説明

電磁機器駆動装置および電磁機器の駆動方法

【課題】電磁機器の累積使用量が多くなっても少ないと同じ一定時間で電磁機器を動作状態から停止状態に移行させる。
【解決手段】電磁機器駆動装置は、励磁用電源から電磁コイルへの通電が停止したときに逆起電力によって電磁コイルの両端間に生じる電圧をクランプするフリーホイール回路と、フリーホイール回路によってクランプされた電圧が、電磁機器の累積使用量が少ないときよりも多いときの方が高くなるように、フリーホイール回路の動作を制御するコントローラーと、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁クラッチやソレノイドなどの電磁機器を駆動する装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
直流励磁式の電磁クラッチが各種機器における動力の伝達制御に用いられている。例えば、用紙に画像を印刷するプリンターにおいて、用紙を搬送するローラーに電磁クラッチを介してモーターの回転駆動力が伝達される。電磁クラッチによって回転駆動力の伝達を断続させることにより、一つのモーターを搬送用のローラーの駆動だけでなく、回転すべき期間がローラーとは異なる他の駆動対象の駆動にも用いることができる。
【0003】
電磁クラッチの駆動においては、電磁クラッチに組み付けられている電磁コイルと直列に駆動用のスイッチング素子としてトランジスタが接続され、このトランジスタのオンオフの切替えによって直流電源から電磁コイルへの通電が制御される。一般に、電磁クラッチは、通電によって電磁コイルが励磁されたときに動力を伝達する動作状態になり、通電が停止されると動力を伝達しない停止状態になる。
【0004】
電磁コイルにおいて、通電が停止されたときに逆起電力が発生する。逆起電力によって駆動用のトランジスタにその耐圧を超える過大な電圧が加わるのを防ぐため、電磁コイルと並列にダイオードが接続される。フリーホイールダイオードと呼ばれるこのダイオードと電磁コイルとで形成される閉ループを逆起電力による電流(慣性電流)が流れることにより、通電時に電磁コイルに蓄えられた電磁エネルギーが減衰する。このとき、電磁コイルの両端間の電圧はダイオードの順方向電圧降下分の電圧に抑えられる。閉ループを流れる電流が所定値まで小さくなって実質的に励磁が終了した時点で、電磁クラッチは停止状態になる。つまり、逆起電力に起因して、電磁コイルへの電源からの通電を停止した時点から電磁クラッチが停止状態になるまでに、電磁エネルギーの減衰速度に依存する遅れが生じる。
【0005】
電磁コイルにおける励磁停止の遅れに関して次の先行技術がある。特許文献1では、遅れ時間を短縮する手法として、電磁コイルと並列に複数個のツェナーダイオードを直列接続すること、すなわち電磁エネルギーを減衰させるときの電磁コイルの両端間の電圧をシリコンダイオードの順方向電圧降下分よりも高くすることが開示されている。特許文献2では、遅れ時間を可変にする手法として、降伏電圧の異なる複数のツェナーダイオードを電磁コイルと並列に接続し、これら複数のツェナーダイオードを選択的に導通させて閉ループを形成することが提案されている。また、特許文献3では、内燃機関の燃料噴射のための電磁アクチュエーターにおいて、内燃機関の運転状態に応じて、電磁コイルへの通電の電流波形を緩やかに減少する波形としたり速やかに減少する波形としたりすることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−207018号公報
【特許文献2】特開昭63−102134号公報
【特許文献3】特開2010−281328号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
電磁機器において、使用回数(動作回数)がある程度以上になると、電磁コイルへの通電の停止から電磁機器が上述の停止状態になるまでの時間(以下、これを「停止時間」と呼称する)が使用回数の増大に伴って長くなる、という傾向がある。この応答性の変化の一因として、励磁によって移動する可動部を元の位置に復帰させる付勢部材の劣化が考えられる。
【0008】
停止時間が一定でなければ支障の生じる場合がある。例えば、プリンターにおける給紙に電磁クラッチを用いた場合、搬送路内で用紙を若干撓ませて搬送方向に対する用紙の傾きを正すスキュー補正において、撓み量(ループ量)の差異による補正のバラツキが生じる。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑み、電磁機器の累積使用量が多くなっても少ないときと同じ一定時間で電磁機器を動作状態から停止状態に移行させることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成する装置は、電磁コイルを有する電磁機器を駆動する電磁機器駆動装置であって、励磁用電源から前記電磁コイルへの通電が停止したときに逆起電力によって前記電磁コイルの両端間に生じる電圧をクランプするフリーホイール回路と、前記フリーホイール回路によってクランプされた前記電圧が、前記電磁機器の累積使用量が少ないときよりも多いときの方が高くなるように、前記フリーホイール回路の動作を制御するコントローラーと、を備える。
【0011】
好ましい態様において、前記フリーホイール回路は、前記電圧のクランプのために前記電磁コイルに並列に接続される能動素子を有し、前記電磁コイルへの前記通電が停止したときに前記コントローラーによる設定に従って前記能動素子が動作状態となるように前記能動素子をバイアスし、前記コントローラーは、前記能動素子が動作状態であるときの前記能動素子に対するバイアス電圧の設定を、前記電磁機器の累積使用量に応じて変更する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、累積使用量の多少にかかわらず停止時間が一定である機器動作を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係る電磁クラッチ駆動装置の構成を示すブロック図である。
【図2】電磁クラッチ駆動装置の要部の回路図である。
【図3】電磁コイルの流れるクラッチ電流の減衰特性を定性的に示すグラフである。
【図4】電磁クラッチの累積使用回数と停止時間との関係を定性的に示すグラフである。
【図5】電磁クラッチ駆動装置が組み込まれた画像形成装置の概略の構成を示す図である。
【図6】画像形成装置における給紙に電磁クラッチを用いた場合の停止時間のバラツキの影響を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1に例示される電磁クラッチ駆動装置1は、給紙のためのソレノイド型の電磁クラッチ5を備えた画像形成装置100に組み込まれている。電磁クラッチ駆動装置1は、電磁機器としての電磁クラッチ5に直流電力を供給する駆動回路12、電磁クラッチ5を停止させるときに電磁コイルに蓄積されているエネルギーを消耗させるフリーホイール回路13、およびこれら回路の動作を制御するコントローラー14を有する。駆動回路12は、コントローラー14から入力されるオンオフ制御信号S1に従って電磁クラッチ5への通電を開始したり停止したりする。フリーホイール回路13は、コントローラー14から入力される電圧設定信号S2に従って、電磁コイルの両端間に逆起電力によって生じる電圧をクランプする。コントローラー14は、クランプ電圧の設定に関わる電圧設定テーブル15および累積使用量17を制御情報として記憶する不揮発性メモリ15を備えている。累積使用量17は、電磁クラッチ5の動作回数(耐久回数ともいう)のカウント値であり、電磁クラッチ5による給紙が行なわれるごとにカウントアップされる動作実績データである。
【0015】
なお、累積使用量17の更新の形態としては、コントローラー14が動作回数をカウントして更新する形態、画像形成装置1内の他のコントローラーまたは外部の管理サーバーからコントローラー14が最新のカウント値を取得して更新する形態がある。
【0016】
画像形成装置100において、電磁クラッチ5が動作状態であるとき、電磁クラッチ5のシャフト5aと搬送ローラー72の支持軸72aとが連結されて一体に回転する。すなわち、モーター81から複数のギヤーを介して電磁クラッチ5に伝わる回転駆動力によって搬送ローラー72が回転し、用紙が印刷位置へ給紙される。電磁クラッチ5が停止状態であるとき、シャフト5aと支持軸72aとの連結が解除されているので、モーター81が回転しても搬送ローラー72は回転しない。画像形成装置100では、電磁クラッチ駆動装置1のフリーホイール回路13の制御によって、電磁クラッチ5への通電を停止した時点から電磁クラッチ5が実際に停止状態に移行するのに要する時間である停止時間が一定化される。
【0017】
図2は駆動回路12およびフリーホイール回路13の回路構成の一例を示している。
【0018】
電磁クラッチ5の電磁コイル20は、駆動回路12における電源ライン21と通電のオンオフ制御のためのnpn型のトランジスタQ1のコレクタとに接続される。トランジスタQ1のエミッタは接地ライン(GND)22に接続されているので、励磁用の直流電源としての電源ライン21と接地ライン22との間に、電磁コイル20とトランジスタQ1とが直列に接続される。本例の励磁用の電源電圧、すなわち電源ライン22の電位は24ボルトである。トランジスタQ1のベースには、オンオフ制御信号S1がインバーター24および抵抗R6を介して入力される。
【0019】
また、電磁クラッチ5の電磁コイル20は、フリーホイール回路13に設けられた能動素子であるpnp型のトランジスタQ2と並列に接続される。詳しくは、電磁コイル20の電源ライン21側の端aにはトランジスタQ2のコレクタが接続され、他端bにはトランジスタQ2のエミッタが接続される。つまり、トランジスタQ2がカットオフ状態のときには、電磁コイル20に対してフリーホイール回路13は実質的に機能せず、トランジスタQ2が動作状態のときに電磁コイル20と並列の電流路がトランジスタQ2によって形成される。
【0020】
フリーホイール回路13において、トランジスタQ2のベースは抵抗R4を介してオペレーショナル・アンプリファイア(以下、オペアンプという)27の出力端子に接続されている。このオペアンプ27の出力端子とマイナス入力端子とを直結することによってボルテージフォロア回路が形成されており、オペアンプ27の出力電圧はプラス入力端子の入力電圧に等しい。オペアンプ27のプラス入力端子には、設定電圧(Vref)を示す電圧設定信号S2が抵抗R3を介して入力される。また、オペアンプ27のプラス入力端子は、トランジスタQ2に対するバイアスを切り替えるために設けられたpnp型のトランジスタQ3のコレクタに抵抗R5を介して接続されており、トランジスタQ3のエミッタはバイアス用の電源ライン26に接続されている。電源ライン26の電位は、励磁用の電源ライン21の電位よりも高い36ボルトとされている。トランジスタQ3のベースとエミッタとに抵抗R1の一端と他端とが接続されており、トランジスタQ3のベースには抵抗R2を介してオンオフ制御信号S1の入力端子が接続されている。
【0021】
図2の回路の動作は次のとおりである。
【0022】
まず、電磁クラッチ5を動作させるときには、オンオフ制御信号S1はL(ローレベル)とされる。駆動回路12のインバーター24の出力はH(ハイレベル)となり、抵抗R6を介してトランジスタQ1にベース電流が流れてトランジスタQ1が動作状態(ON状態)になる。これにより、電源ライン21から電磁コイル20へ励磁電流が流れ、電磁クラッチ5は動作状態になる。このとき、フリーホイール回路13では、オンオフ制御信号S1がLであるので、トランジスタQ3から抵抗R2へベース電流が流れてトランジスタQ3が動作状態になる。そのため、オペアンプ27のプラス入力端子の入力電圧は電源ライン26に加わっている電圧(36ボルト)に近い電圧になるので、オペアンプ27の出力電圧も同じく約36ボルトになる。トランジスタQ2のベース電位はオペアンプ27の出力端子電位とほぼ同じ電位となるが、トランジスタQ1がON状態であるので、トランジスタQ2のエミッタ電位は接地電位(0ボルト)に近い電位となって、トランジスタQ2はカットオフ状態になる。
【0023】
次に、電磁クラッチ5を停止させるときには、オンオフ制御信号S1はH(ハイレベル)とされる。インバーター24の出力はLとなり、ベース電流の流れないトランジスタQ1はカットオフ状態(OFF状態)になる。同時に、オンオフ制御信号S1がHであるので、トランジスタQ3もカットオフ状態になり、オペアンプ27はその時点の電圧設定信号S2の示す設定電圧(Vref)どおりの電圧を出力する。その一方で、電磁コイル20において生じる逆起電力により、電磁コイル20におけるトランジスタQ1の側の端bの電位が電源ライン21の電位よりも高くかつトランジスタQ2のベース電位よりも高くなる。これによってトランジスタQ2が動作状態になってエミッタフォロア回路が形成され、電磁コイル20におけるトランジスタQ1の側の端bの電位が、トランジスタQ2のベース電位に対してトランジスタQ2のベース・エミッタ間電圧(VBE)の分だけ高い電位に固定される。例えば設定電圧(Vref)を30ボルトとし、ベース・エミッタ間電圧(VBE)を0.6ボルトとすると、電磁コイル20におけるトランジスタQ1の側の端bの電位は30.6ボルトに固定される。つまり、電磁コイル20における電源ライン21の側の端aの電位は24ボルトであるので、電磁コイル20の両端間の電圧は6.6ボルトにクランプされる。
【0024】
このようにして電磁コイル20の両端間の電圧がクランプされたままの状態で、電磁コイル20とトランジスタQ2とで構成される閉ループをいわゆる慣性電流が流れ、電源ライン21からの通電中に電磁コイル20に蓄積された電磁エネルギーが消費される。この間も慣性電流によって電磁コイル20の励磁が継続するので、電磁クラッチ5は動作状態に保たれる。電磁エネルギーが十分に消費されて電流値が所定値(これを停止電流値ISと呼称する)まで小さくなれば、シャフト5aを停止位置に戻そうとする付勢力が動作位置に保とうとする電磁力に打ち勝ってシャフト5aが停止位置に戻り、電磁クラッチ5が停止状態になる。
【0025】
電磁クラッチ5の停止時間TS、すなわち慣性電流の値が停止電流値ISになるのに要する時間は、図3に示されるように、慣性電流が流れるときの電磁コイル20の両端間のクランプ電圧に依存する。図3において、クランプ電圧に相当するトランジスタQ2のコレクタ・エミッタ間電圧(VCE)の値が小さい場合、電磁コイル20を励磁する電流(クラッチ電流)は比較的に緩やかに減衰する。この場合の停止時間は、電源から電磁コイル20への通電を停止した時点t0からクラッチ電流の値が停止電流値になる時点t2までの時間TS2である。これに対して、トランジスタQ2のコレクタ・エミッタ間電圧(VCE)の値が大きい場合、クラッチ電流は比較的に速やかに減衰する。したがって、この場合の停止時間は時点t0から時点t1までの時間TS1であり、VCEの値が小さい場合の停止時間よりも短い。このようにクランプ電圧を高くするにつれて停止時間が短くなる。ここで、電磁エネルギーEとその減衰に要する時間tとについてE=V×I×tの関係がある。すなわち、インダクタンスをL、通電電流値をI、クランプ電圧をVとすると、E=(1/2)×L×I2=V×I×tと表わされる。これにより導かれるt=(L×I)/(2×V)の式から、停止時間がクランプ電圧に依存することがわかる。
【0026】
ところで、実際には停止電流値に経時変化がある。変化の傾向としては、電磁クラッチ5の使用回数が多くなると、停止電流値が低下する。したがって、クランプ電圧を一定とすると、電磁クラッチ5の使用回数が少ない頃の停止時間と比べて、使用回数が多くなった段階の停止時間が長くなってしまう。本実施形態では、停止時間TSが長くなれば、用紙の送り出し量が過大になって用紙が傾いたりジャムが発生し易くなったりする。そこで、電磁クラッチ5における停止電流値ISが変化しても停止時間TSが一定になるように、すなわち電磁エネルギーがより速く減衰するように、コントローラー14はクランプ電圧の設定を変更する。
【0027】
クランプ電圧の設定を変更しない場合の電磁クラッチ5の累積使用量と停止時間との関係を、予め推定することができる。例えば、電磁クラッチ5と同型のクラッチを実際に使用して停止時間を測定すればよい。図4は累積使用回数NSと停止時間TSとの典型的な関係を定性的に示している。図4において、累積使用回数NSが所定値NSthより少ないときには、停止時間TSは一定である。累積使用回数NSが所定値NSthを超えると、累積使用回数NSが増えるにつれて停止時間TSが長くなる。コントローラー14が参照する電圧設定テーブル16(図1参照)は、図4のような予め推定される停止時間の変化を打ち消すように累積使用回数に対応づけられた設定電圧(Vref)を示す。したがって、コントローラー14は、メモリ15に格納されている累積使用量17の示す累積使用回数NSが所定値NSthに相当する閾値を超えるまでは設定電圧(Vref)を初期値のままとし、累積使用回数NSが閾値を超えると、累積使用回数NSの増加に合わせて設定電圧(Vref)を高くする。
【0028】
上述のとおり、フリーホイール回路13では、能動素子であるトランジスタQ2を用いて電磁コイル20の両端間の電圧をクランプするので、トランジスタQ2のベースのバイアス設定によってクランプ電圧を無段階に変化させることができる。したがって、図4のように連続的に停止時間が変化すると推定される場合であっても、累積使用回数に応じてクランプ電圧を適切に微調整して停止時間の変化を打ち消すことができる。
【0029】
図5は画像形成装置の概略の構成を示している。画像形成装置100は、電子写真式のカラープリンタである。画像形成装置100に対して、図示しないパーソナルコンピューターや他のホスト機器から画像のプリントが指示されると、給紙トレイ40から用紙(記録媒体)Pが1枚ずつピックアップローラー71により取り出され、搬送ローラー72,73によって上方のレジストローラー対74へ向けて搬送される。この給紙と並行して、レーザーユニット50が既に帯電された4個の感光体51,52,53,54を画像データに基づいて露光し、4個の現像ユニット55,56,57,58がそれぞれに対応する一つの感光体に所定色のトナーをそれぞれ付着させる。現像された4個の感光体上のトナー画像は、電圧を印加することで中間転写ベルト66上に順に重ねて一次転写される。適切なタイミングでレジストローラー対74から二次転写位置に用紙Pが送り出され、転写ローラー75に電圧を印加することで中間転写ベルト66上のトナー画像が用紙Pに二次転写される。二次転写されたトナー画像は熱と圧力とを加える定着ユニット90を通過することにより用紙Pに定着する。トナー画像が定着した用紙Pは、排紙ローラー76により排紙トレイに排出される。現像ユニット55,56,57,58内のトナーが少なくなると、トナーボトル61,62,63,64内に収納されているトナーが現像ユニット55,56,57,58に補給される。
【0030】
ピックアップローラー71、搬送ローラー72,73、レジストローラー対74、中間転写ベルト66および黒の像形成に係る感光体54は、メインモーターであるモーター81によって駆動される。定着ユニット90の加熱ローラー91および加圧ローラー92は定着モーター85によって駆動される。黒の像形成に係る現像ユニット58は黒現像モーター82によって駆動される。イエロー、マゼンタおよびシアンのそれぞれの像形成に係る現像ユニット55,56,57は、カラー現像モーター83によって駆動される。イエロー、マゼンタおよびシアンのそれぞれの像形成に係る感光体51,52,53はカラー感光体モーター84によって駆動される。
【0031】
図6は電磁クラッチ5における停止時間のバラツキの影響を示している。例示では、レジストローラー対74のニップ部に突き当てて用紙P1,P2を撓ませる。電磁クラッチ5の停止時間が適正である場合の用紙P1と比べて、停止時間が適正値よりも長い場合の用紙P2は過剰に送り出される。このため、用紙P1と用紙P2とでループ量および撓み形状に差異が生じる。この差異によってスキュー補正の精度や搬送の円滑性の損なわれるおそれがある。電磁クラッチ5の使用回数に応じてクランプ電圧を変更して停止時間を一定にすることにより、安定した用紙搬送を実現することができる。
【0032】
以上の実施形態において、電圧設定テーブル16の内容は、駆動の対象とする電磁クラッチの耐久特性に応じて、停止時間の変化を打ち消すように設定電圧(Vref)を定めたものであればよい。図4の例示とは違って、停止時間が長くなったり短くなったりする特性、または停止時間が段階的に変化する特性をもつ電磁クラッチを駆動する場合には、それに応じた内容の電圧設定テーブル16を作成しておけばよい。
【0033】
上述の実施形態において、駆動回路12およびフリーホイール回路13の回路構成を適宜変更することができる。フリーホイール回路13におけるクランプ用の能動素子はpnpトランジスタに限らず、駆動回路12の構成およびフリーホイール回路13のバイアスの極性に適合する素子であればよい。ツェナーダイオードといった他の素子とトランジスタとを組み合わせてもよいし、ダーリントン接続のように複数のトランジスタを組み合わせてもよい。トランジスターは、FET(Field Effect Transistor)であってもよい。
【0034】
電磁クラッチ5は電磁力を作用させる可動部が往復運動をするソレノイド型に限らない。また、電磁クラッチ5の用途はプリンターの用紙搬送の制御に限らない。電磁クラッチ、ソレノイド、電磁弁、電磁直線作動器、または電磁回転作動器など、任意の電磁機器の駆動に本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0035】
1 電磁クラッチ駆動装置(電磁機器駆動装置)
5 電磁クラッチ
13 フリーホイール回路
14 コントローラー
15 不揮発性メモリ
17 累積使用量
20 電磁コイル
21 電源ライン(励磁用電源)
Q2 トランジスタ(能動素子)
S2 電圧設定信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁コイルを有する電磁機器を駆動する電磁機器駆動装置であって、
励磁用電源から前記電磁コイルへの通電が停止したときに逆起電力によって前記電磁コイルの両端間に生じる電圧をクランプするフリーホイール回路と、
前記フリーホイール回路によってクランプされた前記電圧が、前記電磁機器の累積使用量が少ないときよりも多いときの方が高くなるように、前記フリーホイール回路の動作を制御するコントローラーと、を備える
ことを特徴とする電磁機器駆動装置。
【請求項2】
前記フリーホイール回路は、前記電圧のクランプのために前記電磁コイルに並列に接続される能動素子を有し、前記電磁コイルへの前記通電が停止したときに前記コントローラーによる設定に従って前記能動素子が動作状態となるように前記能動素子をバイアスし、
前記コントローラーは、前記能動素子が動作状態であるときの前記能動素子に対するバイアス電圧の設定を、前記電磁機器の累積使用量に応じて変更する
請求項1記載の電磁機器駆動装置。
【請求項3】
前記フリーホイール回路は、前記励磁用電源から前記電磁コイルへの通電が行なわれているときには、前記能動素子がオフ状態となるように前記能動素子をバイアスする
請求項2記載の電磁機器駆動装置。
【請求項4】
前記コントローラーは、前記電磁コイルの累積使用量に応じた設定すべきバイアス電圧を示す制御情報に従って、前記フリーホイール回路における前記能動素子に対する前記バイアス電圧を設定する
請求項2または3記載の電磁機器駆動装置。
【請求項5】
前記コントローラーは、前記制御情報を記憶しかつ前記電磁機器の使用回数のカウント値を前記累積使用量として記憶する不揮発性メモリを有する
請求項4記載の電磁機器駆動装置。
【請求項6】
前記能動素子は、コレクタとエミッタとがそれぞれ前記電磁コイルの一端と他端とに接続されるトランジスタであり、
前記能動素子のベースのバイアス電位を変更することによって、前記逆起電力によって生じる前記電圧に対するクランプ電圧を変更する
請求項2ないし5のいずれかに記載の電磁機器駆動装置。
【請求項7】
直流電源によって励磁される電磁コイルを有する電磁機器の駆動方法であって、
前記直流電源から前記電磁コイルへの通電が停止したときに逆起電力によって前記電磁コイルの両端間に生じる電圧をクランプするフリーホイール回路を前記電磁コイルに接続し、
前記フリーホイール回路によってクランプされた前記電圧が、前記電磁機器の累積使用量が少ないときよりも多いときの方が高くなるように、前記フリーホイール回路の動作を制御する
ことを特徴とする電磁機器の駆動方法。
【請求項8】
前記フリーホイール回路として、前記電圧のクランプのために前記電磁コイルに並列に接続される能動素子を有した回路を用い、
前記電磁コイルへの前記通電が停止したときに前記能動素子が動作状態となるように前記能動素子をバイアスし、
前記能動素子が動作状態であるときの前記能動素子に対するバイアス電圧を、前記電磁機器の累積使用量に応じて変更する
請求項7記載の電磁機器の駆動方法。
【請求項9】
前記累積使用量が閾値を超えるまでは前記バイアス電圧を変更しない
請求項8記載の電磁機器の駆動方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−110211(P2013−110211A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−252762(P2011−252762)
【出願日】平成23年11月18日(2011.11.18)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】