説明

電縫管スクイズミル

【課題】スクイズロールスタンドのトップロールを左右且つ水平方向に移動させて溶接シームに合わせることができる電縫管スクイズミルを提供する。
【解決手段】トップロールスタンド1の下部には、前工程で成形されて送られてきた管状に成形された中間成形管8を左右から押さえて押圧する一対のスクイズロール9と溶接シーム部10を上方より押圧するトップロール11により電気加熱された溶接シーム部10のウエッジを圧接する電縫管スクイズロールミルにおいて、トップロール11を固定したトップロール面板4がトップロールスタンド1の大面板3の左右且つ水平方向に摺動可能に支持され、トップロール面板4の左右の側面には、下方に且つ外側に向かって傾斜した摺接面16がそれぞれ形成され、各摺接面16に上下動可能なくさび形の上下可動板19が接し、上下可動板19を上下動させてトップロール面板4を左右のいずれか一方の方向へ移動させる駆動装置20を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電縫管スクイズミルの上部に設置されたトップロールの管軸中心位置調整を容易におこなうことができる、トップロール調整機構を備えた電縫管スクイズミルに関する。
【背景技術】
【0002】
電縫管は、帯板をブレークダウンロールで大きな半径の円弧に曲げ、クラスターロールでより小さな半径の円弧に曲げ成形し、フィンバスロールで材科の両端部の突合せ形状を形成する。そして、シームガイドロールでVスロート角の設定とシームのセンタリングを行い、ワークコイルでシーム部を加熱してスクイズロールで周方向に圧縮することにより溶接して製造される(引用文献1参照)。
【0003】
スクイズロールスタンドは、例えば左右両側のサイドロールと上側の左右一対のトップロールとからなる(特許文献2参照)。なお、下ロールも備えたタイプのものもある。
【0004】
スクイズロールスタンドにおいて、溶接シーム位置が中央線から外れることがある。その原因は、前工程でのパイプのねじれ等によるものである。この状態では溶接が安定しないため、溶接面の溶接品質が低下する。
【0005】
このねじれを修正するため、特許文献1には、図3において、電気加熱装置22を備えたシームガイドロールスタンドにおいて、上ロール23をライン方向に直交する面内で、シーム10が右にねじれたときは上ロール23を左側に傾斜させ、シーム10が左にねじれたときは上ロール23を右側に傾斜させて中間成形管8の中心を回動させることによりねじれを修正することが開示されている。シーム10のねじれ検出装置は、スクイズロールスタンドの下流に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平1−254316号公報
【特許文献2】特開2005−349459号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記特許文献1において、シームガイドロールスタンドによる調整では、スクイズロールスタンドの溶接部での管の軸芯に対する許容調整量(±0.5mm程度)に対して、スクイズロールスタンドと調整位置にあるシームガイドロールスタンドが距離的に遠く離れているため(約2〜3mm)、前記管の軸芯に対する許容調整範囲への調整が困難である。
【0008】
そこで、本発明は、スクイズロールスタンドのトップロールを左右且つ水平方向に移動させて溶接シームに合わせることができる、トップロール調整機構を備えた電縫管スクイズミルを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明は、トップロールスタンド1の下部には、前工程で成形されて送られてきた管状に成形された中間成形管を左右から押さえて押圧する一対のスクイズロールと中間成形管の溶接シーム部を上方より押圧する一対のトップロールにより電気加熱された溶接シーム部のウエッジを圧接する電縫管スクイズロールミルにおいて、トップロールを固定したトップロール面板がトップロールスタンドの大面板の左右且つ水平方向に摺動可能に支持され、トップロール面板の左右の側面には、下方に且つ外側に向かって傾斜した摺接面がそれぞれ形成され、各摺接面に上下動可能なくさび形の上下可動板が接し、上下可動板を上下動させてトップロール面板を左右のいずれか一方の方向へ移動させる駆動装置を備えたことを特徴とする。
【0010】
請求項2の発明は、トップロール面板の摺動部が大面板に設けられた上の水平ガイドと下の水平ガイドとの間に左右且つ水平に移動可能な移動板で形成されていることを特徴とする。
【0011】
請求項3の発明は、上下可動板は、一端が大面板に対して回動可能に支持されているサーボシリンダーに接続され、大面板の左右に垂直方向に配置された凹形のガイド溝を有する一対の垂直ガイドとトップロール面板の摺接面との間で摺接して上下動可能に配置されていることを特徴とする。
【0012】
請求項4の発明は、駆動装置がサーボシリンダーであることを特徴とする。
【0013】
請求項5の発明は、大面板に中間成形管のシーム溶接部の位置を上方から撮像する撮像装置が配置され、撮像装置の画像データから求めた、溶接シーム部の基準位置からのずれ量に応じて、トップロール面板の移動量を調整する上下可動板を所定の昇降量に調整する駆動装置を制御する制御装置を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、トップロール面板を移動させることにより、左右のトップロールを水平方向に移動可能としたことにより、従来の中間成形管を回動させる方式に比べて、オンラインでのトップロール位置調整をスムーズに行うことが可能となった。
【0015】
本発明は、トップロール面板の上下部にもそれぞれ水平方向のガイド部を設けることにより、安定的に移動可能となる。
【0016】
本発明により、溶接シーム部の位置を常時撮像装置にて監視し、溶接シーム部の位置変動をつかまえ、サーボシリンダーを動作させて溶接シーム位置に追従可能となり、健全な溶接部を形成することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の電縫管スクイズミルの全体図である。
【図2】本発明の電縫管スクイズミルの側面図である。
【図3】電縫管の溶接部分の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本実施例について図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0019】
図1及び図2において、トップロールスタンド1の背板2に大面板3が上下動可能に配置されている。大面板3には、トップロール面板4が左右且つ水平方向に摺動可能に支持されている。本実施例では、トップロール面板4の摺動部を移動板5で形成して支持した例で説明する。
【0020】
大面板3は電動ジャッキ6により昇降する。電動ジャッキ6はスクリュー式であるためネジのバックラッシ及び隙間があるためにガタが発生するので、常に上方向に左右の油圧シリンダー7で大面板3を吊りあげておき、大面板3を下方向に動かすときは、電動ジャッキ6が油圧シリンダー7を押し下げながら動かす。
【0021】
トップロールスタンド1の下部には、前工程で成形されて送られてきた管状に成形された中間成形管8を左右から押さえて押圧する一対のスクイズロール9が配置される。スクイズロール9の上に、中間成形管8の溶接シーム部10を上方より押圧する一対のトップロール11が配置される。加熱された溶接シーム部10のエッジを、スクイズロール9及びトップロール11で突き合わせて圧縮することにより圧接する。
【0022】
トップロール11はロールサポート12に回転自在に支持され、ロールサポート12はトップロール面板4に押しつけ方向に可動自在に、上下及びトップロール面板4の面内方向には固定される。ロールサポート12はトップロール位置調整装置13に連結され、トップロール位置調整装置13によりトップロール11の中間成形管8への押し付け力及び位置が調整される。
【0023】
トップロール11の上下の位置は、中間成形管8の外径に応じて電動ジャッキ6の作動によりトップロール面板4が固定された大面板3が上下動し、調整される。
【0024】
ロールサポート12が固定されたトップロール面板4には、トップロール11を左右且つ水平方向に移動させて溶接シーム部10に合わせるため、トップロール面板4を大面板3に設けられた上の水平ガイド14と下の水平ガイド15との間で左右且つ水平に移動可能に支持する。
【0025】
移動板5の左右の側面には、下方に向かって外側に広がるように傾斜したテーパー状の摺接面16が形成される。大面板3の左右には、移動板5を挟むように垂直方向に配置された一対の垂直ガイド17が固定され、垂直ガイド17には上下方向に凹形のガイド溝18が形成されている。
【0026】
移動板5の摺接面16と垂直ガイド18の間には、摺接面16とガイド溝18に摺接して上下に可動可能なくさび形の上下可動板19が配置されている。上下可動板19は、一端が大面板3に対して回動可能に支持されているサーボシリンダー20に接続されている。一方のサーボシリンダー20が上昇、他方のサーボシリンダー20が下降、あるいはその逆に一方のサーボシリンダー20が下降、他方のサーボシリンダー20が上昇する動作により上下可動板19が移動板5を左右いずれかの方向に押し、移動板5が水平移動する。
【0027】
大面板3には中間成形管8のシーム溶接部10の位置を上方から撮像するための撮像装置としてCCDカメラ21が配置されている。CCDカメラ21の画像データは制御装置(図示せず)に入力される。制御装置では画像データが画像処理部に入力されて溶接シーム部10の基準位置からのずれ量が求められる。ずれ量に応じて、サーボシリンダー20の駆動が制御され、上下可動板19の昇降量が制御され、移動板5の移動量が調整される。
【0028】
トップロール11の水平移動動作について説明する。
CCDカメラ21の撮像により得られた中間成形管9溶接シーム部10の画像データは、制御装置の画像処理部に入力され、溶接シーム部10の基準位置からのずれ量が求められる。
【0029】
求められた溶接シーム部10の基準位置からのずれ量から、トップロール11をずれた分だけ移動させるため、移動板5を移動させる方向、その移動量が求められる。
【0030】
求められた移動板5の方向及び移動量から一方の上下可動板19の下降量及び他方の上下可動板の上昇量が演算される。
【0031】
この上下可動板19の下降量及び上昇量に基づいてサーボシリンダー20の駆動量が制御されて移動板19が左右いずれかの方向に移動し、トップロール11が溶接シーム部10を適正位置で押しつける。こうして、トップロール11が溶接シーム位置10に追従可能となる。
【0032】
また、安定操業時には、両方の上下可動板20を下降させる同方向の押しつけ動作に切り替えることにより、移動板5を支持しているトップロール面板4が下方向に向かい、中間成形管9の溶接シーム部のエッジを確実にクランプすることが可能となる。
【符号の説明】
【0033】
1:トップロールスタンド
2:背板
3:大面板
4:トップロール面板
5:移動板
6:電動ジャッキ
7:油圧シリンダー
8:中間成形管
9:スクイズロール
10:溶接シーム部
11:トップロール
12:ロールサポート
13:トップロール位置調整装置
14:上の水平ガイド
15:下の水平ガイド
16:摺接面
17:垂直ガイド
18:ガイド溝
19:上下可動板
20:サーボシリンダー
21:CCDカメラ
22:電気加熱装置
23:上ロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トップロールスタンドの下部には、前工程で成形されて送られてきた管状に成形された中間成形管を左右から押さえて押圧する一対のスクイズロールと中間成形管の溶接シーム部を上方より押圧する一対のトップロールにより電気加熱された溶接シーム部のウエッジを圧接する電縫管スクイズロールミルにおいて、
トップロールを固定したトップロール面板がトップロールスタンドの大面板の左右且つ水平方向に摺動可能に支持され、
トップロール面板の左右の側面には、下方に且つ外側に向かって傾斜した摺接面がそれぞれ形成され、
各摺接面に上下動可能なくさび形の上下可動板が接し、
上下可動板を上下動させてトップロール面板を左右のいずれか一方の方向へ移動させる駆動装置を備えたことを特徴とする電縫管スクイズロールミル。
【請求項2】
トップロール面板の摺動部が大面板に設けられた上の水平ガイドと下の水平ガイドとの間に左右且つ水平に移動可能な移動板で形成されていることを特徴とする請求項1記載の電縫管スクイズロールミル。
【請求項3】
上下可動板は、一端が大面板に対して回動可能に支持されているサーボシリンダーに接続され、
大面板の左右に垂直方向に配置された凹形のガイド溝を有する一対の垂直ガイドとトップロール面板の摺接面との間で摺接して上下動可能に配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の電縫管スクイズロールミル。
【請求項4】
駆動装置がサーボシリンダーであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の電縫管スクイズロールミル。
【請求項5】
大面板に中間成形管のシーム溶接部の位置を上方から撮像する撮像装置が配置され、撮像装置の画像データから求めた、溶接シーム部の基準位置からのずれ量に応じて、トップロール面板の移動量を調整する上下可動板を所定の昇降量に調整する駆動装置を制御する制御装置を備えたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の電縫管スクイズロールミル。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2011−235324(P2011−235324A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−109592(P2010−109592)
【出願日】平成22年5月11日(2010.5.11)
【出願人】(306022513)新日鉄エンジニアリング株式会社 (897)
【出願人】(390022873)日鐵プラント設計株式会社 (275)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】