説明

電解銅めっき方法

【課題】 2つの工程を含む電解銅めっき方法を提案する。方法は、非常に狭い場所のめっきに特に適する。
【解決手段】 第1工程は、硫黄含有有機化合物、好ましくは、1つ又は複数のアルカンスルホン酸エステル基及び/又はアルカンスルホン酸を含む抗抑制剤を含む前処理溶液を含む。第2工程は、アルカンスルホン酸に基づく電解銅めっき溶液を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面を電解銅めっきする、特に、プリント回路基板上のスルーホール又はビア等の非常に狭い面積をめっきする方法に関する。本発明の方法は、非常に小さなプリント回路のビアのめっきに特に適している。
【背景技術】
【0002】
電解銅めっきは、外部電流を使用して導電性基板に銅を堆積する方法である。公知の工業用の電解銅めっき溶液は、銅堆積物の特性を改良する様々な添加剤と一緒に、硫酸銅、ホウフッ化銅、又はシアン化銅水溶液を含む。最も広く使用される工業用の銅めっき用電解質は、硫酸銅、硫酸、及び様々なめっき添加剤の水溶液に基づく。電解銅めっき浴及び添加剤に関して、概して、特許文献1〜3を参照し、各内容を参照することにより全体を本願に援用する。
【0003】
また、電解銅めっきにアルカンスルホン酸を使用することも知られている。特許文献4は、銅アルカンスルホン酸塩、及び遊離アルカンスルホン酸を含む溶液を使用する電子装置への銅の電解析出を論じ、各内容を参照することにより全体を本願に援用する。
【0004】
小型化及び機能性の向上が要求され、めっきする必要がある電子部品のサイズが実質的に小さくなっている。例えば、多くの回路基板設計が、直径が約25〜約250ミクロン、アスペクト比が約1:1〜上限約1.5:1のブラインドビアの効果的なめっき、及びアスペクト比が上限約8:1のスルーホールの同時めっきを必要とする。多くの電解銅めっき浴は、そのような狭い場所のめっきが出来ない。場合によっては、ぬれ性が問題であり、また他の場合にはマストランスポートが課題を提示し、他の領域では電気的効果が困難を生じる。歴史的に、同時めっきされたスルーホールの信頼性は、複合された技術設計に取り込まれ、産業規格を満たすことが出来ていない。
【0005】
【特許文献1】米国特許第5,068,013号明細書
【特許文献2】米国特許第5,174,886号明細書
【特許文献3】米国特許第5,051,154号明細書
【特許文献4】米国特許第6,605,204号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
結果的に、狭い場所を効果的にめっきできる電解銅めっき溶液及び方法が依然として必要とされている。本願の目的は、特別に設計され、且つ、効果的なめっきが狭い場所で必要とされる電子技術の応用に適する電解銅めっき溶液及び方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の発明者等は下記1及び2を含む電解銅めっき方法を提案する。
1.銅電気化学的還元用抗抑制剤(anti−suppressor)水溶液を含む前処理溶液と表面を接触させる工程。抗抑制剤が、硫黄含有有機化合物、好ましくは、アルカンスルホン酸エステル基及び/又はアルカンスルホン酸を含む。そして、
2.電解銅めっき溶液と陰極として前記表面を接触させ、銅が前記表面をめっきするようにめっき電流を加える工程。電解銅めっき溶液は、(i)銅イオン、(ii)アルカンスルホン酸、(iii)塩化物イオン、及び好ましくは、(iv)アルデヒド又はケトン化合物を含む。
【0008】
好ましくは、電解銅めっき溶液は、また、(i)界面活性剤又は湿潤剤、(ii)好ましくは、1つ又は複数のスルホン酸エステル基を含む硫黄含有有機化合物を含む光沢剤、及び(iii)窒素含有有機化合物を含むレベリング剤も含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
前処理工程及びめっき工程を含む電解銅めっき方法が提案される。方法は、プリント回路基板のマイクロビア等の非常に狭い場所のめっき、及び同じ基板設計のスルーホールの同時めっきに適している。提案された方法は、下記1及び2を含む。
1.硫黄含有有機化合物、好ましくは、1つもしくは複数の(アルカン)スルホン酸エステル基及び/又はアルカンスルホン酸を含む抗抑制剤水溶液を含む前処理溶液と表面を接触させる工程、そして、
2.(i)銅イオン、(ii)アルカンスルホン酸、(iii)塩化物イオン、及び好ましくは、(iv)アルデヒド又はケトン化合物を含む電解銅めっき溶液と陰極表面を接触させ;及び銅が前記表面をめっきするようにめっき電流を加える工程。
【0010】
前処理溶液は、硫黄含有有機化合物、好ましくは、1つ又は複数の(アルカン)スルホン酸エステル基、及び/又は(アルカン)スルホン酸を含む銅電気化学的還元用抗抑制剤を含む。前処理溶液に抗抑制剤として使用するのに適切な化合物の例としては、4,5‐ジチオオクタン‐1,8‐ジスルホン酸二ナトリウム(disodium 4,5‐dithiooctane‐1,8‐disulfonate)、2‐メルカプト‐エタンスルホン酸ナトリウム、3‐メルカプト‐1‐プロパンスルホン酸カリウム、ビス‐(3‐スルホプロピル)ジスルフィド二ナトリウム、ビス(3‐スルホプロピル)ジスルフィド二ナトリウム、テトラポリプロポキシ‐エトキシエチレンジアミンスルホコハク酸エステルナトリウム塩(tetrapolypropoxy‐ethoxy ethylenediamine sulfosuccinic ester sodium salt)、及びこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、前処理溶液の抗抑制剤は、ビス(3‐スルホプロピル)ジスルフィド二ナトリウムである。前処理溶液中の抗抑制剤の濃度は、約0.1g/l〜約10g/lであるのが好ましい。
【0011】
任意で、好ましくは、前処理溶液は銅イオンも含む。銅イオンは、硫酸銅、メタンスルホン酸銅、又は同様の銅塩により提供されてもよい。硫酸銅は、好適な銅イオン源である。使用される場合、前処理溶液中の銅イオンの濃度は、好ましくは、約0.01〜約5.0g/lである。どのような場合でも、前処理溶液のpHは、好ましくは、1.0〜3.5である。
【0012】
前処理溶液の次に用いられる電解めっき溶液は、(i)銅イオン、(ii)アルカンスルホン酸、(iii)塩化物イオン、及び好ましくは、(iv)アルデヒド又はケトン化合物の水溶液を含む。めっき浴は、好ましくは、(i)界面活性剤又は湿潤剤、(ii)光沢剤、及び(iii)レベリング剤も含む。
【0013】
電解銅めっき溶液中の銅イオン源は、硫酸銅、酸化銅、メタンスルホン酸銅、又は同様の銅塩から可能である。好ましくは、メタンスルホン酸銅、又は酸化銅(アルカンスルホン酸に溶解する)が使用される。めっき溶液中の銅イオン濃度は、好ましくは、約20〜60g/lであり、より好ましくは、40〜55g/lである。
【0014】
めっき溶液に使用されるアルカンスルホン酸は、比較的低コストであるメタンスルホン酸が好ましい。めっき溶液中のアルカンスルホン酸の濃度は、好ましくは、約40〜約200g/lである。
【0015】
塩化物イオン源は、電気めっき溶液に溶解可能な塩化物を含む。塩化物イオン源の例としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩酸、及びこれらの混合物等が挙げられる。塩化物イオンの濃度は、好ましくは、0.02ppm〜125ppm、より好ましくは、30ppm〜90ppmである。
【0016】
電気銅めっき溶液に好適に含まれるアルデヒド又はケトン化合物の例としては、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、スクシンアルデヒド、メチルエチルケトン、及びこれらの混合物等が挙げられる。これらの化合物の濃度は、好ましくは、約0.005〜約0.500g/lである。
【0017】
めっき溶液は、好ましくは、界面活性剤又は湿潤剤も含む。界面活性剤又は湿潤剤は、めっき溶液の表面張力を低下させるために使用される。これは、めっき溶液が非常に小さな穴、又はビアを湿らせるために特に重要である。有用な界面活性剤又は湿潤剤は、高分子量ポリマー、好ましくは、ポリグリコール系ポリマー及びコポリマーを含む。好ましくは、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(プロピレングリコール)及びこれらのコポリマーが使用される。めっき溶液中の界面活性剤及び/又は湿潤剤の濃度は、約0.1〜約8g/lであってもよい。
【0018】
めっき溶液は、好ましくは、光沢剤を含む。概して、銅電気めっき用光沢剤は硫黄含有有機化合物であり、また、他の官能基を含んでもよい。例えば、3‐(ベンズチアゾリル‐2‐チオ)‐プロピルスルホン酸エステルナトリウム、エチレン‐ジチオジプロピルスルホン酸ナトリウム、ビス‐(3‐スルホプロピル)ジスルフィド二ナトリウム、N,N‐ジメチルジチオカルバミン酸(3‐スルホプロピル)エステルナトリウム塩、及びこれらの混合物が挙げられる。好ましくは、光沢剤は、ビス‐(3‐スルホプロピル)ジスルフィド二ナトリウムを含む。めっき溶液中の光沢剤の濃度は、好ましくは、約0.001ppm〜約2.00ppmである。
【0019】
めっき溶液は、好ましくは、レベリング剤も含む。銅電気めっき用レベリング剤は、概して、窒素含有有機化合物を含む。アミノ基又は置換アミノ基を有する化合物が一般的に使用される。例えば、高分子アミン;トリイソプロパノールアミン、アルキル化ポリアルキレンイミン;及び4‐メルカプトピリジン等が挙げられる。レベリング剤は、好ましくは、テトラポリプロポキシ‐エトキシエチレンジアミンスルホコハク酸エステルナトリウム塩である。めっき溶液中のレベリング剤の濃度は、好ましくは、約0.005〜約0.100g/lである。
【0020】
めっきされる面は、電解銅めっき溶液中に置かれて電源の陰極に接続されることで、陰極になる。また、金属銅陽極もめっき溶液中に置かれ、電源の陽極に接続される。生じるめっき電流によって表面を銅めっきする。本願に記載される方法は、めっき作業の周期中、直流(DC)、周期的パルス電流(PP)、周期的パルス逆電流(PPR)、及び/又はこれらの組み合わせを利用できる。
【0021】
めっき電流に使用されるアンペアは、一定であるか、又は、パルスめっき法のように変わってもよい。概して、このめっき溶液中で有用な陰極電流密度は、陰極領域1平方フィート当たり5〜30アンペアであり、好ましくは、陰極電流密度は、陰極領域1平方フィート当たり8〜15アンペアである。
【実施例】
【0022】
実施例I
以下の前処理及びめっき溶液が調製された:
前処理
成分 濃度
ビス‐(3‐スルホプロピル)ジスルフィド二ナトリウム 3mmol/L(1.06g/L)
銅(硫酸エステルの場合) 10.6mmol/L(0.67g/L)
水 上限1L
めっき溶液
成分 濃度
銅(メタンスルホン酸銅の場合) 45g/L
メタンスルホン酸 110g/L
塩化物イオン 65ppm
ホルムアルデヒド 62ppm
PEG4000 ポリ(エチレングリコール) 1.1g/L
ビス(3‐スルホプロピル)ジスルフィド二ナトリウム 0.5ppm
テトラポリプロポキシ‐エトキシエチレンジアミン
スルホコハク酸エステルナトリウム塩 27ppm
【0023】
直径が50,75,100,150マイクロメートル、深さが75,100マイクロメートルのビア、及び直径が0.2,0.25,0.35,0.5mmのスルーホールを含む2つの厚さ1.6mmのプリント回路基板を処理した。1つは、前処理溶液とめっき溶液とを通して処理した。もう1つは、めっき溶液だけを通して処理した。どちらの場合も、PPR電流が、順方向の陰極電流密度12ASF、逆電流密度30ASF(1平方フィート当たりのアンペア)で使用された。前処理溶液で処理された基板のすべてのビアとスルーホールは、効果的にめっきされたが、めっき溶液だけを通して処理した基板のビアは効果的にめっきされなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面を電解銅めっきする方法であり、
a)硫黄含有有機化合物を含む水溶液を含む前処理溶液と表面を接触させる工程、そして、
b)(i)銅イオン、(ii)アルカンスルホン酸、(iii)塩化物イオン、及び好ましくは、(iv)アルデヒド又はケトン化合物を含む電解銅めっき溶液と陰極として前記表面を接触させ;及び銅が前記表面をめっきするようにめっき電流を加える工程
を含むことを特徴とする表面を電解銅めっきする方法。
【請求項2】
硫黄含有有機化合物が、スルホン酸エステル基又はスルホン酸基である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
めっき溶液が、光沢剤、レベリング剤、界面活性剤、及び湿潤剤からなる群より選択される少なくとも1つの添加剤を更に含む請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前処理溶液が、銅イオンを更に含む請求項1及び2のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
光沢剤が、ビス(3‐スルホプロピル)ジスルフィド二ナトリウム、及びレベリング剤がテトラポリプロポキシ‐エトキシエチレンジアミンスルホコハク酸エステルナトリウム塩(tetrapolypropoxy‐ethoxy ethylenediamine sulfosuccinic ester sodium salt)を含む請求項3に記載の方法。
【請求項6】
硫黄含有有機化合物が、ビス(3‐スルホプロピル)ジスルフィド二ナトリウムを含む請求項1、3、及び5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
めっき電流が、一定直流である請求項1に記載の方法。
【請求項8】
めっき電流が、時間とともに変わる請求項1、2、3、及び5のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
陰極の電気極性が、周期的に反転する請求項1に記載の方法。
【請求項10】
a)前処理溶液が、銅イオン及びビス(3‐スルホプロピル)ジスルフィド二ナトリウムを含み、
b)めっき溶液が、ビス(3‐スルホプロピル)ジスルフィド二ナトリウム、テトラポリプロポキシ‐エトキシエチレンジアミンスルホコハク酸エステルナトリウム塩
を含む請求項1に記載の方法。

【公表番号】特表2009−532586(P2009−532586A)
【公表日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−504184(P2009−504184)
【出願日】平成19年1月19日(2007.1.19)
【国際出願番号】PCT/US2007/001716
【国際公開番号】WO2007/126453
【国際公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【出願人】(591069732)マクダーミッド インコーポレーテッド (38)
【氏名又は名称原語表記】MACDERMID,INCORPORATED
【Fターム(参考)】