説明

電磁波シールド材、複合化フィルタ及びこれを用いた画像表示装置

【課題】導電性インキにより導電性パターン層を形成する電磁波シールド材であるにもかかわらず導電性が高く、透明基材側からの外光の反射が低減され、また、導電性パターン層側のアクリル樹脂からなる粘着剤層の着色がない電磁波シールド材を提供すること。
【解決手段】透明基材と、該透明基材上に形成されたプライマー層と、該プライマー層上に所定のパターンで形成された導電性パターン層を有し、該導電性パターン層形成側にカルボキシル基含有アクリル樹脂からなる粘着剤層を積層してなる電磁波シールド材であって、該導電性パターン層は金属粒子とバインダー樹脂を含んで成り、該導電性パターン層中の該金属粒子の分布が、相対的に、該プライマー層近傍において分布が疎であり、又該導電性パターン層の頂部近傍において密であり、かつ、カルボキシル基含有アクリル樹脂からなる粘着剤層は1H−ベンゾトリアゾールを含有する電磁波シールド材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像表示装置(ディスプレイ)の前面に配置する電磁波シールド材、複合化フィルタ及びこれを用いた画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
テレビジョンやパーソナルコンピュータのモニタ等の画像表示装置(ディスプレイ装置ともいう)として、例えば、陰極線管(CRT)ディスプレイ装置、液晶ディスプレイ装置(LCD)、プラズマディスプレイ装置(PDP)、電場発光(EL)ディスプレイ装置等が知られている。これらのディスプレイ装置のうち、大画面ディスプレイ装置の分野で注目されているプラズマディスプレイ装置は、発光にプラズマ放電を利用するため、30MHz〜1GHz帯域の不要な電磁波が外部に漏洩して他の機器(例えば、遠隔制御機器、情報処理装置等)に影響を与えるおそれがある。そのため、プラズマディスプレイ装置に用いられるプラズマディスプレイパネルの前面側(観察者側)に、可視光線は透過し且つ漏洩する電磁波はシールドするためのフィルム状の電磁波シールド材を設けるのが一般的である。
なお、本願明細書中において、「電磁波」とは広義の電磁波の中で、周波数30MHz〜1GHz帯域を中心とするkHz〜GHz帯域のもの(所謂電波)を意味する。より高周波数の赤外線、可視光線、紫外線等は、各々、赤外線、可視光線、紫外線等と呼称する。
【0003】
従来、プラズマディスプレイの前面フィルタとしては、例えば、特許文献1に記載されているような、透明基材上に、金属のスパッタリング、電解メッキ及びパターンエッチングによってメッシュ状金属薄膜を形成し、その上にアクリル樹脂系の粘着剤層を積層してなる電磁波遮蔽フィルタと、さらにその上に反射防止フィルタなどの光学フィルタを積層した複合化フィルタが使用されてきた。
しかしながら、この電磁波遮蔽フィルタ(電磁波シールド材)は、エッチングしてメッシュ形状を作成するため、捨てる材料が多く低コスト化が難しかった。
【0004】
これに対し、特許文献2には、特定の印刷方法によって透明基材上に導電性インキをメッシュパターンに印刷することで、低コスト化、生産性の向上がはかられた電磁波シールド材を、そのメッシュパターン側でアクリル樹脂系の粘着剤層を介して光学フィルタと貼り合せた複合化フィルタが記載されている。
この特定の印刷方法とは、凹版の凹部内に充填された導電性インキ組成物を、紫外線硬化性樹脂から成り硬化するまで流動性を保持できるプライマー層が形成された透明基材と圧着することによって、プライマー層と凹部内の導電性インキとを空隙なく密着する圧着工程を経て、プライマー層を硬化し、透明基材を版面から剥がすことで、凹部内の導電性インキ組成物のほとんどを硬化したプライマー層上に転写するものであり、導電性インキ組成物の転写不良に基づくパターンの断線、形状不良、転移率不足や低密着性等の不具合が生じない電磁波シールド材が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−36107号公報
【特許文献2】WO2008/149969号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2の方法による電磁波シールド材、及びこれを用いた複合化フィルタにおいても、なお、以下のような課題がある。
(i)金属薄膜のメッシュを形成した電磁波シールド材に比べて導電性(電磁波遮蔽性)が低い。
(ii)電磁波シールド材の表裏いずれの側もメッシュパターンの金属光沢があり、外光を反射して画像の明暗コントラストが低下し、或いは画像光を反射して画像コントラストを低下させる。特に基材側は黒化めっき等の処理もできないため問題である。
(iii)粘着剤層のアクリル樹脂は、金属を含む層との接着性向上のために含有されるカルボキシル基が、導電性パターン層表面の金属粒子と反応して、金属が錆びて変色したり、それに伴って粘着剤が変色し、粘着剤層が着色するという問題がある。
本発明はこれらの課題を解決した電磁波シールド材、及びこれを用いた複合化フィルタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため鋭意検討した結果、透明基材上に形成された、好ましくは紫外線硬化樹脂からなる、プライマー層と、該プライマー層上に所定のパターンで形成された導電性パターン層を有する電磁波シールド材において、その導電性パターン層中の金属粒子の分布が、相対的に、プライマー層近傍において分布が疎に、又導電性パターンの頂部近傍において密であるよう構成するか、或いは隣接する該金属粒子同士の間隔が、相対的に、該プライマー層近傍において大であり、又該導電性パターン層の頂部近傍において小であるように構成し、かつ、アクリル樹脂粘着剤層中に特定の酸化防止剤を含有させることで解決し得ることを見出した。本発明はかかる知見に基づき完成したものである。
すなわち、本発明は、
(1)透明基材と、該透明基材上に形成されたプライマー層と、該プライマー層上に所定のパターンで形成された導電性パターン層を有し、該導電性パターン層形成側にカルボキシル基含有アクリル樹脂からなる粘着剤層を積層してなる電磁波シールド材であって、該導電性パターン層は金属粒子とバインダー樹脂を含んで成り、該導電性パターン層中の該金属粒子の分布が、相対的に、該プライマー層近傍において分布が疎であり、又該導電性パターン層の頂部近傍において密であり、かつ、カルボキシル基含有アクリル樹脂からなる粘着剤層は1H−ベンゾトリアゾールを含有することを特徴とする電磁波シールド材、
(2)透明基材と、該透明基材上に形成されたプライマー層と、該プライマー層上に所定のパターンで形成された導電性パターン層を有し、該導電性パターン層形成側にカルボキシル基含有アクリル樹脂からなる粘着剤層を積層してなる電磁波シールド材であって、該導電性パターン層は金属粒子とバインダー樹脂を含んで成り、該導電性パターン層中の隣接する該金属粒子同士の間隔が、相対的に、該プライマー層近傍において大であり、又該導電性パターン層の頂部近傍において小であり、かつ、カルボキシル基含有アクリル樹脂からなる粘着剤層は1H−ベンゾトリアゾールを含有することを特徴とする電磁波シールド材、
(3)(1)又は(2)の電磁波シールド材の一面又は両面に光学機能層を積層して成る複合化フィルタ、及び
(4)(3)の複合化フィルタを、ディスプレイパネルの前面側に設置した画像表示装置、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明により得られる電磁波シールド材において、導電性パターン層の金属粒子の分布が、相対的に、プライマー層近傍において分布が疎であり、又導電性パターン層頂部近傍において密であるよう構成するか、或いは隣接する該金属粒子同士の間隔が、相対的に、該プライマー層近傍において大であり、又該導電性パターン層の頂部近傍において小であるように構成したため、導電性パターン層頂部近傍で集中的に各金属粒子同士の電気的接触が確保されるので、限られた金属粒子の添加量であるにもかかわらず、高い電磁波シールド性を示すという効果を奏する。
また、プライマー層近傍において金属粒子の分布が疎ないしは隣接する金属粒子同士の間隔が大であるので、透明基材側を外側(観察者側)に向けたときも、導電性パターン層の光反射は低減され、画像コントラストは良好である。
さらに、粘着剤層は1H−ベンゾトリアゾールを含有するので、導電性パターン層の着色も防止される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明による電磁波シールド材の1形態を示す模式的な断面図である。
【図2】本発明による電磁波シールド材の表面又は裏面、或いは表裏両面に光学機能層を有する複合化フィルタを示す模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0011】
〔電磁波シールド材〕
図1は、本発明の電磁波シールド材の一例を示す模式的な断面図である。なお、図1は説明の便宜上、縦横の縮尺の比率は、適宜、実物よりも増減してある。また、導電性パターン層10内の金属粒子も実物よりも誇張して図示している。
本発明の電磁波シールド材100は、透明基材40と、透明基材40上に形成されたプライマー層30と、プライマー層30上に所定のパターンで形成された、金属粒子1とバインダー樹脂2を含む導電性パターン層10とを有する。そして、導電性パターン層の金属粒子の分布が、相対的に、プライマー層近傍において分布が疎であり、又導電性パターン層頂部近傍において密であるよう構成するか、或いは隣接する該金属粒子同士の間隔が、相対的に、該プライマー層近傍において大であり、又該導電性パターン層の頂部近傍において小であるように構成し、かつ、導電性パターン層形成側に積層した粘着剤層20は1H−ベンゾトリアゾール4を含有させたカルボキシル基含有アクリル樹脂粘着剤3からなる。
以下、本発明の電磁波シールド材100の構成を詳しく説明する。
【0012】
(透明基材)
透明基材40は、可視光線領域での透明性(光透過性)、耐熱性、機械的強度等の要求物性を考慮して、公知の材料及び厚みを適宜選択すればよく、特に制限はないが、生産性に優れるロール・トゥ・ロールでの連続加工適性を考慮すると、フレキシブルな樹脂フィルム(乃至シート)が好ましい。なお、ロール・トゥ・ロールとは、巻取(ロール)から巻き出して供給し、適宜加工を施し、その後、巻取に巻き取って搬送ないしは保管する加工方式をいう。
【0013】
樹脂フィルム乃至シートの樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、エチレングリコール−1,4シクロヘキサンジメタノール−テレフタール酸共重合体、エチレングリコール−テレフタール酸−イソフタール酸共重合体、ポリエステル系熱可塑性エラストマーなどのポリエステル系樹脂、ポリメチルメタクリレートなどのアクリル系樹脂、ポリプロピレン、シクロオレフィン重合体などのポリオレフィン系樹脂、トリアセチルセルロースなどのセルロース系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド(ナイロン)系樹脂等である。なかでも、ポリエチレンテレフタレートはその2軸延伸フィルムが耐熱性、機械的強度、光透過性、コスト等の点で好ましい透明基材である。
なお、電磁波シールド材及びディスプレイ用フィルタに可撓性を要求しない場合は、透明基材1として、硝子、石英等の透明な無機材料の板を使用することもできる。
【0014】
透明基材の厚みは基本的には特に制限はなく用途等に応じ適宜選択し、フレキシブルな樹脂フィルムを利用する場合、例えば12〜500μm、好ましくは25〜200μm程度である。
また、以下に述べるプライマー層2との密着性を確保するために、透明基材表面に別途密着性改善のための表面処理や、易接着層、下地層などが設けられていてもよい。
【0015】
(プライマー層)
プライマー層30は、導電性組成物と被印刷物との密着性を向上させるための層である。すなわち、透明基材及び導電性パターン層の双方に密着性が良く、また開口部(導電性パターン層非形成部)の光透過性確保のために透明な層でもある。
更に、電磁波シールド材製造方法においては、このプライマー層30は、その主目的が導電性パターン層10の印刷形成時に、版から被印刷物(透明基材)へのインキ(導電性組成物)転移性を向上させ、転移後の導電性組成物と被印刷物との密着性を向上させるための層であり、流動性を保持できる状態で透明基材40上に設けられ、凹版印刷時の凹版に接触している間に液状から固化させる層である。
【0016】
かかるプライマー層を構成する材料としては、本発明では、未硬化状態において液状(流動性)の電離放射線硬化性化合物を含む電離放射線硬化性樹脂組成物を塗工、電離放射線照射により硬化(固体化)してなる層が用いられる。なお、電離放射線照射により、架橋反応乃至重合反応により硬化する性能を有する樹脂の未硬化物を電離放射線硬化性樹脂、該電離放射線硬化性樹脂を硬化してなるもの(硬化物)を電離放射線硬化樹脂と呼称する。電離放射線としては、紫外線、可視光線、X線、γ線等の電磁波、或いは電子線、α線等の荷電粒子線が用いられる。これらの中でも、特に、紫外線が取扱いにも便利な為、好ましい。特に、電離放射線として紫外線を採用する場合、上記電離放射線硬化樹脂等は紫外線硬化樹脂等と呼称する。
該電離放射線硬化性化合物としては、電離放射線で重合、架橋等の反応により硬化するモノマー及び/又はプレポリマーが用いられる。
かかるモノマーとしては、ラジカル重合性モノマーとして、例えば、メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレートなどの単官能(メタ)アクリレート類、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどの多官能(メタ)アクリレート類等の各種(メタ)アクリレートが挙げられる。なお、ここで(メタ)アクリレートとの表記は、アクリレート又はメタクリレートを意味する。カチオン重合性モノマーとして、例えば、3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレートなどの脂環式エポキシド類、ビスフェノールAジグリシジルエーテルなどグリシジルエーテル類、4−ヒドロキシブチルビニルエーテルなどビニルエーテル類、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタンなどオキセタン類等が挙げられる。
また、かかるプレポリマー(乃至オリゴマー)としては、ラジカル重合性プレポリマーとして、例えば、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、トリアジン(メタ)アクリレート、シリコン(メタ)アクリレート等の各種(メタ)アクリレートプレポリマー、トリメチロールプロパントリチオグリコレート、ペンタエリスリトールテトラチオグリコレート等のポリチオール系プレポリマー、不飽和ポリエステルプレポリマー等が挙げられる。その他、カチオン重合性プレポリマーとして、例えば、ノボラック系型エポキシ樹脂プレポリマー、芳香族ビニルエーテル系樹脂プレポリマー等が挙げられる。
これらモノマー、或いはプレポリマーは、要求される性能、塗布適性等に応じて、1種類単独で用いる他、モノマーを2種類以上混合したり、プレポリマーを2種類以上混合したり、或いはモノマー1種類以上とプレポリマー1種類以上とを混合して用いたりすることができる。
【0017】
紫外線或いは可視光線での硬化のためには、光重合開始剤を添加する。光重合開始剤としては、ラジカル重合性のモノマー又はプレポリマーの場合には、ベンゾフェノン系、チオキサントン系、ベンゾイン系、アセトフェノン系等の化合物が、またカチオン重合系のモノマー又はプレポリマーの場合には、メタロセン系、芳香族スルホニウム系、芳香族ヨードニウム系等の化合物が用いられる。具体的には、反応波長帯域が光重合開始剤の通常の吸収波長である400nm未満の波長帯域にあるものとして、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン[チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商品名「イルガキュア184」]、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン[チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商品名「ダロキュア1173」]などが挙げられ、反応波長帯域が通常よりも長波長にあり、400nm以上にも分光感度を有する光重合開始剤としては2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン[チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商品名「イルガキュア907」]などが挙げられる。
【0018】
当該電離放射線硬化性組成物は、溶剤を含んでもよいが、その場合塗布後に乾燥工程が必要となるため、コストを考えれば溶剤を含まないタイプ(ノンソルベントタイプ乃至無溶剤型)であることが好ましい。外観改善や塗工適性改善などのために溶剤を添加する場合には乾燥が必要となるが、溶剤の添加量が数%程度の量であるならば、硬化後に乾燥させてもよい。残留溶剤量はなるべく少ない方が好ましいが、物性、耐久性に影響がなければ完全にゼロでなくてもよい。
【0019】
プライマー層30の厚さ(導電性パターン層10の非形成部の中央部近傍における厚みで評価)は特に限定されないが、通常は硬化後の厚さで1μm〜100μm程度となるように形成される。また、プライマー層30の厚さは、通常は、導電性パターン層10とプライマー層30との合計値(総厚。導電性パターン層10の頂部と透明基材40の表面との高度差)の1〜50%程度である。
【0020】
(導電性パターン層)
本発明における電磁波シールド材100は、透明基材40上に形成されたプライマー層30上に導電性パターン層10が所定のパターンで設けられたもの(以下、「導電部材」ともいう。)を主要部材とする。
該パターン形状としてはメッシュ(網目乃至格子)形状が代表的なものであるが、その他、ストライプ(平行線群乃至縞模様)形状、螺旋形状等も用いられる。メッシュ形状の場合、単位格子形状は、正3角形、不等辺3角形等の3角形、正方形、長方形、台形、菱形等の4角形、6角形、8角形等の多角形、円、楕円等が用いられる。また、モアレを軽減する目的で、ランダム網目状、又は擬似ランダム網目状のパターンなども使用可能である。その線幅と線間ピッチも通常採用されている寸法であればよい。例えば、線幅は5〜50μmとすることができ、線間ピッチは100〜500μmとすることができる。開口率(電磁波シールドパターンの全面積中における開口部の合計面積の占める比率)は、通常、50〜95%程度である。またメッシュの電磁波シールドパターンとは別に、その周辺部の全周又はその一部にそれと導通を保ちつつ隣接した全ベタ等の接地パターンが設けられる場合もある。
なお、線幅は、より高透明のものを得る為により一層微細化することが求められている。この観点から、30μm以下、特に20μm以下とすることが好ましい。
【0021】
また、導電性パターン層10の厚さは、その導電性パターン層の抵抗値によっても異なるが、電磁波シールド性能と該導電性パターン層上への他部材の接着適性との兼ね合いから、その中央部(突起パターンの頂部)での測定において、通常、2μm以上50μm以下であり、好ましくは、5μm以上20μm以下である。
この導電性パターン層10は、金属粒子1とバインダー樹脂2を含む導電性組成物(導電性インキ或いは導電性ペースト)を、後述する印刷法により基材上又は透明プライマー層上に形成することで得ることができる。
【0022】
導電性組成物を構成する金属粒子1は、金、銀、白金、銅、ニッケル、錫、アルミニウムなどの低抵抗率金属の粒子である。
金属粒子の形状は、正多面体状、截頭多面体状等の各種の多面体状、球状、回転楕円体状、鱗片状、円盤状、樹枝状、繊維状等から選ぶことができる。特に、多面体状、球状、又は回転楕円体状が好ましい。これらの材料や形状は適宜混合して用いてもよい。
金属粒子の大きさは種類に応じて任意に選択されるので一概に特定できないが、好ましくは、平均粒子径が0.01〜10μm程度のものを用いることができる。得られる導電性パターン層の電気抵抗を低く(好ましくは、表面抵抗率が0.8Ω/□以下)して良好な電磁波シールド性を得る為には、平均粒子径は小さい方が好ましく、この観点からは平均粒子径0.1〜1μmが好ましい。また、粒子径の分布については、得られる導電性パターンの電気抵抗を低くする為には、分布幅が狭く単一粒子径に近いよりも、相対的に大粒子径の粒子と相対的に小粒子径の粒子との混合系からなる方がよい。
導電性組成物中の金属粒子の含有量は、金属粒子の導電性や粒子の形態に応じて任意に選択されるが、好適な電磁波シールド性能の発現、導電性パターン層の機械的強度の維持、及び印刷適性を兼ね備える為には、例えば導電性組成物の固形分100質量部のうち、金属粒子を40〜99質量部の範囲で含有させることができる。なお、本明細書において、平均粒子径というときは、粒度分布計、またはTEM(透過型電子顕微鏡)観察で測定した値を指している。
なお、観察により粒子径を測定する場合、粒子形状が球の場合は、その直径が粒子径である。また、粒子形状が非球形状の場合は、該粒子の外接球の直径をもって粒子径とする。
【0023】
本発明の電磁波シールド材の導電性パターン層内における金属粒子1の分布は、図1の断面図において概念的に図示するように、該導電性パターン層の頂部近傍(プライマー層から遠ざかる方向)においては、相対的に、隣接する粒子間の間隔が小さく、粒子数密度、即ち単位体積当りの粒子数が高く(密に)なり、一方、該導電性パターン層の底部近傍(プライマー層に近付く方向)においては、相対的に、隣接する粒子間の間隔が大きく、粒子数密度が低く(疎に)なる分布である。
プライマー層との界面に隣接する領域における金属粒子1の数密度を1としたときの導電性パターン層の頂部近傍における金属粒子の数密度の比は、1.5〜10程度の範囲が好ましい。
また、高導電性を発現し良好な電磁波シールド性を示す為には、隣接する金属粒子同士の平均粒子間隔としては、プライマー層との界面に隣接する領域において0.5〜3μm、頂部近傍において0〜0.5μmの範囲が好ましい。
かかる分布であるため、導電性パターン層の頂部近傍では、金属粒子は、緻密に集合し、各粒子間の電気的接触も良好になり、電気抵抗が下がり、電磁波シールド効果も高まる。また、プライマー層近傍において金属粒子の分布が疎であるので、透明基材側を外側に向けたときも、導電性パターン層の光反射は低減され、画像コントラストは良好である。
なお、導電性パターン層10が特に、メッシュ、ストライプ等の線條パターンから成る場合は、導電性パターン層10中における金属粒子1の分布状態は線條パターンの延在方向には依存性を持たない(延在方向には単位体積中の粒子数密度は一定)。その為、かかる線條パターンを含む導電性パターン層10の場合には、単位体積中の金属粒子1の数密度は、該線條パターンの主切断面(延在方向に直交する断面)における単位面積中の金属粒子1の数密度(面密度)で評価できる。即ち図1の如く、主切断面内において、金属粒子1の数の面密度がプライマー層30近傍に比べて頂部近傍の方が大きくなる分布であれば、すなわち、金属粒子1の数の体積密度もプライマー層30近くに比べて頂部近くの方が大きくなる分布であると判断してよい。
金属粒子1の面密度の測定は、導電性パターン層10の主切断面の顕微鏡(拡大)写真を撮り、該写真上において、プライマー層近傍から頂部近傍迄の間の特定の位置(点)を中心とした適当な測定面積内の金属粒子数を計数し、該測定面積で割り算することにより、該特定の位置における金属粒子数の面密度とする。
また、同様に、導電性パターン層10中における隣接する金属粒子1同士の間隔も、線條パターンの延在方向には依存性を持たない。その為、かかる線條パターンを含む導電性パターン層10の場合には、該線條パターンの主切断面における単位面積中の粒子間隔で評価できる。即ち図1の如く、主切断面内において、隣接する金属粒子1同士の間隔がプライマー層30近傍に比べて頂部近傍の方が小になる分布であれば、即ち、延在方向も含めた3次元空間内における隣接する粒子間の距離の分布についても、同様に、プライマー層30近くに比べて頂部近くの方が小になる分布であると判断してよい。
隣接する金属粒子1の間の間隔(距離)の測定は、導電性パターン層10の主切断面の顕微鏡(拡大)写真を撮り、該写真上において、プライマー層近傍から頂部近傍迄の間の特定の点に位置する金属粒子1について、該金属粒子からの距離が近い順に3乃至10個の他の金属粒子との間隔を測定し、これを平均した値をもって、該位置に存在する特定粒子についての、隣接する金属粒子間の間隔とする。
【0024】
導電性パターン層中における金属粒子1の密度分布を制御し、相対的に、該プライマー層近傍において分布が疎であり、導電性パターンの頂部近傍において密であるようにする為には、或いは隣接する金属粒子1同士の間隔が、相対的に、該プライマー層近傍において大であり、又該導電性パターン層の頂部近傍において小であるようにする為には、例えば、後述の凹版印刷法を応用した電磁波シールド材の製造方法において、版面凹部内に充填された導電性組成物上面の凹みに、透明基材上の流動状態のプライマー層を押圧する圧力を高めに設定すると共に、未硬化状態における該導電性組成物の粘度を低めに設定し、更に該導電性組成物を凹版凹部内で固化させずに、版面から離型後固化せしめることが有効である。
その他、これら金属粒子1の密度分布や配向状態は、導電性組成物のバインダー樹脂2の種類、金属粒子の材料と粒子径と粒子形状、バインダー樹脂と金属粒子との配合比、金属粒子と樹脂バインダーとの比重差、及び該導電性組成物の塗工条件や固化条件等に依存する。現実には、これら金属粒子の密度分布や配向状態に影響する各種条件から実験的に、求める金属粒子の密度分布及び配向に合致する条件を決定することになる。金属粒子1とバインダー樹脂2との比重差については、一般には、金属粒子として通常の金属を用い、バインダー樹脂として有機高分子化合物を用いる場合には、「金属粒子の比重>バインダー樹脂の比重」となる為、比重差のみを利用して金属粒子の数密度を前記の如くの分布にする場合は、頂部が重力の向きと同じ向き(下向き)にして導電性パターン層10を流動状態から固化せしめることが有効である。
【0025】
導電性組成物を構成するバインダー樹脂2としては、熱硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂、熱可塑性樹脂が使用可能である。なお、後述の電気抵抗低減化処理を施す場合は、酸又は温水にて溶解することのない非水溶性樹脂を用いる。かかるバインダー樹脂を例示すると、熱硬化性樹脂としては、例えば、メラミン樹脂、ポリエステル−メラミン樹脂、エポキシ−メラミン樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、熱硬化性アクリル樹脂、熱硬化性ポリウレタン樹脂、熱硬化性ポリエステル樹脂等の樹脂を挙げることができ、電離放射線硬化性樹脂としては、プライマーの材料として前記した物を挙げることができ、これらを1種単独で、或いは2種以上混合して用いる。熱可塑性樹脂としては、熱可塑性ポリエステル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、熱可塑性アクリル樹脂、熱可塑性ポリウレタン樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体等の樹脂を挙げることができ、これらを1種単独で、或いは2種以上混合して用いる。なお、熱硬化性樹脂を使用する場合、必要に応じて硬化触媒を添加してもよい。電離放射線硬化性樹脂を用いる場合は必要に応じて光重合開始剤を添加してもよい。
また、版の凹部への充填に適した流動性を得るために、これら樹脂は通常、溶剤に溶けたワニスとして使用する。導電性ペーストとして用いる溶剤の種類には特に制限はなく、一般的に印刷インキに用いられる溶剤の中から適宜選択して使用できる。溶剤の含有量は通常、10〜70質量%程度であるが、必要な流動性が得られる範囲でなるべく少ない方が好ましい。また、電離放射線硬化性樹脂を用いる場合には、もともと流動性があるため、必ずしも溶剤を必要としない。
【0026】
(導電性パターン層の形成方法)
所定のパターンの導電性パターン層10を形成するには、導電性組成物を特許文献2に記載の凹版印刷で印刷する。
この印刷法は、凹版の凹部のみにドクターブレードなどを利用して導電性組成物を充填し、これに液状プライマー層を片面に形成済みの透明基材を、該プライマー層が凹版に接する向きで加圧ローラで圧着するなどして該プライマー層を接触させて、接触している状態でプライマー層を液状から固体状に固化させた後、透明基材を凹版から離して離版させることで、透明基材上の固化したプライマー層上に導電性組成物を転移させて、印刷するものである。
【0027】
印刷後、つまり離版後、まだ液状である導電性パターン層10に対しては、乾燥操作、加熱操作、冷却操作、化学反応操作などを適宜行い、固化せしめて導電性の導電性パターン層10を完成させる。例えば、乾燥操作は、導電性組成物中の溶剤など不要な揮発成分を除去するため、加熱操作は、該乾燥や導電性組成物の熱硬化などの必要な化学反応を促進させるため、冷却操作は、加熱溶融した熱可塑性樹脂の導電性組成物やプライマー層の固化促進のため、化学反応操作は、加熱によらない電離放射線照射などのその他の手段による導電性組成物やプライマー層の化学反応を進行させるために行う。
また、導電性組成物は、版上で半硬化固化させ離版後に完全硬化させてもよい。
【0028】
一般に、凹版印刷では、導電性組成物を版面に供給し、ドクターブレード等で余剰の該組成物を掻き取って版凹部に該組成物を充填する際、充填された該組成物の表面に凹みが発生する。この凹みは、該組成物中の溶剤乾燥による体積收縮、掻き取り時の該組成物のレオロジー的挙動等に起因するものと考えられる。該凹部の為、透明基材との密着不良、透明基材上への該組成物の転移率低下という不具合を生じていた。
一方、特許文献2に記載の凹版印刷では、凹版凹部内に充填された導電性組成物の上部に窪み(凹み)が生じても、液状で流動性のプライマー層を介して印刷するので、印刷中にプライマー層を該窪みに流し込み隙間なく密着させた状態にでき、その後、プライマー層を固化させてから透明基材を凹版から離すので、透明基材上に固化したプライマー層30を介して所定パターンの導電性パターン層10を、細線でも、転移不足による断線や形状不良、インキ密着性不足などの印刷不良の発生なく形成できる。凹版印刷工程において、かくの如く凹版凹部内に充填されたインキの表面に生じる窪みをプライマー層が流入、充填する結果、得られた導電性部材は、プライマー層の厚みが、前記導電性パターン層が形成されている部分の厚みが前記導電性パターン層が形成されていない部分の厚みよりも厚くなる。
【0029】
導電性組成物を凹版凹部内から該プライマー層を介して透明基材上に転写し、固化せしめて導電性パターン層とした後、更に、(i)温水処理として、水分存在下、且つ比較的高温下にて処理する、及び/又は(ii)酸処理として、酸に接触させることによって、該導電性パターンの体積抵抗率、更には表面抵抗率が低下し、導電性能が向上する。
(i)の温水処理は、水温30〜100℃の温水の中に導電部材を浸漬したり、温水を導電部材上に掛け流したり、或いは気温30〜100℃で相対湿度60%以上の雰囲気中に暴露する方法が好ましく、処理時間は、概ね5分〜20秒程度である。
(ii)の酸処理において、酸としては、特に限定されず、種々の無機酸、有機酸から選択できるが、好ましくは塩酸、硫酸、クエン酸およびその水溶液であり、酸による処理時間は数分以下で十分であり、処理温度は、常温で十分である。酸で処理する方法は特に限定されないが、酸の溶液の中へ導電部材を浸漬させる方法が、導電性向上効果に優れるため好ましく、酸の濃度は、好ましくは1mol/L以下、より好ましくは0.1mol/L以上である。酸処理としては、1種類の酸を用い1回接触させる他、2種類以上の酸を用い順次別の酸に接触させても良い。特に、電磁波シールド材を、先ず塩酸に浸漬し、しかる後クエン酸に浸漬すると、塩酸のみ或いはクエン酸のみに1回浸漬するよりも、電気抵抗低減化効果は良好である。
これら電気抵抗低減化処理のうち、電気抵抗低減化効果、作業性の点から、(ii)の酸処理の後、引き続いて(i)の温水処理を行うことが好ましい。
かかる電気抵抗低減化処理によって、導電性パターン全体の表面抵抗率は処理前の80〜30%程度に減少する(見かけの体積抵抗率も同様に処理前の80〜30%程度となる)。
【0030】
上記の電気抵抗低減化処理によって表面抵抗率が減少する理由は、導電性パターン層10の横断面の電子顕微鏡写真による観察から、該電気抵抗低減化処理によって、間隔0で隣接する該金属粒子1同士の少なくとも一部が互いに融合(融着)した連なりを有してなる部分を形成しているためと推定される。ここで融合とは、電子顕微鏡観察において、隣接する金属粒子の間隔0で接する部分の境界面(線)が消失し、該接する部分において隣接粒子が一体化している状態を云う。一方、上記の電気抵抗低減化処理を施す前の状態においては、電子顕微鏡観察において、隣接する金属粒子の間隔0で接する部分には境界面(線)が存在し、単に接触している状態に留まっている。
また、上記の電気抵抗低減化処理を施した後も、尚、導電性パターン層10中において金属粒子1同士の間の空隙にはバインダー樹脂2が存在し、金属粒子1同士を、これら金属粒子同士が融合している領域を除いた領域において、互いに結合せしめている。言葉を換えて言えば、導電性パターン層10は、図1の断面図に示すように、バインダー樹脂2中に金属粒子1が複数分散してなると共に、これら金属粒子1同士の少なくとも一部の間において、隣接する金属粒子1同士が融合し、融合した金属粒子1同士が連なって電流を流し得る経路が形成されている。
【0031】
(粘着剤層)
本発明の電磁波シールド材100において、導電部材の導電性パターン層10側には粘着剤層20が設けられる。
該粘着剤層としては、アクリル系粘着剤であって、その上に設けられる光学機能層との良好な接着性のために、カルボキシル基を含有するアクリル系粘着剤を使用する。そして、該粘着剤層は、導電性パターン層10(中の金属粒子1)の着色を防止するために、防錆剤を添加する。
該防錆剤の種類としては、特に制限はなく、例えば、1H−ベンゾトリアゾール、1H−ベンゾトリアゾール・ナトリウム塩、1H−ベンゾトリアゾール・カリウム塩、1H−トリルトリアゾール又は1H−ベンゾトリアゾール・アミン塩等のベンゾトリアゾール系化合物、フェニルテトラゾール系化合物、2−アミノベンゾチアゾール、2−アミノピリジン、2−アミノピリミジン、2−アミノキノリン、2−アミノキナゾリン、4−アミノキナゾリン、2−アミノキノキサリン,8−アミノプリン,2−アミノベンゾイミダゾール,アミノトリアジン又はアミノトリアゾール及びこれらの置換誘導体、等が用いられる。
これらの中でも、ベンゾトリアゾール系化合物が好ましい。中でも特に、その防錆性能、その取り扱い易さ等から、1H−ベンゾトリアゾールがより好ましい。
【0032】
カルボキシル基を含有するアクリル系粘着剤としては、モノマーとして少なくとも(メタ)アクリル酸アルキルエステルのモノマーとカルボキシル基を有するモノマーを共重合成分とする共重合体を用いる。なお、本願明細書において(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸又はメタクリル酸を意味し、(メタ)アクリレートとはアクリレート又はメタクリレートを意味する。
該共重合体において、(メタ)アクリル酸アルキルエステルのモノマーとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ラウリル等、炭素原子数1〜18程度のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーの1種以上が用いられる。
カルボキシル基を有するモノマーとしては、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマール酸等のカルボキシル基を有するビニルモノマーの1種以上が用いられる。
また、該共重合体には、その他モノマーとして、(メタ)アクリル酸2ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2ヒドロキシ3フェニルオキシプロピル等の水酸基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル、スチレン、酢酸ビニル、ハロゲン化ビニル化合物等の1種以上のビニルモノマーが用いられてよい。
【0033】
1H−ベンゾトリアゾールの粘着剤層中の含有量は、0.1〜20質量%であることが好ましく、0.5〜5質量%であることがさらに好ましい。
【0034】
本発明の1H−ベンゾトリアゾール含有粘着剤層20は、前記粘着剤及び1H−ベンゾトリアゾールを適当な溶剤に溶解させた粘着剤溶液からなる塗工液を導電性パターン層10の上に塗工し、塗膜を形成させた後、乾燥させることにより形成される。
或いは、予め離型シート上に塗工形成し乾燥させておいた粘着剤層20を、導電性パターン層10上に該粘着剤層側が該導電性パターン層側と対峙するようにして積層し、しかる後、該離型シートのみを剥離除去する方法(所謂転写塗工法)によって形成することもできる。
溶剤としては、例えばヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;塩化メチレン、塩化エチレンなどのハロゲン化炭化水素、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、1−メトキシ−2−プロパノールなどのアルコール;アセトン、メチルエチルケトン、2−ペンタノン、メチルイソブチルケトン、イソホロンなどのケトン;酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル;エチルセロソルブなどのセロソルブ系溶剤などが挙げられる。
【0035】
これら1H−ベンゾトリアゾール含有粘着剤層20の厚さとしては、5〜800μmの範囲が好ましく、10〜500μmの範囲がさらに好ましく、20〜300μmの範囲が特に好ましい。なお、当該粘着剤層は、被着体と充分な接着力を確保する、及び導電性パターン層10の凹部内に気泡を残留させないという観点から、導電部材において導電性パターン層10の凹凸を完全に充填し、該粘着剤層の表面が平坦面となるように塗工することが好ましい。
【0036】
〔複合化フィルタ〕
こうして得られた電磁波シールド材100の粘着剤層20上(表面)に、又は、電磁波シールド材100の透明基材側(裏面)に、或いは、それら両面に、光学機能層200を設けることにより、複合化フィルタ1000を得る。
粘着剤層20は、その上に光学機能層を設けるときは、接着層或いは平坦化層の役割を担い、透明基材側にのみ光学機能層を設けるときは、複合化フィルタを画像表示装置本体又は画像表示装置基板に接着する役割を担ってもよい。
光学機能層200としては、従来公知のものが用いられ、近赤外線吸収層、ネオン光吸収層、紫外線吸収層、反射防止層、防眩層、薄膜ミクロルーバ層などを挙げることができる。
光学機能層の形成方法としては、反射防止層の場合、予め透明樹脂シートからなる支持体上に形成した反射防止層を貼り合わせて積層する方法、或いは他の光学機能層構成層上に直接反射防止層を塗工する方法のいずれでもよい。また、近赤外線吸収層、ネオン光吸収層など吸収色素を用いる場合は、これら吸収色素を含有させた樹脂フィルムを貼り合わせてもよく、或いはこれら吸収色素を前記粘着剤層20中に含有させて、該粘着剤層にその機能を持たせることもできる。
複合化フィルタ1000は、単品で、或いは更に各種の他の機能層を積層したものをディスプレイ用フィルタとして、反射防止層又は防眩層を含む光学機能層を観察者側に向けてディスプレイパネルの前面に設置され、本発明の複合化フィルタを設置した画像表示装置が得られる。他の機能層としては、耐衝撃層、帯電防止層、ハードコート層、防汚層、抗菌層、防黴層などを挙げることができる。
【0037】
〔用途〕
本発明の複合化フィルタは、各種用途に使用可能である。特に、各種の、テレビジョン受像装置、測定機器や計器類、事務用機器、医療機器、遊戯機器、電算機器、電話機、電飾看板(照明広告板)等の表示部等に用いられるPDP、CRT、LCD、ELなどの画像表示装置の前面フィルタ用として好適であり、特にPDP用として好適である。また、その他、住宅、学校、病院、事務所、店舗等の建築物の窓、車輛、航空機、船舶等の乗物の窓、電子レンジ等の各種家電製品の窓等の電磁波遮蔽用途にも使用可能である。
【実施例】
【0038】
以下に、実施例と比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例により何ら限定されるものではない。
【0039】
実施例1
(1)粘着剤層形成用塗工液の調製
酸価6.8のアクリル系粘着剤(商品名:SK2094、綜研化学(株)製)100質量部に、1H−ベンゾトリアゾールを1質量部添加し、更にMIBKを40質量部添加して撹拌、混合して、粘着剤層形成用の塗工液を調製した。
(2)導電部材の作製
先ず、透明基材40として、片面にメラミン樹脂系の易接着層が形成された幅1000mmで厚さ100μmの長尺ロール巻の無色透明2軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを用意した。供給部にセットしたPETフィルムを繰り出し、易接着層面にプライマー層用の紫外線硬化性樹脂組成物を厚さ5μmとなるように塗布形成した。塗布方式は、通常のグラビアリバースロールコート法を採用し、紫外線硬化性樹脂組成物としては、エポキシアクリレートプレポリマー35質量部、ウレタンアクリレートプレポリマー12質量部、フェノキシエチルアクリレートからなる単官能アクリレートモノマー44質量部、エチレンオキシド変性イソシアヌル酸トリアクリレートからなる3官能アクリレートモノマー9質量部、さらに光開始剤として1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商品名:イルガキュア184)1質量部添加したものを使用した。
次に、未硬化のプライマー層が形成されたPETフィルムを転写工程を行う凹版ロールに供するが、それに先だって、開口部の線幅が20μmで線ピッチが300μm、版深20μmの正方格子状のメッシュパターンとなる凹部が形成された凹版ロールの版面に、導電性組成物をピックアップロールで塗布し、ドクターブレードで凹部内以外の導電性組成物を掻き取って凹部内のみに導電性組成物を充填させた。凹部に充填された導電性組成物の表面には凹部が生じていた。導電性組成物を凹部内に充填させた状態の凹版ロールと、ニップロールとの間に、未硬化で液状のプライマー層が形成されたPETフィルムを供給し、凹版ロールに対するニップロールの押圧力(付勢力)によって、プライマー層を凹部内に存在する導電性組成物の凹みに流入させ、導電性組成物とプライマー層とを隙間なく密着させると共に、該プライマーの一部を凹部内の該導電性組成物内に浸透せしめた。なお、用いた導電性組成物は、以下の組成の銀ペーストを用いた。
金属粒子1として平均粒子径約2μmの鱗片状銀粉末93質量部、バインダー樹脂2として熱可塑性のポリエステルウレタン樹脂7質量部、溶剤としてブチルカルビトールアセテート25質量部を配合し、十分に攪拌混合した後、3本ロールで混練りして導電性組成物を作製した。
次いで行われる転写工程は以下の通りである。先ず、プライマー層が形成されたPETフィルムを、そのプライマー層が凹版ロールの版面側に対向した状態で、凹版ロールとニップロールとの間に挟む。その凹版ロールとニップロールとの間でPETフィルムのプライマー層は版面に押し付けられる。未硬化のプライマー層は流動性を有しているので、版面に押し付けられた未硬化のプライマー層は、導電性組成物が充填した凹部内にも流入し、凹部内表面に生じた導電性組成物の凹みを充填する。
その後、さらに凹版ロールが回転してフュージョンUVシステムズ・ジャパン社製DバルブからなるUVランプによって紫外線が照射され(照射線量700mJ/cm2)、紫外線硬化性樹脂組成物の硬化物からなる未硬化プライマー層が硬化する。プライマー層の硬化により、凹版ロールの凹部内の導電性組成物はプライマー層に密着し、その後、出口側のニップロールによってフィルムが凹版ロールから剥離され、硬化したプライマー層2上には導電性組成物層が転写形成される。このようにして得られた転写フィルムを、導電性組成物層側を下向きにして、110℃の乾燥ゾーンを通過させることで銀ペーストの溶剤を蒸発させて固化せしめ、プライマー層2上にメッシュパターンからなる導電性パターン層3を形成した。このときの導電性パターン層10が存在するパターン部分の厚さ(導電性パターン層が形成されているメッシュパターン部分とそれ以外の部分との厚さの差)は19μmで、版の深さの95%の厚さで転移しており、版の凹部内の銀ペーストが高い転移率で転移していた。転移後の凹部内を観察したところ、ペーストの版残りは見られず、また、メッシュパターンの断線や形状不良も見られなかった。
導電性パターン層の主切断面を電子顕微鏡で拡大撮影して観察した結果、導電性パターン層中の金属粒子(銀粒子)の分布は、該導電性パターン層の頂部に行くほど密になり、逆にプライマー層側に行くほど疎になる様な疎密で分布していることが認められた。メッシュ線條部に直交する主切断面内において、単位断面積当たりの金属粒子の個数は、プライマー層と隣接する部分では、平均1個/μm2に対し、頂部近傍では平均3個/μm2であった。
また、電子顕微鏡観察により、該導電性パターン層の頂部の隣接金属粒子同士の間隔(距離)、及びプライマー層との界面近傍の隣接金属粒子同士の間隔を測定し、それぞれの平均を求めた結果、頂部の平均金属粒子間隔が0.5μm、プライマー層との界面近傍の平均金属粒子間隔は1.5μmであった。
得られた導電部材の導電性パターン層の表面電気抵抗を測定(室温雰囲気(気温23℃、相対湿度50%)中で実施)したところ、表面抵抗率は1.0Ω/□であった。
次いで、電気抵抗低減化処理を以下の方法で行った。
上記で得た導電部材を1質量%の塩酸を含んだ25℃の塩酸水溶液を満たした酸処理槽に30秒間浸漬することにより酸処理を施し、酸処理槽から取り出して、水温90℃の純水からなる温水槽に30秒間浸漬することにより温水処理を施し、しかる後、水分を飛ばす程度に乾燥させて、電気抵抗低減化処理を施した導電部材を得た。
この電気抵抗低減化処理を施した導電部材の表面抵抗率は、0.5Ω/□であり、表面抵抗率の低下が確認された。
【0040】
(3)粘着剤層の形成
(2)で作製した電気抵抗低減化処理を施した導電部材の導電性パターン層側に、上記(1)で調製した1H−ベンゾトリアゾール含有粘着剤層形成用の粘着剤形成用塗工液を、乾燥後の厚さが25μmとなるように、マイヤーバーNo.16で塗布した。次いで、90℃で1分間熱乾乾燥して、1H−ベンゾトリアゾールを含有してなる粘着剤層を形成した。
以上により、図1の断面図の如くの構成の、実施例1の電磁波シールド材100を得た。
【0041】
(4)耐湿熱試験
実施例1の電磁波シールド材100の耐湿熱試験[相対湿度90%RH、温度80℃の雰囲気中で72時間放置]を行ったところ、導電性パターン層に目視で識別可能な程度の着色はなかった。
【0042】
比較例1
実施例1において、1H−ベンゾトリアゾールを含有しない粘着剤形成用塗工液を調製し、これを電気抵抗低減化処理を施した導電部材の導電性パターン層側に塗布した以外は実施例1と同様にして、比較例1の電磁波シールド材を得た。
耐湿熱試験を行ったところ、導電性パターン層は緑色に着色した。
【符号の説明】
【0043】
1 金属粒子
2 樹脂バインダー
3 アクリル樹脂粘着剤
4 1H−ベンゾトリアゾール
10 導電性パターン層
20 粘着剤層
30 プライマー層
40 透明基材
100 電磁波シールド材
200 光学機能層
1000 複合化フィルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基材と、該透明基材上に形成されたプライマー層と、該プライマー層上に所定のパターンで形成された導電性パターン層を有し、該導電性パターン層形成側にカルボキシル基含有アクリル樹脂からなる粘着剤層を積層してなる電磁波シールド材であって、
該導電性パターン層は金属粒子とバインダー樹脂を含んで成り、該導電性パターン層中の該金属粒子の分布が、相対的に、該プライマー層近傍において分布が疎であり、又該導電性パターン層の頂部近傍において密であり、
かつ、カルボキシル基含有アクリル樹脂からなる粘着剤層は1H−ベンゾトリアゾールを含有する
ことを特徴とする電磁波シールド材。
【請求項2】
透明基材と、該透明基材上に形成されたプライマー層と、該プライマー層上に所定のパターンで形成された導電性パターン層を有し、該導電性パターン層形成側にカルボキシル基含有アクリル樹脂からなる粘着剤層を積層してなる電磁波シールド材であって、
該導電性パターン層は金属粒子とバインダー樹脂を含んで成り、該導電性パターン層中の隣接する該金属粒子同士の間隔が、相対的に、該プライマー層近傍において大であり、又該導電性パターン層の頂部近傍において小であり、
かつ、カルボキシル基含有アクリル樹脂からなる粘着剤層は1H−ベンゾトリアゾールを含有する
ことを特徴とする電磁波シールド材。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の電磁波シールド材の一面又は両面に光学機能層を積層して成る複合化フィルタ。
【請求項4】
請求項3に記載の複合化フィルタを、ディスプレイパネルの前面側に設置した画像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−253852(P2011−253852A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−125012(P2010−125012)
【出願日】平成22年5月31日(2010.5.31)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】