説明

露光装置、画像形成装置、及びプログラム

【課題】発光素子間の光量のばらつきを抑制する露光装置、画像形成装置、及びプログラムを提供する。
【解決手段】特定の使用条件下で発光させた場合の相互間の光量のばらつきが補正された複数のLEDを異なる使用条件下で発光させた際のLED間の光量のばらつきが所定範囲内に収まるようにLEDの各々の光量を補正するための出荷後光量むら補正値を記憶したEEPROM112と、特定の使用条件とは異なる使用条件に相当する使用条件を満足した場合に、EEPROMに記憶されている出荷後光量むら補正値に従って発光対象とされたLEDの光量を補正する補正値演算部112と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、露光装置、画像形成装置、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複数の発光素子が配列される発光アレイと、入力される画像データに応じ、発光アレイにおける複数の発光素子に対する点灯信号を発生する点灯信号発生手段と、発光アレイにおける複数の発光素子を順次点灯させる順次点灯手段と、を含み、点灯信号発生手段が、N番目(Nは1以上の整数)に点灯する発光素子の状態に、電源電圧の回復までにかかる条件を加味して、N+1番目に発光素子を点灯するための点灯信号を発生することを特徴とする発光装置が開示されている。
【0003】
特許文献2には、複数の発光素子が列状に配列された複数の発光素子アレイ部材と、複数の発光素子アレイ部材各々に配列された複数の発光素子各々を順次点灯させるための信号を配列方向に所定の転送周期にて転送する駆動手段と、を含み、駆動手段が、信号を転送する際の転送周期が変更可能に構成されたことを特徴とする露光装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−53145号公報
【特許文献2】特開2008−93896号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、発光素子間の光量のばらつきを抑制する、露光装置、画像形成装置、及びプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の露光装置を、特定の使用条件下で発光させた場合の相互間の光量差が所定範囲内になるように補正された複数の発光素子と、種類以外が前記特定の使用条件とは異なる使用条件下で前記複数の発光素子を発光させた際の発光素子間の光量差が所定範囲内になるように該複数の発光素子の各々の光量を補正するための補正用情報を記憶した記憶手段と、前記異なる使用条件に相当する使用条件を満足した場合に、前記記憶手段に記憶されている前記補正用情報に従って前記複数の発光素子のうちの発光対象とされた発光素子の光量を補正する補正手段と、を含んで構成した。
【0007】
請求項1に記載の露光装置を、請求項2に記載の発明のように、前記異なる使用条件が、使用先での予め定められた時期の温度、前記発光素子を発光させることによって得られる光量として予め設定された光量、及び前記発光素子の発光間隔の少なくとも1つを含むものとしても良い。
【0008】
請求項2に記載の露光装置を、請求項3に記載の発明のように、前記異なる使用条件が、前記複数の発光素子のうちの実際に発光される発光素子の個数を特定する個数特定情報を更に含むものとしても良い。
【0009】
請求項1に記載の露光装置を、請求項4に記載の発明のように、前記異なる使用条件を、前記複数の発光素子のうちの実際に発光される発光素子の個数としたものとしても良い。
【0010】
上記目的を達成するために、請求項5に記載の露光装置を、特定の使用条件下で発光させた場合の相互間の光量差が所定範囲内になるように補正された複数の発光素子と、種類以外が前記特定の使用条件とは異なる複数の使用条件の各々の下で前記複数の発光素子を発光させた際の発光素子間の光量差が所定範囲内になるように該複数の発光素子の各々の光量を補正するための補正用情報を前記複数の使用条件の各々に対応させて記憶した記憶手段と、前記複数の使用条件の何れかに相当する使用条件を満足した場合に、前記記憶手段に記憶されている補正用情報のうち、現時点で満足している使用条件に相当する使用条件に対応する補正用情報に従って前記複数の発光素子のうちの発光対象とされた発光素子の光量を補正する補正手段と、を含んで構成した。
【0011】
請求項5に記載の露光装置を、請求項6に記載の発明のように、前記複数の使用条件の各々が、使用先での予め定められた時期の温度、前記発光素子を発光させることによって得られる光量として予め設定された光量、及び前記発光素子の発光間隔の少なくとも1つを含むものとしても良い。
【0012】
請求項6に記載の露光装置を、請求項7に記載の発明のように、前記複数の使用条件の各々が、前記複数の発光素子のうちの実際に発光される発光素子の個数を特定する個数特定情報を更に含むものとしても良い。
【0013】
請求項5に記載の露光装置を、請求項8に記載の発明のように、前記複数の使用条件の各々を、前記複数の発光素子のうちの実際に発光される発光素子の個数としたものとしても良い。
【0014】
請求項1〜請求項8の何れか1項に記載の露光装置を、請求項9に記載の発明のように、各々、前記複数の発光素子が所定方向に配列され、かつ前記所定方向に沿って直列的に配置された複数の発光素子群を含み、前記複数の発光素子を、前記所定方向の一端から他端にかけて順に発光させるものとしても良い。
【0015】
上記目的を達成するために、請求項10に記載の画像形成装置を、請求項1〜請求項9の何れか1項に記載の露光装置と、前記露光装置の前記複数の発光素子から発光された光が感光体の表面に照射されることによって該感光体の表面に形成された静電潜像を現像剤により現像像として現像し、現像して得た現像像を記録媒体に転写することにより画像を形成する画像形成手段と、を含んで構成した。
【0016】
上記目的を達成するために、請求項11に記載のプログラムを、特定の使用条件下で発光させた場合の相互間の光量差が所定範囲内になるように補正された複数の発光素子、及び種類以外が前記特定の使用条件とは異なる使用条件下で前記複数の発光素子を発光させた際の発光素子間の光量差が所定範囲内になるように該複数の発光素子の各々の光量を補正するための補正用情報を記憶した記憶手段を含む露光装置を制御するコンピュータを、前記異なる使用条件に相当する使用条件を満足した場合に、前記記憶手段に記憶されている前記補正用情報に従って前記複数の発光素子のうちの発光対象とされた発光素子の光量を補正する補正手段として機能させるためのものとした。
【0017】
上記目的を達成するために、請求項12に記載のプログラムを、特定の使用条件下で発光させた場合の相互間の光量差が所定範囲内になるように補正された複数の発光素子、及び種類以外が前記特定の使用条件とは異なる複数の使用条件の各々の下で前記複数の発光素子を発光させた際の発光素子間の光量差が所定範囲内になるように該複数の発光素子の各々の光量を補正するための補正用情報を前記複数の使用条件の各々に対応させて記憶した記憶手段を含む露光装置を制御するコンピュータを、前記複数の使用条件の何れかに相当する使用条件を満足した場合に、前記記憶手段に記憶されている補正用情報のうち、現時点で満足している使用条件に相当する使用条件に対応する補正用情報に従って前記複数の発光素子のうちの発光対象とされた発光素子の光量を補正する補正手段として機能させるためのものとした。
【発明の効果】
【0018】
請求項1、請求項5、及び請求項10〜12に係る発明によれば、種類以外が特定の使用条件とは異なる使用条件に相当する使用条件を満足した場合に、記憶手段に記憶されている補正用情報に従って発光素子の光量を補正する構成を有しない場合に比べ、発光素子間の光量のばらつきが抑制される、という効果が得られる。
【0019】
請求項2及び請求項6に係る発明によれば、特定の使用条件とは異なる使用条件を、使用先で予め定められた時期に測定された温度、発光素子を発光させることによって得られる光量として予め設定された光量、及び発光素子の発光間隔の少なくとも1つを含む条件としない場合に比べ、発光素子間の光量のばらつきが容易かつ高精度に抑制される、という効果が得られる。
【0020】
請求項3、請求項4、請求項7、及び請求項8に係る発明によれば、種類以外が特定の使用条件とは異なる使用条件を、複数の発光素子のうちの実際に発光される発光素子の個数としない場合に比べ、発光素子間の光量のばらつきが容易かつ高精度に抑制される、という効果が得られる。
【0021】
請求項9に係る発明によれば、各々、複数の発光素子が所定方向に配列され、かつ所定方向に沿って直列的に配置された複数の発光素子群を含み、複数の発光素子を、所定方向の一端から他端にかけて順に発光させる構成を有しない場合に比べ、発光素子間の光量のばらつきが容易かつ高精度に抑制される、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】第1の実施の形態に係る画像形成装置の構成の一例を示す概略構成図である。
【図2】第1の実施の形態に係るLEDプリントヘッド(LPH)の構成の一例を示す概略構成図である。
【図3】第1の実施の形態に係るLED回路基板の構成の一例を示す概略構成図である。
【図4】第1の実施の形態に係るSLEDの回路構成の一例を示す概略構成図である。
【図5】第1の実施の形態に係る信号生成回路の構成の一例を示すブロック図である。
【図6】第1の実施の形態に係る基準クロック発生部の構成の一例を示すブロック図である。
【図7】第1の実施の形態に係る点灯時間制御・駆動部の構成の一例を示すブロック図である。
【図8】第1の実施の形態に係るLED回路基板上に形成された信号生成回路とSLEDとの間の配線の一例示す概略構成図である。
【図9】第1の実施の形態に係るLEDチップの構成の一例を示す概略構成図である。
【図10】第1の実施の形態に係るSLEDの端部に含まれるLEDに印加される電圧の大きさの変位の一例を示す波形図である。
【図11】第1の実施の形態に係るSLEDの端部に含まれるLEDに印加される電圧の大きさの変位であって、印字速度が175mm/secの場合及び225mm/secの場合の電圧の大きさの変位の一例を示す波形図である。
【図12】第1の実施の形態に係るSLEDの端部に含まれるLEDの光量変位であって、印字速度が121mm/secの場合及び225mm/secの場合の光量変位の一例を示す波形図である。
【図13】図12に示す2つの波形の差分(光量差)の一例を示す波形図である。
【図14】第1の実施の形態に係るSLEDの端部に含まれるLEDの光量変位であって、設定光量が0.6mJの場合及び1.8mJの場合の光量変位の一例を示す波形図である。
【図15】図14に示す2つの波形の差分(光量差)の一例を示す波形図である。
【図16】第1の実施の形態に係るSLEDの端部に含まれるLEDの光量変位の差分(光量差)であって、測定温度が14℃の場合の光量変位と46℃の場合の光量変位との差分の一例を示す波形図である。
【図17】第1の実施の形態に係る光量むら補正データベースの一例を示す模式図である。
【図18】第1の実施の形態に係るSLEDの端部に含まれるLEDに印加される電圧の大きさの変位であって、印字速度が175mm/secの場合及び225mm/secの場合の電圧の大きさの1周期分の変位の一例を示す波形図である。
【図19】図18に示す2つの波形の差分を光量変動率に換算して得た波形の一例を示す波形図である。
【図20】第1の実施の形態に係る第1の補正値演算処理プログラムの処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【図21】第1の実施の形態に係る第2の補正値演算処理プログラムの処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【図22】第1の実施の形態に係る第3の補正値演算処理プログラムの処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【図23】第1の実施の形態に係る第4の補正値演算処理プログラムの処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【図24】第1の実施の形態に係る信号生成回路及びレベルシフト回路から出力される駆動信号の一例を示すタイムチャートである。
【図25】印字速度が100mm/secの場合の点灯信号ΦI、転送信号CK1、転送信号CK2が副走査方向のライン毎に出力されるタイミングの一例と、その際に3端子レギュレータから供給される電圧の変化の一例をそれぞれ示したタイムチャートである。
【図26】印字速度が150mm/secの場合の点灯信号ΦI、転送信号CK1、転送信号CK2が副走査方向のライン毎に出力されるタイミングの一例と、その際に3端子レギュレータから供給される電圧の変化の一例をそれぞれ示したタイムチャートである。
【図27】第2の実施の形態に係る光量むら補正データベースの一例を示す模式図である。
【図28】第2の実施の形態に係る補正値演算処理プログラムの処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための実施の形態の一例について詳細に説明する。
【0024】
[第1の実施の形態]
図1は本第1の実施の形態に係る露光装置の一例であるプリントヘッドが用いられた画像形成装置の全体構成を示した図である。図1に示す画像形成装置は、所謂タンデム型のデジタルカラープリンタであり、各色の画像データに対応して画像形成を行う画像形成部としての画像形成プロセス部10と、画像形成装置の動作状態を示す各種情報を取得すると共に画像形成装置の動作を制御する制御部30と、を備えている。また、図1に示す画像形成装置は、例えばパーソナルコンピュータ(PC)2や画像読取装置3等の外部装置に接続され、これらから受信した画像データに対して所定の画像処理を施す画像処理部40を備えている。
【0025】
画像形成プロセス部10は、一定の間隔を置いて並列的に配置される4つの画像形成ユニット11Y,11M,11C,11K(以下、総称して単に「画像形成ユニット11」とも記す)を備えている。各画像形成ユニット11は、静電潜像を形成してトナー像を保持する像保持体としての感光体ドラム12、感光体ドラム12の表面を所定電位で満遍なく帯電する帯電器13、帯電器13によって帯電された感光体ドラム12を画像データに基づいて露光する露光装置の一例としてのLEDプリントヘッド(LPH)14、感光体ドラム12上に形成された静電潜像を現像する現像器15、及び転写後の感光体ドラム12の表面を清掃するクリーナ16を備えている。また、各画像形成ユニット11は、それぞれがイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)の現像剤の一例であるトナーにより現像像の一例であるトナー像を形成する。更に、各画像形成ユニット11は、各々の特定領域(例えばLPH14から所定距離内の領域)の温度を測定する温度センサ17を備えており、温度センサ17によって測定された温度は制御部30によって取得される。
【0026】
画像形成プロセス部10は、各画像形成ユニット11の感光体ドラム12にて形成された各色のトナー像が多重転写される中間転写ベルト21、各画像形成ユニット11の各色トナー像を中間転写ベルト21に順次転写(一次転写)させる一次転写ロール22、中間転写ベルト21上に転写された重畳トナー像を記録材(記録紙)である用紙Pに一括転写(二次転写)させる二次転写ロール23、及び二次転写された画像を用紙P上に定着させる定着器25を備えている。
【0027】
本第1の実施の形態の画像形成装置では、画像形成プロセス部10は、制御部30から供給された同期信号等の制御信号に基づいて画像形成動作を行う。その際に、PC2や画像読取装置3から入力された画像データは、画像処理部40によって画像処理が施され、インターフェースを介して各画像形成ユニット11に供給される。そして、例えばイエローの画像形成ユニット11Yでは、帯電器13により所定電位で満遍なく帯電された感光体ドラム12の表面が、画像処理部40から得られた画像データに基づいて発光するLPH14により露光されて、感光体ドラム12上に静電潜像が形成される。感光体ドラム12上に形成された静電潜像は現像器15により現像され、感光体ドラム12上にはイエロー(Y)のトナー像が形成される。同様に、画像形成ユニット11M,11C,11Kにおいても、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)の各色トナー像が形成される。
【0028】
各画像形成ユニット11で形成された各色トナー像は、図1の矢印方向に回動する中間転写ベルト21上に、一次転写ロール22により順次静電吸引され、中間転写ベルト21上に重畳されたトナー像(重畳トナー像)が形成される。重畳トナー像は、中間転写ベルト21の移動に伴って二次転写ロール23が配設された領域(二次転写部)に搬送される。重畳トナー像が二次転写部に搬送されると、重畳トナー像が二次転写部に搬送されるタイミングに合わせて用紙Pが二次転写部に供給される。そして、二次転写部にて二次転写ロール23により形成される転写電界により、重畳トナー像は搬送されてきた用紙P上に一括して静電転写される。
【0029】
その後、重畳トナー像が静電転写された用紙Pは、中間転写ベルト21から剥離され、搬送ベルト24により定着器25まで搬送される。定着器25に搬送された用紙P上の未定着トナー像は、定着器25によって熱及び圧力による定着処理を受けることで用紙P上に定着される。そして定着画像が形成された用紙Pは、画像形成装置の排出部に設けられた排紙載置部(図示省略)に搬送される。
【0030】
図2は、露光装置であるLEDプリントヘッド(LPH)14の構成を示した図である。図2に示したように、LPH14は、支持体としてのハウジング61と、自己走査型LEDアレイ(SLED)63及びSLED63を駆動する信号生成回路100(図3参照)等を搭載するLED回路基板62と、SLED63からの光を感光体ドラム12表面に結像させる光学部材であるロッドレンズアレイ64と、ロッドレンズアレイ64を支持するとともにSLED63を外部から遮蔽するホルダー65と、及びハウジング61をロッドレンズアレイ64方向に加圧する板バネ66と、を備えている。
【0031】
ハウジング61は、アルミニウム、SUS等のブロックまたは板金で形成され、LED回路基板62を支持している。また、ホルダー65は、ハウジング61及びロッドレンズアレイ64を支持し、SLED63の発光点とロッドレンズアレイ64の焦点とが一致するように設定している。さらに、ホルダー65はSLED63を密閉するように構成されている。これにより、SLED63に外部からゴミが付着することを防いでいる。一方、板バネ66は、SLED63及びロッドレンズアレイ64の位置関係を保持するように、ハウジング61を介してLED回路基板62をロッドレンズアレイ64方向に加圧している。
【0032】
このように構成されたLPH14は、調整ネジ(図示省略)によってロッドレンズアレイ64の光軸方向に移動自在に構成され、ロッドレンズアレイ64の結像位置(焦点面)が感光体ドラム12の表面上に位置するように調整されている。
【0033】
LED回路基板62には、図3(LED回路基板62の平面図)に示したように、例えば58個の発光素子アレイ部材の一例としてのSLEDチップ(CHIP1〜CHIP58)を含んで構成されたSLED63が、感光体ドラム12の軸線方向と平行になるように精度良く直線状に配置されている。この場合、各SLEDチップ(CHIP1〜CHIP58)に上記軸線方向に沿って配置された発光素子(LED)の配列(LEDアレイ)の端部境界において、各LEDアレイがSLEDチップ同士の連結部で連続的に配列されて隣接することで直列的に配置されるように、SLEDチップは交互に千鳥状に配置されている。
【0034】
また、LED回路基板62は、SLED63を駆動する信号(点灯信号)を生成する信号生成回路100及びレベルシフト回路104と、所定の電圧を出力する3端子レギュレータ101と、SLED63の光量むら補正値等を記憶するEEPROM102と、制御部30及び画像処理部40と信号の送受信を行うハーネス103と、を備えている。
【0035】
次に、LED回路基板62に設けられたSLED63について説明する。図4は、SLED63の回路構成の一例を説明する図である。図4に示したSLED63は、一例として解像度(発光素子の配置密度)600dpi(dot per inch)用のSLEDチップを示しており、1SLEDチップ当たり256個の発光点(LED)が配置されている。
【0036】
本第1の実施の形態のSLED63は、レベルシフト回路104を介して信号生成回路100に接続されている。レベルシフト回路104は、抵抗R1BとコンデンサC1、及び抵抗R2BとコンデンサC2がそれぞれ並列に配置された構成を有し、それぞれの一端がSLED63の入力端子に接続され、他端が信号生成回路100の出力端子に接続されている。そして、信号生成回路100から出力される転送信号CK1R,CK1C及び転送信号CK2R,CK2Cに基づいて、転送信号CK1及び転送信号CK2をSLED63に出力するように構成されている。
【0037】
なお、本第1の実施の形態のSLED63には、58個のSLEDチップが直列に配列されているが、図4では、1つのSLEDチップとそれに接続される信号ラインだけを示している。
【0038】
図4に示した本第1の実施の形態のSLEDチップは、スイッチ素子としての128個のサイリスタS1〜S128、発光素子としての128個のLED L1〜L128、128個のダイオードD1〜D128、128個の抵抗R1〜R128、さらには信号ラインΦ1,Φ2に過剰な電流が流れるのを防止する転送電流制限抵抗R1A、R2Aを各々有する一対のユニットがチップ枠の長手方向(上記軸線方向)に沿って直線状に配置されて構成されている(図9参照)。なお、以下では、錯綜を回避するために、SLEDチップに含まれる上記一対のユニットの一方のユニットを取り上げて説明する。
【0039】
図4に示したSLEDチップでは、各サイリスタS1〜S128のアノード端子(入力端)A1〜A128は電源ライン105に接続されている。この電源ライン105には3端子レギュレータ101の出力電圧VDD(VDD=+3.5V)が供給される。
【0040】
奇数番目のサイリスタS1、S3、…、S127のカソード端子(出力端)K1、K3、…、K127には、信号生成回路100及びレベルシフト回路104からの転送信号CK1が転送電流制限抵抗R1Aを介して送信される。
【0041】
また、偶数番目のサイリスタS2、S4、…、S128のカソード端子(出力端)K2、K4、…、K128には、信号生成回路100及びレベルシフト回路104からの転送信号CK2が転送電流制限抵抗R2Aを介して送信される。
【0042】
一方、各サイリスタS1〜S128のゲート端子(制御端)G1〜G128は、各サイリスタS1〜S128に対応して設けられた抵抗R1〜R128を介して電源ライン106に各々接続されている。なお、電源ライン106は接地(GND)されている。
【0043】
また、各サイリスタS1〜S128のゲート端子G1〜G128と、各サイリスタS1〜S128に対応して設けられたLED L1〜L128のゲート端子とは各々接続される。
【0044】
さらに、各サイリスタS1〜S128のゲート端子G1〜G128には、ダイオードD1〜D128のカソード端子が接続されている。そして、サイリスタS1〜S127のゲート端子G1〜G127には、次段のダイオードD2〜D128のアノード端子に各々接続されている。すなわち、各ダイオードD1〜D128はゲート端子G1〜G127を挟んで直列接続されている。
【0045】
ダイオードD1のアノード端子は転送電流制限抵抗R2A及びレベルシフト回路104を介して信号生成回路100に接続され、転送信号CK2が送信される。また、LED L1〜L128のカソード端子は、信号生成回路100に接続されて、点灯信号ΦIが送信される。
【0046】
さらには、SLED63には、サイリスタS1〜S128及びダイオードD1〜D128を覆うように遮光マスク50を配置している。これは、画像形成動作中に、オン状態にあって電流が流れている状態におけるサイリスタS1〜S128や、電流が流れている状態におけるダイオードD1〜D128からの発光を遮断し、不要光が感光体ドラム12を露光することを抑制するために設けられている。
【0047】
次に、LED回路基板62に設けられた信号生成回路100について説明する。図5は、信号生成回路100の構成の一例を示すブロック図である。信号生成回路100は、画像データ展開部110、補正値演算部112、タイミング信号発生部114、基準クロック発生部116、及び点灯時間制御・駆動部118(118−1〜118−58)を含んで構成されている。
【0048】
画像データ展開部110には、画像処理部40から画像データがシリアルに供給される。画像データ展開部110は、供給された画像データを例えば1〜128ドット目、129〜256ドット目、…、7297〜7424ドット目といったように、各SLEDチップ(CHIP1〜CHIP58)毎に送信する画像データに分割する等の処理を行う。そして、分割した画像データを点灯時間制御・駆動部118−1〜118−58に出力する。
【0049】
補正値演算部112には、画像処理部40から画像データがシリアルに供給される。補正値演算部112は、供給された画像データに基づいて、SLED63内の各LED毎の出射光量のバラツキ(光量のむら)を補正するために用いられる光量むら補正値を演算するものであり、タイミング信号発生部114からのデータ読み出し信号に同期して、補正値を点灯時間制御・駆動部118−1〜118−58に出力する。この光量むら補正値は、例えば、2ドット分のLED毎に設定されたプロファイル形式のデータとされている。なお、これに限らず、1ドット分のLED毎に設定されたプロファイル形式のデータであってもよく、この場合は例えば8ビット(0〜255)のデータとして形成される。
【0050】
EEPROM102には、LPH14に含まれるLED間の光量のむらが予め定められた誤差内(例えば誤差1%)となるように、出荷前に画像形成装置を実際に起動させてLED間の光量のむらを補正する際の使用条件(出荷前使用条件)を想定して予め算出された光量むら補正値であって、出荷前に画像形成装置を実際に起動させてLED間の光量のむらを補正する際に適用される光量むら補正値(出荷前光量むら補正値)が格納されている。この出荷前光量むら補正値はSLEDチップ単位のプロファイル形式で格納されている。また、EEPROM102には、各々種類以外が出荷前使用条件とは異なる複数の使用条件毎のLPH14におけるLED間の光量のむらが予め定められた誤差内(例えば誤差1%)となるように予め算出された光量むら補正値であって、出荷後に各画像形成装置の設置先で画像形成装置を実際に起動させてLED間の光量のむらを補正する際に適用される光量むら補正値(出荷後光量むら補正値)を含んで構成された光量むら補正データベースが格納されている。また、出荷後光量むら補正値もSLEDチップ単位のプロファイル形式で格納されている。
なお、本第1の実施の形態では、使用条件の種類として、印字速度、温度、光量、及びLEDの発光間隔(一例として印字速度)が適用されている。使用条件は、出荷前後で、上記種類が変わらずに大きさが変わっている。すなわち、本第1の実施の形態において出荷前後の使用条件の変化とは、印字速度、温度、光量、及びLEDの発光間隔の各々の大きさが変化することを意味している。
【0051】
そして、補正値演算部112は、出荷前のマシン電源投入時に、EEPROM102から出荷前光量むら補正値を取得し、取得した出荷前光量むら補正値を点灯時間制御・駆動部118−1〜118−58に出力する。また、出荷後のマシン電源投入時に、EEPROM102から光量むら補正データベースを取得し、取得した光量むら補正データベース及び画像処理部40から供給された画像データのうちの少なくとも光量むらデータベースに基づいて補正値を導出し、導出した補正値を点灯時間制御・駆動部118−1〜118−58に出力する。
【0052】
基準クロック発生部116は、制御部30、タイミング信号発生部114、及び点灯時間制御・駆動部118−1〜118−58と接続されている。
【0053】
図6(基準クロック発生部116の構成を説明するブロック図)に示したように、基準クロック発生部116は、水晶発振器140、分周器1/M142、分周器1/N144、位相比較器146、及び電圧制御発振器148を有するPLL回路134と、ルックアップテーブル(LUT)132と、を含んで構成されている。LUT132には制御部30からの光量調整データに基づいて分周比M、Nを決定するためのテーブルが記憶されている。水晶発振器140は分周器1/N144と接続されており、所定の周波数で発振し、発振した信号を分周器1/N144へと出力する。分周器1/N144はLUT132及び位相比較器146と接続されており、LUT132からの光量調整データにより決定された分周比Nに基づいて水晶発振器140で発振された信号を分周する。位相比較器146は、分周器1/M142、分周器1/N144、及び電圧制御発振器148と接続されており、分周器1/M142からの出力信号と、分周器1/N144からの出力信号とを比較する。この位相比較器146による比較結果(位相差)に応じて、電圧制御発振器148に供給するコントロール電圧が制御される。電圧制御発振器148はコントロール電圧に基づく周波数で、クロック信号を出力する。本第1の実施の形態では、点灯可能期間を256に分割する周波数に相当するコントロール電圧が供給され、この周波数のクロック信号(基準クロック信号)を生成して、タイミング信号発生部114とすべての点灯時間制御・駆動部118−1〜118−58とに出力する。また、電圧制御発振器148は分周器1/M142とも接続されており、電圧制御発振器148から出力されたクロック信号は、分周器1/M142にも分岐されて入力される。分周器1/M142は、LUT132からの光量調整データにより決定された分周比Mに基づいて、電圧制御発振器148からフィードバックされたクロック信号を分周する。
【0054】
タイミング信号発生部114は、制御部30及び基準クロック発生部116と接続されており、基準クロック発生部116からの基準クロック信号を基に、制御部30からの水平同期信号(Lsync)と同期して、転送信号CK1R,CK1C及び転送信号CK2R,CK2Cを生成する。転送信号CK1R,CK1C及び転送信号CK2R,CK2Cは、レベルシフト回路104を介することにより転送信号CK1及び転送信号CK2となってSLED63に出力される。なお、図5では、タイミング信号発生部114は、1組の転送信号CK1R,CK1C及び転送信号CK2R,CK2Cを出力するように記載しているが、実際には複数組(例えば、6組)の転送信号CK1R,CK1C及び転送信号CK2R,CK2Cを出力する。
【0055】
また、タイミング信号発生部114は、補正値演算部112及び画像データ展開部110と接続されており、基準クロック発生部116からの基準クロック信号を基に、制御部30からのLsync信号と同期して、画像データ展開部110から各画素に対応した画像データを読み出すためのデータ読み出し信号、及び補正値演算部112から各画素(各LED)に対応した光量むら補正値を読み出すためのデータ読み出し信号を各々に対して出力している。さらに、タイミング信号発生部114は、点灯時間制御・駆動部118−1〜118−58とも接続されており、基準クロック発生部116からの基準クロック信号を基に、SLED63の点灯開始のトリガ信号TRGを出力している。
【0056】
点灯時間制御・駆動部118−1〜118−58は、補正値演算部112から供給された光量むら補正値に基づいて各画素(各LED)の点灯時間を補正し、SLED63の各画素を点灯するための点灯信号ΦI(ΦI1〜ΦI58)を生成する。具体的には、点灯時間制御・駆動部118−1〜118−58は、図7(点灯時間制御・駆動部118の構成を説明するブロック図)に示したように、プリセッタブルデジタルワンショットマルチバイブレータ(PDOMV)160、直線性補正部162、及びAND回路170を含んで構成されている。AND回路170は、画像データ展開部110及びタイミング信号発生部114と接続されており、画像データ展開部110からの画像データが1(ON)のときには、タイミング信号発生部114からのトリガ信号TRGをPDOMV160に出力し、画像データが0(OFF)のときには、トリガ信号を出力しないように設定されている。PDOMV160は、AND回路170、OR回路168、補正値演算部112、及び基準クロック発生部116と接続されており、AND回路170からのトリガ信号に同期して画像データに応じたクロック数の点灯パルスを発生する。
【0057】
直線性補正部162は、SLED63内の各LEDでの発光開始時間のバラツキを補正するために、PDOMV160からの点灯パルス信号を補正して出力する。具体的には、直線性補正部162は、複数の遅延回路164(本第1の実施の形態では、164−0〜164−7の8個)、遅延信号選択部165、遅延選択レジスタ166、AND回路167、OR回路168、点灯信号選択部169を含んで構成されている。遅延回路164−0〜164−7は、PDOMV160と接続されており、各々がPDOMV160からの点灯パルス信号を遅延させるための異なる時間が設定されている。遅延選択レジスタ166は遅延信号選択部165及び点灯信号選択部169と接続されており、遅延選択レジスタ166には、SLED63内の各LED各々の遅延選択データ、及び点灯信号選択データが格納されている。各LED各々の遅延選択データ及び点灯信号選択データは予め計測され、EEPROM102に格納されている。EEPROM102に格納された遅延選択データ及び点灯信号選択データは、マシン電源投入時に遅延選択レジスタ166にダウンロードされる。なお、格納手段としてフラッシュROMを用いることもでき、その場合には、フラッシュROM自体を遅延選択レジスタ166として機能させることができる。
【0058】
遅延信号選択部165は、AND回路167及びOR回路168と接続されており、遅延選択レジスタ166に格納された遅延選択データに基づいて、遅延回路164−0〜164−7からの出力のいずれか1つを選択する。AND回路167は、PDOMV160からの点灯パルス信号と遅延信号選択部165により選択された遅延点灯パルス信号との論理積、すなわち、遅延前の点灯パルス信号と遅延後の点灯パルス信号との両方が点灯状態であれば点灯パルスを出力する。OR回路168は、PDOMV160からの点灯パルス信号と遅延信号選択部165により選択された遅延点灯パルス信号との論理和、すなわち、遅延前の点灯パルス信号と遅延後の点灯パルス信号の少なくとも一方が点灯状態であれば点灯パルスを出力する。
【0059】
点灯信号選択部169は、遅延選択レジスタ166に格納された点灯選択データに基づいて、AND回路167またはOR回路168からの出力のいずれか一方を選択する。そして、選択された点灯パルスが点灯信号ΦIとして、MOSFET172を介してSLED63へと出力される。
【0060】
また、図5に示したように、SLED63には3端子レギュレータ101が接続され、SLED63を駆動するために、3端子レギュレータ101からの出力電圧VDD=+3.5Vが供給されている。
【0061】
このように構成された信号生成回路100は、LED回路基板62上に形成された配線によりレベルシフト回路104を介してSLED63と接続されている。そして、生成した点灯信号ΦI(ΦI1〜ΦI58)、転送信号CK1R,CK1C及び転送信号CK2R,CK2C、並びに転送信号CK1及び転送信号CK2といったSLED63を駆動させるための信号(駆動信号)を出力する。
【0062】
図8は、LED回路基板62上に形成された信号生成回路100とSLED63との間の配線を示した図である。図8に示したように、LED回路基板62上には、3端子レギュレータ101からの出力電圧を各SLEDチップに供給する電源ライン105及び接地(GND)された電源ライン106、信号生成回路100から各SLEDチップに対して点灯信号ΦI(ΦI1〜ΦI58)を送信する信号ライン107(107_1〜107_58)、レベルシフト回路104から各SLEDチップに対して転送信号CK1(CK1_1〜1_6)を送信する信号ライン108(108_1〜108_6)、並びに転送信号CK2(CK2_1〜2_6)を送信する信号ライン109(109_1〜109_6)が配線されている。その際に、6組の転送信号CK1(CK1_1〜CK1_6),CK2(CK2_1〜CK2_6)は、1組の転送信号CK1,CK2当たりそれぞれ9〜10個のSLEDチップと接続されている。
【0063】
ところで、本第1の実施の形態に係る画像形成装置では、出荷前に、出荷前光量むら補正値を用いて、SLED63に含まれる個々のSLEDチップにおけるLED間の光量のばらつきを補正している。従って、出荷後の使用条件が例えば出荷前の補正時の使用条件に相当する使用条件であれば出荷前光量むら補正値を用いることで出荷後もSLEDチップの光量のばらつき(LED間の光量差)が予め定められた誤差内に収められる。
【0064】
しかし、画像形成装置の出荷後の使用条件が出荷前の補正時の使用条件と大きく異なってしまうと、出荷前光量むら補正値を用いて補正を行ったとしてもSLEDチップにおけるLED間の光量のばらつきが予め定められた誤差内に収められない。
【0065】
また、SLEDチップの各々は、一例として図9に示すように発光順序が長手方向(上記軸線方向)で対称となるように一対のユニットが配置されて構成されている。つまり、SLEDチップの両端から中央に向かってLEDが1ドットずつ順次に発光されるように構成されている。そのため、SLEDチップの端部に含まれる1つのLED(ここでは一例としてSLEDチップにおける一方のユニットに含まれる直線状に配列された複数のLEDのうちの先端に位置する1ドット目のLED)では、一例として図10に示すように、1回目の走査に係る電圧が印加されると電圧値が3.446Vまで(図10に示す“1dot目発光”の電圧値まで)上昇し、発光開始に伴って3.423Vまで降下する現象(電圧降下)が生じる。電圧降下後、電圧値はフィードバック制御により3.428Vまで復帰してその大きさを128ドット目のLEDが発光するまで(図10に示す“128dot発光”まで)維持する。次いで、2回目の走査に備えた休止期間にて電圧が印加されるため電圧値が3.446Vまで上昇し、2回目の走査に係る発光開始に伴って電圧降下が生じる。
【0066】
本発明者らは、実験を通じて、SLEDチップの端部に含まれるLEDにおける1回の走査毎に生じる電圧降下の大きさがLEDの発光速度、特に印字速度に起因することを知見した。図11には印字速度が175mm/secの場合及び印字速度が225mm/secの場合のSLEDチップの端部の含まれるLEDの電圧値変動の一例が示されている。なお、図11に示す例では、縦軸が電圧の大きさを示し、横軸が時間を示している。また、印字速度が175mm/secの場合の電圧値プロファイルを実線で示し、印字速度が225mm/secの場合の電圧値プロファイルを破線で示している。図11に示すように、SLEDチップの端部に含まれるLED(ここでは一例としてSLEDチップにおける一方のユニットに含まれる直線状に配列されたLEDのうちの先端に位置する1ドット目のLED)の発光に要する電圧としてLEDに印加される電圧(印加電圧)の大きさは、印字速度が175mm/secの場合に比べ、印字速度が225mm/secの場合の方が大きく、LEDの電圧降下の大きさも印字速度が175mm/secの場合に比べ、印字速度が225mm/secの場合の方が大きい。このように印字速度によって印加電圧の大きさ及び電圧降下の大きさに違いが生じているということは、当然LED間の光量の違いとしても現れる。
【0067】
図12には、印字速度が121mm/secの場合及び印字速度が225mm/secの場合のSLEDチップの光量プロファイルの一例が示されている。なお、図12に示す例では、実線で示された光量プロファイルは印字速度が121mm/secの場合の光量変化を示しており、破線で示された光量プロファイルは印字速度が225mm/secの場合の光量変化を示している。また、図12に示す例では、縦軸が光量を示し、横軸がSLEDチップ内のLEDの位置を示している。また、本第1の実施の形態に係るSLEDは、図12に示すように走査方向の長さが5.4mmとされている。図12に示すように、SLEDチップの端部に含まれるLEDに印加される電圧の大きさの変動の影響は、印字速度が121mm/secの場合であっても225mm/secの場合であっても、SLEDチップの端部に含まれる対応するLEDの光量の大きさに反映され、その影響の度合いはSLEDチップの中央部に含まれるLEDの光量に与える度合いに比べ大きい。また、SLEDチップの端部に含まれるLEDにおいて、印字速度が225mm/secの場合よりも121mm/secの場合の方が光量の低下の度合いが大きい。
【0068】
図13には、図12に示す印字速度が121mm/secの場合の光量プロファイルと印字速度が225mm/secの場合の光量プロファイルとの差分を表したグラフが示されている。図13に示すようにSLEDチップの端部に含まれるLEDの光量差は、SLEDチップの端部以外に含まれるLEDの光量差に比べて大きいことが判る。そのため、225mm/secの印字速度を想定した使用条件で出荷前光量むら補正値が算出されていた場合には、出荷前光量むら補正値を用いて光量むらの補正を行ったとしても印字速度が121mm/secの場合の光量は補正されず、周期的な光量むらとなって現れてしまう。逆に、121mm/secの印字速度を想定した使用条件で出荷前光量むら補正値が算出されていた場合に、印字速度が225mm/secの使用条件下で出荷前光量むら補正値を用いて光量むらの補正を行った場合には補正値が大き過ぎるため、印字速度が225mm/secの場合の光量は正しく補正されず、やはり周期的な光量むらとなって現れてしまう。
【0069】
このような周期的な光量むらを引き起こす原因としては、画像形成装置毎に個別に設定される印字速度以外にも画像形成装置毎に個別に直接的に設定される光量が挙げられる。この場合の光量の設定の例としては、感光体ドラム12の感度、現像方式、使用環境等によって設定される例が挙げられる。
【0070】
図14には、画像形成装置に設定された光量(設定光量)が0.6mJの場合及び設定光量が1.8mJの場合のSLEDチップの光量プロファイルの一例が示されている。なお、図14に示す例では、実線で示された光量プロファイルは設定光量が0.6mJの場合の光量変化を示しており、破線で示された光量プロファイルは設定光量が1.8mJの場合の光量変化を示している。また、図14に示す例では、縦軸が光量を示し、横軸がSLEDチップ内のLEDの位置を示している。また、本第1の実施の形態に係るSLEDは、図9に示すように走査方向の長さが5.4mmとされている。図14に示すように、設定光量が0.6mJの場合であっても1.8mJの場合であっても、SLEDチップの端部に含まれるLEDに印加される電圧の大きさは、SLEDチップの端部に含まれるLEDの光量の大きさに影響を及ぼし、その影響の度合いはSLEDチップの中央部に含まれるLEDの光量に与える度合いに比べ大きい。また、SLEDチップの端部に含まれるLEDにおいて、設定光量が1.8mJの場合よりも0.6mJの場合の方が光量の低下の度合いが大きい。
【0071】
図15には、図14に示す設定光量が0.6mJの場合の光量プロファイルと設定光量が1.8mJの場合の光量プロファイルとの差分を表したグラフが示されている。図15に示すようにSLEDチップの端部に含まれるLEDの光量差は、SLEDチップの端部以外に含まれるLEDの光量差に比べて大きい。そのため、1.8mJの設定光量を想定した使用条件で出荷前光量むら補正値が算出されていた場合には、出荷前光量むら補正値を用いて光量むらの補正を行ったとしても設定光量が0.6mJの場合の光量は補正されず、周期的な光量むらとなって現れてしまう。逆に、0.6mJの設定光量を想定した使用条件で出荷前光量むら補正値が算出されていた場合に、設定光量が1.8mJの使用条件下で出荷前光量むら補正値を用いて光量むらの補正を行った場合には補正値が大き過ぎるため、1.8mJの場合の光量は正しく補正されず、やはり周期的な光量むらとなって現れてしまう。
【0072】
また、周期的な光量むらを引き起こす他の原因としては、上記の印字速度及び設定光量以外にも温度、湿度、及び経時劣化が挙げられる。図16には、温度センサ17によって測定された温度(測定温度)が46℃の場合のSLEDチップにおける光量プロファイルと測定温度が14℃の場合のSLEDチップにおける光量プロファイルとの差分を表したグラフが示されている。図16に示すようにSLEDチップの端部に含まれるLEDの光量差は、SLEDチップの端部以外(例えばSLEDチップの中央部)に含まれるLEDの光量差に比べて大きいことが判る。そのため、46℃の測定温度を想定した使用条件で出荷前光量むら補正値が算出されていた場合には、出荷前光量むら補正値を用いて光量むらの補正を行ったとしても測定温度が14℃の場合の光量は補正されず、周期的な光量むらとなって現れてしまう。逆に、14℃の測定温度を想定した使用条件で出荷前光量むら補正値が算出されていた場合に測定温度が46℃の使用条件下で出荷前光量むら補正値を用いて光量むらの補正を行った場合にも光量は正しく補正されず周期的な光量むらとなって現れてしまう。
【0073】
更に、周期的な光量むらを引き起こす他の原因としては、上記の印字速度、設定光量、温度、湿度、及び経時変化以外にも画像処理部40から取得される画像データが挙げられる。なぜならば、画像データは、発光させるLEDの個数を一意に定めるものであり、その個数によって印加電圧の大きさ及び電圧降下の大きさが変化するからである。
【0074】
以上のような周期的な光量むらの発生を抑制するために、本第1の実施の形態に係る画像形成装置では、EEPROM102に光量むら補正データベースが構築されている。図17には光量むら補正データベースの一例である補正データベース190が示されている。図17に示すように、光量むら補正データベース190は、印字速度用補正テーブル190A、設定光量用補正テーブル190B、画像データ用補正テーブル190C、及び温度用補正テーブル190Dを含んで構成されている。印字速度用補正テーブル190Aは、異なる印字速度毎に異なる出荷後光量むら補正値がSLEDチップ単位のプロファイル形式で割り当てられている。図17に示す例では、印字速度P〜Pに対して出荷後光量むら補正値CP1〜CP4が1対1で割り当てられている。また、設定光量用補正テーブル190Bは、異なる設定光量毎に異なる出荷後光量むら補正値が割り当てられている。図17に示す例では、設定光量E〜Eに対して出荷後光量むら補正値CE1〜CE4が1対1で割り当てられている。また、画像データ用補正テーブル190Cは、発光されるLEDの異なる個数(同時点灯数)毎に異なる出荷後光量むら補正値が割り当てられている。図17に示す例では、同時点灯数N〜Nに対して出荷後光量むら補正値CN1〜CN4が1対1で割り当てられている。更に、温度用補正テーブル190Dは、異なる測定温度毎に異なる出荷後光量むら補正値が割り当てられている。図17に示す例では、温度T〜Tに対して出荷後光量むら補正値CT1〜CT4が1対1で割り当てられている。
【0075】
上記の出荷後光量むら補正値は何れも、画像形成装置を出荷前に異なる使用条件下で実際に使用して得られた値である。印字速度用補正テーブル190Aに含まれる出荷後光量むら補正値の算出方法としては、例えば、設定光量、同時点灯数、温度、湿度、及び経時劣化度の各々が予め定められた誤差内の使用条件下において、図18に示すように印字速度Pが225mm/secの場合及び印字速度Pが175mm/secの場合にSLEDチップに含まれる全てのLEDを発光させた際のSLEDチップの端部に含まれる全てのLEDを対象にした1周期分の電圧変化量の差分を図19に示すように光量変動率に換算して得たプロファイル(光量変動率プロファイル)に基づいて、出荷後光量むら補正値を算出する、という方法が挙げられる。具体的には、光量変動率プロファイルの光量変動率を予め定められた誤差内で0%にするように構成された補正プロファイルをSLEDチップ毎に作成する。好ましくは、例えば、図18に示す光量変動率プロファイルのLED毎の光量変動率を0%にする光量変動率(例えば光量変動率と対称的な値(例えばある1つのLEDについての現状の光量変動率が“−0.2”であれば、この値と対称的な値は“0.2”))を有する補正プロファイルを作成すると良い。
【0076】
以下、本第1の実施の形態に係る画像形成装置の要部の作用について説明する。先ず、図20を参照しながら、補正値演算部112によって実行される第1の補正演算処理について説明する。なお、図20は、出荷前の光量むらの補正時とは異なる印字速度が設定された場合に補正値演算部112によって実行される第1の補正値演算処理プログラムの処理の流れの一例を示すフローチャートである。また、ここでは、錯綜を回避するために、設定光量、測定温度、及び同時点灯数を考慮しない場合について説明する。
【0077】
同図のステップ200では、EEPROM102から印字速度用補正テーブル190Aを取得した後、ステップ202に移行し、上記ステップ200の処理で取得された印字速度用補正テーブル190Aから、現時点で設定されている印字速度に対応する光量むら補正値を取得する。例えば、現時点で設定されている印字速度がPの場合であれば本ステップ202の処理によって光量むら補正値CP1が取得される。
【0078】
次のステップ204では、画像処理部40から画像データが供給されるまで待機する。本ステップ204では、画像処理部40から画像データが供給されると肯定判定となってステップ206に移行し、上記ステップ202の処理で取得された光量むら補正値を点灯時間制御・駆動部118−1〜118−58に出力した後、本第1の補正値演算処理プログラムを終了する。
【0079】
次に、図21を参照しながら、補正値演算部112によって実行される第2の補正演算処理について説明する。なお、図21は、出荷前の光量むらの補正時とは異なる設定光量とされた場合に補正値演算部112によって実行される第2の補正値演算処理プログラムの処理の流れの一例を示すフローチャートである。また、ここでは、錯綜を回避するために、印字速度、測定温度、及び同時点灯数を考慮しない場合について説明する。
【0080】
同図のステップ250では、EEPROM102から設定光量用補正テーブル190Bを取得した後、ステップ252に移行し、上記ステップ250の処理で取得された設定光量用補正テーブル190Bから、現時点で適用されている設定光量に対応する光量むら補正値を取得する。例えば、現時点で適用されている設定光量がEの場合であれば本ステップ252の処理によって光量むら補正値CE1が取得される。
【0081】
次のステップ254では、画像処理部40から画像データが供給されるまで待機する。本ステップ254では、画像処理部40から画像データが供給されると肯定判定となってステップ256に移行し、上記ステップ252の処理で取得された光量むら補正値を点灯時間制御・駆動部118−1〜118−58に出力した後、本第2の補正値演算処理プログラムを終了する。
【0082】
次に、図22を参照しながら、補正値演算部112によって実行される第3の補正演算処理について説明する。なお、図22は、出荷前の光量むらの補正時とは異なる温度が温度センサ17によって測定された場合に補正値演算部112によって実行される第2の補正値演算処理プログラムの処理の流れの一例を示すフローチャートである。また、ここでは、錯綜を回避するために、印字速度、設定光量、及び同時点灯数を考慮しない場合について説明する。
【0083】
同図のステップ300では、EEPROM102から温度用補正テーブル190Dを取得した後、ステップ302に移行し、上記ステップ300の処理で取得された温度用補正テーブル190Dから、現時点で温度センサ17から得られている測定温度に対応する光量むら補正値を取得する。例えば、現時点の測定温度がTの場合であれば本ステップ302の処理によって光量むら補正値CT1が取得される。
【0084】
次のステップ304では、画像処理部40から画像データが供給されるまで待機する。本ステップ304では、画像処理部40から画像データが供給されると肯定判定となってステップ306に移行し、上記ステップ302の処理で取得された光量むら補正値を点灯時間制御・駆動部118−1〜118−58に出力した後、本第3の補正値演算処理プログラムを終了する。
【0085】
次に、図23を参照しながら、補正値演算部112によって実行される第4の補正演算処理について説明する。なお、図23は、画像形成装置の電源が投入された際に補正値演算部112によって実行される第4の補正値演算処理プログラムの処理の流れの一例を示すフローチャートである。また、ここでは、錯綜を回避するために、印字速度、設定光量、及び測定温度を考慮しない場合について説明する。
【0086】
同図のステップ350では、EEPROM102から画像データ用補正テーブル190Cを取得した後、ステップ352に移行し、画像処理部40から画像データが供給されるまで待機する。本ステップ352では、画像処理部40から画像データが供給されると肯定判定となってステップ354に移行し、上記ステップ352の処理で取得された画像データに基づいて同時点灯数を算出した後、ステップ356に移行する。
【0087】
ステップ356では、上記ステップ350の処理で取得された画像データ用補正テーブル190Cから、上記ステップ354の処理で算出された同時点灯数に対応する光量むら補正値を取得した後、ステップ358に移行し、上記ステップ356の処理で取得された光量むら補正値を点灯時間制御・駆動部118−1〜118−58に出力した後、本第4の補正値演算処理プログラムを終了する。
【0088】
図24は、信号生成回路100及びレベルシフト回路104から出力される駆動信号の出力タイミングを説明するタイミングチャートである。なお、図24に示すタイミングチャートでは、すべてのLEDが光書き込みを行う(点灯する)場合について表記している。
【0089】
(1) まず、制御部30から信号生成回路100にリセット信号が入力されることによって、信号生成回路100のタイミング信号発生部114では、転送信号CK1Cがハイレベル(以下、「H」と記す)、転送信号CK1Rが「H」に設定されて、転送信号CK1が「H」に設定される。また、転送信号CK2Cがローレベル(以下、「L」と記す)、転送信号CK2Rが「L」に設定されて、転送信号CK2が「L」に設定される。それにより、SLED63のすべてのサイリスタS1〜S128がオフの状態に設定される(図4(a))。
【0090】
(2) リセット信号に続いて、制御部30から出力される水平同期信号Lsyncが「H」になり(図24(A))、SLED63の動作が開始される。そして、この水平同期信号Lsyncに同期して、図24(E)、(F)、(G)に示すように、転送信号CK2C及び転送信号CK2Rを「H」として、転送信号CK2を「H」とする(図24(b))。
【0091】
(3) 次に、図24(C)に示すように、転送信号CK1Rを「L」にする(図24(c))。
【0092】
(4) これに続いて、図24(B)に示すように、転送信号CK1Cを「L」にする(図24(d))。この状態においては、サイリスタS1のゲート電流が流れ始める。その際に、信号生成回路100のトライステートバッファB1Rをハイインピーダンス(Hiz)にすることで、電流の逆流防止を行う。その後、サイリスタS1のゲート電流により、サイリスタS1がオンし始め、ゲート電流が徐々に上昇する。それとともに、レベルシフト回路104のコンデンサC1に電流が流れ込むことで、転送信号CK1の電位も徐々に上昇する。
【0093】
(5) 所定時間(転送信号CK1電位がGND近傍になる時間)の経過後、信号生成回路100のトライステートバッファB1Rを「L」にする(図24(e))。そうすると、ゲートG1電位が上昇することによって信号ラインΦ1電位の上昇及び転送信号CK1電位の上昇が生じ、それに伴いレベルシフト回路104の抵抗R1B側に電流が流れ始める。その一方で、転送信号CK1電位が上昇するのに従い、レベルシフト回路104のコンデンサC1に流れ込む電流は徐々に減少する。そして、サイリスタS1が完全にオンし、定常状態になると、サイリスタS1のオン状態を保持するための電流がレベルシフト回路104の抵抗R1Bに流れるが、コンデンサC1には流れない。なお、このとき、図24(B)に示すように、信号生成回路100のトライステートバッファB1Cをハイインピーダンス(Hiz)に設定する(図24(e))。
【0094】
(6) サイリスタS1が完全にオンした状態で、図24(H)に示すように、点灯信号ΦIを「L」にする(図24(f))。このとき、ゲートG1電位>ゲートG2電位であるため、サイリスタ構造のLED L1のほうが早くオンし、点灯する。LED L1がオンするのに伴って、信号ラインΦIの電位が上昇するため、LED L2以降のLEDはオンすることはない。すなわち、LED L1、L2、L3、L4、…は、最もゲート電圧の高いLED L1のみがオン(点灯)することになる。
【0095】
(7) 次に、図24(F)に示すように、転送信号CK2Rを「L」にすると(図24(g))、図24(c)の場合と同様に電流が流れ、レベルシフト回路104のコンデンサC2の両端に電圧が発生する。
【0096】
(8) 図24(E)に示すように、この状態で転送信号CK2Cを「L」にすると(図24(h))、サイリスタS2がターンオンする。
【0097】
(9) そして、図24(B)、(C)に示すように、転送信号CK1C、CK1Rを同時に「H」にすると(図24(i))、サイリスタS1はターンオフし、抵抗R1を通って放電することによってゲートG1電位は除々に下降する。その際、サイリスタS2は完全にオンする。そして、サイリスタS2のオンに同期させて点灯信号ΦIを「L」/「H」することで、LED L2を点灯/非点灯させることが可能となる。なお、この場合ゲートG1の電位はすでにゲートG2の電位より低くなっているため、LED L1がオンすることはない。
【0098】
(10) 以上のような動作を順次行い、LED L1〜L128を順次点灯させる。
【0099】
このように、本第1の実施の形態の信号生成回路100においては、タイミング信号発生部114は、転送信号CK1C,CK1R及び転送信号CK2C,CK2Rをそれぞれ所定のタイミングで「H」から「L」、「L」から「H」に設定する。それにより、レベルシフト回路104からの転送信号CK1の電位を「H」から「L」、「L」から「H」に繰り返し設定することで、奇数番目サイリスタS1、S3、…、S127を順次オフ→オン→オフに動作させる。また、転送信号CK1に交互して、レベルシフト回路104からの転送信号CK2の電位を「H」から「L」、「L」から「H」に繰り返し設定することで、偶数番目のサイリスタS2、S4、…、S128を順次オフ→オン→オフに動作させる。それにより、サイリスタS1〜S128をS1→S2→、…、→S127→S128の順番で順次オフ→オン→オフの動作をさせ、それに同期させて、点灯時間制御・駆動部118−1〜118−58から点灯信号ΦI1〜ΦI58を出力することで、LED L1〜L128を順次点灯させている。
【0100】
本第1の実施の形態のLPH14は、SLED63が点灯信号ΦIと転送信号CK1と転送信号CK2との3つの駆動信号で駆動されるので、図8に示したように、配線が簡素化され、LPH14の小型化が図れる。さらには、LPH14を搭載する画像形成装置の小型化も図れる。
【0101】
ここで、図25及び図26は、図24での点灯信号ΦI(図24(H))、転送信号CK1(図24(D))、転送信号CK2(図24(G))が副走査方向のライン毎に出力されるタイミングと、その際に3端子レギュレータ101から供給される電圧(供給電圧)の変化をそれぞれ示した図である。また、図25は、画像形成装置の印字速度が例えば100mm/secの場合を示し、図26は、印字速度が例えば150mm/secの場合を示している。
【0102】
図25では、副走査方向のライン毎の出力タイミングを設定する水平同期信号Lsyncは、印字速度(ここでは、100mm/sec)が150mm/secの場合に比べて遅いので、その出力周期は150mm/secの場合よりも長く設定されている。そのため、信号生成回路100のタイミング信号発生部114では、サイリスタS1〜S128が交互にオン/オフする周期(以下、これを「サイリスタ転送周期」という)、すなわち図24に示したサイリスタS1〜S128のオン時間を長く設定できる。また、副走査方向Nライン目の127番目の点灯信号Φ128が出力されてから、次の副走査方向N+1ライン目の0番目の点灯信号Φ1が出力されるまでの期間(以下、これを「休止期間」という)も長く設定できる。
【0103】
一方、図26では、水平同期信号Lsyncは、印字速度(ここでは、150mm/sec)が100mm/secの場合よりも速いので、その出力周期は100mm/secの場合に比べて短く設定されている。そのため、信号生成回路100のタイミング信号発生部114では、サイリスタ転送周期は印字速度100mm/secの場合よりも短く設定される。また、休止期間も印字速度100mm/secの場合よりも短く設定される。
【0104】
ところで、3端子レギュレータ101では、SLED63に対して所定の電圧VDD(本第1の実施の形態では、3.5V)を出力しようとするが、実際にSLED63に供給される電圧は、3端子レギュレータ101によるかかる所定電圧VDD(3.5V)を規定電圧V0とすると、各SLEDチップでの点灯率の差により程度の違いはあるが、LEDの点灯によるSLED63での消費電流により、SLED63が点灯している期間(これを、「点灯/転送期間」という)中に供給電圧が規定電圧V0よりも低下するという現象が起こる。
【0105】
この点灯/転送期間中に低下した供給電圧は、休止期間中に徐々に回復して規定電圧V0に近づくが、休止期間の長短により、回復レベルが異なる。例えば、図25に示した印字速度100mm/secの場合には、休止期間が比較的長いことから回復量が大きく、規定電圧V0と供給電圧の電圧差Vg(Vg=V0−供給電圧)は比較的小さい。一方、図26に示した印字速度150mm/secの場合には、休止期間が印字速度100mm/secの場合よりも短いことから回復量が小さく、電圧差Vgは比較的大きい。
【0106】
このように、画像形成装置が異なる複数の印字速度で動作可能に構成された場合には、例えば副走査方向Nライン目から次の副走査方向N+1ライン目に画像形成が移る際に、休止期間の長短により、SLED63への供給電圧が異なることとなる。
【0107】
そして、上述したように、信号生成回路100の補正値演算部112では、光量むら補正値が算出され、算出された光量むら補正値が点灯時間制御・駆動部118−1〜118−58に出力される。この光量むら補正値は、画像形成装置の現在の使用条件に応じて一意に定められるので、仮に出荷前の光量むらの補正時と使用条件が異なったとしてもLED間の光量むらが高精度に補正される。また、SLED63は、所定の配列方向(一例として直線状)に配列された複数のSLEDチップを含んで構成されているので、従来はSLEDチップの端部に含まれるLEDの電圧降下に起因する光量低下がSLEDチップ間の周期的な光量むらとなって現れたが、本第1の実施の形態に係る画像形成装置では、個々のSLEDチップの光量むらが上記のように補正されるので、周期的な光量むらが生じ難くなる。
【0108】
[第2の実施の形態]
上記第1の実施の形態では、印字速度、設定光量、測定温度、及び同時点灯数毎に光量むら補正値を対応付けた場合の形態例を挙げて説明したが、本第2の実施の形態では、印字速度及び設定光量の組み合わせ毎に光量むら補正値を1対1で対応付けた場合について説明する。なお、以下では、上記第1の実施の形態とは異なる部分について説明し、上記第1の実施の形態の構成部材に相当する構成部材については上記第1の実施の形態の構成部材に付された符号に相当する符号を付してその説明を省略する。
【0109】
本第2の実施の形態に係る画像形成装置では、EEPROM102に補正テーブルが格納されている。図27には補正テーブルの一例である補正テーブル390が示されている。なお、図27に示すプロセススピードとは、上記第1の実施の形態で説明した印字速度に相当するものである。図27に示すように、補正テーブル390は、異なる印字速度の各々について、異なる設定光量毎に出荷後光量むら補正値がSLEDチップ単位のプロファイル形式で割り当てられている。図27に示す例では、印字速度P〜Pの各々について、設定光量Eに対して出荷後光量むら補正値C11〜C14が対応付けられている。また、印字速度P〜Pの各々について、設定光量Eに対して出荷後光量むら補正値C21〜C24が対応付けられている。また、印字速度P〜Pの各々について、設定光量Eに対して出荷後光量むら補正値C31〜C34が対応付けられている。更に、印字速度P〜Pの各々について、設定光量Eに対して出荷後光量むら補正値C41〜C44が対応付けられている。
【0110】
次に、図28を参照しながら、補正値演算部112によって実行される本第2の実施の形態に係る補正演算処理について説明する。なお、図28は、出荷前の光量むらの補正時とは異なる印字速度及び設定光量が設定された場合に補正値演算部112によって実行される補正値演算処理プログラムの処理の流れの一例を示すフローチャートである。また、ここでは、錯綜を回避するために、測定温度及び同時点灯数を考慮しない場合について説明する。
【0111】
同図のステップ400では、EEPROM102から補正テーブル390を取得した後、ステップ402に移行し、上記ステップ400の処理で取得された補正テーブル390から、現時点で画像形成装置に対して適用されている印字速度及び設定光量に対応する光量むら補正値を取得する。例えば、現時点で設定されている印字速度がPであり、設定光量がEであれば、本ステップ402の処理によって光量むら補正値C11が取得される。
【0112】
次のステップ404では、画像処理部40から画像データが供給されるまで待機する。本ステップ404では、画像処理部40から画像データが供給されると肯定判定となってステップ406に移行し、上記ステップ402の処理で取得された光量むら補正値を点灯時間制御・駆動部118−1〜118−58に出力した後、本補正値演算処理プログラムを終了する。
【0113】
なお、本第2の実施の形態では、印字速度及び設定光量の組み合わせに応じて光量むら補正値を決定する場合の形態例を挙げて説明したが、これに限らず、印字速度、設定光量、測定温度、及び同時点灯数の少なくとも1つに対して光量むら補正値を対応付けた補正テーブルを作成しておき、その補正テーブルから現状の使用条件に対応する光量むら補正値を取得して光量むらの補正を行っても良い。例えば、印字速度、設定光量、測定温度、及び同時点灯数の組み合わせ毎に光量むら補正値を対応付けて構成された補正テーブルを事前に作成しておき、この補正テーブルに含まれる印字速度、設定光量、測定温度、及び同時点灯数の組み合わせに相当する印字速度、設定光量、測定温度、及び同時点灯数の組み合わせで画像形成装置が使用される場合にこの組み合わせに対応する光量むら補正値を補正テーブルから取得する、という形態例が挙げられる。なお、同時点灯数を含む場合には予め定められた取得時期(例えば1つの画像単位の画像データが供給される毎)に画像データが取得された場合に、その画像データに基づいて算出された同時点灯数に対応する光量むら補正値を補正テーブルから取得することになる。
【0114】
また、上記各実施の形態では、温度センサ17がLPH14から所定距離内の領域の温度を測定する場合の形態例を挙げて説明したが、測定箇所はこれに限らず、LPH14の特定部位の温度を直接測定しても良い。この特定部位の一例としては、LPH14に含まれる何れかのLEDが挙げられる。このように測定箇所がLEDに近ければ近いほどより光量むらがより高精度に補正される。
【0115】
また、上記第各実施の形態では、補正値演算部112によってプログラムが実行されることによって図20〜23及び図28に示すフローチャートの各ステップを実現するソフトウェア的な形態を例示したが、これに限らず、各種回路(一例として、ASIC(Application Specific Integrated Circuit))を接続して構成されるハードウェア的な形態や、ソフトウェア的な形態とハードウェア的な形態とを組み合わせた形態も例示できる。
【0116】
また、上記各実施の形態では、プログラムがEEPROM102に予め記憶されているが、これに限らず、各種処理プログラムをCD−ROMやDVD−ROM、USB(Universal Serial Bus)メモリなどのコンピュータによって読み取られる記憶媒体に格納した状態で提供する形態を適用しても良いし、有線又は無線による通信手段を介して配信する形態を適用しても良い。
【符号の説明】
【0117】
11 画像形成ユニット
12 感光体ドラム
14 LEDプリントヘッド
17 温度センサ
30 制御部
63 SLED
102 EEPROM
112 補正値演算部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定の使用条件下で発光させた場合の相互間の光量差が所定範囲内になるように補正された複数の発光素子と、
種類以外が前記特定の使用条件とは異なる使用条件下で前記複数の発光素子を発光させた際の発光素子間の光量差が所定範囲内になるように該複数の発光素子の各々の光量を補正するための補正用情報を記憶した記憶手段と、
前記異なる使用条件に相当する使用条件を満足した場合に、前記記憶手段に記憶されている前記補正用情報に従って前記複数の発光素子のうちの発光対象とされた発光素子の光量を補正する補正手段と、
を含む露光装置。
【請求項2】
前記異なる使用条件は、使用先での予め定められた時期の温度、前記発光素子を発光させることによって得られる光量として予め設定された光量、及び前記発光素子の発光間隔の少なくとも1つを含む請求項1に記載の露光装置。
【請求項3】
前記異なる使用条件は、前記複数の発光素子のうちの実際に発光される発光素子の個数を特定する個数特定情報を更に含む請求項2に記載の露光装置。
【請求項4】
前記異なる使用条件は、前記複数の発光素子のうちの実際に発光される発光素子の個数である請求項1に記載の露光装置。
【請求項5】
特定の使用条件下で発光させた場合の相互間の光量差が所定範囲内になるように補正された複数の発光素子と、
種類以外が前記特定の使用条件とは異なる複数の使用条件の各々の下で前記複数の発光素子を発光させた際の発光素子間の光量差が所定範囲内になるように該複数の発光素子の各々の光量を補正するための補正用情報を前記複数の使用条件の各々に対応させて記憶した記憶手段と、
前記複数の使用条件の何れかに相当する使用条件を満足した場合に、前記記憶手段に記憶されている補正用情報のうち、現時点で満足している使用条件に相当する使用条件に対応する補正用情報に従って前記複数の発光素子のうちの発光対象とされた発光素子の光量を補正する補正手段と、
を含む露光装置。
【請求項6】
前記複数の使用条件の各々は、使用先での予め定められた時期の温度、前記発光素子を発光させることによって得られる光量として予め設定された光量、及び前記発光素子の発光間隔の少なくとも1つを含む請求項5に記載の露光装置。
【請求項7】
前記複数の使用条件の各々は、前記複数の発光素子のうちの実際に発光される発光素子の個数を特定する個数特定情報を更に含む請求項6に記載の露光装置。
【請求項8】
前記複数の使用条件の各々は、前記複数の発光素子のうちの実際に発光される発光素子の個数である請求項5に記載の露光装置。
【請求項9】
各々、前記複数の発光素子が所定方向に配列され、かつ前記所定方向に沿って直列的に配置された複数の発光素子群を含み、
前記複数の発光素子を、前記所定方向の一端から他端にかけて順に発光させる請求項1〜請求項8の何れか1項に記載の露光装置。
【請求項10】
請求項1〜請求項9の何れか1項に記載の露光装置と、
前記露光装置の前記複数の発光素子から発光された光が感光体の表面に照射されることによって該感光体の表面に形成された静電潜像を現像剤により現像像として現像し、現像して得た現像像を記録媒体に転写することにより画像を形成する画像形成手段と、
を含む画像形成装置。
【請求項11】
特定の使用条件下で発光させた場合の相互間の光量差が所定範囲内になるように補正された複数の発光素子、及び種類以外が前記特定の使用条件とは異なる使用条件下で前記複数の発光素子を発光させた際の発光素子間の光量差が所定範囲内になるように該複数の発光素子の各々の光量を補正するための補正用情報を記憶した記憶手段を含む露光装置を制御するコンピュータを、
前記異なる使用条件に相当する使用条件を満足した場合に、前記記憶手段に記憶されている前記補正用情報に従って前記複数の発光素子のうちの発光対象とされた発光素子の光量を補正する補正手段として機能させるためのプログラム。
【請求項12】
特定の使用条件下で発光させた場合の相互間の光量差が所定範囲内になるように補正された複数の発光素子、及び種類以外が前記特定の使用条件とは異なる複数の使用条件の各々の下で前記複数の発光素子を発光させた際の発光素子間の光量差が所定範囲内になるように該複数の発光素子の各々の光量を補正するための補正用情報を前記複数の使用条件の各々に対応させて記憶した記憶手段を含む露光装置を制御するコンピュータを、
前記複数の使用条件の何れかに相当する使用条件を満足した場合に、前記記憶手段に記憶されている補正用情報のうち、現時点で満足している使用条件に相当する使用条件に対応する補正用情報に従って前記複数の発光素子のうちの発光対象とされた発光素子の光量を補正する補正手段として機能させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【公開番号】特開2013−52650(P2013−52650A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−193994(P2011−193994)
【出願日】平成23年9月6日(2011.9.6)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】