説明

電磁アクチュエータ

【課題】ロータの吸引力を均一にして動作電圧等安定させることができるとともに、アクチュエータの構造の簡素化を図ることを可能にする。さらに、動作電圧等選択的に設定できるようにするとともに、ロータの回転方向を任意に設定できるようにする。
【解決手段】ロータ12がコイル14への入力で所定回転角内を回転する電磁アクチュエータ10であって、ヨーク15に、ロータ12とヨーク15と間に吸引力の差を発生させる窓状の孔63,64を備え、コイル14に通電したときには、ロータ12の円筒面21bに現れるN極とS極との境界面33を、窓状の孔63,64の端部63a,64a若しくは端部63b,64bに臨ませ、コイル14を非通電にしたときは境界面33を窓状の孔63,64の内側に食い込ませた位置に設定することで、ロータ12を所定回転角内の一方に保持した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタルカメラのシャッターやレンズカバーなどの駆動源として用いられる電磁アクチュエータであり、所定回転角内を回転するロータを備えた電磁アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
電磁アクチュエータの中には、2極着磁された永久磁石からなる回転可能に配されたロータと、このロータの外周を囲むように配置され、磁性部材で形成したリング状のヨークと、このヨークの内側でロータを間にして互いに対向する位置に配置されたコイルとを有するものが知られている。
【0003】
この種の電磁アクチュエータは、ヨークとロータと間に働く吸引力を用いて保持力を発生させて双方向に保持するものであり、動作に関しては、一方側に保持された状態のロータをコイルに通電することで他方側に回転させる。この状態から電気極性を反対方向にした電気をコイルに通電することで、磁界の方向を換え、元の位置に復帰させるものである。
このような電磁アクチュエータとして、各種のものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2002−116478号公報(第11頁、図1)
【0004】
特許文献1の技術の概要を、図10に基づいて説明する。
図10は従来の電磁アクチュエータを説明する図であり、電磁アクチュエータ200は、2極着磁された永久磁石からなる回転可能に配されたロータ201と、このロータ201の外周を囲むように配置され、磁性部材で形成したリング状のヨーク202と、このヨーク202の内側でロータ201を間にして互いに対向する位置に配置され、ロータ201を駆動するコイル203と、ヨーク202の内側でコイル203の対向方向に直交させて配置され、ロータ201の位置決めのための磁性ピン204,204とからなる。
【0005】
このように、従来の電磁アクチュエータ200は、ロータ201を所定回転角θ1内で回転させ、所定回転角θ1の両端で自己保持できる双安定型のアクチュエータであり、磁性ピン204,204を用いることで、ロータ201の所定回転角内の両端で非通電時にロータ201とヨーク202との磁気作用により自己保持するものであった。
【0006】
しかし、このような電磁アクチュエータ200では、磁性ピン204,204の配置される位置および磁性ピン204,204自体のばらつき等により、磁気吸引力(若しくは磁気反発力)のばらつきが生じる。これに伴いコイル203による動作電圧が大きく左右されるため、アクチュエータの電気特性的にばらつきが大きく発生していた。従って、実用には動作電圧等に大きなマージンを必要としていた。
【0007】
その上、この磁気吸引力(若しくは磁気反発力)を得るための磁性ピン204は必須のものとして、少なくとも一本は配置するものであり、磁性ピン204を保持するための構造が複雑なものとなった。
【0008】
例えば、コイルに通電することで、一方側に保持されたロータを他方側に回転させ、通電を解除すると一方側に自己復帰する片安定型(単安定型)の電磁アクチュエータを開発する場合にも上記課題がある。
【0009】
この場合に、ロータの吸引力(若しくは磁気反発力)を可変できるようにして動作電圧等選択的に設定できるようにすることも好ましいことである。
また、コイルに通電するときにロータの回転方向を時計回りに回転させたり、反時計回りに回転させたりするアクチュエータを共通の部品を用いて設定できるようにすることも、アクチュエータの用途を拡げる上で好ましいことである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、ロータの吸引力を均一にして動作電圧等安定させることができるとともに、アクチュエータの構造の簡素化を図ることができる片安定型の電磁アクチュエータを提供することを課題とする。さらに、動作電圧等選択的に設定できるようにするとともに、ロータの回転方向を任意に設定できるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に係る発明は、円筒状の磁性体に径方向に2極に着磁したロータと、このロータを所定回転角内に回転可能に支持する支持体と、ロータの両端面の直径外方を通るように支持体の廻りにループ状に巻回され、ロータを駆動するコイルと、これらのロータ、支持体及びコイルの一部を一括して覆うことで、ロータの磁極方向と直行する位置に配置した略円筒状のヨークとからなり、ロータがコイルへの入力で所定回転角内を回転する電磁アクチュエータであって、ヨークに、ロータとヨークと間に吸引力の差を発生させる窓状の孔を備え、コイルに通電したときには、ロータの円筒面に現れるN極とS極との境界面を、窓状の孔の端部の近傍に臨ませ、コイルを非通電にしたときは境界面を窓状の孔の内側に食い込ませた位置に設定することで、ロータを所定回転角内の一方に保持することを特徴とする。
【0012】
請求項2に係る発明は、ロータに、支持体に回転可能に嵌合する軸と、所定回転角内で支持体に当接するストッパ片と、被動作体を動作させる作動片とを備え、これらの軸、ストッパ片及び作動片を一体的に形成したことを特徴とする。
【0013】
請求項3に係る発明は、支持体に、ヨークに嵌合する凸部を備え、ヨークに、凸部に嵌合させる複数の凹部を備え、これらの複数の凹部に凸部を選択的に嵌合することで、ロータを保持する保持力を調整することを特徴とする。
【0014】
請求項4に係る発明は、ヨークに、複数の凹部の組合せを2通り備えることで、コイルに通電したときに、反時計方向及び時計方向のどちら方向でもロータの回転を許容したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に係る発明では、ヨークに、ロータとヨークと間に吸引力の差を発生させる窓状の孔を備え、コイルに通電したときには、ロータの円筒面に現れるN極とS極との境界面を、窓状の孔の端部の近傍に臨ませ、コイルを非通電にしたときは境界面を窓状の孔の内側に食い込ませた位置に設定することで、ロータを所定回転角内の一方に保持するようにした。
【0016】
このように、吸引力の差を作り出すのはヨークに設けられた窓状の孔なので、例えば、磁性ピンなどの磁性部材をヨーク内側に配置する場合に比べ設定位置のばらつきが少ない。この結果、ロータの吸引力を均一にすることができ、コイルに加える動作電圧等を安定させることができる。
さらに、吸引力の差を作り出すのはヨークに設けられた窓状の孔なので、アクチュエータの構造を簡素にすることができる。これにより、アクチュエータの部品点数の低減を図ることができる。この結果、アクチュエータの生産性の向上を図ることができる。
【0017】
請求項2に係る発明では、ロータに、支持体に回転可能に嵌合する軸と、所定回転角内で支持体に当接するストッパ片と、被動作体を動作させる作動片とを一体的に形成することで、ロータに軸、ストッパ片及び作動片などの付帯部品を同時に取付けることができる。これにより、ロータの生産性の向上を図ることができる。この結果、アクチュエータのコストの低減を図ることができる。
【0018】
請求項3に係る発明では、支持体に、ヨークに嵌合する凸部を備え、ヨークに、凸部に嵌合させる複数の凹部を備え、これらの複数の凹部に凸部を選択的に嵌合することで、ロータを保持する自己保持力(吸引力)を調整することができる。このように、ロータの自己保持力を調整することで、コイルに加える動作電圧等の特性を変えることができる。これにより、用途に応じて保持力若しくは動作電圧等の特性を変えたアクチュエータを選ぶことができる。
【0019】
請求項4に係る発明では、ヨークに、複数の凹部の組合せを2通り備えることで、コイルに通電したときに、反時計方向及び時計方向のどちら方向でもロータの回転が可能となる。この結果、アクチュエータの用途の拡大を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
図1は本発明に係る電磁アクチュエータの斜視図であり、図2は図1に示された電磁アクチュエータの分解斜視図であり、図3は図1に示された電磁アクチュエータの平面図であり、図4は図1の4−4線断面図であり、図5は図1の5−5線断面図である。
【0021】
図1及び図2に示すように、電磁アクチュエータ10は、円筒状の磁性体を主要構成とするロータ12と、このロータ12を回転可能に支持する支持体13と、この支持体13に巻回したコイル14と、これらのロータ12、支持体13及びコイル14の一部を一括して覆いつつ、ロータ12の円筒面の廻りに配置するヨーク15とからなり、非通電のときには支持体13の一方側にロータ12が保持され、コイル14に通電することでロータ12が他方側に回転し、通電を解除すると一方側にロータ12が自己復帰する片安定型(単安定型)のアクチュエータである。
【0022】
ロータ12は、円筒状の磁性体の矢印A1で示す径方向にS極とN極の2極に着磁された永久磁石(磁性体)21と、この永久磁石21の両端面21a,21aの中心に設けられた軸22と、この軸22の下部に形成された円形フランジ23と、この軸22の上部から径外方に扇状に延出された扇状フランジ24と、この扇状フランジ24の上面から上方且つ径外方に延出された作動片25と、扇状フランジ24の外周から下方に垂下して永久磁石21の円筒面21bに沿わせて延ばされたストッパ片26とからなる。
【0023】
なお、永久磁石21の両端面21a,21aはロータ12の両端面でもある。また、永久磁石21の円筒面21bはロータ12の円筒面でもある。
【0024】
軸22は、円筒状の永久磁石(磁性体)21の中心に設けられた貫通孔28に形成され、永久磁石21に固着される。また、支持体13に嵌合して回転可能に支持される。
円形フランジ23及び扇状フランジ24は、軸22の抜け防止機能を有する。
【0025】
作動片25は、扇状フランジ24の上面から上方且つ外方に延出されるステー部31と、このステー部31の先端部分に上方に延ばされた作動ポール32とからなり、作動ポール32は、デジタルカメラのシャッタやレンズカバーなどの被動作体(不図示)を動作させる部分である。さらに、作動片25は、永久磁石21の円筒面21bに現れるN極とS極との境界面33を中心として径外方の一方に延出される。
【0026】
ストッパ片26は、支持体13内にてロータ12を所定回転角内で双方向に回転したときに、支持体13の所定の部位に当てる部分であり、永久磁石21の円筒面21bに現れるN極とS極との境界面33を中心として、垂下させたものである。
【0027】
これらの軸22、円形フランジ23、扇状フランジ24、作動片25及びストッパ片26は、永久磁石21にインサート成形などで一体的に形成される。これにより、ロータ12の生産性の向上を図ることができる。この結果、アクチュエータのコストの低減を図ることができる。
【0028】
支持体13は、好ましくは樹脂などの非磁性体にて形成される部材であり、ロータ12の軸22の上端を回転可能に支持する上部支持体34と、ロータ12の軸22の下端を回転可能に支持する下部支持体35とからなる。
【0029】
上部支持体34は、ロータ12の軸22の上端を支持する上支持部(上支持孔)36と、コイル14を巻回する上部溝37と、ロータ12のストッパ片26が当接する一方の位置決め部38及び他方の位置決め部39と、下部支持体35と所定位置にて合わせるために、孔41a,41aを有する嵌合面41,41と、ヨーク15に嵌合され、ヨーク15との位相を合致させる凸部(突起)42と、ロータ12を受ける受け面43(図4参照)とを有する。
【0030】
上支持部(上支持孔)36は、図4に示すように、ロータ12を受ける受け面43を有することで、ロータ12の回転時の摩擦力を小さくすることができる。
上部溝37は、上部支持体34の上面に形成される天井溝44と、この天井溝44から垂下させ上部支持体34の側面に形成される側溝45,45とを有する。
位置決め部38,39は、ロータ12の回転角を規制する部分である。
【0031】
下部支持体35は、ロータ12の軸22の下端を支持する下支持部(下支持孔)46と、コイル14を巻回する下部溝47と、上部支持体34と所定位置にて合わせるために、嵌合面41,41の孔41a,41aに挿入するボス51,51と、ロータ12を受ける受け面53(図4参照)とを有する。
【0032】
下支持部(下支持孔)46は、図4に示すように、ロータ12を受ける受け面53を有する。これにより、ロータ12の回転時の摩擦力を小さくすることができる。
下部溝47は、下部支持体35の下面に形成される底溝54と、この底溝54から上方に形成されるとともに、下部支持体35の側面に形成される側溝55,55とを有する。
【0033】
上述のように、支持体13の凹部56は、上部溝37の天井溝44及び側溝45,45と、下部溝47の底溝54及び側溝55,55とで構成されたループ状の部分である。
【0034】
すなわち、支持体13は、ロータ12の軸22方向に2分割構成とすることで、上部支持体34と下部支持体35とから構成される。これにより、上部支持体34にロータ12の軸22の上端を挿入し、この状態で下部支持体35にロータ12の軸22の下端を挿入し、上部支持体34に下部支持体35を合わせることで、支持体13にロータ12を組立ることができる。この結果、支持体13にロータ12を容易に組立てることができる。
【0035】
加えて、上部支持体34に孔41a,41aを有する嵌合面41,41を設け、下部支持体35に上部支持体34と所定位置にて合わせるためボス51,51を設けたので、上部支持体34に下部支持体35を精度よく合わせることができる。
【0036】
支持部13は、図5に示すように、上部溝37及び下部溝47を組み合わせることで、コイル14を巻回する凹部56が形成され、この凹部56は巻回されたコイル14が支持体13外形内に収納される深さを有する。これにより、支持体13内にコイル14を形成することができ、支持体13側方の廻りに円筒状のヨーク15を被せることができる。
さらに、上部支持体34と下部支持体35は、コイル14を巻回することで一体的に固定される。
【0037】
コイル14は、図5に示すように、ロータ12の両端面21a,21aの直径外方を通るように支持体13の廻りにループ状に巻回されるものであり、通電することでロータ12を駆動するものである。
【0038】
ヨーク15は、略円筒状の磁性体で形成された部材であり、略円筒状の上端に形成され、支持体13の凸部(突起)42が嵌合され、コイル14に通電したときにロータ12を反時計回りに設定する反時計回り設定用の位置合わせ部57と、支持体13の凸部42が嵌合され、コイル14に通電したときにロータ12を時計回りに設定する時計回り設定用の位置合わせ部58と、略円筒状の側面に形成され、ロータ12とヨーク15と間に吸引力の差を発生させる窓状の孔63,64とを有する。
【0039】
位置合わせ部57は、略円筒状のヨーク15上端に設けられたものであり、ロータ12の保持力を小さく設定する第1の凹部(位置合わせ溝)71と、ロータ12の保持力を中程度に設定する第2の凹部(位置合わせ溝)72と、ロータ12の保持力を大きく設定する第3の凹部(位置合わせ溝)73とを有する。
【0040】
位置合わせ部58は、略円筒状のヨーク15上端に設けられたものであり、ロータ12の保持力を小さく設定する第1の凹部(位置合わせ溝)74と、ロータ12の保持力を中程度に設定する第2の凹部(位置合わせ溝)75と、ロータ12の保持力を大きく設定する第3の凹部(位置合わせ溝)76とを有する。
【0041】
図2に示すように、窓状の孔63,64の関係は、ロータ12を挟んで対向して設けられる。窓状の孔64と位置合わせ部57,58との関係は、窓状の孔64の上方且つ窓状の孔64を挟んで位置合わせ部57,58が設けられる。
【0042】
電磁アクチュエータ10では、ヨーク15に、ロータ12とヨーク15と間に吸引力の差を発生させる窓状の孔63,64を備え、コイル14に通電したときには、ロータ12の円筒面21bに現れるN極とS極との境界面33を、窓状の孔63,64の端部63a,64a若しくは端部63b,64bの近傍に臨ませ、コイル14を非通電にしたときは境界面33を窓状の孔63,64の内側に食い込ませた位置に設定することで、ロータ12を所定回転角内の一方に保持する。
【0043】
このように、吸引力の差を作り出すのはヨーク15に設けられた窓状の孔63,64なので、例えば、磁性ピンなどの磁性部材をヨーク15内側に配置する場合に比べて設定位置のばらつきが少ない。この結果、ロータ12の吸引力を均一にすることができ、コイル14に加える動作電圧等を安定させることができる。
【0044】
さらに、吸引力の差を作り出すのはヨーク15に設けられた窓状の孔63,64なので、アクチュエータの構造を簡素にすることができる。これにより、アクチュエータの部品点数の低減を図ることができ、アクチュエータの生産性の向上を図ることができる。
【0045】
図6は本発明に係る電磁アクチュエータの反時計回り設定の説明図である。
なお、図1〜図5に示した電磁アクチュエータ10も、反時計回りに設定したアクチュエータであり、図6及び図7では電磁アクチュエータ10を反時計回りの電磁アクチュエータ10Aと記載する。また、支持体13の一方側とは支持体13の一方の位置決め部38の側、支持体13の他方側とは支持体13の他方の位置決め部39の側を言う。
【0046】
反時計回りの電磁アクチュエータ10Aは、位置合わせ部57に支持体13の凸部(突起)42を嵌合するようにしたことで、通電したときにロータ12が反時計回りに回転し、非通電にしたときに元の位置に自己復帰するアクチュエータである。
【0047】
詳細には、コイル14に通電したときにロータ12は支持体13の他方側へ矢印a1の如く反時計回りに回転し、ロータ12の円筒面21に現れるN極とS極との境界面33が、窓状の孔63,64の端部63a,64aの近傍に臨む。また、コイル14を非通電にしたときに、ロータ12とヨーク15の磁気作用でロータは支持体13の一方側に矢印a2の如く自己復帰し、境界面33を窓状の孔63,64の内側に食い込ませた位置に戻る。
【0048】
以上説明したように、電磁アクチュエータ10Aは、非通電のときには支持体13の一方側にロータ12が保持され、コイル14に通電することでロータ12が他方側に回転し、通電を解除すると一方側にロータ12が自己復帰する片安定型(単安定型)のアクチュエータである。
次に、反時計回りに設定するときに、電磁アクチュエータ10Aの保持力を変化させる場合を説明する。
【0049】
図7(a)〜(c)は図6に示された電磁アクチュエータの保持力を変化させたときの比較説明図である。
(a)において、反時計回りの電磁アクチュエータ10Aの第1の実施例を示し、反時計回り設定用の位置合わせ部57の第1の凹部(位置合わせ溝)71に支持体13の凸部(突起)42を嵌合した場合を示し、このときのロータ12の所定回転角をα1、窓状の孔63,64の中心線L1と、ロータ12の中心と支持体13の凸部42との延長線L2との角度を、保持力を決める設定角度β1とする。なお、所定回転角α1は一定の角度である。
【0050】
(b)において、反時計回りの電磁アクチュエータ10Aの第2の実施例を示し、位置合わせ部57の第2の凹部(位置合わせ溝)72に支持体13の凸部42を嵌合した場合を示し、このときの窓状の孔63,64の中心線L1と、ロータ12の中心と支持体13の凸部42との延長線L2との角度を、保持力を決める設定角度β2とする。
【0051】
(c)において、反時計回りの電磁アクチュエータ10Aの第3の実施例を示し、位置合わせ部57の第3の凹部(位置合わせ溝)73に支持体13の凸部42を嵌合した場合を示し、このときの窓状の孔63,64の中心線L1と、ロータ12の中心と支持体13の凸部42との延長線L2との角度を、保持力を決める設定角度β3とする。
【0052】
(a)〜(c)の設定状態を比較すると、β1>β2>β3の関係にあり、設定角度β1から設定角度β3に小さくなるに連れて、コイル14を非通電にしたときの自己保持位置おける境界面33が窓状の孔63,64の端部63a,64aのほうに近づく。確認の結果では、設定角度β3ではロータ12の保持力が最も大きく、設定角度β2では保持力が中程度であり、設定角度β1では保持力が最も小さい。
【0053】
なお、上記関係は、窓状の孔63,64と位置合わせ部57との関係で磁界の強さが変化し、設定角度β3から設定角度β1に増加するに連れて保持力が増大しない場合も有り得るが、自己保持力を可変することは可能である。
【0054】
すなわち、支持体13は、ヨーク15に嵌合する凸部(突起)42を備え、ヨーク15は、凸部42に嵌合させる複数の凹部(位置合わせ溝)71〜73を備え、これらの複数の凹部71〜73に凸部42を選択的に嵌合することで、ロータ12を保持する自己保持力(吸引力)を調整することができる。このように、ロータ12の自己保持力を調整することで、コイル14に加える動作電圧等の特性を変えることができる。これにより、用途に応じて自己保持力若しくは動作電圧等の特性を変えたアクチュエータを供給することができる。
【0055】
図8は本発明に係る電磁アクチュエータの時計回り設定の説明図である。図8及び図9では電磁アクチュエータ10を時計回りの電磁アクチュエータ10Bと記載する。また、支持体13の一方側とは支持体13の一方の位置決め部38の側、支持体13の他方側とは支持体13の他方の位置決め部39の側を言う。
【0056】
時計回りの電磁アクチュエータ10Bは、位置合わせ部58に支持体13の凸部(突起)42を嵌合することで、通電したときにロータ12が時計回りに回転し、非通電にしたときに元の位置に自己復帰するようにしたアクチュエータである。
【0057】
詳細には、コイル14に通電したときにロータ12は支持体13の一方側へ矢印b1の如く時計回りに回転し、ロータ12の円筒面21に現れるN極とS極との境界面33が、窓状の孔63,64の端部63b,64bの近傍に臨む。また、コイル14を非通電にしたときに、ロータ12とヨーク15の磁気作用でロータは支持体13の他方側に矢印b2の如く自己復帰し、境界面33を窓状の孔63,64の内側に食い込ませた位置に戻る。
【0058】
以上説明したように、電磁アクチュエータ10Bは、非通電のときには支持体13の他方側にロータ12が保持され、コイル14に通電することでロータ12が一方側に回転し、通電を解除すると他方側にロータ12が自己復帰する片安定型(単安定型)のアクチュエータである。
【0059】
図6及び図8に示すように、電磁アクチュエータ10A,10Bでは、ヨーク15に、複数の凹部71〜73及び複数の凹部74〜76のように、複数の凹部の組合せを2通り備えることで、コイル14に通電したときに、反時計方向及び時計方向のどちら方向でもロータ12の回転が可能となる。この結果、アクチュエータの用途の拡大を図ることができる。
次に、時計回り設定するときに、電磁アクチュエータ10Bの保持力を変化させる場合を説明する。
【0060】
図9(a)〜(c)は図8に示された電磁アクチュエータの保持力を変化させたときの比較説明図である。
(a)において、時計回りの電磁アクチュエータ10Bの第1の実施例を示し、時計回り設定用の位置合わせ部58の第1の凹部(位置合わせ溝)74に支持体13の凸部(突起)42を嵌合した場合を示し、このときのロータ12の所定回転角をα1、窓状の孔63,64の中心線L1と、ロータ12の中心と支持体13の凸部42との延長線L2との角度を、保持力を決める設定角度β1とする。なお、所定回転角α1は一定の角度である。
【0061】
(b)において、時計回りの電磁アクチュエータ10Bの第2の実施例を示し、位置合わせ部58の第2の凹部(位置合わせ溝)75に支持体13の凸部42を嵌合した場合を示し、このときの窓状の孔63,64の中心線L1と、ロータ12の中心と支持体13の凸部42との延長線L2との角度を、保持力を決める設定角度β2とする。
【0062】
(c)において、時計回りの電磁アクチュエータ10Bの第3の実施例を示し、位置合わせ部58の第3の凹部(位置合わせ溝)76に支持体13の凸部42を嵌合した場合を示し、このときの窓状の孔63,64の中心線L1と、ロータ12の中心と支持体13の凸部42との延長線L2との角度を、保持力を決める設定角度β3とする。
【0063】
(a)〜(c)の設定状態を比較すると、β1>β2>β3の関係にあり、設定角度β1から設定角度β3に小さくなるに連れて、コイル14を非通電にしたときの自己保持位置における境界面33が窓状の孔63,64の端部63b,64bのほうに近づく。確認の結果では、設定角度β3ではロータ12の保持力が最も大きく、設定角度β2では保持力が中程度であり、設定角度β1では保持力が最も小さい。
【0064】
なお、上記関係は、窓状の孔63,64と位置合わせ部58との関係で磁界の強さが変化し、設定角度β3から設定角度β1に増加するに連れて保持力が増大しない場合も有り得るが、自己保持力を可変することは可能である。
すなわち、図7及び図9に示すように、反時計回りの電磁アクチュエータ10Aでも時計回りの電磁アクチュエータ10Bでも、ロータ12を保持する自己保持力(吸引力)を調整することができる。
【0065】
尚、本発明に係る電磁アクチュエータは、窓状の孔63,64をパンチングメタルのような多数の孔や複数のスリットにて構成するものであってもよい。
また、窓状の孔63,64は、矩形の孔であったが、丸孔や矩形の孔にコーナを曲線にしたものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明に係る電磁アクチュエータは、デジタルカメラのシャッターやレンズカバーなどの小型電子機器に採用するのに好適である。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明に係る電磁アクチュエータの斜視図である。
【図2】図1に示された電磁アクチュエータの分解斜視図である。
【図3】図1に示された電磁アクチュエータの平面図である。
【図4】図1の4−4線断面図である。
【図5】図1の5−5線断面図である。
【図6】本発明に係る電磁アクチュエータの反時計回り設定の説明図である。
【図7】図6に示された電磁アクチュエータの保持力を変化させたときの比較説明図である。
【図8】本発明に係る電磁アクチュエータの時計回り設定の説明図である。
【図9】図8に示された電磁アクチュエータの保持力を変化させたときの比較説明図である。
【図10】従来の電磁アクチュエータを説明する図である。
【符号の説明】
【0068】
10…電磁アクチュエータ、12…ロータ、13…支持体、14…コイル、15…ヨーク、21a,21a…両端面、21b…円筒面、22…軸、25…作動片、26…ストッパ片、33…N極とS極との境界面、42…凸部(突起)、63,64…窓状の孔、63a,63b,64a,64b…端部、71〜73…複数の凹部(位置合わせ溝)、74〜76…複数の凹部(位置合わせ溝)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の磁性体に径方向に2極に着磁したロータと、このロータを所定回転角内に回転可能に支持する支持体と、前記ロータの両端面の直径外方を通るように前記支持体の廻りにループ状に巻回され、前記ロータを駆動するコイルと、これらのロータ、支持体及びコイルの一部を一括して覆うことで、前記ロータの磁極方向と直行する位置に配置した略円筒状のヨークとからなり、前記ロータが前記コイルへの入力で所定回転角内を回転する電磁アクチュエータであって、
前記ヨークは、前記ロータと前記ヨークと間に吸引力の差を発生させる窓状の孔を備え、前記コイルに通電したときには、前記ロータの円筒面に現れるN極とS極との境界面を、前記窓状の孔の端部の近傍に臨ませ、前記コイルを非通電にしたときは前記境界面を前記窓状の孔の内側に食い込ませた位置に設定することで、前記ロータを前記所定回転角内の一方に保持することを特徴とする電磁アクチュエータ。
【請求項2】
前記ロータは、前記支持体に回転可能に嵌合する軸と、前記所定回転角内で前記支持体に当接するストッパ片と、被動作体を動作させる作動片とを備え、これらの軸、ストッパ片及び作動片を一体的に形成したことを特徴とする請求項1記載の電磁アクチュエータ。
【請求項3】
前記支持体は、前記ヨークに嵌合する凸部を備え、前記ヨークは、前記凸部に嵌合させる複数の凹部を備え、これらの複数の凹部に前記凸部を選択的に嵌合することで、前記ロータを保持する保持力を調整することを特徴とする請求項1記載の電磁アクチュエータ。
【請求項4】
前記ヨークは、前記複数の凹部の組合せを2通り備えることで、前記コイルに通電したときに、反時計方向及び時計方向のどちら方向でも前記ロータの回転を許容したことを特徴とする請求項3記載の電磁アクチュエータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−160894(P2008−160894A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−343088(P2006−343088)
【出願日】平成18年12月20日(2006.12.20)
【出願人】(000192947)神明電機株式会社 (9)
【Fターム(参考)】