説明

電磁波抑制フラットヤーン及びこれを用いた電磁波抑制製品並びにそれらの製造方法

【課題】柔軟性に優れ、屈曲部分やハーネス・電線に貼り付けても、クラックが入ったり、剛直化したりすることなく、電子機器の軽薄短小化を可能とする電磁波抑制フラットヤーン及びこれを用いた電磁波抑制製品並びにそれらの製造方法を提供すること。
【解決手段】IEC−62333に準拠して測定した反射損失(S11)の値が電磁波周波数300MHz〜18GHzの全域にわたり−1dB以下であり、かつ、伝送損失(S21)の値が電磁波周波数300MHz〜18GHzの全域にわたり−1dB以下である電磁波吸収性能を有する電磁波吸収樹脂層(I)と該電磁波吸収樹脂層(I)の一面に樹脂層(II)を有するか、又は、一面に樹脂層(II)及び他面に樹脂層(III)を有し、織物、編物又は組紐に供されることを特徴とする電磁波抑制フラットヤーン及びこれを用いた電磁波抑制製品並びにそれらの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電磁波抑制フラットヤーン及びこれを用いた電磁波抑制製品並びにそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話などのエレクトロニクス機器の急速な普及や、機器の集積化、高性能化による耐ノイズ性能の低下、機器の小型軽量化のための筐体のプラスチック化による電磁波シールド能力の低下などによる電磁波障害が問題となっている。
【0003】
従来、特許文献1には、電磁波シールド織物において、表面に露出する金属線材及び導電性のカーボン繊維の面積の割合をできるだけ大きくすることによって、より大きな電磁波遮蔽性能を有しながら、通常の織物と同じように織機で織ることができる電磁波吸収糸が開示されている。
【0004】
特許文献2には、基体と、基体上に形成された金属薄膜と、金属膜上に形成され、コーティング材と抗菌性粒子とを有するコーティング層とを少なくとも備えた抗菌性電磁波吸収製品が開示されている。金属薄膜及び抗菌性粒子は、電磁波吸収性を有し、抗菌性粒子はコーティング層の厚さ方向に多層状となるように配された、良好な電磁波吸収性と抗菌性をあわせ持つために、得られる製品は、抗菌性電磁波吸収能がある。
【0005】
しかし、特許文献1では金属線材を織った織物を使用し、また特許文献2では、金属薄膜を使用しているため、柔軟性に劣り、屈曲部分やハーネス・電線に貼り付けると、クラックが入ったり、剛直化したりして、電子機器の軽薄短小化の妨げとなる問題がある。
【0006】
また従来文献には、樹脂製の電磁波抑制フラットヤーンについては開示がない。
【特許文献1】特開2007−169804号公報
【特許文献2】特開2000−183563号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、柔軟性に優れ、屈曲部分やハーネス・電線に貼り付けても、クラックが入ったり、剛直化したりすることなく、電子機器の軽薄短小化を可能とする電磁波抑制フラットヤーン及びこれを用いた電磁波抑制製品並びにそれらの製造方法を提供することを課題とする。
【0008】
本発明の他の課題は以下の記載によって明らかになる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題は以下の各発明によって解決される。
【0010】
(請求項1)
IEC−62333に準拠して測定した反射損失(S11)の値が電磁波周波数300MHz〜18GHzの全域にわたり−1dB以下であり、かつ、伝送損失(S21)の値が電磁波周波数300MHz〜18GHzの全域にわたり−1dB以下である電磁波吸収性能を有する電磁波吸収樹脂層(I)と該電磁波吸収樹脂層(I)の一面に樹脂層(II)を有するか、又は、一面に樹脂層(II)及び他面に樹脂層(III)を有し、織物、編物又は組紐に供されることを特徴とする電磁波抑制フラットヤーン。
【0011】
(請求項2)
前記電磁波吸収樹脂層(I)が、ポリウレタン樹脂と、電磁波吸収性能を有する金属粒子粉末及び又はカーボンブラック粉末からなることを特徴とする請求項1記載の電磁波抑制フラットヤーン。
【0012】
(請求項3)
前記樹脂層(II)又は前記樹脂層(III)が、ポリエステル樹脂層、ポリエーテルイミド樹脂層、ポリイミド樹脂層、ポリフェニレンサルファイド樹脂層又はポリウレタン樹脂層から選ばれる1種であることを特徴とする請求項1又は2記載の電磁波抑制フラットヤーン。
【0013】
(請求項4)
請求項1〜3の何れかに記載の電磁波抑制フラットヤーンを素材として、織物、編物又は組紐の何れかに形成されることを特徴とする電磁波抑制製品。
【0014】
(請求項5)
織物又は編物に用いられる電磁波抑制フラットヤーンの製造方法において、ポリウレタン樹脂と、金属粒子粉末及び又はカーボンブラック粉末とを攪拌混合し、電磁波吸収樹脂組成物溶液を作成し、樹脂層(II)上に、前記電磁波吸収樹脂組成物溶液を塗布・乾燥して電磁波吸収樹脂層(I)を形成して2層構成の電磁波抑制フィルムを製造し、該積層フィルムをスリットすることを特徴とする電磁波抑制フラットヤーンの製造方法。
【0015】
(請求項6)
電磁波吸収樹脂層(I)と樹脂層(II)の積層フィルムに、電磁波吸収樹脂層(I)の樹脂層(II)が積層されている面の反対面に、他の樹脂層(III)を形成して3層構成の電磁波抑制フィルムを製造することを特徴とする請求項5記載の電磁波抑制フラットヤーンの製造方法。
【0016】
(請求項7)
織物又は編物に用いられる電磁波抑制フラットヤーンの製造方法において、ポリウレタン樹脂を溶剤で溶解した樹脂溶液と、金属粒子粉末及び又はカーボンブラック粉末とを攪拌混合し、電磁波吸収樹脂組成物溶液を作成し、剥離紙上に、前記電磁波吸収樹脂組成物溶液を塗布・乾燥して電磁波吸収樹脂層(I)を形成し、前記電磁波吸収樹脂層(I)の上に、樹脂層(II)を形成し、その後、前記剥離紙を剥離して、積層フィルムを製造し、該積層フィルムをスリットすることを特徴とする電磁波抑制フラットヤーンの製造方法。
【0017】
(請求項8)
前記樹脂層(II)又は前記樹脂層(III)が、ポリエステル樹脂層、ポリエーテルイミド樹脂層、ポリイミド樹脂層、ポリフェニレンサルファイド樹脂層又はポリウレタン樹脂層から選ばれる11種であることを特徴とする請求項5〜7の何れかに記載の電磁波抑制フラットヤーンの製造方法。
【0018】
(請求項9)
前記電磁波吸収樹脂層(I)が、IEC−62333に準拠して測定した反射損失(S11)の値が電磁波周波数300MHz〜18GHzの全域にわたり−1dB以下であり、かつ、伝送損失(S21)の値が電磁波周波数300MHz〜18GHzの全域にわたり−1dB以下である電磁波吸収性能を有することを特徴とする請求項5〜8の何れかに記載の電磁波抑制フラットヤーンの製造方法。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、柔軟性に優れ、屈曲部分やハーネス・電線に貼り付けても、クラックが入ったり、剛直化したりすることなく、電子機器の軽薄短小化を可能とする電磁波抑制フラットヤーン及びこれを用いた電磁波抑制製品ならびにそれの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0021】
本発明の電磁波抑制フラットヤーンは、織物、編物又は組紐に用いられるものであって、IEC−62333に準拠して測定した反射損失(S11)の値が電磁波周波数300MHz〜18GHzの全域にわたり−1dB以下であり、かつ、伝送損失(S21)の値が電磁波周波数300MHz〜18GHzの全域にわたり−1dB以下である電磁波吸収性能を有する電磁波吸収樹脂層(I)と該電磁波吸収樹脂層(I)の一面に樹脂層(II)を有するか、又は、一面に樹脂層(II)及び他面に樹脂層(III)を有するものである。
【0022】
即ち、上記の特性を有する電磁波吸収樹脂層(I)の一面に樹脂層(II)が積層されるか、あるいは一面に樹脂層(II)及び他面に樹脂層(III)が積層されているので、フラットヤーンの製造性に優れ、またそれ自体の強度に優れ、これを用いて製造される編物などの柔軟性に優れる。その結果、屈曲部分やハーネス・電線に貼り付けても、クラックが入ったり、剛直化したりすることなく、電子機器の軽薄短小化を可能とする。
【0023】
本発明においては、電磁波吸収樹脂層(I)の伝送損失(S21)及び反射損失(S11)を規定しているが、本発明の電磁波抑制フラットヤーンを織物又は編物に供される場合にも同等な特性が得られる。従来、伝送損失(S21)及び反射損失(S11)が両方とも所定の特性を示す電磁波吸収樹脂層(I)を用いたフラットヤーンは知られておらず、本発明者らが新規に提供するものである。
【0024】
本発明において、伝送損失(S21)及び反射損失(S11)の好適な範囲は、以下の表1に示すとおりである。
【0025】
【表1】

【0026】
なお参考までに、電磁波発生部分とその電磁波周波数について例示すると、ワンセグテレビでは470〜770MHzであり、携帯電話では810〜940MHz、1429〜1501MHzであり、本発明の電磁波抑制フラットヤーンを用いることで、これらの電磁波を吸収する。
【0027】
電磁波吸収樹脂層(I)に用いられる樹脂としては、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ブチラール樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリアセタール樹脂、酢酸ビニル樹脂、フッ素樹脂などが挙げられ、中でもポリウレタン樹脂が樹脂層の柔軟性や強度を発揮する上で好ましい。
【0028】
電磁波吸収樹脂層(I)には、電磁波吸収性を有する金属粒子粉末及び又は導電性を有する素材の粉末が含有される。
【0029】
電磁波吸収性を有する金属としては、アルミニウム、銅、ニッケル、銀、亜鉛、錫、クロム、金、白金、鉄、コバルト、ジルコニウム、モリブテン、チタンから選択される1種又は2種以上の合金、ハロゲン化物、錯体、酸化物、硫化物が挙げられ、中でも磁性粉であるマグネタイト(Fe)や、Fe−Si−Al、FeSiのような合金が好ましい。
【0030】
電磁波吸収性を有する金属粒子粉末は、粉砕機で粉砕し、その後分級して粗大粒子を除去したものが好ましく用いられる。
【0031】
分級後の粉末粒子の平均粒子径は、0.1〜200μmの範囲が好ましく、より好ましくは0.15〜150μmであり、特に好ましくは0.2〜100μmの範囲である。
【0032】
本発明では、篩のメッシュサイズを選択して粒度分布を設定し、篩のメッシュサイズは250μmが好ましく、より好ましくは200μmであり、特に好ましくは125μmである。
【0033】
分級して粗大粒子を除去しない金属粒子粉末を用いると、電磁波吸収樹脂層(I)の表面から突出する部位が生じたりして、樹脂層内にピンホールや気泡が発生し、フラットヤーンの製造の際に破断したりするおそれがある。
【0034】
金属粒子粉末の形状は、球状、扁平状、棒状、針状、不定形等のいかなる形状でもよい。
【0035】
導電性を有する素材の粉末としては、カーボンブラックが挙げられる。カーボンブラックの平均粒子径は10〜60nmが好ましい。平均粒子径の測定方法は、電子顕微鏡による算術平均法による。
【0036】
配合量は樹脂100重量部に対して、電磁波吸収性を有する金属粒子粉末は0〜900重量部が好ましく、カーボンブラックは、10〜500重量部が好ましい。
【0037】
また、電磁波吸収樹脂層(I)には、難燃剤(例えばメラミン被覆ポリリン酸アンモニウムなど)を配合することが好ましく、その他必要に応じて有機顔料、無機顔料、光安定剤など各種の添加剤を添加することができる。
【0038】
電磁波吸収樹脂層(I)の厚みは、5〜500μmの範囲が好ましく、より好ましくは、10〜100μmの範囲である。
【0039】
本発明では、電磁波吸収樹脂層(I)の一面に樹脂層(II)が積層されるか、あるいは一面に樹脂層(II)及び他面に樹脂層(III)が積層される態様を含む。必要により、電磁波吸収樹脂層(I)と、樹脂層(II)や樹脂層(III)の間に中間層を設けることもできる。更に樹脂層(II)や樹脂層(III)の外面に樹脂層を設けることもできる。
【0040】
樹脂層(II)や樹脂層(III)に用いられる樹脂としては、電磁波吸収樹脂層(I)に用いられる樹脂を用いることもでき、更にポリエステル樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂などが挙げられ、特に、ポリエステル樹脂層、ポリエーテルイミド樹脂層、ポリイミド樹脂層、ポリフェニレンサルファイド樹脂層又はポリウレタン樹脂層から選ばれる1種が好ましい。
【0041】
また、樹脂層(II)や樹脂層(III)には、難燃剤(例えばメラミン被覆ポリリン酸アンモニウムなど)を配合することが好ましく、その他必要に応じて有機顔料、無機顔料、光安定剤など各種の添加剤を添加することができる。
【0042】
樹脂層(II)や樹脂層(III)は、製品フィルムをそのまま用いたり、あるいは塗布したりして形成できる。
【0043】
塗布形成に用いられる樹脂の重量平均分子量は、5万〜100万が好ましく、この範囲を下回ると、実用物性が得られず、この範囲を上回ると、溶融粘度や溶剤と溶解した際の粘度が高すぎるため、樹脂層形成の際の成膜加工性に劣る。
【0044】
また樹脂層(II)や樹脂層(III)に用いられる樹脂のガラス転移点は、−20℃以上が好ましく、より好ましくは−10℃以上である。上記下限値を下回ると、得られたフラットヤーンがブロッキングを起こすおそれがある。
【0045】
樹脂層(II)と樹脂層(III)を設ける場合、同じ樹脂を用いてもよいし、別の樹脂を用いてもよい。
【0046】
従って、本発明の電磁波抑制フラットヤーンの層構成は、電磁波吸収樹脂層(I)/樹脂層(II)の2層構成、樹脂層(III)/電磁波吸収樹脂層(I)/樹脂層(II)の3層構成などが挙げられる。
【0047】
次に、本発明の織物、編物又は組紐に用いられる電磁波抑制フラットヤーンの製造方法の一例を以下に説明する。
【0048】
電磁波吸収樹脂層(I)に用いられる例えばポリウレタン樹脂を溶剤で溶解して樹脂溶液を作成する。溶剤としては、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、トルエン、メチルエチルケトン(MEK)などを混合して用いることができる。
【0049】
次いで、上記の樹脂溶液と、金属粒子粉末及び又はカーボンブラック粉末とを攪拌混合して電磁波吸収樹脂組成物溶液を作成する。攪拌混合手段は特に限定されない。
【0050】
本発明では、金属粒子粉末とカーボンブラック粉末の両方を使用してもよいし、いずれか一方を使用することもできる。金属粒子粉末は、粉砕機で粉砕後、分級して粗大粒子を除去したものを用いることが好ましい。
【0051】
次いで、樹脂層(II)上に、前記電磁波吸収樹脂組成物溶液を例えばドクターブレードを用いて、塗布・乾燥して電磁波吸収樹脂層(I)を形成して2層積層フィルムを製造する。
【0052】
乾燥温度は、50〜250℃が好ましく、乾燥時間は、5秒〜30分が好ましい。
【0053】
またこの電磁波吸収樹脂層(I)の樹脂層(II)が積層されている面の反対面に、樹脂層(III)を形成して3層構成の電磁波抑制フィルムを製造する。
【0054】
以上の積層フィルムの製造方法とは異なった以下の方法も好ましい。
【0055】
ポリウレタン樹脂を溶剤で溶解した樹脂溶液と、金属粒子粉末及び又はカーボンブラック粉末とを攪拌混合し、電磁波吸収樹脂組成物溶液を作成し、剥離紙上に、前記電磁波吸収樹脂組成物溶液を塗布・乾燥して電磁波吸収樹脂層(I)を形成し、前記電磁波吸収樹脂層(I)の上に、樹脂層(II)を形成し、その後、前記剥離紙を剥離して、積層フィルムを製造することもできる。
【0056】
次に、以上のようにして製造された積層フィルムをスリットする。スリット手段は特に限定されず、通常のスリッター(カッター)を使用できる。
【0057】
スリットによって、本発明の電磁波抑制フラットヤーンを得ることができる。
【0058】
本発明の電磁波抑制フラットヤーンの太さは、何等制限されず、目的に応じて任意に設定することができるが、一般的には50〜10,000デシテックスであり、好ましくは100〜5,000デシテックスであり、より好ましくは150〜3,000デシテックスである。
【0059】
本発明の電磁波抑制フラットヤーンの肉厚は、5〜1000μmが好ましく、より好ましくは10〜500μmである。
【0060】
本発明の電磁波抑制フラットヤーンの幅は、0.3〜100mmが好ましく、より好ましくは0.4〜80mmであり、更に好ましくは0.45〜50mmであり、特に好ましくは0.5〜5mmである。
【0061】
本発明の電磁波抑制フラットヤーンの強度は、0.005〜100N/mmが好ましく、より好ましくは0.01〜50N/mmである。0.005N/mm未満では、結束強度が乏しいため実用的でなく、100N/mmを越えると、強度が強すぎるため、硬くなりすぎ柔軟なシートが得られない。
【0062】
電磁波抑制フラットヤーンの伸度は、5〜1000%の範囲が好ましく、より好ましくは10〜50%の範囲である。5%未満では得られる布やシートの柔軟性、追従性が悪く、耐衝撃性も低い。1000%を越えると、伸びが大きすぎるため機械的安定性が低下する。
【0063】
本発明においては、以上の電磁波抑制フラットヤーンを素材として、電磁波抑制織物や電磁波抑制組紐などの電磁波抑制製品に形成することができる。
【0064】
電磁波抑制織物の製造方法は、上記のようにして得られた電磁波抑制フラットヤーンを、経糸又は緯糸の何れか一方又は両方に用いて、織機を用いて、布状織物を作成する。
【0065】
織り方としては、平織(斜子織、経畝織、緯畝織を含む)、斜文織(綾織)(急斜文織、緩斜文織、山形斜文織を含む)、朱子織(重ね朱子織、昼夜朱子織、みかげ織を含む)などがあり、その他、二重織、模紗織などを含む。
【0066】
本発明では、上記の製造方法によって得られた布状織物に、ポリアミド樹脂に難燃剤を添加し混合したポリアミド組成物を押し出しラミネートして電磁波抑制シートを得ることができる。
【0067】
電磁波抑制編物の製造方法は、上記の製造方法によって得られた電磁波抑制フラットヤーンを、編み機を用いて布状編物を作成する。
【0068】
編み方としては、縦編み(経メリアス)や横編み(緯メリアス)があり、横編み(緯メリアス)としては、平編、ゴム編、パール編があり、これらの変形としてタック編、浮き編、片あぜ編、レース編、両あぜ編などがある。縦編みとしては、閉じ目と開き目があり、これらの変形としてミラニーズ、トリコット、メッシュなどがある。またラッセル編みなどでもよい。
【0069】
本発明では、上記の製造方法によって得られた編物に、目的に応じて、ポリアミド樹脂に難燃剤を添加し混合したポリアミド組成物をフィルム状にラミネートして電磁波抑制シートを得ることができる。
【0070】
本発明の電磁波抑制フラットヤーンは、例えば、丸打製紐機を用いて形成される組紐にして筒状体を形成したり、あるいは、スパイラル状に巻回して使用することもできる。
【実施例】
【0071】
以下に本発明の実施例を説明するが、本発明はかかる実施例によって限定されない。
【0072】
実施例1
金属粒子粉末として、Fe粉末(マグネタイト粉末)を用い、これを粉砕機で粉砕し、その後分級して粗大粒子を除去した。平均粒子径は5μmであった。
【0073】
この分級後のマグネタイト粉末を300重量部と、導電性材料としてカーボンブラック粉末100重量部、及びポリウレタン100重量部を、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)300重量部とトルエン30重量部とメチルエチルケトン(MEK)170重量部で溶解したものを攪拌混合し、電磁波吸収樹脂組成物溶液を得た。
【0074】
得られた電磁波吸収樹脂組成物溶液を、剥離紙上にドクターブレードを用いて塗布し、140℃で3分間乾燥して厚さ60μmの電磁波吸収樹脂層(I)を得た。
【0075】
更に、ポリウレタン樹脂100重量部を、DMF150重量部とトルエン100重量部に溶解したもの、メラミン被覆ポリリン酸アンモニウム難燃剤130重量部、及び溶剤としてMEK170重量部を攪拌混合したポリウレタン溶液を、前記の電磁波吸収樹脂層(I)の上に、同様にドクターブレードを用いて塗布、乾燥して、樹脂層(II)を形成した。
【0076】
その後、剥離紙を剥いで、厚さ110μm、2層構成の電磁波抑制フィルムを得た。
【0077】
得られた電磁波抑制フィルムをカッターでスリットし、厚さ110μm、幅3mmの電磁波抑制フラットヤーンを得た。
【0078】
得られたフラットヤーンを、スルーザー織機を用いて、打ち込み本数が縦8本/25.4mm、横8本/25.4mmの平織りにして、布状体を得た。
【0079】
得られた布状体に、ポリアミド樹脂(三菱エンジニアプラスチック製ナイロン6#1020)90重量部に、難燃剤(三菱化学製シアヌル酸メラミン難燃剤)10重量部を添加し混合したポリアミド組成物を押し出しラミネートして電磁波抑制シートを得た。
【0080】
ポリアミドフィルムの厚さは50μmであった。
【0081】
実施例2
導電性材料としてカーボンブラック粉末を100重量部と、ポリウレタン樹脂100重量部を、DMF300重量部とトルエン30重量部及びMEK170重量部に溶解したものを攪拌混合し、電磁波吸収樹脂組成物溶液を得た。
【0082】
得られた電磁波吸収樹脂組成物溶液を、厚さ25μmのポリエステル(PET)フィルム(ユニチカ製「S−25」)(樹脂層(II))上に、ドクターブレードを用いて塗布し、140℃で3分間乾燥して厚さ50μmの電磁波吸収樹脂層(I)を得た。
【0083】
更にポリウレタン樹脂100重量部をDMF150重量部とトルエン100重量部に溶解したもの、メラミン被覆ポリリン酸アンモニウム難燃剤130重量部、及び溶剤としてMEK170重量部を攪拌混合したポリウレタン溶液を電磁波吸収樹脂層(I)の上(樹脂層(II)が積層された面の反対面)に、同様にドクターブレードを用いて塗布、乾燥して樹脂層(III)を形成し、厚さ130μmの3層構成の電磁波抑制フィルムを得た。
【0084】
得られたフィルムをカッターでスリットし、厚さ130μm、幅3mmの電磁波抑制フラットヤーンを得た。
【0085】
得られたフラットヤーンを、スルーザー織機を用いて、打ち込み本数が縦8本/25.4mm、横8本/25.4mmの平織りにし、布状体を得た。
【0086】
得られた布状体に、実施例1と同様のポリアミド組成物を押し出しラミネートして電磁波抑制シートを得た。
【0087】
ポリアミドフィルムの厚さは50μmであった。
【0088】
実施例3
金属粒子粉末としてFe−Si−Al系合金材料を、溶媒にトルエンを用いた媒体攪拌ミル中で、粉砕扁平加工し、その後、分級して粗大粒子を除去して得られた粒度D50が35μmの扁平Fe−Si−Al系粉末を150重量部、導電性材料としてカーボンブラック粉末100重量部、及びポリウレタン100重量部を、DMF300重量部とトルエン30重量部とMEK170重量部で溶解したものを攪拌混合し、電磁波吸収樹脂組成物溶液を得た。
【0089】
得られた電磁波吸収樹脂組成物を、厚さ12.5μmのポリイミド(PI)フィルム(東レ・デュポン製「カプトン50H」)(樹脂層(II))上に、ドクターブレードを用いて塗布し、140℃で3分間乾燥して厚さ50μmの電磁波吸収樹脂層(I)を得て、厚さ約62.5μmの2層構成の電磁波抑制フィルムを得た。
【0090】
得られたフィルムをカッターでスリットし、厚さ63μm、幅2mmの電磁波抑制フラットヤーンを得た。
【0091】
得られたフラットヤーンを用い、更に、8打ちの丸打製紐機を用いて内径φ=5mmの電磁波抑制組紐を得た。
【0092】
得られた組紐に、実施例1と同様のポリアミド組成物を押し出しラミネートして電磁波抑制チューブを得た。
【0093】
ポリアミドフィルムの厚さは50μmであった。
【0094】
実施例4
実施例3で用いたFe−Si−Al系合金粉末150重量部に代えて、同様に粉砕扁平加工し分級したFeSi粉末50重量部を用いた以外は、実施例3と同様にして電磁波吸収樹脂組成物溶液を得た。
【0095】
得られた電磁波吸収樹脂組成物を、厚さ25μmのポリフェニレンサルファイド(PPS)フィルム(東レ製「トレリナ3030」(樹脂層(II))上に、ドクターブレードを用いて塗布し、140℃で3分間乾燥して厚さ50μmの電磁波吸収樹脂層(I)を得て、厚さ約75μmの2層構成の電磁波抑制フィルムを得た。
【0096】
得られたフィルムをカッターでスリットし、厚さ75μm、幅0.6mmの電磁波抑制フラットヤーンを得た。
【0097】
得られた電磁波抑制フラットヤーンを、4打ちの丸打製紐機を用い組紐を得、フラットヤーンの端部を超音波溶着し、内径φ=0.8mmの電磁波抑制チューブを得た。
【0098】
実施例5
実施例1と同様に作製した電磁波抑制フィルムをカッターでスリットし、厚さ63μm、幅1mmの電磁波抑制フラットヤーンを得た。
【0099】
得られたフラットヤーンを編み機を用いてメリヤス編みにして布状体を得た。
【0100】
得られた布状体に、実施例1と同様のポリアミド組成物を押し出しラミネートして電磁波抑制シートを得た。
【0101】
ポリアミドフィルムの厚さは50μmであった。
【0102】
実施例6
高密度ポリエチレン(日本ポリケム製HY−433、密度0.956、MFR0.55)をインフレーション成形法によってフィルムとし、得られたフィルムをレザーを用いてスリットした。
【0103】
次いで、温度110〜120℃の熱板上で6倍に延伸した後、温度120℃の熱風循環式オーブン内で10%の弛緩熱処理を行い、糸幅0.85mm、繊度130デシテックスの延伸ヤーンを製造した。
【0104】
これを経糸とし、実施例1と同様に作製した厚さ63μm、幅3mmの電磁波抑制フラットヤーンを緯糸として、スルーザー織機を用いて打ち込み本数が経糸35本/25.4mm、緯糸8本/25.4mmの平織りにし、布状体を得た。
【0105】
得られた布状体に、実施例1と同様のポリアミド組成物を押し出しラミネートして電磁波抑制シートを得た。
【0106】
ポリアミドフィルムの厚さは50μmであった。
【0107】
比較例1
金属粒子粉末として平均粒子径3μmのNi−Cu−Zn系フェライト粉末を70重量部とカーボン粉末30重量部を混合した後、ポリ塩化ビニル100重量部を攪拌混練し、電磁波吸収樹脂組成物を得た。
【0108】
得られた組成物を、押出機を用いて押し出し成形して、厚さ50μmの電磁波抑制材シートを得た。
【0109】
このシートをカッターでスリットし、電磁波抑制フラットヤーンを製造した。
【0110】
比較例2
磁性粉材料として平均粒子径3μmのNi−Cu−Zn系フェライト粉末を7重量部とカーボン粉末3重量部を混合した後、ポリ塩化ビニル90重量部を攪拌混練し、電磁波吸収樹脂組成物を得た。
【0111】
得られた組成物を押出機を用いて厚さ50μmの電磁波抑制材シートを得た。
【0112】
このシートをカッターでスリットし、電磁波抑制フラットヤーンを製造した。
【0113】
〔評価〕
フラットヤーン製造性;フラットヤーンを製造する際に、ピンホール、空隙、裂けなどの不具合が生じずに連続して製造できる状態を次の基準に従って評価した。測定の結果を表2に示す。
○:500m以上連続製造可能。
△:50m以上500m未満連続製造可能。
×:50m未満連続製造可能。
【0114】
抗張力;JIS L−1013の方法に従い、23℃にて、引張速度300mm/分の条件下で測定した。測定の結果を表2に示す。
【0115】
伸度;JIS L−1013の方法に従い、23℃にて、引張速度300mm/分の条件下で測定した。測定の結果を表2に示す。
【0116】
伝送損失(S21)及び反射損失(S11);
上記の電磁波抑制フィルムを、キーコム社製トランスミッションアッテネーションパワーレシオ測定システム(IEC62333−1、IEC62333−2に準拠)を用いて測定した。測定結果を表2に示す。
【0117】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
IEC−62333に準拠して測定した反射損失(S11)の値が電磁波周波数300MHz〜18GHzの全域にわたり−1dB以下であり、かつ、伝送損失(S21)の値が電磁波周波数300MHz〜18GHzの全域にわたり−1dB以下である電磁波吸収性能を有する電磁波吸収樹脂層(I)と該電磁波吸収樹脂層(I)の一面に樹脂層(II)を有するか、又は、一面に樹脂層(II)及び他面に樹脂層(III)を有し、織物、編物又は組紐に供されることを特徴とする電磁波抑制フラットヤーン。
【請求項2】
前記電磁波吸収樹脂層(I)が、ポリウレタン樹脂と、電磁波吸収性能を有する金属粒子粉末及び又はカーボンブラック粉末からなることを特徴とする請求項1記載の電磁波抑制フラットヤーン。
【請求項3】
前記樹脂層(II)又は前記樹脂層(III)が、ポリエステル樹脂層、ポリエーテルイミド樹脂層、ポリイミド樹脂層、ポリフェニレンサルファイド樹脂層又はポリウレタン樹脂層から選ばれる1種であることを特徴とする請求項1又は2記載の電磁波抑制フラットヤーン。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかに記載の電磁波抑制フラットヤーンを素材として、織物、編物又は組紐の何れかに形成されることを特徴とする電磁波抑制製品。
【請求項5】
織物又は編物に用いられる電磁波抑制フラットヤーンの製造方法において、
ポリウレタン樹脂と、金属粒子粉末及び又はカーボンブラック粉末とを攪拌混合し、電磁波吸収樹脂組成物溶液を作成し、
樹脂層(II)上に、前記電磁波吸収樹脂組成物溶液を塗布・乾燥して電磁波吸収樹脂層(I)を形成して2層構成の電磁波抑制フィルムを製造し、
該積層フィルムをスリットすることを特徴とする電磁波抑制フラットヤーンの製造方法。
【請求項6】
電磁波吸収樹脂層(I)と樹脂層(II)の積層フィルムに、電磁波吸収樹脂層(I)の樹脂層(II)が積層されている面の反対面に、他の樹脂層(III)を形成して3層構成の電磁波抑制フィルムを製造することを特徴とする請求項5記載の電磁波抑制フラットヤーンの製造方法。
【請求項7】
織物又は編物に用いられる電磁波抑制フラットヤーンの製造方法において、
ポリウレタン樹脂を溶剤で溶解した樹脂溶液と、金属粒子粉末及び又はカーボンブラック粉末とを攪拌混合し、電磁波吸収樹脂組成物溶液を作成し、
剥離紙上に、前記電磁波吸収樹脂組成物溶液を塗布・乾燥して電磁波吸収樹脂層(I)を形成し、
前記電磁波吸収樹脂層(I)の上に、樹脂層(II)を形成し、
その後、前記剥離紙を剥離して、積層フィルムを製造し、
該積層フィルムをスリットすることを特徴とする電磁波抑制フラットヤーンの製造方法。
【請求項8】
前記樹脂層(II)又は前記樹脂層(III)が、ポリエステル樹脂層、ポリエーテルイミド樹脂層、ポリイミド樹脂層、ポリフェニレンサルファイド樹脂層又はポリウレタン樹脂層から選ばれる1種であることを特徴とする請求項5〜7の何れかに記載の電磁波抑制フラットヤーンの製造方法。
【請求項9】
前記電磁波吸収樹脂層(I)が、IEC−62333に準拠して測定した反射損失(S11)の値が電磁波周波数300MHz〜18GHzの全域にわたり−1dB以下であり、かつ、伝送損失(S21)の値が電磁波周波数300MHz〜18GHzの全域にわたり−1dB以下である電磁波吸収性能を有することを特徴とする請求項5〜8の何れかに記載の電磁波抑制フラットヤーンの製造方法。

【公開番号】特開2009−270218(P2009−270218A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−120779(P2008−120779)
【出願日】平成20年5月2日(2008.5.2)
【出願人】(390019264)ダイヤテックス株式会社 (53)
【出願人】(000184687)小松精練株式会社 (110)
【Fターム(参考)】