説明

電着組成物及びリン酸塩前処理の代用法

カソード電着可能なバインダーを含む水性電着コーティング組成物であって、前記バインダーが、リン酸化樹脂と、エステル基から2〜4個の炭素だけ離れたカルボキシル基とを含む前記水性電着コーティング組成物は、慣用のリン酸塩前処理と電着コーティングプロセスによって得られるのと同等の耐蝕性を提供する。前記水性コーティング組成物は、酸化ビスマス、酸化バナジウム、酸化マンガン、酸化コバルト、酸化亜鉛、酸化ストロンチウム、酸化イットリウム、酸化モリブデン、酸化ジルコニウム、酸化ランタン、ランタン系列の元素の酸化物及びそれらの組み合わせからなる群から選択される金属酸化物を含んでよい。リン酸化樹脂は、リン含有基であって、式中のXは、水素、一価の炭化水素基、アルキル基、例えばアミノアルキル基、又は酸素原子であり、その酸素原子は、リン原子に対して単独の共有結合を有し、かつそれぞれの酸素原子は、水素原子、アルキル基、アリール基、アルキルアリール基、アリールアルキル基又は前記樹脂に対して共有結合を有するが、但し、少なくとも1個の酸素原子は、前記樹脂に対して共有結合を有する基を含んでよい。水性コーティング組成物は、三座アミン配位子を含んでよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属基材用のコーティング、特に電着コーティング組成物、それらの製造方法、金属基材のコーティング方法、特に導電性基材上へのコーティングの電着方法並びにコーティングされた金属基材に関する。
【0002】
開示の背景
この箇所の記載は、単に、本開示に関連した情報を提供するだけで、先行技術を成さないこともある。
【0003】
腐蝕性環境で使用される金属物品の工業的コーティングには、1つ以上の無機の及び有機の処理及びコーティングの適用が含まれうる。自動車組み立て工場での塗装システム("塗装作業場")は、大きく、複雑で、かつ高価である。金属の自動車車体("ボディ・イン・ホワイト")及び部品には、Claffeyによる米国特許第5,868,820号に記載されるように、1つ以上のクリーニング浴もしくは吹き付けタンクにおけるクリーニング、リン酸塩処理浴における金属前処理段階としての水性リン酸塩コーティング材料の適用、続いての様々なすすぎ、そして追加の仕上げ処理という多段階処理がなされる。リン酸塩前処理段階は、金属の耐腐食性の改善と、引き続いてのコーティングと金属との付着性の改善のために着手される。クリーニング段階とリン酸塩処理段階は、10又は12個の吹き付け装置の個別の処理ステーション又は浸漬タンクを有することがある。
【0004】
電着コーティング("電着")は、前処理段階の後に、金属車体へと適用される。電着浴は、通常は、水中もしくは水と有機助溶剤との混合物中でイオン性安定化を有する、主たる皮膜形成性のエポキシ樹脂(本開示では"ポリマー"及び"樹脂"が同義で使用される)の水性の分散液もしくはエマルジョンを含む。耐久性の電着被膜が望まれる自動車もしくは工業的な用途においては、電着組成物は、硬化性(熱硬化性)の組成物として調合される。これは、通常は、主たる被膜形成性の樹脂と一緒に、該主たる樹脂上の官能基と好適な条件下で、例えば熱を加えることで反応することができ、こうしてコーティングを硬化しうる架橋剤を乳化させることによって達成される。電着の間に、比較的低い分子量を有するイオン的に荷電された樹脂を含有するコーティング材料は、導電性基体上へと、電着浴中に前記基体を浸し、次いで該基体と反対の電荷の極、例えばステンレス鋼電極との間に電位をかけることによって析出される。荷電されたコーティング材料は、導電性の基体上に移動し、そこに析出する。コーティングされた基体は、次いで加熱され、コーティングは硬化もしくは架橋する。
【0005】
電着組成物及び電着方法の利点の1つは、適用されたコーティング組成物が、形状もしくは構造にかかわらず、様々な金属製の基材上に均一かつ連続した層を形成することである。これは、該コーティングが、車両車体などの不規則な表面を有する基材上に耐蝕性コーティングとして適用される場合に特に好ましい。金属製の基材の全ての部分上での連続的なコーティング層でさえも、最高の耐蝕効果を提供する。しかしながら、リン酸塩前処理は、今まで、自動車車体については腐蝕から保護するにあたり不可欠な段階であった。
【0006】
McMurdie他による米国特許第6,110,341号は、ヒドロカルビルリン酸塩及びホスホン酸エステルであってポリエポキシド結合基を含みうるものは、腐蝕保護の改善のために、浴質量全体に対して500ppmまでの量で電着浴中に導入できることを教示している。フェニルホスホン酸を含む例は、未処理のスチールパネル上での腐蝕保護において僅かな増加を有すると報告された。December他による米国特許出願公開第2008/0102214号、同第2008/0103268号及び同第2008/0103269号は、コーティングされた金属基材へのコーティングの付着は、皮膜形成成分(例えば架橋可能な樹脂又は架橋剤)中に非イオン性の金属配位構造を含めることによって改善できることを開示している。米国特許出願公開第2007/0244270号は、ヒドロキシル官能性樹脂又は架橋剤とコーティング中に組み込まれた環式無水物とを反応させて金属触媒を錯化させ、より容易にかつ効果的に金属触媒を組み込むことによって製造されたポリマー型配位子を開示している。改善された硬化反応、耐チッピング性及び耐蝕性が報告されている。一定の特許文献は、ジエチレントリアミンを使用して製造したエポキシ樹脂を含有する電着コーティング組成物を記載している。その例は、Grosse−Brinkhaus他による米国特許第7,087,146号;Nishiguchi他による米国特許第6,492,027号;Tobinaga他による米国特許第5,556,913号;及びSchwerzel他による米国特許第5,039,721号である。
【0007】
多くの特許は、電着コーティング組成物又は他の金属コーティングにおいて一定の金属酸化物を使用することを開示している。なかでも、Gros他による米国特許出願公開第2006/0058423号(酸化マンガン);Poulet他による米国特許出願公開第2006/0261311号(イットリウム、ジルコニウム、ランタン、セリウム、プラセオジム及びネオジムの酸化物又は塩);Maze他による米国特許第7,081,157号(MoO3);Matsuda他によるJP2003226982号(五酸化バナジウム);Mizoguchi他によるJP2003129005号(酸化亜鉛);及びKawaraya他による米国特許出願公開第2007/0149655号(酸化ジルコニウム)が存在する。しかしながら、これらの金属基材と特定のグループとを組み合わせることは知られておらず、本願では、金属基材を腐蝕から保護するこれらの金属酸化物の能力を著しく高めることを見出した。
【0008】
開示の要旨
リン酸塩処理されていない金属の基材(すなわち、リン酸塩前処理されていない金属の基材)であってよい金属の基材上に電着コーティングを電着する組成物及び方法であって、その電着コーティングが優れた腐蝕保護を提供するものが開示される。
【0009】
本組成物及び本方法は、水性の電着コーティング組成物(電着浴とも呼ばれる)であって、エステル基とは2〜4個の炭素だけ離れたカルボキシレート基、例えば環状無水物のモノエステルと、少なくとも1個のリン含有基
【化1】

[式中、Xは、水素、一価の炭化水素基(すなわちヒドロカルビル基)、アルキル基、例えばアミノアルキル基、アリール基、アルキルアリール基、アリールアルキル基又は酸素原子であり、その酸素原子は、リン原子に対して単独の共有結合を有し、かつそれぞれの酸素原子は、水素原子、アルキル基、アリール基、アルキルアリール基、アリールアルキル基又は前記樹脂に対して共有結合を有するが、但し、少なくとも1個の酸素原子は、前記樹脂に対して共有結合を有する]を有する樹脂を含むバインダーを有する前記組成物を使用する。アルキル基は、シクロアルキル基であってよく、ヒドロカルビル基であってよく、又はヘテロ原子を含んでよい。便宜上、本願においては、"樹脂"は、樹脂、オリゴマー及びポリマーを含めて使用され、かつリン含有基を有する樹脂は、リン酸化樹脂と呼称される。エステル基とは2〜4個の炭素だけ離れたカルボキシレート基(例えば環状無水物のモノエステル)は、リン酸化樹脂の一部であってよく、又は第二の樹脂、例えばリン酸化樹脂と硬化の間に反応する基を有する架橋剤樹脂の一部であってよい。便宜上、この基は、"カルボキシレート/エステル基"と呼ばれるか、又は"環状無水物のモノエステル"のその特定の実施態様と呼ばれうる。"バインダー"は、コーティング組成物の被膜形成性の成分を指す。一般に、該バインダーは、熱硬化性又は硬化可能であり、硬化後に、リン含有基及び環状無水物のモノエステルは、架橋された網目構造の一部である。こうして、リン酸化樹脂と、カルボキシレート/エステル基を有するバインダー樹脂(リン酸化樹脂とは異なる)の両方は、コーティング組成物の硬化の間に反応して硬化されたバインダーの一部をなす少なくとも1つの架橋可能な基を有する。
【0010】
様々な実施態様においては、カルボキシレート/エステル基は、構造
【化2】

[式中、nは、2、3又は4であり、R及びR1のそれぞれは、独立してH及び1〜4個の炭素原子を有するアルキル基から選択される]を有してよい。一定の実施態様においては、R及びR1のそれぞれは、独立してH及び1〜4個の炭素原子を有するヒドロカルビル基から選択される。
【0011】
様々な実施態様においては、リン含有基は、リン酸又はホスホン酸のモノエステルである。他の実施態様においては、リン含有基は、リン酸又はホスホン酸のジエステルである。なおも他の実施態様においては、リン含有基は、リン酸のジエステルである。様々な実施態様においては、リン酸化樹脂は、これらのリン含有基の幾つかの組み合わせを有する。リン酸化樹脂は、1個又は複数個のリン含有の基を有してよい。更に、バインダー中に存在する金属配位性基の1つ又は複数は、リン酸化樹脂の一部として、第二の樹脂の一部として、架橋剤の一部として、又はこれらの1つより多くの一部として存在してよい。
【0012】
一実施態様においては、リン酸化樹脂は、ポリエポキシ樹脂のモノリン酸エステル又はモノホスホン酸エステルを含む。もう一つの実施態様においては、リン酸化樹脂は、ポリエポキシ樹脂の二リン酸エステル又はジホスホン酸エステルを含む。もう一つの実施態様においては、リン酸化樹脂は、トリホスフェートエステルを含む。他の実施態様においては、リン酸化樹脂は、これらのエステルの組み合わせを含む。樹脂とリン原子との間で共有結合されていないリン原子上の残りの酸素は、アルキル基又はアリール基によってエステル化されていてよい。一定の実施態様においては、少なくとも1つのP−OH基がエステル化されずに留まる。
【0013】
様々な実施態様においては、リン酸化樹脂は、1個のリン原子又は複数のリン原子を有する。リン酸化樹脂は、ポリエポキシドを使用して、1種以上の連鎖延長剤との反応により連鎖延長して製造することができる。その際、連鎖延長剤は、少なくとも2個の活性水素含有基を有する。
【0014】
一定の実施態様においては、バインダーは、リン酸化樹脂のための架橋剤を含む。架橋剤は、カルボキシレート/エステル基又は環状無水物のモノエステルを含んでよく、又は前記環状無水物のモノエステルは、硬化の間に架橋剤と反応性の更なる樹脂の一部であってよい。一定の実施態様においては、バインダーは、アミン官能性の樹脂である第二の樹脂を含む。第二の樹脂、架橋剤、又はリン酸化樹脂は、環状無水物のモノエステルを有してよい。バインダーは、電着されたコーティング層の硬化の間に、リン酸化樹脂、第二のアミン官能性樹脂又はその両方と反応する架橋剤を含んでもよい。架橋剤は、環状無水物のモノエステルを有してよい。
【0015】
様々な実施態様においては、リン酸化樹脂は、アミン官能性のリン酸化樹脂を含む。一定の実施態様においては、アミン官能性のリン酸化樹脂は、電着コーティング組成物中で約0.01質量%から約99質量%までのバインダーを含む。アミン官能性のリン酸化樹脂は、環状無水物のモノエステルを含んでよく、又は前記環状無水物のモノエステルは、もう一つのバインダー樹脂(架橋剤樹脂であってよい)の一部であってよい。とりわけ、これらの実施態様は、アミン官能性のリン酸化樹脂が、電着コーティング組成物中でバインダー全体の質量に対して、約1%から約90%までである実施態様と、アミン官能性のリン酸化樹脂が、電着コーティング組成物中でバインダー全体の質量に対して、約5%から約80%までである実施態様である。一定の実施態様においては、バインダーは、アミン官能性のリン酸化樹脂のための架橋剤を含み、前記架橋剤は、環状無水物のモノエステルを含んでよい。一定の実施態様においては、バインダーは、前記のアミン官能性のリン酸化樹脂とは異なる第二のアミン官能性樹脂を含み、前記の第二のアミン官能性樹脂は、環状無水物のモノエステルを有してよい。これらのいずれの実施態様においても、バインダーは、電着されたコーティング層の硬化の間に、アミン官能性のリン酸化樹脂か、第二のアミン官能性の樹脂か、又はその両方と反応する架橋剤を含んでもよい。
【0016】
導電性の基材、例えば金属の自動車の車体又は部品のコーティング方法であって、前記導電性の基材を、カルボキシレート/エステル基及びリン含有基を有するバインダーを含む水性の電着コーティング組成物中に入れ、該導電性の基材をカソードとして使用して、該水性の電着コーティング組成物に電流を流して、前記導電性の基材上に前記バインダーを含むコーティング層を析出させることを含む前記方法。一実施態様においては、バインダーは、カソード電着可能である。次いで、析出されたコーティング層を硬化させて、硬化されたコーティング層とすることができる。後続のコーティング層を、析出された(任意に硬化された)電着されたコーティング層上に適用してよい。例えば、電着されたコーティング層は、プライマー層及び他の層、例えば任意の吹き付け適用されたプライマーサーフェイサー層であってよく、該電着されたコーティング層上に、1層もしくはそれより多層のトップコート層(例えば着色されたベースコート層及びクリヤーコート層)を適用してよい。
【0017】
前記方法の一実施態様においては、導電性の基材は、それがリン酸化樹脂及び環状無水物のモノエステルを含む電着されたコーティングでコーティングされる前に、リン酸塩処理されていない。すなわち、前記基材は、リン酸塩前処理を含まない。
【0018】
該方法の一実施態様においては、金属の自動車車体は清浄化され、その清浄化された金属の自動車車体は、リン酸化樹脂と、該リン酸化樹脂の一部として又は第二の樹脂の一部として、カルボキシレート/エステル基を有する水性のコーティング組成物で電着される。このように、リン酸塩前処理は使用されない。リン酸化樹脂は、電着可能であってよい。電着コーティング組成物のバインダーは、電着可能であり、かつリン酸基を有さない更なる樹脂を含んでよく、一般に該バインダーは、前記樹脂と反応性で、電着されたコーティング層を硬化しうる架橋剤を含む。リン酸化樹脂、更なる電着可能な樹脂、異なる樹脂、又は架橋剤のいずれかは、カルボキシレート/エステル基を有してよい。
【0019】
コーティングされた導電性の基材は、該導電性の基材上に硬化された層を含み、その際、電着されたコーティング層から形成された硬化された層は、環状無水物のモノエステル及びリン酸化樹脂を含むバインダーを含む。
【0020】
リン酸化樹脂状のリン含有基は、金属基材を腐蝕から保護し、その一方で、カルボキシレート/エステル基は、金属基材への配位結合の形成によって、リン含有基の効果を高める。リン含有基とカルボキシレート/エステル基の両方はコーティングバインダーの一部であるので、カルボキシレート/エステル基は、金属を腐食から保護するリン基の作用を予想外に高める。
【0021】
本方法は、水性電着コーティング組成物(電着浴とも呼ばれる)であって、(a)少なくとも1つのリン含有基
【化3】

[式中、Xは、水素、多価の炭化水素基(すなわち、ヒドロカルビル基)、アルキル基、例えばアミノアルキル基、アリール基、アルキルアリール基、アリールアルキル基、又は酸素原子であり、前記酸素原子は、リン原子に対して単独の共有結合を有し、かつそれぞれの酸素原子は、水素原子、アルキル基、アリール基、アルキルアリール基、アリールアルキル基、又はカソード電着可能な樹脂に対して共有結合を有するが、但し、少なくとも1つの酸素原子は、カソード電着可能な樹脂に対して共有結合を有する];(b)エステル基から2〜4個の炭素原子だけ離れたカルボキシレート基、例えば環状無水物のモノエステル;及び(c)少なくとも1つの三座アミン配位子を含む1種もしくは複数種の樹脂を含むバインダーを有し、更に、酸化ビスマス、酸化バナジウム、酸化マンガン、酸化コバルト、酸化亜鉛、酸化ストロンチウム、酸化イットリウム、酸化モリブデン、酸化ジルコニウム、酸化ランタン、ランタン系列の元素の酸化物及びこれらの組み合わせからなる群から選択される金属酸化物を含む水性電着コーティング組成物を使用してよい。リン含有基のアルキル基は、シクロアルキル基であってよく、ヒドロカルビル基であってよく、又はヘテロ原子を含んでよい。"三座アミン配位子"とは、樹脂に結合される1つのアミン基と2つの末端の第三級アミン基とを有する基を指す;一定の実施態様においては、該三座アミン配位子は、構造−N(−R′−NR22[式中、R′は、1から4個までの炭素原子と、場合によりエーテル酸素を有するアルキル基であり、かつそれぞれのRは、独立して1〜4個の炭素原子のアルキルである]を有する。本願においては、"樹脂"は、樹脂、オリゴマー及びポリマーに使用される。"バインダー"は、コーティング組成物の被膜形成性の成分を指す。一般に、バインダーは、熱硬化性又は硬化性である。便宜上、リン含有基を含む樹脂は、リン酸化樹脂と呼ばれる。エステル基とは2〜4個の炭素だけ離れたカルボキシレート基(例えば環状無水物のモノエステル)は、リン酸化樹脂の一部であってよく、又は第二の樹脂、例えばリン酸化樹脂と硬化の間に反応する基を有する架橋剤樹脂の一部であってよい。便宜上、この基は、"カルボキシレート/エステル基"と呼ばれるか、又は"環状無水物のモノエステル"のその特定の実施態様と呼ばれうる。三座アミン配位子は、同様に、リン酸化樹脂の一部であってよく、又は更なる樹脂の一部であってよい。熱硬化性のコーティング層の硬化の後に、リン含有基、三座アミン配位子、及び環状無水物のモノエステルは、架橋されたバインダーの一部であってよい。かかる場合において、リン酸化樹脂、三座アミン配位子を有する樹脂(リン酸化樹脂とは異なる場合)、及びカルボキシレート/エステル基を有する樹脂(リン酸化樹脂及び三座アミン配位子樹脂とは異なる場合)のそれぞれは、コーティング組成物の硬化の間に反応して、硬化されたバインダーの一部をなす少なくとも1つの架橋可能な基を有する。
【0022】
様々な実施態様においては、リン含有基は、リン酸又はホスホン酸のモノエステルである。他の実施態様においては、リン含有基は、リン酸又はホスホン酸のジエステルである。なおも他の実施態様においては、リン含有基は、リン酸のジエステルである。様々な実施態様においては、リン酸化樹脂は、これらのリン含有基の幾つかの組み合わせを有する。リン酸化樹脂は、1個又は複数個のリン含有の基を有してよい。更に、バインダー中に存在するカルボキシレート/エステル基及び三座アミン配位子基の1つ又は複数は、リン酸化樹脂の一部として、又は該リン酸化樹脂とは異なる樹脂の一部として、架橋剤の一部として、又はこれらの1つより多くの一部として存在してよい。
【0023】
一実施態様においては、アミン官能性のリン酸化樹脂は、ポリエポキシ樹脂のアミン官能性のモノリン酸エステル又はモノホスホン酸エステルを含む。もう一つの実施態様においては、アミン官能性のリン酸化樹脂は、ポリエポキシ樹脂のアミン官能性の二リン酸エステル、三リン酸エステル又は二ホスホン酸エステルを含む。他の実施態様においては、アミン官能性のリン酸化樹脂は、これらのエステルの組み合わせを含む。樹脂とリン原子との間で共有結合されていないリン原子上の残りの酸素は、エステル化されていてもよい。一定の実施態様においては、少なくとも1個のP−OH基はエステル化されていない状態のままである。すなわち、リン含有基は、少なくとも1個のP−OH基を有する。
【0024】
様々な実施態様においては、リン酸化樹脂は、1個のリン原子又は複数のリン原子を有する。リン酸化樹脂は、ポリエポキシドを使用して、1種以上の連鎖延長剤との反応により連鎖延長して製造することができる。その際、連鎖延長剤は、少なくとも2個の活性水素含有基を有する。
【0025】
様々な実施態様においては、カルボキシレート/エステル基は、構造
【化4】

[式中、nは、2、3又は4であり、R及びR1のそれぞれは、独立してH及び1〜4個の炭素原子を有するアルキル基から選択される]を有してよい。一定の実施態様においては、R及びR1のそれぞれは、独立してH及び1〜4個の炭素原子を有するヒドロカルビル基から選択される。
【0026】
一実施態様においては、少なくとも1つの三座アミン配位子を有するカソード電着可能な樹脂は、また追加のアミン基を有する。
【0027】
樹脂の三座アミン配位子は、求核性であり、金属基材表面と金属酸化物に配位して、電着コーティングの耐蝕性を高めるのに利用できる。三座アミン配位子樹脂は、1つ又はそれより多くの基−N(−R′−NR22[式中、R′は、1から4個までの炭素原子と、場合によりエーテル酸素を有するアルキル基であり、かつそれぞれのRは、独立して1〜4個の炭素原子のアルキルである]を有する。一定の実施態様においては、R′は、エチレン基又はプロピレン基であり、かつそれぞれのRは、メチル基である。
【0028】
少なくとも1つの三座アミン配位子、カルボキシレート/エステル基及びリン含有基を有する1種もしくは複数種の樹脂は、エポキシ樹脂又はビニル樹脂(例えばアクリル樹脂)であってよい。三座アミン配位子、カルボキシレート/エステル基及びリン含有基は、金属基材表面及び金属酸化物に配位するために利用でき、それにより金属基材上の電着コーティングの耐蝕性が増強される。
【0029】
様々な実施態様において、バインダーは、カソード電着可能なアミン官能性樹脂であって、リン含有基、カルボキシレート/エステル基及び三座アミン配位子を有してもよい樹脂を含む。一定の実施態様において、該電着コーティング組成物のバインダーは、約0.01質量%〜約99質量%の、リン含有基、カルボキシレート/エステル基及び三座アミン配位子を含む1種もしくは複数種の樹脂を含む。なかでも、バインダーが、約1質量%〜約90質量%の又は約5質量%〜約80質量%の、リン含有基、カルボキシレート/エステル基及び三座アミン配位子を含む1種もしくは複数種の樹脂を含む実施態様がある。一定の実施態様においては、バインダーは、架橋剤を含む。一定の実施態様において、バインダーは、電着可能な樹脂であって、リン含有基、カルボキシレート/エステル基及び三座アミン配位子を有する前記の1種もしくは複数種の樹脂とは異なる更なる樹脂を含む。これらの実施態様のいずれかにおいて、バインダーは、また、電着されたコーティング層の硬化の間に、リン含有基、カルボキシレート/エステル基及び/又は三座アミン配位子、前記の更なる電着可能な樹脂、又はこれらの樹脂の任意の組み合わせを含む1種もしくは複数種の樹脂と反応する架橋剤を含んでもよい。これらの実施態様において、該電着コーティング組成物のバインダーは、約0.01質量%〜約30質量%の、リン含有基、カルボキシレート/エステル基及び三座アミン配位子を含む1種もしくは複数種の樹脂と、約40質量%〜約80質量%の前記の更なる電着可能な樹脂を含む。電着コーティング組成物のバインダーは、一定の実施態様においては、約1質量%〜約30質量%の又は約5質量%〜約20質量%の、リン含有基、カルボキシレート/エステル基及び三座アミン配位子を含む1種もしくは複数種の樹脂と、約45質量%〜約75質量%の又は約50質量%〜約70質量%の前記の更なる電着可能な樹脂とを含んでよい。
【0030】
一定の実施態様においては、電着コーティング組成物は、全バインダー固形分の質量に対して、約0.01質量%〜約1質量%の金属酸化物を含む。
【0031】
導電性の基材、例えば金属の自動車車体又は部品をコーティングする方法であって、導電性の基材を、酸化ビスマス、酸化バナジウム、酸化マンガン、酸化コバルト、酸化亜鉛、酸化ストロンチウム、酸化イットリウム、酸化モリブデン、酸化ジルコニウム、酸化ランタン及びランタン系列の元素の酸化物からなる群から選択される金属酸化物と、リン含有基、カルボキシレート/エステル基及び三座アミン配位子を含む1種もしくは複数種の樹脂を含む電着可能なバインダーとを含む水性の電着コーティング組成物中に入れ、前記導電性の基材をカソード(アミン官能性もしくはアンモニウム官能性の主たる樹脂の場合)又はアノード(酸官能性の主たる樹脂の場合)として使用して、水性の電着コーティング組成物に電流を流して、導電性基材上にバインダーを含むコーティング層を析出させる前記方法。一定の実施態様において、リン含有基、カルボキシレート/エステル基及び三座アミン配位子を有する樹脂又は1種もしくはそれより多種の樹脂は、カソード電着可能である。次いで、析出されたコーティング層を硬化させて、硬化されたコーティング層とすることができる。後続のコーティング層を、析出された(任意に硬化された)電着されたコーティング層上に適用してよい。例えば、電着されたコーティング層は、プライマー層及び他の層、例えば任意の吹き付け適用されたプライマーサーフェイサー層であってよく、該電着されたコーティング層上に、1層もしくはそれより多層のトップコート層(例えば着色されたベースコート層及びクリヤーコート層)を適用してよい。
【0032】
前記方法の一実施態様においては、導電性の基材は、それが、金属酸化物と、リン含有基、カルボキシレート/エステル基及び三座アミン配位子の1つもしくはそれより多くを含む1種もしくは複数種の樹脂とを含む電着されたコーティングでコーティングされる前にリン酸塩処理されていない;すなわち、前記基材は、リン酸塩前処理を含まない。
【0033】
本方法の一実施態様においては、金属の自動車車体は清浄化され、清浄化された金属の自動車車体は、酸化ビスマス、酸化バナジウム、酸化マンガン、酸化コバルト、酸化亜鉛、酸化ストロンチウム、酸化イットリウム、酸化モリブデン、酸化ジルコニウム、酸化ランタン及びランタン系列の元素の酸化物からなる群から選択される金属酸化物と、1つもしくは複数のリン含有基、カルボキシレート/エステル基及び三座アミン配位子を含む1種もしくは複数種の樹脂を含むバインダーを含む水性コーティング組成物で電着される。このように、リン酸塩前処理は使用されない。バインダーは、カソード電着可能又はアノード電着可能であってよい。電着コーティング組成物のバインダーは、酸官能性又はアミン官能性の樹脂である更なる樹脂であって、電着可能であり、かつ1つもしくは複数のリン含有基、カルボキシレート/エステル基又は三座アミン配位子を有さない樹脂を含んでよく、一般に該バインダーは、1種もしくはそれより多種の樹脂と反応性であるため、電着されたコーティング層を硬化させうる架橋剤を含んでよい。バインダー中に存在する樹脂又は架橋剤のいずれか又は任意の組み合わせは、1もしくは複数のリン含有基、カルボキシレート/エステル基又は三座アミン配位子を有してよい。
【0034】
コーティングされた金属製の基材は、該基材上にコーティング層を含み、その際、前記コーティング層は、1つもしくは複数のリン含有基、カルボキシレート/エステル基及び三座アミン配位子を1つの樹脂に又は樹脂の組み合わせに有し、かつ酸化ビスマス、酸化バナジウム、酸化マンガン、酸化コバルト、酸化亜鉛、酸化ストロンチウム、酸化イットリウム、酸化モリブデン、酸化ジルコニウム、酸化ランタン、ランタン系列の元素の酸化物及びこれらの組み合わせからなる群から選択される金属酸化物を含むバインダーを含む組成物から形成される硬化されたコーティングを含む。様々な実施態様においては、バインダーは、更に、1つ又は複数のリン含有基、カルボキシレート/エステル基及び三座アミン配位子を有する1種もしくはそれより多種の樹脂、更なる電着可能な樹脂又は硬化の間に反応して硬化されたコーティングを形成するこれらの樹脂の任意の組み合わせと反応性の架橋剤を含む。硬化されたコーティングは、予想外に強い耐蝕性を提供する。予想外の耐蝕性は、1つもしくは複数のリン含有基、カルボキシレート/エステル基及び三座アミン配位子、金属酸化物及び金属製の基材の間の相互作用によるものと考えられる。理論に縛られるものではないが、1つもしくは複数のリン含有基、カルボキシレート/エステル基及び三座アミン配位子は、金属基材と金属酸化物の両方と相互作用して、金属酸化物の耐蝕性の効力を増強すると考えられる。
【0035】
"1つの"など、"その"など、"少なくとも1つ"など、"1もしくはそれより多く"などは、同義で、少なくとも1つのそのものが存在すること、複数のそのものが存在してよいことを示すために使用される。詳細な説明の終わりにある実施例以外では、特許請求の範囲を含む明細書中のパラメータ(例えば量もしくは条件)の全てのパラメータ値は、全ての場合において、その数値の前に実際に"約"があろうとなかろうと、用語"約"によって修飾されるものと理解されるべきである。"約"は、示された数値が幾らかの僅かな不正確さを可能にすることを示している(数値の正確さに対するいくらかのアプローチを伴って;その値にほぼ又はかなり近い;ほとんど)。"約"により与えられる不正確さがそれにもかかわらず当該技術分野においてこの通常の意味をもって理解されないのであれば、本願で示される"約"は、少なくとも、通常の測定法からかかるパラメータを用いて生じうるずれを示している。加えて、範囲の開示は、全ての値と、全範囲内の更に細分された範囲の開示も含む。本願詳細な説明において、"アミン官能性"は、カソード電着可能なアミン官能性の又はアンモニウム官能性の樹脂を指すために使用される。
【0036】
更なる適用範囲の領域は、本願にある詳細な説明から明らかになる。詳細な説明及び特定の実施例は、説明を目的とするに過ぎず、本開示の範囲を制限することを意図するものではないと理解されるべきである。
【0037】
詳細な説明
以下の詳細な説明は、単に例示を性質とするものであり、本開示、用途もしくは使用を制限することを意図するものではない。
【0038】
金属基材は、リン酸塩処理されていなくてよく、前記基材は、エステル基から2〜4個の炭素だけ離れたカルボキシル基を有する、例えば環状無水物のモノエステル及びリン酸化樹脂を含むバインダーを有する水性の電着コーティング組成物で電着される。電着されたコーティング層は、硬化されてよく、1層もしくはそれより多層の追加のコーティング層で上塗りされてよい。また、リン酸塩処理されていなくてよい金属基材又は金属製基材であって、酸化ビスマス、酸化バナジウム、酸化マンガン、酸化コバルト、酸化亜鉛、酸化ストロンチウム、酸化イットリウム、酸化モリブデン、酸化ジルコニウム、酸化ランタン、ランタン系列の元素の酸化物及びこれらの組み合わせからなる群から選択される金属酸化物を含み、かつ三座アミン配位子、エステル基から2〜4個だけ離れたカルボキシル基(例えば環状無水物のモノエステル)及びリン酸化樹脂(リン含有エステル基を有する樹脂)を含むバインダーを有する水性の電着コーティング組成物で電着される基材も開示されている。電着されたコーティング層は、硬化されてよく、1層もしくはそれより多層の追加のコーティング層で上塗りされてよい。
【0039】
前記リン酸化樹脂は、構造
【化5】

[式中、Xは、水素、一価の炭化水素基(すなわちヒドロカルビル基)、アルキル基、例えばアミノアルキル基、アリール基、アルキルアリール基、アリールアルキル基又は酸素原子であり、その酸素原子は、リン原子に対して単独の共有結合を有し、かつそれぞれの酸素原子は、水素原子、アルキル基、アリール基、アルキルアリール基、アリールアルキル基又は樹脂に対して共有結合を有するが、但し、少なくとも1個の酸素原子は、樹脂に対して共有結合を有する]を有する少なくとも1つの共有結合されたリン含有基を有する。それぞれの場合に、アルキル基は、シクロアルキル基であってよい。リン酸化樹脂は、また、カルボキシレート/エステル基を含んでもよく、又は前記カルボキシレート/エステル基は、別の樹脂の一部又は架橋剤の一部であってよい。リン酸化樹脂は、また、三座アミン配位子を含んでもよく、又は前記三座アミン配位子は、別の樹脂の一部又は架橋剤の一部であってよい。
【0040】
リン酸化樹脂は、任意の樹脂又は重合可能なモノマーであって、リン含有基とエステル化されうるものを使用して製造できる。電着コーティングバインダーは、しばしば、エポキシ樹脂を含み、かつリン酸化樹脂は、これらの1つ、例えばエポキシ樹脂であってよい。リン酸化樹脂は、アミン官能性であってよく、そのため前記樹脂はそれ自体でカソード電着可能であり、又は酸官能性であってよく、そのため前記樹脂はそれ自体でアノード電着可能であり("主たる"樹脂)、又は前記樹脂を、アミン官能性又は酸官能性の更なる樹脂と組み合わせてよい(その場合には更なる樹脂が主たる樹脂である)。
【0041】
樹脂及び反応してリン含有基とエステル化されていてよい樹脂を生成しうるモノマーの好適な例は、エポキシ基又はヒドロキシ基を有するものを含む。エポキシ官能性又はヒドロキシ官能性の樹脂又はモノマーは、−P(OR)2=O基含有の酸又は酸誘導体と反応され、その際、それぞれのRは、独立して水素又はアルキル基であり、その際、少なくとも1つのRは、水素原子又は低級アルキル基(特にメチル、エチル、プロピル及びイソプロピル)であり、前記酸はエステル交換されうるもの、例えばリン酸、リン酸のモノエステルもしくはジエステル、次リン酸、次リン酸のモノエステル、アルキルホスホン酸もしくはアリールホスホン酸、アルキルホスホン酸もしくはアリールホスホン酸のモノエステル及びこれらの組み合わせである。
【0042】
エポキシ官能性又はヒドロキシ官能性の樹脂又はモノマーは、リン含有の酸又は酸誘導体との反応のために少なくとも1つのエポキシ基又はヒドロキシル基を有する。例えば、エポキシ樹脂は、エポキシ基及び/又はヒドロキシル基を有し、前記基は、リン含有の酸又は酸誘導体と反応されうる。エポキシド樹脂であって、−P(OR)2=O基を有する酸又は酸誘導体と反応されうる樹脂の好適な制限されない例は、複数のエポキシ基及び/又はヒドロキシル基を有するエポキシ樹脂、例えばジグリシジル芳香族化合物、例えば多価フェノール類、例えば2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、4,4′−ジヒドロキシベンゾフェノン、ジヒドロキシアセトフェノン類、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニレン)エタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)イソブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−t−ブチルフェニル)プロパン、1,4−ビス(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン、2−メチル−1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(2−ヒドロキシナフチル)メタン、1,5−ジヒドロキシ−3−ナフタレン及び他のジヒドロキシナフチレン類、カテコール、レゾルシノールなどのジグリシジルエーテル、例えばビスフェノールAのジグリシジルエーテル及び構造
【化6】

[式中、Qは
【化7】

であり、RはH、メチル又はエチルであり、かつnは、0〜10の整数である]を有するビスフェノールAを基礎とする樹脂を含む。一定の実施態様においては、nは、1〜5の整数である。また好適なのは、脂肪族ジオールのジグリシジルエーテル、例えば1,4−ブタンジオール、シクロヘキサンジメタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリ(テトラヒドロフラン)、1,3−プロパンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパンなどのジグリシジルエーテルである。ジカルボン酸のジグリシジルエステルは、またポリエポキシドとして使用することもできる。特定の化合物の例は、シュウ酸、シクロヘキサン二酢酸、シクロヘキサンジカルボン酸、コハク酸、グルタル酸、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などのジグリシジルエステルを含む。ポリグリシジル反応物は、好ましくは少量でジエポキシド反応物と組み合わせて使用してよい。ノボラックエポキシドは、ポリエポキシド官能性反応物として使用してよい。ノボラックエポキシ樹脂は、エポキシフェノールノボラック樹脂もしくはエポキシクレゾールノボラック樹脂から選択できる。他の好適な高級官能性ポリエポキシドは、トリオール及び高級ポリオールのグリシジルエーテル及びエステル、例えばトリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、2,6−ビス(ヒドロキシメチル)−p−クレゾール及びグリセロール;トリカルボン酸もしくはポリカルボン酸のトリグリシジルエーテルである。また、ポリエポキシドとして有用なのは、エポキシ化アルカン、例えばシクロヘキセンオキシド及びエポキシ化脂肪酸及び脂肪酸誘導体、例えばエポキシ化大豆油である。他の有用なポリエポキシドは、制限されないが、ポリエポキシドポリマー、例えばアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂及びエポキシ樹脂及びポリマー並びにエポキシ変性されたポリブタジエン、ポリイソプレン、アクリロブタジエンニトリルコポリマー又は他のエポキシ変性されたゴムを基礎とする複数のエポキシ基を有するポリマーを含む。
【0043】
ポリエポキシ樹脂を、延長剤と反応させて、β−ヒドロキシエステル結合を有するより高分子量を有するポリエポキシ樹脂を製造することができる。好適な延長剤の制限されない例は、ポリカルボン酸、ポリオール、ポリフェノール、及び2個以上のアミノ水素を有するアミン、特にジカルボン酸、ジオール、ジフェノール及びジアミンを含む。1つ又はそれより多くのヒドロキシル基と、エポキシ基と反応性の3つ又はそれより多くの基とを有する延長剤は、−P(OR)2=O基含有の酸又は誘導体でエステル化されて、エポキシ基と反応性の2つの基と、1つもしくはそれより多くのリン含有基とを有する生成物を提供する。特に、好適な延長剤の制限されない例は、ジフェノール、ジオール及び二酸、例えばポリエポキシの形成に関連して前記されたもの;ポリカプロラクトンジオール及びエトキシ化ビスフェノールA、例えばBASF Corporation社から商品名MACOL(登録商標)として入手できるものを含む。他の好適な延長剤は、制限されないが、カルボキシ官能性もしくはアミン官能性のアクリル、ポリエステル、ポリエーテル及びエポキシ樹脂及びポリマーを含む。更なる他の好適な延長剤は、制限されないが、ポリアミン、例えばジアミン、例えばエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジメチルアミノプロピルアミン、ジメチルアミノブチルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ジエチルアミノブチルアミン、ジプロピルアミン及びピペリジン、例えば1−(2−アミノエチル)ピペラジン、ポリアルキレンポリアミン、例えばトリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、トリプロピレンテトラミン、テトラプロピレンペンタミン、ペンタプロピレンヘキサミン、N,N′−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン、N−(2−ヒドロキシエチル)プロパン−1,3−ジアミン並びにポリオキシアルキレンアミン、例えばBASF AG社から商品名POLYAMIN(登録商標)として得られるもの又はHuntsman社から商品名JEFFAMINE(登録商標)として得られるものを含む。
【0044】
一官能性の反応物は、場合によりポリエポキシ樹脂及び延長剤と、又はポリエポキシドと延長剤とが反応されて、エポキシ官能性樹脂が製造された後に反応されてよい。好適な一官能性反応物の制限されない例は、フェノール、アルキルフェノール、例えばノニルフェノール及びドデシルフェノール、他の一官能性のエポキシ反応性化合物、例えばジメチルエタノールアミン及びモノエポキシド、例えばフェノールのグリシジルエーテル、ノニルフェノールのグリシジルエーテル又はクレゾールのグリシジルエーテル及び二量体脂肪酸を含む。一官能性の反応物は、また、リン含有基を有してもよい。例えば、ジオールの1つのヒドロキシル基は、−P(OR)2=O基含有の酸又は誘導体と反応して、リン含有基を有する一官能性の反応物が提供される。
【0045】
ポリエポキシ樹脂と延長剤及び任意に一官能性の反応物との反応のために有用な触媒は、オキシラン環を活性化する触媒、例えば第三級アミンもしくは第四級アンモニウム塩(例えばベンジルジメチルアミン、ジメチルアミノシクロヘキサン、トリエチルアミン、N−メチルイミダゾール、テトラメチルアンモニウムブロミド及びテトラブチルアンモニウムヒドロキシド)、スズ及び/又はリンの錯塩(例えば(CH33SNI、(CH34PI、トリフェニルホスフィン、エチルトリフェニルホスホニウムヨージド、テトラブチルホスホニウムヨージド)などを含む。当該技術分野においては、第三級アミン触媒は、幾つかの反応で好ましいことがあると知られている。該反応は、約100℃〜約350℃(他の実施態様においては160℃〜250℃)の温度で溶剤中又はストレートで実施してよい。好適な溶剤は、制限されないが、不活性有機溶剤、例えばケトン、例えばメチルイソブチルケトン及びメチルアミルケトン、芳香族溶剤、例えばトルエン、キシレン、Aromatic 100及びAromatic 150並びにエステル、例えばブチルアセテート、n−プロピルアセテート、ヘキシルアセテートを含む。
【0046】
ポリエポキシ樹脂と、リン含有の酸又は酸誘導体とは、ポリエポキシ樹脂と延長剤及び任意の一官能性の反応物との反応の前、その間又はその後に反応されうる。前記の酸又は酸誘導体との反応は、延長剤との反応の前又は後に行われる場合には、約50℃〜約150℃の温度で、既に挙げられた任意の溶剤を含む溶剤中で又はストレートで実施してよい。ポリエポキシ樹脂は、また、リン含有の酸又は酸誘導体及び任意に一官能性の反応物、例えば既に記載したものと反応されて、延長剤と反応されていなくてよい。
【0047】
リン酸化樹脂は、アミン官能性のリン酸化樹脂であってよい。アミン官能性のリン酸化樹脂は、少なくとも1個のアミン基を有し、このアミン官能性は、リン酸化反応の前又は後に導入されうる。前に導入される場合に、アミン官能性は、ポリエポキシ樹脂と、第三級アミン基を有する延長剤又は第三級アミン基を有する一官能性の反応物との反応によって導入することができる。アミン基を有する延長剤及び一官能性の反応物の好適な制限されない例は、ジエタノールアミン、ジプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、ジブタノールアミン、ジイソブタノールアミン、ジグリコールアミン、メチルエタノールアミン、ジメチルアミノプロピルアミン及び第一級アミン基を有する化合物であって、ケチミンの形成により保護されているもの、例えばジエチレントリアミンのケチミンを含む。
【0048】
エポキシ樹脂、延長されたポリエポキシ樹脂又はエポキシ官能性の樹脂を、次いで、リン含有の酸又は酸誘導体と反応させて、リン酸化樹脂が製造される。一定の特定の実施態様においては、エポキシ樹脂、延長されたポリエポキシ樹脂又はエポキシ官能性の樹脂は、リン酸又はリン酸源と反応されて、リン酸化樹脂が製造される。リン酸又はリン酸源であって、反応で使用されるものは、非水性のリン酸、水中85%のリン酸、より希釈された水性リン酸、ピロリン酸又はポリリン酸であってよい。他の好適なリン酸源は、Campbell他による米国特許第4,397,970号に記載されており、それは参照をもって開示されたものとする。他の実施態様においては、エポキシ樹脂、延長されたポリエポキシ樹脂又はエポキシ官能性の樹脂は、他のリン含有の酸又は酸誘導体、例えば前記の1つと反応される。
【0049】
リン酸化樹脂は、モノホスホン酸エステル、ジホスホン酸エステル、モノリン酸エステル、二リン酸エステル及び三リン酸エステル並びにこれらの組み合わせを含んでよい。更に、リン酸化樹脂は、1個又は複数個のリン含有のエステル基を有してよい。リン含有の酸又は酸誘導体のエステル化の程度並びに樹脂中に導入されたリン含有のエステル基の数は、とりわけ、反応物の相対当量によって制御できる。一例では、約1当量から約3当量の樹脂(エポキシ基及びヒドロキシル基に対して)を、それぞれの当量のリン酸又はリン酸誘導体と反応させる。もう一つの例では、約1当量から約2当量の樹脂(エポキシ基及びヒドロキシル基に対して)を、それぞれの当量のリン酸又はリン酸誘導体と反応させる。樹脂の反応性基の当量は、酸又は酸誘導体の過剰な当量であってもよい。樹脂及びリン酸もしくはホスホン酸又はそれらの酸誘導体を一緒に混合し、所望の反応の程度が得られるまで反応させてよい。一定の実施態様においては、エポキシ官能性樹脂の反応後のエポキシ当たりの質量は、約180〜約1200である。
【0050】
樹脂及びリン含有の酸又は酸誘導体に加えて使用できる他の反応物は、アルコール、例えばn−ブタノール、イソプロパノール及びn−プロパノール;グリコールエーテル、例えばエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、及びプロピレングリコールモノプロピルエーテル;アミン、例えば上述のいずれか;水及びこれらの組み合わせを含んでよい。これらの反応物は、また、樹脂と酸又は酸誘導体との反応の後に過剰のオキシラン基と反応させるために使用することもできる。
【0051】
アミン官能性又はカルボキシル官能性は、2つの様式の一方でリン酸化樹脂に付与することができる。第一の様式では、エポキシ基と反応性の少なくとも1つの活性水素を有するアミンは、エポキシ官能性樹脂及びリン酸又はリン酸源の反応における反応物として含まれる。第二の様式では、エポキシ官能性のエポキシ樹脂及びリン酸の反応生成物(及び任意の更なる反応物)は、エポキシ官能性の生成物であり、それは次いで更に、エポキシ基と反応性の少なくとも1つの活性水素を有するアミンと反応される。好適なアミン化合物の例は、制限されないが、ジメチルアミノプロピルアミン、N,N−ジエチルアミノプロピルアミン、ジメチルアミノエチルアミン、N−アミノエチルピペラジン、アミノプロピルモルホリン、テトラメチルジプロピレントリアミン、メチルアミン、エチルアミン、ジメチルアミン、ジブチルアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジメチルアミノブチルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ジエチルアミノブチルアミン、ジプロピルアミン、メチルブチルアミン、アルカノールアミン、例えばメチルエタノールアミン、アミノエチルエタノールアミン、アミノプロピルモノメチルエタノールアミン並びにジエタノールアミン、ジケチミン(1モルのジエチレントリアミンと2モルのメチルイソブチルケトンとの反応生成物)及びポリオキシアルキレンアミンを含む。酸官能性の樹脂は、エポキシ基とジカルボン酸とを、ジカルボン酸を過剰当量で使用して反応させることによって製造できる。好適なカルボン酸の例は、制限されないが、シュウ酸、マレイン酸、マロン酸、コハク酸及びアジピン酸を含む。
【0052】
一定の実施態様においては、リン酸化されたエポキシ官能性の樹脂は、延長剤、つまり上述のいずれかと反応される。
【0053】
他の実施態様においては、リン酸化樹脂は、ビニル樹脂、例えばアクリルポリマーであってよい。リン酸化されたビニルポリマー又はアクリルポリマーは、アクリルポリマーを、エポキシ官能性もしくはヒドロキシ官能性又は両方とリン含有の酸又はエステル化可能な誘導体でエステル交換することによって製造でき、又はリン含有基を有する重合可能なモノマーの重合によって製造でき、又はリン含有の酸又は酸誘導体でエステル化されている。ヒドロキシル基との反応は、エステル結合を生成するが、一方で、エポキシ基との反応は、β炭素上のヒドロキシル基とエステル結合を生成する。アクリルポリマーは、少なくとも1つのアクリレート又はメタクリレートモノマーと、場合により他のビニルモノマーとの付加重合によって製造される。便宜上、"アクリル"及び"ビニル"は、一般に少なくとも1つのアクリレート又はメタクリレートモノマーが共重合されるので、ビニルモノマー(例えばアクリレート及びメタクリレートモノマー)のポリマーを指すために共通に使用される。
【0054】
リン含有の酸又は誘導体と反応されうる付加重合可能なモノマー又はリン含有の酸又は共重合して誘導体との反応のためにアクリルポリマー上にヒドロキシル基又はエポキシ基を提供しうる付加重合可能なモノマーの好適な例は、制限されないが、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレート、アリルアルコール、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル及びこれらの組み合わせを含む。ヒドロキシル基又はエポキシ基も、コーティングの硬化の間の架橋可能な官能性として使用すべき場合には、導入されるヒドロキシル基又はエポキシ基の量は、リン含有の酸又はエステル化可能な誘導体と反応して、所望の量のヒドロキシル基又はエポキシ基を硬化の間の架橋のために提供するのに必要とされるものより高められる。
【0055】
ヒドロキシル基、エポキシ基又はリン含有基を有する付加重合可能なモノマーは、アクリルポリマーの形成において、他の付加重合可能なモノマーと共重合されうる。好適なモノマーの制限されない例は、3〜5個の炭素原子を有するα,β−エチレン性不飽和のモノカルボン酸及びエチレン性不飽和のジカルボン酸及び無水物;3〜5個の炭素原子を有するα,β−エチレン性不飽和のモノカルボン酸及びエチレン性不飽和のジカルボン酸及び無水物のエステル、ニトリル又はアミド;ビニルエステル、ビニルエーテル、ビニルケトン、ビニルアミド及び芳香環及び複素環のビニル化合物を含む。代表的な例は、アクリル酸及びメタクリル酸、アミド及びアミノアルキルアミド;アクリロニトリル及びメタクリロニトリル;アクリル酸及びメタクリル酸のエステル、例えば1〜20個の炭素原子を有する飽和の脂肪族及び脂環式のアルコールのエステル、例えばメチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、プロピルアクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルアクリレート、イソプロピルメタクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、イソブチルアクリレート、イソブチルメタクリレート、t−ブチルアクリレート、t−ブチルメタクリレート、アミルアクリレート、アミルメタクリレート、イソアミルアクリレート、イソアミルメタクリレート、ヘキシルアクリレート、ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、デシルアクリレート、デシルメタクリレート、イソデシルアクリレート、イソデシルメタクリレート、ドデシルアクリレート、ドデシルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、置換シクロヘキシルアクリレート及びメタクリレート、3,5,5−トリメチルヘキシルアクリレート、3,5,5−トリメチルヘキシルメタクリレート、ジメチルアミノエチル、t−ブチルアミノ、テトラヒドロフルフリル及びイソボルニルアクリレート及びメタクリレート;マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、ビニル酢酸及びイタコン酸などの相応のエステル、例えばマレイン酸ジメチルエステル及びマレイン酸モノヘキシルエステル;及びビニルモノマー、例えばビニルアセテート、ビニルプロピオネート、ビニルエチルエーテル;及びビニルエチルケトン、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、2−ビニルピロリドン、t−ブチルスチレンなどを含む。他の有用な重合可能なコモノマーは、例えばアルコキシエチルアクリレート及びメタクリレート、アクリルオキシアクリレート及びメタクリレート並びにアクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクロレイン及びメタクロレインなどの化合物を含む。これらの組み合わせが通常は使用される。
【0056】
アクリルポリマーは、慣用の技術によって、例えばフリーラジカル重合、カチオン重合又はアニオン重合によって、例えば回分法で、半回分法で、又は連続供給法で製造できる。例えば、重合は、エチレン性不飽和モノマーを、塊状で又は溶液で、フリーラジカル源、例えば有機ペルオキシド又はアゾ化合物と、場合により連鎖移動剤の存在下で、回分反応器又は連続供給反応器中で加熱することによって実施できる。選択的に、モノマー及び開始剤は、加熱された反応器中に制御された速度で半回分法で供給してよい。
【0057】
典型的なフリーラジカル源は、有機ペルオキシド、例えばジアルキルペルオキシド、ペルオキシエステル、ペルオキシジカーボネート、ジアシルペルオキシド、ヒドロペルオキシド及びペルオキシケタール;並びにアゾ化合物、例えば2,2′−アゾビス(2−メチルブタンニトリル)及び1,1′−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)である。典型的な連鎖移動剤は、メルカプタン、例えばオクチルメルカプタン、n−もしくはt−ドデシルメルカプタン、チオサリチル酸(thiosalicyclic acid)、メルカプト酢酸及びメルカプトエタノール;ハロゲン化化合物及び二量体のα−メチルスチレンである。フリーラジカル重合は、通常は、約20℃〜約250℃の、好ましくは90℃〜170℃の温度で実施される。該反応は、ビニルコポリマーの生成のための慣用の方法に従って実施される。
【0058】
エポキシ官能性又はヒドロキシ官能性のアクリルポリマー又はモノマーと反応しうる好適なリン含有の酸誘導体は、エステル化可能なエステル及びリン含有酸の無水物を含む。なかでも、好適な例は、前記の−P(OR)2=O基含有の酸又は酸誘導体であって、少なくとも1個のR(それは、水素原子又は低級アルキル基(4個までの炭素原子、特にメチル、エチル、プロピル、イソプロピル及びt−ブチル)である)を有する、エステル化されていてよいもの、例えばリン酸、リン酸のモノエステルもしくはジエステル、次リン酸、次リン酸のモノエステル、アルキルホスホン酸もしくはアリールホスホン酸、アルキルもしくはアリールホスホン酸のモノエステル並びにこれらの組み合わせである。反応で使用されるリン酸又はリン酸源は、非水性のリン酸、水中85%のリン酸、より希釈された水性リン酸、ピロリン酸又はポリリン酸であってよい。他の好適なリン酸源は、Campbell他による米国特許第4,397,970号に記載されており、それは参照をもって開示されたものとする。アクリルポリマーは、リン含有の酸又は酸誘導体との反応のために少なくとも1つのエポキシ基又はヒドロキシル基を有する。
【0059】
リン含有の酸又は酸誘導体は、アクリルポリマーの重合前に重合可能なモノマーと反応されてよく、又は重合の間又は重合の後にアクリルポリマーと反応されてよい。前記の酸又は酸誘導体とのポリマー又はモノマーと一緒の反応は、約50℃〜約150℃の温度で、既に挙げられた任意の溶剤を含む溶剤中で又はストレートで実施してよい。重合前に実施される場合には(すなわち、付加重合可能なエチレン性不飽和のモノマーが用いられる)、付加重合可能な不飽和基を保つために少量の重合抑制剤(例えばヒドロキノン又はメチルヒドロキノン)を使用することが推奨される。好適な溶剤は、制限されないが、不活性有機溶剤、例えばケトン、例えばメチルイソブチルケトン及びメチルアミルケトン、芳香族溶剤、例えばトルエン、キシレン、Aromatic 100及びAromatic 150並びにエステル、例えばブチルアセテート、n−プロピルアセテート、ヘキシルアセテートを含む。
【0060】
リン酸化されたアクリルポリマーは、アクリルポリマーのモノホスホン酸エステル、ジホスホン酸エステル、モノリン酸エステル、二リン酸エステル及び三リン酸エステル並びにこれらの組み合わせを含んでよい。更に、リン酸化されたアクリルポリマーは、1個又は複数個のリン含有のエステル基を有してよい。リン含有の酸又は酸誘導体によるエステル化の程度並びに樹脂中に導入されたリン含有のエステル基の数は、とりわけ、反応物の相対当量によって制御できる。一例では、約1当量から約3当量のビニルポリマー又はアクリルポリマー(エポキシ基及び/又はヒドロキシル基に対して)を、それぞれの当量のリン酸又はリン酸誘導体と反応させる。もう一つの例では、約1当量から約2当量のアクリルポリマー(エポキシ基及びヒドロキシル基に対して)を、それぞれの当量のリン酸又はリン酸誘導体と反応させる。該ポリマーの反応性基の当量は、酸又は酸誘導体の過剰な当量であってもよい。前記ポリマー及びリン酸もしくはホスホン酸又はそれらの酸誘導体を一緒に混合し、所望の反応の程度が得られるまで反応させてよい。幾つかの実施態様においては、アクリルポリマー又はビニルポリマーは、1グラムあたりに約0.01〜約1ミリ当量のリン含有基を有する;幾つかの実施態様においては、前記のアクリルポリマー又はビニルポリマーは、1グラムあたりに約0.01〜約0.1ミリ当量のリン含有基を有する。
【0061】
リン酸化反応において、アクリルポリマー及びリン含有の酸又は酸誘導体に加えて使用できる他の反応物は、アルキルアルコール又は芳香族アルコール、例えばn−ブタノール、イソプロパノール及びn−プロパノール;グリコールエーテル、例えばエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、及びプロピレングリコールモノプロピルエーテル;アルキルアミン又は芳香族アミン、例えばジメチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、ジプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、ジブタノールアミン、ジイソブタノールアミン、ジグリコールアミン、メチルエタノールアミン、ジメチルアミノプロピルアミン、水及びこれらの組み合わせを含んでよい。これらの反応物は、また、アクリルポリマーと酸又は酸誘導体との反応の後に過剰のオキシラン基又はヒドロキシル基と反応させるために使用することもできる。類似に、かかる他の反応物は、エポキシ基又はヒドロキシル基を有する重合可能なモノマーが、アクリルポリマーの重合前にリン含有の酸又は酸誘導体と反応される場合に含まれることがある。
【0062】
アクリル樹脂は、酸官能性の導入によって、例えば酸含有モノマー、例えばアクリル酸、メタクリル酸、不飽和ジカルボン酸又はこれらの環状無水物の重合によってアノード電着可能にすることができる。アクリル樹脂は、アミン官能性の導入によって、例えばアミノ含有モノマー、例えばアクリルアミド、メタクリルアミド、N,N′−ジメチルアミノエチルメタクリレート、t−ブチルアミノエチルメタクリレート、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、ビニルピロリジン又は他のかかるアミノモノマーの重合によってカソード電着可能にすることができる。選択的に、エポキシ基は、重合反応でエポキシ官能性モノマーを含めることによって導入し、次いで第二のアミンと反応させることができる。エポキシ基がまたアクリルポリマーにリン含有基を導入するのに使用される場合に、十分な量のエポキシ基は両方の目的のために導入される。アミン官能性は、2つの様式のいずれかでエポキシ官能性を有するアクリルポリマーに付与することができる。第一の様式では、エポキシ基と反応性の少なくとも1つの活性水素を有するアミンは、エポキシ官能性樹脂及びリン含有の酸又はリン含有の酸源の反応における反応物として含まれる。第二の様式では、リン酸化されたアクリルポリマーは、エポキシ官能性生成物として形成され、前記生成物は、次いで更に、エポキシ基と反応性の少なくとも1つの活性水素を有するアミンと反応される。好適なアミン化合物の例は、制限されないが、ジメチルアミノプロピルアミン、N,N−ジエチルアミノプロピルアミン、ジメチルアミノエチルアミン、N−アミノエチルピペラジン、アミノプロピルモルホリン、テトラメチルジプロピレントリアミン、メチルアミン、エチルアミン、ジメチルアミン、ジブチルアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジメチルアミノブチルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ジエチルアミノブチルアミン、ジプロピルアミン、メチルブチルアミン、アルカノールアミン、例えばメチルエタノールアミン、アミノエチルエタノールアミン、アミノプロピルモノメチルエタノールアミン並びにジエタノールアミン、ジケチミン(1モルのジエチレントリアミンと2モルのメチルイソブチルケトンとの反応生成物)及びポリオキシアルキレンアミンを含む。
【0063】
ヒドロキシル基を有するモノマー及び塩形成のための基(カチオン性基についてはアミン又はアニオン性基については酸もしくは無水物)を有するモノマーは、既に上述した、1種又はそれより多種の他のエチレン性不飽和モノマーと一緒に重合させてよい。
【0064】
幾つかの実施態様において、リン酸化樹脂は、ポリエステル樹脂である。多官能性の酸又は無水物の化合物は多官能性のアルコールと反応して、ポリエステルを形成でき、アルキル化合物、アルキレン化合物、アラルキレン化合物及び芳香族化合物を含む。典型的な化合物は、ジカルボン酸及び無水物を含むが、より高い官能性を有する酸又は無水物を使用してもよい。三官能性の化合物又はより高い官能性の化合物を使用する場合に、これらの化合物は、一官能性のカルボン酸又はモノカルボン酸、例えばバーサチック酸、脂肪酸又はネオデカン酸の無水物との混合物で使用することができる。リン含有基は、三官能性のポリオール化合物又はより高い官能性のポリオール化合物と、−P(OR)2=O基含有の酸又は酸誘導体とを反応させて、1つ又はそれより多くのリン含有基を有するより低い官能性のポリオールを提供することによって含まれうる。
【0065】
ポリエステル基の形成に適した酸官能性の又は無水物官能性の化合物又はかかる化合物の無水物の実例は、フタル酸、無水フタル酸、テレフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、テトラクロロフタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、ピロメリト酸無水物、コハク酸、アゼライン酸、アジピン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、クエン酸及びトリメリト酸無水物を含む。
【0066】
ポリエステル樹脂の製造に使用されるポリオール成分は、少なくとも2つのヒドロキシル官能性を有する。ポリオール成分は、一官能性、二官能性及び三官能性のアルコール並びにより高い官能性のアルコールを含んでよい。ジオールは、典型的なポリオール成分である。より高い官能性を有するアルコールは、ポリエステルの幾つかの分枝が望まれる場合には使用され、そしてジオールとトリオールの混合物は、ポリオール成分として使用することができる。しかしながら、幾つかの場合には、高度に分枝したポリエステルは、コーティングにおける効果、例えば低減された流動及び硬化された被膜における不所望な効果、例えば低減された耐チッピング性及び滑らかさのため望ましくない。
【0067】
有用なポリオールの例は、それらに制限されないが、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリトリトール、ネオペンチルグリコール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、水素化ビスフェノールA及びエトキシ化ビスフェノール類を含む。
【0068】
ポリエステル樹脂の製造方法はよく知られている。ポリエステルは、一般に、ポリオール及び多官能性の酸成分を、触媒を用いて又は用いずに、反応を完了に導くために副成分の水を除去しながら加熱することによって形成される。少量の溶剤、例えばトルエンを添加して、水を共沸的に除去することができる。添加される場合に、かかる溶剤は、コーティングの配合の開始前にポリエステル生成物から除去される。ポリエステル樹脂は、ヒドロキシル基と−P(OR)2=O基含有の酸又は酸誘導体と反応させることによってリン酸化させることができる。
【0069】
幾つかの実施態様において、リン酸化樹脂は、ポリウレタン樹脂であってよい。ポリウレタンは、一般に、2種の成分から形成でき、その際、第一の成分は、イソシアネート反応性基、好ましくはヒドロキシル基を有する化合物を含み、それは、イソシアネート付加反応のために少なくとも二官能性である。第二の成分は、少なくとも1つのポリイソシアネート化合物を含む。
【0070】
ポリオール成分は、重合反応のために少なくとも二官能性でなければならない。これらの化合物は、一般に、約2〜8の、好ましくは約2〜4の平均官能性を有する。好適なポリオールの例は、エポキシ樹脂の製造のために延長剤化合物に関連して挙げられたもの又はポリエステル樹脂の製造のためのポリオールであり、リン含有基が設けられているものを含む。
【0071】
なかでも、イソシアネート反応性の水素原子を含むマクロモノマー化合物は、公知のポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリヒドロキシポリアクリレート及びヒドロキシル基を有するポリカーボネートである。これらのポリヒドロキシル化合物に加えて、ポリヒドロキシポリアセタール、ポリヒドロキシポリエステルアミド、末端ヒドロキシル基もしくはスルフヒドリル基を含むポリチオエーテル又はアミノ基、チオール基もしくはカルボキシル基を含む少なくとも1つの二官能性の化合物を使用してもよい。イソシアネート反応性の水素原子を含む化合物の混合物を使用してもよい。他の例示的なヒドロキシル含有化合物は、米国特許第4,439,593号(1984年5月27日発行)に見出すことができ、それは、参照をもって開示されたものとする。
【0072】
ポリウレタン樹脂は、ヒドロキシル基と−P(OR)2=O基含有の酸又は酸誘導体と反応させることによってリン酸化させることができる。
【0073】
カチオン性のポリウレタン及びポリエステルを使用してもよい。かかる材料は、例えばアミノアルコールもしくは酸無水物で末端封鎖することによって製造でき、又はポリウレタンの場合には、エポキシ樹脂に関して前記の塩形成可能なアミン基を含む化合物又はジアルキロールアルカン酸が有用なこともある。かかる樹脂は、リン含有酸の1つと樹脂上のヒドロキシル基との反応によってリン酸化することができる。ポリウレタンもポリエステルポリマーも両方とも、化学量論的に過剰なポリオールモノマーをポリイソシアネート又はポリ酸のそれぞれのモノマーとの反応によってヒドロキシル官能性にすることができる。
【0074】
ポリブタジエン、ポリイソプレン、又は他のエポキシ変性ゴムベースのポリマーは、本発明においてリン酸化樹脂として使用することができる。エポキシゴムは、塩形成可能なアミン基を含む化合物で封鎖することができる。1つ又はそれより多くのペンダント(pedant)のエポキシ基又はヒドロキシル基は、リン含有の酸の1つと反応して、リン酸化樹脂を製造することができる。
【0075】
バインダーは、また、エステル基から2〜4個だけ離れたカルボキシレート基、例えば環状無水物のモノエステルを含む。カルボキシレート/エステル基は、リン酸化樹脂、主たる樹脂、架橋剤樹脂又はなおも他の樹脂の一部であってよい。該樹脂は、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリシロキサン樹脂、ポリビニル樹脂、ポリエーテル樹脂、アミノプラスト樹脂及びポリエステル樹脂から選択でき、それらの混合物を含んでよい。幾つかの実施態様においては、カルボキシレート/エステル基は、樹脂に、なかでもエステル結合、アミン結合、ウレタン結合及びエーテル結合などの結合で結合される。これらの結合を生成する官能基の例示的反応は、酸と反応してエステル結合を生ずるエポキシド;アミンと反応してアミン結合を生ずるエポキシド;イソシアネートと反応してウレタン結合を生ずるヒドロキシル;無水物と反応してエステル結合を生ずるヒドロキシル;ヒドロキシルと反応してエーテル結合を生ずるエポキシドを含む。特定の一実施態様においては、カルボキシレート/エステル基は、樹脂と環状無水物との反応によって生成される。様々な実施態様においては、カルボキシレート/エステル基は、構造
【化8】

[式中、nは、2、3又は4であり、R及びR1のそれぞれは、独立してH及び1〜4個の炭素原子を有するアルキル基から選択される]を有してよい。一定の実施態様においては、R及びR1のそれぞれは、独立してH及び1〜4個の炭素原子を有するヒドロカルビル基から選択される。
【0076】
幾つかの実施態様においては、カルボキシレート/エステル基を有する樹脂は、前記のように製造されたエポキシ樹脂、アクリルポリマー、ポリウレタンポリマー又はポリエステルポリマーである。環状無水物は、樹脂上の基、例えばエポキシ基、ヒドロキシル基、チオール基又は第一級もしくは第二級のアミン基と反応しうる。
【0077】
幾つかの実施態様においては、樹脂は、エポキシ樹脂又はアクリルポリマーである。これらは、既に記載された方法に従って製造できる。
【0078】
幾つかの実施態様において、該樹脂は、ポリエステル樹脂である。多官能性の酸又は無水物の化合物は多官能性のアルコールと反応して、ポリエステルを形成でき、アルキル化合物、アルキレン化合物、アラルキレン化合物及び芳香族化合物を含む。典型的な化合物は、ジカルボン酸及び無水物を含むが、より高い官能性を有する酸又は無水物を使用してもよい。三官能性の化合物又はより高い官能性の化合物を使用する場合に、これらの化合物は、一官能性のカルボン酸又はモノカルボン酸、例えばバーサチック酸、脂肪酸又はネオデカン酸の無水物との混合物で使用することができる。
【0079】
ポリエステル基の形成に適した酸官能性の又は無水物官能性の化合物又はかかる化合物の無水物の実例は、フタル酸、無水フタル酸、テレフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、テトラクロロフタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、ピロメリト酸無水物、コハク酸、アゼライン酸、アジピン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、クエン酸及びトリメリト酸無水物を含む。
【0080】
ポリエステル樹脂の製造に使用されるポリオール成分は、少なくとも2つのヒドロキシル官能性を有する。ポリオール成分は、一官能性、二官能性及び三官能性のアルコール並びにより高い官能性のアルコールを含んでよい。ジオールは、典型的なポリオール成分である。より高い官能性を有するアルコールは、ポリエステルの幾つかの分枝が望まれる場合には使用され、そしてジオールとトリオールの混合物は、ポリオール成分として使用することができる。しかしながら、幾つかの場合には、高度に分枝したポリエステルは、コーティングにおける効果、例えば低減された流動及び硬化された被膜における不所望な効果、例えば低減された耐チッピング性及び滑らかさのため望ましくない。
【0081】
有用なポリオールの例は、それらに制限されないが、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリトリトール、ネオペンチルグリコール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、水素化ビスフェノールA及びエトキシ化ビスフェノール類を含む。
【0082】
ポリエステル樹脂の製造方法はよく知られている。ポリエステルは、一般に、ポリオール及び多官能性の酸成分を、触媒を用いて又は用いずに、反応を完了に導くために副成分の水を除去しながら加熱することによって形成される。少量の溶剤、例えばトルエンを添加して、水を共沸的に除去することができる。添加される場合に、かかる溶剤は、コーティングの配合の開始前にポリエステル生成物から除去される。
【0083】
幾つかの実施態様において、前記樹脂は、ポリウレタン樹脂であってよい。ポリウレタンは、2種の成分から形成でき、その際、第一の成分は、イソシアネート反応性基、好ましくはヒドロキシル基を有する化合物を含み、それは、イソシアネート付加反応のために少なくとも二官能性である。第二の成分は、少なくとも1つのポリイソシアネート化合物を含む。
【0084】
ポリオール成分は、重合反応のために少なくとも二官能性でなければならない。これらの化合物は、一般に、約2〜8の、好ましくは約2〜4の平均官能性を有する。これらの化合物は、一般に、約60〜約10000、好ましくは400〜約8000の分子量を有する。しかしながら、また、400未満の分子量を有する低分子量化合物を使用することもできる。唯一の必要条件は、使用される化合物が、もしあれば組成物の硬化に使用される加熱条件下で揮発性でないことが望ましいということである。
【0085】
イソシアネート反応性の水素原子を含む好ましいマクロモノマー化合物は、公知のポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリヒドロキシポリアクリレート及びヒドロキシル基を有するポリカーボネートである。これらのポリヒドロキシル化合物に加えて、ポリヒドロキシポリアセタール、ポリヒドロキシポリエステルアミド、末端ヒドロキシル基もしくはスルフヒドリル基を含むポリチオエーテル又はアミノ基、チオール基もしくはカルボキシル基を含む少なくとも1つの二官能性の化合物を使用してもよい。イソシアネート反応性の水素原子を含む化合物の混合物を使用してもよい。他の例示的なヒドロキシル含有化合物は、米国特許第4,439,593号(1984年5月27日発行)に見出すことができ、それは、参照をもって開示されたものとする。
【0086】
ポリイソシアネートなどの架橋剤には、アミノアルコールとの反応によって又はあまり巧妙でないがジオールなどのポリオールとの反応によって、ヒドロキシル基を設けることができる。ポリエポキシド架橋剤は、そのエポキシ基の1つを通じて反応させて、カルボキシレート/エステル基を生成してよい。
【0087】
一定の実施態様においては、カルボキシレート/エステル基を有する樹脂は、少なくとも約800ダルトンの、特に少なくとも約2000ダルトンの数平均分子量を有する。
【0088】
第一の一実施態様においては、カルボキシレート/エステル基を有する樹脂は、ヒドロキシル基を有する樹脂と環状無水物との反応によって製造される。無水物(カルボン酸無水物とも通常呼ばれる)は、芳香族又は非芳香族の環状無水物であってよい。一実施態様においては、カルボキシレート/エステル基は、構造−OC(=O)−CR−CR′−COOH[式中、R及びR′は、それぞれ独立してアルキル基、アルケニル基又は水素基であり、又は一緒になって脂肪族又は芳香族であってよい環状構造の一部である]によって表される。好適な環状無水物の制限されない例は、ドデセニルコハク酸無水物、マレイン酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物、フタル酸無水物、コハク酸無水物、トリメリト酸無水物及びこれらの組み合わせを含む。
【0089】
もう一つの実施態様においては、カルボキシル/エステル基を有する樹脂は、架橋剤から、ヒドロキシ官能性カルボン酸と該架橋剤とを反応させることによって形成される。ヒドロキシ官能性のカルボン酸は、1又は2個のヒドロキシ基を有する。かかるヒドロキシ官能性のカルボン酸の例は、それらに制限されないが、乳酸、12−ヒドロキシステアリン酸、2,2′−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸(ジメチロールプロピオン酸(DMPA)とも呼ばれる)、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)酪酸及びジメチルビス(ヒドロキシメチル)マロネートを含む。ヒドロキシ官能性のカルボン酸は、架橋剤のイソシアネート基と反応される。架橋剤として適したイソシアネート官能性材料の制限されない例は、4,4′−メチレンビスジフェニルジイソシアネート(MDI)を含み、それは、BASF Corporation社から商品名Lupranate(登録商標)M及びLupranate(登録商標)M20Sとして市販されている。架橋剤は、まず、アルコールブロッキング基と、例えばジエチレングリコールブチルエーテルアルコールと反応させることによって反応させて、ヒドロキシル含有のカルボン酸との反応のために利用できるほぼ1個のイソシアネート基を残すので、1モルのヒドロキシ官能性のカルボン酸は、架橋剤1モルあたりに反応される。
【0090】
カルボキシル/エステル基を有する樹脂は、1個より多くのカルボキシル/エステル基を有してよい。特定の実施態様においては、樹脂は、約1000〜約16000ミリ当量/gのカルボキシル/エステル基を有してよい。
【0091】
三座アミン配位子は、リン含有基又はカルボキシレートエステル基又はその両方と同じ樹脂上に存在してよく、又は三座アミン配位子は、別個の樹脂上に存在してよい。三座アミン配位子含有樹脂は、その三座アミン配位子を含む又はそれと付加されうる任意の樹脂又は重合可能なモノマーを使用して製造することができる。電着コーティングのバインダーは、しばしば、エポキシ樹脂又はアクリル樹脂を含み、かつ三座アミン配位子含有樹脂は、例えばエポキシ樹脂、アクリルポリマー又は別の樹脂であってよい。
【0092】
三座アミン配位子含有樹脂は、エポキシ基を有する樹脂と、1つのアミンが第二級アミンであり、他方の2つのアミン基が第三級アミンであるトリアミノ化合物の第二級アミンとの反応によって製造できる。選択的に、三座アミン配位子含有樹脂は、エポキシ樹脂を有するモノマーと、トリアミン化合物の第二級アミン基とを反応させ、次いでモノマーを重合させて、三座アミン配位子含有樹脂を形成させることによって製造できる。該樹脂は、複数の三座アミン配位子を含んでよい。
【0093】
好適な三座アミン化合物の制限されない例は、式HN(−R′−NR22[式中、R′は、1から4個までの炭素原子と、場合によりエーテル酸素を有するアルキル基であり、それぞれのRは、独立して1〜4個の炭素原子のアルキルである]を有する化合物である。一定の実施態様においては、R′は、エチレン基又はプロピレン基であり、かつそれぞれのRは、メチル基である。特定の例は、制限されないが、N′−[(ジメチルアミノ)メチル]−N,N−ジメチルメタンジアミン、N′−[2−(ジメチルアミノ)エチル]−N,N−ジメチルエチレンジアミン、N2−[2−(ジエチルアミノ)エチル]−N1,N1−ジエチル−1,2−エタンジアミン、N2−[2−(ジプロピルアミノ)エチル]−N1,N1−ジプロピル−1,2−エタンジアミン、N1,N1−ジブチル−N2−[2−(ジブチルアミノ)エチル]−1,2−エタンジアミン、3,3′−ビス−イミノ(N,N−ジメチルプロピルアミン)、N3−[3−(ジエチルアミノ)プロピル]−N1,N1−ジエチル−1,3−プロパンジアミン、N3−[3−(ジプロピルアミノ)プロピル]−N1,N1−ジプロピル−1,3−プロパンジアミン、N1,N1−ジブチル−N3−[3−(ジブチルアミノ)プロピル]−1,3−プロパンジアミン、N′−[4−(ジメチルアミノ)ブチル]−N,N−ジメチル−1,4−ブタンジアミン及びN4−[4−(ジエチルアミノ)ブチル]−N1,N1−ジエチル−1,4−ブタンジアミンを含む。これらの組合せを使用してよい。
【0094】
第一の実施態様においては、三座アミン配位子含有樹脂は、エポキシ樹脂である。三座アミン配位子含有のエポキシ樹脂は、まずポリエポキシドと任意の延長剤及び/又は一官能性もしくは三官能性以上の反応物などの任意の他の反応物とを反応させることによってエポキシ樹脂を製造し、場合により前記の反応工程において、アミン官能性を提供するモノマーを含めるか、又は前記の反応工程の生成物と、三座アミン配位子を提供しうるトリアミンと、場合により更なるアミン官能性を提供するモノマーとを反応させることによって製造してよい。第二の方法において、三座アミン配位子含有のエポキシ樹脂は、ポリエポキシドと延長剤との反応の工程において三座アミン配位子を提供するトリアミン化合物を含めることによって、又はポリエポキシドと延長剤との生成物が更なるアミン官能性を提供するモノマーと反応されるより後続の工程において三座アミン配位子を提供するトリアミン化合物を含めることによって製造することができる。
【0095】
好適な制限されないポリエポキシ樹脂の例は、リン基含有樹脂及びカルボキシル/エステル基含有樹脂の製造に関して既に記載したいずれも含む。ポリエポキシドは、3つ以上のエポキシ基を有するポリエポキシドのエポキシ基とトリアミン化合物とを反応させることによって三座アミン配位子を備えることができるので、反応生成物は、延長剤及び任意の更なるアミン含有化合物と反応されうる2つの未反応のエポキシ基を残している。モノエポキシドは、ジエポキシドのエポキシ基とトリアミン化合物とを反応させることによって三座アミン配位子を備えることができるので、反応生成物は、1つの未反応のエポキシ基を残している。
【0096】
ポリエポキシド(及び他の任意のモノエポキシド)は、延長剤と反応して、かかる例示の延長剤及び前記の一官能性の反応物を使用して、前記のようなβ−ヒドロキシエステル結合を有するより高分子量を有する樹脂を製造することができる。ポリエポキシド及び延長剤の生成物は、過剰の当量のポリエポキシドが反応される場合にはエポキシ官能性であり、又は過剰の当量の延長剤が使用される場合には延長剤の官能性を有する。該反応は、上記のように実施することができる。エポキシ樹脂は、ポリエポキシ樹脂と延長剤及び任意の一官能性の反応物との反応の間に又はその後に、三座アミン配位子を提供するトリアミン化合物と反応させてよい。エポキシ樹脂は、トリアミン化合物の第二級アミン基及び場合により既に記載したような一官能性の反応物と反応させてよいが、延長剤とは反応させない。
【0097】
リン基含有樹脂及びカルボキシル/エステル基含有樹脂を用いた場合であったとき、該エポキシ樹脂は、他のアミン化合物と反応されて、ポリエポキシドと延長剤との反応の間又はその後に樹脂上にアミン基を導入することができる。カソード電着可能な樹脂のための追加のアミン官能性は、ポリエポキシ樹脂と、第三級アミン基を有する延長剤又は第三級アミン基を有する一官能性の反応物との反応によって導入することができる。アミン官能性は、ポリエポキシド及び延長剤の反応後に、その生成物がエポキシ官能性である場合に、エポキシ官能性の生成物と、第三級アミン(その好適な制限されない例は上述されている)を有する反応物又はケチミンの形成により保護されている第一級アミン基を有する化合物(これも上述のもの)との反応によって導入することができる。そのアミン官能性を有するエポキシ樹脂は、カソード電着可能であってよい。三座アミン配位子を有するエポキシ樹脂は、電着コーティング組成物のバインダー中で、電着可能な第二の樹脂と組み合わせてもよい。
【0098】
第一の特定の一実施態様においては、ビスフェノールA、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル及びフェノールは、第一工程において反応して、エポキシ官能性の延長された樹脂を形成し、第二工程において、該エポキシ官能性の延長された樹脂は、ジエタノールアミン、ジメチルアミノプロピルアミン及び3,3′−ビス−イミノ(N,N−ジメチルプロピルアミン)と反応されて、アミン官能性の三座アミン配位子含有のエポキシ樹脂が形成される。この樹脂は、所望の他の成分と組み合わされ、アミン官能性は、少なくとも部分的に酸で中和され、次いで水性媒体中に分散させて製造される。
【0099】
第二の一実施態様においては、三座アミン配位子含有樹脂は、ビニルポリマー、例えばアクリルポリマーである。三座アミン配位子含有のアクリルポリマーは、三座アミン配位子を有するコモノマーの重合又はエポキシ基を有するアクリルポリマーとトリアミン化合物の第二級アミンとの反応によって製造することができる。重合前にトリアミンと反応されうるモノマー又は重合後にトリアミン化合物と反応されるべきエポキシ基を重合して提供しうるモノマーの制限されない例は、エポキシ基を有する付加重合可能なモノマー、例えばグリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート及びアリルグリシジルエーテルを含む。
【0100】
ビニル樹脂又はアクリル樹脂は、既に挙げたものなどの他のアミン含有モノマーを導入することもでき、又は選択的に、エポキシ基は、重合反応においてエポキシ官能性モノマーを含めることによって導入でき、次いでエポキシ基と、エポキシ樹脂について上述したようにアミンと反応させることによってカソード電着可能にすることができる。また既に記載されるように、架橋のための官能性を提供するモノマーは、一般に、ビニルポリマー又はアクリルポリマーの形成において一般に共重合され、その好適な例は上述の通りである。
【0101】
三座アミン配位子又はトリアミン化合物と反応して三座アミン配位子を提供するエポキシ基を有するモノマー及び他のアミン基を有する如何なる任意のモノマー及び/又はコーティングの架橋のための基を有するモノマーは、1つもしくはそれより多くの他のエチレン性不飽和モノマーと重合されてよく、実例は、ビニル系又はアクリル系のリン基含有の又はカルボキシル/エステル基含有の樹脂に関して上述したいずれかのもの又は任意のこれらの組み合わせを含む。
【0102】
一定の実施態様において、該樹脂は、少なくとも約2質量%の、他の実施態様においては少なくとも約4質量%のリン酸基を含む。一定の実施態様において、該樹脂は、約15質量%までの、他の実施態様においては約12質量%までのリン酸基を含む。一定の実施態様においては、リン酸基及び三座アミン配位子基は、10:1〜1:1〜1:10のモル比の量で存在してよい。幾つかの実施態様においては、カルボキシル/エステル基は、触媒に対して1:1までのモル比の量で存在してよい。
【0103】
1つ又はそれより多くのリン含有基、カルボキシル/エステル基及び三座アミン配位子を含む1種又はそれより多種の樹脂を含むバインダーは、電着コーティング組成物(電着浴とも知られる)の製造に使用され、更に、前記浴は、酸化ビスマス、酸化バナジウム、酸化マンガン、酸化コバルト、酸化亜鉛、酸化ストロンチウム、酸化イットリウム、酸化モリブデン、酸化ジルコニウム、酸化ランタン、ランタン系列の元素の酸化物及びこれらの組み合わせからなる群から選択される金属酸化物を含む。一般に、バインダーは、1種又はそれより多種の樹脂を含めて製造され、次いで該バインダーは、水性媒体中に、該バインダー中に存在するイオン化可能なアミン基を塩形成させることにより分散させる。金属酸化物は、樹脂の塩形成及び水の添加の前又は後にバインダー中に予備分散させてよく、又は金属酸化物は、以下により詳細に記載されるように、別の分散樹脂を使用して電着コーティング組成物中に導入してよい。更なる電着可能な樹脂は、バインダー中に含まれていてよい。一般に、電着されたコーティングを架橋させて硬化されたコーティング層とすることが望ましく、架橋剤(硬化剤もしくは架橋性剤とも呼ばれる)は、一般にこの目的のためにバインダー中に含まれる。架橋剤は、硬化条件下で、コーティング組成物バインダー中に含まれる1種もしくはそれより多種の樹脂と反応しうる。
【0104】
電着コーティング組成物は、電着可能な少なくとも1種の樹脂、すなわち少なくとも1種の主たる樹脂を含む。樹脂がリン含有基を有さない場合に、エステル基から2〜4個の炭素だけ離れたカルボキシレート基又は三座アミン配位子は、良好なコーティング層の析出のために十分に電着可能であり、次いで該バインダーは更に、電着可能な樹脂を含む。様々なかかる樹脂は公知であり、それは、制限されないが、塩基性基又は酸性基を有する既に挙げたのと同様の、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂及びポリブタジエン樹脂を含む。カソード電着コーティングのためには、該樹脂は、塩形成される塩基性基(例えば第一級、第二級又は第三級のアミン基)又は第四級基(例えばアンモニウム、スルホニウム又はホスホニウム基)を有する;アノード電着コーティングのためには、該樹脂は、塩基で塩形成された酸基を有する。一実施態様においては、該バインダーは、約40質量%〜約80質量%の電着可能な1種もしくはそれより多種の樹脂を含む。もう一つの実施態様においては、該バインダーは、約45質量%〜約85質量%の電着可能な1種もしくはそれより多種の樹脂を含む。
【0105】
好適な更なる電着可能な樹脂の例は、一般に前記のように製造される、塩基性基又は酸性基を含むが、リン含有基、カルボキシレート/エステル基及び三座アミン基を省いた、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアクリレート樹脂などのビニル樹脂及びポリブタジエン樹脂を含む。主たる樹脂のアミン当量又は酸当量は、約150〜約5000の範囲であってよく、好ましくは約500〜約2000の範囲であってよい。該樹脂のヒドロキシル当量は、一般に、約150〜約2000であり、好ましくは約200〜約800である。
【0106】
一定の実施態様においては、電着コーティング組成物中のバインダーは、約0.01質量%〜約99質量%の、リン含有基、エステル基から2〜4個だけ離れたカルボキシレート基又は三座アミン配位子を含む1種もしくはそれより多種の樹脂を含有してよい。一定の実施態様においては、電着コーティング組成物中のバインダーは、約0.01質量%〜約99質量%の、約1質量%〜約90質量%の、又は約5質量%〜約80質量%の、リン含有基、エステル基から2〜4個だけ離れたカルボキシレート基又は三座アミン配位子を含む1種もしくはそれより多種の樹脂を含有してよい。
【0107】
コーティング組成物は、一般に熱硬化性であり、基材上に形成されたコーティング層の硬化の間にバインダーの1種又はそれより多種の樹脂と反応する架橋剤を含んでよい。架橋剤は、基材上に形成されるコーティング層の硬化の間の架橋のためのバインダーの1種以上の樹脂で利用できる群に従って選択される。当該技術分野では、架橋剤の選択に際して多くの考慮が説明される。1種以上の樹脂上の活性水素基と反応性の架橋剤は最も一般的に使用され、そのうちポリイソシアネート(特にブロックトポリイソシアネート)及びアミノプラストが特に挙げられる。芳香族の、脂肪族のもしくは脂環式のポリイソシアネートの例は、ジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート(MDI)、2,4−もしくは2,6−トルエンジイソシアネート(TDI)、p−フェニレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4′−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、フェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、2−イソシアナトプロピルシクロヘキシルイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン2,4′−ジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、二量体脂肪酸から誘導されるジイソシアネートの混合物であって、Henkel社によって市販名DDI1410として販売されているもの、1,8−ジイソシアナト−4−イソシアナトメチルオクタン、1,7−ジイソシアナト−4−イソシアナト−メチルヘプタンもしくは1−イソシアナト−2−(3−イソシアナトプロピル)シクロヘキサン並びに高級ポリイソシアネート、例えばトリフェニルメタン−4,4′,4′′−トリイソシアネート又はこれらのポリイソシアネートの混合物を含む。好適なポリイソシアネートは、また、ポリイソシアネートであって、これらから誘導され、イソシアヌレート、ビウレット、アロファネート、イミノオキサジアジンジオン、ウレタン、ウレアもしくはウレットジオン基を有するものを含む。ウレタン基を有するポリイソシアネートは、例えば、幾つかのイソシアネート基とポリオール、例えばトリメチロールプロパン、ネオペンチルグリコール及びグリセロールなどのポリオールとを反応させることによって得られる。イソシアネート基は、ブロッキング剤と反応される。好適なブロッキング剤の例は、フェノール、クレゾール、キシレノール、ε−カプロラクタム、δ−バレロラクタム、γ−ブチロラクタム、ジエチルマロネート、ジメチルマロネート、エチルアセトアセテート、メチルアセトアセテート、アルコール、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、プロパノール、イソブタノール、t−ブタノール、ブタノール、グリコールモノエーテル、例えばエチレンもしくはプロピレングリコールモノエーテル、酸アミド(例えばアセトアニリド)、イミド(例えばスクシンイミド)、アミン(例えばジフェニルアミン)、イミダゾール、ウレア、エチレンウレア、2−オキサゾリドン、エチレンイミン、オキシム(例えばメチルエチルケトキシム)などを含む。
【0108】
当業者に理解されるように、アミノプラスト樹脂は、ホルムアルデヒド及びアミンの反応生成物によって形成され、その際、好ましいアミンは、尿素又はメラミンである。尿素及びメラミンは好ましいアミンであるが、他のアミン、例えばトリアジン、トリアゾール、ジアジン、グアニジン又はグアナミンは、また、アミノプラスト樹脂の製造のために使用できる。更に、ホルムアルデヒドはアミノプラスト樹脂の形成のために好ましいが、他のアルデヒド、例えばアセトアルデヒド、クロトンアルデヒド及びベンズアルデヒドも使用できる。好適なアミノプラスト樹脂の制限されない例は、モノマーの又はポリマーのメラミン−ホルムアルデヒド樹脂、例えば好ましくは1〜6個の、より好ましくは1〜4個の炭素原子を有するアルコールを使用して部分的に又は完全にアルキル化されたメラミン樹脂、例えばヘキサメトキシメチル化メラミン;尿素−ホルムアルデヒド樹脂、例えばメチロール尿素及びシロキシ尿素、例えばブチル化された尿素ホルムアルデヒド樹脂、アルキル化されたベンゾグアニミン、グアニル尿素、グアニジン、ビグアニジン、ポリグアニジンなどを含む。
【0109】
場合により、可塑剤もしくは溶剤又はその両方は、バインダー混合物又は電着コーティング組成物に添加してよい。凝集溶剤の制限されない例は、アルコール、グリコールエーテル、ポリオール及びケトンを含む。特定の凝集溶剤は、エチレングリコールのモノブチル及びモノヘキシルエーテル、プロピレングリコールのフェニルエーテル、エチレングリコールのモノアルキルエーテル、例えばエチレングリコールもしくはプロピレングリコールのモノメチル、モノエチル、モノプロピル及びモノブチルエーテル;エチレングリコールもしくはプロピレングリコールのジアルキルエーテル、例えばエチレングリコールジメチルエーテル及びプロピレングリコールジメチルエーテル;ブチルカルビトール;ジアセトンアルコールを含む。可塑剤の制限されない例は、ノニルフェノール、ビスフェノールA、クレゾールのエチレンもしくはプロピレンオキシド付加物又は他のかかる材料、又はエチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドを基礎とするポリグリコールを含む。凝集溶剤の量は、決定的ではなく、一般に、樹脂固体の全質量に対して、約0〜15質量%、好ましくは約0.5〜5質量%である。可塑剤は、樹脂固体に対して15質量%までの水準で使用できる。
【0110】
カソード電着コーティング組成物の製造において、好適な酸の制限されない例は、リン酸、ホスホン酸、プロピオン酸、ギ酸、酢酸、乳酸又はクエン酸を含む。塩形成する酸は、バインダーを水に添加する前に、バインダーと配合してよく、水と混合してよく、又はその両方であってよい。該酸は、水分散性をバインダーに付与するのに十分なアミノ基を中和するのに十分な量で使用される。該アミン基は、完全に中和されてもよいが、部分中和は、通常は、所望の水分散性の付与に十分である。同様に、アノード電着コーティング組成物の製造において、主たる樹脂のカルボキシル基の制限されない例は、ルイス塩基又はブレンステッド塩基を含む好適な塩基、例えばアミン及び水酸化物化合物、例えば水酸化カリウム及び水酸化ナトリウムで中和される。実例のアミンは、N,N−ジメチルエチルアミン(DMEA)、N,N−ジエチルメチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロピルアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、ジイソプロピルエタノールアミン、ジブチルエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、ジメチルイソプロパノールアミン、メチルジイソプロパノールアミン、ジメチルエタノールアミンなどを含む。樹脂が少なくとも部分的に中和されているとは、該バインダーの少なくとも1個の塩形成可能な基が中和され、かかる基の全てまでが中和されていてよいことを意味する。特定のバインダーに必要な水分散性を与えるのに必要な中和の程度は、その組成、樹脂の分子量、アミン官能性樹脂の質量割合及び他のかかる要素に依存し、それは当業者によって簡単な実験を通じて容易に決定することができる。
【0111】
バインダーエマルジョンは、その際、電着コーティング組成物(もしくは浴)の製造において使用される。電着浴は、無色又は澄明な電着コーティング層を生成するために顔料を含有しなくてよいが、電着浴は、通常は、1種又はそれより多種の顔料を含み、一般に顔料ペーストの部分として添加され、そして任意の更なる所望の材料、例えば凝集助剤、抑泡助剤及びバインダーの乳化の前もしくは後に添加してよい他の添加剤を含有してよい。使用される顔料は、無機顔料、例えば金属酸化物、クロム酸塩、モリブデン酸塩、リン酸塩及びケイ酸塩であってよい。使用できる無機顔料及び充填剤の例は、二酸化チタン、硫酸バリウム、カーボンブラック、オーカー、シェンナ、アンバー、ヘマタイト、リモナイト、赤色酸化鉄、透明赤色酸化鉄、黒色酸化鉄、褐色酸化鉄、酸化クロム緑、クロム酸ストロンチウム、リン酸亜鉛、シリカ、炭酸カルシウム、タルク、バライト、フェロシアン化第二鉄アンモニウム(プルシアンブルー)、ウルトラマリン、クロム酸鉛、モリブデン酸鉛、ケイ酸アルミニウム、沈降硫酸バリウム、ホスホモリブデン酸アルミニウム及び雲母薄片顔料である。有機顔料を使用してもよい。有用な有機顔料の例は、金属化された及び金属化されていないアゾレッド、キナクリドンレッド及びバイオレット、ペリレンレッド、銅フタロシアニンブルー及びグリーン、カルバゾールバイオレット、モノアリーライド及びジアリーライドイエロー、ベンゾイミダゾロンイエロー、トリルオレンジ、ナフトールオレンジなどである。該顔料は、粉砕樹脂もしくは顔料分散剤を用いて分散されてよい。電着浴中での顔料対樹脂の質量比は、重要なことがあり、好ましくは50未満:100、より好ましくは40未満:100、通常は約10〜30:100であるべきである。より高い顔料対樹脂固体の質量比は、凝集及び流動に悪影響を及ぼすことが判明した。通常は、顔料は、浴中の不揮発性材料の質量に対して10〜40質量%である。好ましくは、顔料は、浴中の不揮発性材料の質量に対して15〜30質量%である。電着プライマーで通常使用される任意の顔料及び充填剤が含まれていてよい。
【0112】
電着コーティング組成物は、随意の成分、例えば染料、流動調節剤、可塑剤、触媒、湿潤剤、界面活性剤、UV吸収剤、HALS化合物、酸化防止剤、消泡剤などを含有してよい。界面活性剤及び湿潤剤の例は、アルキルイミダゾリン、例えばCiba−Geigy Industrial Chemicals社からAMINE C(登録商標)として入手されるもの、アセチレン系アルコール、例えばAir Products and Chemicals社から商品名SURFYNOL(登録商標)として入手されるものを含む。界面活性剤及び湿潤剤の量は、存在する場合には、一般に、樹脂固体の質量に対して2%までである。
【0113】
スズ触媒などの硬化触媒は、該コーティング組成物中で使用してよい。典型的な例は、制限されないが、スズ及びビスマス化合物、例えばジブチルスズジラウレート、ジブチルスズオキシド及びビスマスオクトエートである。使用される場合に、触媒は、一般に、全体の樹脂固体の質量に対するスズの質量に対して約0.05〜2質量%の量で存在する。
【0114】
電着コーティング組成物は、金属製の基材上に電着される。前記基材は、幾つかの制限されない例として、冷間圧延鋼、亜鉛メッキ(亜鉛コーティング)綱、電気亜鉛メッキ綱、ステンレス鋼、酸洗い綱、GALVANNEAL(登録商標)、GALVALUME(登録商標)及びGALVAN(登録商標) 亜鉛−アルミニウム合金がコーティングされた綱及びそれらの組合せであってよい。有用な非鉄金属の制限されない例は、アルミニウム、亜鉛、マグネシウム及びこれらの合金を含む。本発明によるコーティング調製物の電着は、公知法によって実施することができる。電着コーティング組成物は、好ましくは、乾燥膜厚10〜35μmへと適用することができる。該方法の一実施態様においては、導電性の基材はリン酸塩処理されていない。すなわち、該基材は、リン酸塩での前処理が施されていない。本発明の組成物で被覆される物品は、金属製の自動車部品もしくは車体であってよい。導電性の基材、例えば金属の自動車の車体又は部品のコーティング方法であって、清浄化されているが、好ましくはリン酸塩前処理がなされていない前記導電性の基材を、電着コーティング組成物中に入れ、そして該導電性の基材をカソードとして使用して、コーティング層をもたらす電着コーティング組成物に電流を流して、該導電性の基材上に析出させる前記方法。適用後に、コーティングされた物品は、浴から取り出され、脱イオン水ですすがれる。前記コーティングは、好適な条件下で、例えば約275゜F〜約375゜Fで約15〜60分の間にわたり、電着されたコーティング層上に付加的なコーティング層を適用する前に焼き付けることによって硬化させることができる。
【0115】
自動車の車体は、電着されていてよい。自動車の車体は、清浄化され、そして清浄化された金属の自動車の車体は、リン酸化樹脂を含む水性の電着コーティング組成物で電着される。
【0116】
1つ又はそれより多くの付加的なコーティング層、例えば吹き付け適用されたプライマーサーフェイサー、単独のトップコート層又は複合カラーコート(ベースコート)及びクリヤーコート層を、電着層上に適用してよい。単層のトップコートは、またトップコートエナメルとも呼ばれる。自動車産業において、該トップコートは、一般に、ベースコートであり、それはクリヤーコート層で上塗りされる。プライマーサーフェイサー及びトップコートエナメル又はベースコート及びクリヤーコート複合トップコートは、水系、溶剤系、又は粉末の塗料であってよく、粉末の塗料は、乾燥粉末又は水性粉末スラリーであってよい。
【0117】
本発明の複合コーティングは、一層として、プライマーコーティング層を有してよく、該層は、プライマーサーフェイサー層又はフィラーコーティング層とも呼ばれうる。プライマーコーティング層は、溶剤系の組成物、水性の組成物、又は粉末の組成物、例えば粉末スラリー組成物から形成することができる。プライマー組成物は、好ましくは、熱硬化性のバインダーを有するが、熱可塑性のバインダーも公知である。好適な熱硬化性のバインダーは、自己架橋性のポリマー又は樹脂を有してよく、又は該バインダー中にポリマーもしくは樹脂と反応性の架橋剤を含んでよい。好適なバインダーポリマー又は樹脂の制限されない例は、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、及びポリウレタン樹脂を含む。かかるポリマー又は樹脂は、官能基として、ヒドロキシル基、カルボキシル基、無水物基、エポキシ基、カルバメート基、アミン基などを含んでよい。とりわけ、かかる基と反応性の好適な架橋剤は、アミノプラスト樹脂(ヒドロキシル基、カルボキシル基、カルバメート基及びアミン基と反応性である)、ポリイソシアネート、例えばブロックトポリイソシアネート(ヒドロキシル基及びアミン基と反応性である)、ポリエポキシド(カルボキシル基、無水物基、ヒドロキシル基及びアミン基と反応性である)及びポリ酸及びポリアミン(エポキシ基と反応性である)である。好適なプライマー組成物の例は、例えば米国特許第7,338,989号;同第7,297,742号;同第6,916,877号;同第6,887,526号;同第6,727,316号;同第6,437,036号;同第6,413,642号;同第6,210,758号;同第6,099,899号;同第5,888,655号;同第5,866,259号;同第5,552,487号;同第5,536,785号;同第4,882,003号;及び同第4,190,569号に開示されており、それぞれはBASF社に譲渡されており、それぞれ参照をもって開示されたものとする。
【0118】
電着プライマー上に適用されたプライマーコーティング組成物を次いで硬化させて、プライマーコーティング層を形成させることができる。電着プライマーは、プライマーコーティング層と同時に、"ウェット・オン・ウェット"コーティングとして知られる方法で硬化させることができる。
【0119】
トップコート組成物は、電着層上に又はプライマーコーティング層上に適用し、好ましくは硬化させることで、トップコート層を形成することができる。好ましい一実施態様においては、電着層又はプライマー層は、カラー・プラス・クリヤー(ベースコート−クリヤーコート)トップコートとして適用されるトップコートでコーティングされる。ベースコート−クリヤーコートトップコートにおいては、顔料着色されたコーティング、すなわちベースコートは、透明なコーティング、すなわちクリヤーコートの外部層で覆われる。ベースコート−クリヤーコートトップコートは、魅力的な滑らかかつ光沢のある仕上げを提供し、一般に改善された性能をもたらす。
【0120】
架橋性組成物は、1つもしくはそれより多くのトップコート層として好ましい。この種のコーティングは当該技術分野でよく知られ、それには水系の組成物、溶剤系の組成物、並びに粉末組成物及び粉末スラリー組成物が含まれる。ベースコート組成物及びクリヤーコート組成物において有用であることが当該技術分野で知られるポリマーは、制限されないが、アクリルポリマー、ビニルポリマー、ポリウレタンポリマー、ポリカーボネートポリマー、ポリエステルポリマー、アルキドポリマー及びポリシロキサンポリマーを含む。アクリルポリマー及びポリウレタンポリマーは、なかでもトップコートバインダーのために好ましいポリマーである。熱硬化性のベースコート組成物及びクリヤーコート組成物も好ましく、その目的のためには、好ましいポリマーは、1種又はそれより多くの種類の架橋可能な官能基、例えばカルバメート、ヒドロキシ、イソシアネート、アミン、エポキシ、アクリレート、ビニル、シラン、アセトアセテートなどを含む。該ポリマーは、自己架橋性であってよく、又は好ましくは該組成物は、ポリイソシアネート又はアミノプラスト樹脂などの架橋剤を含んでよい。好適なトップコート組成物の例は、例えば米国特許第7,375,174号;同第7,342,071号;同第7,297,749号;同第7,261,926号;同第7,226,971号;同第7,160,973号;同第7,151,133号;同第7,060,357号;同第7,045,588号;同第7,041,729号;同第6,995,208号;同第6,927,271号;同第6,914,096号;同第6,900,270号;同第6,818,303号;同第6,812,300号;同第6,780,909号;同第6,737,468号;同第6,652,919号;同第6,583,212号;同第6,462,144号;同第6,337,139号;同第6,165,618号;同第6,129,989号;同第6,001,424号;同第5,981,080号;同第5,855,964号;同第5,629,374号;同第5,601,879号;同第5,508,349号;同第5,502,101号;同第5,494,970号;同第5,281,443号に開示されており、それぞれはBASF社に譲渡されており、それぞれ参照をもって開示されたものとする。
【0121】
更なるコーティング層は、電着コーティング層へと、当該技術分野でよく知られる多くの技術のいずれかに従って適用することができる。これらには、例えば吹き付けコーティング、浸漬コーティング、ローラコーティング、カーテンコーティングなどが含まれる。自動車用途のためには、1つもしくはそれより多くの更なるコーティング層は、好ましくは、吹き付けコーティング、特に静電吹き付け法によって適用される。1ミルより厚いコーティング層は、通常、2つ以上のコートにおいて、溶剤又は水性媒体の幾らかを蒸発させるか又は適用された層から"フラッシング"するのに十分な時間を隔てて適用される。フラッシングは、周囲温度又は高められた温度であってよく、例えばフラッシングは、放射熱を利用することができる。適用されたコーティングは、乾燥時に0.5ミルから3ミルまでであってよく、十分な数のコーティングを適用して、所望の最終コーティング厚が得られる。
【0122】
プライマー層は、トップコートを適用する前に硬化させることができる。硬化されたプライマー層は、約0.5ミルから約2ミルまでの厚さであってよく、好ましくは約0.8ミルから約1.2ミルの厚さであってよい。
【0123】
カラー・プラス・クリヤートップコートは、通常はウェット・オン・ウェットで適用される。該組成物は、複数のコーティングにおいてフラッシングによって隔てられて上記のように適用され、その際、フラッシングはまたカラー組成物の最後のコーティングと最初のクリヤーなコーティングとの間でもよい。2つのコーティング層は、次いで、同時に硬化される。好ましくは、硬化されたベースコート層は、0.5〜1.5ミルの厚さであり、硬化されたクリヤーコート層は、1〜3ミル、より好ましくは1.6〜2.2ミルの厚さである。
【0124】
選択的に、プライマー層及びトップコートは、"ウェット・オン・ウェット"で適用できる。例えば、プライマー組成物を適用でき、次いで適用された層がフラッシングされ、次いでトップコートが適用され、フラッシングされ、次いでプライマー及びトップコートが同時に硬化されうる。再び、トップコートは、ウェット・オン・ウェットで適用されたベースコート層及びクリヤーコート層を含んでよい。プライマー層は、また、未硬化の電着コーティング層に適用させて、全ての層を一緒に硬化させてもよい。
【0125】
記載されるコーティング組成物は、好ましくは熱を用いて硬化される。硬化温度は、トップコートもしくはプライマー組成物であって非封鎖酸触媒を含むものについては、好ましくは約70℃〜約180℃であり、特に好ましくは約170゜F〜約200゜Fであり、又はトップコートもしくはプライマー組成物であって封鎖酸触媒を含むものについては、約240゜F〜約275゜Fである。前記温度での典型的な硬化温度は、15〜60分の範囲であり、好ましくはその温度は、約15〜約30分の硬化時間を可能にするように選択される。好ましい一実施態様においては、コーティングされる物品は自動車の車体又は部品である。
【0126】
本発明を、以下の実施例において更に説明する。実施例は、単に説明を目的とするものであって、発明の詳細な説明及び特許請求の範囲の範囲をなんら限定するものではない。全ての部は、特に記載がない限り、質量部である。
【0127】
実施例
調製物A: リン酸化エポキシ樹脂の製造
撹拌機と還流凝縮器を備えた反応器に、25.85質量部のノルマルブタノール、10.20質量部のエチレングリコールモノブチルエーテル及び55.62質量部のビスフェノールAのジグリシジルエーテルを装填する。反応器の内容物を、約15分間にわたり撹拌し、引き続き4.261質量部のリン酸(75%水性)及び1.77質量部のノルマルブタノールを添加する。得られた混合物を室温で更に15分間にわたり撹拌し、次いで102.2゜F(49℃)に加熱する。加熱を止め、混合物を発熱させ、260.6゜F(127℃)として記録される。該反応混合物を220〜250゜F(104.4〜121.1℃)に冷却し、2時間にわたり、生成物のエポキシドあたりの質量が20000以上である間保持する。脱イオン水を、0.899質量部の第一の部で添加し、該反応混合物を、220〜250゜F(104.4〜121.1℃)で1時間にわたり保持する。脱イオン水の第二の部、すなわち0.70質量部を、次いで該反応混合物に添加する。再び反応混合物を、220〜250゜F(104.4〜121.1℃)で1時間にわたり保持する。脱イオン水の最後の部、すなわち0.70質量部を、次いで該反応混合物に添加する。再び反応混合物を、220〜250゜F(104.4〜121.1℃)で1時間にわたり保持する。得られた混合物は、29〜32mg KOH/gの酸価を有する。該混合物を、次いでノルマルブタノールで72質量部の非揮発性物質にまで希釈する。
【0128】
調製物B: ドデセニルコハク酸無水物(DDSA)でカルボキシル化されたリン酸化エポキシ樹脂の製造
撹拌機と還流凝縮器を備えた反応器に、25.85質量部のノルマルブタノール、10.20質量部のエチレングリコールモノブチルエーテル及び55.62質量部のビスフェノールAのジグリシジルエーテルを装填する。反応器の内容物を、約15分間にわたり撹拌し、引き続き4.261質量部のリン酸(75%水性)及び1.77質量部のノルマルブタノールを添加する。得られた混合物を室温で更に15分間にわたり撹拌し、次いで102.2゜F(49℃)に加熱する。加熱を止め、混合物を発熱させ、260.6゜F(127℃)として記録される。該反応混合物を220〜250゜F(104.4〜121.1℃)に冷却し、2時間にわたり、生成物のエポキシドあたりの質量が20000以上である間保持する。脱イオン水を、0.899質量部の第一の部で添加し、該反応混合物を、220〜250゜F(104.4〜121.1℃)で1時間にわたり保持する。脱イオン水の第二の部、すなわち0.70質量部を、次いで該反応混合物に添加する。再び反応混合物を、220〜250゜F(104.4〜121.1℃)で1時間にわたり保持する。脱イオン水の最後の部、すなわち0.70質量部を、次いで該反応混合物に添加する。再び反応混合物を、220〜250゜F(104.4〜121.1℃)で1時間にわたり保持する。この段階で、生成物は、29〜32mg KOH/gの酸価を有する。ドデセニルコハク酸無水物(DDSA)の1.63質量部の部分を、220゜F(104.4℃)で導入し、該混合物を引き続き266゜F(130℃)に加熱する。該混合物を、2.5時間にわたり撹拌した。得られた混合物は、35〜36mg KOH/gの酸価を有する。該混合物を、次いでノルマルブタノールで72質量部の非揮発性物質にまで希釈する。
【0129】
調製物C: ドデセニルコハク酸無水物(DDSA)及びリン酸化エポキシ樹脂を有するバインダーエマルジョンの製造
付属の加熱マントルを有する3Lのフラスコ中で、以下の材料:ビスフェノールAのジグリシジルエーテル(18.03質量部)、ビスフェノールA(4.1質量部)、フェノール(1.41質量部)及びプロピレングリコール n−ブチルエーテル(0.36質量部)を合する。撹拌しながら、温度を257゜F(125℃)に高める。引き続き、トリフェニルホスフィン(0.04質量部)を添加し、発熱が392゜F(200℃)として記録される。該混合物を次いで275゜F(135℃)に冷却させ、エポキシ当たりの質量(WPE)測定(ターゲット=525±25)を45分後に行い、それは544である。194゜F(90℃)に冷却し、加熱マントルを停止させた後に、1.73質量部のジエタノールアミンを導入して、発熱が226.4゜F(108℃)として記録される。該反応混合物を、発熱に至った後に、221゜F(105℃)でさらに30分間にわたり撹拌させる。30分間撹拌した後に、3−ジメチルアミノプロピルアミンを221゜F(105℃)で添加し(0.84質量部)、発熱は、273.2゜F(134℃)として記録される。該混合物を、さらに1時間にわたり撹拌する。DDSA(1.13質量部)をトルエン(0.34質量部)中に溶かした溶液を、212゜F(100℃)で添加する。該混合物を、257゜F(125℃)に加熱し、そして1.5時間にわたり撹拌する。2.36質量部のPLURACOL(登録商標)710R(BASF Corporationにより販売)を添加し、引き続き架橋剤(ポリマーのMDI及び一官能性アルコールを基礎とするブロックトイソシアネート)(13.6質量部)を添加する。該混合物を、221〜230゜F(105〜110℃)で30分にわたり撹拌する。調製物A、すなわちリン酸化エポキシ樹脂(6.7質量部)を添加し、そして該混合物を221〜230゜F(105〜110℃)でさらに15分間にわたり撹拌する。
【0130】
均質な混合物に至った後に、樹脂と架橋剤のブレンドを、一定の撹拌をしつつ、脱イオン水(34.95質量部)及びギ酸(88%)(0.62質量部)の酸/水混合物に添加する。全ての成分を金属製のスパチュラを用いて徹底的に混ぜた後に、固体をさらに水の添加(18.55質量部)によって減少させる。流動添加剤パック(flow−additive package)(2.51質量部)を前記酸混合物に添加する。
【0131】
製造D: カルボキシル化されたリン酸化エポキシ樹脂を有するバインダーエマルジョンの製造
付属の加熱マントルを有する3Lのフラスコ中で、以下の材料:ビスフェノールAのジグリシジルエーテル(18.03質量部)、ビスフェノールA(4.1質量部)、フェノール(1.41質量部)及びプロピレングリコール n−ブチルエーテル(0.36質量部)を合する。撹拌しながら、温度を257゜F(125℃)に高める。引き続き、トリフェニルホスフィン(0.04部)を添加し、発熱が392゜F(200℃)として記録される。該混合物を次いで275゜F(135℃)に冷却させ、エポキシ当たりの質量(WPE)測定(ターゲット=525±25)を1時間後に行い、それは524である。194゜F(90℃)に冷却し、加熱マントルをオフにした後に、2.36質量部のPLURACOL(登録商標)710R(BASF Corporationにより販売)を添加し、次いで、1.73部のジエタノールアミンを導入し、発熱は、237.2゜F(114℃)として記録される。該反応混合物を、発熱に至った後に、221゜F(105℃)でさらに30分間にわたり撹拌させる。30分間撹拌した後に、3−ジメチルアミノプロピルアミンを221゜F(105℃)で添加し(0.84部)、発熱は、291.2゜F(144℃)として記録される。該混合物を、さらに1時間にわたり撹拌する。架橋剤(ポリマーMDI及び一官能性アルコールを基礎とするブロックトイソシアネート)(13.6質量部)を添加する。該混合物を、221〜230゜F(105〜110℃)で30分にわたり撹拌する。調製物B、すなわちカルボキシル化されたリン酸化エポキシ樹脂と一緒にDDSA(8.7部)を添加し、そして該混合物を221〜230゜F(105〜110℃)でさらに15分間にわたり撹拌する。
【0132】
均質な混合物に至った後に、樹脂と架橋剤のブレンドを、一定の撹拌をしつつ、脱イオン水(34.95質量部)及びギ酸(88%)(0.62質量部)の酸/水混合物に添加する。全ての成分を金属製のスパチュラを用いて徹底的に混ぜた後に、固体をさらに水の添加(18.55質量部)によって減少させる。流動添加剤パック(flow−additive package)(2.51質量部)を前記酸混合物に添加する。
【0133】
調製物E: 第三級アンモニウム基を有する粉砕樹脂
EP0505445号B1に従って、有機粉砕樹脂水溶液を、第一段階で2598部のビスフェノールAグリシジルエーテル(エポキシ当量(EEW)188g/当量)、787部のビスフェノールA、603部のドデシルフェノール及び206部のブチルグリコールをステンレス鋼反応容器中で4部のトリフェニルホスフィンの存在下で130℃でエポキシ当量が865g/当量に到達するまで反応させることによって製造する。冷却の過程で、そのバッチを、849部のブチルグリコール及び1534部のD.E.R(登録商標)732(ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、DOW Chemical,米国)で希釈し、そしてさらに90℃で266部の2,2′−アミノエトキシエタノール及び212部のN,N−ジメチルアミノプロピルアミンと反応させる。2時間後に、樹脂溶液の粘度は、一定である(5.3dPas;SOLVENON(登録商標)PM(メトキシプロパノール、BASF(ドイツ)から入手)中40%;コーン・プレート粘度計で23℃)。それを、1512部のブチルグリコールで希釈し、そしてベースの基は、201部の氷酢酸で部分的に中和され、そして該生成物をさらに1228部の脱イオン水で希釈し、排出させる。それにより、60質量%濃度の有機樹脂水溶液であって、その10%希釈がpH6.0を有する溶液が得られる。該樹脂溶液は、ペースト製造のために直接的に使用する。
【0134】
調製物F: 酸化ジルコニウムを有する顔料ペースト
まず、125部の水と594部の調製物Eの粉砕樹脂からプレミックスを形成する。次いで、7部の酢酸、9部のTETRONIC(登録商標)901、8部のカーボンブラック、26部の酸化ジルコニウム、547部の二酸化チタンTI−PURE(登録商標)R900(DuPont、米国)、44部のジ−n−ブチルスズオキシド、47部の次サリチル酸ビスマス及び120部のASP200クレイ(Langer&Co./ドイツ)を添加する。該混合物を、高速溶解撹拌機で30分にわたり予備分散させる。該混合物を引き続き、小さい研究室用のミル(Motor Mini Mill,Eiger Engineering Ltd,英国)中で、それが12μm未満又はそれに等しいヘグマン粒度を測定するまで分散させ、そして固体含有率を追加の水で調整する。得られた顔料ペーストは、固体含有率:69.43質量%(110℃で1時間)を有する。
【0135】
調製物G: 酸化亜鉛を有する顔料ペースト
まず、125部の水と594部の調製物Eの粉砕樹脂からプレミックスを形成する。次いで、7部の酢酸、9部のTETRONIC(登録商標)901、8部のカーボンブラック、17部の酸化亜鉛、547部の二酸化チタンTI−PURE(登録商標)R900(DuPont、米国)、44部のジ−n−ブチルスズオキシド、47部の次サリチル酸ビスマス及び120部のASP200クレイ(Langer&Co./ドイツ)を添加する。該混合物を、高速溶解撹拌機で30分にわたり予備分散させる。該混合物を引き続き、小さい研究室用のミル(Motor Mini Mill,Eiger Engineering Ltd,英国)中で、それが12μm未満又はそれに等しいヘグマン粒度を測定するまで分散させ、そして固体含有率を追加の水で調整する。得られた顔料ペーストは、固体含有率:69.43質量%(110℃で1時間)を有する。
【0136】
調製物H: 酸化バナジウムを有する顔料ペースト
まず、125部の水と594部の調製物Eの粉砕樹脂からプレミックスを形成する。次いで、7部の酢酸、9部のTETRONIC(登録商標)901、8部のカーボンブラック、19部の酸化バナジウム、547部の二酸化チタンTI−PURE(登録商標)R900(DuPont、米国)、44部のジ−n−ブチルスズオキシド、47部の次サリチル酸ビスマス及び120部のASP200クレイ(Langer&Co./ドイツ)を添加する。該混合物を、高速溶解撹拌機で30分にわたり予備分散させる。該混合物を引き続き、小さい研究室用のミル(Motor Mini Mill,Eiger Engineering Ltd,英国)中で、それが12μm未満又はそれに等しいヘグマン粒度を測定するまで分散させ、そして固体含有率を追加の水で調整する。得られた顔料ペーストは、固体含有率:69.43質量%(110℃で1時間)を有する。
【0137】
調製物I: 酸化イットリウムを有する顔料ペースト
まず、125部の水と594部の調製物Eの粉砕樹脂からプレミックスを形成する。次いで、7部の酢酸、9部のTETRONIC(登録商標)901、8部のカーボンブラック、23部の酸化イットリウム、547部の二酸化チタンTI−PURE(登録商標)R900(DuPont、米国)、44部のジ−n−ブチルスズオキシド、47部の次サリチル酸ビスマス及び120部のASP200クレイ(Langer&Co./ドイツ)を添加する。該混合物を、高速溶解撹拌機で30分にわたり予備分散させる。該混合物を引き続き、小さい研究室用のミル(Motor Mini Mill,Eiger Engineering Ltd,英国)中で、それが12μm未満又はそれに等しいヘグマン粒度を測定するまで分散させ、そして固体含有率を追加の水で調整する。得られた顔料ペーストは、固体含有率:69.43質量%(110℃で1時間)を有する。
【0138】
調製物J: 酸化コバルトを有する顔料ペースト
まず、125部の水と594部の調製物Eの粉砕樹脂からプレミックスを形成する。次いで、7部の酢酸、9部のTETRONIC(登録商標)901、8部のカーボンブラック、17部の酸化コバルト、547部の二酸化チタンTI−PURE(登録商標)R900(DuPont、米国)、44部のジ−n−ブチルスズオキシド、47部の次サリチル酸ビスマス及び120部のASP200クレイ(Langer&Co./ドイツ)を添加する。該混合物を、高速溶解撹拌機で30分にわたり予備分散させる。該混合物を引き続き、小さい研究室用のミル(Motor Mini Mill,Eiger Engineering Ltd,英国)中で、それが12μm未満又はそれに等しいヘグマン粒度を測定するまで分散させ、そして固体含有率を追加の水で調整する。得られた顔料ペーストは、固体含有率:69.43質量%(110℃で1時間)を有する。
【0139】
調製物K: 二倍の酸化コバルトを有する顔料ペースト
まず、125部の水と594部の調製物Eの粉砕樹脂からプレミックスを形成する。次いで、7部の酢酸、9部のTETRONIC(登録商標)901、8部のカーボンブラック、34部の酸化コバルト、547部の二酸化チタンTI−PURE(登録商標)R900(DuPont、米国)、44部のジ−n−ブチルスズオキシド、47部の次サリチル酸ビスマス及び120部のASP200クレイ(Langer&Co./ドイツ)を添加する。該混合物を、高速溶解撹拌機で30分にわたり予備分散させる。該混合物を引き続き、小さい研究室用のミル(Motor Mini Mill,Eiger Engineering Ltd,英国)中で、それが12μm未満又はそれに等しいヘグマン粒度を測定するまで分散させ、そして固体含有率を追加の水で調整する。得られた顔料ペーストは、固体含有率:69.43質量%(110℃で1時間)を有する。
【0140】
調製物L: 酸化モリブデンを有する顔料ペースト
まず、125部の水と594部の調製物Eの粉砕樹脂からプレミックスを形成する。次いで、7部の酢酸、9部のTETRONIC(登録商標)901、8部のカーボンブラック、26部の酸化モリブデン、547部の二酸化チタンTI−PURE(登録商標)R900(DuPont、米国)、44部のジ−n−ブチルスズオキシド、47部の次サリチル酸ビスマス及び120部のASP200クレイ(Langer&Co./ドイツ)を添加する。該混合物を、高速溶解撹拌機で30分にわたり予備分散させる。該混合物を引き続き、小さい研究室用のミル(Motor Mini Mill,Eiger Engineering Ltd,英国)中で、それが12μm未満又はそれに等しいヘグマン粒度を測定するまで分散させ、そして固体含有率を追加の水で調整する。得られた顔料ペーストは、固体含有率:67質量%(110℃で1時間)を有する。
【0141】
調製物M: 顔料ペースト
まず、125部の水と594部の調製物Eの粉砕樹脂からプレミックスを形成する。次いで、7部の酢酸、9部のTETRONIC(登録商標)901、8部のカーボンブラック、547部の二酸化チタンTI−PURE(登録商標)R900(DuPont、米国)、44部のジ−n−ブチルスズオキシド、47部の次サリチル酸ビスマス及び120部のASP200クレイ(Langer&Co./ドイツ)を添加する。該混合物を、高速溶解撹拌機で30分にわたり予備分散させる。該混合物を引き続き、小さい研究室用のミル(Motor Mini Mill,Eiger Engineering Ltd,英国)中で、それが12μm未満又はそれに等しいヘグマン粒度を測定するまで分散させ、そして固体含有率を追加の水で調整する。得られた顔料ペーストは、固体含有率:69.43質量%(110℃で1時間)を有する。
【0142】
実施例1
電着浴を、1211.7部の調製物C、150.8部の調製物M、及び1137.5部の脱イオン水を合することによって調製する。水及び調製物Cの樹脂エマルジョンを一定の撹拌をしつつ1つの容器中で合し、そして調製物Mを撹拌しながら添加する。前記浴の固体含有率は、19質量%である。
【0143】
実施例2
電着浴を、1211.7部の調製物C、148部の調製物J、及び1140.5部の脱イオン水を合することによって調製する。水及び調製物Cの樹脂エマルジョンを一定の撹拌をしつつ1つの容器中で合し、そして調製物Jを撹拌しながら添加する。前記浴の固体含有率は、19質量%である。
【0144】
実施例3
電着浴を、1164部の調製物C、139.8部の調製物K、及び1095.8部の脱イオン水を合することによって調製する。水及び調製物Cの樹脂エマルジョンを一定の撹拌をしつつ1つの容器中で合し、そして調製物Kを撹拌しながら添加する。前記浴の固体含有率は、19質量%である。
【0145】
実施例4
電着浴を、1211.7部の調製物C、148部の調製物L、及び1144.5部の脱イオン水を合することによって調製する。水及び調製物Cの樹脂エマルジョンを一定の撹拌をしつつ1つの容器中で合し、そして調製物Lを撹拌しながら添加する。前記浴の固体含有率は、19質量%である。
【0146】
実施例5
電着浴を、1662部の調製物D、146部の調製物M、及び692部の脱イオン水を合することによって調製する。水及び調製物Dの樹脂エマルジョンを一定の撹拌をしつつ1つの容器中で合し、そして調製物Mを撹拌しながら添加する。前記浴の固体含有率は、19質量%である。
【0147】
実施例6
電着浴を、1211.7部の調製物D、148部の調製物F、及び1144.5部の脱イオン水を合することによって調製する。水及び調製物Dの樹脂エマルジョンを一定の撹拌をしつつ1つの容器中で合し、そして調製物Fを撹拌しながら添加する。前記浴の固体含有率は、19質量%である。
【0148】
実施例1〜6(実施例1は比較例であり、実施例2〜6は本発明の実施例である)は、リン酸化された冷間圧延鋼とベアな冷間圧延鋼の両方の4インチ×6インチの試験パネルを100〜225ボルト(0.5アンペア)で実施例において浴温度88〜98゜F(31〜36.7℃)で2.2分にわたりコーティングし、該コーティングされたパネルを350゜F(177℃)で28分間にわたり焼き付けすることによって試験する。析出され、焼き付けられたコーティングは、約0.8ミル(20μm)の塗膜形成を有する。3種のパネルを、それぞれの温度及び基材についてコーティングした。
【0149】
対照パネルを、前記の通りであるが、U32AD500(BASF Corporationにより販売される市販品)を使用して製造した。
【0150】
焼き付け後に、それぞれのパネルを直接的に真っ二つにけがき、GMW14872に従って試験する。試験の説明は、以下の通りである: 8時間にわたり、試験パネルを0.5%NaCl、0.1%CaCl2及び0.075%NaHCO3からなる塩溶液の夾雑物吹き付けを25℃及び45%の相対湿度(RH)で行う。次いで、それらの試験パネルを、49℃及び100%の相対湿度に晒し、引き続きパネルを<30%相対湿度で8時間にわたり60℃にする乾燥段階を行う。そのサイクルを、冷間圧延鋼(CRS)(SAEJ2329 CRIEによる、未コーティング)のクーポンが3.9gmの質量損失に至るまで繰り返す。完了した後に、それぞれのパネルを水ですすぎ、金属スパチュラで掻き取る。腐蝕は、けがき長さに沿った選ばれたポイントのけがき幅の平均として測定される。
【0151】
結果は、ベアな冷間圧延鋼で試験したものである。
【0152】
【表1】

【0153】
実施例7
電着浴を、1211.7部の調製物D、148部の調製物G、及び1144.5部の脱イオン水を合することによって調製する。水及び調製物Dの樹脂エマルジョンを一定の撹拌をしつつ1つの容器中で合し、そして調製物Gを撹拌しながら添加する。前記浴の固体含有率は、19質量%である。
【0154】
実施例8
電着浴を、1211.7部の調製物D、148部の調製物H、及び1144.5部の脱イオン水を合することによって調製する。水及び調製物Dの樹脂エマルジョンを一定の撹拌をしつつ1つの容器中で合し、そして調製物Hを撹拌しながら添加する。前記浴の固体含有率は、19質量%である。
【0155】
実施例9
電着浴を、1211.7部の調製物D、148部の調製物I、及び1144.5部の脱イオン水を合することによって調製する。水及び調製物Dの樹脂エマルジョンを一定の撹拌をしつつ1つの容器中で合し、そして調製物Iを撹拌しながら添加する。前記浴の固体含有率は、19質量%である。
【0156】
コーティングされたパネルは、実施例7〜9から、リン酸化された冷間圧延鋼とベアな冷間圧延鋼の両方の4インチ×6インチの試験パネルを100〜225ボルト(0.5アンペア)で実施例7〜9のそれぞれ1つにおいて浴温度88〜98゜F(31〜36.7℃)で2.2分にわたりコーティングし、該コーティングされたパネルを350゜F(177℃)で28分間にわたり焼き付けすることによって製造する。析出され、焼き付けられたコーティングは、約0.8ミル(20μm)の塗膜形成を有する。
【0157】
調製物M: 顔料ペースト
まず、125部の水と594部の調製物Eの粉砕樹脂溶液からプレミックスを形成する。次いで、7.3部の酢酸、9部のTetronic(登録商標)901界面活性剤、7.5部のカーボンブラック、120部のヒドロケイ酸アルミニウムASP200クレイ(Langer&Co./ドイツ)、547部の二酸化チタンTI−PURE(登録商標)R900(DuPont、米国)、43.6部のジ−n−ブチルスズオキシド、46.7部の次サリチル酸ビスマスを添加する。該混合物を、高速溶解撹拌機で30分にわたり予備分散させる。該混合物を引き続き、小さい研究室用のミル(Motor Mini Mill,Eiger Engineering Ltd,英国)中で、それが12μm未満又はそれに等しいヘグマン粒度を測定するまで分散させ、そして次いで最終固体含有率を追加の水で調整する。分離安定な顔料ペーストが得られる。固体含有率:70.0質量%(110℃で1時間)。
【0158】
実施例10
986部の調製物Dと、147.8部の調製物Mと、1366部の脱イオン水とを合することによって浴を調製する。水及び調製物Dの樹脂エマルジョンを一定の撹拌をしつつ1つの容器中で合し、そして調製物Fを撹拌しながら添加する。前記浴の固体含有率は、19質量%である。
【0159】
実施例10は、リン酸化された冷間圧延鋼とベアな冷間圧延鋼の両方の4インチ×6インチの試験パネルを100〜225ボルト(0.5アンペア)で実施例1において浴温度88〜98゜F(31〜36.7℃)で2.2分にわたりコーティングし、該コーティングされたパネルを350゜F(177℃)で28分間にわたり焼き付けすることによって試験した。析出され、焼き付けられたコーティングは、約0.8ミル(20μm)の塗膜形成を有する。3種のパネルを、それぞれの温度及び基材についてコーティングした。
【0160】
対照パネルを、前記の通りであるが、U32AD500(BASF Corporationにより販売される市販品)を使用して製造した。
【0161】
焼き付け後に、それぞれのパネルを直接的に真っ二つにけがき、GMW14872に従って試験する。試験の説明は、以下の通りである: 8時間にわたり、試験パネルを0.5%NaCl、0.1%CaCl2及び0.075%NaHCO3からなる塩溶液の夾雑物吹き付けを25℃及び45%の相対湿度(RH)で行う。次いで、それらの試験パネルを、49℃及び100%の相対湿度に晒し、引き続きパネルを<30%相対湿度で8時間にわたり60℃にする乾燥段階を行う。そのサイクルを、冷間圧延鋼(CRS)(SAEJ2329 CRIEによる、未コーティング)のクーポンが3.9gmの質量損失に至るまで繰り返す。完了した後に、それぞれのパネルを水ですすぎ、金属スパチュラで掻き取る。腐蝕は、けがき長さに沿った選ばれたポイントのけがき幅の平均として測定される。
【0162】
結果は、ベアな冷間圧延鋼で試験したものである。
【0163】
【表2】

【0164】
詳細な説明は、単に例示的な性質にすぎず、従って本開示の骨子から逸脱しない別形も本発明の一部である。それらの別形は、本開示の趣旨及び範囲から逸脱するものとして見なされるべきではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バインダーを含む水性コーティング組成物であって、前記バインダーが、リン酸化樹脂及びエステル基から2〜4個の炭素だけ離れたカルボキシル基を有する、前記水性コーティング組成物。
【請求項2】
前記バインダーが、カソード電着可能である、請求項1に記載の水性コーティング組成物。
【請求項3】
更に、酸化ビスマス、酸化バナジウム、酸化マンガン、酸化コバルト、酸化亜鉛、酸化ストロンチウム、酸化イットリウム、酸化モリブデン、酸化ジルコニウム、酸化ランタン、ランタン系列の元素の酸化物及びそれらの組み合わせからなる群から選択される金属酸化物を含む、請求項1又は2に記載の水性コーティング組成物。
【請求項4】
更に、三座アミン配位子を含み、前記三座アミン配位子が、構造−N(−R′−NR22[式中、R′は、1から4個までの炭素原子と、場合によりエーテル酸素を有するアルキル基であり、かつそれぞれのRは、独立して1〜4個の炭素原子のアルキルである]を有する、請求項1から3までのいずれか1項に記載の水性コーティング組成物。
【請求項5】
前記バインダーが、電着可能である、請求項1から4までのいずれか1項に記載の水性コーティング組成物。
【請求項6】
前記リン酸化樹脂が、エポキシ樹脂又はビニル樹脂である、請求項1から5までのいずれか1項に記載の水性コーティング組成物。
【請求項7】
前記リン酸化樹脂が、基
【化1】

[式中、Xは、水素、一価の炭化水素基、又は酸素原子であり、その酸素原子は、リン原子に対して単独の共有結合を有し、かつそれぞれの酸素原子は、水素原子、アルキル基、アリール基、アルキルアリール基、アリールアルキル基又はアミン官能性樹脂に対して共有結合を有するが、但し、少なくとも1個の酸素原子は、前記樹脂に対して共有結合を有する]を含む、請求項1から6までのいずれか1項に記載の水性コーティング組成物。
【請求項8】
全バインダー固形分の質量に対して、約0.01質量%〜約1質量%の金属酸化物を含む、請求項1から7までのいずれか1項に記載の水性コーティング組成物。
【請求項9】
前記エステル基から2〜4個の炭素だけ離れたカルボキシル基が、構造
【化2】

[式中、nは、2、3又は4であり、かつR及びR1のそれぞれは、独立してH及び1〜4個の炭素原子を有するアルキル基から選択される]を有する、請求項1から8までのいずれか1項に記載の水性コーティング組成物。
【請求項10】
更に、架橋剤及び該架橋剤と反応性の第二のアミン官能性樹脂を含み、その際、該第二のアミン官能性樹脂が、リン含有基を含まない、請求項1から9までのいずれか1項に記載の水性コーティング組成物。
【請求項11】
導電性の基材をコーティングする方法であって、
(a)金属の自動車車体を清浄化することと、
(b)清浄化した金属の自動車車体を、請求項1から10までのいずれか1項に記載の水性コーティング組成物中に入れることと、
(c)前記金属の自動車車体を電極として電気回路に接続し、そして前記水性の電着コーティング組成物に電流を流して、前記金属の自動車車体上にコーティング層を析出させることと、
を含む、導電性の基材をコーティングする方法。
【請求項12】
前記金属の自動車車体がリン酸塩前処理されていない、請求項11に記載の導電性の基材のコーティング方法。
【請求項13】
導電性の基材が金属の自動車車体を含む、請求項11又は12に記載の導電性の基材をコーティングする方法。
【請求項14】
更に、(d)更なるコーティング層を前記電着コーティング層上に適用することを含む、請求項11から13までのいずれか1項に記載の導電性の基材のコーティング方法。
【請求項15】
請求項11から14までのいずれか1項に記載の方法により製造されるコーティングされた基材。

【公表番号】特表2012−514098(P2012−514098A)
【公表日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−544428(P2011−544428)
【出願日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際出願番号】PCT/US2009/058184
【国際公開番号】WO2010/077403
【国際公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【出願人】(390008981)ビーエーエスエフ コーティングス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (155)
【氏名又は名称原語表記】BASF Coatings GmbH
【住所又は居所原語表記】Glasuritstrasse 1, D−48165 Muenster,Germany
【Fターム(参考)】