説明

電磁波発熱成型品および電子レンジ加熱用の調理補助材

【課題】所定の目標温度域に発熱温度を制御できる電磁波発熱成型品及び電子レンジ加熱用の調理補助材を提供する。
【解決手段】本発明の電磁波発熱成型品は、電磁波の照射により所定の目標温度域まで発熱する電磁波発熱成型品であって、所定の目標温度域に応じたキュリー温度を有する強誘電体及び強磁性体のうち少なくとも一方を構成材料として含む。また、上記電磁波発熱成型品は、強磁性体を構成材料として含み、2.45GHzの電磁波に対する強磁性体のμ”が0.5以上であり、かつε”が5.0以下であり、かつρが1.0×10Ωm以上であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁波の照射により発熱し、その発熱温度を制御できる電磁波発熱成型品に関するものである。また、前記電磁波発熱成型品を用いた電子レンジ加熱調理補助材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、電子レンジに代表されるように電磁波を用いた発熱・加熱技術は広く利用されており、加熱原理としては誘電加熱、誘磁加熱、誘導加熱の三つの原理が知られている。
【0003】
誘電加熱を利用した電磁波加熱として、電子レンジにおける食品の加熱がよく知られている。具体的には、食品に含まれる誘電体である水分を電磁波発熱させて、食品の加温や調理に利用されている。この他、工業的には、同様に水分を発熱させて、殺菌プロセスや乾燥プロセスにも利用されている。また、カーボン等の誘電体に電磁波を吸収させ熱に変換することで、電波吸収体や電磁波遮蔽にも利用されている。
【0004】
誘磁加熱を利用した電磁波加熱の利用例としては主に、誘電体のカーボン同様、フェライトなどの磁性体に電磁波を吸収させ、熱に変換する電波吸収体や電磁波遮蔽に利用されている。
【0005】
誘導加熱を利用した電磁波加熱としては、IH調理器のほか、工業的な金属の加工プロセスとして、溶接や溶解、焼き入れやろう付けなどにも用いられている。
【0006】
このような加熱原理に基づく電磁波発熱は、対象物に含まれる誘電体や磁性体、導体の性質を利用して発熱させるため、内部発熱や選択加熱が可能という特徴がある。しかしながら、誘電体や磁性体、導体を発熱させる場合、これらの物質は与えられたエネルギーに追従して発熱を継続するため、所望の温度に発熱温度域を制御できず、過昇温しやすいという問題を抱えていた。
【0007】
このような問題を解決するため、誘電加熱において発熱温度を制御する方法(特許文献1)や、誘磁加熱において発熱温度を制御する方法(特許文献2)が提案されている。提案されている方法のうち、特許文献1に記載された手法は、電磁波の出力制御と強誘電体のキュリー温度とを併用した発熱の制御方法であり、特許文献2に記載された手法は、誘導加熱による磁波出力制御と磁性材料のキュリー温度とを併用した発熱制御方法である。従って、電磁波の出力制御なくして、発熱温度を制御できる手法は未だ開示されていない。
【0008】
さらに、電子レンジにおける食品の加熱においては、食品中の水分自体が発熱する内部加熱により、短時間で加熱できるというメリットがあるが、反対に外側から食品に焦げ目をつけることができないという問題を抱えていた。この問題を解決するために、電磁波発熱体を利用した食品の伝熱加熱方法が、種々提案されている。例えば、誘電加熱を利用した方法として、カーボンを用いた方法(特許文献3)が提案されている。しかしながら、カーボンでは昇温温度を制御することができず、電子レンジの設定によっては、数百度まで昇温されることもあり、使用者が安全に食材に焦げ目をつける調理を行うことは困難である。
【0009】
また、誘導加熱を利用した方法として、非常に薄い導体層を用いた発熱技術(特許文献4)が提案されている。発熱特性と放熱特性をバランスさせることで発熱温度を制御しているが、熱容量が小さいために焦げを付けやすい特定の食材に限定される上、電子レンジの幅広い出力に対応して温度を制御できる物でなかった。さらに、誘磁加熱を利用した方法として、フェライト等の磁性材料を用いた発熱技術が知られている(特許文献5)。これらの磁性材料ではキュリー温度を利用した発熱温度の制御が試みられているが、開示されている磁性材料は誘電発熱や誘導発熱の特徴も併せ持つため、キュリー温度による誘磁発熱を制御しても、誘電発熱や誘導発熱によって所望の温度以上まで昇温されてしまうのが実情であった。従って、未だ、発熱温度域を制御して、使用者が安全に電子レンジで食品に焦げ目を付けて焼くことができる手法は開示されていなかった。
【0010】
また、電子レンジにおける食品の加熱においては、前述した焦げ目付けの加熱温度を制御できないことに加えて、選択加熱や電磁波の強度分布による加熱むらの発生によって、均一に温められない問題や、均一に解凍できない等の問題もあった。
【0011】
電子レンジで食品を均一に加熱する手法として、容器の形状を工夫して電磁波の強度を均一にする方法(特許文献6)やアルミ等の遮蔽材を用いて発熱しやすい部分の加熱を抑制する方法(特許文献7)が提案されている。しかしながら、温度を制御することができないため、冷凍した食品を均一に解凍・加熱する問題を解決する事はできず、冷凍した食品を均一に解凍・加熱する手法は未だ開示されていなかった。
【特許文献1】特開2007−299681号公報
【特許文献2】特開平10−208859号公報
【特許文献3】特開平6−189849号公報
【特許文献4】特開2007−312819号公報
【特許文献5】国際公開2006/054785号パンフレット
【特許文献6】特開平09−215594号公報
【特許文献7】特開2006−27649号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
前述の通り、電磁波発熱体において、電磁波の出力に拠らず、所定の目標温度域に発熱温度を制御できる手法は未だ開示されておらず、電磁波による発熱を所定の目標温度域に制御できる成型品は得られていなかった。さらに電子レンジにおける冷凍された食品を均一に加熱・解凍する手法や食品の表面に焦げ目をつけて焼くことができる手法も未だ開示されておらず、好適な電子レンジ調理用補助材は得られていなかった。
【0013】
以上のような問題に鑑み、本発明は、所定の目標温度域に発熱温度を制御できる電磁波発熱成型品及び電子レンジ加熱用の調理補助材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
以上の目的を達成するため、鋭意検討した結果、以下の発明を成すに到った。すなわち、本発明による電磁波発熱成型品は、電磁波の照射により所定の目標温度域まで発熱する電磁波発熱成型品であって、所定の目標温度域に応じたキュリー温度を有する強誘電体及び強磁性体のうち少なくとも一方を構成材料として含むことを特徴とする。
【0015】
また、上記電磁波発熱成型品は、強磁性体を構成材料として含み、2.45GHzの電磁波に対する強磁性体のμ”が0.5以上であり、かつε”が5.0以下であり、かつρが1.0×10Ωm以上であることを特徴としてもよい。
【0016】
また、本発明による電子レンジ加熱用の調理補助材は、上記した電磁波発熱成型品を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明により、所定の目標温度域に発熱温度を制御できる電磁波発熱成型品及び電子レンジ加熱用の調理補助材を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明による電磁波発熱成型品および電子レンジ加熱用の調理補助材の実施の形態を詳細に説明する。
【0019】
本発明に係る電磁波発熱成型品は、キュリー温度を有する、強誘電体及び/または強磁性体を構成成分とする成型品である。
【0020】
誘電体とは、導電性よりも誘電性が優位な物質のことを示し、電磁波を照射することにより、誘電分極を発生して物質が発熱する。例えば、カーボンの他、チタン酸バリウム、結晶水を含んだ結晶またはヒドロキシ塩類などが挙げられる。
【0021】
誘電体の中でも特に強誘電体とは、自発分極を生ずる物体をいう。強誘電体は外部から電場を加えていなくとも物質が電気双極子を持ち、しかも電気双極子の向きを電場に応じて反転させることができる物質を指す。例えば、チタン酸バリウムや鉛系の酸化物、亜硝酸ナトリウムといった無機材料が有名であり、酒石酸ナトリウムカリウムを代表とする酒石酸グループ、第一燐酸カリウムを代表とする第一リン酸塩グループ、チタン酸バリウムを代表とする酸素八面体グループがある。
【0022】
また、磁性体とは、磁性を帯びる事が可能な物質であり、反磁性体・常磁性体・強磁性体の3つに分けられる。磁性体も誘電体同様、電磁波の照射により発熱することが知られており、例えば、マグネタイト、フェライト系無機材料が挙げられる。
【0023】
磁性体の中でも特に強磁性体とは、フェロ磁性体やフェリ磁性体のことを指し、全体として大きな磁気モーメントを持つ物質を指す。例えば、マグネタイト、γFe、NiZnフェライトのNi1−xZnFe、MnZnフェライトのMn1−xZnFe、バリウムフェライトのBaFe1219、ストロンチウムフェライトのSrFe1219やパーマロイ、センダスト、サマリウムコバルト、NdFe14などのスピネル系結晶構造を有するフェライトや、IFe12、GdFe12などのガーネット系結晶構造を有するフェライトが挙げられる。本発明では、これらの強誘電体及び/または強磁性体を単独または複数混合して用いることができる。
【0024】
本発明の電磁波発熱成型品は、発熱温度を所定の目標温度域に制御できることを特徴とする。
【0025】
前述したように、誘電体や磁性体は、電磁波を吸収し、そのエネルギーが損失するときに発熱するメカニズムであるため、従来の成型品では、電磁波を照射し続ければ、それに対応して継続的に昇温し続けることになる。それに対して、本発明の成型品は、電磁波を照射し続けても、昇温を所定の目標温度域で止めること、即ち発熱を制御する、ことができるものである。
【0026】
一般に強誘電体、及び強磁性体は、相転移するキュリー温度を持ち、強誘電体は、キュリー温度で常誘電体に変化し、同様に、強磁性体は常磁性となる。よって、電磁波を照射した場合には、キュリー温度を最高点とした発熱挙動が見られる。
【0027】
従って、所定の目標温度域に応じたキュリー温度を有する、強誘電体及び/または強磁性体を選択し、それを構成成分とすることで、電磁波を照射し続けても発熱温度を所定の目標温度域に制御できる電磁波発熱成型品を得ることができる。
【0028】
なお、本発明における所定の目標温度域とは、例えば、目標温度に対する温度変化が±30℃以内の範囲にあるものを言う。
【0029】
電磁波発熱成型品は、シートやフィルム、容器などの形状であり、その基材としては、目的の発熱温度域によって、ポリエチレン、ポリプロピレン、などのポリオレフィン類、ポリ塩化ビニリデン、ポリエステル、ポリアミド、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・ビニルアルコール、フッ素系樹脂などの合成樹脂フィルム、セルロースなどの天然高分子系フィルム、或は天然パルプ繊維及び/又は熱可塑性繊維から製造した紙類、セラミックス等無機材料、シリコーン樹脂、ガラス繊維などの強化繊維を有する合成樹脂からなる成形材料、を単独または複合して用いることができる。このような基材に電磁波発熱層を形成したり、または基材に混合することにより、成型品を得る。
【0030】
この時用いる電磁波発熱体は、平均粒径が0.01μm以上100μm以下の粉体や単結晶膜であることが好ましい。粉体の場合、0.1μm以上50μm以下がより好ましく、0.5μm以上30μm以下がさらに好ましい。平均粒径が100μmを超えると、粉体の分散状態が不均一となりやすいため、発熱分布が生じやすいという問題がある。0.01μmより小さい場合には、逆に粉体同士が凝集することから、発熱温度域が制御にくいという問題がある。添加量は、1.0重量%以上70重量%以下が好ましく、5.0重量%以上60重量%以下がより好ましい。さらに好ましくは20.0重量%以上50.0重量%以下である。1.0重量%未満の添加では発熱効果が見られず、70重量%を超えると、分散不良による発熱分布の不均一性や、容器やシートの強度低下という問題が生じる。また、誘電体や磁性体の粉体を均一に基材に分散させるため、粉体をマイクロカプセル化して利用することもできる。
【0031】
発熱温度を所定の目標温度域に制御するためには、前述のように、誘電体及び/または磁性体の中でも、キュリー温度を有する強誘電体及び/または強磁性体を利用して、材料自体が一定温度に達すると、発熱が抑制される性質を用いる手法の他、発熱と放熱とのバランスをとる手法、を用いることができる。
【0032】
発熱と放熱とのバランスをとる方法としては、前述の発熱抑制に加えて、より放熱しやすい素材や形状によって達成することができる。例えば、放熱面積を大きくするために、蛇腹などの立体構造とすることや薄膜化して放熱しやすくすることできる。また、発生した熱をより早く放熱するために熱伝導率の高い基材を用いたり、黒色材料を用いた放熱基材を用いることができる。熱伝導率の高い基材としては、アルミなどの金属材料や無機材料を用いることができる。
【0033】
本発明の電磁波発熱成型品は、2.45GHzにおいて、0.5≦μ”、かつε”≦5.0、かつρ≧1.0×10Ωmであることが好ましい。
【0034】
強磁性体については、前述したように、その磁性的性質による発熱以外にも、導電的性質や誘電的性質よる発熱があり、単純にキュリー温度だけでは発熱が抑制できないことが報告されている。例えば強磁性体のマグネタイトでは、キュリー温度付近が最も昇温速度が速いが、キュリー温度を超えても発熱が続くことが実験的に検証されている。
【0035】
そこで本発明者は、強磁性体の磁性損失による発熱以外の発熱の影響を最小限にするためにμ”、ε”、ρを規定することにより、キュリー温度による発熱制御をより好適に実現できることを見出した。
【0036】
ここで、電磁波を吸収して発熱する材料では、その発熱は磁性損失、誘電損失に依存し、これらは次式における虚数部で表される。
【数1】


【数2】

【0037】
さらに、導電的性質による発熱は、抵抗率ρに依存し、その時に発生する熱量は次式で表される。
【数3】


【数4】

【0038】
そこで、磁性体の性質による十分な発熱を得るためには、2.45GHzのマイクロ波に対するμ”が0.5以上であれば良いことを見出し、さらに、誘電体の性質、導電体の性質による発熱を抑制するためには、ε”が5.0以下、ρが1.0×10Ωm以上であれば良いことを見出した。
【0039】
μ”が0.5より小さい場合、特にマイクロ波の強度が低い場合には発熱が不十分となり、さらに、ε”が5.0より大きい場合、誘電体の性質による発熱が発生し、またρが1.0×10Ωmより小さい場合、導電体の性質による発熱が生じることから、キュリー温度による発熱の制御が困難になる。
【0040】
さらにこれら特性値は、より好ましくは、1.0≦μ”≦10.0、0<ε”≦3.0、ρ≧1.0×10Ωmであり、さらに好ましくは、2.0≦μ”≦7.0、0<ε”≦1.0、ρ≧1.0×10Ωmである。
【0041】
このような強磁性材料として、Mg系フェライト、Cu系フェライト、Zn系フェライト、Ni系フェライト、Li系フェライト、Ni−Zn系フェライト、Mn−Zn系フェライト、Mn−Mg系フェライト、Mn−Zn−Cu系フェライト、Mn−Zn−Al系フェライト、Mg−Cu−Zn系フェライト、Ni−Cu−Zn系フェライト、Ni−Cu−Co系フェライト、などを好適に用いることができる。
【0042】
その際、各構成成分の混合比率により磁気特性を制御することができ、例えばMn−Zn系フェライトでは、Fe、ZnO、MnOの比率により、所望のキュリー温度を達成する組成を調整することができる。また、一部の金属を置換した組成とすることも、磁気特性の制御に有用である。例えば、Mn−Mg系フェライトにおける、Fe3+のAl3+への置換や、Ni−Zn系フェライトにおける、Zn2+の導入により、キュリー温度を変化させることができる。
【0043】
また、本発明における磁性体は、乾式法や湿式法等の公知の手法で得ることができる。また、液相エピタキシャル法等の公知の手法で単結晶膜を得ることができる。さらにシリカやゼオライトなどのような多孔体中に結晶化させることもできる。
【0044】
本発明の電磁波発熱成型品は、電子レンジ用の調理用補助材に好適に用いることができる。電子レンジ用の調理補助材とは、電子レンジで加熱調理する場合に使用し、その加熱を補助するもので、容器、プレート、シート、バッグなどの形状のものを示す。本発明の電子レンジ調理用補助材を用いることで、あたため、蒸す、煮る、炒める、揚げる、炊くなどの調理を、見た目、食感などの仕上がりよく調理することができ、さらにこれまで電子レンジ調理で難しいとされていた、焦げ目を付けて焼く調理や、均一な解凍作業もできるようになる。
【0045】
本発明の電磁波発熱成型品は、電子レンジでの調理目的によって、誘電体及び/または磁性体のキュリー温度を適宜選択する。食材に焦げ目をつけるような調理、例えばピザや焼魚などには、キュリー温度150℃以上300℃以下の範囲のものが好ましく、170℃以上250℃以下がより好ましい。150℃未満では食品の表面に焦げ目をつける効果が十分でなく、300℃を超えるものでは食品の内部が加熱される前に表面が焦げるため仕上がりの面で好ましくない。また、冷凍食品の解凍には、キュリー温度10℃以上50℃以下のものが好ましく、20℃以上40℃以下がより好ましい。10℃未満では解凍するために長い時間が必要となり、50℃を超えると、食材によっては、解凍ではなく加熱されてしまうために好ましくない。さらに、蒸し物や煮物には、キュリー温度70℃以上120℃以下のものが好ましく、80℃以上110℃以下がより好ましい。70℃未満では十分に食材に火を通すことができず、120℃を超えると調味液等がメイラード反応により褐発しやすくなるため、食材が焦げた部分などが発生して仕上がりの面で好ましくない。
【0046】
また、本発明の電磁波発熱成型品を電子レンジ用の調理補助材に用いる際、電子レンジから照射されるマイクロ波の吸収量と反射量の合計を10%以上90%以下とし、透過量を90%以下10%以上となるように、誘電体及び/または磁性体の量を制御することができる。透過量が90%を超えると、食品の加熱は、発熱体による伝熱加熱よりもマイクロ波による内部加熱が優先するため、例えば焦げ目の付く前に食材の内部が加熱されてしまう。反対に10%未満では発熱体による伝熱加熱がマイクロ波による内部加熱よりも優先するため、食品の加熱に長時間かかるため、電子レンジの急速加熱効果が得られにくくなるため好ましくない。より好ましい吸収量と反射量は20%以上80%以下で、さらに好ましくは30%以上70%以下である。
【0047】
このとき、内部加熱速度を抑制する目的や、均一加熱を目的として、マイクロ波の反射量を増加させるために、電磁波不透過膜としてアルミニウムなどの金属膜を併用することができる。この際、電子レンジ内でのスパークを抑制するため、金属膜は不導体の樹脂などで皮膜する事が肝要である。具体的には、電磁波不透過膜を発熱体の外側即ち、電磁波照射側に配置することで、発熱を抑制することができる。
【0048】
本発明の電磁波発熱成型品は、電子レンジ用の調理補助材として、その表面に食材との剥離性を改善するためのシリコーンコート層やフッ素コート層などの剥離層を形成することができる。また、食材から出る水分を吸収する吸水層、油分を吸収する吸油層をそれぞれ単独もしくは複数設けることもできる。吸水層としては、吸水性を有する材質からなるものであれば特に限定されないが、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂から成る不織布、パルプ等の紙の繊維、さらには吸水性樹脂や吸水性ゲルなどを用いることができる。また吸油層としては、吸油性を有する材質からなるものであれば特に限定されないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂あるいはこれらのコポリマー等の疎水性繊維が好適であるが、レーヨン、コットン等の親水性繊維や、パルプ等の紙の繊維、吸油ゲルや無機材料を用いることができる。吸水層、吸油層ともに、これらの内何れか、若しくは複数を設けて構成させることができる。
【0049】
このような複合体の製造方法としては、接着剤によるドライラミや、押し出しラミ、熱接着等、公知の手法を用いて製造することができ、容器に成型する場合は、真空・圧空成型やセラミック等の焼成成型等の公知な手法で成型することができる。
【0050】
本文中で用いた物性の評価方法については、以下の通りである。
(1.複素比誘電率ε、複素比透磁率μ
Sパラメータ方式により測定し、ε”、μ”を求めた。
(2.抵抗率ρ)
体積抵抗率測定方法:四端子法により抵抗率を求めた。
(3.電磁波発熱成型品の評価方法)
成型品を、電子レンジ(三洋電機株式会社製EMO−FR10)により、500Wで加熱し、光ファイバーケーブル式温度計(安立計器株式会社製)により昇温挙動を確認した。
・昇温挙動
成型品の表面中央部に上記の光ファイバーケーブルを設置して加熱し、昇温挙動を下記の基準で判断した。
○:キュリー温度±20℃以内で発熱が止まる
△:キュリー温度±50℃以内で発熱が止まる
×:発熱が止まらない
・食品の加熱
成型品に甘塩鮭切り身を乗せて加熱し、その仕上がりを下記の基準で評価した。
○:外側はグリルで焼いたものと同様の焦げ目、内側も十分加熱されている
△:外側は焦げているが、内側は加熱が不十分
×:外側に焦げ目がつかない
【実施例1】
【0051】
以下、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。
【0052】
[実施例1]
平均粒径12.0μmの、2.45GHzのマイクロ波に対するμ”が3.0、ε”が2.0、キュリー温度が210℃の強磁性体Mn−Znフェライト(マンガン亜鉛系フェライト粉砕粉。JFEマグパウダー株式会社製LD−M−series)を、シリコーン樹脂A(旭化成ワッカーシリコーン株式会社製M4648A)に30重量%添加し、攪拌して十分に分散させた状態で、シリコーン樹脂B(旭化成ワッカーシリコーン株式会社製M4648B)を添加し、さらによく攪拌した後、10cm角、厚み1cmの型枠内で硬化させ、一晩放置して成型品とした。
成型品の評価を以下に示す。
昇温挙動…○(加熱後3分から200〜210℃の範囲の温度域を維持した。)
食品の加熱…○
【0053】
[比較例1]
カーボンブラック粉体を用いて、実施例1と同様に板状の成型品を得た。成型品の評価を以下に示す。
昇温挙動…×
食品の加熱…△
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明の電磁波発熱成型品は、電子レンジであらゆる調理を行う調理補助材として好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁波の照射により所定の目標温度域まで発熱する電磁波発熱成型品であって、
前記所定の目標温度域に応じたキュリー温度を有する強誘電体及び強磁性体のうち少なくとも一方を構成材料として含むことを特徴とする、電磁波発熱成型品。
【請求項2】
前記強磁性体を構成材料として含み、2.45GHzの電磁波に対する前記強磁性体のμ”が0.5以上であり、かつε”が5.0以下であり、かつρが1.0×10Ωm以上であることを特徴とする、請求項1に記載の電磁波発熱成型品。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電磁波発熱成型品を備えることを特徴とする、電子レンジ加熱用の調理補助材。

【公開番号】特開2010−131317(P2010−131317A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−312431(P2008−312431)
【出願日】平成20年12月8日(2008.12.8)
【出願人】(390017949)旭化成ホームプロダクツ株式会社 (56)
【Fターム(参考)】