説明

電解質及びその製造方法、並びに、電解質膜及びその製造方法、触媒層及び燃料電池

【課題】伝導度が高く、かつ、水に対して膨潤又は溶解しにくい電解質及びその製造方法、並びに、これを用いた電解質膜、触媒層及び燃料電池を提供すること。
【解決手段】−E2−[Rf−E1]m−で表されるフッ素系の親水性セグメントAと、炭化水素系の疎水性セグメントBとが、化学結合を介して交互に結合している構造を備えた電解質及びその製造方法、並びに、これを用いた電解質膜及びその製造方法、触媒層及び燃料電池。但し、Rfは、炭素数が1以上の直鎖状又は分岐状パーフルオロ鎖。E1、E2は、それぞれ、一般式:−(CONM)i1(CO)i2(SO2NM)i3(SO2)i4−で表されるプロトン伝導部位(0≦i1、0≦i2≦1、0≦i3、0≦i4≦1、0<i1+i3。i1〜i4は、それぞれ、整数。Mは、プロトン、アルカリ金属、又はアルカリ土類金属。)。2≦m(mは、整数)。Rf、E1、E2は、それぞれ、繰り返し単位中で任意に選択することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解質及びその製造方法、並びに、電解質膜及びその製造方法、触媒層及び燃料電池に関し、さらに詳しくは、燃料電池などの各種電気化学デバイスに用いられる電解質膜や触媒層内電解質に使用することができる電解質及びその製造方法、並びに、このような電解質を用いた電解質膜及びその製造方法、触媒層及び燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
固体高分子型燃料電池は、固体高分子電解質膜の両面に電極が接合された膜電極接合体(MEA)を基本単位とする。また、固体高分子型燃料電池において、電極は、一般に、拡散層と触媒層の二層構造をとる。拡散層は、触媒層に反応ガス及び電子を供給するためのものであり、カーボンペーパー、カーボンクロス等が用いられる。また、触媒層は、電極反応の反応場となる部分であり、一般に、白金等の電極触媒を担持したカーボンと固体高分子電解質(触媒層内電解質)との複合体からなる。
【0003】
このようなMEAを構成する電解質膜あるいは触媒層内電解質には、耐酸化性に優れた炭化フッ素系電解質(例えば、ナフィオン(登録商標、デュポン社製)、アシプレックス(登録商標、旭化成(株)製)、フレミオン(登録商標、旭硝子(株)製)等。)を用いるのが一般的である。また、炭化フッ素系電解質は、耐酸化性に優れるが、一般に極めて高価である。そのため、固体高分子型燃料電池の低コスト化を図るために、炭化水素系電解質の使用も検討されている。
【0004】
しかしながら、固体高分子型燃料電池を車載用動力源等として用いるためには、解決すべき課題が残されている。例えば、固体高分子型燃料電池において、高い性能を得るためには、電池の作動温度は高い方が好ましく、そのためには、電解質膜の耐熱性が高いことがこのましい。しかしながら、従来のフッ素系電解質膜は、高温における機械的強度が低いという問題がある。
また、燃料電池を高温低加湿又は無加湿で運転することが近年重要視されている。そのような条件下でも高いプロトン伝導性を発現させるためには、高イオン交換容量を有する電解質が必要である。しかしながら、高イオン交換容量を有する電解質は、高い含水率を有するために膜の膨潤変化が大きい。そのため、膜形状を維持できない場合や、水に溶解する場合がある。この高い伝導度と高い含水率というトレードオフをいかに克服するかが大きな課題となっている。
【0005】
そこでこの問題を解決するために、従来から種々の提案がなされている。
例えば、特許文献1には、F−C64−SO2NKSO2−(CF2)4−SO2NKSO2−C64−Fと、Cl−C64−SO2−C64−Clと、HO−C64−C64−OHとを共重合させることにより得られる共重合体が開示されている。
同文献には、このような方法により得られる共重合体は、温度:85℃、相対湿度:95%における伝導率が156mS/cmである点が記載されている。
【0006】
また、特許文献2には、親水性セグメントがポリ(パラ−フェニレン)を主鎖とし、側鎖はアルキル基を介してスルホン酸基が結合しているものからなり、疎水性セグメントがポリエーテルケトンからなるブロック共重合体が開示されている。
また、特許文献3には、親水性セグメントがポリ(α−メチルスチレン)等のビニル系ポリマーからなり、疎水性セグメントがポリブタジエン等の脂肪族系ポリマーからなるブロック共重合体が開示されている。
また、特許文献4には、親水性セグメントがスルホン酸基を有するフッ素系ポリ(ビニルエーテル)からなり、疎水性セグメントがスルホン酸基を有しないフッ素系ポリ(ビニルエーテル)からなるブロック共重合体が開示されている。
さらに、特許文献5には、親水性セグメントがスルホン酸基を有するフッ素系ポリ(ビニルエーテル)からなり、疎水性セグメントが一部フッ素原子を含むポリエーテルスルホンからなるブロック共重合体が開示されている。
【0007】
【特許文献1】特開2004−331972号公報
【特許文献2】特開2006−252813号公報
【特許文献3】特開2006−210326号公報
【特許文献4】特開平11−329062号公報
【特許文献5】特開2004−190003号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
親水性セグメントである高いイオン交換容量を有するポリマーと、疎水性セグメントであるポリマーとを結合させてブロック共重合体とすると、膜の膨潤変化や水への溶解を抑制することができる。親水性セグメントと疎水性セグメントに、それぞれプロトン伝導と膜の機械的強度の付与の機能分離をすることで、問題を解決することができる。
しかしながら、親水性セグメントと疎水性セグメントの双方に炭化水素系ポリマー(一部、フッ素原子を有するものも含む)を使用すると、燃料電池の発電の際に生ずる過酸化水素(又は、ヒドロキシラジカル)により電解質が酸化し、電解質としての機能が失われる。一方、親水性セグメントと疎水性セグメントの双方にフッ素系ポリマーを使用すれば、耐酸化性は良好となる。しかしながら、両セグメントにフッ素系ポリマーを使用すると、コストが高くなり、環境負荷も大きいという問題がある。
さらに、電解質を燃料電池用の電解質膜として使用するためには、耐熱性が高いだけでなく、ガスバリア性が高く、かつ、ある程度の柔軟性も必要である。
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、伝導度が高く、かつ、水に対して膨潤又は溶解しにくい電解質及びその製造方法、並びに、このような電解質を用いた電解質膜及びその製造方法、触媒層及び燃料電池を提供することにある。
また、本発明が解決しようとする他の課題は、低コストであり、しかも環境負荷の小さい電解質及びその製造方法、並びに、このような電解質を用いた電解質膜及びその製造方法、触媒層及び燃料電池を提供することにある。
さらに、本発明が解決しようとする他の課題は、耐熱性、耐酸化性が高く、しかも膜化したときに実用上十分なガスバリア性と柔軟性とを持つ電解質及びその製造方法、並びに、このような電解質を用いた電解質膜及びその製造方法、触媒層及び燃料電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために本発明に係る電解質は、
(1)式で表されるフッ素系の親水性セグメントAと、炭化水素系の疎水性セグメントBとが、化学結合を介して交互に結合している構造を備えていることを要旨とする。
A: −E2−[Rf−E1]m− ・・・(1)
但し、
Rfは、炭素数が1以上の直鎖状又は分岐状パーフルオロ鎖。
1、E2は、一般式:−(CONM)i1(CO)i2(SO2NM)i3(SO2)i4−で表されるプロトン伝導部位(0≦i1、0≦i2≦1、0≦i3、0≦i4≦1、0<i1+i3。i1〜i4は、それぞれ、整数。Mは、プロトン、アルカリ金属(Li、Na、K、Rb、Cs、Fr)、又はアルカリ土類金属(Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra)。)。
2≦m(mは、整数)。
Rf、E1、E2は、それぞれ、繰り返し単位の中で任意に選択することができる。
【0011】
また、本発明に係る電解質の製造方法は、
(1)式で表されるフッ素系の親水性セグメントAの両端に官能基が結合している1種若しくは2種以上のポリマーA、又は、前記親水性セグメントAを形成可能な1種若しくは2種以上のモノマーA若しくはポリマーAと、
炭化水素系の疎水性セグメントBの両端に官能基が結合している1種若しくは2種以上のポリマーB、又は、前記疎水性セグメントBを形成可能な1種若しくは2種以上のモノマーB若しくはポリマーBと
を反応させる反応工程を備えていることを要旨とする。
A: −E2−[Rf−E1]m− ・・・(1)
但し、
Rfは、炭素数が1以上の直鎖状又は分岐状パーフルオロ鎖。
1、E2は、一般式:−(CONM)i1(CO)i2(SO2NM)i3(SO2)i4−で表されるプロトン伝導部位(0≦i1、0≦i2≦1、0≦i3、0≦i4≦1、0<i1+i3。i1〜i4は、それぞれ、整数。Mは、プロトン、アルカリ金属(Li、Na、K、Rb、Cs、Fr)、又はアルカリ土類金属(Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra)。)。
2≦m。
Rf、E1、E2は、それぞれ、繰り返し単位の中で任意に選択することができる。
【0012】
さらに、本発明に係る電解質膜は、本発明に係る電解質を用いたことを要旨とする。本発明に係る電解質膜の製造方法は、本発明に係る電解質を溶媒に溶解させ、キャスト製膜する工程を備えている。本発明に係る電解質と多孔体との複合体からなる電解質膜の製造方法は、本発明に係る電解質を溶媒に溶解させ、溶液を多孔体に充填し、溶媒を除去する工程を備えている。
また、本発明に係る触媒層は、本発明に係る電解質を触媒層内電解質に用いたことを要旨とする。さらに、本発明に係る燃料電池は、本発明に係る電解質を用いたことを要旨とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る電解質は、親水性セグメントに高いイオン交換容量を有するフッ素系セグメントを用いているので、高いプロトン伝導と高い耐酸化性を有している。一方、疎水性セグメントは、炭化水素系セグメントからなるが、電解質内では親水性セグメントと疎水性セグメントがミクロ相分離しているので、炭化水素系セグメントは酸化されにくい。これは、膜を酸化させる過酸化水素やヒドロキシラジカルは、水が存在する親水性セグメントに存在するためと考えられる。特に、親水性セグメントと疎水性セグメントが、それぞれ、ある一定量以上の分子量を持つブロックコポリマー化しているときには、ミクロ相分離構造が明確となるため、疎水性セグメントが過酸化水素やヒドロキシラジカルに攻撃される確率は低い。また、仮に疎水性セグメントが酸化しても、疎水性セグメントはフッ素を含まないので環境負荷も小さい。
さらに、疎水性セグメントの分子量をある一定値以上にすると、膜を不溶化することができる。また、疎水性セグメントに炭化水素系セグメントを用いると、電解質膜のガスバリア性が向上する。さらに、炭化水素系ポリマーのみからなる電解質膜は、一般に膜が硬くなるが、親水性セグメントとして柔らかいフッ素系セグメントを用いると、膜に柔軟性を付与することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の一実施の形態について詳細に説明する。
[1. 電解質]
本発明に係る電解質は、フッ素系の親水性セグメントAと炭化水素系の疎水性セグメントBとが化学結合を介して交互に結合している構造を備えている。
【0015】
[1.1 親水性セグメント]
本発明において、「フッ素系の親水性セグメント」とは、構造中にC−F結合を含み、C−H結合を含まず、かつ、構造中にプロトン伝導部位Eを持つものをいう。親水性セグメントAは、具体的には、次の(1)式で表される構造を持つ。
A: −E2−[Rf−E1]m− ・・・(1)
但し、
Rfは、炭素数が1以上の直鎖状又は分岐状パーフルオロ鎖。
1、E2は、それぞれ、一般式:−(CONM)i1(CO)i2(SO2NM)i3(SO2)i4−で表されるプロトン伝導部位(0≦i1、0≦i2≦1、0≦i3、0≦i4≦1、0<i1+i3。i1〜i4は、それぞれ、整数。Mは、プロトン、アルカリ金属(Li、Na、K、Rb、Cs、Fr)、又はアルカリ土類金属(Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra)。)。
2≦m(mは、整数)。
Rf、E1、E2は、それぞれ、繰り返し単位の中で任意に選択することができる。
【0016】
Rfは、炭素数が1以上の直鎖状又は分岐状パーフルオロ鎖を表す。パーフルオロ鎖とは、C−F結合を含み、C−H結合を含まない2価の基をいう。炭素数及び分子構造が等しい1種類のモノマーのみを用いて電解質を合成した場合、繰り返し単位中に含まれる各Rfの炭素数や分子構造はすべて同一となるが、炭素数や分子構造の異なる2種以上のモノマーを用いた場合、繰り返し単位中に含まれる各Rfの炭素数や分子構造は、繰り返し単位毎に異なる場合がある。
Rfには、次の(1.1)式で表すものが含まれる。
−(CFpRf'q)r− ・・・(1.1)
但し、p、qは、0以上の整数で、p+q=2。rは、1以上の整数。
Rf'は、パーフルオロアルキル鎖又はパーフルオロアルコキシ鎖。
【0017】
各繰り返し単位中に含まれるプロトン伝導部位E1、E2は、合成に使用するモノマーの種類に応じて、すべて同一となる場合と、繰り返し単位毎に異なる場合とがある。
親水性セグメントに含まれるプロトン伝導部位E1、E2は、上述した一般式で表されるものの中でも、特に以下の構造を有するものが好ましい。
(1) −CONM−、−CONMCO−、
−(CONM)i1−(2≦i1)、−(CONM)i1CO−(2≦i1)。
(2) −SO2NM−、−SO2NMSO2−、
−(SO2NM)i3−(2≦i3)、−(SO2NM)i3SO2−(2≦i3)。
(3) −SO2NMCO−、
−(SO2NM)i3CO−(2≦i3)、−(CONM)i1SO2−(2≦i1)。
(4) −CONMSO2NM−、−(CONM)i1SO2NM−(2≦i1)、
−CONM(SO2NM)i3−(2≦i3)、
−(CONM)i1(SO2NM)i3−(2≦i1、2≦i3)。
(5) −CONMSO2NMCO−、−(CONM)i1SO2NMCO−(2≦i1)、
−CONM(SO2NM)i3CO−(2≦i3)、
−(CONM)i1(SO2NM)i3CO−(2≦i1、2≦i3)。
(6) −CONMSO2NMSO2−、−(CONM)i1SO2NMSO2−(2≦i1)、
−CONM(SO2NM)i3SO2−(2≦i3)、
−(CONM)i1(SO2NM)i3SO2−(2≦i1、2≦i3)。
なお、本発明において、「−SO2NM−」というときは、「−NMSO2−」も含まれる。左右非対称の構造を有する他のプロトン伝導部位E1、E2も同様である。なお、Mは、プロトン、アルカリ金属(Li、Na、K、Rb、Cs、Fr)、又はアルカリ土類金属(Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra)である。Mは、好ましくは、Li、Na、K、Cs、Mg、Ca、Sr、Baである。
【0018】
親水性セグメントAには、次の(1.2)式で表されるものが含まれる。
A: −(SO2)i5(NMSO2)i6−[Rf−(SO2NM)i3(SO2)i4]m
・・・(1.2)
但し、
1≦i3、i4=0又は1、i5=0又は1、1≦i6、2≦m。
Rfは、炭素数が1以上の直鎖状又は分岐状パーフルオロ鎖であり、繰り返し単位の中で任意に選択することができる。
Mは、プロトン、アルカリ金属(Li、Na、K、Rb、Cs、Fr)、又はアルカリ土類金属(Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra)。
親水性セグメントAは、特に、次の(1.3)式又は(1.4)で表されるものが好ましい。
A: −SO2(NMSO2)i6−{Rf−(SO2NM)i3SO2]m− ・・・(1.3)
A: −(NMSO2)i6−{[Rf−(SO2NM)i3SO2]m-1−Rf−(SO2NM)i7}−
・・・(1.4)
但し、1≦i3、1≦i6、1≦i7。i3、i6、i7は、整数。
Rf、m、Mは、(1)式と同様であるので、説明を省略する。また、Mは、好ましくは、Li、Na、K、Cs、Mg、Ca、Sr、Baである。
【0019】
[1.2 疎水性セグメント]
本発明において、「炭化水素系の疎水性セグメント」とは、構造中にC−H結合を含み、C−F結合を含まず、かつ、構造中にプロトン伝導部位Eを含まないものをいう。但し、C−F結合で挟まれたE(Rf−E−Rf)は、プロトン伝導部位として働くが、C−F結合で挟まれないEは、プロトン伝導部位として働かないので、疎水性セグメントBは、C−H結合で挟まれたE(R−E−R)を含んでいても良い。
疎水性セグメントBは、−(CH2)b−結合を備えた脂肪族セグメントであっても良く、あるいは、芳香族環が直接結合又は2価の基を介して結合している芳香族セグメントであっても良い。脂肪族セグメントを疎水性セグメントBに用いた場合、脂肪族セグメントの結晶性の良さから電解質膜の機械的強度が高いものが得られる。また、芳香族セグメントを疎水性セグメントBに用いた場合、芳香族セグメントの耐熱性の高さから電解質膜に耐熱性を付与することができる。
疎水性セグメントBが主鎖に脂肪族を含むものである場合、脂肪族としては、具体的には、ビニルポリマー、ポリスルホンアミド、ポリスルホンイミド、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテル、ポリウレタン、ポリ尿素、ポリエステル、ポリカーボネートなどがある。疎水性セグメントBには、これらのいずれか1種のみが含まれていても良く、あるいは、2種以上が含まれていても良い。
また、疎水性セグメントBは、芳香族環がスルホンアミド基、スルホンイミド基、アミド基、イミド基、エーテル基、ウレタン基、ウレア基、エステル基、カーボネート基から選ばれるいずれか1以上の基を介して結合しているものでも良い。
【0020】
疎水性セグメントBは、特に、(2)式で表される構造を有するものが好ましい。
B: −(Ar1−Y)n−Ar2− ・・・(2)
但し、
Ar1、Ar2は、それぞれ、アリレン基。
Yは、直接結合、−O−、−S−、−SO2−、又は、−CO−。
0≦n(nは、整数)。
Ar1、Ar2、Yは、それぞれ、繰り返し単位の中で任意に選択することができる。
【0021】
アリレン基Ar1、Ar2とは、芳香族環、又は、これらが直接結合を介して連結したものからなる2価の基をいう。繰り返し単位中に含まれるアリレン基Ar1、Ar2は、合成に使用するモノマーの種類に応じて、すべて同一となる場合と、繰り返し単位毎に異なる場合とがある。
アリレン基Ar1、Ar2としては、具体的には、以下のようなものがある。疎水性セグメントBには、以下のいずれか1種のアリレン基のみが含まれていても良く、あるいは、2種以上が含まれていても良い。
(1) ベンゼン(−C64−)、ビフェニル(−(C64)2−)、ターフェニル(−(C64)3−)、テトラフェニル(−(C64)4−)。
(2) ナフタレン(−C106−)、アントラセン(−C148−)、ナフタセン(−C1810−)、ペンタセン(−C2212−)、フェナントレン(−C148−)、ピレン(−C168−)などの縮合環類。
(3) ピリジン(−C53N−)、ピラジン(−C422−)、ピリミジン(−C422−)などの複素環類。
(4) ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾイミダゾールなどの複素環類。
(5) キノリン(−C95N−)、イソキノリン(−C95N−)、キノキサリン(−C842−)などの複素環類。
(6) カルバゾール、オキサゾール、オキサチアゾール、フラン(−C42O−)、チオフェン(−C42S−)、ピロール(−C43N−)などの複素環類。
(7) フルオレン、スチルベンなどの多環芳香族。
(8) (1)〜(7)の置換誘導体。
(9) (1)〜(8)のいずれか2個以上が直接結合を介してつながったもの。
置換誘導体の例としては、例えば、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、又は、アリールオキシ基のいずれかを側鎖として有する芳香族環(例えば、フェニレン基など)がある。
【0022】
[1.3. 分子量]
親水性セグメントA及び疎水性セグメントBの分子量は、特に限定されるものではなく、目的に応じて任意に選択することができる。
すなわち、本発明に係る電解質は、相対的に小さな分子量を持つ親水性セグメントAと、相対的に小さな分子量を持つ疎水性セグメントBとが交互に結合しているコポリマーであっても良い。
また、本発明に係る電解質は、相対的に小さな分子量を持つ親水性セグメントAと、相対的に大きな分子量を持つ疎水性セグメントBとが交互に結合しているコポリマーであっても良く、あるいは、その逆であっても良い。
さらに、本発明に係る電解質は、相対的に大きな分子量を持つ親水性セグメントAと、相対的に大きな分子量を持つ疎水性セグメントBとが交互に結合しているブロックコポリマーであっても良い。ブロックコポリマーとは、2個のセグメントからなるジブロックコポリマー(A−B)、3個のセグメントからなるトリブロックコポリマー(A−B−A、B−A−B)、及び、4個以上のセグメントからなるマルチブロックコポリマー(−(A−B)n−)のいずれも含まれる。
【0023】
本発明に係る電解質において、親水性セグメントAの分子量をある一定値に固定し、疎水性セグメントBの分子量を大きくしていくと、疎水性セグメントBの分子量があるしきい値以上になった時に、電解質は水に対して不溶になる。電解質を不溶性にするための疎水性セグメントBの分子量は、親水性セグメントAの分子量や分子構造等に応じて異なる。高プロトン伝導性と耐膨潤性とを両立させるためには、親水性セグメントAの分子量(Ma)は相対的に大きく、かつ、Maに対する疎水性セグメントBの分子量(Mb)の比(Mb/Ma)は、電解質が水に対して不溶となる臨界値以上が好ましい。
また、(2)式で表される疎水性セグメントにおいて、Yの種類によって疎水部同士の凝集力に違いがあり、疎水性セグメントの構造式によっても電解質が水に対して不溶となるMb/Maの臨界値に違いが生ずる。
【0024】
なお、本発明において、「モノマー」というときは、単量体をいう。また、「ポリマー」というときは、2量体以上の分子量の大きい重合体をいう。
【0025】
[2. 電解質の製造方法]
次に、本発明に係る電解質の製造方法について説明する。
本発明に係る電解質の製造方法は、所定の条件を満たすモノマーA又はポリマーAと、モノマーB又はポリマーBとを反応させる反応工程を備えている。
【0026】
[2.1 モノマーA又はポリマーA]
ポリマーAとは、フッ素系の親水性セグメントAの両端に官能基が結合しているポリマー、又は、フッ素系の親水性セグメントAを形成可能なポリマーをいう。
また、モノマーAとは、フッ素系の親水性セグメントAを形成可能なモノマーをいう。
モノマーA及びポリマーAは、それぞれ、いずれか1種を用いても良く、あるいは、2種以上を組み合わせて用いても良い。
フッ素系の親水性セグメントAは、次の(1)式で表される。(1)式の詳細は、上述した通りであるので、説明を省略する。
A: −E2−[Rf−E1]m− ・・・(1)
但し、
Rfは、炭素数が1以上の直鎖状又は分岐状パーフルオロ鎖。
1、E2は、それぞれ、一般式:−(CONM)i1(CO)i2(SO2NM)i3(SO2)i4−で表されるプロトン伝導部位(0≦i1、0≦i2≦1、0≦i3、0≦i4≦1、0<i1+i3。i1〜i4は、それぞれ、整数。Mは、プロトン、アルカリ金属(Li、Na、K、Rb、Cs、Fr)、又はアルカリ土類金属(Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra)。)。
2≦m。
Rf、E1、E2は、それぞれ、繰り返し単位の中で任意に選択することができる。
【0027】
ポリマーAの両端に結合している官能基の種類、又は、親水性セグメントAを形成可能なモノマーA若しくはポリマーAの末端は、反応工程において使用する反応の種類に応じて、最適なものを選択する。
例えば、後述する求核置換反応を用いて電解質を合成する場合、ポリマーAの両端に結合している官能基、又は、親水性セグメントAを形成可能なモノマーA若しくはポリマーAの末端は、F、Cl、Br、I、OH、SHなどが好ましい。
また、例えば、後述するカップリング反応を用いて電解質を合成する場合、ポリマーAの両端に結合している官能基、又は、親水性セグメントAを形成可能なモノマーA若しくはポリマーAの末端は、F、Cl、Br、I、−B(OH)2、ボロン酸環状エステルなどが好ましい。
【0028】
また、例えば、後述する縮合反応を用いて電解質を合成する場合、ポリマーAの両端に結合している官能基は、アミド基若しくはその誘導体(以下、「アミド系官能基」という)、又は、ハライド基若しくはその誘導体(以下、「ハライド系官能基」という)が好ましい。同様に、親水性セグメントAを形成可能なモノマーA又はポリマーAの末端は、アミド系官能基又はハライド系官能基が好ましい。
ここで、アミド系官能基とは、一般式:−SO2NZ12、−CONZ12、又は、−NZ12で表される官能基をいう。但し、Z1、Z2は、それぞれ、H、M、又は、SiMe3を表す。また、Mは、アルカリ金属(Li、Na、K、Rb、Cs、Fr)イオン、又はアルカリ土類金属(Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra)イオンを表す。特に、(Z、Z2)の組み合わせが、(H、H)、(H、M)、(SiMe3、M)、又は、(H、SiMe3)からなるものは、高い反応性を有しているので、アミド系官能基として好適である。
ハライド系官能基とは、一般式:−SO2X、又は、−COXで表される官能基をいう。但し、Xは、F、Cl、Br、又は、Iを表す。特に、XがF又はClからなるものは、高い反応性と取り扱いの観点から、ハライド系官能基として好適である。
【0029】
ポリマーAの第1の具体例は、次の(3.1)式で表されるものからなる。(3.1)式で表されるポリマーAは、求核置換反応又はカップリング反応に用いることができる。
1−Ar3−E2−[Rf−E1]m−Ar4−T2 ・・・(3.1)
但し、
Rfは、炭素数が1以上の直鎖状又は分岐状パーフルオロ鎖。
1、E2は、それぞれ、一般式:−(CONM)i1(CO)i2(SO2NM)i3(SO2)i4−で表されるプロトン伝導部位(0≦i1、0≦i2≦1、0≦i3、0≦i4≦1、0<i1+i3。i1〜i4は、それぞれ、整数。Mは、プロトン、アルカリ金属(Li、Na、K、Rb、Cs、Fr)、又はアルカリ土類金属(Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra)。)。
2≦m。
1、T2は、それぞれ、F、Cl、Br、I、OH、SH、−B(OH)2、又は、ボロン酸環状エステル。
Ar3、Ar4は、それぞれ、アリレン基。
Rf、E1は、それぞれ、繰り返し単位の中で任意に選択することができる。
【0030】
モノマーA又はポリマーAの第2の具体例は、次の(3.2)式で表されるものからなる。(3.2)式で表されるモノマーA又はポリマーAは、縮合反応に用いることができる。
3−[Rf−E1]m'−Rf"−T4 ・・・(3.2)
但し、
Rfは、炭素数が1以上の直鎖状又は分岐状パーフルオロ鎖。
1は、一般式:−(CONM)i1(CO)i2(SO2NM)i3(SO2)i4−で表されるプロトン伝導部位(0≦i1、0≦i2≦1、0≦i3、0≦i4≦1、0<i1+i3。i1〜i4は、それぞれ、整数。Mは、プロトン、アルカリ金属(Li、Na、K、Rb、Cs、Fr)、又はアルカリ土類金属(Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra)。)。
0≦m'。
Rf”は、炭素数が1以上の直鎖状又は分岐状パーフルオロ鎖。
3、T4は、それぞれ、−NZ12、−SO2NZ12、−SO2X、−CONZ12、又は、−COX(Z1、Z2は、それぞれ、H、M、SiMe3。Mは、アルカリ土類金属(Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra)、又はアルカリ土類金属(Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra)。Xは、ハロゲン)。
Rf、E1は、それぞれ、繰り返し単位の中で任意に選択することができる。
【0031】
[2.2 モノマーA又はポリマーAの製造方法]
(3.2)式で表されるモノマーAは、市販されているか、あるいは、類似の分子構造を有する市販の化合物を出発原料に用いて、公知の方法により官能基変換を施すことにより合成することができる。
【0032】
また、(3.2)式で表されるポリマーAは、(3.2)式で表されるモノマーA(m'=0)を出発原料に用いて、縮合反応により合成することができる。
次の(3.2.1)〜(3.2.4)式に、末端がアミド系官能基からなる各種ポリマーAの合成反応式の一例を示す。但し、Xは、ハロゲンである。
いずれの場合も、末端がアミド系官能基からなるポリマーAは、塩基存在下でモノマーを反応させた後、過剰のアミド系モノマー又はNH3と反応させることにより得られる。また、式中のmは、式中のa及びb、並びに、反応時間及び温度により制御することができる。
【0033】
【化1】

【0034】
他のプロトン伝導部位Eを有するポリマーAも同様であり、分子の末端に−SO2X基又は−COX基を有するモノマー又はポリマーと、分子の末端に−SO2NZ12基、−CONZ12基、又は、−NZ12基を有するモノマー又はポリマーとを縮合反応させることにより、上述したプロトン伝導部位E1を備えたポリマーAを得ることができる。
また、この時、
(1) XO2SNMSO2X、H2NO2SNMSO2NH2、XOCNMCOX、H2NCONMCONH2(Mは、プロトン、アルカリ金属(Li、Na、K、Rb、Cs、Fr)、又はアルカリ土類金属(Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra)。Xは、ハロゲン)、
(2) H2NSO2X、H2NCOX(Xは、ハロゲン)、
(3) H2NCONH2、H2NSO2NH2
(4) COX2、SO22(Xは、ハロゲン)、
などのモノマーを併用すると、i1又はi3の一方又は双方が2以上であるプロトン伝導部位Eを備えたポリマーAを合成することができる。(3.2.5)〜(3.2.10)式に、その合成反応式の一例を示す。
【0035】
【化2】

【0036】
さらに、(3.1)式で表されるポリマーAは、(3.2)式で表されるポリマーAの末端に、縮合反応等を用いて適当な分子構造を有する官能基を付加することにより合成することができる。
(3.1.1)式に、合成反応の一例を示す。但し、Xは、ハロゲンである。
【0037】
【化3】

【0038】
いずれの場合においても、Rfや末端の官能基が等価である原料のみを用いると、繰り返し単位中に含まれるRf及びE1が同一であるポリマーAが得られる。
一方、Rfや末端の官能基が異なる2種以上の原料を用いると、繰り返し単位中に含まれるRf及び/又はE1の異なるポリマーAが得られる。
【0039】
[2.3 モノマーB又はポリマーB]
ポリマーBとは、炭化水素系の疎水性セグメントBの両端に官能基が結合しているポリマーをいう。
モノマーBとは、疎水性セグメントBを形成可能なモノマーをいう。
モノマーB及びポリマーBは、それぞれ、いずれか1種を用いても良く、あるいは、2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0040】
ポリマーBの両端に結合している官能基の種類、又は、疎水性セグメントBを形成可能なモノマーB若しくはポリマーBの末端は、反応工程において使用する反応の種類に応じて、最適なものを選択する。
ポリマーBの末端の官能基、及び、疎水性セグメントBを形成可能なモノマーB若しくはポリマーBの末端の構造については、ポリマーAの末端の官能基、及び、親水性セグメントAを形成可能なモノマーA又はポリマーAの末端の構造と同様であるので、説明を省略する。
【0041】
モノマーB又はポリマーBの第1の具体例は、次の(4.1)式で表されるものからなる。(4.1)式で表されるモノマーB又はポリマーBは、S1、S2の構造に応じて、縮合反応、求核置換反応、及び、カップリング反応のいずれにも使用することができる。
1−(Ar1−Y)n−Ar2−S2 ・・・(4.1)
但し、
Ar1、Ar2は、それぞれ、アリレン基。
Yは、直接結合、−O−、−S−、−SO2−、又は、−CO−。
0≦n(nは、整数)。
1、S2は、それぞれ、−OH、−SH、−B(OH)2、ボロン酸環状エステル、−NZ12、−SO2NZ12、−SO2X、−CONZ12、−COX、F、Cl、Br、又は、I(Z1、Z2は、それぞれ、H、M、SiMe3。Mは、アルカリ土類金属(Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra)、又はアルカリ土類金属(Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra)。Xは、ハロゲン又はOH)。
Ar1、Yは、それぞれ、繰り返し単位の中で任意に選択することができる。
【0042】
モノマーBの第2の具体例は、次の(4.2)〜(4.3)式で表されるものからなる。(4.2)〜(4.3)式で表されるモノマーBは、それぞれ、(4.1)式においてn=0又は1に相当するものであり、求核置換反応又はカップリング反応により疎水性セグメントBを形成可能なモノマーである。
3−Ar5−S4 ・・・(4.2)
5−Ar6−Y'−Ar7−S6 ・・・(4.3)
但し、
Ar5、Ar6、Ar7は、それぞれ、アリレン基。
3〜Sは、それぞれ、ハロゲン、OH、又は、SH。
Y'は、−O−、−S−、−SO2−、又は、−CO−。
【0043】
[2.4 モノマーB又はポリマーBの製造方法]
(4.2)〜(4.3)式で表されるモノマーBは、市販されているか、あるいは、類似の分子構造を有する市販の化合物を出発原料に用いて、公知の方法により官能基変換を施すことにより合成することができる。
【0044】
また、(4.1)式で表されるポリマーBは、例えば、(4.2)〜(4.3)式で表されるモノマーBを出発原料に用いて、求核置換反応又はカップリング反応により合成することができる。
次の(4.1.1)〜(4.1.3)式に、S3、S4がOHであり、S5、S6がX(ハロゲン)であるモノマーBを用いた合成反応(求核置換反応)の一例を示す。
【0045】
【化4】

【0046】
他の構造を有するポリマーBも同様であり、(4.2)〜(4.3)式のような比較的単純な構造を有する化合物を出発原料に用いて、求核置換反応又はカップリング反応により重合させることにより得られる。
また、いずれの場合においても、Ar、Y、末端の官能基等が等価である原料のみを用いると、繰り返し単位中に含まれるAr及びYが同一であるポリマーBが得られる。
一方、Ar、Y、末端の官能基等が異なる2種以上の原料を用いると、繰り返し単位中に含まれるAr及び/又はYの異なるポリマーBが得られる。
【0047】
さらに、(4.1)〜(4.3)式以外のモノマーB又はポリマーBとしては、既知の重合法(ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合、配位重合、重付加(水素移動重合を含む)、重縮合、開環重合(メタセシス重合)、酸化重合、グループ移動重合、光固相重合、Diels−Alder反応による重合、カップリング重合、電解重合など)で使用されうるモノマーや、上記の重合法によって合成されるポリマーの内で、
(1) モノマーA又はポリマーAと化学結合を形成可能な置換基(例えば、OH、ハロゲン、アミド系官能基、ハライド系官能基など)を有するモノマーB、
(2) モノマーA又はポリマーAと化学結合を形成可能な置換基(例えば、OH、ハロゲン、アミド系官能基、ハライド系官能基など)を末端に有するポリマーB、
などがある。
【0048】
[2.5 反応方法]
本発明に係る電解質を得る方法には、以下のような方法がある。
(1) モノマーAとモノマーBとを反応させる方法。
(2) モノマーAとポリマーBとを反応させる方法。
(3) ポリマーAとモノマーBとを反応させる方法。
(4) ポリマーAとポリマーBとを反応させる方法。
上述したように、高プロトン伝導性と耐膨潤性とを両立させるためには、親水性セグメントAの分子量(Ma)は相対的に大きく、かつ、Maに対する疎水性セグメントBの分子量(Mb)の比(Mb/Ma)は、電解質が水に対して不溶となる臨界値以上が好ましい。このような電解質を合成するためには、(2)〜(4)の方法を用いるのが好ましい。
【0049】
モノマーA又はポリマーAとモノマーB又はポリマーBとを結合させる方法には、縮合反応、求核置換反応、カップリング反応などがある。
【0050】
(5.1)式に、(3.2)式で表されるポリマーAと、(4.1)式で表されるポリマーBとの縮合反応の一例を示す。この場合、T3、T4としてアミド系官能基を用い、S1、S2としてハライド系官能基を用いるのが好ましい。あるいは、その逆でも良い。
【0051】
この場合、官能基T1、T2及び官能基S1、S2の縮合反応は、塩基存在下で行うのが好ましい。塩基存在下で縮合反応を行うと、縮合反応を促進させることができる。塩基としては、具体的には、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、DBU(ジアザバイシクロウンデセン)、金属アルコキシドなどがある。この点は、縮合反応を用いてポリマーAを合成する場合も同様である。
【0052】
また、(5.2)式に、(3.1)式で表されるポリマーAと、(4.1)式で表されるポリマーBとの求核置換反応の一例を示す。この場合、T1、T2は、ハロゲンを用い、S1、S2は、OH、SHを用いるのが好ましい。あるいは、その逆でも良い。
【0053】
さらに、(5.3)式に、(3.1)式で表されるポリーAと、(4.1)式で表されるポリマーBとのカップリング反応の一例を示す。この場合、T1、T2は、ハロゲンが好ましい。また、S1、S2は、ハロゲン、ボロン酸、ボロン酸環状エステルが好ましい。あるいは、その逆でも良い。
【0054】
カップリング反応を用いて電解質を合成する場合、カップリング反応は、触媒及び還元剤存在下で行う。触媒には、Cu、Pd、Ni等の遷移金属を用いるのが好ましい。NiやCuでカップリングする場合、官能基(T、S)の組み合わせは、(ハロゲン、ハロゲン)が好ましい。一方、Pdでカップリングする場合、官能基(T、S)の組み合わせは、(ハロゲン、ボロン酸)、(ハロゲン、ボロン酸環状エステル)、(ボロン酸、ハロゲン)、又は、(ボロン酸環状エステル、ハロゲン)が好ましい。
また、還元剤としてZn等の金属を添加したり、あるいは、反応を促進させるために、NaI、Et4NI等の塩を添加するのが好ましい。
これらの点は、カップリング反応を用いてポリマーBを合成する場合も同様である。
【0055】
【化5】

【0056】
また、例えば、(3.2.1)〜(3.2.10)式の左辺に例示されたモノマーAと、(4.1)式で表されるポリマーB(但し、S1、S2がアミド系官能基又はハライド系官能基であるもの)とを用いて、縮合反応により電解質を合成することもできる。
あるいは、(3.1)式又は(3.2)式で表されるポリマーAと、(4.2)式又は(4.3)式で表されるモノマーBとを用いて、求核置換反応又はカップリング反応により電解質を合成することもできる。
【0057】
さらに、(4.1)〜(4.3)式以外のモノマーB又はポリマーB(上述した既知の重合反応に使用されるモノマー又はこれにより得られるポリマー)と、モノマーA又はポリマーAとを反応させることで、同様に電解質を合成することができる。
例えば、(6.1)式に、芳香族環を含まない脂肪族系炭化水素ポリマー(ポリアミド)を形成可能なモノマーBと、(3.1)式で表されるポリマーAとを反応させることにより得られる電解質の例を示す。
また、(6.2)式に、芳香族環を含まない脂肪族系炭化水素ポリマーB(ポリアミド)と、(3.1)式で表されるポリマーAとを反応させることにより得られる電解質の例を示す。
また、(6.3)式に、主鎖に芳香族環を含まない脂肪族系炭化水素ポリマーB(ビニルポリマー)と、(3.1)式で表されるポリマーAとを反応させることにより得られる電解質の例を示す。
【0058】
【化6】

【0059】
また、(6.4)式に、主鎖に芳香族環を含む炭化水素ポリマーB(ポリイミド)と、(3.2)式で表されるモノマーAとを反応させることにより得られる電解質の例を示す。
また、(6.5)式に、主鎖に芳香族環を含まない脂肪族系炭化水素ポリマーB(ポリエーテル)と、(3.2)式で表されるモノマーAとを反応させることにより得られる電解質の例を示す。
また、(6.6)式に、主鎖に脂肪族鎖又は芳香族環を含む炭化水素ポリマーB(ポリウレタン)と、(3.1)式で表されるポリマーAとを反応させることにより得られる電解質の例を示す。
また、(6.7)式に、主鎖に脂肪族鎖又は芳香族環を含む炭化水素ポリマーB(ポリウレア)と、(3.1)式で表されるポリマーAとを反応させることにより得られる電解質の例を示す。
【0060】
【化7】

【0061】
また、(6.8)式に、主鎖に脂肪族鎖と芳香族環を含む炭化水素ポリマーB(ポリエステル)と、(3.1)式で表されるポリマーAとを反応させることにより得られる電解質の例を示す。
また、(6.9)式に、主鎖に脂肪族鎖と芳香族環を含む炭化水素ポリマーB(ポリカーボネート)と、(3.1)式で表されるポリマーAとを反応させることにより得られる電解質の例を示す。
また、(6.10)式に、主鎖に脂肪族鎖又は芳香族環を含む炭化水素ポリマーB(ポリスルホンアミド)と、(3.1)式で表されるポリマーAとを反応させることにより得られる電解質の例を示す。
さらに、(6.11)式に、主鎖に脂肪族鎖又は芳香族環を含む炭化水素ポリマーB(ポリスルホンイミド)と、(3.1)式で表されるポリマーAとを反応させることにより得られる電解質の例を示す。
【0062】
【化8】

【0063】
このようにして得られた電解質は、そのまま、燃料電池などの各種電気化学デバイス用の電解質膜や、触媒層内電解質として用いることができる。あるいは、本発明に係る電解質と多孔体とを複合化させ、これを電解質膜として用いることもできる。
【0064】
[3. 電解質膜の製造方法]
電解質膜は、合成された電解質を適当な溶媒に溶解させ、溶液を基板表面にキャストし、溶媒を除去することにより製造することができる。また、電解質と多孔体との複合体からなる電解質膜は、合成された電解質を適当な溶媒に溶解させ、溶液を多孔体に充填し、溶媒を除去することにより製造することができる。
電解質を溶解させる溶媒は、電解質全体を溶解可能な単一の溶媒を用いても良く、あるいは、溶解性、沸点などの異なる2種以上の溶媒の混合物を用いても良い。
【0065】
溶媒が、少なくとも溶媒(A)及び溶媒(B)を含む混合溶媒である場合、その組み合わせは、目的に応じて最適なものを選択することができる。
例えば、混合溶媒は、電解質の親水部及び疎水部の双方を溶解可能な溶媒(A)と、電解質の疎水部のみを溶解可能な溶媒(B)を含む混合物でも良い。
また、混合溶媒は、電解質の親水部と疎水部の双方を溶解可能な溶媒(A)と、電解質の親水部及び疎水部のいずれも溶解させない溶媒(B)を含む混合物でも良い。
また、混合溶媒は、電解質の親水部との親和性が高い溶媒(A)と、溶媒(A)に比べて電解質の疎水部との親和性が高い溶媒(B)との混合物でも良い。
【0066】
混合溶媒は、溶媒(A)と溶媒(B)の沸点差が37℃未満であるものが好ましい。溶媒(A)と溶媒(B)の沸点差が大きすぎると、混合溶媒を蒸発させる時にいずれか一方の溶媒のみが優先的に蒸発するので、単独溶媒を用いたのと同等の効果しか得られない。一方、沸点の差が小さくなるほど、良好な製膜性が得られ、しかも伝導度を低下させることなく、含水膨潤を抑制することができる。溶媒(A)及び溶媒(B)の沸点差は、さらに好ましくは、9℃以下である。
また、親水部との親和性が高い溶媒(A)と、疎水部との親和性が高い溶媒(B)とを含む混合溶媒の場合、溶媒(B)の沸点は、溶媒(A)の沸点より高いのが好ましい。溶媒(B)の沸点が高いと、先に溶媒(A)が揮発するので、良好な製膜性が得られ、しかも伝導度を低下させることなく、含水膨潤を抑制することができる。
【0067】
電解質の親水部及び疎水部の双方を溶解可能な溶媒としては、例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルホルムアミド(DMF)、N−メチル−ピロリジン(NMP)などがある。
電解質の疎水部のみを溶解可能な溶媒としては、例えば、p−cresolなどがある。
電解質の疎水部及び親水部のいずれも溶解させない溶媒としては、例えば、ベンゼン、クロロホルム、o−ジクロロベンゼン、1,4−ジオキサン、ジエチルエーテル、ヘキサンなどがある。
混合溶媒は、特に、p−cresolとNMPとの混合物、又は、o−ジクロロベンゼンとDMSOとの混合物が好ましい。
【0068】
上述のような条件を満たす混合溶媒を用いると、良好な製膜性が得られ、しかも伝導度を低下させることなく、含水膨潤を抑制することができる。これは、このような混合溶媒を用いることによって、疎水部の海の中に親水部の島がある海島構造の形成が促進され、親水部の含水膨潤圧力を疎水部が周りから押さえ込むためと考えられる。また、沸点差が相対的に小さい2種以上の溶媒を含む混合溶媒であっても同様の効果が得られるのは、疎水部又は親水部との親和性に差があるために、蒸発スピードに差が生じるためと考えられる。
【0069】
[4. 電解質及びその製造方法の作用]
本発明に係る電解質は、親水性セグメントに高いイオン交換容量を有するフッ素系セグメントを用いているので、低湿でも高いプロトン伝導を維持でき、化学的耐久性も高い。
【0070】
一方、炭化水素系の電解質は、一般に耐酸化性に劣る。しかしながら、本発明に係る電解質は、疎水性セグメントが炭化水素系であるにもかかわらず、耐酸化性が高い。これは、電解質内で親水性セグメントと疎水性セグメントがミクロ相分離しているためと考えられる。本発明に係る電解質は、親水性セグメントがフッ素系からなり、疎水性セグメントが炭化水素系からなるので、従来の電解質に比べて相分離しやすくなっている。電解質膜を劣化させるヒドロキシラジカルは、水クラスタに存在しているので、ミクロ相分離を生じさせることによって、ヒドロキシラジカルは専ら親水性セグメントに存在し、ヒドロキシラジカルが疎水性セグメントを攻撃する確率は低いと考えられる。
【0071】
特に、親水性セグメントと疎水性セグメントが、それぞれ、ある一定量以上の分子量を持つブロックコポリマー化しているときには、明確なミクロ相分離構造を有することから、疎水性セグメントが過酸化水素やヒドロキシラジカルに攻撃される確率は低い。また、仮に疎水性セグメントが酸化しても、疎水性セグメントはフッ素を含まないので環境負荷も小さい。さらに、親水部に対する疎水性セグメントの分子量の割合をある一定値以上にすると、膜を不溶化することができる。
また、炭化水素系ポリマーは、一般に自由体積が小さいので、疎水性セグメントに炭化水素系セグメントを用いることによって、電解質膜のガスバリア性が向上する。
さらに、炭化水素系ポリマーのみからなる電解質膜は、一般にガラス転移温度(Tg)が高いために、耐熱性は高いが、膜が硬いという問題がある。これに対し、親水性セグメントとして柔らかい(Tgの低い)フッ素系セグメントを用いると、膜に柔軟性を付与することができる。
そのため、これを例えば、燃料電池の電解質膜、触媒層内電解質等に適用すれば、低コストで、かつ耐久性に優れた燃料電池が得られる。
【実施例】
【0072】
(実施例1〜3、比較例1)
[1. 試料の作製]
[1.1 疎水部の合成]
[1.1.1 OH末端PEES(ポリ(エーテルエーテルスルホン))の合成]
ディーンスターク管と三方コックを接続した500mLの3つ口フラスコに、ビスフェノール:7.17g(38.5mmol)、ビス−(4−クロロフェニル)スルホン:10g(34.8mmol)、K2CO3:24.3g(176mmol)を加え、1時間真空にして乾燥させた。
市販の脱水DMAc:120mLとトルエン:120mLを加えて、100℃で1時間加熱した後、165℃まで徐々に温度を上げていき、生成した水をトルエンと共沸させ、トルエンと共に水を反応系から除いた。さらに、7日間、165℃で反応を行った後、過剰量のビスフェノール:12.9g(69mmol)を加えて、さらに同温度で2日間反応を行った。反応後、沈殿している無機塩を濾過し、重合溶液をエタノールに再沈殿させ、1晩真空乾燥することにより、OH末端PEES(h=2.2)を得た(収率32%、4.7g)。次の(a.1)式に、OH末端PEESの合成スキームを示す。
また、上記合成法と同様にして、ビスフェノールとビス−(4−クロロフェニル)スルホンとのモル比を変化させることで、OH末端PEES(h=4.0)、OH末端PEES(h=6.7)、OH末端PEES(h=12)、OH末端PEES(h=15)をそれぞれ得た。
【0073】
【化9】

【0074】
[1.1.2 Cl末端PEESの合成]
ディーンスターク管と三方コックを接続した100mLの2つ口ナス形フラスコに、ビスフェノール:2.05g(11mmol)、ビス−(4−クロロフェニル)スルホン:3.5g(12mmol)、K2CO3:4.56g(33mmol)を加え、1時間真空にして乾燥させた。
市販の脱水DMAc:40mLとトルエン:40mLを加えて、100℃で1時間加熱した後、165℃まで徐々に温度を上げていき、生成した水をトルエンと共沸させ、トルエンと共に水を反応系から除いた。さらに、3日間、165℃で反応を行った後、過剰量のビス−(4−クロロフェニル)スルホン:6.3g(22mmol)を加えて、さらに同温度で2日間反応を行った。反応後、沈殿している無機塩を濾過し、重合溶液をエタノールに再沈殿させ、1晩真空乾燥することにより、Cl末端PEESを得た(5.4g)。次の(a.2)式に、Cl末端PEESの合成スキームを示す。
【0075】
【化10】

【0076】
[1.1.3 NH2末端PEESの合成]
ディースターク管と三方コックを接続した100mLの2つ口ナス形フラスコに、[1.1.2]で得られたCl末端PEES:4.5g、過剰量の4−ヒドロキシアニリン:0.16g(1.5mmol)、K2CO3:0.95g(6.9mmol)を加え、1時間真空にして乾燥させた。
市販の脱水DMAc:20mLとトルエン:20mLを加えて、100℃で1時間加熱した後、165℃まで徐々に温度を上げていき、生成した水をトルエンと共沸させ、トルエンと共に水を反応系から除いた。さらに、3日間、165℃で反応を行った後、沈殿している無機塩を濾過し、重合溶液をエタノールに再沈殿させ、1晩真空乾燥することにより、NH2末端PEESを得た(3.7g)。次の(a.3)式に、NH2末端PEESの合成スキームを示す。
【0077】
【化11】

【0078】
[1.2 親水部の合成]
以下の手順に従い、F−Ph末端ポリ(パーフルオロプロピルスルホンイミド)を合成した。すなわち、100mLのフラスコにパーフルオロプロピル−1,3−ジスルホンアミド(C3A):2.48g(8mmol)、パーフルオロプロピル−1,3−ジスルホニルフルオライド(C3F):2.40g(7.6mmol)、トリエチルアミン:6.46mL、アセトニトリル:8mLを加え、80℃で72時間加熱した。これに過剰量のC3A:4.9g(16mmol)を加えて、さらに同温度で2日間反応を行った。反応後、4−フルオロベンゼンスルホニルクロライド:6.23g(32mmol)を加えて、さらに同温度で2日間反応を行った。
その後、溶媒を留去し、NaOH水溶液に溶かして、ナフィオン(登録商標)樹脂にてイオン交換を行った。シリカゲルカラムにて精製(酢酸エチル、メタノール)後、80℃で2時間真空乾燥し、目的の化合物(F−Ph末端ポリ(パーフルオロプロピルスルホンイミド)(j=17))を得た(収率72%、4.2g)。次の(b)式に、その合成スキームを示す。
また、上記合成方法と同様にして、C3AとC3Fとのモル比を変化させることで、F−Ph末端ポリ(パーフルオロプロピルスルホンイミド)(j=8.6)、F−Ph末端ポリ(パーフルオロプロピルスルホンイミド)(j=20)、F−Ph末端ポリ(パーフルオロプロピルスルホンイミド)(j=22)、F−Ph末端ポリ(パーフルオロプロピルスルホンイミド)(j=30)をそれぞれ得た。
【0079】
【化12】

【0080】
[1.3 電解質の合成]
[1.3.1 電解質1(実施例1)]
以下の手順に従い、PEES−block−ポリ(パーフルオロプロピルスルホンイミド)を合成した。すなわち、ディーンスターク管と三方コックを接続した100mLの2つ口ナス形フラスコに、OH末端PEES(h=2.2):0.67g(0.64mmol)、F−Ph末端ポリ(パーフルオロプロピルスルホンイミド)(j=17):0.99g(0.19mmol)、K2CO3:0.99g(7.2mmol)、18−クラウン−6:0.12g(0.44mmol)を加え、1時間真空にして乾燥させた。
市販の脱水DMAc:15mLとトルエン:20mLを加えて、100℃で1時間加熱した後、165℃まで徐々に温度を上げていき、生成した水をトルエンと共沸させ、トルエンと共に水を反応系から除いた。さらに、14日間、165℃で反応を行った後、THFと水に再沈殿を行い、1晩真空乾燥することにより、目的物を得た(0.24g)。次の(c.1)式に、その合成スキームを示す。
【0081】
【化13】

【0082】
[1.3.2 電解質2(実施例2)]
以下の手順に従い、PEES−block−ポリ(パーフルオロプロピルスルホンイミド)を合成した。すなわち、50mLのフラスコに、NH2末端PEES:0.96g(0.1mmol)、C3A:2.48g(8mmol)、C3F:2.53g(8mmol)、トリエチルアミン:8.8mL、DMAc/DMSO(2/1):15mLを加え、90℃で10日間加熱した。その後、溶媒を留去し、NaOH水溶液で洗浄し、3N H2SO4水溶液中、50℃で12時間加熱し、さらに水中、同温度で12時間加熱した。さらに、これをTHFに再沈殿することにより、目的物を得た(150mg)。次の(c.2)式に、その合成スキームを示す。
【0083】
【化14】

【0084】
[1.3.3 電解質3(実施例3)]
以下の手順に従い、PEES−block−ポリ(パーフルオロプロピルトリスルホンイミド)を合成した。すなわち、50mLのフラスコに、NH2末端PEES:0.51g(0.052mmol)、C3A:1.51g(4.88mmol)、ClO2SNHSO2Cl:1.04g(4.88mmol)、トリエチルアミン:6mL、DMAc/DMSO(2/1):10mLを加え、90℃で10日間加熱した。その後、溶媒を留去し、NaOH水溶液で洗浄し、3N H2SO4水溶液中、50℃で12時間加熱し、さらに水中、50℃で12時間加熱した。1晩真空乾燥し、目的物を得た(200mg)。次の(c.3)式に、その合成スキームを示す。
【0085】
【化15】

【0086】
[1.3.4 電解質4(比較例1)]
以下の手順に従い、ポリ(パーフルオロオクチルスルホンイミド)を合成した。すなわち、50mLのフラスコにパーフルオロオクチル−1,3−ジスルホンアミド(C8A):0.31g(1mmol)、パーフルオロオクチル−1,3−ジスルホニルフルオライド(C8F):0.56g(1mmol)、トリエチルアミン:0.5mL、アセトニトリル:4mLを加え、80℃で2時間加熱した。反応後、溶媒を留去し、水洗した。反応物から水を留去し、残留物をアセトニトリルに溶かした溶液にナフィオン(登録商標)樹脂:22gを加えて攪拌した。この操作を計2回繰り返した。その後、ナフィオン樹脂をろ別し、溶媒をろ液から留去して、1晩真空乾燥して目的物を得た(200mg)。次の(c.4)式に、その合成スキームを示す。
【0087】
【化16】

【0088】
[1.3.5 電解質5(比較例2)]
[1.3.5.1 F−Ph末端モノ(パーフルオロプロピルスルホンイミド)の合成]
100mLのフラスコにC3A:3.1g(10mmol)、4-フルオロベンゼンスルホニルクロライド:4.2g(22mmol)、トリエチルアミン:14mL(100mmol)、アセトニトリル:10mLを加え、80℃、24時間加熱し、反応を行った。その後、溶媒を留去し、NaOH水溶液に溶かして、ナフィオン樹脂にてイオン交換を行った。シリカゲルカラムにて精製(酢酸エチル、メタノール)後、80℃で2時間真空乾燥して、F−Ph末端モノ(パーフルオロプロピルスルホンイミド)を得た(収率90%、5.6g)。次の(c.5)式に、その合成スキームを示す。
【0089】
【化17】

【0090】
[1.3.5.2 電解質5の合成]
F−Ph末端モノ(パーフルオロプロピルスルホンイミド):2.0g(3.2mmol)に、ビスフェノール:0.59g(3.2mmol)、炭酸カリウム2.6g(12.8mmol)、18−クラウン−6:1.68g(6.3mmol)を加え、1時間真空乾燥した。その後、市販の脱水DMAc:13mLとトルエン:20mLを加え、100℃で1時間真空乾燥した後、165℃まで徐々に温度を上げていき、生成した水をトルエンと共沸し、トルエンと共に水を反応系中から除いた。7日間、165℃で反応を行った後、EtOHに再沈殿を行い、80℃の3N H2SO4水溶液で洗浄後、1時間真空乾燥して目的物を得た(収率43%、0.98g)。次の(c.6)式に、その合成スキームを示す。
【0091】
【化18】

【0092】
[1.3.6 電解質6(実施例4)]
実施例1と同様に、OH末端PEES(h=4.0):0.48g(OH末端基量0.54mmol)、KOH水溶液でK塩にしたF−Ph末端ポリ(パーフルオロプロピルスルホンイミド)(j=30):3g(F−Ph末端基量0.54mmol)、K2CO3:0.15g(1.1mmol)、18−クラウン−6:0.29g(1.1mmol)、DMAc:25mL、トルエン:25mLを用いて反応を行った。
反応後、重合溶液をろ過し、母液をTHFに加えて再沈殿をし、さらに1N HNO3水溶液に再沈殿した。沈殿物を水に溶解し、透析膜(分子量分画1000)を用いて透析を行った。その後、水を留去して目的物を得た(0.38g、EW351g/eq.)。(c.7)式に、その合成スキームを示す。
【0093】
【化19】

【0094】
[1.3.7 電解質7(実施例5)]
実施例1と同様に、OH末端PEES(h=12):0.70g(OH末端基量0.28mmol)、KOH水溶液でK塩にしたF−Ph末端ポリ(パーフルオロプロピルスルホンイミド)(j=22):1.3g(F−Ph末端基量0.28mmol)、K2CO3:77mg(0.56mmol)、18−クラウン−6:0.15g(0.56mmol)、DMAc:18mL、トルエン:20mLを用いて反応を行った。
さらに実施例1と同様の精製法で目的物を得た(0.77g、EW455g/eq.)。(c.7)式に、その合成スキームを示す。
【0095】
[1.3.8 電解質8(実施例6−1〜6−4)]
[1.3.8.1 実施例6−1]
実施例1と同様に、OH末端PEES(h=6.7):16g(OH末端基量11mmol)、KOH水溶液でK塩にしたF−Ph末端ポリ(パーフルオロプロピルスルホンイミド)(j=8.6):18g(F−Ph末端基量11mmol)、K2CO3:3.1g(22mmol)、18−クラウン−6:5.9g(22mmol)、DMAc:300mL、トルエン:250mLを用いて反応を行った。
反応後、重合溶液をろ過し、母液を1N HCl水溶液に加えて再沈殿をした。回収した沈殿物をアセトニトリルに溶解、ろ過し、母液のアセトニトリルを留去して目的物(実施例6−1:30g、EW799g/eq.)を得た。(c.7)式に、その合成スキームを示す。
[1.3.8.2 実施例6−2]
実施例6−1で得た電解質0.5gをアセトニトリル5gに溶解し、1,4−ジオキサン:19gを加えた。生成した沈殿をろ過し、その母液にさらに1,4−ジオキサン:4gを加えた。生成した沈殿を回収し、目的物(実施例6−2:0.12g、EW623g/eq.)を得た。
[1.3.8.3 実施例6−3]
実施例6−1で得た電解質0.5gをアセトニトリル5gに溶解し、1,4−ジオキサン:25gを加えた。生成した沈殿を回収し、目的物(実施例6−3:0.32g、EW598g/eq.)を得た。
[1.3.8.4 実施例6−4]
実施例6−1で得た電解質0.5gをアセトニトリル5gに溶解し、クロロホルム:45gを加えた。生成した沈殿を回収し、目的物(実施例6−4:0.17g、EW512g/eq.)を得た。
【0096】
[1.3.9 電解質9(実施例7−1〜7−3]
[1.3.9.1 実施例7−1]
実施例1と同様に、OH末端PEES(h=15):15g(OH末端基量5.1mmol)、KOH水溶液でK塩にしたF−Ph末端ポリ(パーフルオロプロピルスルホンイミド)(j=20):19g(F−Ph末端基量5.1mmol)、K2CO3:1.4g(10mmol)、18−クラウン−6:2.7g(10mmol)、DMAc:300mL、トルエン:250mLを用いて反応を行った。
反応後、重合溶液をろ過し、母液を1N HCl水溶液に加えて再沈殿をした。回収した沈殿物をアセトニトリルに溶解、ろ過し、母液のアセトニトリルを留去して目的物(実施例7−1:34g、EW661g/eq.)を得た。(c.7)式に、その合成スキームを示す。
[1.3.9.2 実施例7−2]
実施例7−1で得た電解質0.5gをアセトニトリル5gに溶解し、1,4−ジオキサン:20gを加えた。生成した沈殿を回収し、目的物(実施例7−2:0.20g、EW558g/eq.)を得た。
[1.3.9.3 実施例7−3]
実施例7−1で得た電解質0.5gをアセトニトリル5gに溶解し、1,4−ジオキサン:25gを加えた。生成した沈殿を回収し、目的物(実施例7−3:0.31g、EW428g/eq.)を得た。
【0097】
[1.3.10 電解質10(実施例8)]
[1.2 親水部の合成]で、ClO2S−Ph−Fに代えてClO2S−Ph−Brと反応させて合成し、NaOH水溶液でNa塩にしたBr−Ph末端ポリ(パーフルオロプロピルスルホンイミド)(q=5):0.534g(0.64mmol)、ビフェニルジボロン酸:0.273g(1.12mmol)、ジブロモフェニル:0.113g(0.48mmol)、Pd(PPh3)4:0.018g、K2CO3:0.490gをシュレンクチューブ中で混合した。これにメチルセロソルブ:2mLと水:1mLを加えて80℃で1日間加熱した。
その後、溶媒を留去し、塩酸を加えてから、水で中性になるまで遠心分離機によって洗浄し、目的物を得た(0.181g、EW390g/eq.)。NMRスペクトルにより、p=6.5であった。次の(c.8)式に、その合成スキームを示す。
【0098】
【化20】

【0099】
[1.3.11 電解質11(実施例9)]
[1.2 親水部の合成]で、ClO2S−Ph−Fに代えてClO2S−Ph−Brと反応させて合成し、NaOH水溶液でNa塩にしたBr−Ph末端ポリ(パーフルオロプロピルスルホンイミド)(q=31):0.586g(0.06mmol)、フェニルジボロン酸:0.0984g(0.57mmol)、ジブロモフェニル:0.121g(0.51mmol)、Pd(PPh3)4:0.008g、K2CO3:0.127gをシュレンクチューブ中で混合した。これにメチルセロソルブ:4mLと水:2mLを加えて80℃で2日間加熱した。
その後、溶媒を留去し、塩酸を加えてから、水で中性になるまで遠心分離機によって洗浄し、目的物を得た(0.160g、EW344g/eq.)。NMRスペクトルにより、p=12.3であった。次の(c.9)式に、その合成スキームを示す。
【0100】
【化21】

【0101】
[1.4 電解質の製膜]
実施例1〜3、実施例5、及び比較例2で得られた電解質1〜3、5、7をDMAcに溶解し、ポリテトラフルオロエチレンシャーレにキャストし、80℃で溶媒を蒸発して製膜した。その後、100℃でアニーリングを行い、1N H2SO4水溶液で洗浄、水洗浄、乾燥を行い、電解質膜とした。
また、実施例5で得られた電解質7については、DMAcの代わりにp−cresol/NMP(=1/1=vol/vol)、o−ジクロロベンゼン/DMSO(=1/1=vol/vol)、又はp−cresol/DMAc(=1/1=vol/vol)を溶媒に用いた以外は、上記と同様にして別の種類の電解質膜も製膜した。
さらに、実施例6−1〜6−4、実施例7−1〜7−3で得られた電解質8、9を、p−cresol/NMP(=1/1=vol/vol)に溶解し、上記と同様にして電解質膜とした。
また、比較例1で得られた電解質4をアセトニトリルに溶解し、室温で溶媒を蒸発させて製膜した。その後の操作は、上記と同様とした。
【0102】
[1.5 複合膜1(実施例10)]
実施例5で得られた電解質7のDMAc溶液(16wt%)をポリエチレンの多孔体(空隙率85%)に真空下で含浸させた。その後、60℃で1晩真空乾燥を行い、1N HCl水溶液で洗浄、水洗し、乾燥して目的の複合膜1を得た。
【0103】
[2. 試験方法]
[2.1 耐熱水試験]
得られた電解質膜を80℃の熱水に浸漬し、溶解性を調べた。80℃の熱水に24時間浸漬したときの重量減少が5%以下を「○」、5%超を「×」とした。
[2.2 フェントン試験]
オートクレーブに、3%の過酸化水素水中にFe2+が10ppmとなるようにFeSO4を加えた溶液30mLと、電解質膜を20mg加え、100℃で24時間加熱した。その後、溶液中のフッ素イオン溶出量をF電極により測定した。
[2.3 伝導度測定]
得られた電解質膜を伝導度測定セルに組み付け、各湿度における平面方向の抵抗をLCRメーター(HIOKI製)により測定した。この値を換算し、伝導度の値を得た。
[2.4 IRスペクトル測定]
中間生成物及び電解質のIRスペクトルを測定した。
[2.5 膜物性]
得られた電解質膜の含水率及び含水時の寸法変化率を測定した。
[2.6 NMRスペクトル測定]
室温、重DMSO中で、電解質の1H−NMRスペクトル、及び19F−NMRスペクトルを測定した。
[2.7 触媒層内電解質の評価]
実施例4で得られた電解質6、又は実施例8で得られた電解質10と、白金担持カーボン(Pt/C=0.55(wt/wt)、電解質/C=0.75(wt/wt))とに、水・アルコール混合溶媒を加え、ホモジナイザーで攪拌して触媒インクを作製した。このインクをナフィオン(登録商標)211フィルムにスプレーで塗布した。120℃で5分間ホットプレスすることにより、MEAを作製した。集電体としてカーボンクロスを用い、積層して燃料電池単セル評価装置(セルサイズ:13cm2)に組み込んだ。
燃料に水素ガス、酸化剤に空気を用い、セル温度:80℃、アノード・カソードの相対湿度:60%、背圧:0.4MPaで単セル特性試験を行った。
【0104】
[3. 結果]
[3.1 IRスペクトル]
図1〜図3に、それぞれ、実施例1〜3で得られた電解質1〜3のIRスペクトルを示す。また、図4に、実施例4〜7で得られた電解質6〜9のIRスペクトルを示す。図1〜図4より、目的物が得られていることがわかる。
[3.2 NMRスペクトル]
図5、6に、それぞれ、実施例8、9で得られた電解質10、11のNMRスペクトルを示す。内部標準として、(CF3CH2)2Oを用いて目的物の同定を行った。図5、6より、目的物が得られていることがわかる。
【0105】
[3.3 フェントン試験]
同一条件で測定したナフィオン(登録商標)112のFイオン溶出量は、14.8ppmであった。これに対し、比較例1で得られた電解質4のFイオン溶出量は、0.3ppmであった。電解質4のFイオン溶出量は、ナフィオン(登録商標)112の約50分の1であり、化学的安定性が高いことがわかった。従って、電解質1〜3の親水部は、電解質4と同様の構造を有しているので、現実の使用環境下においては、電解質1〜3の化学的耐久性は高いと考えられる。
なお、電解質膜の劣化は、親水部の水クラスター中に存在するヒドロキシラジカルによって起こると考えられている。従って、電解質1〜3について、疎水部とヒドロキシラジカルとを強制的に接触させてしまうフェントン試験を行っても、疎水部が劣化するだけで、試験を行う意味がない。
【0106】
[3.4 耐熱水試験]
表1に、耐熱水試験の結果を示す。電解質4(比較例1)及び電解質5(比較例2)は、いずれも熱水に溶解した。一方、EWの低い実施例4で得られた電解質6は熱水に溶解したものの、実施例1〜3、5〜7で得られた電解質1〜3、7〜9は、熱水に不溶であった。表1より、電解質1〜3、7〜9は、80℃付近の温度で作動する燃料電池用電解質膜として十分使用可能であることがわかる。
【0107】
【表1】

【0108】
[3.5 膜物性]
実施例1で得られた電解質膜1の室温、水中における伝導度は、0.03S/cmであった。また、EWは705g/eq.、含水率は64%、寸法変化は、22%(平面方向)、及び、32%(膜厚方向)であった。
表2に、実施例1、5〜7で得られた電解質膜1、7〜9のEW、室温・相対湿度80%における伝導度、含水率、平面方向の乾湿寸法変化率、及び膜厚方向の乾湿寸法変化率を示す。
実施例5、6−3、6−4、7−1〜7−3の伝導度は、ナフィオン(登録商標)112より高い。また、実施例5でキャスト溶媒を変えることで、含水率を制御することが可能であった。特に、p−cresol/NMPの混合溶媒系でその効果が顕著であった。
【0109】
【表2】

【0110】
[3.6 複合膜の物性]
表3に、実施例5で得られた電解質7と実施例10で得られた複合膜1のEW、室温・相対湿度80%における伝導度、含水率、平面方向の乾湿寸法変化率、及び膜厚方向の乾湿寸法変化率を示す。電解質とポリエチレンの多孔体とを複合化することで、伝導度は1桁落ちるが、含水膨潤を抑制することができた。
【0111】
【表3】

【0112】
[3.7 触媒層内電解質の特性]
図7及び図8に、それぞれ実施例4、8で得られた電解質6、10を触媒層内電解質に用いて発電試験を行った結果を示す。単セルの出力電圧を確認し、0.1〜1.5A/cm2で発電していることが確認された。
【0113】
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改変が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明に係る電解質及びその製造方法は、固体高分子型燃料電池、水電解装置、ハロゲン化水素酸電解装置、食塩電解装置、酸素及び/又は水素濃縮器、湿度センサ、ガスセンサ等の各種電気化学デバイスに用いられる電解質膜や触媒層内電解質、及びその製造方法として使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0115】
【図1】OH末端PEES、F−Ph末端ポリ(パーフルオロプロピルスルホンイミド)、及び、実施例1で得られた電解質1のIRスペクトルである。
【図2】NH2末端PEES、ポリ(パーフルオロプロピルスルホンイミド)、及び、実施例2で得られた電解質2のIRスペクトルである。
【図3】ポリ(パーフルオロプロピルトリスルホンイミド)、NH2末端PEES、及び、実施例3で得られた電解質3のIRスペクトルである。
【図4】F−Ph末端ポリ(パーフルオロプロピルスルホンイミド)、OH末端PEES、及び実施例4〜7で得られた電解質6〜9のIRスペクトルである。
【図5】実施例8で得られた電解質10のNMRスペクトルである。
【図6】実施例9で得られた電解質11のNMRスペクトルである。
【図7】実施例4で得られた電解質6を触媒層内電解質に用いた燃料電池のI−V特性である。
【図8】実施例8で得られた電解質10を触媒層内電解質に用いた燃料電池のI−V特性である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)式で表されるフッ素系の親水性セグメントAと、炭化水素系の疎水性セグメントBとが、化学結合を介して交互に結合している構造を備えた電解質。
A: −E2−[Rf−E1]m− ・・・(1)
但し、
Rfは、炭素数が1以上の直鎖状又は分岐状パーフルオロ鎖。
1、E2は、それぞれ、一般式:−(CONM)i1(CO)i2(SO2NM)i3(SO2)i4−で表されるプロトン伝導部位(0≦i1、0≦i2≦1、0≦i3、0≦i4≦1、0<i1+i3。i1〜i4は、それぞれ、整数。Mは、プロトン、アルカリ金属(Li、Na、K、Rb、Cs、Fr)、又はアルカリ土類金属(Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra)。)。
2≦m(mは、整数)。
Rf、E1、E2は、それぞれ、繰り返し単位の中で任意に選択することができる。
【請求項2】
前記親水性セグメントAは、(1.2)式で表される構造を有する請求項1に記載の電解質。
A: −(SO2)i5(NMSO2)i6−[Rf−(SO2NM)i3(SO2)i4]m
・・・(1.2)
但し、
1≦i3、i4=0又は1、i5=0又は1、1≦i6、2≦m。
Rfは、炭素数が1以上の直鎖状又は分岐状パーフルオロ鎖であり、繰り返し単位の中で任意に選択することができる。
Mは、プロトン、アルカリ金属(Li、Na、K、Rb、Cs、Fr)、又はアルカリ土類金属(Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra)。
【請求項3】
前記疎水性セグメントBは、主鎖に脂肪族を含む請求項1に記載の電解質。
【請求項4】
前記脂肪族は、ビニルポリマー、ポリスルホンアミド、ポリスルホンイミド、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテル、ポリウレタン、ポリ尿素、ポリエステル、及び、ポリカーボネートから選ばれるいずれか1以上である請求項3に記載の電解質。
【請求項5】
前記疎水性セグメントBは、主鎖に芳香族環を含む請求項1に記載の電解質。
【請求項6】
前記疎水性セグメントBは、前記芳香族環がスルホンアミド基、スルホンイミド基、アミド基、イミド基、エーテル基、ウレタン基、ウレア基、エステル基、及び、カーボネート基から選ばれるいずれか1以上の基で結合しているものである請求項5に記載の電解質。
【請求項7】
前記疎水性セグメントBは、(2)式で表されるものからなる請求項1に記載の電解質。
B: −(Ar1−Y)n−Ar2− ・・・(2)
但し、
Ar1、Ar2は、それぞれ、アリレン基。
Yは、直接結合、−O−、−S−、−SO2−、又は、−CO−。
0≦n(nは、整数)。
Ar1、Ar2、Yは、それぞれ、繰り返し単位の中で任意に選択することができる。
【請求項8】
前記Ar1、前記Ar2は、それぞれ、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、又は、アリールオキシ基のいずれかを側鎖として有するアリレン基である請求項7に記載の電解質。
【請求項9】
前記親水性セグメントAと、前記疎水性セグメントBとを含むブロックコポリマーである請求項1に記載の電解質。
【請求項10】
前記ブロックコポリマーは、ジブロックコポリマーである請求項9に記載の電解質。
【請求項11】
前記ブロックコポリマーは、トリブロックコポリマーである請求項9に記載の電解質。
【請求項12】
前記ブロックコポリマーは、マルチブロックコポリマーである請求項9に記載の電解質。
【請求項13】
(1)式で表されるフッ素系の親水性セグメントAの両端に官能基が結合している1種若しくは2種以上のポリマーA、又は、前記親水性セグメントAを形成可能な1種若しくは2種以上のモノマーA若しくはポリマーAと、
炭化水素系の疎水性セグメントBの両端に官能基が結合している1種若しくは2種以上のポリマーB、又は、前記疎水性セグメントBを形成可能な1種若しくは2種以上のモノマーB若しくはポリマーBと
を反応させる反応工程を備えた電解質の製造方法。
A: −E2−[Rf−E1]m− ・・・(1)
但し、
Rfは、炭素数が1以上の直鎖状又は分岐状パーフルオロ鎖。
1、E2は、それぞれ、一般式:−(CONM)i1(CO)i2(SO2NM)i3(SO2)i4−で表されるプロトン伝導部位(0≦i1、0≦i2≦1、0≦i3、0≦i4≦1、0<i1+i3。i1〜i4は、それぞれ、整数。Mは、プロトン、アルカリ金属(Li、Na、K、Rb、Cs、Fr)、又はアルカリ土類金属(Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra)。)。
2≦m。
Rf、E1、E2は、それぞれ、繰り返し単位の中で任意に選択することができる。
【請求項14】
前記反応工程は、前記モノマーA又はポリマーAと、前記モノマーB又はポリマーBとを縮合反応、求核置換反応、又は、カップリング反応により結合させるものである請求項13に記載の電解質の製造方法。
【請求項15】
前記ポリマーAは、(3.1)式で表されるものからなる請求項13に記載の電解質の製造方法。
1−Ar3−E2−[Rf−E1]m−Ar4−T2 ・・・(3.1)
但し、
Rfは、炭素数が1以上の直鎖状又は分岐状パーフルオロ鎖。
1、E2は、それぞれ、一般式:−(CONM)i1(CO)i2(SO2NM)i3(SO2)i4−で表されるプロトン伝導部位(0≦i1、0≦i2≦1、0≦i3、0≦i4≦1、0<i1+i3。i1〜i4は、それぞれ、整数。Mは、プロトン、アルカリ金属(Li、Na、K、Rb、Cs、Fr)、又はアルカリ土類金属(Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra)。)。
2≦m。
1、T2は、それぞれ、F、Cl、Br、I、OH、SH、−B(OH)2、又は、ボロン酸環状エステル。
Ar3、Ar4は、それぞれ、アリレン基。
Rf、E1は、それぞれ、繰り返し単位の中で任意に選択することができる。
【請求項16】
前記モノマーA又はポリマーAは、(3.2)式で表されるものからなる請求項13に記載の電解質の製造方法。
3−[Rf−E1]m'−Rf"−T4 ・・・(3.2)
但し、
Rfは、炭素数が1以上の直鎖状又は分岐状パーフルオロ鎖。
1は、一般式:−(CONM)i1(CO)i2(SO2NM)i3(SO2)i4−で表されるプロトン伝導部位(0≦i1、0≦i2≦1、0≦i3、0≦i4≦1、0<i1+i3。i1〜i4は、それぞれ、整数。Mは、プロトン、アルカリ金属(Li、Na、K、Rb、Cs、Fr)、又はアルカリ土類金属(Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra)。)。
0≦m’
Rf”は、炭素数が1以上の直鎖状又は分岐状パーフルオロ鎖。
3、T4は、それぞれ、−NZ12、−SO2NZ12、−SO2X、−CONZ12、又は、−COX(Z1、Z2は、それぞれ、H、M、SiMe3。Mは、アルカリ金属(Li、Na、K、Rb、Cs、Fr)、又はアルカリ土類金属(Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra)。Xは、ハロゲン又はOH)。
Rf、E1は、それぞれ、繰り返し単位の中で任意に選択することができる。
【請求項17】
前記モノマーB又はポリマーBは、(4.1)式で表されるものからなる請求項13に記載の電解質の製造方法。
1−(Ar1−Y)n−Ar2−S2 ・・・(4.1)
但し、
Ar1、Ar2は、それぞれ、アリレン基。
Yは、直接結合、−O−、−S−、−SO2−、又は、−CO−。
0≦n(nは、整数)。
1、S2は、それぞれ、−OH、−SH、−B(OH)2、ボロン酸環状エステル、−NZ12、−SO2NZ12、−SO2X、−CONZ12、−COX、F、Cl、Br、又は、I(Z1、Z2は、それぞれ、H、M、SiMe3。Mは、アルカリ金属(Li、Na、K、Rb、Cs、Fr)、又はアルカリ土類金属(Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra)。Xは、ハロゲン又はOH)。
Ar1、Yは、それぞれ、繰り返し単位の中で任意に選択することができる。
【請求項18】
請求項1から12までのいずれかに記載の電解質を用いた電解質膜。
【請求項19】
請求項1から12までのいずれかに記載の電解質を溶媒に溶解させ、キャスト製膜する工程を備えた電解質膜の製造方法。
【請求項20】
前記溶媒は、少なくとも溶媒(A)及び溶媒(B)を含む混合溶媒である請求項19に記載の電解質膜の製造方法。
【請求項21】
前記混合溶媒は、
(1)前記電解質の親水部及び疎水部の双方を溶解可能な前記溶媒(A)と、前記電解質の疎水部のみを溶解可能な前記溶媒(B)を含む混合物、又は、
(2)前記電解質の親水部及び疎水部の双方を溶解可能な前記溶媒(A)と、前記電解質の疎水部及び親水部のいずれも溶解させない前記溶媒(B)を含む混合物
である請求項20に記載の電解質膜の製造方法。
【請求項22】
前記溶媒(A)と前記溶媒(B)の沸点差は、37℃未満である請求項20に記載の電解質膜の製造方法。
【請求項23】
前記混合溶媒は、p−cresolとNMPとの混合物、又は、o−ジクロロベンゼンとDMSOとの混合物である請求項20に記載の電解質膜の製造方法。
【請求項24】
請求項1から12までのいずれかに記載の電解質と多孔体との複合体からなる電解質膜。
【請求項25】
請求項1から12までのいずれかに記載の電解質を用いた燃料電池。
【請求項26】
請求項1から12までのいずれかに記載の電解質を触媒層内電解質に用いた触媒層。
【請求項27】
請求項1から12までのいずれかに記載の電解質と多孔体との複合体からなる電解質膜を用いた燃料電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−187936(P2009−187936A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−328792(P2008−328792)
【出願日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】