説明

電荷結合素子の製造方法

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、CCD素子の転送領域を形成するのに利用される濃度勾配を有する不純物導入領域を有する電荷結合素子の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来のCCD素子の転送領域を形成する方法を図5の製造工程図により説明する。図5の(1)に示すように、通常のプロセスによって、半導体基板41の上面に、絶縁膜42を介して1層目の転送電極を形成する膜(図示せず)を成膜する。その後通常のホトリソグラフィーとエッチングとによって、1層目の転送電極を形成する膜よりなる1層目の転送電極43,44を形成する。そして、例えば1層目の転送電極43,44間に形成される2層目の転送電極(図示せず)の転送領域におけるポテンシャルを改善する場合には、前記1層目の転送電極43,44を形成した後、レジスト膜(図示せず)を成膜し、続いて通常のホトリソグラフィーによって、上記レジスト膜でレジストマスク61を形成する。
【0003】次いで図5の(2)に示す如く、上記レジストマスク61と転送電極43,44とをイオン注入マスクにしたイオン注入法によって、半導体基板41の上層に不純物45(例えばホウ素)をイオン注入する。そして、ポテンシャルが階段状になるような転送領域46を形成する。次いでレジストマスク61を除去する。その後図5の(3)に示すように、通常のプロセスによって、2層目の転送電極を形成する膜(図示せず)を成膜した後、通常のホトリソグラフィーとエッチングとによって、2層目の転送電極を形成する膜よりなる転送電極47,48を形成する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記方法によって形成したCCD素子では、例えば図6に示す如く、前記図5で説明した転送電極47の下方の転送領域46におけるポテンシャル51が階段状に変化する。したがって、ポテンシャル51がほとんど変化しない領域52,53が存在する。このため、この部分における転送効率は十分に改善されない。特に高感度を要求されるCCD素子の場合には、通常のCCD素子よりも高い転送効率が求められているが、十分な転送効率が得られない。したがって、高感度のCCD素子を形成することが困難になっている。
【0005】本発明は、CCD素子の転送効率を高めるような濃度勾配を有する不純物導入領域形成する半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記目的を達成するためになされた電荷結合素子の製造方法である。すなわち、半導体基板の転送領域上に所定の間隔で第1転送電極を複数形成する工程と、前記第1転送電極及び前記第1転送電極間の領域の前記転送領域の下流側の一部のみを覆うようにレジストパターンを形成する工程と、前記レジストパターンをリフローして、前記第1転送電極間の領域において前記転送領域の上流側で薄く、下流側で厚いイオン注入マスクを形成する工程と、前記イオン注入マスクを用いて前記第1転送電極間の領域に不純物領域を形成する工程と、前記イオン注入マスクを除去して前記第1転送電極間の領域上に第2転送電極を形成する工程とを有し、前記不純物領域は不純物濃度が前記上流側で濃く、前記下流側で薄くなることにより前記転送領域の転送方向に濃度勾配を有するように形成される電荷結合素子の製造方法である。
【0007】前記電荷結合素子の製造方法では、前記不純物領域のポテンシャルが前記下流側で深くなるよう勾配をもって形成される。
【0008】
【作用】上記電荷結合素子の製造方法では、第1転送電極及び第1転送電極間の領域の転送領域の下流側の一部のみを覆うようにレジストパターンを形成し、このレジストパターンをリフローして、第1転送電極間の領域において、転送領域の上流側で薄く下流側で厚いイオン注入マスクをし、このイオン注入マスクを用いて第1転送電極間の領域に不純物領域を形成するため、イオン注入マスクの厚い部分で覆われている半導体基板には、不純物が導入されない。またイオン注入マスクが徐々に薄くなるにしたがって、半導体基板に導入される不純物濃度が濃くなる。この結果、半導体基板に形成される不純物導入領域の不純物濃度は、転送領域の上流側で濃く、下流側で薄くなるように、転送領域の転送方向に濃度勾配を有する分布になる。
【0009】
【実施例】本発明の電荷結合素子の製造方法に係る実施例を図1〜図4によって説明する。まず、図1によってイオン注入マスクの製造方法を説明する。図1の(1)に示す如く、第1の工程では、例えば通常のレジスト塗布技術によって、半導体基板11の上面にイオン注入マスクを形成する膜として、例えばレジスト膜12を成膜する。続いて通常のホトリソグラフィーによって、上記レジスト膜12の2点鎖線で示す部分を除去し、当該レジスト膜12でマスクパターン13を形成する。
【0010】次いで図1の(2)に示すように、第2の工程を行う。この工程では、リフロー処理によって、マスクパターン13を軟化させる。そして当該マスクパターン13の表面張力を利用して、端面14を傾斜面に変形加工して、イオン注入マスク15を形成する。
【0011】その後図1の(3)に示す如く、第3の工程を行う。この工程では、上記形成したイオン注入マスク15を用いた通常のイオン注入法によって、例えば不純物17としてホウ素(B+ )を、上記半導体基板11に導入する。
【0012】上記方法では、イオン注入マスク15の端面14を傾斜面に加工したことにより、イオン注入マスク15の厚さは、その端部16より徐々に厚くなる。このため、イオン注入マスク15の厚い部分で覆われている半導体基板11には、不純物17が導入されない。またイオン注入マスク15が徐々に薄くなるにしたがって、半導体基板11に導入される不純物17の濃度が濃くなる。この結果、図2に示すように、半導体基板(11)に導入される不純物濃度は濃度勾配を有する分布になる。図2の縦軸は不純物濃度を示し、その横軸は前記図1に示した半導体基板(11)における不純物導入位置を示す。
【0013】次に上記図1によって説明した方法を利用した電荷結合素子(以下CCD素子と記す)の製造方法を、図3の製造工程図により説明する。なお上記図1によって説明したと同様の構成部品には同一符号を記す。図3の(1)に示すように、半導体基板11の上面には、ゲート絶縁膜21が形成されている。このゲート絶縁膜21の上面には、1層目の電極形成膜よりなる複数の転送電極22,23が形成されている。ここでは、上記転送電極22,23間の転送領域を、濃度勾配を有する状態に形成する方法を説明する。まず第1の工程として、通常のレジスト塗布技術によって、各転送電極22,23を覆う状態に、イオン注入マスクを形成する膜になるレジスト膜12を成膜する。続いて通常のホトリソグラフィーによって、上記転送電極22,23のうち、例えば転送電極22にオーバラップする状態に、上記レジスト膜12の2点鎖線で示す部分を除去して、マスクパターン13を形成する。
【0014】次いで図3の(2)に示すように、第2の工程を行う。この工程では、リフロー処理によって、マスクパターン13を軟化させることによって変形させ、当該マスクパターン13の表面張力を利用して、端面14を変形加工して傾斜面に形成する。この傾斜面は、例えば30°程度の傾斜角度を有するように形成する。このようにしてイオン注入マスク15を形成する。
【0015】続いて図3の(3)に示すように、第3の工程を行う。この工程では、上記形成したイオン注入マスク15を用いた通常のイオン注入法によって、例えば不純物17としてホウ素(B+ )を、上記半導体基板11に導入する。このとき、転送電極22,23もイオン注入マスクの作用をする。そして半導体基板11の上層に濃度勾配を有する転送領域18を形成する。
【0016】その後イオン注入マスク15を、例えばアッシャー処理により除去する。次いで図3の(4)に示すように、例えば熱酸化法によって、転送電極22,23の各表面に絶縁膜24を形成する。続いて例えば通常の化学的気相成長法によって、上記ゲート絶縁膜21と上記絶縁膜24との上面に2層目の電極形成膜(25)を成膜する。その後通常のホトリソグラフィーとエッチングとによって、2層目の電極形成膜(25)の2点鎖線で示す部分を除去して、転送電極26,27を形成する。上記のようにして、CCD素子20は形成される。
【0017】上記方法では、イオン注入マスク15の端面14を傾斜面に形成したことにより、イオン注入マスク15の厚さは、図の(3)に示すように、その端部16より徐々に厚くなる、このため、ある一定以上の厚さを有する部分のイオン注入マスク15で覆われている半導体基板11には不純物17が導入されない。またイオン注入マスク15が徐々に薄くなるにしたがって、半導体基板11に導入される不純物濃度は濃くなる。この結果、図4に示すように、転送領域18のポテンシャルは勾配を有する。よって、この部分における電荷の転送効率は向上する。したがって、CCD素子20の転送効率が向上する。図4の縦軸はポテンシャルを示し、その横軸はCCD素子20の転送領域の位置を示す。
【0018】
【発明の効果】以上、説明したように本発明によれば、第1転送電極及び第1転送電極間の領域の転送領域の下流側の一部のみを覆うようにレジストパターンを形成し、このレジストパターンをリフローして、第1転送電極間の領域において、転送領域の上流側で薄く下流側で厚いイオン注入マスクをし、このイオン注入マスクを用いて第1転送電極間の領域に不純物領域を形成するので、半導体基板に形成した不純物導入領域の不純物濃度は、転送領域の上流側で濃く、下流側で薄くなるように、転送領域の転送方向に濃度勾配を有する分布になる。この結果、例えばCCD素子の転送領域を、濃度勾配を有する状態に形成することが可能になるので、CCD素子の転送効率の向上を図ることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】イオン注入マスクの製造工程図である。
【図2】不純物濃度分布の説明図である。
【図3】CCD素子の転送領域の製造工程図である。
【図4】CCD素子のポテンシャルの説明図である。
【図5】従来例の製造工程図である。
【図6】課題の説明図である。
【符号の説明】
11 半導体基板
12 レジスト膜
13 マスクパターン
14 端面
15 イオン注入マスク
17 不純物
18 転送領域
20 CCD素子
22 転送電極
23 転送電極
26 転送電極
27 転送電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】 半導体基板の転送領域上に所定の間隔で第1転送電極を複数形成する工程と、前記第1転送電極及び前記第1転送電極間の領域の前記転送領域の下流側の一部のみを覆うようにレジストパターンを形成する工程と、前記レジストパターンをリフローして、前記第1転送電極間の領域において前記転送領域の上流側で薄く、下流側で厚いイオン注入マスクを形成する工程と、前記イオン注入マスクを用いて前記第1転送電極間の領域に不純物領域を形成する工程と、前記イオン注入マスクを除去して前記第1転送電極間の領域上に第2転送電極を形成する工程とを有し、前記不純物領域は不純物濃度が前記上流側で濃く、前記下流側で薄くなることにより前記転送領域の転送方向に濃度勾配を有するように形成されることを特徴とする電荷結合素子の製造方法。
【請求項2】 前記不純物領域のポテンシャルが前記下流側で深くなるよう勾配をもって形成されることを特徴とする請求項1記載の電荷結合素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図5】
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【特許番号】特許第3185339号(P3185339)
【登録日】平成13年5月11日(2001.5.11)
【発行日】平成13年7月9日(2001.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−93382
【出願日】平成4年3月19日(1992.3.19)
【公開番号】特開平5−267206
【公開日】平成5年10月15日(1993.10.15)
【審査請求日】平成11年3月18日(1999.3.18)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【参考文献】
【文献】特開 昭62−67876(JP,A)
【文献】特開 平3−16123(JP,A)
【文献】特開 昭61−222150(JP,A)
【文献】特開 平2−292824(JP,A)
【文献】特開 昭63−27024(JP,A)
【文献】特開 昭60−117632(JP,A)
【文献】特開 平2−58341(JP,A)
【文献】特開 昭61−179574(JP,A)
【文献】特開 平4−196439(JP,A)