説明

露光ヘッド、画像形成装置

【課題】発光素子と駆動回路を同一の基板に設けた構成において、配線スペースを確保しつつ露光ヘッドのスリム化を可能とする技術を提供する。
【解決手段】有機ELを光透過性の封止部材で封止するとともに、有機ELの一方側に配された第1の端子および他方側に配された第2の端子を有する第1の基板と、第1の端子あるいは第2の端子と有機ELの間で第1の基板に配されて、有機ELを駆動して発光させる駆動部と、第1の端子に接続される第3の端子および第2の端子に接続される第4の端子を有して第1の基板を支持するとともに、有機ELが発光して封止部材を通過した光が透過する第2の基板と、第2の基板の法線方向から見て第3の端子あるいは第4の端子と有機ELの間で第2の基板に配される配線と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、駆動部の駆動を受けて発光素子が射出した光によって露光を行なう露光ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、長手方向に配された複数の発光素子を基板に設けておき、各発光素子が射出する光によって露光動作を行なう露光ヘッドが記載されている。また、この露光ヘッドでは、トランジスター等で構成された駆動部が発光素子と同一の基板に設けられており、各発光素子は駆動部からの駆動を受けて発光する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−154528号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述のように駆動回路を設けた構成では、電源を駆動回路に供給する配線や、発光素子の駆動を制御するための制御信号を駆動回路に供給する配線を別途設ける必要がある。そして、これらの配線の配置スペースを発光素子や駆動部と同一の基板に確保するとなると、露光ヘッドの幅が広くなってしまうという問題があった。
【0005】
この発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、発光素子と駆動回路を同一の基板に設けた構成において、配線スペースを確保しつつ露光ヘッドのスリム化を可能とする技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明にかかる露光ヘッドは、上記目的を達成するために、第1の方向に配された有機ELを光透過性の封止部材で封止するとともに、第1の方向に直交もしくは略直交する第2の方向への有機ELの一方側に配された第1の端子および第2の方向への有機ELの他方側に配された第2の端子を有する第1の基板と、第1の端子あるいは第2の端子と有機ELの間で第1の基板に配されて、有機ELを駆動して発光させる駆動部と、第1の端子に接続される第3の端子および第3の端子の第2の方向側に配されて第2の端子に接続される第4の端子を有して第1の基板を支持するとともに、有機ELが発光して封止部材を通過した光が透過する第2の基板と、第2の基板の法線方向から見て第3の端子あるいは第4の端子と有機ELの間で第2の基板に配される配線と、を備えることを特徴としている。
【0007】
この発明にかかる画像形成装置は、上記目的を達成するために、第1の方向に配された有機ELを光透過性の封止部材で封止するとともに、第1の方向に直交もしくは略直交する第2の方向への有機ELの一方側に配された第1の端子および第2の方向への有機ELの他方側に配された第2の端子を有する第1の基板、第1の端子あるいは第2の端子と有機ELの間で第1の基板に配されて有機ELを駆動して発光させる駆動部、第1の端子に接続される第3の端子および第3の端子の第2の方向側に配されて第2の端子に接続される第4の端子を有して第1の基板を支持するとともに有機ELが発光して封止部材を通過した光が透過する第2の基板、および第2の基板の法線方向から見て第3の端子あるいは第4の端子と有機ELの間で第2の基板に配される配線を有する露光ヘッドと、露光ヘッドにより露光されて潜像が形成される潜像担持体と、を備えることを特徴としている。
【0008】
このように構成された発明(露光ヘッド、画像形成装置)では、第1の方向に有機EL(発光素子)が配された第1の基板と光透過性の第2の基板との2つの基板が設けられている。第1の基板には、第1の方向に直交もしくは略直交する第2の方向に有機ELを挟むようにして、第1および第2の端子が配されるとともに、第2の基板にも第2の方向に第3・第4の端子が配されている。そして、第1・第2の端子と第3・第4の端子とが相互に接続されることで、第1の基板が第2の基板に支持されるように構成されており、言い換えれば、露光ヘッドはこれら第1・第2の基板を重ねたような構成を具備している。
【0009】
また、この発明では、発光素子を駆動して発光させる駆動部は、第1あるいは第2の端子と有機ELとの間で第1の基板に配される一方、配線は第2の基板の法線方向から見て第3の端子あるいは第4の端子と有機ELの間で第2の基板に配される。そして、この発明では、このような第1・第2の基板を重ねるように構成することで、実質的に駆動部と配線とを重ねて配することが可能となっている。その結果、第1・第2の基板の幅を抑えて、露光ヘッドのスリム化を図ることができる。
【0010】
なお、第2の基板に配される上記配線の態様や用途は種々の例が考えられる。したがって、配線は第3の端子あるいは第4の端子に電気的に接続されるように構成しても良い。また、配線は、駆動部による有機ELの発光を制御する信号が流れる制御信号ラインであってもよく、あるいは配線は、駆動部へ電源を供給する電源ラインであっても良い。
【0011】
また、各端子の接続方法も種々の例が考えられるが、例えば、第1の端子と第3の端子はバンプにより接続され、第2の端子と第4の端子はバンプにより接続されるように構成しても良い。
【0012】
ところで、上述のように、発光素子が配された第1の基板に第2の基板を重ねたような構成では、発光素子が射出した光は封止部材を通過した後に第2の基板を透過して露光に供する。このとき、封止部材と第2の基板の間に空気層等の隙間があると、第2の基板表面で多くの光が反射されて、露光に供する光の量が低下するおそれがある。そこで、封止部材と第2の基板の間に絶縁性の透明樹脂が充填されるように構成しても良い。これによって、第2の基板表面での光の反射を抑制して、露光に供する光量を確保することが容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明を適用可能なラインヘッドの一例を示す図。
【図2】図1のラインヘッドにおける発光素子の配置を示す図。
【図3】光軸方向から見たチップの部分平面図。
【図4】長手方向LGDから見たチップの幅方向断面を部分的に示す図。
【図5】ヘッド基板に実装された状態のシリコン基板を示す幅方向部分断面図。
【図6】ヘッド基板裏面における各配線の配置形態の一例を示す平面図。
【図7】ラインヘッドを適用可能な画像形成装置の一例を示す図。
【図8】図7の装置の電気的構成を示すブロック図。
【図9】ヘッド基板裏面における各配線の配置形態の変形例を示す平面図。
【図10】ヘッド基板裏面における各配線の配置形態の変形例を示す平面図。
【図11】ヘッド基板裏面における各配線の配置形態の変形例を示す平面図。
【図12】ヘッド基板裏面における各配線の配置形態の変形例を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、本発明を適用可能なラインヘッドの一例を示す図であり、特にラインヘッド29の断面(図2に示すA−A線断面)を長手方向LGDから見た場合を部分的に示している。図1の破線で示すように、ラインヘッド29は、チップCPに形成された発光素子からの光を結像光学系LS1、LS2で結像して、感光体ドラム表面等の被露光面ESにスポットSPを形成するものである。また、図2は、図1のラインヘッドにおける発光素子の配置を示す図であり、特に発光素子Eが形成されたチップCPを支持するヘッド基板293の構成を光軸方向Doaから見た場合を部分的に示している。なお、図1および後に説明する図では、ガラス等の光透過製材料で構成された部材の断面に対してドットのハッチングが適宜施されている。また、図2では、ヘッド基板293に配置された部材以外の部材(LS1、LS2、D1)が一点・二点鎖線で示されているが、これは発光素子Eと各部材(LS1、LS2、D1)との対応関係を理解しやすくするために記載したものである。
【0015】
また、ラインヘッド29は、長手方向LGDに長尺で幅方向LTDに短尺な全体構成を備える。そこで、図1および後に説明する図面では必要に応じて、ラインヘッド29の長手方向LGDおよび幅方向LTDを示す。また、結像光学系LS1、LS2の光軸方向Doaについても適宜示すものとする。ここで、光軸方向Doaは、結像光学系LS1、LS2の光軸OAに平行であって、チップCPに形成された発光素子が光を射出する方向とする。なお、これらの方向LGD、LTD、Doaは互いに直交もしくは略直交している。また、以下では必要に応じて、光軸方向Doaの矢印側を「表」あるいは「上」と表現し、光軸方向Doaの矢印と反対側を「裏」「下」あるいは「底」と表現する。
【0016】
また、後述するとおり、同ラインヘッド29を画像形成装置に適用するにあたっては、ラインヘッド29は、主走査方向MDに直交もしくは略直交する副走査方向SDに移動する被露光面ES(感光体ドラム表面)に対して露光を行なうものであり、しかも、被露光面ESの主走査方向MDはラインヘッド29の長手方向LGDに平行もしくは略平行であり、被露光面ESの副走査方向SDはラインヘッド29の幅方向LTDに平行もしくは略平行である。そこで、必要に応じて、長手方向LGD・幅方向LTDと併せて、主走査方向MD・副走査方向SDも図示することとする。
【0017】
ラインヘッド29は、チップCPを支持するヘッド基板293や、レンズLS1、LS2が形成されたレンズアレイLA1、LA2を具備する。チップCPでは、発光素子ピッチPeで長手方向LGDに2行千鳥状に並ぶ複数(16個)の発光素子Eがグループ化されて発光素子グループEGが構成されるとともに、複数(5個)の発光素子グループEGが長手方向LGDに所定ピッチ(Dg×2)で直線的に並んでいる。また、複数のチップCPが長手方向LGDに2行千鳥状に並んで、ガラス製のヘッド基板293の裏面293−tにフェースダウン実装されている。その結果、ヘッド基板293の裏面293−tに向いた複数の発光素子グループEGが長手方向LGDにピッチDgで2行千鳥状かつ離散的に並んでおり、発光素子グループEGの各発光素子Eからの光はヘッド基板293を透過して、ヘッド基板表面293−hから射出される。
【0018】
ヘッド基板293の表面293−hには、幅方向LTDの両側にスペーサーAS1が配置されており、これらスペーサーAS1にレンズアレイLA1が幅方向LTDに架設されている。このレンズアレイLA1の裏面には、発光素子グループEGの配置に対応して、複数のレンズLS1が長手方向LGDに2行千鳥で並んでいる。これにより、1個の発光素子グループEGに対して、1枚のレンズLS1が対向することとなる。ちなみに、レンズLS1は、発光素子グループEGに対して凸の形状を有し、樹脂で形成される。
【0019】
さらに、レンズアレイLA1の表面には、幅方向LTDの両側にスペーサーAS2が配置されており、これらスペーサーAS2にレンズアレイLA2が幅方向LTDに架設されている。このレンズアレイLA2の裏面には、発光素子グループEGの配置に対応して、複数のレンズLS2が長手方向LGDに2行千鳥で並んでいる。これにより、1個の発光素子グループEGに対して、1枚のレンズLS2が対向することとなる。ちなみに、レンズLS2は、発光素子グループEGに対して凸の形状を有し、樹脂で形成される。
【0020】
また、ラインヘッド29は、ヘッド基板293とレンズアレイLA1との間に遮光部材295を具備する。この遮光部材295は、光軸方向Doaに並ぶ5枚の遮光平板FP1〜FP5を有している。より具体的には、遮光部材295では、幅方向LTDに間隔を空けてヘッド基板表面293−hに配置された2つのスペーサーが設けられており、これらのスペーサーの上に遮光平板FP1が架設されている。さらに、遮光部材295では、幅方向LTDに間隔を空けて遮光平板FP1表面に配置された2つのスペーサーが設けられ、これらのスペーサーの上に遮光平板FP2が架設されるとともに、同様に他の遮光平板FP3〜FP5もスペーサーを介して積み上げられている。
【0021】
遮光平板FP1には、レンズLS1、LS2の光軸OAを中心とする円形状を有して、光軸方向Doaに貫通する導光孔D1が、発光素子グループEG毎に形成されている。こうして、遮光平板FP1には、発光素子グループEGの配置に対応して、複数の導光孔D1が長手方向LGDに2行千鳥で並ぶ。また、同様に、その他の遮光平板FP2〜FP5それぞれに対しても、発光素子グループEGの配置に対応して、導光孔D2〜D5が長手方向LGDに2行千鳥で並ぶ。なお、ヘッド基板293に最近接の導光孔D1の径は、その他の導光孔D2〜D5の径よりも小さい。
【0022】
こうして、光軸方向Doaに一列に並ぶ導光孔D1〜D5およびレンズLS1、LS2が、各発光素子グループEGに対向する。したがって、発光素子グループEGの各発光素子Eが射出した光のうち、導光孔D1〜D5を通過した光がレンズLS1、LS2に入射して結像される。なお、結像光学系LS1、LS2は反転・縮小の結像倍率を有する(つまり、結像倍率は負の値で絶対値が1未満である)。
【0023】
以上が、ラインヘッド29の概略構成である。続いて、図3および図4を用いて、ラインヘッド29が備えるチップCPの詳細構成について説明する。ここで、図3は、光軸方向から見たチップの部分平面図である。また、図4は、長手方向LGDから見たチップの幅方向断面を部分的に示す図である。チップCPは、長手方向LGDに長く幅方向LTDに短い長方形状を有するシリコン基板SSを備えている。このシリコン基板SSに対しては、発光素子Eとしての有機EL、発光素子Eを駆動する駆動回路DC等が、半導体プロセスによって集積形成されている。
【0024】
より具体的には、シリコン基板SSでは、5組の発光素子グループEGが長手方向LGDに並べて形成されている。これら発光素子グループEGの各発光素子Eは、いわゆるトップエミッション型の有機ELであり、等しいもしくは略等しい発光スペクトルで発光する。そして、シリコン基板SSには、有機ELである発光素子Eを水分あるいは酸素(水分等)から遮断するために、発光素子Eを封止するとともに光透過性の封止薄膜SLが形成される。このとき、封止薄膜SLとシリコン基板SSとの間からの水分の浸入等を防ぐため、発光素子Eの周囲には一定の余裕を持って封止薄膜SLを形成することが好ましい。具体的には、0.5[mm]〜2[mm]程度の余裕が適当である。なお、本実施形態のように、複数の発光素子グループEGを離散的に並べることで、チップCPの端から発光素子グループEGまでの距離を確保することができ、発光素子グループEGからチップCPの端の間に十分な余裕を持って封止薄膜SLを設けることができる。ただし、端子Taに対しては封止薄膜SLが覆わないようにして、端子Taの電気的接続が確保されている。
【0025】
この封止薄膜SLは、ガスバリアー性を有する無機材料の強固な膜であることが好適である。具体的には、窒化ケイ素(Si、屈折率:2.00)、二酸化ケイ素(SiO、屈折率:1.54)、酸化アルミニウム(アルミナ、AL、屈折率:1.77)などを用いることができる。ここで、屈折率の値は波長650[nm]に対する値である。これらの材料は薄膜でも十分に水分等を遮断するが、薄くし過ぎると欠陥が発生しやすくなり、厚くしすぎるとクラックが入りやすくなるため、数十[nm]〜数百[nm]の厚みが好適である。封止薄膜SLは、プラズマコーティングやスパッタなどで形成されるが、有機ELは熱に弱いので、温度上昇の少ない成膜プロセスを用いることが好適である。
【0026】
また、シリコン基板SSでは、発光素子Eに重なるように配置された駆動回路DCが、各発光素子Eの下層に形成されている(すなわち、発光素子Eと駆動回路DCが積層されている)。言い換えれば、駆動回路DCを発光素子ピッチPeで長手方向LGDに2行千鳥状に並べたものが、発光素子グループEGの下層に形成されている。こうして、幅方向LTDに長い短冊状の駆動回路DCが、各発光素子Eから幅方向LTDの外側に延設される。このように、トップエミッション型の有機ELを発光素子Eとして用いることで、駆動回路DCの真上に発光素子Eを形成することができる。そのため、駆動回路DCの配置領域を確保するために各発光素子Eの間隔を空ける必要が無く、各発光素子Eを高密度に配置することが可能となる。なお、この駆動回路DCは、発光素子Eを駆動するトランジスターや、トランジスターの入力端子にかかる電圧を保持するコンデンサーで構成されたものである。
【0027】
また、発光素子グループEGの幅方向LTD両側それぞれでは、複数の端子Taが100[μm]程度のピッチで長手方向LGDに直線的に並んでいる。このとき、幅方向LTDの端に設けられた端子Taと発光素子グループEGの間に各駆動回路DCが位置するように、複数の端子Taは設けられている。こうして、幅方向LTDにおいて、発光素子グループEGとこれの両側に設けられた駆動回路DCを挟むようにして、端子Taが配置されている。このように、駆動回路DCの配置スペースを確保するために、発光素子グループEGと端子Taとは幅方向LTDに0.5[mm]以上の間隔を空けて配置されている。なお、各端子Taは、半導体プロセスによってシリコン基板SSに集積形成された接続線を介して、駆動回路DCに接続されている。
【0028】
以上のように構成されたシリコン基板SSは、光透過性のヘッド基板293(ガラス基板)の裏面293−tにフリップチップ実装される(図5)。図5は、ヘッド基板に実装された状態のシリコン基板を示す幅方向部分断面図である。同図が示すように、シリコン基板SSは、発光素子Eが形成された表面をヘッド基板293の裏面293−tに向けた状態で、ヘッド基板293の裏面293−tにフェースダウン実装される。
【0029】
より詳しくは、ヘッド基板293の裏面293−tには、端子Taに一対一で対応して複数の端子Tbが形成されている。そして、シリコン基板SSの端子Taに設けられた金等の金属製のバンプがヘッド基板裏面293−tの端子Tbに圧着される。こうして、シリコン基板SSの端子Taとヘッド基板裏面293−tの端子Tbが電気的に接続されるとともに、シリコン基板SSがヘッド基板293によって支持されることとなる。ちなみに、ヘッド基板裏面293−tの端子Tbの表面には金メッキを施しておくことが好ましい。
【0030】
このように、ヘッド基板293にシリコン基板SSを接合することで、ヘッド基板293によってシリコン基板SSの変形が抑えられ、シリコン基板SSの変形によって発光素子Eの封止が破れることを抑制できる。特に、ヘッド基板293にシリコン基板SSの変形抑制機能を担わせることで、当該機能のためにカバーガラス等の部材を別途設ける必要がなく、ラインヘッド29全体の薄型化を図ることができる。なお、ヘッド基板293にシリコン基板SSを接合した構成では、ヘッド基板293を基準にしてシリコン基板SSの発光素子Eを位置決めすることができるが、この利点を積極的に活かすにあたってはヘッド基板293の厚みを0.3[mm]〜1.5[mm]として、ヘッド基板293の平面性を確保することが好適である。また、線膨張係数が3〜8×10−6と小さいガラスによりヘッド基板293を構成したことで、レンズアレイLA1、LA2と同様の線膨張率となり、温度変化による相対位置変化が抑制され、温度に依らず安定した露光が可能となっている。
【0031】
また、シリコン基板SSとヘッド基板293の間には、光透過性の透明樹脂TP(充填部材)が充填されている。こうして、シリコン基板SSとヘッド基板293の間から空気が排除されている。このとき、透明樹脂TPは、シリコン基板SS表面の封止薄膜SLを覆うように設けられている。さらに、透明樹脂TPは、シリコン基板SSとヘッド基板293の間に充填される他、幅方向LTDに隣接する2つのシリコン基板SSの間の隙間Δcpにも充填されている。また、シリコン基板SSの端からはみ出した透明樹脂TPは、シリコン基板SSの側方から裏面にまで回り込んで設けられている。そして、この透明樹脂TPの屈折率は空気の屈折率より大きく、封止薄膜SLの屈折率以下となっている。
【0032】
このような透明樹脂TPとしては、一般的な紫外線(UV)硬化樹脂を用いることができる他、嫌気性接着剤、2液混合接着剤あるいは熱硬化性接着剤を用いることができる。紫外線硬化樹脂以外の接着剤を用いた場合、透明樹脂TPを硬化させるために照射される紫外線によって有機ELが劣化するおそれがないという利点がある。また、透明樹脂TPの材料としては、エポキシ樹脂(屈折率1.55〜1.6)、アクリル樹脂(屈折率1.49)、シリコン樹脂(1.4〜1.45)が好適である。特に、屈折率の高い窒化ケイ素(Si)を用いる場合は、エポキシ樹脂のうちでも高い屈折率の材料(屈折率1.6〜1.65)を透明樹脂TPに用いると良い。
【0033】
これらのような樹脂の充填方法としては、一般にフリップチップ実装で用いられるアンダーフィルと同様の方法を用いることができる。つまり、シリコン基板SSのバンプBPとヘッド基板293の電極を圧着した後に、シリコン基板SSとヘッド基板293の隙間から表面張力を利用して透明樹脂TPを流し込む。この際、透明樹脂TPの粘性を低くしておくことで、シリコン基板SSの表面に透明樹脂TPを速やかに広げることができる。また、透明樹脂TPの粘度を1000[mPa・s]以下、好ましくは100[mPa・s]以下とすることで、気泡の巻き込みを抑えつつ透明樹脂TPを充填することができる。なお、透明樹脂TPが充填される隙間は、バンプBPの高さ、あるいはそれが圧着されて潰れた高さで決まる。一般的な金のスタッドバンプの高さは50[μm]前後で、それを圧着、圧接した場合は、半分程度の高さまで潰れるので、20[μm]程度の隙間は確保されることになる。したがって、粘度の低い樹脂であれば十分に浸透することができる。また、この実施形態では、ヘッド基板293は透明であるため、透明樹脂TPを浸透させた後にヘッド基板293を介して光を照射して、透明樹脂TPを硬化させることができる。
【0034】
このとき、充填する透明樹脂TPは、使用する波長に応じた透明性を有していれば良い。例えば電子写真で用いられる感光体は、赤から近赤外の波長(600〜800[nm])の光に対する感度が高いので、この実施形態で使用する透明樹脂TPはこの波長に対する透明性があればよく、目視で見て若干黄色く着色されていても問題は無い。また、樹脂の内部透過率は透過厚みが10[mm]あたりの値を示すものであるが、この実施形態では、透明樹脂TPの厚みが薄いので、内部透過率として示されている値が低くても実際には問題が少ない。一般に、吸収率は厚みの指数関数に比例するため、例えば10[mm]厚での内部透過率が10[%]であっても、厚みが50[μm]では透過率は約99[%]になる。このように透過ロスが1[%]であれば問題は少ない。したがって、通常のエポキシ樹脂のように目視で黄色く見えても必要な波長での透過率は10[%]以上は確実にあるため問題は無い。
【0035】
以上のように構成しているため、発光素子Eが射出した光は、封止薄膜SL、透明樹脂TPおよびヘッド基板293をこの順番で透過した後に、露光に供する。そして、この実施形態では、空気よりも屈折率の大きい透明樹脂TPがシリコン基板SSとヘッド基板293の間に充填されているため、ヘッド基板293の裏面293−tで反射する光量を抑制して、光の利用効率の向上を図ることが可能となっている。また、ヘッド基板293の裏面293−tで反射した光が迷光となって、ゴーストを引き起こすといった問題も同時に抑制される。さらには、シリコン基板SSとヘッド基板293の間に透明樹脂TPを充填することで、シリコン基板SSの発光素子Eの直上に異物が侵入することを防止でき、発光素子Eが射出した光が異物によって散乱されて、光の利用効率が低下するといった問題の発生が抑制されている。
【0036】
ところで、発光素子を適宜発光させるように駆動回路DCを動作させるにあたっては、駆動回路DCに電源を供給し、さらには、駆動回路DCによる発光素子Eの発光を制御する制御信号を駆動回路DCに供給する必要がある。そこで、この実施形態では、これらの配線をヘッド基板293の裏面293−tに設けている。続いてはこれら各配線の配置について説明をする。
【0037】
図6は、ヘッド基板裏面における各配線の配置形態の一例を示す平面図である。同図では、ヘッド基板裏面293−tの法線方向(光軸方向Doaに一致)からの平面視が示されるとともに、ヘッド基板裏面293−tの各配線とチップCPとの対応関係を理解しやすくするために、チップCPおよびこれの構成部材(発光素子E)が破線で併記されている。なお、チップCPの端子Taはヘッド基板裏面293−tの端子Tbと重なるため、端子Taは表記せずに端子Tbの表記で代用している。
【0038】
さらに、長手方向LGDに直線的に並ぶ端子Tbから成る端子行のうち、1行目の端子行と発光素子グループEGとの間のスペースに符号A1が付され、2行目の端子行と発光素子グループEGとの間のスペースに符号A2が付され、3行目の端子行と発光素子グループEGとの間のスペースに符号A3が付され、4行目の端子行と発光素子グループEGとの間のスペースに符号A4が付される。なお、かかる表記は以後の図面においても適宜用いるものとする。
【0039】
上述のとおり、チップCPにおいては、端子Taと発光素子グループEGの間には駆動回路DCが形成されている。したがって、ヘッド基板裏面293−tにおける各スペースA1〜A4は、駆動回路DCの真上あるいは略真上に位置することとなる。そして、以下に示す配線態様の例は、この駆動回路DCの上に設けられたスペースA1〜A4を有効活用することで、ラインヘッド29のスリム化を図るものである。詳しくは次のとおりである。
【0040】
ヘッド基板裏面293−tには、制御信号が流れるバスラインLb1、Lb2、電源ラインVEL1、VLE2およびグランドラインGND等が設けられている。また、複数のチップCPが長手方向LGDに2行千鳥で並んでいることに対応して、図6に示す例では、1行目を構成する各チップCPから成る行と2行目を構成する各チップCPから成る行とで、バスラインおよび電源それぞれの配線系統が分けられている。
【0041】
具体的には、1行目の各チップCPに対しては、スペースA2(1行目のチップCPでの端子Taと発光素子グループEGの間)を主として通過するバスラインLb1が設けられており、これら各チップCPの端子TaはバスラインLb1により相互に接続されている。さらに、これら1行目の各チップCPに対しては、スペースA1(1行目のチップCPでの端子Taと発光素子グループEGの間)を主として通過する電源ラインVEL1が設けられており、これら各チップCPの端子Taは共通の電源ラインVEL1に接続されている。
【0042】
一方、2行目の各チップCPに対しては、スペースA3(2行目のチップCPでの端子Taと発光素子グループEGの間)を主として通過するバスラインLb2が設けられており、これら各チップCPの端子TaはバスラインLb1により相互に接続されている。さらに、これら2行目の各チップCPに対しては、スペースA4(2行目のチップCPでの端子Taと発光素子グループEGの間)を主として通過する電源ラインVEL2が設けられており、これら各チップCPの端子Taは共通の電源ラインVEL2に接続されている。
【0043】
なお、グランドラインGNDについては、1行目および2行目のチップCPで共通化されている。具体的には、1行目のチップCPと2行目のチップCPの間を通過するようにグランドラインGNDは配置されており、1行目および2行目のチップCPの端子TaはこのグランドラインGNDに接続されている。
【0044】
以上のようにこの実施形態では、長手方向LGDに発光素子Eが形成されたチップCP(第1の基板)と光透過性のヘッド基板293(第2の基板)との2つの基板が設けられている。チップCPには、幅方向LTDに発光素子グループEGを挟むようにして端子Taが配されるとともに、ヘッド基板293にも幅方向LTDに端子Tbが配されている。そして、端子Taと端子Tbとが相互に接続されることで、チップCPがヘッド基板293に支持されるように構成されており、言い換えれば、ラインヘッド29はこれらチップCPとヘッド基板293を重ねたような構成を具備している。
【0045】
また、この実施形態では、発光素子Eを駆動して発光させる駆動回路DCは、端子Taと発光素子グループEGとの間でチップCPに形成される。これに対して、配線Lb1、Lb2、VEL1、VEL2は、図6の平面視において端子Tbと発光素子グループEGの間でヘッド基板293に配される。そして、この実施形態では、このようなチップCPとヘッド基板293を重ねるように構成することで、実質的に駆動回路DCと配線Lb1、Lb2、VEL1、VEL2を重ねて配することが可能となっている。その結果、チップCP・ヘッド基板293の幅を抑えて、ラインヘッド29のスリム化を図ることができる。
【0046】
また、この実施形態では、端子Tbと発光素子グループEGとの間のスペースA1〜A4や、幅方向LTDに隣接する端子Tbの間のスペース(グランドラインGNDが配置されたスペース)を確保することで、多数の配線を交差することなく引き回すことが可能となる。これによって、ヘッド基板293(ガラス基板)に2層以上の配線層やジャンパー配線を設ける必要がなく、ヘッド基板293上での配線形成が容易となっている。
【0047】
さらに言えば、この実施形態では、端子Tbと発光素子グループEGとの間のスペースA1〜A4や、幅方向LTDに隣接する端子Tbの間のスペース(グランドラインGNDが配置されたスペース)を確保することで、1本以上の多数の配線を通すことが可能となり、チップCP(シリコン基板)相互間、あるいはチップCPと外部の回路を接続する多数の配線を通すことが容易となる。また、同じ理由で太い配線パターンを通すことも可能となり、電源ラインVEL1、VEL2やグランドラインGNDの電気抵抗を低く抑えることができる。特に、有機ELを発光素子Eとして用いたラインヘッド29では、ディスプレイ等の他のデバイスに比べて、発光素子Eに多くの電流を流す必要があるので、上記実施形態は当該ラインヘッド29に適したものである。
【0048】
また、チップCPの大きさに対して入出力の端子の数が少ないことから、端子Tbの間隔を広く確保することができる。したがって、長手方向LGDに隣接する端子Tbの間を通る配線を容易に形成可能となる。
【0049】
ところで、上述したとおりこの実施形態では、複数のチップCPが長手方向LGDに2行千鳥状に並んでおり、しかも、端子および配線のレイアウトはこれら各行で同一にすることが可能となっている。その結果、端子および配線のレイアウトを各行で共通化できるため、部品を共通化してコストダウンを図ることが可能となっている。
【0050】
また、上記実施形態では、チップCPの幅方向LTDの外側の領域を使用して、各チップCPと外部の回路を接続する配線パターンLs1、Ls2が配置可能となっている。なお、配線パターンLs1、Ls2は、例えばチップセレクト信号のように個別のチップに対してアクセスする必要がある信号の伝達に用いることができる。
【0051】
画像形成装置の構成
続いて、上記実施形態で説明したラインヘッド29を適用可能な画像形成装置の一例について説明する。図7は上述したラインヘッドを適用可能な画像形成装置の一例を示す図である。また、図8は図7の装置の電気的構成を示すブロック図である。この画像形成装置1は、互いに異なる色の画像を形成する4個の画像形成ステーション2Y(イエロー用)、2M(マゼンタ用)、2C(シアン用)および2K(ブラック用)を備えている。そして、画像形成装置1は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)およびブラック(K)の4色のトナーを重ね合わせてカラー画像を形成するカラーモードと、ブラック(K)のトナーのみを用いてモノクロ画像を形成するモノクロモードとを選択的に実行可能となっている。
【0052】
この画像形成装置では、ホストコンピューターなどの外部装置から画像形成指令がCPUやメモリーなどを有するメインコントローラーMCに与えられると、このメインコントローラーMCはエンジンコントローラーECに制御信号を与えるとともに画像形成指令に対応するビデオデータVDをヘッドコントローラーHCに与える。このとき、メインコントローラーMCは、ヘッドコントローラーHCから水平リクエスト信号HREQを受け取る毎に、主走査方向MDに1ライン分のビデオデータVDをヘッドコントローラーHCに与える。また、ヘッドコントローラーHCは、メインコントローラーMCからのビデオデータVDとエンジンコントローラーECからの垂直同期信号Vsyncおよびパラメーター値とに基づき、各色の画像形成ステーション2Y、2M、2C、2Kそれぞれのラインヘッド29を制御する。これによって、エンジン部ENGが所定の画像形成動作を実行し、複写紙、転写紙、用紙およびOHP用透明シートなどのシート状の記録媒体RMに画像形成指令に対応する画像を形成する。
【0053】
各画像形成ステーション2Y、2M、2Cおよび2Kは、トナー色を除けばいずれも同じ構造および機能を有している。そこで、図7では、図を見やすくするために、画像形成ステーション2Cを構成する各部品にのみ符号を付し、他の画像形成ステーション2Y、2Mおよび2Kに付すべき符号については記載を省略する。また、以下の説明では、図7に付した符号を参照して画像形成ステーション2Cの構造および動作を説明するが、他の画像形成ステーション2Y、2Mおよび2Kの構造および動作も、トナー色が異なることを除けば同じである。
【0054】
画像形成ステーション2Cには、シアン色のトナー像がその表面に形成される感光体ドラム21が設けられている。感光体ドラム21は、その回転軸が主走査方向MD(図7の紙面に対して垂直な方向)に平行もしくは略平行となるように配置されており、図7中矢印D21の方向に所定速度で回転駆動される。これにより、感光体ドラム21の表面が、主走査方向MDに直交もしくは略直交する副走査方向SDに移動することとなる。
【0055】
感光体ドラム21の周囲には、感光体ドラム21表面を所定の電位に帯電させるコロナ帯電器である帯電器22と、感光体ドラム21表面を画像信号に応じて露光することで静電潜像を形成するラインヘッド29と、該静電潜像をトナー像として顕像化する現像器24と、第1スクイーズ部25と、第2スクイーズ部26と、転写後の感光体ドラム21の表面をクリーニングするクリーニングユニットとが、それぞれこれらの順に感光体ドラム21の回転方向D21(図7では、時計回り)に沿って配設されている。
【0056】
この実施形態では、帯電器22は2つのコロナ帯電器221、222で構成されており、感光体ドラム21の回転方向D21においてコロナ帯電器221がコロナ帯電器222に対して上流側に配置されており、2つのコロナ帯電器221、222により2段階で帯電されるように構成されている。各コロナ帯電器221、222は同一構成であり、感光体ドラム21の表面に接触しないものであり、スコロトロン帯電器である。
【0057】
そして、コロナ帯電器221、222により帯電された感光体ドラム21表面に対して、ラインヘッド29がビデオデータVDに基づいて静電潜像を形成する。つまり、ヘッドコントローラーHCがラインヘッド29にビデオデータVDを送信すると、このビデオデータVDに応じた駆動信号の供給を受けて、駆動回路DCが各発光素子Eを発光させる。これにより、感光体ドラム21表面が露光されて、画像信号に対応した静電潜像が形成される。なお、ラインヘッド29の具体的構成は、既に述べたとおりである。
【0058】
こうして形成された静電潜像に対して現像器24からトナーが付与されて、静電潜像がトナーにより現像される。この画像形成装置1の現像器24は、現像ローラー241を有している。この現像ローラー241は円筒状の部材であり、鉄等金属製の内芯の外周部に、ポリウレタンゴム、シリコンゴム、NBR、PFAチューブなどの弾性層を設けたものである。この現像ローラー241は現像用モーターに接続され、図7紙面において反時計回りに回転駆動されて感光体ドラム21に対してウィズ回転する。また、この現像ローラー241は図示を省略する現像バイアス発生部(定電圧電源)と電気的に接続されており、適当なタイミングで現像バイアスが印加されるように構成されている。
【0059】
また、この現像ローラー241に対して液体現像剤を供給するためにアニロックスローラーが設けられており、アニロックスローラーを介して現像剤貯留部から現像ローラー241へ液体現像剤が供給される。このようにアニロックスローラーは現像ローラー241に対して液体現像剤を供給する機能を有する。このアニロックスローラーは、液体現像剤を担持し易いように表面に微細且つ一様に彫刻された螺旋溝などによる凹部パターンが形成されたローラーである。現像ローラー241と同様に、金属の芯金にウレタン、NBRなどのゴム層を巻き付けたものや、PFAチューブを被せたものなどが用いられる。また、アニロックスローラーは現像用モーターに接続されて回転する。
【0060】
現像剤貯留部に貯留される液体現像剤は、従来一般的に使用されている、Isopar(商標:エクソン)を液体キャリアとした低濃度(1〜2wt%)かつ低粘度の常温で揮発性を有する揮発性液体現像剤ではなく、高濃度かつ高粘度の、常温で不揮発性樹脂中へ顔料などの着色剤を分散させた平均粒径1μmの固形子を、有機溶媒、シリコンオイル、鉱物油又は食用油等の液体溶媒中へ分散剤とともに添加し、トナー固形分濃度を約20%とした高粘度(30〜10000mPa・s程度)の液体現像剤が用いられる。
【0061】
上記のようにして、液体現像剤が供給された現像ローラー241はアニロックスローラーと同時に回転すると共に、感光体ドラム21の表面とは同方向に移動するように回転して現像ローラー241の表面に担持された液体現像剤を現像位置に搬送する。なお、トナー像を形成するため、現像ローラー241の回転方向は、その表面が感光体ドラム21の表面と同方向に移動するようにウィズ回転する必要があるが、アニロックスローラーに対しては、逆方向、或いは、同方向、どちらに移動する構成であってもよい。
【0062】
また、現像器24では、この現像ローラー241の回転方向において現像位置の上流側直前にトナー圧縮コロナ発生器242が現像ローラー241に対向して配置されている。このトナー圧縮コロナ発生器242は現像ローラー241の表面の帯電バイアスを増加させる電界印加手段であり、定電流電源で構成されたトナーチャージ発生部(図示省略)と電気的に接続されている。そして、トナー圧縮コロナ発生器242に対してトナーチャージバイアスが与えられると、現像ローラー241によって搬送される液体現像剤のトナーに対して、このトナー圧縮コロナ発生器242と近接する位置で電界が印加され、帯電、圧縮が施される。なお、このトナー帯電、圧縮には、電解印加によるコロナ放電に代えて、接触して帯電させるコンパクションローラーを用いてもよい。
【0063】
また、このように構成された現像器24は感光体ドラム21上の潜像を現像する現像位置と感光体ドラム21から離れた退避位置との間で往復可能となっている。したがって、現像器24が退避位置に移動して位置決めされると、その間、シアン用の画像形成ステーション2Cでは、感光体ドラム21への新たな液体現像剤の供給は停止される。
【0064】
感光体ドラム21の回転方向D21において現像位置の下流側に、第1スクイーズ部25が配置されるとともに、さらに第1スクイーズ部25の下流側に第2スクイーズ部26が配置されている。これらのスクイーズ部25、26にはスクイーズローラー251、261がそれぞれ設けられている。そして、スクイーズローラー251が第1スクイーズ位置で感光体ドラム21の表面と当接しながらメインモーターからの回転駆動力を受けて回転してトナー像の余剰現像剤を除去する。また、感光体ドラム21の回転方向D21において第1スクイーズ位置の下流側の第2スクイーズ位置でスクイーズローラー261が感光体ドラム21の表面と当接しながらメインモーターからの回転駆動力を受けて回転してトナー像の余剰液体キャリアやカブリトナーを除去する。また、本実施形態ではスクイーズ効率を高めるために、スクイーズローラー251、261に対して図示省略するスクイーズバイアス発生部(定電圧電源)が電気的に接続されており、適当なタイミングでスクイーズバイアスが印加されるように構成されている。なお、本実施形態では2つのスクイーズ部25、26を設けているが、スクイーズ部の個数や配置などはこれに限定されるものではなく、例えば1個のスクイーズ部を配置してもよい。
【0065】
これらのスクイーズ位置を通過してきたトナー像は転写部3の中間転写体31に1次転写される。この中間転写体31は、その表面、より詳しくはその外周面にトナー像を一時的に担持可能な像担持体としての無端状ベルトであり、複数のローラー32、33、34、35および36に掛け渡されている。これらのうちローラー32はメインモーターに連結されて、中間転写体31を図7の矢印方向D31に周回駆動するベルト駆動ローラーとして機能している。なお、本実施形態では、記録紙RMとの密着性を高めて記録紙RMへのトナー像の転写性を高めるために、中間転写体31の表面に弾性層を設け、当該弾性層の表面にトナー像が担持されるように構成されている。
【0066】
ここで、中間転写体31を掛け渡されたローラー32ないし36のうち、メインモーターにより駆動されるのは上記したベルト駆動ローラー32のみであり、他のローラー33ないし36は駆動源を有しない従動ローラーである。また、ベルト駆動ローラー32は、ベルト移動方向D31において一次転写位置TR1の下流側、かつ後述する二次転写位置TR2の上流側で中間転写体31を巻き掛けている。
【0067】
転写部3は一次転写バックアップローラー37を有しており、一次転写バックアップローラー37は中間転写体31を挟んで感光体ドラム21と対向して配設されている。感光体ドラム21と中間転写体31とが当接する一次転写位置TR1では、感光体ドラム21の外周面が中間転写体31と当接して一次転写ニップ部NP1cを形成している。そして、感光体ドラム21上のトナー像が中間転写体31の外周面(一次転写位置TR1において下面)に転写される。こうして画像形成ステーション2Cにより形成されたシアン色のトナー像が中間転写体31に転写される。同様に、他の画像形成ステーション2Y、2Mおよび2Kでもトナー像の転写が実行されることで、各色のトナー像が中間転写体31上に順次重ね合わされ、フルカラーのトナー像が形成される。一方、モノクロトナー像が形成される際には、ブラック色に対応した画像形成ステーション2Kのみにおいて、中間転写体31へのトナー像転写が行われる。
【0068】
こうして中間転写体31に転写されたトナー像は、ベルト駆動ローラー32への巻き掛け位置を経由して二次転写位置TR2に搬送される。この二次転写位置TR2では、中間転写体31を巻き掛けられたローラー34に対して二次転写部4の二次転写ローラー42が中間転写体31を挟んで対向配置されており、中間転写体31表面と転写ローラー42表面とが互いに当接して二次転写ニップ部NP2を形成している。すなわち、ローラー34は二次転写バックアップローラーとして機能している。バックアップローラー34の回転軸は、例えばバネのような弾性部材である押圧部345によって弾性的に、かつ中間転写体31に対して近接・離間移動自在に支持されている。
【0069】
二次転写位置TR2においては、中間転写体31上に形成された単色あるいは複数色のトナー像が、一対のゲートローラー51から搬送経路PTに沿って搬送される記録媒体RMに転写される。また、トナー像が二次転写された記録媒体RMは、二次転写ローラー42から搬送経路PT上に設けられた定着ユニット7へ送出される。定着ユニット7では、記録媒体RMに転写されたトナー像に熱や圧力などが加えられて記録媒体RMへのトナー像の定着が行われる。こうして、記録媒体RMに所望の画像を形成することができる。
【0070】
その他
以上のように、上記実施形態では、ラインヘッド29が本発明の「露光ヘッド」に相当し、感光体ドラム21が本発明の「潜像担持体」に相当する。また、長手方向LGDが本発明の「第1の方向」に相当し、幅方向LTDが本発明の「第2の方向」に相当し、チップCPが本発明の「第1の基板」に相当し、ヘッド基板293が本発明の「第2の基板」に相当し、端子Taが本発明の「第1の端子」「第2の端子」に相当し、端子Tbが本発明の「第3の端子」「第4の端子」に相当し、封止薄膜SLが本発明の「封止部材」に相当し、バスラインLb1、Lb2あるいは電源ラインVEL1、VEL2が本発明の「配線」に相当する。
【0071】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したものに対して種々の変更を加えることが可能である。したがって、ヘッド基板裏面293−tでの配線の配置態様についても、次の図9〜図12に示すように種々の変形が可能である。ここで、図9〜図12は、ヘッド基板裏面における各配線の配置形態の変形例を示す平面図である。これらの図での表記方法は図6での表記方法と同様である。
【0072】
図6に示した例では、2行千鳥配列のうち1行目を構成する各チップCPから成る行と2行目を構成する各チップCPから成る行とで、バスラインおよび電源それぞれの配線系統が分けられていた。一方、図9に示す変形例では、バスラインは各行で共通の一系統のみが設けられている。具体的には、バスラインLbは、1行目のチップCPと2行目のチップCPの間を通過するように設けられており、各チップCP(の端子Ta)はこのバスラインLbによって並列接続されている。なお、電源については、図6と同様に電源VEL1、VEL2の2系統が設けられており、それぞれスペースA1、A4に主として配されている。また、図9に示す例では、グランドラインGNDについても、1行目を構成する各チップCPから成る行と2行目を構成する各チップCPから成る行とで2系統(GND1、GND2)設けられており、それぞれスペースA2、A3に主として配されている。また、図9に示す例では、端子Tbの間隔を広く確保することができるという本件実施形態の特徴を活かして、長手方向LGDに隣接する端子Tbの間に複数の配線が形成されている。
【0073】
また、図10に示すように、長手方向LGDに隣接するチップCP同士をカスケード接続ラインでカスケード接続して、このカスケード接続ラインを介してチップCP間で制御信号を転送することもできる。具体的には、2行千鳥配列のうち1行目を構成する各チップCPから成る行と2行目を構成する各チップCPから成る行とで、カスケード接続ラインは分けられている。つまり、1行目の各チップCPに対しては、スペースA2(1行目のチップCPでの端子Taと発光素子グループEGの間)を主として通過するカスケード接続ラインLc1が設けられており、隣接する各チップCPの端子Taがカスケード接続ラインLc1によりカスケード接続される。一方、2行目の各チップCPに対しては、スペースA3(2行目のチップCPでの端子Taと発光素子グループEGの間)を主として通過するカスケード接続ラインLc2が設けられており、これら各チップCPの端子Taはカスケード接続ラインLc2により相互に接続されている。なお、図10での電源ラインおよびグランドラインの配線態様は図6と同様である。
【0074】
また、図11に示すように、カスケード接続ラインのほかにさらにバスラインを設けても良い。つまり、図11に示す変形例では、1行目の各チップCPに対してバスラインLb1が設けられるとともに、2行目の各チップCPに対してバスラインLb2が設けられている。より具体的には、1行目の各チップCPに対しては、スペースA1およびA2(いずれも1行目のチップCPでの端子Taと発光素子グループEGの間)を主として通過するバスラインLb1が設けられており、これら各チップCPの端子TaにバスラインLb1が接続されている。一方、2行目の各チップCPに対しては、スペースA3およびA4(いずれも2行目のチップCPでの端子Taと発光素子グループEGの間)を主として通過するバスラインLb2が設けられており、これら各チップCPの端子TaにバスラインLb2が接続されている。
【0075】
上記の図10および図11では、1行目のチップCPと2行目のチップCPとでカスケード接続ラインの系統を分けていたが、図12に示すように全てのチップを1系統のカスケード接続ラインLcで接続しても良い。具体的には図12では、2行千鳥で長手方向LGDに並ぶチップCPが1系統のカスケード接続ラインLcで順番に接続されている。このとき、カスケード接続ラインLcを配するにあたっては、スペースA3(端子Taと発光素子グループEGの間)が有効に活用されている。また、図12に示す例では、端子Tbの間隔を広く確保することができるという本件実施形態の特徴を活かして、長手方向LGDに隣接する端子Tbの間に複数の配線が形成されている。
【0076】
以上のように、図9〜図12に示す変形例においても、配線を通すにあたって、駆動回路DC上のスペースA1〜A4が活用されている。そのため、チップCP・ヘッド基板293の幅を抑えて、ラインヘッド29のスリム化を図ることが可能となっている。
【0077】
また、図9〜図12に示す変形例においても、複数のチップCPが長手方向LGDに2行千鳥状に並んでおり、しかも、端子および配線のレイアウトはこれら各行で同一にすることが可能となっている。その結果、端子および配線のレイアウトを各行で共通化できるため、部品を共通化してコストダウンを図ることが可能となっている。
【0078】
また、図9〜図12に示す変形例においても、端子Tbと発光素子グループEGとの間のスペースA1〜A4や、幅方向LTDに隣接する端子Tbの間のスペースを確保することで、多数の配線を交差することなく引き回すことが可能となる。これによって、ヘッド基板293(ガラス基板)に2層以上の配線層やジャンパー配線を設ける必要がなく、ヘッド基板293上での配線形成が容易となる他、チップCP(シリコン基板)相互間、あるいはチップCPと外部の回路を接続する多数の配線を通すことが容易となる。また、同じ理由で太い配線パターンを通すことも可能となり、電源ラインVEL1、VEL2やグランドラインGNDの電気抵抗を低く抑えることができる。また、チップCPの大きさに対して入出力の端子の数が少ないことから、端子Tbの間隔を広く確保することができる。したがって、長手方向LGDに隣接する端子Tbの間を通る配線を容易に形成可能となる。また、上記実施形態では、チップCPの幅方向LTDの外側の領域を使用して、各チップCPと外部の回路を接続する配線パターンLs1、Ls2が配置可能となっている。
【0079】
なお、バスライン、電源ラインあるいはグランドラインについて、さらなる変形を加えることも可能である。具体的には、ラインヘッド29の長手方向LGDにおいて複数形等に分割して、これらのラインを配置しても良い。このように構成した場合、電源ラインやグランドラインについては電圧降下を防止することができ、バスラインについては信号の遅延などを防止することができる。特に、ガラス上の金属配線は、一般のプリント基板の銅箔に比較して抵抗が大きいので、このように分割した構成が有用となる。
【0080】
また、発光素子グループEGやレンズLS1、LS2の配置態様も上記に限られず、3行千鳥状等のその他の配置態様を採用可能である。また、発光素子グループEGを構成する発光素子Eの個数や配置態様についても適宜変更できる。
【符号の説明】
【0081】
21…感光体ドラム、 29…ラインヘッド、 293…ヘッド基板、 295…遮光部材、 SS…シリコン基板、 CP…チップ、 SL…封止薄膜、 E…発光素子(有機EL)、 Ta…端子、 Tb…端子、 Lb1…バスライン、 Lb2…バスライン、 Lc1…カスケード接続ライン、 Lc2…カスケード接続ライン、 VEL1…電源ライン、 VEL2…電源ライン、 LGD…長手方向、 LTD…幅方向、 Doa…光軸方向(ヘッド基板の法線方向)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の方向に配された有機ELを光透過性の封止部材で封止するとともに、前記第1の方向に直交もしくは略直交する第2の方向への前記有機ELの一方側に配された第1の端子および前記第2の方向への前記有機ELの他方側に配された第2の端子を有する第1の基板と、
前記第1の端子あるいは前記第2の端子と前記有機ELの間で前記第1の基板に配されて、前記有機ELを駆動して発光させる駆動部と、
前記第1の端子に接続される第3の端子および前記第3の端子の前記第2の方向側に配されて前記第2の端子に接続される第4の端子を有して前記第1の基板を支持するとともに、前記有機ELが発光して前記封止部材を通過した光が透過する第2の基板と、
前記第2の基板の法線方向から見て前記第3の端子あるいは前記第4の端子と前記有機ELの間で前記第2の基板に配される配線と、
を備えることを特徴とする露光ヘッド。
【請求項2】
前記配線は前記第3の端子あるいは前記第4の端子に電気的に接続される請求項1に記載の露光ヘッド。
【請求項3】
前記配線は、前記駆動部による前記有機ELの発光を制御する信号が流れる制御信号ラインである請求項2に記載の露光ヘッド。
【請求項4】
前記配線は、前記駆動部へ電源を供給する電源ラインである請求項2に記載の露光ヘッド。
【請求項5】
前記第1の端子と前記第3の端子はバンプにより接続され、前記第2の端子と前記第4の端子はバンプにより接続される請求項1ないし4のいずれか一項に記載の露光ヘッド。
【請求項6】
前記封止部材と前記第2の基板の間に絶縁性の透明樹脂が充填される請求項1ないし5のいずれか一項に記載の露光ヘッド。
【請求項7】
第1の方向に配された有機ELを光透過性の封止部材で封止するとともに、前記第1の方向に直交もしくは略直交する第2の方向への前記有機ELの一方側に配された第1の端子および前記第2の方向への前記有機ELの他方側に配された第2の端子を有する第1の基板、前記第1の端子あるいは前記第2の端子と前記有機ELの間で前記第1の基板に配されて前記有機ELを駆動して発光させる駆動部、前記第1の端子に接続される第3の端子および前記第3の端子の前記第2の方向側に配されて前記第2の端子に接続される第4の端子を有して前記第1の基板を支持するとともに前記有機ELが発光して前記封止部材を通過した光が透過する第2の基板、および前記第2の基板の法線方向から見て前記第3の端子あるいは前記第4の端子と前記有機ELの間で前記第2の基板に配される配線を有する露光ヘッドと、
前記露光ヘッドにより露光されて潜像が形成される潜像担持体と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−111134(P2012−111134A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−262200(P2010−262200)
【出願日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】