説明

露光装置、露光方法、及び表示用パネル基板の製造方法

【課題】基板に描画するパターンの図形の円の弧で構成された部分を複数の直線で近似する際、円の半径に応じた分割角度を簡単な処理で高速に決定する。
【解決手段】基板に描画するパターンの図形の円の弧で構成された部分について、当該円の半径と、所定の半径の円において、円の弧を複数に分割し、分割した各弧の始点と終点を直線で結んで、円の弧を複数の直線で近似したときの近似誤差を、分割角度毎に予め求めたデータとから、近似誤差が許容値以下となる様に最大分割角度を決定し、決定した最大分割角度以下の分割角度で分割し、分割した各弧の始点と終点を結んだ複数の直線で近似して、基板に描画するパターンの図形のベクターデータを作成する。作成したベクターデータから、基板に対し光ビームの照射を開始する位置と、光ビームの照射を終了する位置とを演算で求めて、光ビーム照射装置の駆動回路へ供給する描画データを生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶ディスプレイ装置等の表示用パネル基板の製造において、フォトレジストが塗布された基板へ光ビームを照射し、光ビームにより基板を走査して、基板にパターンを描画する露光装置、露光方法、及びそれらを用いた表示用パネル基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
表示用パネルとして用いられる液晶ディスプレイ装置のTFT(Thin Film Transistor)基板やカラーフィルタ基板、プラズマディスプレイパネル用基板、有機EL(Electroluminescence)表示パネル用基板等の製造は、露光装置を用いて、フォトリソグラフィー技術により基板上にパターンを形成して行われる。露光装置としては、従来、レンズ又は鏡を用いてマスクのパターンを基板上に投影するプロジェクション方式と、マスクと基板との間に微小な間隙(プロキシミティギャップ)を設けてマスクのパターンを基板へ転写するプロキシミティ方式とがあった。
【0003】
近年、フォトレジストが塗布された基板へ光ビームを照射し、光ビームにより基板を走査して、基板にパターンを描画する露光装置が開発されている。光ビームにより基板を走査して、基板にパターンを直接描画するため、高価なマスクが不要となる。また、描画データ及び走査のプログラムを変更することにより、様々な種類の表示用パネル基板に対応することができる。この様な露光装置として、例えば、特許文献1、特許文献2、及び特許文献3に記載のものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−44318号公報
【特許文献2】特開2010−60990号公報
【特許文献3】特開2010−102084号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
光ビームにより基板にパターンを描画する際、光ビームの変調には、DMD(Digital Micromirror Device)等の空間的光変調器が用いられる。DMDは、光ビームを反射する複数の微小なミラーを二方向に配列して構成され、各ミラーの角度を変更することにより、基板へ照射する光ビームを変調する。DMDの駆動回路は、描画データに基づいて、各ミラーを駆動するための駆動信号をDMDへ出力する。光ビームによる基板の走査は、基板を支持するチャックと、DMDにより変調された光ビームを基板へ照射する照射光学系を有する光ビーム照射装置とを、相対的に移動して行われる。
【0006】
DMDの駆動回路へ供給される描画データは、描画データ生成回路により、基板に描画するパターンの図形のCAD/CAMデータを処理したベクターデータから生成される。描画データは、パターンの図形に含まれるドットの座標を示すラスターデータ(ビットマップデータ)で表され、パターンの図形を構成する線の始点及び終点の座標と両点をつなぐ情報とから成るベクターデータに比べて、データ量が非常に多い。そのため、全ての描画データを予め用意しておくと、非常に大きな容量のメモリが必要となり、また、描画データを外部のメモリから供給する場合、描画データの供給量がデータの通信速度により制限されて、走査速度を速くすることができない。そこで、描画データ生成回路による描画データの生成は、光ビームによる基板の走査中に行われる。
【0007】
ベクターデータを元にした描画データの生成は、スキャンライン方式で行われ、光ビームによる基板の走査方向の直線(走査線)と、パターンの図形を構成する線との交点を演算で求める処理が行われる。このとき、パターンの図形が直線のみで構成されている場合は、直線と直線の交点を求める演算処理だけで済む。しかしながら、パターンの図形が円の弧で構成された部分を含む場合は、直線と円の弧との交点を求める演算処理が必要となり、この演算処理は、直線と直線の交点を求める演算処理に比べて時間が掛かる。そこで、円の弧を複数に分割し、分割した各弧の始点と終点を直線で結んで、円の弧を複数の直線で近似することが望ましい。
【0008】
円の弧を複数の直線で近似する場合、円の半径に係わらず円の弧の分割角度を一定にすると、半径が大きな円の弧では、分割点が足りずに滑らかな描画が行われず、半径が小さい円の弧では、分割点が余って必要以上の近似処理を行う結果となる。そのため、円の半径に応じて、円の弧の分割角度を変更する必要があるが、この分割角度を決定する処理に時間が掛かると、ベクターデータの作成に多大な時間を要する。
【0009】
本発明の課題は、基板に描画するパターンの図形の円の弧で構成された部分を複数の直線で近似する際、円の半径に応じた分割角度を簡単な処理で高速に決定して、描画データの生成に適したベクターデータを速やかに作成することである。また、本発明の課題は、高品質な表示用パネル基板を高いスループットで製造することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の露光装置は、フォトレジストが塗布された基板を支持するチャックと、光ビームを変調する空間的光変調器、描画データに基づいて空間的光変調器を駆動する駆動回路、及び空間的光変調器により変調された光ビームを照射する照射光学系を有する光ビーム照射装置と、チャックと光ビーム照射装置とを相対的に移動する移動手段とを備え、移動手段によりチャックと光ビーム照射装置とを相対的に移動し、光ビーム照射装置からの光ビームにより基板を走査して、基板にパターンを描画する露光装置であって、基板に描画するパターンの図形のベクターデータを記憶するメモリと、メモリに記憶されたベクターデータから、光ビーム照射装置の駆動回路へ供給する描画データを生成する描画データ生成手段とを備え、メモリに記憶されたベクターデータの内、パターンの図形の円の弧で構成された部分が、当該円の半径と、所定の半径の円において、円の弧を複数に分割し、分割した各弧の始点と終点を直線で結んで、円の弧を複数の直線で近似したときの近似誤差を、分割角度毎に予め求めたデータとから、近似誤差が許容値以下となる様に決定された最大分割角度以下の分割角度で分割されて、分割された各弧の始点と終点を結んだ複数の直線で近似され、描画データ生成手段が、メモリに記憶されたベクターデータから、基板に対し光ビームの照射を開始する位置と光ビームの照射を終了する位置とを演算で求めて、光ビーム照射装置の駆動回路へ供給する描画データを生成するものである。
【0011】
また、本発明の露光方法は、フォトレジストが塗布された基板をチャックで支持し、チャックと、光ビームを変調する空間的光変調器、描画データに基づいて空間的光変調器を駆動する駆動回路、及び空間的光変調器により変調された光ビームを照射する照射光学系を有する光ビーム照射装置とを、相対的に移動し、光ビーム照射装置からの光ビームにより基板を走査して、基板にパターンを描画する露光方法であって、基板に描画するパターンの図形の円の弧で構成された部分について、当該円の半径と、所定の半径の円において、円の弧を複数に分割し、分割した各弧の始点と終点を直線で結んで、円の弧を複数の直線で近似したときの近似誤差を、分割角度毎に予め求めたデータとから、近似誤差が許容値以下となる様に最大分割角度を決定し、決定した最大分割角度以下の分割角度で分割し、分割した各弧の始点と終点を結んだ複数の直線で近似して、基板に描画するパターンの図形のベクターデータを作成し、作成したベクターデータから、基板に対し光ビームの照射を開始する位置と光ビームの照射を終了する位置とを演算で求めて、光ビーム照射装置の駆動回路へ供給する描画データを生成するものである。
【0012】
基板に描画するパターンの図形の円の弧で構成された部分について、当該円の半径と、所定の半径の円において、円の弧を複数に分割し、分割した各弧の始点と終点を直線で結んで、円の弧を複数の直線で近似したときの近似誤差を、分割角度毎に予め求めたデータとから、近似誤差が許容値以下となる様に最大分割角度を決定し、決定した最大分割角度以下の分割角度で分割し、分割した各弧の始点と終点を結んだ複数の直線で近似して、基板に描画するパターンの図形のベクターデータを作成するので、円の半径に応じた分割角度が簡単な処理で高速に決定され、描画データの生成に適したベクターデータが速やかに作成される。そして、作成したベクターデータから、基板に対し光ビームの照射を開始する位置と、光ビームの照射を終了する位置とを演算で求めて、光ビーム照射装置の駆動回路へ供給する描画データを生成するので、直線と円の弧との交点を求める演算処理が必要なく、描画データが速やかに生成される。
【0013】
さらに、本発明の露光装置は、メモリに記憶されたベクターデータの内、パターンの図形の円の弧で構成された部分が、当該円の半径と、当該円の弧を決定された最大分割角度以下の分割角度で均等に分割した分割点の角度とから、演算で求められた分割点の座標を含むものである。また、本発明の露光方法は、基板に描画するパターンの図形の円の弧で構成された部分について、当該円の弧を決定した最大分割角度以下の分割角度で均等に分割し、当該円の半径と、分割点の角度とから、分割点の座標を演算で求めて、基板に描画するパターンの図形のベクターデータを作成するものである。基板に描画するパターンの図形の円の弧で構成された部分を複数の直線で近似する際、当該円の弧を均等に分割するので、パターンがより滑らかに描画される。そして、当該円の半径と、分割点の角度とから、三角関数を使用して、分割点の座標が演算で簡単に求められ、描画データの生成に適したベクターデータが速やかに作成される。
【0014】
あるいは、本発明の露光装置は、メモリに記憶されたベクターデータの内、パターンの図形の円の弧で構成された部分が、当該円の半径と、所定の半径の円において、円の弧を決定された最大分割角度で均等に分割した分割点の座標を、分割角度毎に予め求めたデータとから、演算で求められた分割点の座標を含むものである。また、本発明の露光方法は、基板に描画するパターンの図形の円の弧で構成された部分について、当該円の半径と、所定の半径の円において、円の弧を決定した最大分割角度で均等に分割した分割点の座標を、分割角度毎に予め求めたデータとから、分割点の座標を演算で求めて、基板に描画するパターンの図形のベクターデータを作成するものである。基板に描画するパターンの図形の円の弧で構成された部分を複数の直線で近似する際、円の弧を均等に分割する必要がない場合に、当該円の半径と、所定の半径の円において、円の弧を決定した最大分割角度で均等に分割した分割点の座標を、分割角度毎に予め求めたデータとから、分割点の座標が演算でさらに簡単に求められ、描画データの生成に適したベクターデータがさらに速やかに作成される。
【0015】
本発明の表示用パネル基板の製造方法は、上記のいずれかの露光装置又は露光方法を用いて基板の露光を行うものである。上記の露光装置又は露光方法を用いることにより、基板に描画するパターンの図形の円の弧で構成された部分が、円の半径に応じた分割数の直線で近似され、描画データが速やかに生成されるので、高品質な表示用パネル基板が高いスループットで製造される。
【発明の効果】
【0016】
本発明の露光装置及び露光方法によれば、基板に描画するパターンの図形の円の弧で構成された部分について、当該円の半径と、所定の半径の円において、円の弧を複数に分割し、分割した各弧の始点と終点を直線で結んで、円の弧を複数の直線で近似したときの近似誤差を、分割角度毎に予め求めたデータとから、近似誤差が許容値以下となる様に最大分割角度を決定し、決定した最大分割角度以下の分割角度で分割し、分割した各弧の始点と終点を結んだ複数の直線で近似して、基板に描画するパターンの図形のベクターデータを作成することにより、円の半径に応じた分割角度を簡単な処理で高速に決定して、描画データの生成に適したベクターデータを速やかに作成することができる。そして、作成したベクターデータから、基板に対し光ビームの照射を開始する位置と光ビームの照射を終了する位置とを演算で求めて、光ビーム照射装置の駆動回路へ供給する描画データを生成することにより、直線と円の弧との交点を求める演算処理を行うことなく、描画データを速やかに生成することができる。
【0017】
さらに、本発明の露光装置及び露光方法によれば、基板に描画するパターンの図形の円の弧で構成された部分を複数の直線で近似する際、当該円の弧を均等に分割することにより、パターンをより滑らかに描画することができる。そして、当該円の半径と、分割点の角度とから、三角関数を使用して、分割点の座標を演算で簡単に求めて、描画データの生成に適したベクターデータを速やかに作成することができる。
【0018】
あるいは、本発明の露光装置及び露光方法によれば、基板に描画するパターンの図形の円の弧で構成された部分を複数の直線で近似する際、円の弧を均等に分割する必要がない場合に、当該円の半径と、所定の半径の円において、円の弧を決定した最大分割角度で均等に分割した分割点の座標を、分割角度毎に予め求めたデータとから、分割点の座標を演算でさらに簡単に求めて、描画データの生成に適したベクターデータをさらに速やかに作成することができる。
【0019】
本発明の表示用パネル基板の製造方法によれば、基板に描画するパターンの図形の円の弧で構成された部分を、円の半径に応じた分割数の直線で近似し、描画データを速やかに生成することができるので、高品質な表示用パネル基板を高いスループットで製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施の形態による露光装置の概略構成を示す図である。
【図2】本発明の一実施の形態による露光装置の側面図である。
【図3】本発明の一実施の形態による露光装置の正面図である。
【図4】光ビーム照射装置の概略構成を示す図である。
【図5】DMDのミラー部の一例を示す図である。
【図6】レーザー測長系の動作を説明する図である。
【図7】本発明の一実施の形態による描画制御部の概略構成を示す図である。
【図8】ベクターデータの作成を説明する図である。
【図9】多角形近似を説明する図である。
【図10】単位半径の円における近似誤差のデータを示す表である。
【図11】円の弧を均等に分割するときの動作を説明する図である。
【図12】単位半径の円における分割点の角度と座標を示す図である。
【図13】単位半径の円における分割点の座標のデータを示す表である。
【図14】円の弧を均等に分割する必要がないときの動作を説明する図である。
【図15】光ビームによる基板の走査を説明する図である。
【図16】光ビームによる基板の走査を説明する図である。
【図17】光ビームによる基板の走査を説明する図である。
【図18】光ビームによる基板の走査を説明する図である。
【図19】液晶ディスプレイ装置のTFT基板の製造工程の一例を示すフローチャートである。
【図20】液晶ディスプレイ装置のカラーフィルタ基板の製造工程の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、本発明の一実施の形態による露光装置の概略構成を示す図である。また、図2は本発明の一実施の形態による露光装置の側面図、図3は本発明の一実施の形態による露光装置の正面図である。露光装置は、ベース3、Xガイド4、Xステージ5、Yガイド6、Yステージ7、θステージ8、チャック10、ゲート11、光ビーム照射装置20、リニアスケール31,33、エンコーダ32,34、レーザー測長系、レーザー測長系制御装置40、ステージ駆動回路60、及び主制御装置70を含んで構成されている。なお、図2及び図3では、レーザー測長系のレーザー光源41、レーザー測長系制御装置40、ステージ駆動回路60、及び主制御装置70が省略されている。露光装置は、これらの他に、基板1をチャック10へ搬入し、また基板1をチャック10から搬出する基板搬送ロボット、装置内の温度管理を行う温度制御ユニット等を備えている。
【0022】
なお、以下に説明する実施の形態におけるXY方向は例示であって、X方向とY方向とを入れ替えてもよい。
【0023】
図1及び図2において、チャック10は、基板1の受け渡しを行う受け渡し位置にある。受け渡し位置において、図示しない基板搬送ロボットにより基板1がチャック10へ搬入され、また図示しない基板搬送ロボットにより基板1がチャック10から搬出される。チャック10は、基板1の裏面を真空吸着して支持する。基板1の表面には、フォトレジストが塗布されている。
【0024】
基板1の露光を行う露光位置の上空に、ベース3をまたいでゲート11が設けられている。ゲート11には、複数の光ビーム照射装置20が搭載されている。なお、本実施の形態は、8つの光ビーム照射装置20を用いた露光装置の例を示しているが、光ビーム照射装置の数はこれに限らず、本発明は1つ又は2つ以上の光ビーム照射装置を用いた露光装置に適用される。
【0025】
図4は、光ビーム照射装置の概略構成を示す図である。光ビーム照射装置20は、光ファイバー22、レンズ23、ミラー24、DMD(Digital Micromirror Device)25、投影レンズ26、及びDMD駆動回路27を含んで構成されている。光ファイバー22は、レーザー光源ユニット21から発生された紫外光の光ビームを、光ビーム照射装置20内へ導入する。光ファイバー22から射出された光ビームは、レンズ23及びミラー24を介して、DMD25へ照射される。DMD25は、光ビームを反射する複数の微小なミラーを直交する二方向に配列して構成された空間的光変調器であり、各ミラーの角度を変更して光ビームを変調する。DMD25により変調された光ビームは、投影レンズ26を含むヘッド部20aから照射される。DMD駆動回路27は、主制御装置70から供給された描画データに基づいて、DMD25の各ミラーの角度を変更する。
【0026】
図2及び図3において、チャック10は、θステージ8に搭載されており、θステージ8の下にはYステージ7及びXステージ5が設けられている。Xステージ5は、ベース3に設けられたXガイド4に搭載され、Xガイド4に沿ってX方向へ移動する。Yステージ7は、Xステージ5に設けられたYガイド6に搭載され、Yガイド6に沿ってY方向へ移動する。θステージ8は、Yステージ7に搭載され、θ方向へ回転する。Xステージ5、Yステージ7、及びθステージ8には、ボールねじ及びモータや、リニアモータ等の図示しない駆動機構が設けられており、各駆動機構は、図1のステージ駆動回路60により駆動される。
【0027】
θステージ8のθ方向への回転により、チャック10に搭載された基板1は、直交する二辺がX方向及びY方向へ向く様に回転される。Xステージ5のX方向への移動により、チャック10は、受け渡し位置と露光位置との間を移動される。露光位置において、Xステージ5のX方向への移動により、各光ビーム照射装置20のヘッド部20aから照射された光ビームが、基板1をX方向へ走査する。また、Yステージ7のY方向への移動により、各光ビーム照射装置20のヘッド部20aから照射された光ビームによる基板1の走査領域が、Y方向へ移動される。図1において、主制御装置70は、ステージ駆動回路60を制御して、θステージ8のθ方向へ回転、Xステージ5のX方向への移動、及びYステージ7のY方向への移動を行う。
【0028】
図5は、DMDのミラー部の一例を示す図である。光ビーム照射装置20のDMD25は、光ビーム照射装置20からの光ビームによる基板1の走査方向(X方向)に対して、所定の角度θだけ傾いて配置されている。DMD25を、走査方向に対して傾けて配置すると、直交する二方向に配列された複数のミラー25aのいずれかが、隣接するミラー25a間の隙間に対応する箇所をカバーするので、パターンの描画を隙間無く行うことができる。
【0029】
なお、本実施の形態では、Xステージ5によりチャック10をX方向へ移動することによって、光ビーム照射装置20からの光ビームによる基板1の走査を行っているが、光ビーム照射装置20を移動することにより、光ビーム照射装置20からの光ビームによる基板1の走査を行ってもよい。また、本実施の形態では、Yステージ7によりチャック10をY方向へ移動することによって、光ビーム照射装置20からの光ビームによる基板1の走査領域を変更しているが、光ビーム照射装置20を移動することにより、光ビーム照射装置20からの光ビームによる基板1の走査領域を変更してもよい。
【0030】
図1及び図2において、ベース3には、X方向へ伸びるリニアスケール31が設置されている。リニアスケール31には、Xステージ5のX方向への移動量を検出するための目盛が付けられている。また、Xステージ5には、Y方向へ伸びるリニアスケール33が設置されている。リニアスケール33には、Yステージ7のY方向への移動量を検出するための目盛が付けられている。
【0031】
図1及び図3において、Xステージ5の一側面には、リニアスケール31に対向して、エンコーダ32が取り付けられている。エンコーダ32は、リニアスケール31の目盛を検出して、パルス信号を主制御装置70へ出力する。また、図1及び図2において、Yステージ7の一側面には、リニアスケール33に対向して、エンコーダ34が取り付けられている。エンコーダ34は、リニアスケール33の目盛を検出して、パルス信号を主制御装置70へ出力する。主制御装置70は、エンコーダ32のパルス信号をカウントして、Xステージ5のX方向への移動量を検出し、エンコーダ34のパルス信号をカウントして、Yステージ7のY方向への移動量を検出する。
【0032】
図6は、レーザー測長系の動作を説明する図である。なお、図6においては、図1に示したゲート11、及び光ビーム照射装置20が省略されている。レーザー測長系は、公知のレーザー干渉式の測長系であって、レーザー光源41、レーザー干渉計42,44、及びバーミラー43,45を含んで構成されている。バーミラー43は、チャック10のY方向へ伸びる一側面に取り付けられている。また、バーミラー45は、チャック10のX方向へ伸びる一側面に取り付けられている。
【0033】
レーザー干渉計42は、レーザー光源41からのレーザー光をバーミラー43へ照射し、バーミラー43により反射されたレーザー光を受光して、レーザー光源41からのレーザー光とバーミラー43により反射されたレーザー光との干渉を測定する。この測定は、Y方向の2箇所で行う。レーザー測長系制御装置40は、主制御装置70の制御により、レーザー干渉計42の測定結果から、チャック10のX方向の位置及び回転を検出する。
【0034】
一方、レーザー干渉計44は、レーザー光源41からのレーザー光をバーミラー45へ照射し、バーミラー45により反射されたレーザー光を受光して、レーザー光源41からのレーザー光とバーミラー45により反射されたレーザー光との干渉を測定する。レーザー測長系制御装置40は、主制御装置70の制御により、レーザー干渉計44の測定結果から、チャック10のY方向の位置を検出する。
【0035】
図4において、主制御装置70は、光ビーム照射装置20のDMD駆動回路27へ描画データを供給する描画制御部を有する。図7は、本発明の一実施の形態による描画制御部の概略構成を示す図である。描画制御部71は、メモリ72、バンド幅設定部73、中心点座標決定部74、座標決定部75、描画図形座標メモリ82、及び描画データ生成部84を含んで構成されている。
【0036】
描画図形座標メモリ82には、基板に描画するパターンの図形のCAD/CAMデータを処理したベクターデータが記憶されている。描画データ生成部84は、座標演算回路85、及び描画データ生成回路86を含んで構成されている。座標演算回路85は、描画図形座標メモリ82に記憶されたベクターデータから、光ビームによる基板の走査方向の直線(走査線)と、パターンの図形を構成する線との交点を演算で求めて、基板1に対し光ビームの照射を開始する位置と、光ビームの照射を終了する位置とを決定する。描画データ生成回路86は、座標演算回路85により決定された光ビームの照射を開始する位置と光ビームの照射を終了する位置との間を塗りつぶしてパターンを描画するため、両位置の間の描画データを生成する。メモリ72は、描画データ生成部84が生成した描画データを、そのXY座標をアドレスとして記憶する。
【0037】
バンド幅設定部73は、メモリ72から読み出す描画データのY座標の範囲を決定することにより、光ビーム照射装置20のヘッド部20aから照射される光ビームのY方向のバンド幅を設定する。
【0038】
レーザー測長系制御装置40は、露光位置における基板1の露光を開始する前のチャック10のXY方向の位置を検出する。中心点座標決定部74は、レーザー測長系制御装置40が検出したチャック10のXY方向の位置から、基板1の露光を開始する前のチャック10の中心点のXY座標を決定する。図1において、光ビーム照射装置20からの光ビームにより基板1の走査を行う際、主制御装置70は、ステージ駆動回路60を制御して、Xステージ5によりチャック10をX方向へ移動させる。基板1の走査領域を移動する際、主制御装置70は、ステージ駆動回路60を制御して、Yステージ7によりチャック10をY方向へ移動させる。図7において、中心点座標決定部74は、エンコーダ32,34からのパルス信号をカウントして、Xステージ5のX方向への移動量及びYステージ7のY方向への移動量を検出し、チャック10の中心点のXY座標を決定する。
【0039】
座標決定部75は、中心点座標決定部74が決定したチャック10の中心点のXY座標に基づき、各光ビーム照射装置20のDMD駆動回路27へ供給する描画データのXY座標を決定する。メモリ72は、座標決定部75が決定したXY座標をアドレスとして入力し、入力したXY座標のアドレスに記憶された描画データを、各光ビーム照射装置20のDMD駆動回路27へ出力する。
【0040】
以下、本発明の一実施の形態による露光方法について説明する。図8は、ベクターデータの作成を説明する図である。ベクターデータを作成する装置は、CAD/CAM用コンピュータ90、ベクターデータ処理回路91、近似処理用データメモリ92、及び入力装置93を含んで構成されている。CAD/CAM用コンピュータ90は、基板に描画するパターンの図形のCAD/CAMデータを作成する。CAD/CAM用コンピュータ90で作成されたCAD/CAMデータは、パターンの図形を構成する線の始点及び終点の座標と両点をつなぐ情報とから成るベクターデータである。ベクターデータ処理回路91は、CAD/CAM用コンピュータ90で作成されたCAD/CAMデータの内、パターンの図形の円の弧で構成された部分のデータについて、後述する近似処理用データメモリ92に記憶されたデータに基づいて、多角形近似の処理を行い、描画図形座標メモリ82に記憶されるベクターデータを作成する。
【0041】
図9は、多角形近似を説明する図である。本発明における多角形近似とは、円の弧を複数に分割し、分割した各弧の始点と終点を直線で結んで、円の弧を複数の直線で近似することを言う。図9は、破線で示した弧ADを分割点B,Cで3つに分割し、分割した各弧の始点と終点を直線で結んで、弧ADを3つの直線AB,BC,CDで近似した例を示している。図9において、円の半径をR、分割角度をθとすると、弧ADと直線AB,BC,CDとのずれ量が最大となる位置での近似誤差は、
近似誤差=R×(1−cos(θ/2))
となる。
【0042】
表示用パネル基板の露光を行う露光装置において、パターンの露光位置の誤差の許容値は、基板の種類により異なる。パターンの図形の円の弧で構成された部分について、高精度に滑らかな描写が要求される基板もあり、円の半径の値に比べて、非常に細かな分解能が要求される。また、円の半径は、同じ基板においても場所により異なる。本実施の形態では、図8において、露光装置の操作者が、多角形近似を行う際の近似誤差の許容値を、入力装置93から入力し、ベクターデータ処理回路91は、近似誤差が入力された許容値以下となる様に、円の半径に応じて円の弧の分割角度を決定する。
【0043】
図10は、単位半径の円における近似誤差のデータを示す表である。図10は、半径が1μmの円の円周を整数個に分割したときの、分割数、分割角度、及び近似誤差を示している。単位半径の円における近似誤差の値は、描画するパターンの図形の円の半径や近似誤差の許容値とは関係ない固有の値であり、分割角度毎に予め求めることができる。図8において、近似処理用データメモリ92には、図10に示した分割数、分割角度、及び近似誤差のデータが記憶されている。
【0044】
なお、近似処理用データメモリ92に記憶するデータは、単位半径の円のものに限らず、所定の半径の円において、円の弧を複数に分割し、分割した各弧の始点と終点を直線で結んで、円の弧を複数の直線で近似したときの近似誤差を、分割角度毎に予め求めたデータであればよい。
【0045】
ベクターデータ処理回路91は、CAD/CAM用コンピュータ90で作成されたCAD/CAMデータに含まれるパターンの図形の円の半径と、入力装置93から入力された許容値とに基づき、近似処理用データメモリ92に記憶された単位半径の円における近似誤差のデータから、以下の式に該当する近似誤差を検索する。
近似誤差≦許容値/円の半径
ここで、許容値を円の半径で割った値は、単位半径の円における許容値を示している。
【0046】
近似処理用データメモリ92に記憶された近似誤差のデータは、大きい順に並んでおり、ベクターデータ処理回路91は、これらのデータを順番に検索して、該当する近似誤差が1つ見つかると検索を終了する。そして、ベクターデータ処理回路91は、該当する近似誤差における分割角度を、多角形近似を行う際の最大分割角度として決定する。
【0047】
本来、近似誤差を求めるためには、図9に示す様に三角関数を用いた演算を行う必要があるが、本実施の形態では、単位半径の円における近似誤差のデータを近似処理用データメモリ92に予め記憶しておくことで、三角関数を用いた演算が不要となる。そして、1回の除算と数値の大小の比較のみで、円の半径に応じた円の弧の最大分割角度を決定することができる。
【0048】
図8において、ベクターデータ処理回路91は、CAD/CAM用コンピュータ90で作成されたCAD/CAMデータの内、基板に描画するパターンの図形の円の弧で構成された部分について、決定した最大分割角度以下の分割角度で多角形近似を行って、基板に描画するパターンの図形のベクターデータを作成する。図11は、円の弧を均等に分割するときの動作を説明する図である。円の弧を均等に分割するとき、ベクターデータ処理回路91は、円の弧の開始角度及び終了角度と、決定した最大分割角度とから、以下の式を用いて、分割数が整数となる様に、円の弧の分割数を決定する。
分割数≧(終了角度−開始角度)/最大分割角度
次に、ベクターデータ処理回路91は、円の弧の開始角度及び終了角度と、決定した分割数とから、以下の式を用いて、円の弧の分割角度を決定する。
分割角度=(終了角度−開始角度)/分割数
【0049】
続いて、ベクターデータ処理回路91は、円の半径Rと、円の弧の開始角度と、決定した分割角度とから、以下の式により、円の中心Oの座標を(0,0)としたときの分割点のXY座標を演算する。
X座標=R×cos(n×分割角度+開始角度)
Y座標=R×sin(n×分割角度+開始角度)
ここで、nは自然数、(n×分割角度+開始角度)は各分割点の角度を示している。そして、ベクターデータ処理回路91は、上式で求めたXY座標に、円の中心の座標を加算して、分割点のXY座標を求める。
【0050】
基板に描画するパターンの図形の円の弧で構成された部分を複数の直線で近似する際、当該円の弧を均等に分割するので、パターンが滑らかに描画される。そして、当該円の半径と、分割点の角度とから、三角関数を使用して、分割点の座標が演算で簡単に求められ、描画データの生成に適したベクターデータが速やかに作成される。
【0051】
次に、図12〜図14を用いて、円の弧を均等に分割する必要がない場合について説明する。図12は、単位半径の円における分割点の角度と座標を示す図である。半径が1μmの円の円周について、図12(a)は分割角度が180°のとき、図12(b)は分割角度が120°のとき、図12(c)は分割角度が90°のとき、図12(d)は分割角度が72°のとき、図12(e)は分割角度が60°のときの、分割点の角度とXY座標を示している。単位半径の円における分割点のXY座標の値は、描画するパターンの図形の円の半径とは関係ない固有の値であり、分割角度毎に予め求めることができる。図13は、単位半径の円における分割点の座標のデータを示す表である。図13(a)〜(e)は、図12(a)〜(e)に対応して、分割角度毎に分割点の角度とXY座標を示している。図8において、近似処理用データメモリ92には、図10に示した分割数、分割角度、及び近似誤差のデータの他に、図13に示した分割点の角度と座標のデータが記憶されている。
【0052】
図14は、円の弧を均等に分割する必要がないときの動作を説明する図である。円の弧を均等に分割する必要がないとき、ベクターデータ処理回路91は、円の弧の開始角度から終了角度までの間を有効範囲として、近似処理用データメモリ92に記憶された単位半径の円における分割点の角度と座標のデータの中から、決定した最大分割角度における、有効範囲内の角度にある分割点のXY座標を読み出す。次に、ベクターデータ処理回路91は、読み出した分割点のXY座標の値に円の弧の半径Rを掛けて、円の中心Oの座標を(0,0)としたときの分割点のXY座標を演算する。そして、ベクターデータ処理回路91は、求めたXY座標に、円の中心の座標を加算して、分割点のXY座標を求める。
【0053】
基板に描画するパターンの図形の円の弧で構成された部分を複数の直線で近似する際、円の弧を均等に分割する必要がない場合に、当該円の半径と、所定の半径の円において、円の弧を決定した最大分割角度で均等に分割した分割点の座標を、分割角度毎に予め求めたデータとから、分割点の座標が演算でさらに簡単に求められ、描画データの生成に適したベクターデータがさらに速やかに作成される。
【0054】
図15〜図18は、光ビームによる基板の走査を説明する図である。図15〜図18は、8つの光ビーム照射装置20からの8本の光ビームにより、基板1のX方向の走査を4回行って、基板1全体を走査する例を示している。図15〜図18においては、各光ビーム照射装置20のヘッド部20aが破線で示されている。各光ビーム照射装置20のヘッド部20aから照射された光ビームは、Y方向にバンド幅Wを有し、Xステージ5のX方向への移動によって、基板1を矢印で示す方向へ走査する。
【0055】
図15は、1回目の走査を示し、X方向への1回目の走査により、図15に灰色で示す走査領域でパターンの描画が行われる。1回目の走査が終了すると、Yステージ7のY方向への移動により、基板1がY方向へバンド幅Wと同じ距離だけ移動される。図16は、2回目の走査を示し、X方向への2回目の走査により、図16に灰色で示す走査領域でパターンの描画が行われる。2回目の走査が終了すると、Yステージ7のY方向への移動により、基板1がY方向へバンド幅Wと同じ距離だけ移動される。図17は、3回目の走査を示し、X方向への3回目の走査により、図17に灰色で示す走査領域でパターンの描画が行われる。3回目の走査が終了すると、Yステージ7のY方向への移動により、基板1がY方向へバンド幅Wと同じ距離だけ移動される。図18は、4回目の走査を示し、X方向への4回目の走査により、図18に灰色で示す走査領域でパターンの描画が行われ、基板1全体の走査が終了する。
【0056】
複数の光ビーム照射装置20からの複数の光ビームにより基板1の走査を並行して行うことにより、基板1全体の走査に掛かる時間を短くすることができ、タクトタイムを短縮することができる。
【0057】
なお、図15〜図18では、基板1のX方向の走査を4回行って、基板1全体を走査する例を示したが、走査の回数はこれに限らず、基板1のX方向の走査を3回以下又は5回以上行って、基板1全体を走査してもよい。
【0058】
以上説明した実施の形態によれば、基板に描画するパターンの図形の円の弧で構成された部分について、当該円の半径と、所定の半径の円において、円の弧を複数に分割し、分割した各弧の始点と終点を直線で結んで、円の弧を複数の直線で近似したときの近似誤差を、分割角度毎に予め求めたデータとから、近似誤差が許容値以下となる様に最大分割角度を決定し、決定した最大分割角度以下の分割角度で分割し、分割した各弧の始点と終点を結んだ複数の直線で近似して、基板に描画するパターンの図形のベクターデータを作成することにより、円の半径に応じた分割角度を簡単な処理で高速に決定して、描画データの生成に適したベクターデータを速やかに作成することができる。そして、作成したベクターデータから、基板に対し光ビームの照射を開始する位置と光ビームの照射を終了する位置とを演算で求めて、光ビーム照射装置の駆動回路へ供給する描画データを生成することにより、直線と円の弧との交点を求める演算処理を行うことなく、描画データを速やかに生成することができる。
【0059】
さらに、図11を用いて説明した実施の形態によれば、基板に描画するパターンの図形の円の弧で構成された部分を複数の直線で近似する際、当該円の弧を均等に分割することにより、パターンをより滑らかに描画することができる。そして、当該円の半径と、分割点の角度とから、三角関数を使用して、分割点の座標を演算で簡単に求めて、描画データの生成に適したベクターデータを速やかに作成することができる。
【0060】
また、図12〜図14を用いて説明した実施の形態によれば、基板に描画するパターンの図形の円の弧で構成された部分を複数の直線で近似する際、円の弧を均等に分割する必要がない場合に、当該円の半径と、所定の半径の円において、円の弧を決定した最大分割角度で均等に分割した分割点の座標を、分割角度毎に予め求めたデータとから、分割点の座標を演算でさらに簡単に求めて、描画データの生成に適したベクターデータをさらに速やかに作成することができる。
【0061】
本発明の露光装置又は露光方法を用いて基板の露光を行うことにより、基板に描画するパターンの図形の円の弧で構成された部分を、円の半径に応じた分割数の直線で近似し、描画データを速やかに生成することができるので、高品質な表示用パネル基板を高いスループットで製造することができる。
【0062】
例えば、図19は、液晶ディスプレイ装置のTFT基板の製造工程の一例を示すフローチャートである。薄膜形成工程(ステップ101)では、スパッタ法やプラズマ化学気相成長(CVD)法等により、基板上に液晶駆動用の透明電極となる導電体膜や絶縁体膜等の薄膜を形成する。レジスト塗布工程(ステップ102)では、ロール塗布法等によりフォトレジストを塗布して、薄膜形成工程(ステップ101)で形成した薄膜上にフォトレジスト膜を形成する。露光工程(ステップ103)では、露光装置を用いて、フォトレジスト膜にパターンを形成する。現像工程(ステップ104)では、シャワー現像法等により現像液をフォトレジスト膜上に供給して、フォトレジスト膜の不要部分を除去する。エッチング工程(ステップ105)では、ウエットエッチングにより、薄膜形成工程(ステップ101)で形成した薄膜の内、フォトレジスト膜でマスクされていない部分を除去する。剥離工程(ステップ106)では、エッチング工程(ステップ105)でのマスクの役目を終えたフォトレジスト膜を、剥離液によって剥離する。これらの各工程の前又は後には、必要に応じて、基板の洗浄/乾燥工程が実施される。これらの工程を数回繰り返して、基板上にTFTアレイが形成される。
【0063】
また、図20は、液晶ディスプレイ装置のカラーフィルタ基板の製造工程の一例を示すフローチャートである。ブラックマトリクス形成工程(ステップ201)では、レジスト塗布、露光、現像、エッチング、剥離等の処理により、基板上にブラックマトリクスを形成する。着色パターン形成工程(ステップ202)では、染色法や顔料分散法等により、基板上に着色パターンを形成する。この工程を、R、G、Bの着色パターンについて繰り返す。保護膜形成工程(ステップ203)では、着色パターンの上に保護膜を形成し、透明電極膜形成工程(ステップ204)では、保護膜の上に透明電極膜を形成する。これらの各工程の前、途中又は後には、必要に応じて、基板の洗浄/乾燥工程が実施される。
【0064】
図19に示したTFT基板の製造工程では、露光工程(ステップ103)において、図20に示したカラーフィルタ基板の製造工程では、ブラックマトリクス形成工程(ステップ201)及び着色パターン形成工程(ステップ202)の露光処理において、本発明の露光装置又は露光方法を適用することができる。
【符号の説明】
【0065】
1 基板
3 ベース
4 Xガイド
5 Xステージ
6 Yガイド
7 Yステージ
8 θステージ
10 チャック
11 ゲート
20 光ビーム照射装置
20a ヘッド部
21 レーザー光源ユニット
22 光ファイバー
23 レンズ
24 ミラー
25 DMD(Digital Micromirror Device)
26 投影レンズ
27 DMD駆動回路
31,33 リニアスケール
32,34 エンコーダ
40 レーザー測長系制御装置
41 レーザー光源
42,44 レーザー干渉計
43,45 バーミラー
60 ステージ駆動回路
70 主制御装置
71 描画制御部
72 メモリ
73 バンド幅設定部
74 中心点座標決定部
75 座標決定部
82 描画図形座標メモリ
84 描画データ生成部
85 座標演算回路
86 描画データ生成回路
90 CAD/CAM用コンピュータ
91 ベクターデータ処理回路
92 近似処理用データメモリ
93 入力装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォトレジストが塗布された基板を支持するチャックと、
光ビームを変調する空間的光変調器、描画データに基づいて空間的光変調器を駆動する駆動回路、及び空間的光変調器により変調された光ビームを照射する照射光学系を有する光ビーム照射装置と、
前記チャックと前記光ビーム照射装置とを相対的に移動する移動手段とを備え、
前記移動手段により前記チャックと前記光ビーム照射装置とを相対的に移動し、前記光ビーム照射装置からの光ビームにより基板を走査して、基板にパターンを描画する露光装置であって、
基板に描画するパターンの図形のベクターデータを記憶するメモリと、
前記メモリに記憶されたベクターデータから、前記光ビーム照射装置の駆動回路へ供給する描画データを生成する描画データ生成手段とを備え、
前記メモリに記憶されたベクターデータは、パターンの図形の円の弧で構成された部分が、当該円の半径と、所定の半径の円において、円の弧を複数に分割し、分割した各弧の始点と終点を直線で結んで、円の弧を複数の直線で近似したときの近似誤差を、分割角度毎に予め求めたデータとから、近似誤差が許容値以下となる様に決定された最大分割角度以下の分割角度で分割されて、分割された各弧の始点と終点を結んだ複数の直線で近似され、
前記描画データ生成手段は、前記メモリに記憶されたベクターデータから、基板に対し光ビームの照射を開始する位置と光ビームの照射を終了する位置とを演算で求めて、前記光ビーム照射装置の駆動回路へ供給する描画データを生成することを特徴とする露光装置。
【請求項2】
前記メモリに記憶されたベクターデータは、パターンの図形の円の弧で構成された部分が、当該円の半径と、当該円の弧を決定された最大分割角度以下の分割角度で均等に分割した分割点の角度とから、演算で求められた分割点の座標を含むことを特徴とする請求項1に記載の露光装置。
【請求項3】
前記メモリに記憶されたベクターデータは、パターンの図形の円の弧で構成された部分が、当該円の半径と、所定の半径の円において、円の弧を決定された最大分割角度で均等に分割した分割点の座標を、分割角度毎に予め求めたデータとから、演算で求められた分割点の座標を含むことを特徴とする請求項1に記載の露光装置。
【請求項4】
フォトレジストが塗布された基板をチャックで支持し、
チャックと、光ビームを変調する空間的光変調器、描画データに基づいて空間的光変調器を駆動する駆動回路、及び空間的光変調器により変調された光ビームを照射する照射光学系を有する光ビーム照射装置とを、相対的に移動し、
光ビーム照射装置からの光ビームにより基板を走査して、基板にパターンを描画する露光方法であって、
基板に描画するパターンの図形の円の弧で構成された部分について、当該円の半径と、所定の半径の円において、円の弧を複数に分割し、分割した各弧の始点と終点を直線で結んで、円の弧を複数の直線で近似したときの近似誤差を、分割角度毎に予め求めたデータとから、近似誤差が許容値以下となる様に最大分割角度を決定し、決定した最大分割角度以下の分割角度で分割し、分割した各弧の始点と終点を結んだ複数の直線で近似して、基板に描画するパターンの図形のベクターデータを作成し、
作成したベクターデータから、基板に対し光ビームの照射を開始する位置と光ビームの照射を終了する位置と演算で求めて、光ビーム照射装置の駆動回路へ供給する描画データを生成することを特徴とする露光方法。
【請求項5】
基板に描画するパターンの図形の円の弧で構成された部分について、当該円の弧を決定した最大分割角度以下の分割角度で均等に分割し、当該円の半径と、分割点の角度とから、分割点の座標を演算で求めて、基板に描画するパターンの図形のベクターデータを作成することを特徴とする請求項4に記載の露光方法。
【請求項6】
基板に描画するパターンの図形の円の弧で構成された部分について、当該円の半径と、所定の半径の円において、円の弧を決定した最大分割角度で均等に分割した分割点の座標を、分割角度毎に予め求めたデータとから、分割点の座標を演算で求めて、基板に描画するパターンの図形のベクターデータを作成することを特徴とする請求項4に記載の露光方法。
【請求項7】
請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の露光装置を用いて基板の露光を行うことを特徴とする表示用パネル基板の製造方法。
【請求項8】
請求項4乃至請求項6のいずれか一項に記載の露光方法を用いて基板の露光を行うことを特徴とする表示用パネル基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2012−103321(P2012−103321A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−249597(P2010−249597)
【出願日】平成22年11月8日(2010.11.8)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】