電磁誘導加熱用樹脂製食器
【課題】電磁誘導加熱を繰り返しても剥離や割れが生じることがなく、且つ、成形時に封入した金属が破損して電磁誘導加熱が十分に行われなくなることを防止することが出来る電磁誘導加熱用樹脂製食器の提供。
【解決手段】第1の樹脂成形部材(1)と第2の樹脂成形部材(2)と金属製網(3)とを有し、第1の樹脂成形部材(1)と第2の樹脂成形部材(2)とは積層されており、金属製網(3)の一部(31)は第1の樹脂成形部材(1)に埋没し、金属製網(3)の残りの部分は第1の樹脂成形部材(1)と第2の樹脂成形部材(2)との間に封入されており、第2の樹脂成形部材(2)の樹脂材料(M)供給位置は、金属製網(3)が第1の樹脂成形部材(1)に埋没している位置(中央部31)に対応している。
【解決手段】第1の樹脂成形部材(1)と第2の樹脂成形部材(2)と金属製網(3)とを有し、第1の樹脂成形部材(1)と第2の樹脂成形部材(2)とは積層されており、金属製網(3)の一部(31)は第1の樹脂成形部材(1)に埋没し、金属製網(3)の残りの部分は第1の樹脂成形部材(1)と第2の樹脂成形部材(2)との間に封入されており、第2の樹脂成形部材(2)の樹脂材料(M)供給位置は、金属製網(3)が第1の樹脂成形部材(1)に埋没している位置(中央部31)に対応している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食物或いは食材を収容し、調理に際して或いは食事直前に、収容された食物或いは食材を適温に加熱することが出来る電磁誘導加熱用樹脂製食器に関する。
【背景技術】
【0002】
病院や、老人ホーム等の各種施設において、チルド状態の食品を食器に載せ、かかる食器をトレイに載せ、このトレイをカートに入れ、カートの内部で食材を再加熱する方法が普及している。食材を再加熱するに際しては、食器を熱風やヒーターにより加熱し、或いは電磁誘導加熱を行なう手法が提案されている。
ここで、熱風による再加熱は熱効率が極めて悪く、多大な電力を消費してしまう。また、再加熱するべき食物が熱風によって乾燥してしまい、風味や食感を大幅に損なってしまうおそれがある。
【0003】
ヒーターによる加熱は、温度制御がし易いという利点がある。
しかし、ヒーターで加熱するためには、孔の開いた専用トレイが必要になる。または、トレイの上にヒーターを組み込む必要があるため、トレイの構造が複雑になってしまうという問題が存在する。
【0004】
電磁誘導加熱を利用した再加熱であれば、熱風による再加熱や、ヒーター加熱における上述した様な問題点は生じない。
近年、電磁誘導加熱を利用した調理用器具が提供されており、電磁誘導加熱を利用した容器として、金属製の鍋や炊飯器等が提案されている。
しかし、容器を樹脂で構成した場合には、樹脂は非導電体材料であるため、電磁誘導加熱により容器の内容物を加熱することが出来ない。
【0005】
樹脂製容器では電磁誘導加熱により内容物を加熱することが出来ないという問題を解決するため、渦電流が流れる導電体、例えば薄い鋼板を樹脂製容器の底面に配置する方法がある。しかし、当該薄い鋼板が食器と一体化しない為、使用中に薄い鋼板と食器が分離してしまうという問題が存在する。
【0006】
これに対して、樹脂製食器に金属板を2層の樹脂間に挟み込み、一体的に成形することにより樹脂製食器を構成すれば、電磁誘導加熱により内容物を加熱することが出来て、しかも、使用中に薄い鋼板と食器が剥離してしまうことが防止される。
その様に金属板を挟み込んだ樹脂製食器の製造技術として、射出成形で樹脂製の内側成形品を成形し、その外側に金属板を接合し、その複合品を金型にセットし、複合品の外側に樹脂材料を射出して一体に成形し、電磁誘導加熱に対処出来る樹脂製食器を製造する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
しかし、この従来技術(特許文献1)では、樹脂と金属の密着性が十分とは言い難く、内側成形品と外側成形品とが剥離する場合がある。また、樹脂と金属板との熱膨張率の違いにより、食器に割れが生じる場合もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−193529号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上述した従来技術の問題点に鑑みて提案されたものであり、電磁誘導加熱を繰り返しても剥離や割れが生じることがなく、且つ、成形時に封入した金属が破損して電磁誘導加熱が十分に行われなくなることを防止することが出来る電磁誘導加熱用樹脂製食器の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の電磁誘導加熱用樹脂製食器(100)は、第1の樹脂成形部材(1)と第2の樹脂成形部材(2)と金属製網(3)とを有し、第1の樹脂成形部材(1)と第2の樹脂成形部材(2)とは積層されており、第1の樹脂成形部材(1)は食器の内側(図1の矢印11参照)に位置しており、金属製網(3)の一部(中央部31)は第1の樹脂成形部材(1)の中央部に埋没して配置され、金属製網(3)の残りの部分は第1の樹脂成形部材(1)と第2の樹脂成形部材(2)との間に封入されており、第2の樹脂成形部材(2)の樹脂材料(M)供給位置は、金属製網(3)が第1の樹脂成形部材(1)に埋没している位置(中央部31)に対応している(第2の樹脂成形部材2の樹脂材料M供給位置を水平面に投影した位置が、金属製網3の中央部31を水平面に投影した領域に包含されている)ことを特徴としている。
【0010】
本発明の実施に際して、前記金属製網(3)の電気抵抗値は2〜40×10−8ρ/Ωmであることが好ましい。そして、前記金属製網(3)の網目は20〜120メッシュであり、金属製網(3)を構成する線材の直径は0.03〜0.5mmであることが好ましい。
【0011】
上述した電磁誘導加熱用樹脂製食器(100)を成形するのに用いられる本発明の食器製造装置(請求項1の電磁誘導加熱用樹脂製食器を成形する食器製造装置)は、射出成形金型装置(56)と、押圧加熱冶具(7)を有し、
射出成形金型装置(56)は凸型装置(5)と凹型装置(6)を備え、
凸型装置(5)は、中央部に金属製網(3)を配置した状態の第1の樹脂成形部材(1)を(その上に被せて)保持する形状であり、
凹型装置(6)には第2の樹脂成形部材(2)の樹脂材料を供給する材料供給通路(材料注入経路61)及び材料注入口(62)が設けられており、当該材料注入口(62)を水平面に投影した位置は金属製網(3)の中央部(31)を水平面に投影した領域に包含されており、
押圧加熱冶具(7)は、前記金属製網(3)の中央部(31)を、第1の樹脂成形部材(1)における第2の樹脂成形部材(2)側(樹脂材料Mが供給される側)に押圧しつつ加熱する機能を有していることを特徴としている。
【0012】
上述した電磁誘導加熱用樹脂製食器(100)を製造する本発明の製造方法(請求項1の電磁誘導加熱用樹脂製食器の製造方法)は、
容器状に成形された第1の樹脂成形部材(1)外側(図2の矢印13参照)の中央に金属製網(3)を配置する工程と、
第1の樹脂成形部材(1)の外側中央部に配置された金属製網(3)の中央部(31)を加熱押圧冶具(7)によって押圧しつつ加熱して、金属製網(3)の中央部(31)を第1の樹脂成形部材(1)に埋設する工程と、
前記埋設する工程の後に、金属製網(3)の中央部(31)が埋設された状態の第1の樹脂成形部材(1)を凸型装置(5)上に(被せて)配置する工程と、
凸型装置(5)と凹型装置(6)を当接して、第1の樹脂成形部材(1)と凹型装置(6)の成形面(6f)との間における空隙(E)に、凹型装置(6)の材料注入口(62)から樹脂材料(M:第2の樹脂成形部材2の材料となる樹脂材料)を充填する工程を有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
上述する構成を具備する本発明の電磁誘導加熱用樹脂製食器(100:請求項1の電磁誘導加熱用樹脂製食器)によれば、電磁誘導加熱用の部材としてソリッドタイプの金属板ではなく金属製網(3)を封入しているため、金属と樹脂との熱膨張率の差を吸収することが出来る。その結果、出来上がった当該食器に熱膨張率の差による割れや変形等の不具合は生じない。
【0014】
また、第2の樹脂成形部材(2)を成形する際に、金型の材料供給通路(61)及び材料注入口(62)を介して注入される樹脂材料(M)が、金属製網(3)の目に入り込み、第1の樹脂成形部材(1)或いは第2の樹脂成形部材(2)と一体化する。その結果、金属製網(3)が第1の樹脂成形部材(1)及び第2の樹脂成形部材(2)と一体化して、且つ、第1の樹脂成形部材(1)と第2の樹脂成形部材(2)との密着性が向上する。
そして、金属製網(3)が第1の樹脂成形部材(1)と第2の樹脂成形部材(2)との間に積層され、電磁誘導加熱を繰り返しても、剥離や割れが生じることがない。
【0015】
ここで、第1の樹脂成形部材(1)及び第2の樹脂成形部材(2)間に金属製網(3)を封入する場合には、第1の樹脂成形部材(1)の外側に金属製網(3)を配置して、樹脂材料(M)を注入して第2の樹脂成形部材(2)を成形することにより行なわれる。
ここで、注入される樹脂材料(M)が平坦な金属製網(3)に直接衝突し、衝突後、半径方向外方に向かって流れるので、注入される樹脂が保有する運動エネルギーにより、金属製網(3)が千切られて、千切られた金属製網(3)の片が半径方向外方に偏奇して、例えば図12で示す様な状態となってしまう恐れがある。或いは、金属製網(3)が千切れなくても、第1の樹脂成形部材(1)の中央部(食器100の中心位置)から偏奇する可能性が存在する。
そして金属製網(3)が千切れた状態(図12で示す様な状態)となり、或いは、食器(100)の中心から偏奇してしまうと、電磁誘導による加熱は金属製網(3)が存在する領域でしか起こらないので、食器(100)の中心部分が加熱されず、食器(100)内の食物の加熱が不十分になるという問題が発生する。
【0016】
これに対して本発明によれば、第1の樹脂成形部材(1)の外側に金属製網(3)が配置された中心部を加熱押圧冶具(7)によって押圧しつつ加熱して、金属製網(3)の一部(押圧加熱冶具7で押圧・加熱された金属製網の中央部31)を第1の樹脂成形部材(1)に埋没させている。そして、当該埋没した箇所(31)の位置(水平面の投影位置)は、第2の樹脂成形部材(2)成形時の第2の樹脂成形部材(2)の材料樹脂の供給位置(材料注入口62:水平面の投影位置)を包含している。
そのため、第2の樹脂成形部材(2)の成形時に、材料注入口(62)から注入される樹脂材料(M)が、第1の樹脂成形部材(1)における前記金属製網(3)が埋没した箇所(31)に衝突して、半径方向外方に向かって、全周方向(中心角360°全範囲)に流れたとしても、金属製網(3)の中央部(31)が第1の樹脂成形部材(1)に埋没しているため、当該金属製網(3)が千切れてしまうことはなく、また、その位置を偏奇してしまうこともない。
【0017】
注入時の樹脂材料(M)の流れによって金属製網(3)が千切れてしまうことや、所定の位置からずれてしまうことが防止できるので、本発明の電磁誘導加熱用樹脂製食器(100:請求項1の電磁誘導加熱用樹脂製食器)によれば、金属製網(3)は常に適正な位置に配置されて、電磁誘導により食器内の食物が効率良く加熱される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態に係る電磁誘導加熱用樹脂製食器の縦断面と平面を示す図である。
【図2】実施形態で用いられる第1の樹脂成形部材の縦断面と平面を示す図である。
【図3】実施形態に係る電磁誘導加熱用樹脂製食器を製造する際に用いる押圧加熱冶具の縦断面と平面を示す図である。
【図4】実施形態に係る電磁誘導加熱用樹脂製食器を製造する際に用いる射出成形金型装置の断面図である。
【図5】実施形態において、金属製網を第1の樹脂成形部材に配置した状態の縦断面と底面を示す図である。
【図6】実施形態において、第1の樹脂成形部材に配置した金属製網を押圧加熱冶具で押圧しつつ加熱する状態を示す縦断面図である。
【図7】図6のA部拡大図である。
【図8】図6の工程の後、金属製網の一部を埋設した状態の第1の樹脂成形部材を射出成形金型装置に設置した状態を示す縦断面図である。
【図9】凸型装置と凹型装置を当接して、第2の樹脂成形部材の材料を注入する状態を示す縦断面図である。
【図10】図9の工程の後、凸型装置と凹型装置を離隔した状態を示す縦断面図である。
【図11】従来技術の電磁誘導加熱用樹脂製食器の成形過程において、金属製網が破損して分断した状態を縦断面と平面で示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
図1において、全体を符号100で示す電磁誘導加熱用樹脂製食器(食器100)は、第1の樹脂成形部材1、第2の樹脂成形部材2、金属製網3を有している。
ここで、第1の樹脂成形部材1及び第2の樹脂成形部材2の材料としては、例えば、PPS(ポリフェニレンサルファイド樹脂)、PES(ポリエーテルサルフォン樹脂)、PEEK(ポリエーテル・エーテル・ケトン樹脂)、PSF(ポリサルフォン樹脂)、SPS(シンジオタクチックポリスチレン)等、耐熱性が高い樹脂が好ましい。特に、PPSは高割合で添加剤等を配合することが出来るので、成形性を向上し、炭素繊維等を添加して熱伝導効率が良好な樹脂を配合することが出来るので、好適である。
【0020】
第1の樹脂成形部材1と第2の樹脂成形部材2は重なり合って、或いは積層して配置されており、第1の樹脂成形部材1は食器100の内側(食物に接触する側)、図1(a)では上方に配置されている。図2で示すように、第1の樹脂成形部材1において食器100の内側は符号11で示されており、食器100の外側は符号12で示されている。
図1において、符号10は食器100の高台を示し、符号D10は高台の内径寸法を示している。
【0021】
図1で示すように、金属製網3は、第1の樹脂成形部材1、第2の樹脂成形部材2或いは食器100の中心に位置している。そして金属製網3は、第1の樹脂成形部材1と第2の樹脂成形部材2との間に封入されている。
そして、金属製網3は、図1(a)で示すように、食器100の底部よりも上方の領域(高台10よりも半径方向外方で且つ上方の領域)まで延在している。金属製網3の周縁部が高台10よりも半径方向内側の領域に位置している場合には、IH加熱に際して、当該周縁部が高温になってしまう恐れが存在する。これに対して、金属製網3の周縁部が高台10よりも半径方向外方で且つ上方の領域に位置していれば、IH加熱に際して、金属製網3の周縁部が昇温し過ぎてしまうことはない。
【0022】
金属製網3(例えば、樹脂に対して10倍以上の熱伝導率を有する材料製の網)の大部分は第1の樹脂成形部材1、第2の樹脂成形部材2と直接接触している。
しかし、金属製網3の中央部31は、後述する様に、押圧加熱冶具7によって第1の樹脂成形部材1の中央に埋め込まれている。
金属製網3の中央部31は、その中心点が、凹型装置6(第2の樹脂成形部材2を射出成形するための型を有する装置:図4参照)における材料注入口62(図4参照)の中心に一致している。材料注入口62は、第2の樹脂成形部材2を成形する際に、樹脂材料を注入する経路である。
【0023】
金属製網3の電気抵抗値は、例えば、2〜40×10−8ρ/Ωmである。係る電気抵抗値は、例えば黄銅や青銅製の金属製網3が、樹脂が溶けない程度に、効率よく誘導加熱される範囲として選定されている。
金属製網3の網目は20〜120メッシュであり、金属製網3の線形素材の直径は0.05〜0.5mmである。特に、金属製網3の線形素材の直径としては、0.1〜0.3mmの範囲であることが好ましい。
金属製網3の網目が小さ過ぎると、樹脂材料が網目を潜り抜けることが出来ない可能性があり、網目が大き過ぎると、金属製網3が破損、分断してしまう恐れがある。
【0024】
実施形態で用いられる押圧加熱冶具7について、図3を参照して説明する。押圧加熱冶具7は、上述した様に、金属製網3の中心を、第1の樹脂成形部材1の外側13(図2参照)表面の中心に埋め込むために用いられる。
図3において、押圧加熱冶具7は、ベース部材71、押圧部材72、押圧補助部材73、加熱部材(例えばニクロム線)74を有している。
押圧部材72は、ベース部材71における一方の表面(図3では上面)の中心に設けられ、その内部には加熱部材(例えばニクロム線)74が配置されている。図3では、ベース部材71は、円盤状に構成されている。
尚、加熱の熱源として別に加熱機構を有する熱板等にベース部材71の外側面71aを貼り付ける等をして外部熱源を利用してもよい。
【0025】
押圧部72の直径d72は、高台10(図1参照)の内径寸法をD10(図1参照)とすれば、
5mm≦d72≦D10
の範囲であることが好ましい。
押圧部72の直径d72が高台10の内径寸法をD10よりも大きいと、金属製網3を第1の樹脂成形部材1に埋め込む際に、押圧部72の縁部が第1の樹脂成形部材1の底部からはみ出してしまう。
一方、押圧部72の直径d72が5mm未満では、第2の樹脂成形部材2の成形時に、材料注入口62から注入される樹脂材料Mが衝突した際に、直径d72の領域(金属製網3が第1の樹脂成形部材1に埋め込まれる領域)よりも半径方向外側に位置している金属製網3が破損して、千切れてしまう。
ここで、図示の実施形態の様に押圧補助部材73を有する場合は、
5mm≦d72≦40mm
であるのが望ましい。
【0026】
図3で示すように、押圧加熱冶具7には4本の押圧補助部材73が設けられている。ここで、4本の押圧補助部材73は、円盤状のベース部材71における半径方向外側の円周方向に(押圧部材72周囲の同一ピッチ円上に)、押圧部材72の中心点に対して点対称に配置されている。
図3(a)で示すように、押圧部材72の高さ方向寸法と、4本の押圧補助部材73の高さ方向寸法は、等しい。すなわち、押圧加熱冶具7において、押圧部材72及び4本の補助押圧部材73の端面は、面一となっている。
押圧補助部材73は、金属製網3の中央部分を加熱して第1の樹脂成形部材1に埋め込む際に、金属製網3が押圧加熱治具7側に反り返らないように抑える作用を奏する。
押圧補助部材73の本数は2本以上、好ましくは3本以上であることが望ましい。但し、押圧補助部材73を省略することも可能である。
【0027】
実施形態の食器100を成形する際に用いられる射出成形金型装置について、図4を参照して説明する。
図4において、食器100を成形する際に用いられる射出成形金型装置56は、凸型装置5と、凹型装置6を有している。ここで、射出成形金型装置56は、第2の樹脂成形部材2を射出成形して食器100を製造する装置であり、凹型装置6は、いわゆる「金型」としての機能を備えている。
凸型装置5は、面(成形面)5fと、面(パーティング面)5pを有している。ここで、面5fは、第1の樹脂成形部材1における容器の内側11(図2参照)と相補の形状を為している成形面である。係る成形面5fを有することにより、凸型装置5は、第1の樹脂成形部材1を被せる様に配置することが出来る形状となっている。すなわち、第1の樹脂成形部材1の内側の凹部が凸型装置5の成形面5fと係合して、第1の樹脂成形部材1を凸型装置5に保持或いは設置するのである。
凸型装置5のパーティング面5pは、凹型装置6を凸型装置5に近接して当接した際に、凹型装置6におけるパーティング面6pと当接する。
【0028】
凹型装置6は、図4の上下方向に移動可能に構成されている。図4における矢印Yは、凹型装置6の移動方向を示している。
凹型装置6は、面6fと面6pを有している。ここで、面6fは、第2の樹脂成形部材2における容器の外側を成形する成形面である。そして、面6pはパーティング面であり、凸型装置5のパーティング面5pと当接する。
【0029】
凹型装置6には材料注入口62が設けられており、材料注入口62は、前記金属製網3の中央部31の中心点に対向する箇所に位置している。材料注入口62から、第2の樹脂成形部材2の成形材料である樹脂が注入される。換言すれば、材料注入口62は材料注入経路61の出口であり、材料注入経路61は、第2の樹脂成形部材2の成形材料である樹脂の流路である。
ここで、材料注入口62は第2の樹脂成形部材2における樹脂材料Mの供給位置であり、材料注入口62(樹脂材料Mの供給位置)を水平面に投影した位置は、金属製網3の中央部31(金属製網3において、第1の樹脂成形部材1内に埋没されている部分)を水平面に投影した領域に包含されている。
【0030】
次に、図示の実施形態に係る食器100の製造過程について説明する。
先ず、図2に示すような予め成形されている第1の樹脂成形部材1を製造する。ここで、第1の樹脂成形部材1の製造については、公知、市販の射出成形装置等(図示は省略)を用いて行われる。
そして、図5で示す様に、第1の樹脂成形部材1の底部12bに、金属製網3を配置する(一時的に固着させる)。ここで、図5(a)では、第1の樹脂成形部材1の下方に金属製網3が配置して示されているが、製造に際しては、例えば図6で示すように、第1の樹脂成形部材1の天地を逆にして底部12bを上にして、底部12b上に金属製網3を載置する。
【0031】
第1の樹脂成形部材1の底部12bに金属製網3を配置したならば、金属製網3を配置した第1の樹脂成形部材1を、押圧加熱冶具7を設けた領域において、図6で示す様に、配置する。
図6において、押圧加熱冶具7の下方には基部7Bが位置しており、基部7Bは突起7Tを備え、金属製網3を配置した第1の樹脂成形部材1は、当該突起7Tに緩く嵌合して配置されている。
【0032】
図6で示すように、金属製網3を配置した第1の樹脂成形部材1が突起7Tに嵌合して配置した状態で、押圧加熱冶具7を下降し(押圧加熱冶具7を図6の矢印F方向に移動し)、金属製網3に接近させる。そして、押圧加熱冶具7の押圧部材72及び押圧補助部材73を金属製網3に当接する。
押圧加熱冶具7の押圧部材72は、金属製網3に当接する以前の段階で、加熱部材74によって十分に昇温している。
そして、図7に示すように、押圧部材72の先端位置或いは金属製網3が、第1樹脂成形部材1の表面から所定量δだけ、第1の樹脂成形部材1の内部に埋め込まれるまで、金属製網3が押圧部材72により押圧される。
【0033】
第1の樹脂成形部材1は、加熱された押圧部材72が当接することにより軟化する。そして、金属製網3の押圧された部分31は、軟化した第1の樹脂成形部材1の厚み方向の所定の深さδ(図7参照)まで、埋め込まれる。
ここで、所定の深さδは、第1の樹脂成形部材1の厚みをT1とすれば、以下の範囲が望ましい。
0≦δ≦T1/2
所定の深さδの最大値をT1/2としているのは、これ以上深く埋め込むと、容器(食器)100の内面、すなわち、食品が盛り付けられる面に凹凸が生じて、食器として不都合だからである。換言すれば、「T1/2」は金属製網3が埋没する深さの限界値である。
図7において、符号T2は第2の樹脂成形部材2の厚みを示している。
【0034】
金属製網3が第1の樹脂成形部材1の厚み方向の所定の深さδ(図7参照)まで埋没したならば、押圧加熱冶具7を上昇して(図6で矢印Fとは逆方向へ移動して)、押圧加熱冶具7を第1の樹脂成形部材1から離隔する。
押圧加熱冶具7が上昇して、図6において点線で示す位置まで到達したならば、金属製網3の一部が底部に埋め込まれた第1の樹脂成形部材1を、押圧加熱冶具7下方の基部7B(図6参照)から取り外す。
そして図8で示す様に、金属製網3の一部が埋め込まれた第1の樹脂成形部材1を、射出成形金型装置56の凸型装置5に被せて、設置する。図8は、押圧加熱冶具7による金属製網3(及び第1の樹脂成形部材1)への押圧・加熱処理が終了して、金属製網3の一部が底部に埋め込まれた第1の樹脂成形部材1を、射出成形金型装置56の凸型装置5に設置した状態を示している。
【0035】
図9で示す工程では、凹型装置6を矢印Y1方向に移動して、凸型装置5に近接せしめ、凸型装置5の当接面5pと凹型装置6の当接面6pを当接させる。図9で示す状態となったならば、材料注入経路61及び材料注入口62を経由して、樹脂材料Mを、凸型装置5と凹型装置6の間の空間(隙間)Eに注入する。
ここで隙間Eは、第1の樹脂成型部材1における外側13及び金属製網3と、凹型装置6の成形面6fにより形成される空間である。
樹脂材料Mを注入することにより、第2の樹脂成形部材2が成形される。
【0036】
樹脂材料Mの注入が完了して所定時間が経過したならば、図10で示すように、凹型装置6を上方(矢印Y2方向)に移動して、凹型装置6を凸型装置5から離隔する。
図10の状態では、凸型装置5の成形面5fには、成形が完了した食器100が配置されている。
凹型装置6が所定の位置まで移動(上昇)したならば、成形した食器100を第1の金型5の成形面5fから取り出す。
これにより、食器100の成形が完了する。
【0037】
ここで、押圧加熱部材7を用いて金属製網3を第1の樹脂成形部材1に埋め込むような処置を施さない場合には、次の様な問題が生じることが、出願人が行なった実験(詳細は図示せず)で明らかになっている。
すなわち、金属製網3を第1の樹脂成形部材1に埋め込んでいない場合には、材料注入経路61及び材料注入口62を経由して注入される樹脂材料Mが、平坦な金属製網3に直接衝突し、衝突後、半径方向外方に向かって流れてしまう。その結果、金属製網3が千切れてしまい、千切れた金属製網3は半径方向外方に移動或いは偏奇して、例えば図11で示す様な状態となってしまう。
そして金属製網3が千切れて、半径方向外方に偏奇して、図11で示す様な状態になってしまうと、電磁誘導による加熱は金属製網3が存在する領域でしか起こらないので、食器100の底部全体が加熱されず、食器100内の食物が十分に加熱されないという問題が発生する。
【0038】
或いは、図11で示す様に金属製網3が千切れてしまうことはなくても、樹脂材料Mを注入した際に、金属製網3に樹脂材料Mが衝突するとことにより金属製網3の位置が、食器100の底面中央に相当する位置から移動(偏奇)してしまう恐れがある。
そして、金属製網3が食器100の底面中央位置から偏奇してしまうと、誘導加熱により当該食器100内の食物を加熱する際に、金属製網3の位置と食物の位置とが整合せず、食物の加熱が不十分になってしまう。
【0039】
これに対して、図示の実施形態では、加熱押圧冶具7によって、第1の樹脂成形部材1の金属製網3の中心部を加熱しつつ、第1の樹脂成形部材1内に押圧することにより、押圧加熱冶具7で加熱された金属製網3の中央部31が、第1の樹脂成形部材1内に埋め込まれる(埋没する)。
ここで、当該埋没した箇所31は、射出成形金型装置56により第2の樹脂成形部材2を成形する際に、樹脂材料Mが注入される位置(材料注入口62の位置)と対応している。
【0040】
第2の樹脂成形部材2の成形時に、材料注入口62から注入される樹脂材料Mは、第1の樹脂成形部材1の金属製網3が埋没した箇所31に衝突した後に、半径方向外方に向かって、全周方向(中心角360°の全範囲に向う方向)に流れる。
金属製網3は、その中心部が第1の樹脂成形部材1に埋没しているので、樹脂材料Mが衝突しても千切れてしまうことはなく、千切れた金属製網3の各片が半径方向外方に移動することはない。また、樹脂材料Mの注入時に金属製網3が食器100の中心から偏奇してしまうことも防止される。
注入された樹脂材料Mは、金属製網3の中心部が第1の樹脂成形部材1に埋没した箇所31に衝突した後に、半径方向外方に向かって、円周方向の全方向へ均一に流れ、第1の樹脂成形部材1と凹型装置6の成形面6fとの間に出来る空隙Eに均一に充填される。
【0041】
また、従来技術において、金属製網ではなくソリッドタイプの金属板を樹脂部材の内部に封入する例があるが、その場合には、係るソリッドタイプの金属板の質量が大きく、金属と樹脂との熱膨張率の差を吸収しきれないため、出来上がった食器に熱膨張率の差による割れや変形等の不具合が発生しやすい。
これに対して、図示の実施形態では、上述した様に、電磁誘導加熱用の部材としてソリッドタイプの金属板ではなく金属製網3を封入しているため、金属と樹脂との熱膨張率の差を吸収することが出来る。その結果、出来上がった当該食器100に熱膨張率の差による割れや変形等の不具合は生じない。
【0042】
また、第1の樹脂成形部材1を成形する際に、或いは、第2の樹脂成形部材2を成形する際に、金型の材料注入口62を介して注入される樹脂材料Mが、金属製網3の目に入り込み、第1の樹脂成形部材1或いは第2の樹脂成形部材2と一体化する。その結果、第1の樹脂成形部材1と第2の樹脂成形部材2との密着性が向上する。
そして、金属製網3は密着性が高まった第1の樹脂成形部材1と第2の樹脂成形部材2との間に積層されて、一体化しているので、電磁誘導加熱を繰り返しても、剥離や割れが生じることがない。
【0043】
図示の実施形態はあくまでも例示であり、本発明の技術的範囲を限定する趣旨の記述ではない。
【符号の説明】
【0044】
1・・・第1の樹脂成形部材
2・・・第2の樹脂成形部材
3・・・金属製網
5・・・凸型装置
5f・・・成形面
5p・・・当接面
6・・・凹型装置
6f・・・成形面
6p・・・当接面
7・・・押圧加熱部材
7B・・・基部
7T・・・突起
11・・・容器の内側
12・・・容器の外側
13・・・第1の樹脂成形部材の外側
56・・・射出成形金型装置
62・・・材料注入口
【技術分野】
【0001】
本発明は、食物或いは食材を収容し、調理に際して或いは食事直前に、収容された食物或いは食材を適温に加熱することが出来る電磁誘導加熱用樹脂製食器に関する。
【背景技術】
【0002】
病院や、老人ホーム等の各種施設において、チルド状態の食品を食器に載せ、かかる食器をトレイに載せ、このトレイをカートに入れ、カートの内部で食材を再加熱する方法が普及している。食材を再加熱するに際しては、食器を熱風やヒーターにより加熱し、或いは電磁誘導加熱を行なう手法が提案されている。
ここで、熱風による再加熱は熱効率が極めて悪く、多大な電力を消費してしまう。また、再加熱するべき食物が熱風によって乾燥してしまい、風味や食感を大幅に損なってしまうおそれがある。
【0003】
ヒーターによる加熱は、温度制御がし易いという利点がある。
しかし、ヒーターで加熱するためには、孔の開いた専用トレイが必要になる。または、トレイの上にヒーターを組み込む必要があるため、トレイの構造が複雑になってしまうという問題が存在する。
【0004】
電磁誘導加熱を利用した再加熱であれば、熱風による再加熱や、ヒーター加熱における上述した様な問題点は生じない。
近年、電磁誘導加熱を利用した調理用器具が提供されており、電磁誘導加熱を利用した容器として、金属製の鍋や炊飯器等が提案されている。
しかし、容器を樹脂で構成した場合には、樹脂は非導電体材料であるため、電磁誘導加熱により容器の内容物を加熱することが出来ない。
【0005】
樹脂製容器では電磁誘導加熱により内容物を加熱することが出来ないという問題を解決するため、渦電流が流れる導電体、例えば薄い鋼板を樹脂製容器の底面に配置する方法がある。しかし、当該薄い鋼板が食器と一体化しない為、使用中に薄い鋼板と食器が分離してしまうという問題が存在する。
【0006】
これに対して、樹脂製食器に金属板を2層の樹脂間に挟み込み、一体的に成形することにより樹脂製食器を構成すれば、電磁誘導加熱により内容物を加熱することが出来て、しかも、使用中に薄い鋼板と食器が剥離してしまうことが防止される。
その様に金属板を挟み込んだ樹脂製食器の製造技術として、射出成形で樹脂製の内側成形品を成形し、その外側に金属板を接合し、その複合品を金型にセットし、複合品の外側に樹脂材料を射出して一体に成形し、電磁誘導加熱に対処出来る樹脂製食器を製造する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
しかし、この従来技術(特許文献1)では、樹脂と金属の密着性が十分とは言い難く、内側成形品と外側成形品とが剥離する場合がある。また、樹脂と金属板との熱膨張率の違いにより、食器に割れが生じる場合もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−193529号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上述した従来技術の問題点に鑑みて提案されたものであり、電磁誘導加熱を繰り返しても剥離や割れが生じることがなく、且つ、成形時に封入した金属が破損して電磁誘導加熱が十分に行われなくなることを防止することが出来る電磁誘導加熱用樹脂製食器の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の電磁誘導加熱用樹脂製食器(100)は、第1の樹脂成形部材(1)と第2の樹脂成形部材(2)と金属製網(3)とを有し、第1の樹脂成形部材(1)と第2の樹脂成形部材(2)とは積層されており、第1の樹脂成形部材(1)は食器の内側(図1の矢印11参照)に位置しており、金属製網(3)の一部(中央部31)は第1の樹脂成形部材(1)の中央部に埋没して配置され、金属製網(3)の残りの部分は第1の樹脂成形部材(1)と第2の樹脂成形部材(2)との間に封入されており、第2の樹脂成形部材(2)の樹脂材料(M)供給位置は、金属製網(3)が第1の樹脂成形部材(1)に埋没している位置(中央部31)に対応している(第2の樹脂成形部材2の樹脂材料M供給位置を水平面に投影した位置が、金属製網3の中央部31を水平面に投影した領域に包含されている)ことを特徴としている。
【0010】
本発明の実施に際して、前記金属製網(3)の電気抵抗値は2〜40×10−8ρ/Ωmであることが好ましい。そして、前記金属製網(3)の網目は20〜120メッシュであり、金属製網(3)を構成する線材の直径は0.03〜0.5mmであることが好ましい。
【0011】
上述した電磁誘導加熱用樹脂製食器(100)を成形するのに用いられる本発明の食器製造装置(請求項1の電磁誘導加熱用樹脂製食器を成形する食器製造装置)は、射出成形金型装置(56)と、押圧加熱冶具(7)を有し、
射出成形金型装置(56)は凸型装置(5)と凹型装置(6)を備え、
凸型装置(5)は、中央部に金属製網(3)を配置した状態の第1の樹脂成形部材(1)を(その上に被せて)保持する形状であり、
凹型装置(6)には第2の樹脂成形部材(2)の樹脂材料を供給する材料供給通路(材料注入経路61)及び材料注入口(62)が設けられており、当該材料注入口(62)を水平面に投影した位置は金属製網(3)の中央部(31)を水平面に投影した領域に包含されており、
押圧加熱冶具(7)は、前記金属製網(3)の中央部(31)を、第1の樹脂成形部材(1)における第2の樹脂成形部材(2)側(樹脂材料Mが供給される側)に押圧しつつ加熱する機能を有していることを特徴としている。
【0012】
上述した電磁誘導加熱用樹脂製食器(100)を製造する本発明の製造方法(請求項1の電磁誘導加熱用樹脂製食器の製造方法)は、
容器状に成形された第1の樹脂成形部材(1)外側(図2の矢印13参照)の中央に金属製網(3)を配置する工程と、
第1の樹脂成形部材(1)の外側中央部に配置された金属製網(3)の中央部(31)を加熱押圧冶具(7)によって押圧しつつ加熱して、金属製網(3)の中央部(31)を第1の樹脂成形部材(1)に埋設する工程と、
前記埋設する工程の後に、金属製網(3)の中央部(31)が埋設された状態の第1の樹脂成形部材(1)を凸型装置(5)上に(被せて)配置する工程と、
凸型装置(5)と凹型装置(6)を当接して、第1の樹脂成形部材(1)と凹型装置(6)の成形面(6f)との間における空隙(E)に、凹型装置(6)の材料注入口(62)から樹脂材料(M:第2の樹脂成形部材2の材料となる樹脂材料)を充填する工程を有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
上述する構成を具備する本発明の電磁誘導加熱用樹脂製食器(100:請求項1の電磁誘導加熱用樹脂製食器)によれば、電磁誘導加熱用の部材としてソリッドタイプの金属板ではなく金属製網(3)を封入しているため、金属と樹脂との熱膨張率の差を吸収することが出来る。その結果、出来上がった当該食器に熱膨張率の差による割れや変形等の不具合は生じない。
【0014】
また、第2の樹脂成形部材(2)を成形する際に、金型の材料供給通路(61)及び材料注入口(62)を介して注入される樹脂材料(M)が、金属製網(3)の目に入り込み、第1の樹脂成形部材(1)或いは第2の樹脂成形部材(2)と一体化する。その結果、金属製網(3)が第1の樹脂成形部材(1)及び第2の樹脂成形部材(2)と一体化して、且つ、第1の樹脂成形部材(1)と第2の樹脂成形部材(2)との密着性が向上する。
そして、金属製網(3)が第1の樹脂成形部材(1)と第2の樹脂成形部材(2)との間に積層され、電磁誘導加熱を繰り返しても、剥離や割れが生じることがない。
【0015】
ここで、第1の樹脂成形部材(1)及び第2の樹脂成形部材(2)間に金属製網(3)を封入する場合には、第1の樹脂成形部材(1)の外側に金属製網(3)を配置して、樹脂材料(M)を注入して第2の樹脂成形部材(2)を成形することにより行なわれる。
ここで、注入される樹脂材料(M)が平坦な金属製網(3)に直接衝突し、衝突後、半径方向外方に向かって流れるので、注入される樹脂が保有する運動エネルギーにより、金属製網(3)が千切られて、千切られた金属製網(3)の片が半径方向外方に偏奇して、例えば図12で示す様な状態となってしまう恐れがある。或いは、金属製網(3)が千切れなくても、第1の樹脂成形部材(1)の中央部(食器100の中心位置)から偏奇する可能性が存在する。
そして金属製網(3)が千切れた状態(図12で示す様な状態)となり、或いは、食器(100)の中心から偏奇してしまうと、電磁誘導による加熱は金属製網(3)が存在する領域でしか起こらないので、食器(100)の中心部分が加熱されず、食器(100)内の食物の加熱が不十分になるという問題が発生する。
【0016】
これに対して本発明によれば、第1の樹脂成形部材(1)の外側に金属製網(3)が配置された中心部を加熱押圧冶具(7)によって押圧しつつ加熱して、金属製網(3)の一部(押圧加熱冶具7で押圧・加熱された金属製網の中央部31)を第1の樹脂成形部材(1)に埋没させている。そして、当該埋没した箇所(31)の位置(水平面の投影位置)は、第2の樹脂成形部材(2)成形時の第2の樹脂成形部材(2)の材料樹脂の供給位置(材料注入口62:水平面の投影位置)を包含している。
そのため、第2の樹脂成形部材(2)の成形時に、材料注入口(62)から注入される樹脂材料(M)が、第1の樹脂成形部材(1)における前記金属製網(3)が埋没した箇所(31)に衝突して、半径方向外方に向かって、全周方向(中心角360°全範囲)に流れたとしても、金属製網(3)の中央部(31)が第1の樹脂成形部材(1)に埋没しているため、当該金属製網(3)が千切れてしまうことはなく、また、その位置を偏奇してしまうこともない。
【0017】
注入時の樹脂材料(M)の流れによって金属製網(3)が千切れてしまうことや、所定の位置からずれてしまうことが防止できるので、本発明の電磁誘導加熱用樹脂製食器(100:請求項1の電磁誘導加熱用樹脂製食器)によれば、金属製網(3)は常に適正な位置に配置されて、電磁誘導により食器内の食物が効率良く加熱される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態に係る電磁誘導加熱用樹脂製食器の縦断面と平面を示す図である。
【図2】実施形態で用いられる第1の樹脂成形部材の縦断面と平面を示す図である。
【図3】実施形態に係る電磁誘導加熱用樹脂製食器を製造する際に用いる押圧加熱冶具の縦断面と平面を示す図である。
【図4】実施形態に係る電磁誘導加熱用樹脂製食器を製造する際に用いる射出成形金型装置の断面図である。
【図5】実施形態において、金属製網を第1の樹脂成形部材に配置した状態の縦断面と底面を示す図である。
【図6】実施形態において、第1の樹脂成形部材に配置した金属製網を押圧加熱冶具で押圧しつつ加熱する状態を示す縦断面図である。
【図7】図6のA部拡大図である。
【図8】図6の工程の後、金属製網の一部を埋設した状態の第1の樹脂成形部材を射出成形金型装置に設置した状態を示す縦断面図である。
【図9】凸型装置と凹型装置を当接して、第2の樹脂成形部材の材料を注入する状態を示す縦断面図である。
【図10】図9の工程の後、凸型装置と凹型装置を離隔した状態を示す縦断面図である。
【図11】従来技術の電磁誘導加熱用樹脂製食器の成形過程において、金属製網が破損して分断した状態を縦断面と平面で示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
図1において、全体を符号100で示す電磁誘導加熱用樹脂製食器(食器100)は、第1の樹脂成形部材1、第2の樹脂成形部材2、金属製網3を有している。
ここで、第1の樹脂成形部材1及び第2の樹脂成形部材2の材料としては、例えば、PPS(ポリフェニレンサルファイド樹脂)、PES(ポリエーテルサルフォン樹脂)、PEEK(ポリエーテル・エーテル・ケトン樹脂)、PSF(ポリサルフォン樹脂)、SPS(シンジオタクチックポリスチレン)等、耐熱性が高い樹脂が好ましい。特に、PPSは高割合で添加剤等を配合することが出来るので、成形性を向上し、炭素繊維等を添加して熱伝導効率が良好な樹脂を配合することが出来るので、好適である。
【0020】
第1の樹脂成形部材1と第2の樹脂成形部材2は重なり合って、或いは積層して配置されており、第1の樹脂成形部材1は食器100の内側(食物に接触する側)、図1(a)では上方に配置されている。図2で示すように、第1の樹脂成形部材1において食器100の内側は符号11で示されており、食器100の外側は符号12で示されている。
図1において、符号10は食器100の高台を示し、符号D10は高台の内径寸法を示している。
【0021】
図1で示すように、金属製網3は、第1の樹脂成形部材1、第2の樹脂成形部材2或いは食器100の中心に位置している。そして金属製網3は、第1の樹脂成形部材1と第2の樹脂成形部材2との間に封入されている。
そして、金属製網3は、図1(a)で示すように、食器100の底部よりも上方の領域(高台10よりも半径方向外方で且つ上方の領域)まで延在している。金属製網3の周縁部が高台10よりも半径方向内側の領域に位置している場合には、IH加熱に際して、当該周縁部が高温になってしまう恐れが存在する。これに対して、金属製網3の周縁部が高台10よりも半径方向外方で且つ上方の領域に位置していれば、IH加熱に際して、金属製網3の周縁部が昇温し過ぎてしまうことはない。
【0022】
金属製網3(例えば、樹脂に対して10倍以上の熱伝導率を有する材料製の網)の大部分は第1の樹脂成形部材1、第2の樹脂成形部材2と直接接触している。
しかし、金属製網3の中央部31は、後述する様に、押圧加熱冶具7によって第1の樹脂成形部材1の中央に埋め込まれている。
金属製網3の中央部31は、その中心点が、凹型装置6(第2の樹脂成形部材2を射出成形するための型を有する装置:図4参照)における材料注入口62(図4参照)の中心に一致している。材料注入口62は、第2の樹脂成形部材2を成形する際に、樹脂材料を注入する経路である。
【0023】
金属製網3の電気抵抗値は、例えば、2〜40×10−8ρ/Ωmである。係る電気抵抗値は、例えば黄銅や青銅製の金属製網3が、樹脂が溶けない程度に、効率よく誘導加熱される範囲として選定されている。
金属製網3の網目は20〜120メッシュであり、金属製網3の線形素材の直径は0.05〜0.5mmである。特に、金属製網3の線形素材の直径としては、0.1〜0.3mmの範囲であることが好ましい。
金属製網3の網目が小さ過ぎると、樹脂材料が網目を潜り抜けることが出来ない可能性があり、網目が大き過ぎると、金属製網3が破損、分断してしまう恐れがある。
【0024】
実施形態で用いられる押圧加熱冶具7について、図3を参照して説明する。押圧加熱冶具7は、上述した様に、金属製網3の中心を、第1の樹脂成形部材1の外側13(図2参照)表面の中心に埋め込むために用いられる。
図3において、押圧加熱冶具7は、ベース部材71、押圧部材72、押圧補助部材73、加熱部材(例えばニクロム線)74を有している。
押圧部材72は、ベース部材71における一方の表面(図3では上面)の中心に設けられ、その内部には加熱部材(例えばニクロム線)74が配置されている。図3では、ベース部材71は、円盤状に構成されている。
尚、加熱の熱源として別に加熱機構を有する熱板等にベース部材71の外側面71aを貼り付ける等をして外部熱源を利用してもよい。
【0025】
押圧部72の直径d72は、高台10(図1参照)の内径寸法をD10(図1参照)とすれば、
5mm≦d72≦D10
の範囲であることが好ましい。
押圧部72の直径d72が高台10の内径寸法をD10よりも大きいと、金属製網3を第1の樹脂成形部材1に埋め込む際に、押圧部72の縁部が第1の樹脂成形部材1の底部からはみ出してしまう。
一方、押圧部72の直径d72が5mm未満では、第2の樹脂成形部材2の成形時に、材料注入口62から注入される樹脂材料Mが衝突した際に、直径d72の領域(金属製網3が第1の樹脂成形部材1に埋め込まれる領域)よりも半径方向外側に位置している金属製網3が破損して、千切れてしまう。
ここで、図示の実施形態の様に押圧補助部材73を有する場合は、
5mm≦d72≦40mm
であるのが望ましい。
【0026】
図3で示すように、押圧加熱冶具7には4本の押圧補助部材73が設けられている。ここで、4本の押圧補助部材73は、円盤状のベース部材71における半径方向外側の円周方向に(押圧部材72周囲の同一ピッチ円上に)、押圧部材72の中心点に対して点対称に配置されている。
図3(a)で示すように、押圧部材72の高さ方向寸法と、4本の押圧補助部材73の高さ方向寸法は、等しい。すなわち、押圧加熱冶具7において、押圧部材72及び4本の補助押圧部材73の端面は、面一となっている。
押圧補助部材73は、金属製網3の中央部分を加熱して第1の樹脂成形部材1に埋め込む際に、金属製網3が押圧加熱治具7側に反り返らないように抑える作用を奏する。
押圧補助部材73の本数は2本以上、好ましくは3本以上であることが望ましい。但し、押圧補助部材73を省略することも可能である。
【0027】
実施形態の食器100を成形する際に用いられる射出成形金型装置について、図4を参照して説明する。
図4において、食器100を成形する際に用いられる射出成形金型装置56は、凸型装置5と、凹型装置6を有している。ここで、射出成形金型装置56は、第2の樹脂成形部材2を射出成形して食器100を製造する装置であり、凹型装置6は、いわゆる「金型」としての機能を備えている。
凸型装置5は、面(成形面)5fと、面(パーティング面)5pを有している。ここで、面5fは、第1の樹脂成形部材1における容器の内側11(図2参照)と相補の形状を為している成形面である。係る成形面5fを有することにより、凸型装置5は、第1の樹脂成形部材1を被せる様に配置することが出来る形状となっている。すなわち、第1の樹脂成形部材1の内側の凹部が凸型装置5の成形面5fと係合して、第1の樹脂成形部材1を凸型装置5に保持或いは設置するのである。
凸型装置5のパーティング面5pは、凹型装置6を凸型装置5に近接して当接した際に、凹型装置6におけるパーティング面6pと当接する。
【0028】
凹型装置6は、図4の上下方向に移動可能に構成されている。図4における矢印Yは、凹型装置6の移動方向を示している。
凹型装置6は、面6fと面6pを有している。ここで、面6fは、第2の樹脂成形部材2における容器の外側を成形する成形面である。そして、面6pはパーティング面であり、凸型装置5のパーティング面5pと当接する。
【0029】
凹型装置6には材料注入口62が設けられており、材料注入口62は、前記金属製網3の中央部31の中心点に対向する箇所に位置している。材料注入口62から、第2の樹脂成形部材2の成形材料である樹脂が注入される。換言すれば、材料注入口62は材料注入経路61の出口であり、材料注入経路61は、第2の樹脂成形部材2の成形材料である樹脂の流路である。
ここで、材料注入口62は第2の樹脂成形部材2における樹脂材料Mの供給位置であり、材料注入口62(樹脂材料Mの供給位置)を水平面に投影した位置は、金属製網3の中央部31(金属製網3において、第1の樹脂成形部材1内に埋没されている部分)を水平面に投影した領域に包含されている。
【0030】
次に、図示の実施形態に係る食器100の製造過程について説明する。
先ず、図2に示すような予め成形されている第1の樹脂成形部材1を製造する。ここで、第1の樹脂成形部材1の製造については、公知、市販の射出成形装置等(図示は省略)を用いて行われる。
そして、図5で示す様に、第1の樹脂成形部材1の底部12bに、金属製網3を配置する(一時的に固着させる)。ここで、図5(a)では、第1の樹脂成形部材1の下方に金属製網3が配置して示されているが、製造に際しては、例えば図6で示すように、第1の樹脂成形部材1の天地を逆にして底部12bを上にして、底部12b上に金属製網3を載置する。
【0031】
第1の樹脂成形部材1の底部12bに金属製網3を配置したならば、金属製網3を配置した第1の樹脂成形部材1を、押圧加熱冶具7を設けた領域において、図6で示す様に、配置する。
図6において、押圧加熱冶具7の下方には基部7Bが位置しており、基部7Bは突起7Tを備え、金属製網3を配置した第1の樹脂成形部材1は、当該突起7Tに緩く嵌合して配置されている。
【0032】
図6で示すように、金属製網3を配置した第1の樹脂成形部材1が突起7Tに嵌合して配置した状態で、押圧加熱冶具7を下降し(押圧加熱冶具7を図6の矢印F方向に移動し)、金属製網3に接近させる。そして、押圧加熱冶具7の押圧部材72及び押圧補助部材73を金属製網3に当接する。
押圧加熱冶具7の押圧部材72は、金属製網3に当接する以前の段階で、加熱部材74によって十分に昇温している。
そして、図7に示すように、押圧部材72の先端位置或いは金属製網3が、第1樹脂成形部材1の表面から所定量δだけ、第1の樹脂成形部材1の内部に埋め込まれるまで、金属製網3が押圧部材72により押圧される。
【0033】
第1の樹脂成形部材1は、加熱された押圧部材72が当接することにより軟化する。そして、金属製網3の押圧された部分31は、軟化した第1の樹脂成形部材1の厚み方向の所定の深さδ(図7参照)まで、埋め込まれる。
ここで、所定の深さδは、第1の樹脂成形部材1の厚みをT1とすれば、以下の範囲が望ましい。
0≦δ≦T1/2
所定の深さδの最大値をT1/2としているのは、これ以上深く埋め込むと、容器(食器)100の内面、すなわち、食品が盛り付けられる面に凹凸が生じて、食器として不都合だからである。換言すれば、「T1/2」は金属製網3が埋没する深さの限界値である。
図7において、符号T2は第2の樹脂成形部材2の厚みを示している。
【0034】
金属製網3が第1の樹脂成形部材1の厚み方向の所定の深さδ(図7参照)まで埋没したならば、押圧加熱冶具7を上昇して(図6で矢印Fとは逆方向へ移動して)、押圧加熱冶具7を第1の樹脂成形部材1から離隔する。
押圧加熱冶具7が上昇して、図6において点線で示す位置まで到達したならば、金属製網3の一部が底部に埋め込まれた第1の樹脂成形部材1を、押圧加熱冶具7下方の基部7B(図6参照)から取り外す。
そして図8で示す様に、金属製網3の一部が埋め込まれた第1の樹脂成形部材1を、射出成形金型装置56の凸型装置5に被せて、設置する。図8は、押圧加熱冶具7による金属製網3(及び第1の樹脂成形部材1)への押圧・加熱処理が終了して、金属製網3の一部が底部に埋め込まれた第1の樹脂成形部材1を、射出成形金型装置56の凸型装置5に設置した状態を示している。
【0035】
図9で示す工程では、凹型装置6を矢印Y1方向に移動して、凸型装置5に近接せしめ、凸型装置5の当接面5pと凹型装置6の当接面6pを当接させる。図9で示す状態となったならば、材料注入経路61及び材料注入口62を経由して、樹脂材料Mを、凸型装置5と凹型装置6の間の空間(隙間)Eに注入する。
ここで隙間Eは、第1の樹脂成型部材1における外側13及び金属製網3と、凹型装置6の成形面6fにより形成される空間である。
樹脂材料Mを注入することにより、第2の樹脂成形部材2が成形される。
【0036】
樹脂材料Mの注入が完了して所定時間が経過したならば、図10で示すように、凹型装置6を上方(矢印Y2方向)に移動して、凹型装置6を凸型装置5から離隔する。
図10の状態では、凸型装置5の成形面5fには、成形が完了した食器100が配置されている。
凹型装置6が所定の位置まで移動(上昇)したならば、成形した食器100を第1の金型5の成形面5fから取り出す。
これにより、食器100の成形が完了する。
【0037】
ここで、押圧加熱部材7を用いて金属製網3を第1の樹脂成形部材1に埋め込むような処置を施さない場合には、次の様な問題が生じることが、出願人が行なった実験(詳細は図示せず)で明らかになっている。
すなわち、金属製網3を第1の樹脂成形部材1に埋め込んでいない場合には、材料注入経路61及び材料注入口62を経由して注入される樹脂材料Mが、平坦な金属製網3に直接衝突し、衝突後、半径方向外方に向かって流れてしまう。その結果、金属製網3が千切れてしまい、千切れた金属製網3は半径方向外方に移動或いは偏奇して、例えば図11で示す様な状態となってしまう。
そして金属製網3が千切れて、半径方向外方に偏奇して、図11で示す様な状態になってしまうと、電磁誘導による加熱は金属製網3が存在する領域でしか起こらないので、食器100の底部全体が加熱されず、食器100内の食物が十分に加熱されないという問題が発生する。
【0038】
或いは、図11で示す様に金属製網3が千切れてしまうことはなくても、樹脂材料Mを注入した際に、金属製網3に樹脂材料Mが衝突するとことにより金属製網3の位置が、食器100の底面中央に相当する位置から移動(偏奇)してしまう恐れがある。
そして、金属製網3が食器100の底面中央位置から偏奇してしまうと、誘導加熱により当該食器100内の食物を加熱する際に、金属製網3の位置と食物の位置とが整合せず、食物の加熱が不十分になってしまう。
【0039】
これに対して、図示の実施形態では、加熱押圧冶具7によって、第1の樹脂成形部材1の金属製網3の中心部を加熱しつつ、第1の樹脂成形部材1内に押圧することにより、押圧加熱冶具7で加熱された金属製網3の中央部31が、第1の樹脂成形部材1内に埋め込まれる(埋没する)。
ここで、当該埋没した箇所31は、射出成形金型装置56により第2の樹脂成形部材2を成形する際に、樹脂材料Mが注入される位置(材料注入口62の位置)と対応している。
【0040】
第2の樹脂成形部材2の成形時に、材料注入口62から注入される樹脂材料Mは、第1の樹脂成形部材1の金属製網3が埋没した箇所31に衝突した後に、半径方向外方に向かって、全周方向(中心角360°の全範囲に向う方向)に流れる。
金属製網3は、その中心部が第1の樹脂成形部材1に埋没しているので、樹脂材料Mが衝突しても千切れてしまうことはなく、千切れた金属製網3の各片が半径方向外方に移動することはない。また、樹脂材料Mの注入時に金属製網3が食器100の中心から偏奇してしまうことも防止される。
注入された樹脂材料Mは、金属製網3の中心部が第1の樹脂成形部材1に埋没した箇所31に衝突した後に、半径方向外方に向かって、円周方向の全方向へ均一に流れ、第1の樹脂成形部材1と凹型装置6の成形面6fとの間に出来る空隙Eに均一に充填される。
【0041】
また、従来技術において、金属製網ではなくソリッドタイプの金属板を樹脂部材の内部に封入する例があるが、その場合には、係るソリッドタイプの金属板の質量が大きく、金属と樹脂との熱膨張率の差を吸収しきれないため、出来上がった食器に熱膨張率の差による割れや変形等の不具合が発生しやすい。
これに対して、図示の実施形態では、上述した様に、電磁誘導加熱用の部材としてソリッドタイプの金属板ではなく金属製網3を封入しているため、金属と樹脂との熱膨張率の差を吸収することが出来る。その結果、出来上がった当該食器100に熱膨張率の差による割れや変形等の不具合は生じない。
【0042】
また、第1の樹脂成形部材1を成形する際に、或いは、第2の樹脂成形部材2を成形する際に、金型の材料注入口62を介して注入される樹脂材料Mが、金属製網3の目に入り込み、第1の樹脂成形部材1或いは第2の樹脂成形部材2と一体化する。その結果、第1の樹脂成形部材1と第2の樹脂成形部材2との密着性が向上する。
そして、金属製網3は密着性が高まった第1の樹脂成形部材1と第2の樹脂成形部材2との間に積層されて、一体化しているので、電磁誘導加熱を繰り返しても、剥離や割れが生じることがない。
【0043】
図示の実施形態はあくまでも例示であり、本発明の技術的範囲を限定する趣旨の記述ではない。
【符号の説明】
【0044】
1・・・第1の樹脂成形部材
2・・・第2の樹脂成形部材
3・・・金属製網
5・・・凸型装置
5f・・・成形面
5p・・・当接面
6・・・凹型装置
6f・・・成形面
6p・・・当接面
7・・・押圧加熱部材
7B・・・基部
7T・・・突起
11・・・容器の内側
12・・・容器の外側
13・・・第1の樹脂成形部材の外側
56・・・射出成形金型装置
62・・・材料注入口
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の樹脂成形部材と第2の樹脂成形部材と金属製網とを有し、第1の樹脂成形部材と第2の樹脂成形部材とは積層されており、第1の樹脂成形部材は食器の内側に位置しており、金属製網の一部は第1の樹脂成形部材の中央部に埋没して配置され、金属製網の残りの部分は第1の樹脂成形部材と第2の樹脂成形部材との間に封入されており、第2の樹脂成形部材の樹脂材料供給位置は、金属製網が第1の樹脂成形部材に埋没している位置に対応していることを特徴とする電磁誘導加熱用樹脂製食器。
【請求項2】
請求項1の電磁誘導加熱用樹脂製食器を成形する食器製造装置において、
射出成形金型装置と、押圧加熱冶具を有し、
射出成形金型装置は凸型装置と凹型装置を備え、
凸型装置は、中央部に金属製網を配置した状態の第1の樹脂成形部材を保持する形状であり、
凹型装置には第2の樹脂成形部材の樹脂材料を供給する材料供給通路及び材料注入口が設けられており、当該材料注入口を水平面に投影した位置は金属製網の中央部を水平面に投影した領域に包含されており、
押圧加熱冶具は、前記金属製網の中央部を、第1の樹脂成形部材における第2の樹脂成形部材側に押圧しつつ加熱する機能を有していることを特徴とする食器製造装置。
【請求項3】
請求項1の電磁誘導加熱用樹脂製食器の製造方法において、
容器状に成形された第1の樹脂成形部材の外側の中央に金属製網を配置する工程と、
第1の樹脂成形部材の外側中央部に配置された金属製網の中央部を加熱押圧冶具によって押圧しつつ加熱して、金属製網の中央部を第1の樹脂成形部材に埋設する工程と、
前記埋設する工程の後に、金属製網の中央部が埋設された状態の第1の樹脂成形部材を凸型装置上に配置する工程と、
凸型装置と凹型装置を当接して、第1の樹脂成形部材と凹型装置の成形面との間における空隙に、凹型装置の材料注入口から樹脂材料を充填する工程を有することを特徴とする製造方法。
【請求項1】
第1の樹脂成形部材と第2の樹脂成形部材と金属製網とを有し、第1の樹脂成形部材と第2の樹脂成形部材とは積層されており、第1の樹脂成形部材は食器の内側に位置しており、金属製網の一部は第1の樹脂成形部材の中央部に埋没して配置され、金属製網の残りの部分は第1の樹脂成形部材と第2の樹脂成形部材との間に封入されており、第2の樹脂成形部材の樹脂材料供給位置は、金属製網が第1の樹脂成形部材に埋没している位置に対応していることを特徴とする電磁誘導加熱用樹脂製食器。
【請求項2】
請求項1の電磁誘導加熱用樹脂製食器を成形する食器製造装置において、
射出成形金型装置と、押圧加熱冶具を有し、
射出成形金型装置は凸型装置と凹型装置を備え、
凸型装置は、中央部に金属製網を配置した状態の第1の樹脂成形部材を保持する形状であり、
凹型装置には第2の樹脂成形部材の樹脂材料を供給する材料供給通路及び材料注入口が設けられており、当該材料注入口を水平面に投影した位置は金属製網の中央部を水平面に投影した領域に包含されており、
押圧加熱冶具は、前記金属製網の中央部を、第1の樹脂成形部材における第2の樹脂成形部材側に押圧しつつ加熱する機能を有していることを特徴とする食器製造装置。
【請求項3】
請求項1の電磁誘導加熱用樹脂製食器の製造方法において、
容器状に成形された第1の樹脂成形部材の外側の中央に金属製網を配置する工程と、
第1の樹脂成形部材の外側中央部に配置された金属製網の中央部を加熱押圧冶具によって押圧しつつ加熱して、金属製網の中央部を第1の樹脂成形部材に埋設する工程と、
前記埋設する工程の後に、金属製網の中央部が埋設された状態の第1の樹脂成形部材を凸型装置上に配置する工程と、
凸型装置と凹型装置を当接して、第1の樹脂成形部材と凹型装置の成形面との間における空隙に、凹型装置の材料注入口から樹脂材料を充填する工程を有することを特徴とする製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−50764(P2012−50764A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−197313(P2010−197313)
【出願日】平成22年9月3日(2010.9.3)
【出願人】(000176176)三信化工株式会社 (34)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月3日(2010.9.3)
【出願人】(000176176)三信化工株式会社 (34)
【Fターム(参考)】
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