説明

電磁弁

【課題】弾性部材が弁座に片当たりした場合に、流路を完全に閉じた状態とすることができずに流量制御が不安定になることを改善できる電磁弁を提供する。
【解決手段】円筒状のプランジャ収納体3に往復動自在に挿入されたプランジャ17を備えた電磁弁である。プランジャ17の弁室8側に収納部30を形成し、収納部30内に、弁座10と対面させた弾性部材31と、弾性部材31を挟んで弁座10とは反対側に硬球32とを設け、プランジャ17に固定され、弾性部材31の外周縁部を保持する保持部材33を設けた。このため弾性部材31が硬球32により中央近傍の一点を押圧され、弾性部材31が弁座10に対し均等に当接される。よって弾性部材31が弁座10に対して片当たりした状態を解消できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体の流量を制御する電磁弁に関し、特に弾性部材が弁座に片当たりした場合に、流路を完全に閉じた状態とすることができずに流量制御が不安定になることを改善できる電磁弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電磁弁は、流路に連結される流入口および流出口と、前記流入出口間の流路に形成された弁室と、前記弁室に形成された弁座とを備えた弁収納体と、一端が前記弁収納体に固定された円筒状のプランジャ収納体と、前記プランジャ収納体に挿入された往復動自在なプランジャと、前記プランジャ収納体に固定されて前記プランジャを前記弁座に向けて付勢する付勢手段と、前記プランジャ収納体に外嵌されて前記付勢手段に反して前記プランジャを前記弁座から離隔するよう吸引する電磁装置とを有している。また、プランジャの弁室側には収納部が形成され、この収納部内に、弁座と対面された弾性部材と、この弾性部材を収納部に圧入する弾性係数を有した円筒弾性体とが設けられている電磁比例弁がある(例えば、特許文献1を参照。)。
【0003】
上記の電磁比例弁では、電磁装置によるプランジャを吸引する吸引力と付勢手段によるプランジャを付勢する付勢力との平衡関係によって、プランジャの軸心方向の移動位置が決定され、これにより弾性部材と弁座との距離が決定され、この距離により流路の開閉および開度が決定される。すなわち、電磁装置に電力が供給されていない場合には、プランジャが付勢手段により弁座へと付勢されていることにより、弾性部材と弁座とが圧接され、弾性部材と弁座との距離がなく、流路が閉じられた状態にあり、電磁装置に電力が供給された場合には、その電力に応じて、プランジャが付勢手段の付勢力に反して吸引され、弾性部材が弁座から離間されることにより、弾性部材と弁座との距離に応じた開度で流路が開いた状態となり、流量制御がおこなわれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−249191号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の従来技術では、流路が開いた状態から閉じた状態とする際に、電磁装置への電力供給を遮断することで、弾性部材の面が弁座に対して一致するように、弾性部材が弁座に対して圧接される。しかしながら、弾性部材が弁座に対して圧接されるとき、例えば弁座の上面に傾きがある場合や、プランジャ収納体の内面に沿って往復動されるプランジャに軸心方向に対して傾きがある場合等、弾性部材の面と弁座との間に傾きが生じた場合に、弾性部材が弁座に対して片当たりする。よって、流路を完全に閉じた状態とすることができずに、流量制御が不安定になるとの問題がある。
【0006】
また、流入口から過大な圧力が掛けられた場合や、電磁比例弁を長期に使用することにより、弾性部材と弁座との接触が繰り返された場合には、流入口からの圧力または弁座との接触によって、弾性部材の弁座との接触面にくぼみ等の変形を生じる問題がある。この変形が弾性部材に生じると、弾性部材と弁座との位置関係が変化される。このため電磁装置に所定の電力が供給された場合でも、その電力に応じたものより弾性部材と弁座との距離が大きくなり、流路の開度が大きくなるので、流量制御が不安定になるとの問題がある。さらに、弾性部材の変形が大きくなると、付勢手段に付勢されるプランジャでは、弾性部材を弁座に当接させることができなくなり、流路を閉じることができなくなる虞も考えられる。
【0007】
そこで本発明の技術的課題は、上記の各問題点を解消し、弾性部材が弁座に片当たりした場合に、流路を完全に閉じた状態とすることができずに流量制御が不安定になることを改善できる、電磁弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記の課題を解決するために、例えば本発明の実施の形態を示す図1〜図3に基づいて説明すると、次のように構成したものである。
本発明は電磁弁に関し、流路に連結される流入口(6)および流出口(7)と、前記流入出口(6,7)間の流路に形成された弁室(8)と、前記弁室(8)に形成された弁座(10)とを備えた弁収納体(2)と、一端が前記弁収納体(2)に固定された円筒状のプランジャ収納体(3)と、前記プランジャ収納体(3)に往復動自在に挿入されたプランジャ(17)と、前記プランジャ収納体(3)に固定されて前記プランジャ(17)を前記弁座(10)へと付勢する付勢手段(16)と、前記プランジャ収納体(3)に外嵌されて前記付勢手段(16)に反して前記プランジャ(17)を前記弁座(10)から離隔するよう吸引する電磁装置(4)とを備えた電磁弁であって、前記プランジャ(17)の弁室(8)側に収納部(30)を形成し、前記収納部(30)内に、前記弁座(10)と対面させた弾性部材(31)と、前記弾性部材(31)を挟んで前記弁座(10)とは反対側に硬球(32)とを設け、前記プランジャ(17)に固定され、前記弾性部材(31)の外周縁部を保持する保持部材(33)を設け、前記弾性部材(31)が前記硬球(32)により押圧されることを特徴とする。
【0009】
上記の電磁弁では、収納部内に弾性部材とこれの背面側に硬球を設けたことにより、弾性部材が硬球により中央近傍の一点を中心に押圧されているため、弾性部材が弁座に対し均等に当接され、弾性部材が弁座に対して片当たりした状態が解消される。
【0010】
上記収納部の軸心方向の長さは、前記収納部内に、弁座に対面する弾性部材とこの弾性部材の背面側に硬球を設けることができる寸法に設定されればよく、特定の寸法に限定されない。例えば収納部の軸心方向の長さを、硬球の直径と弾性部材の軸心方向の長さとを合わせたものより小さい寸法に設定してもよく、収納部内に弾性部材が圧入して設けられる。このため硬球と弾性部材とが収納部内で圧接され、硬球により弾性部材に圧力が加えられる。よって弾性部材に弁座が接触しても、あるいは流体の圧力が作用しても、弾性部材の弁座と接する部分あるいはその周囲の変形が低減される。
【0011】
上記収納部の径方向の長さは、前記収納部内に、弁座と対面する弾性部材とこの弾性部材を介して弁座と対面する硬球を設けることができる寸法に設定されればよく、特定の寸法に限定されない。しかし例えば収納部の、軸心方向と直交する径方向の長さを、硬球の直径より大きい寸法に設定しておくと、収納部内で硬球が径方向に移動可能となる。この場合に、弾性部材が弁座に対して片当たりした際には、弾性部材が弁座に対し均等に当接されるのに伴って、すなわち弾性部材が傾くのに伴って、収納部内では硬球が弾性部材と弁座とが当接していなかった側に移動される。このため、弾性部材が移動された硬球により弁座に対して均等の圧力で圧接されて好ましい。
【0012】
上記収納部内での硬球の移動範囲は、硬球が収納部の内周面に接することにより規制されればよく、特定の移動範囲に限定されない。しかし、例えば収納部の径方向の長さを、硬球の直径と弁座の外径とを合わせたものより小さい寸法に設定してあれば、硬球が弾性部材を押圧する点が、弾性部材と対面する弁座から外れることなく、硬球の移動範囲が規制されるので好ましい。
【0013】
上記弾性部材の径方向の長さは、弾性部材を収納部に設けることができるものであればよく、特定の寸法に限定されない。例えば弾性部材の径方向の長さを、収納部の径方向の長さより小さい寸法に設定してもよく、弾性部材と収納部との間に隙間が形成される。このため弾性部材が弁座に対して片当たりした際に、弾性部材が弁座に対し均等に当接されるように、硬球により弾性部材の傾きが容易に変化され、片当たりの状態が解消される。
【0014】
上記収納部は、プランジャの弁室側に形成されるものであればよく、特定の形成方法に限定されない。例えば、プランジャの一端に旋盤等を用いて穴加工を行うとともに、この一端に把持部材を取付けるためのネジ加工等を行い、収納部が形成されてもよい。また例えば、プランジャの一端に筒状の収納部材を取付けるネジ加工等を行い、ここに収納部材が取り付けられ、収納部材の一端に保持部材を取付けるネジ加工等を行い、収納部が形成されてもよい。
【0015】
上記保持部材は、収納部に収納された弾性部材を保持し、弾性部材と弁座との接触を妨げないものであればよく、特定の形状に限定されない。例えば、有底円筒状の部材の内周面にネジ加工等を行うとともに、底部の中央に所定の直径の孔部を形成した保持部材であってもよく、これが収納部を形成するプランジャの一端、あるいはプランジャの一端で収納部を形成する収納部材に固定され、弾性部材の外周縁部を保持するものであればよい。なお、保持部材は、保持部材を固定先の部材に嵌合させてもよく、この場合には、ネジ加工等の加工の手間が省略される。
【0016】
上記付勢手段は、プランジャを弁座に向かって付勢するものであればよく、特定の形状に限定されない。例えば、プランジャ収納体に、プランジャとは逆端側から挿入されて固定される磁気棒の先端に弾性体を固定し、この弾性体によってプランジャを弁座へと付勢するものであってもよいが、プランジャ収納体の解放口側内周面に亘って固定されたリング状の板バネであればなおよく、リング状の板バネを用いた場合には、プランジャ収納体の内周面に沿って往復動されるプランジャが、さらに板バネにより弁座に向けて案内されるので、プランジャの往復動の精度が向上される。
【0017】
上記電磁装置は、弾性部材を弁座から離隔するようにプランジャを吸引する構成であればよく、特定の構成に限定されない。例えば、プランジャ収納体に、プランジャとは逆端側から挿入されて固定される磁気棒と、この磁気棒およびプランジャ収納体とが挿入されるボビンと、このボビンに巻き回された磁気巻線と、このボビンに固定されて磁気巻線を保護する磁気ヨークと、プランジャ収納体とボビンとの間に配置されて磁気巻線に生じる励磁作用がプランジャに及ばないよう遮蔽するスリーブとを有する電磁装置であれば、磁気巻線に生じる励磁作用により磁化された磁気棒によってプランジャが吸引される。
【0018】
上記収納部は、収納部の軸心方向における長さが、硬球の直径と弾性部材の軸心方向における長さとを合わせたものより小さい寸法に設定されればよく、特定の寸法に限定されない。しかし、例えば収納部の軸心方向における長さが、硬球に押圧される弾性部材の圧縮率を5〜40%になるように設定されてもよく、より好ましくは前記圧縮率を10〜35%になるように設定されればなおよく、弾性部材に弁座が接触しても、あるいは流体の圧力が作用しても、弾性部材の変形が防止されるとともに、硬球に押圧されることにより弾性部材が弁座側に突出する変形が防止される。
【0019】
また上記収納部は、硬球が収納される空間の径方向における長さが、硬球の直径より大きい寸法で、硬球の直径と弁座の外径とを合わせたものより小さい寸法に設定されればよく、特定の寸法に限定されない。しかし、例えば収納部と硬球との間の隙間が、硬球の直径に対して1〜5%となるように設定されてもよく、収納部内で硬球が好適に移動されるとともに、硬球が弾性部材を押圧する点が弁座から外れることもない。
【0020】
上記弾性部材は、弾性部材の径方向における長さが、弾性部材が収納される空間の径方向の長さより小さい寸法に設定されればよく、特定の寸法に限定されない。しかし、例えば収納部と弾性部材との間の隙間が、弾性部材の径方向の長さに対して1〜5%となるように設定されてもよく、硬球により弾性部材の傾きが良好に変化されるとともに、弾性部材が保持部材により収納部で確実に保持される。
【0021】
上記弾性部材は、所定のシール性能と耐久性を発揮できるものであればよく、特定の素材に限定されない。例えば、ニトリルゴムやシリコンゴム等を用いることができる。
【0022】
上記硬球は、所定の高度と耐腐食性を発揮できるものであればよく、特定の素材に限定されない。例えば、ステンレス製の球体、セラミックス製の球体や他の金属球等、任意の材料を用いることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の電磁弁は、上記のように構成され作用することから、次の効果を奏する。
【0024】
(1)弾性部材が弁座に対して片当りの状態に当接しても、弾性部材が硬球により中心近傍の一点を中心に押圧されているため、弾性部材が弁座に対して均等に当接され、弾性部材が弁座に対して片当たりした状態を解消でき、流量制御が不安定になることを改善できる。
(2)収納部の軸心方向における長さを、硬球の直径と弾性部材の軸心方向の長さとを合わせたものより小さい寸法に設定した場合に、硬球と弾性部材とが圧接されるため、弾性部材に弁座が接触してもあるいは流体の圧力が作用しても、弾性部材の弁座と接する部分あるいはその周囲の変形を低減することができる。
(3)収納部の径方向における長さを、硬球の直径より大きい寸法に設定した場合に、弾性部材が弁座に対して片当たりした際に、弾性部材が弁座に対して均等に当接されるのに伴って、収納部内では硬球が弾性部材と弁座とが当接していなかった側に移動され、この移動された硬球により弾性部材を弁座に対して均等の圧力で圧接することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施形態を示す、電磁比例弁の断面図である。
【図2】図1に示す電磁比例弁の要部拡大図である。
【図3】同電磁比例弁の動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
図1に示す電磁比例弁(1)は、流路に連結される弁収納体(2)と、一端が弁収納体(2)に固定される円筒状のプランジャ収納体(3)と、このプランジャ収納体(3)に外嵌されて固定される電磁装置(4)とを備えている。
【0027】
上記の弁収納体(2)は、上流側の流路に連結される流入口(6)と、下流側の流路に連結される流出口(7)と、これら流入出口(6,7)間の流路に形成された弁室(8)と、この弁室(8)と流出口(7)との間に形成されたオリフィス(9)と、オリフィス(9)の弁室(8)側に形成された弁座(10)とを備えた上面解放の箱体であり、弁室(8)が外部と連通されている。また弁室(8)の内周面の解放側には、ネジ加工が施されており、ここにプランジャ収納体(3)が螺着される。
【0028】
上記の弁収納体(2)とプランジャ収納体(3)とは、弁室(8)に配置されたOリング(11)を介して固定され、弁室(8)は優れた気密性を有している。また上記の流入口(6)および流出口(7)にはそれぞれ、フィルタ(22,23)と、各フィルタ(22,23)を固定するフィルタ固定リング(24,25)が設けられ、電磁比例弁(1)内へのごみの侵入が防止されている。
【0029】
上記の電磁装置(4)は、プランジャ収納体(3)が挿入されるボビン(12)と、このボビン(12)に巻き回された磁気巻線(13)と、ボビン(12)に外嵌されて磁気巻線(13)を保護する磁気ヨーク(14)と、磁気巻線(13)により磁化される磁気棒(15)とを備えている。
【0030】
上記のプランジャ収納体(3)には、弁室(8)とは逆側から磁気棒(15)が挿入され、例えば溶接等により固定されている。またプランジャ収容体(3)には、弁室(8)側から付勢手段である板バネ(16)を介してプランジャ(17)が往復動自在に挿入されている。詳しくは、プランジャ収容体(3)の弁室(8)側内周面に板バネ(16)を嵌合するためのフランジ(26)を形成し、プランジャ(17)の弁座(10)側に、プランジャ(17)がプランジャ収納体(3)に挿入された際に、板バネ(16)と係合する係合部(27)を形成し、プランジャ収容体(3)にプランジャ(17)が挿入され、プランジャ収納体(3)が弁収納体(2)に固定され、プランジャ(17)が板バネ(16)によって弁座(10)に向かって付勢される。
【0031】
上記のボビン(12)には、プランジャ収納体(3)およびこれに固定された磁気棒(15)が、スリーブ(18)および磁気ワッシャ(19)を介して挿入され、ボビン(12)を突き抜ける磁気棒(15)に、磁気ワッシャ(20)を介して螺着されるナット(21)により、プランジャ収納体(3)に固定される。なお上記のスリーブ(18)は、磁気巻線(13)により生じる磁力線を、プランジャ(17)により多く通し、プランジャ(17)の磁力を強化している。
ここで、プランジャ(17)の軸心方向を(Y)とし、この軸心方向(Y)と直交する径方向を(X)とする。
【0032】
上記のプランジャ(17)の弁室側には、図2に示すように、収納部(30)が形成されている。この収納部(30)内には、弁座(10)と対面させた弾性部材(31)が収納され、この弾性部材(31)を挟んで弁座(10)とは反対側に硬球(32)が収納されている。また収納部(30)を形成するプランジャ(17)に固定されて、弾性部材(31)の外周縁部を保持し、弾性部材(31)および弾性部材(31)を介して硬球(32)を収納部(30)内に保持する保持部材(33)が設けられている。なお、上記のプランジャ(17)の側面には、収納部(30)と弁室(8)とを連通する図示しない流路が形成されており、これにより収納部(30)内の圧力と弁室(8)内の圧力とが均一に保たれている。
【0033】
上記の収納部(30)は、弁室(8)側の弾性部材(31)が収納される空間と、磁気棒(15)側の硬球(32)が収納される空間とを備えている。これらの空間は、弁室(8)側の空間に比べて磁気棒(15)側の空間が径方向(X)に小さくなるように形成されており、収納部(30)の内周面には段差が形成されている。また上記のプランジャ収納体(3)、弁座(10)、オリフィス(9)、プランジャ(17)、収納部(30)および弾性部材(31)はそれぞれ軸心を有しており、これらの軸心がそれぞれ、軸心方向(Y)と一致するように、電磁比例弁(1)が構成されている。
【0034】
また上記の収納部(30)は、収納部(30)の軸心方向(Y)における長さが、硬球(32)の直径と弾性部材(31)の軸心方向(Y)における長さとを合わせたものより小さい寸法に設定され、収納部(30)内に弾性部材(31)が圧入して設けられている。
【0035】
また上記の収納部(30)は、硬球(32)が収納される空間の径方向(X)における長さが、硬球(32)の直径より大きい寸法で、硬球(32)の直径と弁座(10)の外径とを合わせたものより小さい寸法に設定されている。
【0036】
また上記の弾性部材(31)は、弾性部材(31)の径方向(X)における長さが、弾性部材(31)が収納される空間の径方向(X)の長さより小さい寸法に設定されている。
【0037】
上記のように構成される電磁比例弁(1)は、電磁装置(4)が非作動の場合に、プランジャ(17)が板バネ(16)により弁座(10)へと付勢され、弾性部材(31)が弁座(10)に圧接されている。このため、弾性部材(31)によりオリフィス(9)が遮断され、流路が閉じた状態となる。また電磁装置(4)が作動された場合には、プランジャ(17)が磁化された磁気棒(15)に吸引され、すなわちプランジャ(17)が、板バネ(16)により弁座(10)へと付勢される付勢力に反して磁気棒(15)に吸引され、弾性部材(31)が弁座(10)から離間される。このため、弾性部材(31)により遮断されたオリフィス(9)が解放され、流路が開いた状態となる。このとき電磁装置(4)に供給する電力を制御してプランジャ(17)の移動位置が制御されると、弾性部材(31)がこれに応じた距離だけ弁座(10)から離間され、オリフィス(9)で流量を調整することができる。
【0038】
また上記の電磁比例弁(1)では、図3(a)に示すように、弾性部材(31)が弁座(10)に片当たりすると、収納部(30)内に弾性部材(31)とこれの背面側に硬球(32)を設けたことにより、弾性部材(31)が硬球(32)により中央近傍の一点を中心に押圧されるため、図3(b)に示すように、弾性部材(31)が弁座(10)に対し均等に当接され、弾性部材(31)が弁座(10)に対して片当たりした状態を解消でき、流量制御が不安定になることを改善できる。
【0039】
また上記の電磁比例弁(1)では、弾性部材(31)が弁座(10)に対して片当たりした場合に、弾性部材(31)が弁座(10)に対し均等に当接される際に、図3(b)に示すように、収納部(30)内では硬球(32)が弾性部材(31)と弁座(10)とが当接していなかった側に移動される。よって、移動された硬球(32)により弾性部材(31)の中央近傍の一点が中心に押圧され、弾性部材(31)を弁座に対し均等の圧力で圧接できる。また、硬球(32)の収納部(30)内での移動範囲が規制され、硬球(32)が弾性部材(31)を押圧する点が、弾性部材(31)と対面する弁座(10)から外れることがない。
【0040】
また上記の電磁比例弁(1)では、収納部(30)内に弾性部材(31)が圧入して設けられ、硬球(32)と弾性部材(31)とが圧接されて、硬球(32)により弾性部材(31)に圧力が加えられる。このため弾性部材(31)に弁座(10)が接触しても、あるいは流体の圧力が作用しても、弾性部材(31)の弁座(10)と接する部分、あるいはその周囲の変形を低減することができる。
【0041】
また上記の電磁比例弁(1)では、弾性部材(31)と収納部(30)との間に隙間が形成されているため、弾性部材(31)が弁座(10)に対して片当たりし、弾性部材(31)が弁座(10)に対し均等に当接される際に、図3(b)に示すように、硬球(32)により弾性部材(31)の傾きを容易に変化することができる。
【0042】
上記の実施形態で説明した電磁弁は、本発明の技術的思想を具体化するために例示したものであり、各部の構成や形状、材質および用途等を、上記の実施形態のものに限定するものではなく、本発明の特許請求の範囲内において種々の変更を加え得るものである。
【0043】
例えば上記の実施形態では、流路の開閉を行うとともに、流量の調整が可能な電磁比例弁に適用した場合について説明した。しかし本発明では、これを流路の開閉のみを行う電磁弁に用いてもよい。
【符号の説明】
【0044】
X…径方向
Y…軸心方向
1…電磁比例弁
2…弁収納体
3…プランジャ収納体
4…電磁装置
6…流入口
7…流出口
8…弁室
10…弁座
16…付勢手段(板バネ)
17…プランジャ
30…収納部
31…弾性部材
32…硬球
33…保持部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流路に連結される流入口(6)および流出口(7)と、前記流入出口(6,7)間の流路に形成された弁室(8)と、前記弁室(8)に形成された弁座(10)とを備えた弁収納体(2)と、一端が前記弁収納体(2)に固定された円筒状のプランジャ収納体(3)と、前記プランジャ収納体(3)に往復動自在に挿入されたプランジャ(17)と、前記プランジャ収納体(3)に固定されて前記プランジャ(17)を前記弁座(10)へと付勢する付勢手段(16)と、前記プランジャ収納体(3)に外嵌されて前記付勢手段(16)に反して前記プランジャ(17)を前記弁座(10)から離隔するよう吸引する電磁装置(4)とを備えた電磁弁であって、
前記プランジャ(17)の弁室(8)側に収納部(30)を形成し、
前記収納部(30)内に、前記弁座(10)と対面させた弾性部材(31)と、前記弾性部材(31)を挟んで前記弁座(10)とは反対側に硬球(32)とを設け、
前記プランジャ(17)に固定され、前記弾性部材(31)の外周縁部を保持する保持部材(33)を設け、
前記弾性部材(31)が前記硬球(32)により押圧されることを特徴とする電磁弁。
【請求項2】
前記収納部(30)の、前記プランジャ(17)の軸心方向(Y)の長さを、前記硬球(32)の直径と前記弾性部材(31)の軸心方向(Y)の長さとを合わせたものより小さい寸法に設定した、請求項1に記載の電磁弁。
【請求項3】
前記収納部(30)の、前記軸線方向(Y)と直交する径方向(X)の長さを、前記硬球(32)の直径より大きい寸法に設定した、請求項1または請求項2に記載の電磁弁。
【請求項4】
前記収納部(30)の、前記径方向(X)の長さを、前記硬球(32)の直径と前記弁座(10)の外径とを合わせたものより小さい寸法に設定した、請求項3に記載の電磁弁。
【請求項5】
前記弾性部材(31)の、前記径方向(X)の長さを、前記収納部(30)の前記径方向(X)の長さより小さい寸法に設定した、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の電磁弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−145126(P2012−145126A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−1835(P2011−1835)
【出願日】平成23年1月7日(2011.1.7)
【出願人】(591264429)コフロック株式会社 (7)
【Fターム(参考)】