説明

電磁波イメージングシステム

【課題】美観・外観を損ねることなく、また侵入者などに警戒を妨害されることなく、対象領域の画像や映像を得られる電磁波イメージングシステムである。
【解決手段】電磁波イメージングシステムは、電磁波発生源1と、電磁波5を対象領域に照射するための照射手段2と、電磁波5を結像するための結像手段3と、結像された電磁波5の像を検出する検出手段4とを有する。電磁波発生源1、照射手段2、結像手段3、および検出手段4は、構造物または障害物の内部、あるいは構造物または障害物によって遮られ対象領域から目視できない箇所に設置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば検知エリア内に電磁波を照射し、これの透過波や反射波から検知エリア内にある物体の画像や映像を得る電磁波イメージングシステムに関するものであって、特に、周波数30GHz〜30THz程度のいわゆるミリ波からテラヘルツ波と呼ばれる周波数領域の電磁波を用いて対象領域の画像や映像を得るシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、防犯などを目的として人体などを検知する防犯センサとしては、種々の方式のセンサ、例えば赤外線センサ、超音波センサ、電波センサなどが提案され、一部は実用化されている。また、可視光や赤外光を利用して画像や映像を得る監視カメラなどが利用されている。
【0003】
前記電波センサには、種々の方式のものがある。例えば、検知エリア内にミリ波を放射し、検知エリア内に反射物体を設置し、反射物体からの反射波を検出することで、検知エリア内に侵入した人体などを検出するシステムが開示されている(特許文献1参照)。反射物体として既存の構造物を用いたり、反射物体を壁や地中に埋め込んだりすることで、またミリ波放射源を壁や地中に埋め込むことで、美観や外観を損ねずに警戒することができる。
【0004】
また近年、いわゆるテラヘルツ波を応用した技術が注目されている。テラヘルツ波を利用した分光分析やイメージングなどは、産業上応用できるものとして期待されている。例えば、テラヘルツ波の応用分野では、X線に代わる安全な透視検査装置としてイメージングを行なう技術などが提案されている。
【0005】
テラヘルツ波は透過性を持ち、イメージングに用いると分解能が1mm程度あり、種々の方法が提案されている(特許文献2参照)
【特許文献1】特開2002-228744号公報
【特許文献2】特開2001-50908号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1では、検知エリア内に侵入した物体の大きさや位置を検知することはできるが、侵入物体の画像や映像を得ることはできない。
【0007】
また、可視光や赤外光を用いた監視カメラでは、検知エリア内に侵入した物体の画像や映像を得ることはできるが、美観や外観を損ねる。監視カメラを街灯などに偽装する手段も提案・実用化されているが、訓練を受けた侵入者などであれば偽装を見破り、監視を妨害することができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題に鑑み、本発明の電磁波イメージングシステムは、テラヘルツ波放射源などの電磁波発生源と、電磁波を対象領域に照射するためのテラヘルツ波照明光学系などの照射手段と、電磁波を結像するためのテラヘルツ波撮像光学系などの結像手段と、結像された電磁波の像を検出するテラヘルツ波撮像素子などの検出手段とを有し、前記電磁波発生源、照射手段、結像手段、および検出手段が、構造物または障害物の内部、あるいは構造物または障害物によって遮られ対象領域から目視できない箇所に設置されたことを特徴とする。
【0009】
例えば、これらの手段が、壁、または天井、または床、または地中、または調度品、または電柱に埋め込まれ、対象領域から目視できない箇所に設置されたり、壁、または天井、または床、または地中、または調度品、または電柱によって遮られ、対象領域から目視できない箇所に設置されたりする。こうして、検知エリアの壁面や天井、調度品の内部に埋め込んだり、あるいは検知エリアの隣室に設置したりすることで、美観・外観を損ねず、かつ侵入者などに監視を妨害されることなく検知エリア内の画像・映像を得ることができる。
【発明の効果】
【0010】
上述した本発明によって、美観・外観を損ねることなく、また侵入者などに警戒を妨害されることなく、対象領域の画像や映像を得られて、検知エリアの警戒などを行なえると言う効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、本発明による電磁波イメージングシステムの実施形態を明らかにする実施例について、図面を参照して説明する。
【実施例】
【0012】
実施例の電磁波イメージングシステムでは、図1に示すように、検知エリアの壁面7の一部にテラヘルツ波放射源1およびテラヘルツ波照明光学系2を埋め込み、壁面7’にテラヘルツ波撮像光学系3およびテラヘルツ波撮像素子4を埋め込む。前記テラヘルツ波放射源1から放射されたテラヘルツ波5は、前記テラヘルツ波照明光学系2によって、対象領域を同定できる像が得られる程度に充分大きい断面積を持つテラヘルツ波とされて、検知エリア内を通り、前記テラヘルツ波撮像光学系3によって前記テラヘルツ波撮像素子4に集光される。前記テラヘルツ波5は壁等を透過する性質があり、1mm程度の分解能を有するので、検知エリアに侵入した物体6の画像・映像を得ることができる。画像・映像を得る方式として、図1に示したような透過波を利用する方法のほか、図2に示すような反射波を撮像する方法があるが、どちらを用いても良い。
【0013】
透過波を利用する場合は、テラヘルツ波撮像素子4により、検知エリアに侵入した物体6の像が影絵のようになって得られる。反射波を利用する場合は、物体6からの散乱光を用いて、検知エリアに侵入した物体6の像が通常のカメラの様にして得られる。
【0014】
前記テラヘルツ波放射源1には、例えば、低温成長ガリウム砒素上に形成されたダイポールアンテナ(いわゆる光伝導アンテナ)などに電圧をかけ、フェムト秒レーザを照射する既知の手段を用いる。また、インジウム燐やテルル化亜鉛などの非線形結晶にフェムト秒レーザを照射する手段を用いても良いし、パラメトリック発振を利用した方法を利用しても良い。
【0015】
前記テラヘルツ波照明光学系2および前記テラヘルツ波撮像光学系3には、例えば、放物面鏡や球面鏡を一つまたは複数組み合わせたものを用いる。または、テラヘルツ波に対し吸収・分散が小さい誘電体(例えば、高抵抗シリコンやホワイトポリエチレン)を用いたレンズを用いても良い。
【0016】
前記テラヘルツ波撮像素子4には、テルル化亜鉛を用いた既知の方法や、光伝導アンテナをアレイ化した方法などを用いるが、この方法以外のテラヘルツ検出手段を2次元化したものを用いても良い。
【0017】
壁面7および7’には、テラヘルツ波に対し吸収・分散が小さい誘電体を用いると良い。また、前記テラヘルツ波放射源1、前記テラヘルツ波照明光学系2、前記テラヘルツ波撮像光学系3、および前記テラヘルツ波撮像素子4は、壁に埋め込まず隣室などに設置しても良い。
【0018】
また、図3に示すように、テラヘルツ波放射源1および照明光学系2を複数設置することで、検知エリアを広く設定することもできる。複数用いる場合は、広い範囲の像を容易に得ることができる。この場合、検出側のテラヘルツ波撮像素子4で像の部分を繋いで全体の画像を形成する様にすればよい。
【0019】
また、前記テラヘルツ波放射源1、前記テラヘルツ波照明光学系2、前記テラヘルツ波撮像光学系3、前記テラヘルツ波撮像素子4を壁以外の場所(例えば、天井や箪笥の中)などに設置しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】壁に埋め込んだ透過型テラヘルツイメージングシステムの実施例を示す図である。
【図2】壁に埋め込んだ反射型テラヘルツイメージングシステムの実施例を示す図である。
【図3】壁に埋め込んだ複数型テラヘルツイメージングシステムの実施例を示す図である。
【符号の説明】
【0021】
1 テラヘルツ波放射源(電磁波発生源)
2 テラヘルツ波照明光学系(照射手段)
3 テラヘルツ波撮像光学系(結像手段)
4 テラヘルツ波撮像素子(検出手段)
5 テラヘルツ波(電磁波)
6 侵入者(対象領域の物体)
7,7’ 壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁波発生源と、電磁波を対象領域に照射するための照射手段と、電磁波を結像するための結像手段と、結像された電磁波の像を検出する検出手段とを有し、前記電磁波発生源、照射手段、結像手段、および検出手段が、構造物または障害物の内部、あるいは構造物または障害物によって遮られ対象領域から目視できない箇所に設置されたことを特徴とする電磁波イメージングシステム。
【請求項2】
請求項1において、前記電磁波発生源、照射手段、結像手段、および検出手段が、壁、または天井、または床、または地中、または調度品、または電柱に埋め込まれ、対象領域から目視できない箇所に設置されたことを特徴とする電磁波イメージングシステム。
【請求項3】
請求項1において、前記電磁波発生源、照射手段、結像手段、および検出手段が、壁、または天井、または床、または地中、または調度品、または電柱によって遮られ、対象領域から目視できない箇所に設置されたことを特徴とする電磁波イメージングシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−234587(P2006−234587A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−49889(P2005−49889)
【出願日】平成17年2月25日(2005.2.25)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】