説明

電飾看板

【課題】電飾看板の印刷シート体のガス浮きを防止でき、また、プラスチック板を繰返し使用可能とする。
【解決手段】印刷シート体4の粘着剤層6からガス抜き凹溝を省略して平坦面状裏面8として、プラスチック板3に密着させ、しかも、この粘着剤層6の肉厚内部を介して、発生した微量ガスを外端縁へ誘導して、外部へ放出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電飾看板に関する。
【背景技術】
【0002】
電飾看板の被着体(透明板)としては、ガラスやアクリル板が多く使用されている。電飾看板を構成するためには、透明乃至半透明のプラスチック基材の裏面に粘着剤層を積層し、かつ、表て面に印刷インクによる表示部を施した印刷シートを、上記粘着剤層を介して、被着体(透明板又は半透明板)に、貼り、裏面側から光を照射していた。ところで、上記アクリル板を被着体として使用する場合に、アクリル板自体から発生する微量ガス(いわゆるアウトガス)によって、上記印刷シート体が局部的に浮き上り(本発明の説明では“ガス浮き”と言う場合がある)を発生するという問題があった。
【0003】
そこで、従来から、上記粘着剤層の裏面に多数の凹溝を形成し、上記被着体に貼った状態下で、上記微量ガスを上記凹溝に沿って外端縁へ誘導してガスを外部へ抜くようにしていた(例えば、特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭56−74045号公報
【特許文献2】実用新案登録第2503717号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、電飾看板に、上述のように粘着剤層の裏面に多数の凹溝等を凹凸形成するには、剥離紙に凹凸逆転の凸凹模様を回転ローラ等によって形成せねばならず、その回転ローラ等の表面への凸凹模様加工が極めて高精度で面倒なものであった。
そこで、本発明に係る電飾看板では、剥離紙の凸凹模様の加工を省略でき、平滑な剥離紙を使用して、安価かつ容易に、印刷シート体の粘着剤層を形成でき、しかも、ガス浮きが長期間に渡って発生せず、耐久性に優れ、さらに、プラスチック板に糊残りせずに印刷シート体を剥離できるので、高価なプラスチック板をそのまま繰り返し使用可能とすることを、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、本発明は、透明乃至半透明の基材と、該基材の裏面に積層した透明乃至半透明の粘着剤層と、上記基材の表て面に形成した印刷インクによる表示部と、から成る印刷シート体を、上記粘着剤層を介して透明乃至半透明のプラスチック板に貼り付け、光源から光線を照射して、上記表示部を電飾表示する電飾看板に於て、上記印刷シート体の上記粘着剤層は、ガス抜き凹溝を省略した平坦面状裏面を有して上記プラスチック板に密着しており、さらに、上記印刷シート体は、上記プラスチック板に対して粘着剤残りなしで剥離が可能な再剥離機能、及び、上記プラスチック板から発生する微量ガスを上記粘着剤層の肉厚内部を介して外端縁へ誘導して放出し局部的な浮き上りを防止するガス浮き防止機能を、兼備している。
また、上記粘着剤層は、アクリル酸アルキルエステルモノマーにカルボキシル基及び/又はヒドロキシル基を含有する共重合体にスチレン系及び/又はα−メチルスチレン系粘着付与剤を混合して成る。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、印刷シート体の粘着剤層にガス抜き凹溝の省略された平坦面状裏面であるので、裏側から光線を照射した際に、美麗な表示が実現でき、さらに、ガス抜き凹溝を省略しているにかかわらず、微量ガスを粘着剤層の肉厚内部を介して外部へ放出して、ガス浮きを防止できる。しかも、再剥離が可能で高価なプラスチック板に糊残りせず、繰り返し使用可能で、省資源にも貢献する発明といえる。
そして、印刷シート体の粘着剤層は、平滑面状裏面を有するので、剥離紙の貼着面も平滑のままで良いので、製造が容易で、安価に印刷シート体が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施の一形態を示す簡略断面説明図である。
【図2】重ね貼りの説明と(耐湿)耐熱テストの開始状態を説明するための要部拡大断面説明図である。
【図3】重ね貼りにて(耐湿)耐熱テストを行った結果を説明するための要部拡大断面説明図である。
【図4】面一貼り(突き合せ貼り)の説明と、(耐湿)耐熱テストの開始状態を説明するための要部拡大断面説明図である。
【図5】面一貼り(突き合せ貼り)にて(耐湿)耐熱テストを行った結果を説明するための要部拡大断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下図示の実施の形態に基づき本発明を詳説する。
図1に於て、電飾看板Eは、光源1と、看板筺体(枠材)2と、該看板筺体2の一面(上面)を閉じるように張設(取着)された透明乃至半透明のプラスチック板3と、このプラスチック板3の外面に貼り付けた印刷シート体4と、を具備している。
【0010】
この印刷シート体4は、透明乃至半透明の基材5と、この基材5の裏面に積層した透明乃至半透明の粘着剤層6と、上記基材5の表て面に形成した印刷インクによる表示部7と、から成る。この印刷シート体4を、粘着剤層6を介して、プラスチック板3に貼り付け、図1に示すように、プラスチック板3の裏面側―――即ち、筺体2の内部―――の光源1から光線を照射10して、各種広告・宣伝等のための表示部7を電飾表示する。(以上は公知の技術に相当する。)
【0011】
ところで、本発明にあっては、上記印刷シート体4の粘着剤層6は、(従来例として既述の)ガス抜き凹溝を省略した平坦面状の裏面8を(貼着前の状態から常時)有しており、プラスチック板3の外面(表て面)に密着して貼り付けられている。
さらに、本発明の印刷シート体4は、プラスチック板3としてのアクリル板又はポリカーボネート板に対して、粘着剤残りなし―――いわゆる糊残りなし―――で、剥離が可能な再剥離機能を備えると共に、さらに、プラスチック板3から発生する微量ガスを、粘着剤層6の肉厚内部を介して外端縁6Zへ、矢印Fのように、誘導して、外端縁6Zから放出し、局部的な印刷シート体4の浮き上りを防止するガス浮き防止機能(耐ガス浮き機能とも言う)を備えている。
【0012】
このような再剥離機能及びガス浮き防止機能を兼備した粘着剤層6としては、アクリル酸アルキルエステルモノマーにカルボキシル基及び/又はヒドロキシル基を含有する共重合体にスチレン系及び/又はα−メチルスチレン系粘着付与剤を混合して成る材質のものが良い。
さらに、再剥離機能及びガス浮き防止機能を、さらに、電飾看板の長期使用後の収縮が少ないという特性(目隙き防止機能)を、兼備するものとしては、特に、アルキル基の炭素数が1〜12の(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー 100重量部にカルボキシル基及び/又はヒドロキシル基を含有する共重合可能な不飽和モノマー 0.1〜20重量部を共重合せしめて得た重量平均分子量(Mw)が55万以上75万未満の共重合体であって、(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーのうち、70重量%以上がアルキル基の炭素数が1〜4の(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーである共重合体に、スチレン系及び/又はα−メチルスチレン系粘着付与剤を該共重合体 100重量部に対して、 0.3〜15重量部混合し、イソシアネート系架橋剤で架橋して成る材質が好適である。
【0013】
さらに追加説明すれば、本発明は微量のガスが発生する虞のあるプラスチック板4を被着体として用いた電飾看板に於て、印刷シート体4のガス浮き(さらには、それに伴う剥がれ)を防止し、かつ、目隙き20(図5参照)を防止して、耐久性に優れ、しかも、糊残り(粘着剤残り)が発生せず、再剥離性を有し、電飾看板Eとして、印刷シート4のみを
交換して、それ以外の構成部品(プラスチック板3)を繰返し使用できる。
【0014】
そして、基材5について追加説明すれば、全光線透過率が、20%〜99%である半透明乃至透明である。
そして、基材5としては、表て面をエンボスすることで、印刷時の(インクのオーバーフローやハジキの発生を防止して)印字適正を改善し、巻き取り適正も向上させるのが望ましい。また、プラスチック板3は、全光線透過率が、20%〜99%の半透明乃至透明であり、アウトガスを発生するプラスチック板はアクリル板,ポリカーボネート板,脂環式ポリオレフィン板,塩ビ板,ナイロン板,エポキシ板,スチレン板等がある。電源1からの光線照射10により、プラスチック板3の温度は、一般に、50℃〜70℃にもなる。
なお、図1に於て、2点鎖線にて示したように、(塩ビ,PET,PP等の保護シート12を、粘着層11を介して表て面に積層するのも好ましい。また、図示省略するが、表示部7の存在する表て面側に光源を配設することも、自由である。
【実施例】
【0015】
下記の表1,表2は、本発明実施例として、基材5はエンボスマット乳白色塩ビが用いられると共に、粘着剤層6として、アクリル酸アルキルエステルモーマーにカルボキシル基を含有する共重合体にスチレン系粘着付与剤を混合した粘着剤を用いて、プラスチック板3としてアクリル板を使用し、また、参考のためにガラス(板)を使用し、湿度が55%(表1)と、湿度が95%(表2)として、共に温度を60℃として、図2の重ね貼り、及び、図4の面一貼りにて、 168時間に渡って(耐湿)耐熱テストを行った結果を示す。(図3,図5が 168時間後、即ち実使用にて6ケ月相当の後のテスト結果を説明する図である。)
【0016】
【表1】

【0017】
【表2】

【0018】
なお、比較例1は、粘着力は実施例と同等であるが、従来材質のものであり、具体的には汎用のアクリル系市販品であって、日本カーバイド工業株式会社PE−121Bを用いた。
また、比較例2では、実施例に比べてその粘着力が 1.6倍と大きく、仮にガスが発生してガス浮きを生じたとしても、その大きな粘着力にてガス浮きを強制的に抑制するタイプの粘着剤を用いたもので、具体的には、藤倉化成株式会社LKG−1010を用いた。
なお、図2〜図5に於て、L0 =80mm,L1 =3mmであり、テスト後は、(L0 −Ls)だけ収縮し、(図2,図3では)重ね部分長さは、L1 からL2 にまで収縮し、面一貼りでは(図4,図5のように)(L0 −Ls)=ΔLだけの目隙き20を生ずる。
【0019】
上記表1,2から、本発明実施例のものは、比較例1のものよりも、著しく加熱収縮率が減少していることが、明らかとなった。即ち、本発明実施例では、目隙き20の寸法ΔLは 0.5mm未満であって、実用上全く問題がない。
また、本発明実施例のものは、比較例2のものと同等の(優れた)小さい加熱収縮率を示している。この比較例2のものは、粘着力が極端に大であるため、一旦、プラスチック板の表て面に貼り付けて、所定使用期間後に、プラスチック板から剥離せんとしても、粘着剤がプラスチック板に糊残りし、高価なプラスチック板も廃棄せねばならないという欠点がある。
これに対し、本発明実施例では、プラスチック板3の表て面に、粘着剤層6の糊残り(粘着剤残り)が全く発生せず、プラスチック板3は何度も繰返し再利用可能であることも、上記テストにて、確認できた。
【0020】
本発明は以上述べたように、透明乃至半透明の基材5と、該基材5の裏面に積層した透明乃至半透明の粘着剤層6と、上記基材5の表て面に形成した印刷インクによる表示部7と、から成る印刷シート体4を、上記粘着剤層6を介して透明乃至半透明のプラスチック板3に貼り付け、(上記プラスチック板3又は表示部7の裏面側に配設した)光源1から光線を照射10して、上記表示部7を電飾表示する電飾看板に於て、上記印刷シート体4の上記粘着剤層6は、ガス抜き凹溝を省略した平坦面状裏面8を有して上記プラスチック板3に密着しており、さらに、上記印刷シート体4は、上記プラスチック板3に対して粘着剤残りなしで剥離が可能な再剥離機能、及び、上記プラスチック板3から発生する微量ガスを上記粘着剤層6の肉厚内部を介して外端縁6Zへ誘導して放出し局部的な浮き上りを防止するガス浮き防止機能を、兼備している構成としたので、所期目的を達成して、剥離紙に凸凹模様を加工せずに済み、製造が著しく容易となり、また、ガス浮きが長期間に渡って発生せず、電飾看板として、美しく、必要な宣伝・広告等の情報伝達作用を行うことができる。しかも、(従来行われていた)強力な粘着力を有する粘着剤層を用いた印刷シート体のもの(表1,表2の比較例2参照)に比べると、本発明では、容易に印刷シート体4を剥離して廃却できると同時に、筺体2側のプラスチック板3の表て面には粘着剤残り(いわゆる糊残り)が発生せず、美しく保ったまま、プラスチック板3をそのまま繰返し使用でき、高価なアクリル板等を再利用して省資源にも貢献できる。
【符号の説明】
【0021】
E 電飾看板
1 光源
3 プラスチック板
4 印刷シート体
5 基材
6 粘着剤層
6Z 外端縁
7 表示部
8 裏面
10 照射







【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明乃至半透明の基材(5)と、該基材(5)の裏面に積層した透明乃至半透明の粘着剤層(6)と、上記基材(5)の表て面に形成した印刷インクによる表示部(7)と、から成る印刷シート体(4)を、上記粘着剤層(6)を介して透明乃至半透明のプラスチック板(3)に貼り付け、光源(1)から光線を照射(10)して、上記表示部(7)を電飾表示する電飾看板に於て、
上記印刷シート体(4)の上記粘着剤層(6)は、ガス抜き凹溝を省略した平坦面状裏面(8)を有して上記プラスチック板(3)に密着しており、
さらに、上記印刷シート体(4)は、上記プラスチック板(3)に対して粘着剤残りなしで剥離が可能な再剥離機能、及び、上記プラスチック板(3)から発生する微量ガスを上記粘着剤層(6)の肉厚内部を介して外端縁(6Z)へ誘導して放出し局部的な浮き上りを防止するガス浮き防止機能を、兼備していることを特徴とする電飾看板。
【請求項2】
上記粘着剤層(6)は、アクリル酸アルキルエステルモノマーにカルボキシル基及び/又はヒドロキシル基を含有する共重合体にスチレン系及び/又はα−メチルスチレン系粘着付与剤を混合して成る請求項1記載の電飾看板。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−114241(P2013−114241A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−263321(P2011−263321)
【出願日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【出願人】(000226091)日栄化工株式会社 (17)
【Fターム(参考)】