説明

露光装置およびデバイス製造方法

【課題】
液浸液自体に含まれる不純物の残留物による可動ステージの基準マークを検出する際の精度劣化を低減し、位置合わせ精度の劣化を低減する液浸露光装置を提供する。
【解決手段】
原版であるレチクル2のパターンをウェハ5に液浸液を介して露光する露光装置で、基準マーク11は、液浸液に浸される時に計測する第1のマークであるキャリブレーションマーク40および液浸液に浸されない時に計測する第2のマーク44を分離した位置に有し、ウェハステージ13は、基準マーク11が配置され、ウェハ5を保持する。位置検出装置4は、ウェハ5が液浸液に浸されない時に、第2のマーク44を検出することによりウェハ5の位置を検出する。ウェハ5が液浸液に浸される時に、第2のマーク44が液浸液に浸されない基準マーク11上の液浸領域110外の領域に配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板の位置を検出し、マスク上のパターンを基板上に投影露光する液浸露光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体素子の製造技術の進展は目覚ましく、又それに伴う微細加工技術の進展も著しい。
特に、光加工技術はサブミクロンの解像力を有する縮小投影露光装置であるステッパーが主流であり、更なる解像力向上に向けて光学系の開口数(NA)の拡大や、露光波長の短波長化が図られている。
露光波長の短波長化に伴って、露光光源もg線、i線の高圧水銀ランプからKrF更にArFのエキシマレーザーに変移してきている。
更には、解像力の向上及び露光時の焦点深度の確保のため、ウェハと投影露光光学系の空間を液浸状態にし、露光可能な投影光学系を有する投影露光装置が登場して来ている。
又、投影パターンの解像力の向上に伴って、投影露光装置におけるウェハとマスク(レチクル)を相対的位置合わせするアライメントについても高精度化が必要である。
例えば、特開2006−295151号公報(特許文献1)では、液浸法に基づいて基板を露光する際、基板を良好に露光できる露光方法が提案されている。
【0003】
投影露光装置は高解像度の露光装置であると同時に高精度な位置検出装置としての機能も要求されている。
別な観点として露光装置は、高スループットであることも重要であり、これを達成する露光装置として、ステージを複数構成したツーステージ型の露光装置がある。
ツーステージ型の露光装置においては、ウェハの位置検出(アライメント、フォーカス)する計測空間である計測ステーションと、その計測結果を基に、露光を行う露光空間である露光ステーションの少なくとも2つの空間を有している。
なお、計測ステーションと露光ステーションへのウェハ搬送方法の一つとして、複数の駆動ステージを構成し、それらを交互に入れ替えるものがある。
計測ステーションには、ウェハ上に構成されたアライメントマークを光学的に検出するアライメント検出系が構成され、その検出系からの位置情報より露光ステーションでの露光位置を決定する。
一つのステージが計測ステーションから露光ステーションへ移動する際に、その相対位置を管理する必要があるため、ステージ上には基準マークが構成されている。
この基準マークを計測ステーションにおいて、アライメント検出系で計測し、その基準マークに対して、ウェハ上のアライメントマークを検出する。
その後、ステージが露光ステーションに移動し、露光ステーション側でマスクと基準マークの相対位置を検出することで、計測ステーションと露光ステーションの相対位置が保証される。
従って、ツーステージ型の露光装置においては、ステージ上に構成された基準マークを2つのステーションで計測する必要がある。
更に露光が終了した後は、再度、計測ステーション側にステージが移動し、次のウェハの位置検出及び基準マークの位置検出を行う。
以上説明したように複数のウェハを露光する場合、基準マークも計測ステーション、露光ステーション、計測ステーションと繰り返し計測が行われる。
ここで更に、液浸型の露光装置の場合、上記の基準マークを計測ステーションでは液浸液に浸されない状態で、また露光ステーションでは液浸液に浸された状態という2つの状態で計測する必要がある。
上記基準マークは、一般的にガラス基板にクロム等の材質で微細な段差構造を有するパターン(マーク)として構成されている。
【特許文献1】特開2006−295151号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、この微細な段差構造を有するマークが液浸液に浸された状態で計測した後は、そのパターン部分に液浸液が溜まる場合がある。
液浸液の残留物が残ったパターンを、計測ステーション側のアライメント検出系で検出すると、液浸液による屈折、散乱のため、基準マーク位置の検出精度が劣化する。
常に、液浸液の残留物の状態が一定であれば、オフセットとして補正することも可能であるが、実際には浸液の残留物の状態は一定ではなく再現性がないため、オフセットとして補正することは困難である。
従って、基準マークの検出精度が劣化し、結果としてウェハのアライメント精度が低下する。
また、液浸液を除去する機構を有していたとしても、液浸液自体に含まれる不純物がパターン部分に残留し、この残留物により液浸液に浸されない状態での計測精度も同様に劣化する。
【0005】
図13を参照して、基準マーク111を断面方向(YZ平面)で観察した従来例について説明する。
Cr等の金属膜で構成され、位置を検出するためのマークがCrのある部分である塗りつぶし部21と無い部分であるガラス部21aから形成される。
従って、ミクロ的に見るとCrのある塗りつぶし部21と無い所であるガラス部21aには段差が形成されている。
液浸液中にこれらキャリブレーションマークを計測するために駆動し、その後、液浸領域から出すと、それら段差領域に液浸液の残留物22が残る場合がある。
または、液浸液に浸される状態、液浸液に浸されない状態を繰り返して往復している内に、液浸液に微量に溶け込んでいる不純物の堆積物23が堆積する場合がある。
液浸液の残留物22や不純物の堆積物23が残留している位置検出マークを上記位置検出装置4にて計測する場合、それら残留物である液浸液の残留物22、不純物の堆積物23によって、計測誤差が発生する。
又、残留物である液浸液の残留物22、不純物の堆積物23が発生しないようにブロワー等で取り除くことは、このような空気の噴きつけを行うことで、急速な気化熱が発生し、基準マーク111全体の伸縮が起こり、ベースラインの計測誤差が発生する。
【0006】
上記のようにステージ上に構成された基準マークを液浸液に浸される状態と液浸液に浸されない状態の2つの状態で計測する液浸露光装置において、液浸液に浸されない状態での計測を行う場合がある。
この場合、基準マークのパターン部における液浸液の溜まりにより、液浸液に浸されない状態での位置検出精度が劣化する。
なお、この液浸液の溜まりによる精度劣化は、ツーステージ型露光装置に限定されず、従来のシングルステージ型の露光装置においても発生する。
シングルステージ型の露光装置においては、アライメント検出系と投影光学系との距離であるベースラインを計測する際に、同様にステージ上の基準マークを計測する必要がある。
このアライメント検出系では液浸液に浸されない状態で計測する場合、同様にアライメント精度が劣化する。
そこで、本発明は、液浸液自体に含まれる不純物の残留物による可動ステージの基準マークを検出する際の精度劣化を低減し、位置合わせ精度の劣化を低減する液浸露光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本発明の露光装置は、原版に構成されたパターンを基板上に投影する投影光学系を有し、前記投影光学系と前記基板の間に液浸液を供給し、前記パターンを前記基板に前記液浸液を介して露光する露光装置において、前記液浸液に浸される時に計測する第1のマークおよび前記液浸液に浸されない時に計測する第2のマークを分離した位置に有する基準マークと、前記基準マークが配置され、前記基板を保持する可動ステージと、前記基板が前記液浸液に浸されない時に、前記第2のマークを計測することにより前記基板の位置を検出する位置検出装置と、を有し、前記基板が前記液浸液に浸される時に、前記第2のマークが前記液浸液に浸されない前記基準マーク上の領域に配置されることを特徴とする。
【0008】
さらに、本発明の露光装置は、原版に構成されたパターンを基板上に投影する投影光学系を有し、前記投影光学系と前記基板の間に液浸液を供給し、前記パターンを前記基板に前記液浸液を介して露光する露光装置において、前記液浸液に浸される時に計測する第1のマークおよび前記液浸液に浸されない時に計測する第2のマークを分離した位置に有する基準マークと、前記基準マークが配置され、前記基板を保持する可動ステージと、前記基板が前記液浸液に浸されない時に、前記第2のマークを計測することにより前記基板の位置を検出する位置検出装置と、前記基準マークの環境を計測する環境計測用センサと、を有し、前記環境計測用センサの出力値に基づいて、前記第2のマークの位置を補正することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、液浸液自体に含まれる不純物の残留物による可動ステージの基準マークを検出する際の精度劣化を低減し、位置合わせ精度の劣化を低減する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施例を説明する。
【実施例1】
【0011】
図1の模式図を参照して、本実施例1の液浸露光装置を説明する。
本実施例1は、シングルステージ型液浸露光装置で、原版であるレチクル2と基板であるウェハ5を相対的に移動しながら露光するスキャナタイプである。
本実施例1は、原版であるレチクル2に構成されたパターンを基板上であるウェハ5上に投影する投影光学系3を有し、ウェハ5に最も近くに配置される最終光学素子との間に液浸液を供給し、パターンをウェハ5に液浸液を介して露光する露光装置である。
図5、図6、図7に示される基準マーク11は、液浸液に浸される時に計測する第1のマークであるキャリブレーションマーク40および液浸液に浸されない時に計測する第2のマーク44を分離した位置に有する。
可動ステージであるウェハステージ13は、基準マーク11が配置され、ウェハ5を保持する。
位置検出装置4は、ウェハ5が液浸液に浸されない時に、第2のマーク44を検出することによりウェハ5の位置を検出する。
さらに、ウェハ5が液浸液に浸される時に、第2のマーク44が液浸液に浸されない基準マーク上である基準マーク11上の液浸領域110外の領域に配置される。
さらに、基準マーク11上には、環境を計測する環境計測用センサである温度センサ41a、41bまたは圧力センサが構成され、前記環境計測用センサの出力値に基づいて、第2のマーク44の位置を補正する。
温度センサ41a、41bは、基準マーク11の温度を計測し、圧力センサは基準マーク11の周囲の環境の圧力を計測する手段である。
【0012】
露光光を照射する照明系1によって、駆動可能なレチクルステージ7上に保持されたレチクル2若しくはキャリブレーション用のマークを有する基準板6、6’を照明する。
レチクル2は、半導体素子を形成するための原版パターンが形成され、投影光学系3によって、感光剤が塗布された基板であるウェハ5上にそのパターン像を結像する。
基準板6、6’は、レチクル2と同様なガラス基板にCr等の遮光物質から成る位置合わせ用のマークパターン等が構成される。
図1に示される実施例1は、レチクル2上のパターンが投影光学系3による投影像の位置と、後述する位置検出装置4との相対距離であるベースラインB.L.を計測する時の配置状態であり、照明系1の照明光は基準板6を照明する。
感光剤が塗布されたウェハ5は、XYZ及び各軸周りの六軸方向に駆動可能な可動ステージであるウェハステージ13上に保持される。
ウェハステージ13は、その位置を検出するための干渉計(不図示)用のバーミラー8と後述するベースラインB.L.の計測用の基準マーク11が構成される。
【0013】
本実施例1の液浸型の露光装置において、ウェハ5上で液浸液がウェハ5の周辺部またはウェハステージ13内に漏れることを防止するために、ウェハ5、基準マーク11以外の部分12が、同じ高さで、かつ、それらの隙間が極力小さくなるように構成される。
位置検出装置4は、ウェハ5上に形成されているチップの配列情報を計測する装置で、ウェハ5を感光しない非露光光を用いて、各チップに形成されたアライメントマークである位置合わせ用マーク(不図示)を光学的に検出する装置である。
具体的には、そのアライメントマークを画像として検出する方法や、回折パターンで構成されたアライメントマークからの回折光による方法等が一般的に用いられている。
なお、本実施例においては、そうした検出方式には関係なく適用可能である。
位置検出装置4の近傍には、ウェハ5の高さを計測するためのフォーカス検出装置51、52が構成されている。
フォーカス検出系の照明光を発生させるフォーカス照明系51からウェハ5上に光を照射し、そこから反射した光を受光するフォーカス検出系52から構成されている。
これら各系によって、得られる情報からウェハ5のZ方向の高さ情報を求める。
本実施例1においては、このフォーカス検出装置の形態は、如何なる方法でも良い。
投影光学系3のウェハ5側には、液浸液を保持するための保持材9が構成され、その保持材9の内側に液浸液10が充填された状態で露光が行われる。
液浸液10の領域は非常に薄い(Z方向に高さがない)ので、液浸型でないドライの露光装置のように、露光エリアのフォーカス検出装置を構成することが困難な状態にある。
ウェハ5の高さ情報であるフォーカス情報は、投影光学系3とは別空間に構成されたフォーカス検出装置51、52によって、ウェハ5全面の高さ情報が露光動作開始までに予め計測される。
ウェハ5の高さ情報が計測された後、Z方向の位置を検出する干渉計(不図示)等を基準に露光が行われる。
【0014】
さて、次にベースラインB.L.の計測方法について、詳細に説明する。
図1に示される本実施例1は、基準マーク11を位置検出装置4で観察し計測している状態を示し、この状態で干渉計と位置検出装置4の検出結果から基準マーク11の位置が求められる。
その後、ウェハステージ13をY方向に駆動し、基準マーク11を投影光学系3の投影位置(露光領域)に駆動して、同様に干渉計と基準マーク11の検出結果からベースラインB.L.が求められる。
なお、基準マーク11は、後述する光電変換素子からの光電変換素子信号及び所定の開口部を持ったパターンによって、その位置を求める。
また、レチクル2側は基準板6に構成されたキャリブレーションマークを照明し、そのマークを透過した光量を前記光電変換素子によって検出する。
但し、基準板6を用いることが重要ではなく、このキャリブレーションマークをレチクル2上に構成して、そのレチクル2を用いて上記計測を行っても良い。
上記したように位置検出装置4と投影光学系3の投影位置の関係を算出する。
【0015】
図4、図5、図6を参照して、本実施例1の詳細について説明する。
本実施例1では、位置検出装置4で計測する第2のマーク44と、露光時に投影光学系3の位置を計測する第1のマークであるキャリブレーションマーク40を、基準マーク11内で離れた位置に構成する。
さらに、第2のマーク44は液浸液に浸されない液浸領域110外に配置する。
図4の模式図は、ウェハステージ13をXY断面から観察した状態を示す。
ウェハステージ13の四隅には、基準マーク11が構成されている。
なお、図4の本実施例1では、4隅の4ヶ所に配置しているが、個数や配置場所はこれに限定されるものではない。
つまり、ベースラインB.L.を計測する際に1つの基準マーク11で計測する場合でも本実施例1の適用は可能である。
図4(a)において、Y方向の位置を計測する干渉計用バーミラー8と同様にX方向を計測するバーミラー8’が構成されている。
レチクル2上のパターンを照明するスリット照明領域30の周りに液浸液が充填されている液浸領域10が位置する。
図4(a)(b)の本実施例1においては、Y方向に駆動しながら露光し、ウェハ5の端まで露光が行われると、折り返しY方向にウェハステージ13が駆動して繰り返し露光が行われる。
このような軌跡を描いて露光が行われ、ウェハ5全面に露光が行われた時の液浸液が接した領域が図4(b)に示され、液浸領域110が液浸液に接した部分となる。
つまり、ウェハ5の全面を露光する場合、その外周に配置された部材(基準マーク11も含む)も液浸液に浸される。
しかし、基準マーク11に対して、四隅には液浸液が接しない部分を構成する。
【0016】
図5の拡大された模式図を参照して、一つの基準マーク11を説明する。
基準マーク11の中には、露光領域であるスリット照明領域30の周りに液浸領域110が形成されている。
しかし、液浸領域110には含まれない場所に、位置検出装置4で計測する第2のマーク44が構成される。
このように液浸液の液浸領域110外に第2のマーク44を構成することで、液浸液の残留物による計測誤差の発生を低減する。
なお、ウェハステージ13の駆動領域を考慮した場合、液浸領域110外に配置された位置までウェハステージ13の駆動範囲を拡げる必要がある。
駆動範囲を拡げることは、ウェハステージ13自体若しくは干渉計バーミラー8の大きさを大きくする必要がある。
このため、本実施例1の装置全体のフットプリントが大きくなる場合があるが、位置検出装置4の構成場所を第2のマークの配置されている分だけ、ずらした位置に構成することにより、フットプリントが大きくなることを避ける。
【0017】
図6の模式図を参照して、本実施例1における基準マーク11の断面(YZ面)を説明する。
遮光物21によって、略全面が覆われ、第2のマーク44あるいは第1のマークであるキャリブレーションマーク40が構成される。
キャリブレーションマーク40は、露光光を遮光する遮光物21に開口される開口部から形成され、その開口部から透過した光を受光する光電変換素子43が配置される。
本実施例1の液浸露光装置においては、ウェハ5上のNA(開口数)が1を超えるため、単純なガラス基板では全反射によって、全ての光を透過、検出することが出来ない。
そこで、図6に示すように、半球型のレンズ42を構成し、そのレンズ42によって全ての光束を光電変換素子43上に到達するように構成される。
図6の基準マーク11では、半球型のレンズ42によって全光束を取り込んでいるが、これに限定されるものではない。
例えば、透過部であるキャリブレーションマーク40に拡散板を構成し、或いは蛍光体を構成し、それらを2次光源の光として受光するタイプのものであっても良い。
なお、この光電変換素子43からの信号を用いて位置計測する方法については、後述する。
【0018】
図9に示されるレチクル2上に構成されるキャリブレーションマーク33a、33b の露光領域32を図1に示される照明系1から照射される露光光で照明する。
キャリブレーションマーク33a、33bを透過した光は、投影光学系3によって、ウェハ5上にそのキャリブレーションマーク像として結像される。
一方、図6に示されるように基準マーク11にもレチクル2上のキャリブレーションマーク33a、33bと相似の開口部であるキャリブレーションマーク40が構成される。
ウェハ5上のレチクル2のキャリブレーションマーク33a、33bの像と基準マーク11の開口部であるキャリブレーションマーク40が一致した位置に配置された時に光電変換素子43からの信号強度が最大になる。
これはXY方向の位置だけに限らず、Z方向にキャリブレーションマーク像と基準マーク11が一致する所で、最大強度となる。
つまり、この光電変換素子43から得られる信号強度より、基準マーク11とキャリブレーションマーク像の位置関係が検出可能となる。
本実施例1においては、基準マーク11とキャリブレーションマーク像の相対位置を変えながら、信号強度の変化を検出して、その検出信号のプロファイルから相対位置を検出する。
【0019】
図6に示されるように第2のマーク44とキャリブレーションマーク40を所定の距離をおく位置関係、つまり、図5に示されるように液浸領域110外に第2のマーク44が構成される。
本実施例において、基準マーク11は環境計測用センサである温度センサ41a、41bを有し、環境計測用センサの出力値に基づいて、第2のマーク44の位置を補正する。
さらに、環境計測用センサの出力値と第2のマーク44の補正値とを、予め算出する算出手段を有し、算出手段によって得られた補正値に基づいて、第2のマーク44の位置を補正する。
この第2のマーク44の補正値は、シフト成分または投影光学系3のフォーカス位置である。
この基準マーク11には環境計測用センサである温度センサ41a、41bが構成されることが好適である。
一般的にArFレーザの露光波長に対しては、石英が透過性を有するため、基準マーク11は石英で形成される。
一方、キャリブレーションマーク40を計測する際には、液浸領域110で計測する必要があるため、必ずこの基準マーク11は液浸液に浸される。
液浸液に浸されると、液浸液自体の温度の影響、あるいは、基準マーク11が液浸領域110から出た後の気化熱から、石英自体に伸縮が発生する。
伸縮が発生すると第2のマーク44とキャリブレーションマーク40の距離の変動が発生するため、ベースラインB.L.が変動する。
そこで、この基準マーク11自体の温度を直接計測し、その温度と基準マーク11の熱膨張係数から相対距離の補正を行う。
この補正により、気化熱等による基準マーク11の変動が発生してもその影響を無くすことが出来る。
【0020】
次に、図7と図10を参照して、温度変化に伴う伸縮を補正することを詳細に説明する。
図7に示される基準マーク11には、キャリブレーションマーク40と液浸領域110外に配置された第2のマーク44とが構成される。
図8(b)に第2のマーク44が示され、XYの2方向に対する位置を計測出来るマークが構成される。
図8(a)に示されるようにキャリブレーションマーク40は、X方向の位置を計測するためのY方向に延びる複数の開口部であるスリット40aと同様にY方向計測用のX方向に延びる複数の開口部であるスリット40bから構成される。
これらマーク40a、40bから成るキャリブレーションマーク40が図7に示されるように2ヶ所の位置に構成される。
なお、これら2ヶ所に配置されたマーク40a、40bから成るキャリブレーションマーク40は、図9に示されるレチクル2上に構成されたキャリブレーションマーク33a、33bに相当する。
これら2ヶ所のマーク40a、40bを計測することで、レチクル2とウェハステージ13の回転関係(Z軸周り)を求めることが可能となる。
キャリブレーションマーク40と第2のマーク44の相対距離を、X方向はLx、Y方向をLyとする。
【0021】
一方、図10の模式図には、温度変化ΔTに伴うキャリブレーションマーク40と第2のマーク44の相対距離変動量ΔX(又はΔY:所謂、シフト成分)を示している。
図10に示されるように温度が高くなるに連れて、その相対距離が伸びる。
なお、ΔX=Lx×ΔT×熱膨張係数で算出可能である。Y方向においても、同様な関係が成立している。
但し、本実施例1の温度変化ΔTと相対距離変動量ΔXの関係は、シミュレーションから算出した関係とは若干異なる場合があり、例えば、基準マーク11を保持している機械部材(不図示)の影響や温度センサの温度特性の理論値からの乖離等で発生する。
そのため、本実施例1の装置上では、予め温度センサの出力値(ΔT)と相対距離変動量ΔX(ΔY)の関係を計測し、補正テーブルとして保有し、露光時には温度情報と先に保存した補正テーブルに基づいて、位置変動ΔX(ΔY)を補正しても良い。
なお、本実施例では環境計測用センサである温度センサを構成した例を説明したが、温度センサ代わって圧力センサを構成しても良い。
つまり、液浸液に浸された状態においては、液浸液の圧力によって基準マーク11の形状が変化する場合がある。
形状変化が発生した場合、XY方向若しくはZ方向に変形が発生する場合があり、圧力センサの出力値との相関を予め求めておくことで補正できる。
当然、環境計測用センサである温度センサと圧力センサとを共に構成して、両方の値から補正する場合もある。
以上の説明したように、液浸露光装置において、液浸液に浸されない状態で計測する位置検出装置4で検出するマークを液浸領域110外に配置することで、液浸液の残留物による計測誤差の影響を低減できる。
さらに、基準マーク11には温度センサ等を構成することで、その温度変化等に対する位置変動を補正できるため、より高精度なベースラインB.L.の計測が可能となる。
【実施例2】
【0022】
次に、図2、図3を参照して、本発明の実施例2について説明する。
図2、図3において、既に説明した同一機構に関しては、同符号を付しており、解説は省略する。
実施例1においては、ウェハステージを一つ有するシングルステージ形の液浸露光装置に関して説明したが、本実施例2においては、ウェハステージ13,13’が2つ構成されたツーステージ型の液浸露光装置について説明する。
本実施例2のツーステージ型の露光装置では、実施例1のシングルステージ型の露光装置とは異なり、ベースラインB.L.が無い。
さらに、ウェハ5上のチップ配列情報及びウェハ5の高さ情報を求める空間(計測ステーション)と、露光を行う露光ステーションに分けられ、それら空間を複数のウェハステージ13,13’が交互に入れ替わる点が異なる。
図2に示されるように計測ステーションにおいては、位置検出装置4によって、既述した位置計測が行われるが、その際に、図3に示されるようにウェハステージ13上に構成された基準マーク11の位置も計測する。つまり、基準マーク11とウェハ5の相対位置を計測する。
図3に示されるように高さ方向も基準マーク11をフォーカス検出装置52で計測し、その後、図2に示されるようにウェハ5の全面を計測し、基準マーク11に対する相対高さが計測される。
ウェハ5の位置計測(XYZ)が終わると、ウェハステージ13,13’ごと露光ステーションに移動する。
露光ステーションに移動すると、図3に示されるように基準マーク11とレチクル2上に構成されたマーク33a、33bの相対位置を光電変換素子43を用いて計測する。
なお、この基準マーク11とマーク33a、33bのZ方向に相対変化させることで得られる光量変化からZ方向の位置が求められる。
【0023】
以上のように、図2に示されるように基準マーク11とレチクル2の相対位置が算出されると、基準マーク11とウェハ5の相対位置は既知のため、この情報によって、露光動作が開始される。
つまり、本実施例2のツーステージ型の露光装置においては、ベースラインB.L.の計測は必要ないが、基準マーク11を計測ステーション、露光ステーションの2つの空間で計測する必要がある。
このため、実施例1と同様に第2のマーク44の配置条件に構成することにより、液浸液に浸されない状態での計測を行う場合、基準マーク11のパターン部における液浸液の残留物による液浸液に浸されない状態での位置検出精度の劣化を低減する。
又、温度センサを構成することで、より高精度な位置計測が可能となる。
以上のように、本実施例2のツーステージ型の露光装置においても基準マーク11上の第2のマーク44を液浸領域110外に配置し、更には温度センサあるいは圧力センサ等の環境計測センサを構成し、高精度な位置あわせが可能となる。
【0024】
次に、図11及び図12を参照して、上述の露光装置を利用したデバイス製造方法の実施例を説明する。
図11は、デバイス(ICやLSIなどの半導体チップ、LCD、CCD等)の製造を説明するためのフローチャートである。ここでは、半導体チップの製造方法を例に説明する。
露光装置を用いてウェハを露光する工程と、前記ウェハを現像する工程とを備え、具体的には、以下の工程から成る。
ステップ1(回路設計)では半導体デバイスの回路設計を行う。
ステップ2(マスク製作)では設計した回路パターンに基づいてマスクを製作する。
ステップ3(ウェハ製造)ではシリコン等の材料を用いてウェハを製造する。
ステップ4(ウェハプロセス)は前工程と呼ばれ、マスクとウェハを用いて、上記の露光装置によりリソグラフィ技術を利用してウェハ上に実際の回路を形成する。
ステップ5(組立)は、後工程と呼ばれ、ステップ4によって作製されたウェハを用いて半導体チップ化する工程であり、アッセンブリ工程(ダイシング、ボンディング)、パッケージング工程(チップ封入)等の組み立て工程を含む。
ステップ6(検査)では、ステップ5で作製された半導体デバイスの動作確認テスト、耐久性テスト等の検査を行う。
こうした工程を経て半導体デバイスが完成し、それが出荷(ステップ7)される。
【0025】
図12は、ステップ4のウェハプロセスの詳細なフローチャートである。
ステップ11(酸化)では、ウェハの表面を酸化させる。
ステップ12(CVD)では、ウェハの表面に絶縁膜を形成する。
ステップ13(電極形成)では、ウェハに電極を形成する。
ステップ14(イオン打込み)では、ウェハにイオンを打ち込む。
ステップ15(レジスト処理)では、ウェハに感光剤を塗布する。
ステップ16(露光)では、露光装置によってマスクの回路パターンをウェハに露光する。
ステップ17(現像)では、露光したウェハを現像する。
ステップ18(エッチング)では、現像したレジスト像以外の部分を削り取る。
ステップ19(レジスト剥離)では、エッチングが済んで不要となったレジストを取り除く。
これらのステップを繰り返し行うことによってウェハ上に多重に回路パターンが形成される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施例1のシングルステージ型の液浸露光装置の概略図である。
【図2】本発明の実施例2のツーステージ型の液浸露光装置の概略図である。
【図3】本発明の実施例2のツーステージ型の液浸露光装置の概略図である。
【図4】本発明の実施例のウェハステージ上の液浸領域を示す模式図である。
【図5】本発明の実施例における基準マークの拡大図である。
【図6】本発明の実施例における基準マークの断面図である。
【図7】本発明の実施例における基準マークの構成位置を詳細に示す詳細図である。
【図8】本発明の実施例における第2のマークとキャリブレーションマークである。
【図9】本発明の実施例におけるレチクル上のキャリブレーションマークである。
【図10】本発明の実施例における温度変化と相対位置変化を示す模式図である。
【図11】露光装置を使用したデバイスの製造を説明するためのフローチャートである。
【図12】図12に示すフローチャートのステップ4のウェハプロセスの詳細なフローチャートである。
【図13】従来例における基準マークの断面図である。
【符号の説明】
【0027】
1 照明系、2 レチクル、3 投影光学系
4 位置検出装置、5 ウェハ、6 基準板
7 レチクルステージ、8 干渉計バーミラー、9 液浸液保持部材
10 液浸液、 11 基準マーク、
12 同面板、13 ウェハステージ、14 レチクルステージバーミラー
21 遮光部材、22 液浸液の残留物、23 不純物の堆積物
30 露光領域、32 露光領域 33a,33b キャリブレーションマーク、
40 キャリブレーションマーク 41 温度センサ、42 半球レンズ
43 光電変換素子、44 第2のマーク、51 フォーカス照明系
52 フォーカス検出系、110 液浸領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原版に構成されたパターンを基板上に投影する投影光学系を有し、前記投影光学系と前記基板の間に液浸液を供給し、前記パターンを前記基板に前記液浸液を介して露光する露光装置において、
前記液浸液に浸される時に計測する第1のマークおよび前記液浸液に浸されない時に計測する第2のマークを分離した位置に有する基準マークと、
前記基準マークが配置され、前記基板を保持する可動ステージと、
前記基板が前記液浸液に浸されない時に、前記第2のマークを計測することにより前記基板の位置を検出する位置検出装置と、を有し、
前記基板が前記液浸液に浸される時に、前記第2のマークが前記液浸液に浸されない前記基準マーク上の領域に配置されることを特徴とする露光装置。
【請求項2】
前記基準マークの環境を計測する環境計測用センサを有し、
前記環境計測用センサの出力値に基づいて、前記第2のマークの位置を補正することを特徴とする請求項1記載の露光装置。
【請求項3】
原版に構成されたパターンを基板上に投影する投影光学系を有し、前記投影光学系と前記基板の間に液浸液を供給し、前記パターンを前記基板に前記液浸液を介して露光する露光装置において、
前記液浸液に浸される時に計測する第1のマークおよび前記液浸液に浸されない時に計測する第2のマークを分離した位置に有する基準マークと、
前記基準マークが配置され、前記基板を保持する可動ステージと、
前記基板が前記液浸液に浸されない時に、前記第2のマークを計測することにより前記基板の位置を検出する位置検出装置と、
前記基準マークの環境を計測する環境計測用センサと、を有し、
前記環境計測用センサの出力値に基づいて、前記第2のマークの位置を補正することを特徴とする投影露光装置。
【請求項4】
前記環境計測用センサは、前記基準マークの温度を計測する温度センサであることを特徴とする請求項2または3記載の露光装置。
【請求項5】
前記環境計測用センサは、前記基準マークの周囲の環境の圧力を計測する圧力センサであることを特徴とする請求項2または3記載の露光装置。
【請求項6】
前記環境計測用センサの出力値と前記第2のマークの補正値とを、予め算出する算出手段を有し、
前記算出手段によって得られた補正値に基づいて、前記第2のマークの位置を補正することを特徴とする請求項2から5のいずれかに記載の露光装置。
【請求項7】
前記第2のマークの補正値は、シフト成分であることを特徴とする請求項6記載の露光装置。
【請求項8】
前記第2のマークの補正値は、前記投影光学系のフォーカス位置であることを特徴とする請求項6記載の露光装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれかに記載の露光装置を用いて基板を露光する工程と、
前記基板を現像する工程と、を備えることを特徴とするデバイス製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−21372(P2009−21372A)
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−182523(P2007−182523)
【出願日】平成19年7月11日(2007.7.11)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】