説明

電磁クラッチ装置を備えるポンプ

【課題】電磁クラッチ装置を備えるウォータポンプを提供する。
【解決手段】ウォータポンプが、ハウジング、ポンプ機構、および入力トルクを受け取るプーリを備えている。クラッチディスクが回転することにより、ポンプ機構に回転力を伝達する。強磁性クラッチリングは、プーリと一緒に回転する。クラッチリングは、係合位置と係合解除位置の間を移動して、入力トルクに応じて、クラッチディスクを選択的に回転させる。クラッチディスクに配設された磁石は、クラッチリングを係合位置方向に引き付け、電磁コイルは、磁石へのクラッチリングの引力を選択的に減少させて、係合位置と係合解除位置の間でクラッチリングを移動させるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はウォータポンプに関し、より詳しくは、電磁クラッチ装置を備えるウォータポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の冷却装置では、ウォータポンプを用いて、内燃機関とラジエータの間で冷却液を循環させ、自動車の内燃機関の運転温度を調節している。ウォータポンプは、通常、内燃機関エンジンの回転出力、例えば、ウォータポンプのポンプ機構に接続されたベルト駆動プーリによって駆動される。ウォータポンプのポンプ機構を駆動するため、内燃機関によって動かされるので、ウォータポンプを運転させると、内燃機関の燃料消費率が増加する。
【0003】
内燃機関の温度が低いとき、ウォータポンプを全速力で連続運転させて、内燃機関の温度を調節することは要求されない。しかし、内燃機関の運転時に、ウォータポンプを駆動するベルトまたはその他の手段は連続動作し続け、内燃機関の温度に拘わらず、ウォータポンプを全速力で連続運転させる。従って、内燃機関の温度に応じて、ウォータポンプを係合解除または減速して運転できる効率的な機構を備えることは望ましいだろう。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、電磁クラッチ装置を備えるウォータポンプを提供する。このウォータポンプは、その中にポンプチャンバを有するハウジングを備えている。ポンプチャンバは、吸水口と排水口とを有している。ポンプ機構は、ハウジングのポンプチャンバの中に配設され、回転力に応じて、ハウジングの吸水口からハウジングの排水口に流れる液体を吸い出すように構成されている。ウォータポンプは、入力トルクを受け取るプーリもさらに備えている。クラッチディスク、クラッチリング、少なくとも1つの磁石、および電磁コイルと協働して、プーリが受け取った入力トルクに応じて、回転力がポンプ機構に供給される。クラッチディスクは、プーリに対向する前側と、ポンプ機構に対向する後側とを有しており、環状摩擦領域(annular friction area)が、クラッチディスクの前側に設けられている。クラッチディスクが回転することで、回転力をポンプ機構に伝達する。クラッチリングがプーリに接続されて、それと一緒に回転し、少なくとも部分的に強磁性材料から製造される。
【0005】
クラッチリングは、係合解除位置の間で移動可能で、クラッチリング、クラッチディスク、および係合位置の間で磁気ギャップ(air gap9が形成され、クラッチリングが、クラッチディスクの環状摩擦領域と係合し、クラッチリングと一緒にクラッチディスクを回転させて、これによりプーリが受け取った入力トルクに応じて回転力をポンプ機構に伝達できる。少なくとも1つの磁石が、クラッチディスクの後側に配設され、クラッチリングに引力を及ぼして、クラッチリングを係合位置方向に引き付ける。電磁コイルは、電磁場を選択的に発生するように動作可能で、これは少なくとも1つの磁石によりクラッチリングに及ぼされた引力を減少させて、係合位置と係合解除位置の間でクラッチリングを移動させる。電磁コイルへの電源供給を停止したとき、クラッチリングは係合位置にあり、電磁コイルへ電源供給したとき、クラッチリングは係合解除位置にある。
【0006】
少なくとも1つの磁石を、環状摩擦領域の正反対のクラッチリングに配設し得る。またさらに、少なくとも1つの磁石を、電磁コイルに隣接して配設し得る。
【0007】
ウォータポンプは、クラッチリング上にバイアス力を及ぼして、クラッチリングを係合解除位置方向にバイアスするバイアス部(bias element)を備え、バイアス部によりクラッチリングに及ぼされた力が、電磁コイルに電源が供給されたとき、少なくとも1つの磁石によりクラッチリングに加えられた力に打ち勝つ。ウォータポンプは、ハウジングを貫通して形成された穴と、ハウジング内に部分的に配設された駆動シャフトとを備え得る。ハウジングの穴は、駆動シャフトに沿って延在し、ポンプチャンバと連通状態にある。駆動シャフトも駆動軸に沿って延在している。ポンプ機構は駆動シャフトに接続され、そこから回転力を受け取る。プーリが駆動シャフトに回動可能に接続されて、駆動シャフトに対してプーリを自由回転させ、クラッチディスクが、駆動シャフトに接続されて、駆動シャフトと一緒に回転する。駆動シャフトは内端と外端とを有し、ポンプ機構が駆動シャフトの内端に配設され、プーリが駆動シャフトの外端に配設され、クラッチディスクが、駆動シャフトに沿って中間位置に配設されている。
【0008】
ハウジングは、ハウジング内に形成され、穴の周囲を取り囲んでいる環状チャンバを有し得る。電磁チャンバは、開口端を有し、電磁コイルが電磁チャンバ内に配設されている。そのうえ、クラッチディスクは、その後部に環状チャネル部分を有し、少なくとも1つの磁石が、クラッチディスクの環状チャネル部分内に配設され、環状チャネル部分が、少なくとも部分的にハウジングの環状電磁チャンバに延在している。またさらに、環状チャネル部が、環状摩擦領域の正反対のクラッチディスクに配設されている。
【0009】
ウォータポンプは、第1の複数の補助磁石と第2の複数の補助磁石も備え得る。第1の複数の補助磁石は、クラッチディスク上に配設され、第1と第2の複数の補助磁石は、クラッチリング上に配設されている。クラッチリングが、係合位置と係合解除位置の間で移動するため、第1と第2の複数の補助磁石は互いに離隔している。クラッチディスクが、係合解除位置にあるとき、第1と第2の複数の補助磁石の間の磁力により、クラッチリングに対してクラッチディスクを非一様に回転させる。そのため、クラッチディスクは、クラッチリングよりも低速で回転する。
【0010】
本発明のある実施形態において、ポンプ機構は羽根車であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
ここでは、添付図面を参照して説明をし、数枚の図面全体を通して同じ参照符号は同じ部分を示す。
【0012】
【図1】本発明によるウォータポンプの断面図である。
【0013】
【図2】係合解除位置にあるウォータポンプの電磁クラッチを示す詳細図である。
【0014】
【図3】係合位置にあるウォータポンプの電磁クラッチを示す詳細図である。
【0015】
【図4】別の電磁クラッチを示す詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、電磁クラッチ装置12を備える本発明に係るウォータポンプ10を示す。ウォータポンプ10は、羽根車20などのポンプ機構を用いて、ハウジング18の吸水口14から排水口16に水または自動車用冷却剤などの液体を吸い出すように動作可能である。羽根車20は、駆動シャフト24と電磁クラッチ装置12を介して、プーリ22から回転力を受け取る。電磁クラッチ装置12は、係合位置の間を移動し、機械トルクをプーリ22、羽根車20、および係合位置の間で伝達するが、機械トルクは、プーリ22と羽根車20の間で伝達されない。ウォータポンプ10が、羽根車20を備えているものとして説明したが、本発明は、羽根車20に限定されず、むしろ、羽根車20は、回転力の伝達に応じて、液体を吸い出すように動作可能な任意のポンプ機構が可能であろうことを理解すべきである。
【0017】
本発明のウォータポンプ10は、自動車(図示せず)の内燃機関(図示せず)の冷却装置で用い、内燃機関の温度を低下させるために、内燃機関に自動車用冷却剤を吸い出し、ウォータポンプ10のプーリ22を駆動する回転力を内燃機関が供給するのに非常に適している。電磁クラッチ装置12が、係合解除位置にあるとき、トルクが羽根車20に伝達されないので、内燃機関の温度が、所定の閾値温度以下のときなど、ウォータポンプ10を用いて液体を吸い出す必要がないとき、電磁クラッチ装置20を用いて、ウォータポンプ10から内燃機関に加えられる負荷を軽減することができる。ところが、本発明は、内燃機関と一緒に用いられるウォータポンプ10を備えることに限定されず、むしろ、ウォータポンプ10は、ウォータポンプ10を選択的に動作させるのが望ましい用途に用い得る。
【0018】
ウォータポンプ10のハウジング18は、協働して、ハウジング18内でポンプチャンバ40を形成する第1の部分30と第2の部分32を備える2つの部分から成るアッセンブリとして製造し得る。ハウジングの第1の部分30は、適切な締結具(fasteners)37によりハウジング18の第2の部分32に接続され、Oリング38またはハウジング18の第1の部分30の端壁34と封止接触(sealing contact)しているその他の適切な弾性封止手段により、第2の部分32に対して封止される。これによりポンプ機構40並びにポンプ機構40の周囲を取り囲んでいるハウジング18の第2の部分32の外周壁36に対向している。
【0019】
駆動シャフト24をハウジング18のポンプチャンバ40に延在できるようにするために、ハウジング18の第1の部分30は、軸方向に貫通して延在する穴42を有している。穴42は、ハウジング18の第1の部分30の端壁34を通して垂直に延在し、ポンプチャンバ40と連通している。ハウジング18の第1の部分30の端壁34の反対側に、環状電磁チャンバ44が、ハウジング18の第1の部分30内に形成されている。電磁チャンバ44は、ハウジングの第1の部分の穴42から外側およびそれと同軸状に配設され、プーリ22方向を向いた開口端46を有している。
【0020】
ポンプチャンバ40に液体が流入およびそれから流出できるようにするため、ウォータポンプ10の吸水口14と排水口16が、ハウジング18の第2の部分32に形成されている。吸水口16と排水口18双方は、ポンプチャンバ40と液体が連通している。羽根車20が、穴42に隣接したポンプチャンバ40内に配設され、吸水口16から排水口18に移動するために、液体が羽根車20を通過しなければならないので、吸水口16を排水口18から分離している。
【0021】
回転力を羽根車20に伝達するために、駆動シャフト34は、駆動シャフト軸50に沿って、ハウジング18の第1の部分30の穴42を貫通して延在している。駆動シャフト24は、実質的に円筒形で、ハウジング18のポンプチャンバ40内に配設された内端52からハウジング18の外部に配設された外端54に延在している。駆動シャフト24の内端52は、羽根車20に堅く接続されて、駆動シャフト24が回転するに伴い羽根車20を同時に回転させる。駆動シャフト24は、ハウジング18の第1の部分30の穴42内に配設されたベアリングパック(bearing pack)56を通して軸方向に延在し、ハウジング18に対して駆動シャフト24を支持して、ハウジング18に対して駆動シャフト24の自由回転を可能にする。駆動シャフト24も封止アッセンブリ58を通して延在している。封止アッセンブリ58は、端壁34に隣接したハウジング18の第1の部分30の穴42内に位置している。封止アッセンブリ58は、ポンプチャンバ40から穴42に液体が流入するのを防止するため、封止アッセンブリ38に対する駆動シャフト24の自由回転を許容しつつ、ハウジング18の第1の部分30と駆動シャフト24を封止係合する1つ以上の弾性封止部材を備えている。
【0022】
入力トルクを受け取るために、プーリ22は、外端54の駆動シャフト24の上に配設されている。特に、プーリ22は、ベルト(図示せず)と係合可能な径方向面60を有する実質的に円筒状の部材、あるいは内燃機関(図示せず)により駆動される別のトルク伝達部材である。プーリ22の径方向外面(radial outer face)60は、溝、窪み、またはプーリ22に対しベルトの摩擦係合を向上させるその他の構成を備え、これによりプーリ22に対するベルトの滑りを防止し得る。プーリ22の放射端壁(radial end wall)62は、プーリ22の径方向外面60から径方向内側に延在し、プーリ22は、その内面上のプーリ22の軸方向端壁62と接続されたハブ54をさらに備えている。ハブ64は、プーリ22の軸方向端壁62と堅く接続され、軸受け66またはその他の適切な手段を用いて、プーリ22を駆動シャフト24の外端54に回動可能に接続するのに役立つ。従って、電磁クラッチ装置12が、係合解除位置にあるとき、プーリ22は、駆動シャフト24に対して自由に回転できる。
【0023】
プーリ22と羽根車20を選択的かつ機械的に接続して、羽根車20をプーリ22の回転と同時に回転させるために、図2〜3に示すように、クラッチ装置12は、クラッチディスク70、クラッチリング72、1つ以上の磁石73、および電磁コイル74を備えている。ここでさらに詳細に説明するように、クラッチディスク70に対してクラッチリング72を係合および係合解除することで、図2に示す係合位置と、図3に示す係合解除位置の間で電磁クラッチ装置22を移動させる。
【0024】
クラッチディスク70は、駆動シャフト24の内端52と外端54の間の中間点で駆動シャフト24に堅く接続されている。クラッチディスク70と駆動シャフト52の間の堅い接続により、クラッチディスク70と駆動シャフト24を一緒に回転させるため、駆動シャフト24とクラッチディスク70の中心穴75の間への圧入(press fit)を達成し得る。
【0025】
クラッチディスク0は、クラッチディスク70の中心穴76に隣接する内側部分78と、内側部分78の周囲を取り囲み、内側部分78から前方および後方に軸方向に延存する幅広外側部分(widened outer portion)80とを備えている。クラッチディスクは、プーリ22方向に対向する前側82と羽根車20方向に対向する後側84をさらに備えている。
【0026】
クラッチディスク70とクラッチリング72の間を摩擦係合させるため、環状摩擦部材86がクラッチリング70上に設けられている。環状摩擦部材86は、その正面側82のクラッチディスク70の外側部分80に配設されている。環状摩擦部材は、任意の適切な材料から形成し、適切な締結具によりクラッチディスク70の正面側82に装着、またはクラッチディスク70の正面側82に差し込まれたクラッチディスク70と一体的に形成し得る。
【0027】
クラッチディスク70に対して磁石73を設置するために、クラッチディスク70に環状流路88を設けてもよい。環状流路88は、クラッチディスク70の後側84方向に開口し、ハウジング18の電磁チャンバ44に対向している。環状流路18は、クラッツチディスク70の外側部分80の第1の放射壁(first radial wall)90と第2の放射壁(second radial wall)92の間に形成されている。第1の放射壁90は、クラッチディスク70の内側部分78に隣接しており、一方、第2の放射壁92は、クラッチディスク70の外周面に配設されている。環状流路88の第1の放射壁90と第2の放射壁92双方は、ハウジング18の電磁チャンバ44にわずかに延在している。磁石73は、環状流路18の離間した位置に配設されている。
【0028】
クラッチリング72は、係合位置と係合解除位置の間で移動し得るため、クラッチリング72は、波型ばね(wave spring)94により、プーリ22のハブ64に接続されている。波型ばね94は、プーリ22に対してクラッチリング72を固定して、クラッチリング72とプーリ22を一様に移動させる。しかしながら、波型ばね94は、駆動シャフト50に沿ってクラッチリング72を軸方向に移動できる。クラッチリング72が係合解除位置にあるとき、クラッチリング72とクラッチディスク70の間に磁気ギャップ96が形成されるように、波型ばね94は、ハブ64方向にクラッチリング72を偏奇させる。磁石73と電磁コイル74により発生された磁力に応じて、クラッチリング72を軸方向に移動し得るために、クラッチリング72が、少なくとも部分的に強磁性材料から製造される。
【0029】
クラッチリング72を引き付け、クラッチディスク70の環状摩擦部材86と係合させるために、磁石73は、クラッチリング72上に引力を及ぼす磁場を発生する。磁石73により通常クラッチリング72に及ぼされる引力は、波型ばね94によりクラッチリング72に及ぼされるバイアス力に打ち勝つのに十分な大きさであるので、磁石73によりクラッチリング72に及ばされる引力は、クラッチリング72が、係合位置にあるとき、環状摩擦部材86が、クラッチディスク70とクラッチリング72の間で非滑り係合を確立でき、これにより、プーリ22から駆動シャフト24へトルク伝達を行い、羽根車20を回転させることができる。
【0030】
磁石73が固定されているクラッチディスク70の環状流路88が、電磁チャンバ44の開口端46に延在しているので、電磁コイル74が、電磁チャンバ44内に配設され、磁石73の正反対に隣接している。例えば、112V直流を電磁コイル74へ供給をすると磁場を発生する。磁石78と電磁コイル74は、互いに隣接して整列しているので、電磁コイル74により発生された磁場は、磁石73により発生された磁場を乱してしまう。そうであるから、電磁コイル74に電源を供給すると、磁石73によりクラッチ72に及ぼされた引力は減少する。電磁コイル74に電源が供給されないとき、磁石73によりクラッチリング72に及ぼされた引力は波型ばね94のバイアス力に打ち勝ち、クラッチリング72を係合位置に移動させる。一方、電磁コイル74に電源を供給したとき、磁石73によりクラッチリング72に及ぼされた引力は減少してしまい、その結果、波型ばね94のバイアス力は、引力に打ち勝ち、クラッチリング72を係合解除位置に移動させる。
【0031】
運転時、ウォータポンプ10は、自動車の冷却装置で用いられ、自動車の内燃機関の温度を調節する。内燃機関により、ウォータポンプ10のプーリ22に入力トルクが加えられる。自動車の冷却装置が、内燃機関の温度が閾値温度以上にあると判断したとき、電磁クラッチ装置12の電磁コイル74への電源供給が停止され、クラッチリング72を係合位置に移動させ、その結果、プーリ22から羽根車20にトルクが伝達されて、ウォータポンプ10の吸水口14から排水口10へ液体を吸い出す。自動車の冷却装置が、温度が閾値以下にあると判断したとき、電磁コイル74に電源が供給されて、クラッチリング72を係合解除位置に移動させるため、ウォータポンプ10のプーリ22から羽根車20にトルクが伝達されない。
【0032】
別の実施形態において、図4に示すように、ウォータポンプ10は、残差運動クラッチ装置(residual motion clutch system)112を備えている。図1〜3に関して説明したように、このクラッチ装置112は、電磁クラッチ装置12の全ての構成要素を備えている。また、クラッチ装置112は、第1の磁性キャリア(first magnetic carrier)120と第2の磁性キャリア(second magnetic carrier)122を備えている。第1の磁性キャリア120は、クラッチディスク72の外周面に接続され、クラッチディスク72の周囲を取り囲んでいる。第2の磁性キャリア122は、クラッチリング70の外周面に接続され、クラッチリング70の周囲を取り囲んでいる。第1の磁性キャリア120は、第1の複数の補助磁石124をクラッチリング72の周囲に配設する役割を果たし、一方、第2の磁性キャリア122は、第2の複数の補助磁石126をクラッチディスク70の外周の周囲に配設する役割を果たす。クラッチリング72が係合位置と係合解除位置の間を移動しているとき、第1と第2の複数の補助磁石124,126が、互いに離隔したままになるように、第1の磁性キャリア120と第2の磁性キャリア122が配設されている。しかしながら、クラッチリング72が、係合解除位置にあるとき、第1の第2の複数の補助磁石124,126の間の磁力により、クラッチリング72に対してクラッチディスク70を非一様に回転させ、その結果、クラッチディスク70は、クラッチリング72によりも低速で回転する。よって、プーリ22から羽根車20にトルクが機械的に伝達されていないとき、ウォータポンプ10の低速回転を維持し得る。残差運動クラッチ装置112を有する別のウォータポンプ10の動作は、その他の点で、図1〜3に示す実施形態に関して説明したものと同じである。
【0033】
最も実施可能および好適な実施形態と現在考えられるものに関して本発明を説明したが、本発明は開示した実施形態に限定されず、それどころか、添付したクレームの精神と範囲に含まれる数々の変形例と同等構成を網羅するのを意図していることを理解すべきである。法の下に実施される、全ての上記の変形例と同等構成を含合するように、この範囲は最も広い解釈に一致する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸水口と排水口と有するポンプチャンバが形成されたハウジングと、
前記ハウジングの前記ポンプチャンバに配設され、回転力に応じて、前記吸水口から前記排水口に液体を吸い出すように構成されたポンプ機構と、
入力トルクを受け取るプーリと、
前記プーリに対向する前側と前記ポンプ機構に対向する後側とを有するクラッチディスクであり、前記クラッチディスクは、前記前側に環状摩擦領域を有し、前記クラッチディスクの回転により前記ポンプ機構に回転力を伝達し、
前記プーリに接続され同時に回転するクラッチリングであり、前記クラッチリングは、少なくとも部分的に強磁性材料から製造され、前記クラッチリングが、係合解除位置の間で移動可能であり、前記クラッチリング、前記クラッチディスク、および前記係合位置の間に磁気ギャップが形成され、前記クラッチリングが、前記クラッチディスクの前記環状摩擦領域と係合して、前記クラッチディスクを前記クラッチリングと一緒に回転させ、これにより前記プーリが受けた前記入力トルクに応じて、前記ポンプ機構に前記回転力を伝達し、
前記クラッチディスクの後部に配設された少なくとも1つの磁石であり、前記少なくとも1つの磁石が、前記クラッチリングに引力を及ぼして、前記係合位置方向に前記クラッチリングを引き付け、
前記少なくとも1つの磁石により前記クラッチリングに及ぼされた前記引力を減少させ、前記クラッチリングを前記係合位置と前記係合解除位置の間で移動させ、前記電磁コイルに電源が供給されないとき、前記クラッチリングが、前記係合位置にあり、前記電磁コイルに電源が供給されたとき、前記クラッチリングが、前記係合解除位置にある
ことを特徴とするウォータポンプ。
【請求項2】
前記環状摩擦領域に正反対の前記クラッチリングに配設された前記少なくとも1つの磁石をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のウォータポンプ。
【請求項3】
前記電磁コイルに隣接して配設された前記少なくとも1つの磁石をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のウォータポンプ。
【請求項4】
前記クラッチリングにバイアス力を及ぼして、前記クラッチリングを前記係合解除位置方向に偏奇し、前記前記クラッチリングに及ぼした前記力が、前電磁コイルに電源を供給したとき、前記少なくとも1つの磁石により前記クラッチリングに及ぼされた前記力に打ち勝つバイアス部をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のウォータポンプ。
【請求項5】
駆動シャフトに沿って延在する穴を有し、前記ポンプ機構と連通しているハウジングと、
前記駆動シャフトに沿って延在し、前記ハウジングの前記穴内に部分的に配設された駆動シャフトと、
前記駆動シャフトに接続され、前記回転力を受け取る前記ポンプ機構と、
前記駆動シャフトに回動可能に接続され、前記駆動シャフトに対して前記プーリを自由回転させる前記プーリと、
前記駆動シャフトに接続され、前記駆動シャフトと同時に回転する前記クラッチディスクと
をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のウォータポンプ。
【請求項6】
内端と外端を有する前記駆動シャフトと、
前記駆動シャフトの前記内端に配設された前記ポンプ機構と、
前記駆動シャフトの前記外端に配設された前記プーリと、
前記駆動シャフトに沿った中間位置に配設された前記クラッチディスクと
をさらに備えることを特徴とする請求項5に記載のウォータポンプ。
【請求項7】
前記穴の周囲を取り囲む前記環状電磁チャンバを有する前記ハウジングと、開端を有し、前記ハウジングの前記電磁チャンバ内に配設された前記環状チャンバとをさらに備えることを特徴とする請求項5に記載のウォータポンプ。
【請求項8】
前記後側に環状流路部を有し、前記少なくとも1つの磁石が、前記環状流路部内に配設され、前記環状流路部が、少なくとも部分的に前記ハウジングの前記環状磁石チャンバに延在しているクラッチディスクをさらに備えることを特徴とする請求項7に記載のウォータポンプ。
【請求項9】
前記環状摩擦領域に正反対の前記クラッチディスク上に配設された前記環状流路部をさらに備えることを特徴とする請求項8に記載のウォータポンプ。
【請求項10】
前記クラッチディスクに配設された第1の複数の補助磁石と、
前記クラッチリング上に配設された第2の複数の補助磁石であり、前記クラッチリングが、前記係号合位置と前記係合解除位置の間で移動しているとき、前記第1と前記第2の複数の補助磁石は、互いに離隔したままであり、前記クラッチディスクが、前記係合解除位置にあるとき、前記第1と前記第2の複数の補助磁石の間の磁力が、前記クラッチディスクを前記クラッチリングに対して非一様回転させる
ことを特徴とする請求項1に記載のウォータポンプ。
【請求項11】
前記ポンプ機構は、羽根車であることを特徴とする請求項1に記載のウォータポンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−516959(P2012−516959A)
【公表日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−543824(P2011−543824)
【出願日】平成20年11月18日(2008.11.18)
【国際出願番号】PCT/IB2008/003122
【国際公開番号】WO2010/058233
【国際公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【出願人】(511119732)メリング ド ブラジル コンポーネンテス オートモティボス リミターダ (1)
【氏名又は名称原語表記】MELLING DO BRASIL COMPONENTES AUTOMOTIVOS LTDA
【Fターム(参考)】