説明

電磁操作型バルブ

本発明は、複数の部品を有する電磁アクチュエータを含む電気操作型のバルブに関し、該バルブはとりわけ、燃料を噴射するためのバルブであり、該電磁アクチュエータの少なくとも1つの部品は、軟磁性材料から成る複数の扇形部(4)と、複数の絶縁性の分離ウェブ(5)とを有し、各2つの隣接する該扇形部(4)間にそれぞれ該分離ウェブ(5)が配置されており、該分離ウェブ(5)は、各2つの隣接する扇形部(4)を電気的に相互に完全に分離する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
先行技術
本発明は、電磁アクチュエータを有する電磁操作型バルブと、電磁アクチュエータの部品の製造方法とに関する。前記電磁操作型バルブはとりわけ燃料噴射弁であり、前記電磁アクチュエータの部品はたとえば電機子である。
【0002】
従来技術の高圧噴射弁は基本的に、コイルと電磁アクチュエータの部品とを有する従来の電磁切換弁として構成されている。電磁アクチュエータの部品はたとえば電機子、内部磁極、外部磁極等であり、軟磁性のインゴット材料から旋削部品として製造される。この材料の電気的特性と、電磁アクチュエータの部品の360°閉じられた輪郭とにより、動作中に磁界が形成したり消失すると渦電流損失が発生し、それにより、燃料噴射弁の切換時間ないしはダイナミクスが低下してしまう。
【0003】
発明の開示
それに対し、請求項1に記載の構成を備えた、本発明の電磁操作型バルブは、電磁アクチュエータのたとえば電機子および/または内部磁極および/または外部磁極等である部品が、磁界が変化したときの渦電流損失を格段に低減し該バルブの切換時間を格段に短縮できるという利点を有する。このことは本発明では、前記バルブの前記電磁アクチュエータの少なくとも1つの部品が、軟磁性の材料から成る複数の扇形部と、複数の絶縁性の分離ウェブとを有し、各2つの隣接する扇形部間にそれぞれ1つの分離ウェブが設けられており、各1つの分離ウェブは、各2つの隣接する扇形部を相互に完全に電気的に分離する構成によって実現される。したがって前記電磁アクチュエータの部品は、少なくとも2つの軟磁性の扇形部と、2つの絶縁性の分離ウェブとを有する。
【0004】
本発明の有利な実施形態が従属請求項に記載されている。
【0005】
有利には、前記分離ウェブは、セラミックを含む材料から作製される。前記セラミック材料の非導電性の特性により、電磁アクチュエータの部品の個々の相互に接する扇形部の確実な電気的分離ないしは絶縁が保証される。
【0006】
さらに有利には、前記バルブの電磁アクチュエータの少なくとも1つの部品は、ちょうど4つの扇形部と4つの分離ウェブとを有する。このことにより、少数の扇形部と分離ウェブだけで、磁界が変化したときの渦電流損失を格段に低減することができる。
【0007】
別の有利な実施形態では、前記分離ウェブの幅は、隣接する扇形部が相互に電気的に確実に分離されるぎりぎりの幅に選択される。分離ウェブの幅および材料の割合をこのように低減することにより、電機子の軟磁性材料の損失が僅かのみになり、このことにより、磁気回路の強度が実質的に一定に維持されるのが保証される。
【0008】
有利には、電磁アクチュエータの少なくとも1つの部品はPIM法(粉末射出成形法)によって作製される。旋削工程の代わりにこのような多材質粉末射出工程を用いることにより、電磁アクチュエータの部品を短い製造時間と低い製品個体コストで簡単に製造することができる。本発明の方法の一実施形態では、第1のステップにおいて絶縁性の分離ウェブを作製し、その後、該絶縁性の分離ウェブを工具に機械的に保持し、次に、軟磁性材料から成る扇形部を射出成形することができる。その代わりに代替的に、第1のステップにおいて軟磁性の扇形部を作製することもできる。その次に、前記扇形部を工具に配置し、磁界を用いて該扇形部を定位置に保持し、次のステップにおいて該軟磁性の扇形部の相互間のスペースに前記分離ウェブを射出成形する。このようにして本発明では、軟磁性の扇形部の相互間に非導電性である薄い壁の分離ウェブを有する、電磁アクチュエータ用の部品を、低コストで製造することができる。このことにより、磁界形成および磁界消失に抗する渦電流の形成を小さくすることができる。その際には、実現可能な磁力に悪影響を及ぼす磁性材料体積の損失が小さくなるように、前記分離ウェブを可能な限り薄肉で形成しなければならない。本発明の方法は初めて、上述の場合に比較的多くの要求が課される製法を製造技術的に実用化する。というのも、他方の部材を射出工程によって作製できるようにするためには、分離ウェブ相互間ないしは軟磁性の扇形部相互間に間隔をおいてこれらを保持しなければならないからである。それゆえ本発明では、電磁アクチュエータのたとえば電機子、磁極コアないしは内部磁極、またはバルブジャケットないしは外部磁極(継鉄部材)等である1つまたは複数の部品の多材質PIM法により作製することができる。その際に特に有利には、軟磁性の扇形部を金属射出法(MIM=Metal Injection Moulding)により作製することができる。絶縁性の分離ウェブは有利には、セラミック射出成形法(CIM法、CIM=Ceramic Injection Moulding)によって作製することができる。軟磁性の扇形部は磁力によって射出成形工具内に位置決めすることができるので、軟磁性の扇形部の相互間には、絶縁性の分離ウェブを射出成形するためのスペースが得られる。前記分離ウェブは、射出成形工具内に機械的に保持することができる。このことにより、非常に経済的な製造方法を実現することができる。
【0009】
軟磁性材料から成る多数の扇形部と多数の絶縁性の分離ウェブとを有する電磁アクチュエータの部品をPIM法によって製造するための本発明の方法により、切換時間、とりわけ遮断時間が格段に短縮された部品を経済的に製造することができ、このことにより、たとえば車両において使用する場合には、燃焼室内に噴射すべき燃料量が格段に低減する。このように噴射量が低減することにより、エンジンのアイドリング特性が改善され、燃料噴射弁の複数回の噴射を改善することができる。このことにより、エンジンの排ガス特性が格段に改善される。
【0010】
以下、添付の図面を参照して、電機子を例に、本発明の実施例を詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】燃料噴射弁の電機子の概略的な断面図である。
【図2】本発明の燃料噴射弁の電機子の斜視図である。
【0012】
発明を実施するための形態
以下、図1,2を参照して、本発明の有利な実施例の、燃料を噴射するための燃料噴射弁と、該燃料噴射弁1の電磁アクチュエータの電機子の製造方法とを詳細に説明する。
【0013】
図1の斜視図から分かるように前記燃料噴射弁は、電機子3と磁極コア31と、継鉄部材であるバルブジャケット32と、該電機子3を包囲するコイル2とを有する、電磁アクチュエータ1を含む。軟磁性材料から作製された電機子3は中央に、軸方向Aに配置された貫通口6を有し、該貫通口6内に、図中にないバルブニードルが配置される。さらに前記電機子3は、軸方向Aに延在する4つの燃料開口7を有し、各燃料開口7はそれぞれ、4つの扇形部4のうち1つに設けられている。さらに図2に示されているように、各扇形部4は周方向に、前記電機子3の体積の実質的に1/4を有する。それぞれ2つの隣接する扇形部4間に、セラミック材料から成る絶縁性の分離ウェブ5が配置されており、各分離ウェブ5は、相互に隣接する扇形部4を電気的に相互に分離ないしは絶縁する。扇形部4ないしは分離ウェブ5の数は、図中の実施形態と異なって、燃料噴射弁1における電機子3の所望の動作に応じて適切に変更することができるが、分離ウェブは少なくとも2つ設けられる。
【0014】
前記電磁アクチュエータの部品の製造は、多材質粉末射出成形法(PIM法)によって行われる。その際には、たとえば電機子等である部品を製造することができる方法として、2つの択一的方法がある。前記部品は2つの部品グループから、すなわち扇形部4と分離ウェブ5とから構成されるので、第1のステップでは、前記両部品グループのうち第1の部品グループを、有利には射出法によって作製することができる。その際には、前記第1の部品グループを次のステップにおいて射出成形工具内に位置決めし、次に、第2の部品グループを射出法によって、前記第1の部品グループの間のスペースに射出成形する。前記第1の部品グループが絶縁性の分離ウェブ5である場合、この絶縁性の分離ウェブ5は射出成形工具内に機械的に保持され、その後、金属射出成形法によって該分離ウェブ5間に前記軟磁性の扇形部4を射出成形する。前記第1の部品グループが前記軟磁性の扇形部4である場合、該扇形部4を金属射出成形法によって作製した後、射出成形工具内に磁界によって保持する。その後、前記軟磁性の扇形部4の相互間のスペース間に、前記分離ウェブ5をセラミック射出成形法によって射出成形する。射出成形法として有利には、粉末射出成形法が用いられる。
【0015】
上述の本発明のバルブと、電磁アクチュエータの部品を製造する本発明の製造方法とにより、渦電流損失が低減し、このことによってとりわけ、高圧噴射弁において望まれ必要とされるダイナミクス特性が格段に改善され、このダイナミクス特性の改善により、エンジンの燃料消費およびエミッション特性が著しく改善される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の部品を有する電磁アクチュエータを含む電磁操作型のバルブであって、
前記バルブはとりわけ、燃料を噴射するためのバルブであり、
前記電磁アクチュエータの少なくとも1つの部品は、軟磁性材料から成る複数の扇形部(4)と、複数の絶縁性の分離ウェブ(5)とを有し、
各2つの隣接する前記扇形部(4)間にそれぞれ前記分離ウェブ(5)が配置されており、該分離ウェブ(5)は、各2つの隣接する扇形部(4)を電気的に相互に完全に分離する
ことを特徴とするバルブ。
【請求項2】
前記電磁アクチュエータの部品は、電機子(3)および/または内部磁極(31)および/または外部磁極である、
請求項1記載のバルブ。
【請求項3】
前記分離ウェブ(5)は、セラミックを含む材料から作製されている、
請求項1または2記載のバルブ。
【請求項4】
前記部品は、ちょうど4つの前記扇形部(4)と4つの前記分離ウェブ(5)とを有する、
請求項1から3までのいずれか1項記載のバルブ。
【請求項5】
前記分離ウェブ(5)の幅は、相互に隣接する前記扇形部(4)が相互に電気的にぎりぎり確実に分離されるように選択されている、
請求項1から4までのいずれか1項記載のバルブ。
【請求項6】
前記電機子(3)は多材質射出成形法によって作製されている、
請求項1から5までのいずれか1項記載のバルブ。
【請求項7】
前記バルブは燃料噴射弁である、
請求項1から6までのいずれか1項記載のバルブ。
【請求項8】
電磁アクチュエータの部品の製造方法であって、
前記部品はとりわけ、電機子(3)または内部磁極または外部磁極であり、
前記部品を、軟磁性材料から成る複数の扇形部(4)を有する部品グループと、絶縁性の分離ウェブ(5)を有する部品グループとである2つの異なる部品グループから作製する、製造方法において、
第1のステップにおいて、両部品グループのうち第1の部品グループを作製して、該第1の部品グループを射出成形工具内に配置し、次のステップにおいて両部品グループのうち第2の部品グループを射出成形し、
前記次のステップにおいて、
・前記第1の部品グループが前記絶縁性の分離ウェブ(5)である場合、該絶縁性の分離ウェブ(5)を前記射出成形工具内に機械的に保持し、金属射出成形法によって前記軟磁性の扇形部(4)を該分離ウェブ(5)間に射出成形し、
・前記第1の部品グループが前記軟磁性の扇形部(4)である場合、該軟磁性の扇形部(4)を磁力によって前記射出成形工具内に保持し、セラミック射出成形法によって前記分離ウェブ(5)を該軟磁性の扇形部(4)間に射出成形する
ことを特徴とする、製造方法。
【請求項9】
前記第1の部品グループおよび/または前記第2の部品グループを、粉末射出成形法によって作製する、
請求項8記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2013−513226(P2013−513226A)
【公表日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−541365(P2012−541365)
【出願日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際出願番号】PCT/EP2010/065024
【国際公開番号】WO2011/067021
【国際公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【出願人】(390023711)ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング (2,908)
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
【Fターム(参考)】