイス。
【請求項2】
前記炭素膜は、2ボルト/マイクロメートル未満の抽出電界で放出が可能である、請求項1に記載の高性能電界放出電子デバイス。
【請求項3】
前記炭素膜は、10ボルト/マイクロメートルにおいて少なくとも104部位/cm2の放出部位密度を有する、請求項1に記載の高性能電界放出電子デバイス。
【請求項4】
前記炭素膜は、100ミリアンペア/cm2以上の電流密度が提供可能である、請求項1に記載の高性能電界放出電子デバイス。
【請求項5】
ダイオード構造あるいはトライオード構造で提供された請求項1に記載の高性能電界放出電子デバイス。
【請求項6】
電界放出ランプあるいはマトリックスアドレスが可能なカラーディスプレイを製造するために使用される請求項1に記載の高性能電界放出電子デバイス。
【請求項7】
前記炭素膜は、前記放出部位密度が大きいほど、低い閾値電界を有する、請求項1に記載の高性能電界放出電子デバイス。
【請求項8】
前記炭素膜は、アモルフォスと、非常に無秩序な黒鉛状炭素と、いくらかの不規則なsp3結合炭素および秩序立ったsp3結合炭素との組み合わせの独特な範囲を有する、請求項1に記載の高性能電界放出電子デバイス。
【請求項9】
前記炭素膜は、前記炭素膜を作製する方法および主要ガスによって決定されるsp3/sp2結合比を有する、請求項1に記載の高性能電界放出電子デバイス。
【請求項10】
電子放出は、酸素、窒素、ホウ素、その他のような主要ガスに対する添加剤によって決定され得る、請求項9に記載の高性能電界放出電子デバイス。
【請求項11】
前記炭素膜は、ダイアモンド状のCVDよりも優れた電子放出性能を有する、請求項1に記載の高性能電界放出電子デバイス。
【請求項12】
前記炭素膜は、グラファイト化の程度に特有なDバンドおよびGバンドを有する、請求項1に記載の高性能電界放出電子デバイス。
【請求項13】
前記炭素膜は、Dバンドの強度とGバンドの強度との比であって、粒子サイズに特有な比を有する、請求項1に記載の高性能電界放出電子デバイス。
【請求項14】
前記炭素膜は、ダイアモンドとグラファイトとの混相構造に強く依存した電界放出特性を有する、請求項1に記載の高性能電界放出電子デバイス。
【請求項15】
前記炭素膜は、広帯域バンドあるいは肩部を有する第3のUVラマンバンドであって、およそ1150cm−1にピークを有し、ナノスケールのダイアモンド粒子のサイズ効果に特有な第3のUVラマンバンドを有する、請求項1に記載の高性能電界放出電子デバイス。
【請求項16】
前記UVラマンバンドは、前記炭素膜の成長中にメタンおよび/または水素のフローを変更することによって達成される、請求項1に記載の高性能電界放出電子デバイス。
【請求項17】
前記UVラマンバンドは、ダイヤモンド状グレインと黒鉛状グレインとの間のグレイン境界を示す、請求項1に記載の高性能電界放出電子デバイス。
【請求項18】
前記炭素膜は、5ナノメートルより大きく、かつ、100ナノメートルより小さいダイヤモンドグレインを有する、請求項1に記載の高性能電界放出電子デバイス。
【請求項19】
前記ダイヤモンドグレインのサイズは、前記炭素膜におけるグラファイト成分が0%より大きく、かつ、50%より小さい場合に変動する、請求項18に記載の高性能電界放出電子デバイス。
【請求項20】
UVラマンの分析は、グラファイトグレインに対してダイヤモンドグレインのスキャッタリングが強いために分析ツールとしてより効果的である、請求項1に記載の高性能電界放出電子デバイス。
【請求項21】
前記炭素膜は、より低いメタン濃度がより低いグラファイト成分を有する炭素膜を達成するように前記炭素膜を成長する際に用いられるメタン濃度に依存するグラファイト成分を有する、請求項1に記載の高性能電界放出電子デバイス。
【請求項22】
前記炭素膜は、一定のメタン濃度において前記炭素膜を成長させる際に用いられる水素濃度に応じて変動する平均ダイヤモンドグレインサイズを有し、前記ダイヤモンドグレインサイズは、水素フローレートが増大するにつれて増大する、請求項1に記載の高性能電界放出電子デバイス。
【請求項23】
前記炭素膜の電子放出特性は、前記炭素膜のダイヤモンドグレインサイズおよびグラファイト成分によって定義されている、請求項1に記載の高性能電界放出電子デバイス。
【請求項24】
前記炭素膜の電子放出特性は、前記炭素膜のダイヤモンドグレインと黒鉛グレインとの間の境界の性質によって定義されている、請求項1に記載の高性能電界放出電子デバイス。
【請求項25】
前記炭素膜の放出部位密度は、5ナノメートルより大きく、かつ、100ナノメートルより小さいサイズを有するダイヤモンドグレインに対して最適である、請求項1に記載の高性能電界放出電子デバイス。
【請求項26】
前記炭素膜の電子放出の均一性は、5ナノメートルより大きく、かつ、100ナノメートルより小さいサイズを有するダイヤモンドグレインに対して最適である、請求項1に記載の高性能電界放出電子デバイス。
【請求項27】
電子放出メカニズムは、前記ダイヤモンドグレインにおけるダイヤモンド/グラファイトグレインインターフェースからのトンネル効果によって制御される、請求項1に記載の高性能電界放出電子デバイス。
【請求項28】
グラファイトマトリックスにおいてダイアモンド微結晶に関して炭素膜を特徴付ける方法であって、UVラマンを用いた特徴付けは、可視ラマンを用いた特徴付けよりも少なくとも25倍敏感である、方法。
【請求項1】
第1の基板上に蛍光体を有するアノードと、
第2の基板上に炭素膜の層を有するカソードとを有し、
前記炭素膜は、1578cm−1〜1620cm−1の範囲の第1のUVラマンバンドを有し、
前記第1のUVラマンバンドは、25cm−1〜165cm−1の半値全幅値(FWHM)を有し、
前記炭素膜は、前記炭素膜の表面全体から電子を均一に放出する、高性能電界放出電子デバイス。
【請求項2】
前記炭素膜は、2ボルト/マイクロメートル未満の抽出電界で放出が可能である、請求項1に記載の高性能電界放出電子デバイス。
【請求項3】
前記炭素膜は、10ボルト/マイクロメートルにおいて少なくとも104部位/cm2の放出部位密度を有する、請求項1に記載の高性能電界放出電子デバイス。
【請求項4】
前記炭素膜は、100ミリアンペア/cm2以上の電流密度が提供可能である、請求項1に記載の高性能電界放出電子デバイス。
【請求項5】
ダイオード構造あるいはトライオード構造で提供された請求項1に記載の高性能電界放出電子デバイス。
【請求項6】
電界放出ランプあるいはマトリックスアドレスが可能なカラーディスプレイを製造するために使用される請求項1に記載の高性能電界放出電子デバイス。
【請求項7】
前記炭素膜は、前記放出部位密度が大きいほど、低い閾値電界を有する、請求項1に記載の高性能電界放出電子デバイス。
【請求項8】
前記炭素膜は、アモルフォスと、非常に無秩序な黒鉛状炭素と、いくらかの不規則なsp3結合炭素および秩序立ったsp3結合炭素との組み合わせの独特な範囲を有する、請求項1に記載の高性能電界放出電子デバイス。
【請求項9】
前記炭素膜は、前記炭素膜を作製する方法および主要ガスによって決定されるsp3/sp2結合比を有する、請求項1に記載の高性能電界放出電子デバイス。
【請求項10】
電子放出は、酸素、窒素、ホウ素、その他のような主要ガスに対する添加剤によって決定され得る、請求項9に記載の高性能電界放出電子デバイス。
【請求項11】
前記炭素膜は、ダイアモンド状のCVDよりも優れた電子放出性能を有する、請求項1に記載の高性能電界放出電子デバイス。
【請求項12】
前記炭素膜は、グラファイト化の程度に特有なDバンドおよびGバンドを有する、請求項1に記載の高性能電界放出電子デバイス。
【請求項13】
前記炭素膜は、Dバンドの強度とGバンドの強度との比であって、粒子サイズに特有な比を有する、請求項1に記載の高性能電界放出電子デバイス。
【請求項14】
前記炭素膜は、ダイアモンドとグラファイトとの混相構造に強く依存した電界放出特性を有する、請求項1に記載の高性能電界放出電子デバイス。
【請求項15】
前記炭素膜は、広帯域バンドあるいは肩部を有する第3のUVラマンバンドであって、およそ1150cm−1にピークを有し、ナノスケールのダイアモンド粒子のサイズ効果に特有な第3のUVラマンバンドを有する、請求項1に記載の高性能電界放出電子デバイス。
【請求項16】
前記UVラマンバンドは、前記炭素膜の成長中にメタンおよび/または水素のフローを変更することによって達成される、請求項1に記載の高性能電界放出電子デバイス。
【請求項17】
前記UVラマンバンドは、ダイヤモンド状グレインと黒鉛状グレインとの間のグレイン境界を示す、請求項1に記載の高性能電界放出電子デバイス。
【請求項18】
前記炭素膜は、5ナノメートルより大きく、かつ、100ナノメートルより小さいダイヤモンドグレインを有する、請求項1に記載の高性能電界放出電子デバイス。
【請求項19】
前記ダイヤモンドグレインのサイズは、前記炭素膜におけるグラファイト成分が0%より大きく、かつ、50%より小さい場合に変動する、請求項18に記載の高性能電界放出電子デバイス。
【請求項20】
UVラマンの分析は、グラファイトグレインに対してダイヤモンドグレインのスキャッタリングが強いために分析ツールとしてより効果的である、請求項1に記載の高性能電界放出電子デバイス。
【請求項21】
前記炭素膜は、より低いメタン濃度がより低いグラファイト成分を有する炭素膜を達成するように前記炭素膜を成長する際に用いられるメタン濃度に依存するグラファイト成分を有する、請求項1に記載の高性能電界放出電子デバイス。
【請求項22】
前記炭素膜は、一定のメタン濃度において前記炭素膜を成長させる際に用いられる水素濃度に応じて変動する平均ダイヤモンドグレインサイズを有し、前記ダイヤモンドグレインサイズは、水素フローレートが増大するにつれて増大する、請求項1に記載の高性能電界放出電子デバイス。
【請求項23】
前記炭素膜の電子放出特性は、前記炭素膜のダイヤモンドグレインサイズおよびグラファイト成分によって定義されている、請求項1に記載の高性能電界放出電子デバイス。
【請求項24】
前記炭素膜の電子放出特性は、前記炭素膜のダイヤモンドグレインと黒鉛グレインとの間の境界の性質によって定義されている、請求項1に記載の高性能電界放出電子デバイス。
【請求項25】
前記炭素膜の放出部位密度は、5ナノメートルより大きく、かつ、100ナノメートルより小さいサイズを有するダイヤモンドグレインに対して最適である、請求項1に記載の高性能電界放出電子デバイス。
【請求項26】
前記炭素膜の電子放出の均一性は、5ナノメートルより大きく、かつ、100ナノメートルより小さいサイズを有するダイヤモンドグレインに対して最適である、請求項1に記載の高性能電界放出電子デバイス。
【請求項27】
電子放出メカニズムは、前記ダイヤモンドグレインにおけるダイヤモンド/グラファイトグレインインターフェースからのトンネル効果によって制御される、請求項1に記載の高性能電界放出電子デバイス。
【請求項28】
グラファイトマトリックスにおいてダイアモンド微結晶に関して炭素膜を特徴付ける方法であって、UVラマンを用いた特徴付けは、可視ラマンを用いた特徴付けよりも少なくとも25倍敏感である、方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2007−220690(P2007−220690A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−148694(P2007−148694)
【出願日】平成19年6月4日(2007.6.4)
【分割の表示】特願2006−229336(P2006−229336)の分割
【原出願日】平成10年7月29日(1998.7.29)
【出願人】(500058408)ナノプロプリエタリー,インコーポレイテッド (10)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年6月4日(2007.6.4)
【分割の表示】特願2006−229336(P2006−229336)の分割
【原出願日】平成10年7月29日(1998.7.29)
【出願人】(500058408)ナノプロプリエタリー,インコーポレイテッド (10)
【Fターム(参考)】
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