説明

露光ヘッド、画像形成装置、露光ヘッド用レンズモジュール

【課題】レンズの位置変動を抑制して、良好な露光を実現可能とする技術を提供する。
【解決手段】樹脂製のレンズが形成された樹脂層、および樹脂層が配設されたガラス基板を有するレンズアレイと、樹脂層の反対側からガラス基板を支持する光透過性の支持基板と、を備え、レンズの光軸方向から見てガラス基板の端が支持基板より突出している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、レンズアレイを用いた露光ヘッド、画像形成装置および露光ヘッド用レンズモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1では、複数のレンズを長手方向にアレイ状に配列したレンズアレイを用いて、露光ヘッドを構成することが提案されている。つまり、この露光ヘッドではレンズアレイの各レンズに対向して発光素子が配置されており、発光素子が射出した光がレンズを透過した後にスポットとして被露光面に照射される。こうして、露光ヘッドにより被露光面を露光することができる。
【0003】
また、特許文献1では、複数のレンズアレイを長手方向に並べて、長尺なレンズアレイを構成することが提案されている。このような長尺レンズアレイを構成する理由は次のとおりである。つまり、露光ヘッドで用いられるレンズアレイは用途に応じた長さを備えている必要があり、例えば、画像形成装置内で感光体に潜像を形成する場合には、潜像の幅に応じた範囲を露光するために、レンズアレイはこの潜像の幅に応じた長さを備える必要があった。こうした要求がある一方で、長尺なレンズアレイを一体的な構成で実現することは難しい。そこで、特許文献1では、複数のレンズアレイを長手方向に並べて、1枚の長尺レンズアレイ(露光ヘッド用レンズモジュール)を構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−037199号公報
【特許文献2】特開2005−276849号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、例えば特許文献2に記載の技術を応用して、上述したレンズアレイをガラス基板と樹脂層とから構成することができる。具体的には、このレンズアレイでは、樹脂製のレンズが複数形成された樹脂層が、ガラス基板に積層して形成されている。しかしながら、このようにガラス基板に樹脂層を形成したレンズアレイでは、次のような問題が発生する場合があった。
【0006】
つまり、ガラスと樹脂とは互いに異なる線膨張係数を有しているため、周囲環境の温度変化によっては、ガラス基板と樹脂層との界面に応力が発生する。そして、かかる応力がレンズの近傍に作用すると、レンズアレイがレンズ近傍で撓んで、その結果、レンズの位置が変動するおそれがあった。そして、このようにレンズの位置が変動したために、スポットの位置がずれたりスポットがぼやけたりして、良好な露光が実現できない場合があった。
【0007】
この発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、レンズの位置変動を抑制して、良好な露光を実現可能とする技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明にかかる露光ヘッドは、上記目的を達成するために、樹脂製のレンズが形成された樹脂層、および樹脂層が配設されたガラス基板を有するレンズアレイと、樹脂層の反対側からガラス基板を支持する光透過性の支持基板と、を備え、レンズの光軸方向から見てガラス基板の端が支持基板より突出していることを特徴としている。
【0009】
また、この発明にかかる露光ヘッド用レンズモジュールは、樹脂製のレンズが形成された樹脂層、および樹脂層が配設されたガラス基板を有するレンズアレイと、樹脂層の反対側からガラス基板を支持する光透過性の支持基板と、を備え、レンズの光軸方向から見てガラス基板が支持基板より突出していることを特徴としている。
【0010】
また、この発明にかかる画像形成装置は、上記目的を達成するために、樹脂製のレンズが形成された樹脂層をガラス基板に配設したレンズアレイ、樹脂層の反対側からガラス基板を支持する光透過性の支持基板、および発光素子を有する露光ヘッドと、発光素子が発光してレンズおよび支持基板を透過した光が照射される像担持体と、を備え、レンズの光軸方向から見てガラス基板が支持基板より突出していることを特徴としている。
【0011】
このように構成された発明(露光ヘッド、露光ヘッド用レンズモジュール、画像形成装置)では、樹脂層の反対側からガラス基板を支持する支持基板が設けられている。そして、レンズの光軸方向から見て、ガラス基板がこの支持基板より突出しており、換言すれば、光軸方向から見て、支持基板とガラス基板とがオーバーラップする領域とオーバーラップしない領域とが、支持基板の端を境界として並ぶ。つまり、この発明では、支持基板とガラス基板とがオーバーラップして比較的厚みの厚い領域と、これらがオーバーラップせずに比較的厚みの薄い領域とが、支持基板の端を境界として並ぶ。そして、このように厚みに変化を持たせた構成では、この厚みが変化する部分の近傍、すなわち支持基板の端近傍に応力が集中する傾向にある。したがって、周囲環境の温度変化に起因して互いに線膨張係数の異なるガラス基板と樹脂層との間に応力が発生しても、この応力は支持基板の端近傍に集中するため、レンズの近傍に作用する応力が小さく抑えられる。つまり、この発明は、レンズ近傍以外の領域に応力を集中させることで、レンズ近傍に作用する応力を小さく抑えている。その結果、レンズ近傍でのレンズアレイの撓みを抑え、レンズの位置変動を抑制し、良好な露光を実現することが可能となっている。
【0012】
また、レンズの光軸方向から見てガラス基板の両端が支持基板より突出するように構成しても良い。このような構成では、支持基板の両端近傍で上述した厚みの変化が存在する。したがって、支持基板の両端それぞれの近傍に応力を集中させることで、レンズ近傍に作用する応力を小さく抑えることができる。よって、レンズ近傍でのレンズアレイの撓みを抑え、レンズの位置変動を抑制し、良好な露光を実現することが可能となる。
【0013】
また、レンズの光軸方向から見て樹脂層の両端が支持基板より突出している構成に対しては、本発明を適用することが好適である。つまり、レンズの光軸方向から見て樹脂層の両端が支持基板より突出している構成、換言すれば、レンズの光軸方向から見て樹脂層の面積が比較的広い構成では、樹脂層とガラス基板との間に大きな応力が発生する場合があり、その結果、上述のようなレンズの位置変動が顕著となるおそれがあった。そこで、かかる構成に対しては、本発明を適用することで、レンズの位置変動を確実に抑制して、良好な露光実現を図ることが好適となる。
【0014】
なお、上述の支持基板としては、ガラスを用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明を適用可能な画像形成装置の一例を示す図。
【図2】図1の画像形成装置が備える電気的構成を示すブロック図。
【図3】ラインヘッドの概略を示す部分斜視図。
【図4】厚さ方向TKDからヘッド基板を平面視した部分平面図。
【図5】ラインヘッドのA−A線における部分断面図。
【図6】長尺レンズアレイの構成を模式的に示すA−A線断面図。
【図7】長尺レンズアレイの構成を模式的に示す部分平面図。
【図8】ヘッド基板および長尺レンズアレイを模式的に示す長手方向部分断面図。
【図9】本発明の効果を示すためのグラフ。
【図10】図9の横軸の各ポイントP1〜P6が対応する位置を示すための図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は本発明を適用可能な画像形成装置の一例を示す図である。また、図2は図1の画像形成装置が備える電気的構成を示すブロック図である。この装置は、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンダ(M)、イエロー(Y)の4色のトナーを重ね合わせてカラー画像を形成するカラーモードと、ブラック(K)のトナーのみを用いてモノクロ画像を形成するモノクロモードとを選択的に実行可能な画像形成装置である。なお図1は、カラーモード実行時に対応する図である。この画像形成装置では、ホストコンピューターなどの外部装置から画像形成指令がCPUやメモリーなどを有するメインコントローラーMCに与えられると、このメインコントローラーMCはエンジンコントローラーECに制御信号などを与えるとともに画像形成指令に対応するビデオデータVDをヘッドコントローラーHCに与える。このとき、メインコントローラーMCは、ヘッドコントローラーHCから水平リクエスト信号HREQを受け取る毎に、主走査方向MDに1ライン分のビデオデータVDをヘッドコントローラーHCに与える。また、このヘッドコントローラーHCは、メインコントローラーMCからのビデオデータVDとエンジンコントローラーECからの垂直同期信号Vsyncおよびパラメータ値とに基づき各色のラインヘッド29を制御する。これによって、エンジン部ENGが所定の画像形成動作を実行し、複写紙、転写紙、用紙およびOHP用透明シートなどのシートに画像形成指令に対応する画像を形成する。
【0017】
画像形成装置が有するハウジング本体3内には、電源回路基板、メインコントローラーMC、エンジンコントローラーECおよびヘッドコントローラーHCを内蔵する電装品ボックス5が設けられている。また、画像形成ユニット7、転写ベルトユニット8および給紙ユニット11もハウジング本体3内に配設されている。また、図1においてハウジング本体3内右側には、2次転写ユニット12、定着ユニット13、シート案内部材15が配設されている。なお、給紙ユニット11は、装置本体1に対して着脱自在に構成されている。そして、該給紙ユニット11および転写ベルトユニット8については、それぞれ取り外して修理または交換を行うことが可能な構成になっている。
【0018】
画像形成ユニット7は、複数の異なる色の画像を形成する4個の画像形成ステーションY(イエロー用)、M(マゼンダ用)、C(シアン用)、K(ブラック用)を備えている。また、各画像形成ステーションY,M,C,Kは、主走査方向MDに所定長さの表面を有する円筒形の感光体ドラム21を設けている。そして、各画像形成ステーションY,M,C,Kそれぞれは、対応する色のトナー像を、感光体ドラム21の表面に形成する。感光体ドラム21は、軸方向が主走査方向MDに平行もしくは略平行となるように配置されている。また、各感光体ドラム21はそれぞれ専用の駆動モーターに接続され図中矢印D21の方向に所定速度で回転駆動される。これにより感光体ドラム21の表面が、主走査方向MDに直交もしくは略直交する副走査方向SDに搬送されることとなる。また、感光体ドラム21の周囲には、回転方向に沿って帯電部23、ラインヘッド29、現像部25および感光体クリーナー27が配設されている。そして、これらの機能部によって帯電動作、潜像形成動作及びトナー現像動作が実行される。したがって、カラーモード実行時は、全ての画像形成ステーションY,M,C,Kで形成されたトナー像を転写ベルトユニット8が有する転写ベルト81に重ね合わせてカラー画像を形成するとともに、モノクロモード実行時は、画像形成ステーションKで形成されたトナー像のみを用いてモノクロ画像を形成する。なお、図1において、画像形成ユニット7の各画像形成ステーションは構成が互いに同一のため、図示の便宜上一部の画像形成ステーションのみに符号をつけて、他の画像形成ステーションについては符号を省略する。
【0019】
帯電部23は、その表面が弾性ゴムで構成された帯電ローラーを備えている。この帯電ローラーは帯電位置で感光体ドラム21の表面と当接して従動回転するように構成されており、感光体ドラム21の回転動作に伴って感光体ドラム21に対して従動方向に周速で従動回転する。また、この帯電ローラーは帯電バイアス発生部(図示省略)に接続されており、帯電バイアス発生部からの帯電バイアスの給電を受けて帯電部23と感光体ドラム21が当接する帯電位置で感光体ドラム21の表面を帯電させる。
【0020】
ラインヘッド29は感光体ドラム21に対して離間して配置されており、ラインヘッド29の長手方向は主走査方向MDに平行もしくは略平行であるとともに、ラインヘッド29の幅方向は副走査方向SDに平行もしくは略平行である。このラインヘッド29は複数の発光素子を備えており、各発光素子はヘッドコントローラーHCからのビデオデータVDに応じて発光する。そして、帯電した感光体ドラム21表面に発光素子からの光が照射されることで、感光体ドラム21表面に静電潜像が形成される。
【0021】
現像部25は、その表面にトナーを担持する現像ローラー251を有する。そして、現像ローラー251と電気的に接続された現像バイアス発生部(図示省略)から現像ローラー251に印加される現像バイアスによって、現像ローラー251と感光体ドラム21とが当接する現像位置において、帯電トナーが現像ローラー251から感光体ドラム21に移動してラインヘッド29により形成された静電潜像が顕在化される。
【0022】
このように上記現像位置において顕在化されたトナー像は、感光体ドラム21の回転方向D21に搬送された後、転写ベルト81と各感光体ドラム21が当接する1次転写位置TR1において転写ベルト81に1次転写される。
【0023】
また、この実施形態では、感光体ドラム21の回転方向D21の1次転写位置TR1の下流側で且つ帯電部23の上流側に、感光体ドラム21の表面に当接して感光体クリーナー27が設けられている。この感光体クリーナー27は、感光体ドラムの表面に当接することで1次転写後に感光体ドラム21の表面に残留するトナーをクリーニング除去する。
【0024】
転写ベルトユニット8は、駆動ローラー82と、図1において駆動ローラー82の左側に配設される従動ローラー83(ブレード対向ローラー)と、これらのローラーに張架され図示矢印D81の方向(搬送方向)へ循環駆動される転写ベルト81とを備えている。また、転写ベルトユニット8は、転写ベルト81の内側に、感光体カートリッジ装着時において各画像形成ステーションY,M,C,Kが有する感光体ドラム21各々に対して一対一で対向配置される、4個の1次転写ローラー85Y,85M,85C,85Kを備えている。これらの1次転写ローラー85は、それぞれ1次転写バイアス発生部(図示省略)と電気的に接続される。そして、カラーモード実行時は、図1に示すように全ての1次転写ローラー85Y,85M,85C,85Kを画像形成ステーションY,M,C,K側に位置決めすることで、転写ベルト81を画像形成ステーションY,M,C,Kそれぞれが有する感光体ドラム21に押し遣り当接させて、各感光体ドラム21と転写ベルト81との間に1次転写位置TR1を形成する。そして、適当なタイミングで上記1次転写バイアス発生部から1次転写ローラー85に1次転写バイアスを印加することで、各感光体ドラム21の表面上に形成されたトナー像を、それぞれに対応する1次転写位置TR1において転写ベルト81表面に転写してカラー画像を形成する。
【0025】
一方、モノクロモード実行時は、4個の1次転写ローラー85のうち、カラー1次転写ローラー85Y,85M,85Cをそれぞれが対向する画像形成ステーションY,M,Cから離間させるとともにモノクロ1次転写ローラー85Kのみを画像形成ステーションKに当接させることで、モノクロ画像形成ステーションKのみを転写ベルト81に当接させる。その結果、モノクロ1次転写ローラー85Kと画像形成ステーションKとの間にのみ1次転写位置TR1が形成される。そして、適当なタイミングで前記1次転写バイアス発生部からモノクロ1次転写ローラー85Kに1次転写バイアスを印加することで、各感光体ドラム21の表面上に形成されたトナー像を、1次転写位置TR1において転写ベルト81表面に転写してモノクロ画像を形成する。
【0026】
さらに、転写ベルトユニット8は、モノクロ1次転写ローラー85Kの下流側で且つ駆動ローラー82の上流側に配設された下流ガイドローラー86を備える。また、この下流ガイドローラー86は、モノクロ1次転写ローラー85Kが画像形成ステーションKの感光体ドラム21に当接して形成する1次転写位置TR1での1次転写ローラー85Kと感光体ドラム21との共通内接線上において、転写ベルト81に当接するように構成されている。
【0027】
駆動ローラー82は、転写ベルト81を図示矢印D81の方向に循環駆動するとともに、2次転写ローラー121のバックアップローラーを兼ねている。駆動ローラー82の周面には、厚さ3mm程度、体積抵抗率が1000kΩ・cm以下のゴム層が形成されており、金属製の軸を介して接地することにより、図示を省略する2次転写バイアス発生部から2次転写ローラー121を介して供給される2次転写バイアスの導電経路としている。このように駆動ローラー82に高摩擦かつ衝撃吸収性を有するゴム層を設けることにより、駆動ローラー82と2次転写ローラー121との当接部分(2次転写位置TR2)へのシートが進入する際の衝撃が転写ベルト81に伝達しにくく、画質の劣化を防止することができる。
【0028】
給紙ユニット11は、シートを積層保持可能である給紙カセット77と、給紙カセット77からシートを一枚ずつ給紙するピックアップローラー79とを有する給紙部を備えている。ピックアップローラー79により給紙部から給紙されたシートは、レジストローラー対80において給紙タイミングが調整された後、シート案内部材15に沿って2次転写位置TR2に給紙される。
【0029】
2次転写ローラー121は、転写ベルト81に対して離当接自在に設けられ、2次転写ローラー駆動機構(図示省略)により離当接駆動される。定着ユニット13は、ハロゲンヒータ等の発熱体を内蔵して回転自在な加熱ローラー131と、この加熱ローラー131を押圧付勢する加圧部132とを有している。そして、その表面に画像が2次転写されたシートは、シート案内部材15により、加熱ローラー131と加圧部132の加圧ベルト1323とで形成するニップ部に案内され、該ニップ部において所定の温度で画像が熱定着される。加圧部132は、2つのローラー1321,1322と、これらに張架される加圧ベルト1323とで構成されている。そして、加圧ベルト1323の表面のうち、2つのローラー1321,1322により張られたベルト張面を加熱ローラー131の周面に押し付けることで、加熱ローラー131と加圧ベルト1323とで形成するニップ部が広くとれるように構成されている。また、こうして定着処理を受けたシートはハウジング本体3の上面部に設けられた排紙トレイ4に搬送される。
【0030】
また、この装置では、ブレード対向ローラー83に対向してクリーナー部71が配設されている。クリーナー部71は、クリーナーブレード711と廃トナーボックス713とを有する。クリーナーブレード711は、その先端部を転写ベルト81を介してブレード対向ローラー83に当接することで、2次転写後に転写ベルトに残留するトナーや紙粉等の異物を除去する。そして、このように除去された異物は、廃トナーボックス713に回収される。
【0031】
図3は、ラインヘッドの概略を示す部分斜視図である。同図では、ラインヘッド29の厚さ方向TKDの構成を理解しやすくするために、ラインヘッド29の長手方向LGDの端部(図3の左下端部)が断面で示されている。ここで、厚さ方向TKDは、長手方向LGDおよび幅方向LTDに垂直もしくは略垂直な方向であり、後述する発光素子Eが光を射出する側(つまり、ラインヘッド29から感光体ドラム21に向う側)を向いた方向とする。また、以後の実施形態の説明において、厚さ方向TKDの下流側(図3の上側)を「(厚さ方向TKDの)一方側」と称し、厚さ方向TKDの上流側(図3の下側)を「(厚さ方向TKDの)他方側」と称する。また、基板あるいは平板の一方側の面を表面と称し、基板あるいは平板の他方側の面を裏面と称することとする。
【0032】
なお、この厚さ方向TKDは、後述するレンズアレイLA1のレンズLS1とレンズアレイLA2のレンズLS2とが構成する結像光学系の光軸OA(図6)に平行である。ここで、光軸は次のように定義される。結像光学系は多くの場合、主走査方向MDに垂直な対称面に関して面対称(鏡映対称)であり、かつ、副走査方向SDに垂直な対称面に関して面対称(鏡映対称)である。このように、結像光学系は、主走査方向に垂直な第1対称面、および当該主走査方向MDと直交する副走査方向SDに垂直な第2対称面を有し、第1対称面と第2対称面の交線が定まる。結像光学系が回転対称である場合には、前述の第1対称面と第2対称面の交線は光軸と一致する。結像光学系が回転対称でない場合、厳密には結像光学系の光軸が定義されない場合があるが、そのような場合には、前述の交線を光軸として取り扱えばよい。
【0033】
ラインヘッド29は、ヘッド基板293、遮光部材297、レンズアレイLA1およびレンズアレイLA2をこの順番で厚さ方向TKDに配置した概略構成を備えている。そして、ヘッド基板293の発光素子Eからの光が、遮光部材297の導光孔2971を通過して、レンズアレイLA1、LA2のレンズLS1、LS2によりスポットSTとして結像される(図5)。次に、各部材の詳細な構成について説明する。
【0034】
図4は、厚さ方向TKDからヘッド基板293を平面視した部分平面図であり、厚さ方向TKDの一方側(図3の上側)からヘッド基板293の裏面293−tを透視した場合に相当する。図5は、ラインヘッドのA−A線における部分断面図であり、該断面を長手方向LGD(主走査方向MD)から見た場合に相当する。このA−A線断面は、長手方向LGDに距離Dgを空けるとともに幅方向LTDに距離Dtを空けて、一列に並ぶ3個の発光素子グループEG(あるいは、3枚のレンズLS1等)の各幾何重心(あるいは、各レンズ中心)を通る。また、図4に示す方向Dlscは、A−A線に平行な方向である。さらに、図4では、ヘッド基板293に形成された発光素子グループEG、レンズアレイLA1に形成されたレンズLS1およびレンズアレイLA2に形成されたレンズLS2の位置関係を示すために、レンズLS1およびレンズLS2がそれぞれ一点鎖線で併記されている。ちなみに、レンズLS1およびレンズLS2についての図中記載は、これらの位置関係を示すためのものであり、レンズLS1およびレンズLS2がヘッド基板裏面293−t(図5)に形成されていることを示すものではない。また、図5において、光透過性(つまり透明)である部材には、点の集合からなるハッチングが施されている。
【0035】
ヘッド基板293は光を透過するガラス基板(光透過性基板)で構成されており、ヘッド基板裏面293−tでは、ボトムエミッション型の有機EL(Electro-Luminescence)素子である発光素子Eが複数形成されて、封止部材294(図3、図5)により封止されている。これら複数の発光素子Eは、互いに同一の発光スペクトルを有しており、光ビームを感光体ドラム21表面へ向けて射出する。また、図4に示すように、ヘッド基板裏面293−tに形成された複数の発光素子Eの配置態様は、グループ構造を有している。つまり、15個の発光素子Eが長手方向LGDに2行千鳥で配置されて1個の発光素子グループEGが構成されており、さらに複数の発光素子グループEGが長手方向LGDに3行千鳥で離散的に配置されている。
【0036】
より詳しくは、この配置態様は次のように説明することができる。つまり、各発光素子グループEG内では、15個の発光素子Eが長手方向LGDの互いに異なる位置に配置されており、しかも長手方向LGDにおける位置が隣り合う2つの発光素子E、Eの長手方向LGDへの距離は素子間距離Pelとなっている(言い換えれば、各発光素子グループEG内では、15個の発光素子EがピッチPelで長手方向LGDに配置されている)。そして、素子間距離Pelよりも長いグループ間距離Pegを空けて複数の発光素子グループEGが長手方向LGDに沿って離散的に並んで、1行の発光素子グループ行GRa等が構成されている。さらに、3行の発光素子グループ行GRa、GRb、GRcが距離Dtだけ空けて幅方向LTDの異なる位置に離散的に配置されており、しかも、発光素子グループ行GRa、GRb、GRcのそれぞれは、長手方向LGDに距離Dgだけ相互にシフトされている。こうして、3個の発光素子グループEGが、長手方向LGDに距離Dgを空けるとともに幅方向LTDに距離Dtを空けて、方向Dlscに一列に並ぶ。
【0037】
ここで、素子間距離Pelは、対象となる2個の発光素子Eの幾何重心間の長手方向LGDにおける距離として求めることができる。また、グループ間距離Pegは、対象となる2個の発光素子グループEGのうち、長手方向LGDの一方側の発光素子グループEGの他方側端部にある発光素子Eの幾何重心と、長手方向LGDの他方側の発光素子グループEGの一方側端部にある発光素子Eの幾何重心との長手方向LGDにおける距離として求めることができる。また、距離Dgは、長手方向LGDにおける位置が隣り合う2個の発光素子グループEGそれぞれの幾何重心間の長手方向LGDにおける距離として求めることができる。また、距離Dtは、幅方向LTDにおける位置が隣り合う2個の発光素子グループEGそれぞれの幾何重心間の幅方向LTDにおける距離として求めることができる。
【0038】
このようにヘッド基板293の裏面293−tには、複数の発光素子グループEGが二次元的かつ離散的に配置されている。一方、ヘッド基板293の表面293−hには、遮光部材297が配置されている。遮光部材297には厚さ方向TKDに貫通する導光孔2971が複数形成されている。各導光孔2971は厚さ方向TKDからの平面視において円形状を有しており、その内壁には黒色メッキが施されている。この導光孔2971は、発光素子グループEG毎に1個ずつ形成されており、すなわち、1個の発光素子グループEGに対して1個の導光孔2971が開口している。こうして、遮光部材297は、導光孔2971を発光素子グループEGに開口させた状態でヘッド基板表面293−hに当接して固定されている。
【0039】
このような遮光部材297を設ける目的は、いわゆる迷光がレンズLS1、LS2に入射するのを抑制するためである。つまり、各発光素子グループEGには、レンズLS1、LS2の対からなる結像光学系がそれぞれ専用に設けられている。このような構成では、光ビームは、それ自身の射出源である発光素子グループEGに設けられた結像光学系LS1、LS2にのみ入射して結像されることが望ましい。しかしながら、光ビームの一部には、その射出源である発光素子グループEGに設けられた結像光学系LS1、LS2に向わずに迷光となってしまうものもある。そして、このような迷光が、それ自身の射出源でない発光素子グループEGに設けられた結像光学系LS1、LS2に入射してしまうと、いわゆるゴーストが発生してしまうおそれがある。これに対して、この実施形態では、発光素子グループEGと結像光学系LS1、LS2との間に遮光部材297が設けられている。この遮光部材297には、内壁に黒色メッキが施された導光孔2971が発光素子グループEGに開口して設けられているため、迷光の多くは導光孔2971の内壁で吸収されることとなる。その結果、先ほどのゴーストを抑制して、良好な露光動作の実現が図られる。
【0040】
そして、上述のとおり、これらヘッド基板293および遮光部材297の厚さ方向TKDの一方側には、レンズアレイLA1、LA2が設けられている。なお、この実施形態のラインヘッド29は、長尺化を図るために、レンズアレイLA1を長手方向LGDに複数並べて1枚の長尺レンズアレイL−LA1を構成するとともに、レンズアレイLA2を長手方向LGDに複数並べて1枚の長尺レンズアレイL−LA2を構成している。そして、これら長尺レンズアレイL−LA1、L−LA2を厚さ方向TKDに並べている。次に、この長尺レンズアレイL−LA1、L−LA2の構成について、図6および図7を用いて詳述する。
【0041】
図6は、長尺レンズアレイの構成を模式的に示すA−A線断面図であり、該断面を長手方向LGD(主走査方向MD)から見た場合に相当する。図7は、長尺レンズアレイの構成を模式的に示す部分平面図である。なお、長尺レンズアレイL−LA1、L−LA2のそれぞれは、いずれもガラス基板SB、樹脂層PLおよび樹脂レンズLSから成るレンズアレイLAを支持ガラスSSに取り付けた構成を備えている。そこで、本実施形態で示す模式図では、長尺レンズアレイL−LA1の構成部材を各部材(SB、PL、LS、LA、SS)に対して数字「1」を付加して表す(SB1、PL1、LS1、LA1、SS1)とともに、長尺レンズアレイL−LA2の構成部材を各部材(SB、PL、LS、LA、SS)に対して数字「2」を付加して表す(SB2、PL2、LS2、LA2、SS2)こととする。
【0042】
レンズアレイLA1(LA2)は、長手方向LGDの端部が斜めに(方向Dlscと平行に)カットされた平行四辺形形状を有するガラス基板SB1(SB2)と、このガラス基板SB1(SB2)の他方面SB−tに積層して形成された樹脂層PL1(PL2)とを有している。そして、この樹脂層PL1(PL2)に樹脂製のレンズLS1(LS2)が形成されている。より具体的には、樹脂層PL1(PL2)PL2には、長手方向LGDに3行千鳥で並ぶ複数の樹脂レンズLS1(LS2)が、該樹脂層PL1(PL2)と一体的に形成されている。こうして、複数の発光素子グループEGと複数のレンズLS1(LS2)とが一対一の対応関係で、厚さ方向TKDに互いに対向する。なお、この樹脂層PL1(PL2)は、例えば光硬化性樹脂で構成することができる。
【0043】
そして、図7に示すように、複数のレンズアレイLA1(LA2)が長手方向LGDに並んで長尺レンズアレイL−LA1(L−LA2)を構成している。また、長尺レンズアレイL−LA1(L−LA2)は、長手方向LGDに長尺な平板形状を有する支持ガラスSS1(SS2)を備えており、この支持ガラスSS1(SS2)の他方面SS−tに各レンズアレイLA1(LA2)のガラス基板SB1(SB2)の一方面SB−hが接着剤等により固定されている。こうして、長手方向LGDに並ぶ複数のレンズアレイLA1(LA2)が互いに位置決めされた状態で、支持ガラスSS1(SS2)により支持される。
【0044】
また、樹脂層PL1(PL2)、ガラス基板SB1(SB2)および支持ガラスSS1(SS2)それぞれの幅方向LTDにおける長さWpl、Wsb、Wssは、式Wsb>Wpl>Wssを満たしている。つまり、ガラス基板SB1(SB2)が幅方向LTDに最も広い幅Wsbを有し、樹脂層PL1(PL2)が幅方向LTDに次に広い幅Wplを有し、支持ガラスSS1(SS2)が幅方向LTDに最も狭い幅Wssを有する。そして、かかる幅関係を満たす、樹脂層PL1(PL2)、ガラス基板SB1(SB2)および支持ガラスSS1(SS2)が厚さ方向TKDにこの順番で積層されている。その結果、光軸方向OA(厚さ方向TKD)から見て、ガラス基板SB1(SB2)の幅方向LTDの両端は、支持ガラスSS1(SS2)の幅方向LTDの両端から幅方向LTDに突出している。また、光軸方向OA(厚さ方向TKD)から見て、樹脂層PL1(PL2)の幅方向LTDの両端は、支持ガラスSS1(SS2)の幅方向LTDの両端から幅方向LTDに突出している。また、光軸方向OA(厚さ方向TKD)から見て、ガラス基板SB1(SB2)の幅方向LTDの両端は、樹脂層PL1(PL2)の幅方向LTDの両端から幅方向LTDに突出している。
【0045】
そして、図8に示すように、ヘッド基板293および上述の長尺レンズアレイL−LA1、L−LA2が互いに間隔を空けながら厚さ方向TKDに並んでいる。ここで、図8は、ヘッド基板および長尺レンズアレイの配置関係を模式的に示す長手方向部分断面図である。図8に示すように、ヘッド基板293の長手方向LGDの両端部それぞれには、スペーサーSP1が配置されている。そして、これらのスペーサーSP1、SP1に長尺レンズアレイL−LA1が架設されている。ちなみに、図7に示したように、長尺レンズアレイL−LA1では支持ガラスSS1の長手方向LGDの両端がレンズアレイLA1、LA1、…から長手方向LGDに突出しており、スペーサーSP1、SP1は支持ガラスSS1のこの突出部分(の裏面)に当接して長尺レンズアレイL−LA1を支持する。そして、スペーサーSP1は、ヘッド基板293および長尺レンズアレイL−LA1のそれぞれに接着剤等により固定される。こうして、ヘッド基板293と長尺レンズアレイL−LA1とが互いに位置決めされて固定される。ちなみに、このとき長尺レンズアレイL−LA1は、遮光部材297に対して厚さ方向TKDに若干の隙間を空けて支持される。
【0046】
また、図8に示すように、長尺レンズアレイL−LA1が有する支持ガラスSS1の長手方向LGDの両端部それぞれには、スペーサーSP2が配置されている。そして、これらのスペーサーSP2、SP2に長尺レンズアレイL−LA2が架設されている。ちなみに、図7に示したように、長尺レンズアレイL−LA2では支持ガラスSS2の長手方向LGDの両端がレンズアレイLA2、LA2、…から長手方向LGDに突出しており、スペーサーSP2、SP2は支持ガラスSS2のこの突出部分(の裏面)に当接して長尺レンズアレイL−LA2を支持する。そして、スペーサーSP2は、長尺レンズアレイL−LA1および長尺レンズアレイL−LA2のそれぞれに接着剤等により固定される。こうして、長尺レンズアレイL−LA1と長尺レンズアレイL−LA2とが互いに位置決めされて固定される。
【0047】
そして、この実施形態では、厚さ方向TKDに互いに対向するレンズLS1とレンズLS2とが1個の結像光学系を構成する。つまり、所望の光学特性を実現するように、レンズLS1、LS2それぞれの曲率等が調整されており、互いに異なるレンズ形状を有するレンズLS1およびレンズLS2が協働して1個の結像光学系として機能する。具体的には、この結像光学系は、反転した縮小像を形成するものであり、その横倍率は負であるとともに1未満の絶対値を有している。そして、発光素子Eから射出された光ビームは、レンズLS1、LS2を透過した後にスポットSTとして感光体ドラム21表面に照射される(図5)。そして、特開2008−036937号公報の図11等に記載のように、感光体ドラム21表面の副走査方向SDへの移動に応じて各発光素子Eの発光を制御することで、主走査方向MDに伸びるライン潜像を形成することができる。
【0048】
以上、図6等を用いて説明したとおり、本実施形態の長尺レンズアレイL−LA1(L−LA2)では、樹脂層PL1(PL2)の反対側からガラス基板SB1(SB2)を支持する支持ガラスSS1(SS2)が設けられている。このガラス基板SB1(SB2)は、レンズLS1(LS2)の光軸方向OAから見て支持ガラスSS1(SS2)より突出しており、換言すれば、光軸方向OAから見て、支持ガラスSS1(SS2)とガラス基板SB1(SB2)とがオーバーラップする領域とオーバーラップしない領域とが、支持ガラスSS1(SS2)の端EPを境界として並ぶ。つまり、この実施形態では、支持ガラスSS1(SS2)とガラス基板SB1(SB2)とがオーバーラップして比較的厚みの厚い領域と、これらがオーバーラップせずに比較的厚みの薄い領域とが、支持ガラスSS1(SS2)の端EPを境界として並ぶ。そして、このように厚みに変化を持たせた構成では、この厚みが変化する部分の近傍、すなわち支持ガラスSS1(SS2)の端EP近傍に応力が集中する傾向にある。したがって、周囲環境の温度変化に起因して互いに線膨張係数の異なるガラス基板SB1(SB2)と樹脂層PL1(PL2)との間に応力が発生しても、この応力は支持ガラスSS1(SS2)の端EP近傍に集中するため、レンズLS1(LS2)の近傍に作用する応力が小さく抑えられる。つまり、この実施形態の長尺レンズアレイL−LA1(L−LA2)は、レンズLS1(LS2)近傍以外の領域に応力を集中させることで、レンズ近傍LS1(LS2)に作用する応力を小さく抑えている。その結果、レンズLS1(LS2)近傍でのレンズアレイLA1(LA2)の撓みを抑え、レンズLS1(LS2)の位置変動を抑制し、良好な露光を実現することが可能となっている。
【0049】
また、本実施形態の長尺レンズアレイL−LA1(L−LA2)は、レンズLS1(LS2)の光軸方向OAから見てガラス基板SB1(SB2)の両端が支持ガラスSS1(SS2)より突出した構成を備えている。このような構成では、支持ガラスSS1(SS2)両端EP、EP近傍で上述した厚みの変化が存在する。したがって、支持ガラスSS1(SS2)の両端EP、EPそれぞれの近傍に応力を集中させることで、レンズLS1(LS2)近傍に作用する応力を小さく抑えることができる。よって、レンズLS1(LS2)近傍でのレンズアレイLA1(LA2)の撓みを抑え、レンズLS1(LS2)の位置変動を抑制し、良好な露光を実現することが可能となる。
【0050】
また、本実施形態のように、レンズLS1(LS2)の光軸方向OAから見て樹脂層PL1(PL2)の両端が支持ガラスSS1(SS2)より突出している構成に対しては、本発明を適用することが好適である。つまり、レンズLS1(LS2)の光軸方向OAから見て樹脂層PL1、PL2の両端が支持基板より突出している構成、換言すれば、レンズLS1(LS2)の光軸方向OAから見て樹脂層PL1(PL2)の面積が比較的広い構成では、樹脂層PL1(PL2)とガラス基板SB1(SB2)との間に大きな応力が発生する場合があり、その結果、上述のようなレンズLS1(LS2)の位置変動が顕著となるおそれがあった。そこで、かかる構成に対しては、本発明を適用することで、レンズLS1(LS2)の位置変動を確実に抑制して、良好な露光実現を図ることが好適となる。
【0051】
ところで、上記実施形態は、複数のレンズアレイLA1(LA2)を長手方向LGDに並べて長尺レンズアレイL−LA1(L−LA2)を構成している。そして、このような長尺レンズアレイL−LA1(L−LA2)では、光軸方向OAに垂直な面内で各レンズアレイLA1(LA2)が面一に並んで、各レンズアレイLA1(LA2)の間に段差が無い(つまり、光軸方向OAにずれがない)ことが好適である。なぜなら、各レンズアレイLA1(LA2)が互いに光軸方向OAにずれていると、各レンズアレイLA1(LA2)のレンズLS1(LS2)の位置が光軸方向OAにずれてしまうこととなり、良好な露光ができないおそれがあるからである。これに対して、本実施形態では、支持ガラスSS1(SS2)すなわちガラス製の平板で各レンズアレイLA1(LA2)が支持されている。したがって、次のようにして、長尺レンズアレイL−LA1(L−LA2)を組み立てることで、光軸方向OAに垂直な面内で各レンズアレイLA1(LA2)を面一に並べることが、容易に実行可能となっている。
【0052】
つまり、所望の平面度の平面を有する基台を準備し、基台の平面の上(鉛直方向の上)に支持ガラスSS1(SS2)を載置する。この支持ガラスSS1(SS2)はガラス製であるため、所望値の範囲内の平面度を有するように支持ガラスSS1(SS2)の表面SS−hおよび裏面SS−tを形成することができる。したがって、表面SS−hを下にして支持ガラスSS1(SS2)を基台平面上に載置した場合、比較的良好な平面度を有する裏面SS−tが上方を向いた状態で、支持ガラスSS1(SS2)が配置されることとなる。そして、この支持ガラス裏面SS−tの上に複数のレンズアレイLA1(LA2)を並べることで、レンズアレイLA1(LA2)を簡便に面一に並べることが可能となる。
【0053】
その他
以上のように、上記実施形態では、長尺レンズアレイL−LA1(L−LA2)が本発明の「露光ヘッド用レンズモジュール」に相当し、ラインヘッド29が本発明の「露光ヘッド」に相当する。また、感光体ドラム21が本発明の「像担持体」に相当する。また、レンズLS1(LS2)が本発明の「レンズ」に相当し、樹脂層PL1(PL2)が本発明の「樹脂層」に相当し、レンズアレイLA1(LA2)が本発明の「レンズアレイ」に相当し、支持ガラスSS1(SS2)が本発明の「支持基板」に相当している。また、光軸方向OAが本発明の「レンズの光軸方向」に相当している。
【0054】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したものに対して種々の変更を加えることが可能である。例えば、上記実施形態では、長尺レンズアレイL−LA1(L−LA2)を長手方向LGDの端部でスペーサーSP1(SP2)により支持していたが、長尺レンズアレイL−LA1(L−LA2)の支持態様はこれに限られない。
【0055】
また、上記実施形態では、長尺レンズアレイL−LA1、L−LA2とで、各部材(ガラス基板SB1、SB2や支持ガラスSS1、SS2等)の形状および寸法等を共通化していた。しかしながら、これらの部材の形状および寸法等を、長尺レンズアレイL−LA1、L−LA2とで異ならせても良い。
【0056】
また、上記実施形態では、レンズLS1(LS2)の光軸方向OAから見て樹脂層PL1(PL2)の両端が支持ガラスSS1(SS2)より突出していたが、樹脂層PL1(PL2)の両端が支持ガラスSS1(SS2)の両端の内側に収まるように構成しても良い。
【0057】
また、上記実施形態では、長尺レンズアレイL−LA1、L−LA2との両方に本発明を適用していたが、レンズの位置変動が特に問題となるいずれか一方の長尺レンズアレイにのみ本発明を適用しても良い。
【0058】
また、長尺レンズアレイの枚数についても変更可能であり、1枚だけを備えるようにしても良いし、光軸方向OAに3枚以上並べるようにしても良い。
【0059】
また、上記実施形態では、レンズアレイLA1(LA2)を支持するためにガラス製の平板(支持ガラスSS1(SS2))を用いたが、レンズアレイLA1(LA2)を支持する部材をガラス以外の材料で構成することもできる。
【0060】
また、レンズアレイLA1、LA2等の各部材の形状や寸法関係についても、種々の変更が可能である。
【0061】
また、上記実施形態の結像光学系は、反転像を形成するものであったが、正転像(つまり、反転していない像)を形成するものであっても良い。
【0062】
また、上記実施形態の結像光学系は、縮小像を形成するものであったが、等倍像あるいは拡大像を形成するものであっても良い。
【0063】
また、上記実施形態では、レンズLS1(LS2)が発光素子E側に凸となるようにレンズアレイLA1(LA2)が配置されていたが、逆に、レンズLS1(LS2)が感光体ドラム21側に凸となるようにレンズアレイLA1(LA2)が配置されても良い。
【0064】
また、上記実施形態では、各レンズアレイLA1、LA2において3行千鳥でレンズが並んでいたが、レンズの配置態様はこれに限られない。
【0065】
また、上記実施形態では、複数の発光素子グループEGは3行千鳥で配置されていたが、複数の発光素子グループEGの配置態様はこれに限られない。
【0066】
また、上記実施形態では、15個の発光素子Eから発光素子グループEGが構成されている。しかしながら、発光素子グループEGを構成する発光素子Eの個数はこれに限られない。
【0067】
また、上記実施形態では、発光素子グループEG内において、複数の発光素子Eが2行千鳥で配置されていたが、発光素子グループEG内での複数の発光素子Eの配置態様はこれに限られない。
【0068】
また、上記実施形態では、発光素子Eとしてボトムエミッション型の有機EL素子が用いられている。しかしながら、トップエミッション型の有機EL素子を発光素子Eとして用いても良く、あるいは有機EL素子以外のLED(Light Emitting Diode)等を発光素子Eとして用いても良い。
【実施例】
【0069】
次に本発明の実施例を示すが、本発明はもとより下記の実施例によって制限を受けるものではなく、前後記の趣旨に適合しうる範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
【0070】
図9は、本発明の効果を示すためのグラフである。同図の横軸は長尺レンズアレイL−LA2の各ポイントP1〜P6(図10)の幅方向LTDにおける位置を示しており、同図の縦軸は各ポイントP1〜P6(図10)の光軸方向OAにおける位置を示している。また、図10は、図9の横軸の各ポイントP1〜P6が対応する位置を示すための図であり、長尺レンズアレイの構成を模式的に示すA−A線断面を長手方向LGD(主走査方向MD)から見た場合に相当する。図10に示すように、ポイントP1、P6はガラス基板SB2の両端に位置している。また、ポイントP2、P5は、A−A線方向(方向Dlsc)に並ぶ3個のレンズLS2、LS2、LS2の両端に位置している。また、ポイントP3、P4は、A−A線方向(方向Dlsc)に並ぶ3個のレンズLS2、LS2、LS2それぞれの間に位置している。
【0071】
そして、図9では、幅Wsb>幅Wss(関係式1)を満たすように長尺レンズアレイL−LA2を構成した場合と、幅Wsb=幅Wss(関係式2)を満たすように長尺レンズアレイL−LA2を構成した場合とが示されている。より詳細には、図9では、ガラス基板SB2と支持ガラスSS2とを張り合わせてから周囲温度を変化させた場合における、関係式1を満たす長尺レンズアレイL−LA2の各ポイントP1〜P6の光軸方向位置(正方形のドット)と、関係式2を満たす長尺レンズアレイL−LA2の各ポイントP1〜P6の光軸方向位置(三角形のドット)とがプロットされている。なお、ガラス基板SB2と支持ガラスSS2とを張り合わせた時点においては、各ポイントP1〜P6は、関係式1を満たす長尺レンズアレイL−LA2と関係式2を満たす長尺レンズアレイL−LA2とで同じである(菱形のドット)。
【0072】
幅Wsb=幅Wss(関係式2)を満たす長尺レンズアレイL−LA2について、張り合わせ時点と温度変化後とを比較すると、ガラス基板SB2の両端のポイントP1、P6および3個のレンズLS2、LS2、LS2の両端のポイントP2、P5が、光軸方向OAに大きく位置変動していることが判る。これは、温度変化に起因して長尺レンズアレイL−LA2内部に発生した応力がレンズLS2、LS2、LS2の近傍に作用して、レンズLS2、LS2、LS2の近傍でレンズアレイLA2を撓ませたことによると考えられる。
【0073】
続いて、幅Wsb>幅Wss(関係式1)を満たす長尺レンズアレイL−LA2ついて、張り合わせ時点と温度変化後とを比較すると、ガラス基板SB2の両端のポイントP1、P6は光軸方向OAに大きく位置変動しているが、レンズLS2、LS2、LS2近傍のポイントP2〜P5の光軸方向への位置変動は抑制されているのが判る。これは、支持ガラスSS2の両端EP、EPそれぞれの近傍に応力を集中させることで、レンズLS2、LS2、LS2近傍に作用する応力を小さく抑え、その結果、レンズLS2、LS2、LS2近傍でのレンズアレイLA2の撓みが抑えられたことによるものと考えられる。
【符号の説明】
【0074】
29…ラインヘッド、 L−LA1、L−LA2…長尺レンズアレイ、 LA1、LA2…レンズアレイ、 LS1、LS2…レンズ、 SB1、SB2…ガラス基板、 SS1、SS2…支持ガラス、 LGD…長手方向、 LTD…幅方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂製のレンズが形成された樹脂層、および前記樹脂層が配設されたガラス基板を有するレンズアレイと、
前記樹脂層の反対側から前記ガラス基板を支持する光透過性の支持基板と、
を備え、
前記レンズの光軸方向から見て前記ガラス基板の端が前記支持基板より突出していることを特徴とする露光ヘッド。
【請求項2】
前記レンズの光軸方向から見て前記ガラス基板の両端が前記支持基板より突出する請求項1に記載の露光ヘッド。
【請求項3】
前記レンズの光軸方向から見て前記樹脂層の両端が前記支持基板より突出する請求項1または2に記載の露光ヘッド。
【請求項4】
前記支持基板はガラスである請求項1ないし3のいずれか一項に記載の露光ヘッド。
【請求項5】
樹脂製のレンズが形成された樹脂層、および前記樹脂層が配設されたガラス基板を有するレンズアレイと、
前記樹脂層の反対側から前記ガラス基板を支持する光透過性の支持基板と、
を備え、
前記レンズの光軸方向から見て前記ガラス基板が前記支持基板より突出していることを特徴とする露光ヘッド用レンズモジュール。
【請求項6】
樹脂製のレンズが形成された樹脂層をガラス基板に配設したレンズアレイ、前記樹脂層の反対側から前記ガラス基板を支持する光透過性の支持基板、および発光素子を有する露光ヘッドと、
前記発光素子が発光して前記レンズおよび前記支持基板を透過した光が照射される像担持体と、
を備え、
前記レンズの光軸方向から見て前記ガラス基板が前記支持基板より突出していることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2011−70099(P2011−70099A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−222927(P2009−222927)
【出願日】平成21年9月28日(2009.9.28)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】