説明

電磁石装置および運転手支援装置

【課題】ばね素子の予荷重の調節に手間および時間がかからない電磁石装置を提供する。
【解決手段】磁気アンカー2と磁気アンカー2の端面に配置したアンカー対向部材10とを有し、磁気アンカー2とアンカー対向部材10とが互いに相対変位可能であり、2磁気アンカーの案内凹部13に、アンカー対向部材10との支持接触を形成するために設けられた中間素子14が軸線方向に可動に支承されており、中間素子14が、アンカー対向部材10に向いていない側でばね素子21と作用結合している電磁石装置において、中間素子14が少なくとも部分的に錐形である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気アンカーと磁気アンカーの端面に配置したアンカー対向部材とを有する電磁石装置において、磁気アンカーとアンカー対向部材とが互いに相対変位可能であり、磁気アンカーの案内凹部に、アンカー対向部材との支持接触部を形成するために設けた中間素子が軸線方向に可動に支承されており、中間素子が、アンカー対向部材に向いていない側でばね素子と作用結合している電磁石装置、さらに運転手支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
冒頭で述べた形式の電磁石装置は従来技術により既知である。これらの電磁石装置は、例えば電磁弁の構成素子であってもよいし、またはそれぞれ電磁弁として構成することもでき、電磁弁は、運転手支援装置、特にABS装置、TCS装置またはESP装置に使用することもできる。電磁石装置は磁気アンカーを備え、磁気アンカーはアンカー対向部材に対して変位可能である。多くの場合、磁気アンカーのみが変位可能であり、アンカー対向部材は不動に配置されている。アンカー対向部材は、例えば極鉄心として構成してもよい。磁気アンカーとアンカー対向部材との相対変位をもたらすために、2つの素子は協働する。このために、例えば、アンカー対向部材は1つ以上のコイルを備え、磁気アンカーは、励磁可能な材料または磁気材料からなっている。アンカー対向部材は、磁気アンカーの端面に設けられている。通常、磁気アンカーとアンカー対向部材とは、磁気アンカーとアンカー対向部材との相対変位と無関係に相互に結合できないように、互いに配置されている。磁気アンカーとアンカー対向部材との間もしくは磁気アンカーにおけるアンカー対向部材に向いた端面とアンカー対向部材における磁気アンカーに向いた端面との間、すなわち、磁気アンカー端面とアンカー対向部材端面との間には、ギャップ、いわゆるエアギャップもしくは作業エアギャップが提供されている。エアギャップの大きさは、アンカー対向部材に対する磁気アンカーの位置に関係している。したがって、エアギャップの大きさは、磁気アンカーとアンカー対向部材とが相対変位した場合に変化する。エアギャップという概念は、磁気アンカー端面とアンカー対向部材端面との間に提供されたギャップが実際に空気によって充填されているということを意味するものではない。むしろ、エアギャップは任意の媒体によって充填され、磁気アンカーとアンカー対向部材とを離間させるための役割のみを果たす。
【0003】
磁気アンカーとアンカー対向部材とは共に調節装置を構成する。この調節装置によって生成可能な、磁気アンカーとアンカー対向部材とを相対変位させる磁力は、エアギャップの大きさによって特徴づけられる。すなわち、磁力はエアギャップの大きさに関係しており、磁力はエアギャップが小さくなるにつれて著しく、一般に飛躍的に増大する。エアギャプが小さくなった場合に磁力がこのような著しく増大すると、電磁石装置の恒常的な調節もしくは比例制御が困難になる。
【0004】
一般に電磁石装置はばね素子を備え、ばね素子は、磁気アンカーを所定位置の方向に押しやるばね力を誘起する。電磁石装置が電磁弁として構成されている場合、電磁弁は、例えば非通電状態で閉じられている電磁弁であってもよい。この場合、ばね力は、磁気アンカーが閉鎖位置の方向に押しやられるように向けられ、この閉鎖位置では、電磁弁のシール素子は電磁弁の弁座に位置し、弁開口は閉じられている。しかしながら、電磁弁は代替的に日通電状態で開放されている電磁弁として構成されていてもよい。この場合、ばね力は磁気アンカーを開放位置の方向に押しやり、この開放位置でシール素子は弁座を解放する。電磁石装置の製造もしくは組付けの際に、ばね素子の予荷重を調節することが不可欠である。従来技術により既知の電磁石装置では、このような調節はかなりの手間を伴う。ばね力もしくは予荷重の調節は、アンカー対向部材との支持接触を形成するために設けた中間素子を案内凹部に配置することにより簡易化することができる。この場合、中間素子は軸線方向に可動に支承されており、したがって、案内凹部の内部で摺動可能である。
【0005】
したがって、ばね素子を磁気アンカーとアンカー対向部材との間に直接に配置することはもはや不可欠ではない。むしろ、ばね素子によってばね力を加えられる中間素子を介して磁気アンカーとアンカー対向部材との間に作用結合が形成される。したがって、例えば非通電状態で閉じられている電磁弁では、電磁弁が通電されていない場合には磁気アンカーがアンカー対向部材によってさらに押しやられる。すなわち、調節装置によって磁力は生成されないか、もしくは生成された磁力はばね素子によって生じたばね力よりも小さい。中間素子に向いていない側でばね素子がシール素子で支持されるように、シール素子を磁気アンカーに設けた場合には、例えば、シール素子を磁気アンカーに繰り返し圧入することによってばね力もしくは予荷重を調節することができる。したがって、ばね力は、組み付けられた電磁石装置で、磁気アンカー、シール素子および中間素子の予荷重によって弁座とアンカー対向部材との間で生成される。ばね素子は、有利には案内凹部に配置してもよい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような電磁石装置では、特に予荷重の調節時の力・距離測定が大きいヒステリシスに屈するという問題が生じることが多い。すなわち、力と距離との間の関係の再現可能性は極めて劣悪であるか、もしくは測定値のばらつきが極めて大きい。これにより、電磁石装置の調節、特にばね素子の予荷重の調節は極めて手間および時間がかかるものとなる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
これに対して、請求項1に記載の特徴を有する電磁石装置は、調節時の力・距離測定のヒステリシスが改善され、したがって低減され、測定値の再現可能性が改善されるという利点を有している。このことは、本発明によれば、中間素子が少なくとも部分的に錐形であることにより達成される。すなわち、中間素子は、少なくとも1つの錐形の部分を有している。錐形とは、特に錐体または錐台のことである。特に好ましくは、錐形は円形横断面を有し、したがって、円錐体もしくは円錐台の形状で提供される。中間素子の少なくとも一部を錐形に構成することにより、案内凹部における中間素子の摩擦を著しく減じることができる。摩擦が低減されたことにより、特に電磁石装置の調節時に力と距離との関係の再現可能性の改善が実現する。これにより、ヒステリシスも低減される。
【0008】
本発明の別の構成では、中間素子は、磁気アンカーにおけるアンカー対向部材に向いた側に設けられた貫通開口に係合し、この貫通開口は中間素子のための半径方向案内を形成している。したがって、案内凹部の他に貫通開口が磁気アンカーに形成されている。有利には、案内凹部と貫通開口とは同じ凹部によって構成され、凹部は、このために例えば磁気アンカー内に段付き孔として提供されている。貫通開口によって中間素子の半径方向案内を提供するために、貫通開口には中間素子の軸線方向に、案内凹部におけるよりも中間素子が大きい領域が提供されている。貫通開口は、例えば磁気アンカーにおけるアンカー対向部材に向いた端面を貫通する。貫通開口は、中間素子の軸線方向の移動は容易に可能であるが、半径方向には確実に保持されているように、中間素子の寸法に合わせて調整される。
【0009】
半径方向案内は、例えば、中間素子の寸法を貫通開口の寸法に実質的に対応させ、中間素子を貫通開口の壁部に当接させることによって構成される。しかしながら、中間素子が貫通開口の寸法に部分的にのみ対応する寸法を有し、中間素子の一部にのみ半径方向案内が提供されている場合、特に有利である。したがって、中間素子は半径方向案内を形成するために貫通開口の壁部に一貫して当接しているのではなく、中間素子における軸線方向に延在する領域についてのみ貫通開口の壁部に当接している。
【0010】
本発明の別の構成では、貫通開口の横断面は案内凹部の横断面に比べて小さい。このようにして、磁気アンカーには、中間素子の軸線方向運動を制限する終端ストッパが形成される。このために、中間素子におけるアンカー対向部材に向いていない領域は貫通開口よりも大きく、中間素子は貫通開口を通過することができない。
【0011】
本発明の別の構成では、案内凹部は、貫通開口に向いた側に少なくとも部分的に錐形の横断面減衰領域を有している。横断面減衰領域は、案内凹部の横断面を貫通開口の横断面に適合させるために設けられている。この場合、横断面の恒常的な経過が横断面減衰領域に提供されていることが望ましく、したがって、案内凹部の横断面は、横断面減衰領域の軸線方向延在長さにわたって連続的または恒常的に貫通開口の横断面に向かう。
【0012】
本発明の別の構成では、中間素子の錐形領域が磁気アンカーおよびアンカー対向部材の互いに対する少なくとも1つの位置で少なくとも部分的に横断面減衰領域に配置されており、特に横断面減衰領域の壁部と、センタリング状態における接触(Zentrierkontakt)している。この位置は、好ましくは、ばね素子のばね力が磁気アンカーもしくはアンカー対向部材を押しやる位置である。この位置で、中間素子の錐形領域は同様に錐形横断面減衰領域に配置されていることが望ましい。中間素子が、この位置で横断面減衰領域の壁部と接触しており、磁気アンカーに対して中間素子のセンタリングが行われる場合、特に有利である。したがって、接触とはセンタリングされた状態における接触と解釈すべきである。
【0013】
本発明の別の構成では、中間素子は周面に、縁部が開放され、少なくとも部分的に中間素子の長さにわたる少なくとも1つの軸線方向溝を有している。磁気アンカーとアンカー対向部材とが相互に変位した場合、通常、中間素子は案内凹部で同様に変位させられる。案内凹部における圧力上昇もしくは圧力降下を防止するために、案内凹部と電磁石装置の周辺領域との間で圧力補償を確保する必要がある。特に好ましくは、中間素子の少なくとも1つの軸線方向溝にわたって圧力補償が行われる。この場合、流体経路は磁気アンカーの軸線方向溝と内壁とによって規定される。軸線方向溝は、縁部が開放された状態で中間素子の周面に提供されており、電磁石装置に提供された液体は軸線方向に中間素子に沿って流れることができる。すなわち、液体は案内凹部から流出し、また案内凹部に流入することができる。有利には、複数の軸線方向溝が設けられており、これらの軸線方向溝は、中間素子の周囲に一様に分配して配置されている。例えば、少なくとも2つの軸線方向溝が設けられており、これらは互いに直径上に向かい合っている。
【0014】
本発明の別の構成では、中間素子は支持接触部を形成するために設けられており、支持接触部は、中間素子に設けられた傾動支承部によって形成されており、中間素子は、アンカー対向部材に向いた側に、傾動支承部を形成するために、横断面を減衰した接触領域を有している。中間素子は、支持接触部を形成するために設けられており、したがってアンカー対向部材と支持接触させることができる。この場合、支持接触部は傾動支承部によって形成することが望ましい。すなわち、中間素子は、アンカー対向部材に対して中間素子の傾動もしくは揺動が許可もしくは支援されるように、アンカー対向部材と接触するか、もしくはアンカー対向部材に載置される。傾動もしくは揺動は、この場合、特に電磁石装置の長手方向軸線に実質的に垂直な少なくとも1本の軸線を中心として得られる。この軸線は、好ましくはアンカー対向部材の端面に位置する。このように磁気アンカーもしくはアンカー対向部材に対する中間素子の傾動により横方向力が生じることはない。少なくとも生じた横方向力は低減される。これにより、中間素子と磁気アンカーとの間の摩擦力も低減される。
【0015】
傾動支承部は、原則的に任意に構成してもよい。アンカー対向部材に対する中間素子の上記のような傾動が許可され、この場合に、このような傾動が横方向力発生を誘起することもしくは横方向力に有利に作用することがなければよい。傾動支承部は、好ましくは横断面を減衰した接触領域によって構成されている。この目的で、中間素子の接触領域は球状、球部分状または錐形であってもよい。横断面を減衰した接触領域とは、特にアンカー対向部材の方向に、例えば恒常的に減衰する中間素子の横断面である。中間素子が傾動支承部を形成するためにアンカー対向部材と支持接触する接触領域は、したがって、中間素子におけるアンカー対向部材に向いた領域よりも小さい横断面を有している。中間素子の横断面が恒常的に減衰した場合、特に中間素子の錐形が提供される。したがって、中間素子の接触領域は錐形に形成されている。しかしながら、中間素子の接触領域を球状、球部分状に構成することも有利であることが判明した。
【0016】
本発明の別の構成では、磁気アンカー端面とアンカー対向部材端面との間にエアギャップが提供されており、このエアギャップには、磁気アンカー端面およびアンカー対向部材端面と少なくとも部分的に接触させることが可能で、励磁可能な、および/または曲げ弾性を有する材料からなるディスクが配置されている。既に述べたように、磁気アンカー端面とアンカー対向部材端面との間にはエアギャップが提供されている。このエアギャップにはディスクが配置されており、ディスクは、磁気アンカー端面およびアンカー対向部材端面と少なくとも部分的に接触させることが可能である。電磁石装置の軸線方向に見て、ディスクは磁気アンカーとアンカー対向部材との間に提供されている。換言すれば、エアギャップには、磁気アンカーとアンカー対向部材との少なくとも1つの相対位置で磁気アンカー端面および/またはアンカー対向部材端面と少なくとも部分的に接触したディスクが配置されている。この場合、ディスクは、特に中間素子および/またはばね素子を収容する役割を果たす中央の凹部を有していてもよい。
【0017】
ディスクは、有利には良好に励磁可能な素材、例えば金属からなっており、特にエアギャップに提供された磁束を伝達するために設けられている。磁気アンカー端面およびアンカー対向部材端面が双方ともディスクに接触している場合、磁気分路が提供され、これにより、電磁石装置の調節可能性が改善される。しかしながら、この場合、ディスクは有利には磁気アンカーとアンカー対向部材との相対変位に対してできるだけ小さい力作用を及ぼすことが望ましい。この理由から、ディスクは理想的にはわずかな力を加えることにより軸線方向に変形可能であり、したがって、この方向には剛性が低い。したがって、材料は有利には弾性的である。それにも関らず、ディスクは、変形する力が取り除かれた場合に変形がもとに戻されるほどに曲げ弾性を有し、したがって、ディスクは適宜な戻し力を提供するか、もしくは適宜な弾性を有している。
【0018】
本発明の別の構成では、電磁石装置は電磁弁であり、磁気アンカーは、支承のために電磁弁のシール素子と作用結合されている。このようにして、アンカー対向部材に対して磁気アンカーが変位された場合にシール素子も変位される。シール素子は、一般に電磁弁の弁開口を開閉するために設けられている。シール素子が弁開口を閉鎖するために配置されている場合、一般に、弁開口にもシール素子にも対応した電磁弁の弁座に載置されている。例えば、シール素子は有利には磁気アンカーにおけるアンカー対向部材に向いていない側に設けられた凹部に挿入され、保持される。
【0019】
さらに本発明は、特に上記実施形態にしたがって電磁弁として構成した少なくとも1つの電磁石装置を有する運転手支援装置、特にABS装置、TCS装置またはESP装置に関し、電磁石装置は、磁気アンカーおよび磁気アンカーの端面に配置されたアンカー対向部材を備え、磁気アンカーとアンカー対向部材とは相対変位可能であり、磁気アンカーの案内凹部には、アンカー対向部材との支持接触部を形成するために設けられた中間素子が軸線方向に可動に支承されており、中間素子は、アンカー対向部材に向いていない方の側でばね素子と作用結合している。この場合、中間素子は少なくとも部分的に錐形になっている。運転手支援装置の電磁石装置は、上記実施形態にしたがってさらに改良してもよい。
【0020】
図面に示した実施例に基づき、本発明に限定を設けることなしに、本発明をさらに詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】電磁弁として構成し、磁気アンカーの案内凹部に中間素子を配置した電磁石装置を示す断面図である。
【図2】電磁石装置の磁気アンカーの領域を示す詳細断面図である。
【図3】図1および図2に示した中間素子の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は、電磁弁として構成した電磁石装置1を示し、電磁弁は、例えば、ここには示していない運転手支援装置の構成素子である。電磁石装置1は、電磁弁のシール素子3と作用結合した磁気アンカー2を備える。シール素子3は、弁体4に形成された弁座5と協働して電磁弁の流出接続部6と流入接続部7との間の流体接続部を開放もしくは遮断する。ここに示した実施例では、流入接続部7にフィルタ8が配置されている。当然ながら、付加的または代替的に流出接続部6にもフィルタ(ここには図示しない)を配置してもよい。ここに図示した電磁石装置1は、(電磁石装置1の長手方向軸線9に対して)半径方向の流入および軸線方向の流出のための流入接続部7および流出接続部6に対応して設計されている。しかしながら、流入方向もしくは流出方向を任意に設けてもよいこと、すなわち、流出接続部6を流入接続部として用い、流入接続部7を流出接続部として用いてもよいことは自明である。
【0023】
磁気アンカー2の他に、電磁石装置1は、磁気アンカー2と共に電磁石装置1の調節装置11を形成するアンカー対向部材10を備える。アンカー対向部材10は、例えば極鉄心として形成されており、少なくとも1つの電磁コイルを備え、アンカー対向部材10を用いてコイルに電圧を印加することによって(すなわち、電磁石装置1を通電することによって)磁気アンカー2に磁力を加えることができる。磁気アンカー2は、長手方向軸線9に対して軸線方向に摺動可能に支承されており、支承部は、特に電磁石装置1のハウジング12によって構成されている。この場合、ハウジング12にはアンカー対向部材10および弁体4も不動に保持されている。したがって、アンカー対向部材10によって生成された磁力の作用により、磁気アンカー2もしくは弁体4に対して相対的に磁気アンカー2を軸線方向に変位させることができる。図1に示した電磁弁は、非通電状態で閉じられている電磁弁である。すなわち、電磁弁が通電されない場合、すなわち、アンカー対向部材10によって磁力が生成されない場合には、シール素子3はシールした状態で弁座5に載置されている。
【0024】
電磁石装置1の製造時の調節可能性を改善するために、磁気アンカー2の案内凹部13には中間素子14が配置されている。この場合、中間素子14は軸線方向に可動に支承されており、アンカー対向部材10と支持接触することができる。案内凹部13の他に、磁気アンカー2は貫通開口部15を備え、案内凹部13および貫通開口部15は、有利には1つの段付き孔16によって形成されている。貫通開口部15は、案内凹部13よりも小さい横断面、特に案内凹部13よりも小さい直径を有する。同時に、中間素子14は、案内部分17と貫通部分18とからなっている。案内部分17は案内凹部13に配置されており、貫通部分18は部分的に貫通開口部15に位置する。この場合、案内部分17は、貫通部分18よりも大きい断面、すなわち特に貫通部分18よりも大きい直径を有する。この場合、磁気アンカー2には中間素子14のための終端ストッパ19が形成されている。終端ストッパ19は、中間素子14がアンカー対向部材10の方向に磁気アンカー2もしくは段付き孔16から外方に突出することを阻止する。しかしながら、もちろん終端ストッパ19の形成を省略してもよい。案内部分17と比較して貫通部分18の寸法が小さいことにより、磁力を伝達するために(アンカー対向部材10の端面として形成された)極面のほぼ全体を使用することができる。
【0025】
磁気アンカー2の段付き孔16には、中間素子14に向いていない側にシール素子3が挿入されている。この場合、シール素子3は、有利には段付き孔16に圧入されており、したがって、段付き孔16にクランプ状態で保持されている。シール素子3は、弁座5に向いていない側に、シール素子3と中間素子14との間に配置されたばね素子21のための支持面20を備える。この場合、中間素子14は、ばね素子21のための支持面22を備える。ここで説明した電磁石装置1の実施形態では、磁気アンカー2にシール素子3を圧入することによって、例えばコイルばねとして構成したばね素子21の予荷重(Vorspannung)を調節することができる。貫通開口部15における、中間素子14が貫通係合する領域で貫通開口部15の寸法は、特に中間素子14の寸法に適合されるように減衰され、半径方向案内23が形成される。
【0026】
中間素子14には、横断面を減衰した接触領域24が設けられており、この接触領域24は、中間素子14とアンカー対向部材10との間に支持接触部を形成するために、アンカー対向部材10と接触することができる。接触領域24における横断面を減衰した形状により、支持接触部を形成する傾動支承部25が提供される。傾動支承部25は、中間素子14と磁気アンカー2との間の摩擦力を増大する横方向力が生じることなしに中間素子14とアンカー対向部材10とが互いに対して傾動可能となるように作用する。
【0027】
ばね素子21は、中間素子14に作用するばね力をもたらし、磁気アンカー2に対して定置のシール素子3で支持される。ばね力は、中間素子14をアンカー対向部材10の方向に押圧する。したがって、電磁石装置1が通電された場合、磁気アンカー2に、ここで説明した実施例ではアンカー対向部材10の方向に向けられた適宜な磁力が作用し、これにより、磁気アンカー2はアンカー対向部材10に向けて移動させられる。磁気アンカー2が、中間素子14とアンカー対向部材10とが接触または支持接触する、アンカー対向部材10に対する軸線方向位置に到達するとすぐに、中間素子14は案内凹部13の内方へ、すなわち、シール素子3に向けて変位させられる。この場合にばね素子21はさらに緊締される。磁力がなくなると、磁気アンカー2は再びアンカー対向部材10によって押しのけられる。したがって、ここで提案した実施形態では磁気アンカー2は中間素子14によって戻され、中間素子14はアンカー対向部材10と支持接触している。しかしながら、磁気アンカー2を戻すために別のばね素子(ここには示していない)を使用してもよい。この場合、特に磁気アンカー2の少なくとも1つの位置で中間素子14をアンカー対向部材10から離間させ、磁気アンカー2とアンカー対向部材10とが互いに向けて移動した場合にはじめてアンカー対向部材10と支持接触させてもよい。
【0028】
電磁石装置1の調節力を改善するために、磁気アンカー2とアンカー対向部材10との間もしくは磁気アンカー端面26とアンカー部材端面27との間に提供されたエアギャップにディスク28が配置され、このディスク28を、磁気アンカー端面26およびアンカー対向部材端面27と少なくとも部分的に接触させることができる。図1に示した電磁石装置1では、磁気アンカー2とアンカー対向部材10とのそれぞれの相対位置における相互接触が提供される。しかしながら、電磁石装置1をディスク28なしに構成することも当然ながら可能である。磁気アンカー端面26は凹状に構成されており、中心がアンカー対向部材10に対して最大限に離間しているように湾曲されている。これに対してアンカー対向部材端面27は凸状に構成されており、したがって、磁気アンカー2の方向に外方に向けた湾曲部を有している。磁気アンカー端面26とディスク28との間の接触部は、第1接触箇所29で提供される。アンカー対向部材端面27とディスク28との間に接触が提供される第2接触箇所30は、第1接触箇所29よりも半径方向内側に設けられている。接触箇所29および30は重ならないように半径方向に相互に離間されている。
【0029】
図1は、中間素子14が少なくとも部分的に錐形に構成されていること、すなわち、錐形領域31を有していることも示している。錐形領域31は案内部分17に位置しており、特に貫通部分18の内部の寸法まで寸法を減衰させるための役割を果たす。同時に案内凹部13は、貫通開口15に向いた側に横断面減衰領域32を有している。横断面減衰領域32は、有利には同様に少なくとも部分的に錐形であり、有利には完全に錐形に構成されている。この場合、錐形とは、錐体または錐台であり、特に好ましくは、円錐体または円錐台のことである。有利には電磁石装置1は、中間素子14の錐形領域31が磁気アンカー2とアンカー対向部材10との少なくとも1つの相互位置で少なくとも部分的に横断面減衰領域32に配置されているように構成されている。この場合、錐形領域31は、この位置で、有利には横断面減衰領域32の壁部と接触する。中間素子14および横断面減衰領域32の錐形により、この接触は磁気アンカー2に対する中間素子14のセンタリングをもたらす。この点で、中間素子14と磁気アンカー2との間にセンタリング状態における接触が提供される。
【0030】
図2は、電磁石装置1もしくは磁気アンカー2の詳細断面図を示し、磁気アンカー2の他には中間素子14、シール素子3およびばね素子21のみが示されている。図2に示した磁気アンカー2および中間素子14の構成は、図1に基づき説明したものに実質的に対応している。この点では、上述の実施形態を参照されたい。終端ストッパ19は、中間素子14の錐形領域31および横断面減衰領域32によって示されている。したがって、中間素子14は軸線方向に磁気アンカー2から外方に突出しない。
【0031】
図3は、中間素子14の詳細図を示す。中間素子14が軸線方向溝33を備えていることが明確に示されている。この場合、中間素子14の周にわたって4つの軸線方向溝33が一様に分配して配置されており、それぞれ2つの軸線方向溝33は、直径方向に向かい合っている。図3は錐形領域31も示している。全体として、中間素子14が実質的に円筒形の2つの領域、すなわち、案内部分17と貫通部分18とからなっており、これらの間に錐形領域31が配置されていることが明らかである。中間素子14および横断面減衰領域32の錐形領域は協働して、磁気アンカー2に対して中間素子14を確実にセンタリングさせるために働く。このようにして、中間素子14と磁気アンカー2との間の摩擦を低減することができる。したがって、電磁石装置1の調節前に行われる測定時に中間素子14の出発位置が正確に規定され、この場合に実施された力・距離測定の結果は、従来技術により既知の電磁石装置1の場合よりもばらつきが少ない。このようにして、測定のヒステリシスを低減することもできる。中間素子14に縁部が開放された状態で提供された軸線方向溝33を設けることにより、液圧減衰に対する中間素子14の影響を調節することができる。
【符号の説明】
【0032】
1 電磁石装置
2 磁気アンカー(磁気留め具)
3 シール素子
4 弁体
5 弁座
6 流出接続部
7 流入接続部
8 フィルタ
9 長手方向軸線
10 アンカー対向部材(留め具対向部材)
11 調節装置
12 ハウジング
13 案内凹部
14 中間素子
15 貫通開口部
16 段付き孔
17 案内部分
18 貫通部分
19 終端ストッパ
20 支持面
21 ばね素子
22 支持面
23 半径方向案内
24 接触領域
25 傾動支承部
26 磁気アンカー端面(磁気留め具端面)
27 アンカー部材端面(留め具端面)
28 ディスク
29 第1接触箇所
30 第2接触箇所
31 錐形領域
32 横断面減衰領域
33 軸線方向溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気アンカー(2)と該磁気アンカー(2)の端面に配置したアンカー対向部材(10)とを有する電磁石装置であって、前記磁気アンカー(2)と前記アンカー対向部材(10)とが互いに相対変位可能であり、前記磁気アンカー(2)の案内凹部(13)に、前記アンカー対向部材(10)との支持接触部を形成するために設けた中間素子(14)が軸線方向に可動に支承されており、該中間素子(14)が、前記アンカー対向部材(10)に向いていない側でばね素子(21)と作用結合している、電磁石装置において、
前記中間素子(14)が少なくとも部分的に錐形であることを特徴とする電磁石装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電磁石装置において、
前記中間素子(14)が、前記磁気アンカー(2)における前記アンカー対向部材(10)に向いた側に設けられた貫通開口(15)に係合し、該貫通開口(15)が前記中間素子(14)のための半径方向案内(23)を形成している、電磁石装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電磁石装置において、
前記貫通開口(15)の横断面が前記案内凹部(13)の横断面に比べて小さい、電磁石装置。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか一項に記載の電磁石装置において、
前記案内凹部(13)が、前記貫通開口(15)に向いた側に少なくとも部分的に錐形の横断面減衰領域(32)を有している、電磁石装置。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれか一項に記載の電磁石装置において、
前記中間素子(14)の錐形領域(31)が、前記磁気アンカー(2)および前記アンカー対向部材(10)の互いに対する少なくとも1つの位置で、少なくとも部分的に前記横断面減衰領域(32)に配置されており、特に該横断面減衰領域(32)の壁部と、センタリングされた状態で接触している、電磁石装置。
【請求項6】
請求項1から5までのいずれか一項に記載の電磁石装置において、
前記中間素子(14)が、周面に、縁部が開放され、少なくとも部分的に中間素子(14)の長さにわたる少なくとも1つの軸線方向溝(33)を有している、電磁石装置。
【請求項7】
請求項1から6までのいずれか一項に記載の電磁石装置において、
前記中間素子(14)が支持接触部を形成するために設けられており、該支持接触部が、前記中間素子(14)に設けられた傾動支承部(25)によって形成され、前記中間素子(14)が、前記アンカー対向部材(10)に向いた側に、前記傾動支承部(25)を形成するために横断面を減衰した接触領域(24)を有している、電磁石装置。
【請求項8】
請求項1から7までのいずれか一項に記載の電磁石装置において、
磁気アンカー端面(26)とアンカー対向部材端面(27)との間にエアギャップが提供されており、該エアギャップに、前記磁気アンカー端面(26)および前記アンカー対向部材端面(27)と少なくとも部分的に接触させることが可能であり、励磁可能な、および/または曲げ弾性を有する材料からなるディスク(28)が配置されている、電磁石装置。
【請求項9】
請求項1から8までのいずれか一項に記載の電磁石装置において、
前記電磁石装置(1)が電磁弁であり、前記磁気アンカー(2)が、該磁気アンカー(2)の支承のために前記電磁弁のシール素子(3)と作用結合されている、電磁石装置。
【請求項10】
特に請求項1から9までのいずれか一項に記載の、電磁弁として構成した少なくとも1つの電磁石装置(1)を有する運転手支援装置、特にABS装置、TCS装置またはESP装置であって、前記電磁石装置(1)が、前記磁気アンカー(2)および磁気アンカー(2)の端面に配置されたアンカー対向部材(10)を備え、前記磁気アンカー(2)と前記アンカー対向部材(10)とが互いに相対変位可能であり、前記磁気アンカー(2)の案内凹部(13)に、前記アンカー対向部材(10)との支持接触部を形成するために設けられた中間素子(14)が軸線方向に可動に支承されており、該中間素子(14)が、前記アンカー対向部材(10)に向いていない方の側でばね素子(21)と作用結合している形式の運転手支援装置において、
前記中間素子(14)が、少なくとも部分的に錐形であることを特徴とする運転手支援装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−77908(P2012−77908A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−203120(P2011−203120)
【出願日】平成23年9月16日(2011.9.16)
【出願人】(591245473)ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング (591)
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【Fターム(参考)】