説明

露光装置及びそれを備える画像形成装置

【課題】複数のレーザービームを用いて走査・露光を行う際、多重露光される領域の画像濃度を安定化させる。
【解決手段】露光装置は、感光体を露光するための第1の光ビームを出射する第1の光源A1〜A4及び第2の光ビームを出射する第2の光源B1〜B4を有し、第1の光ビームによって露光される領域と第2の光ビームによって露光される領域との少なくとも一部が重なるように感光体を露光する。レーザ駆動回路は第1の光ビームを出射させるための所定の値である第1の駆動電流を第1の光源に、第2の光ビームを出射させるための第2の駆動電流を第2の光源に供給する。そして、第1及び第2の光ビームの各々の強度又は第1及び第2の光ビームの強度の和が検出されて、レーザ駆動回路はその検出結果に基づいて第1及び第2の光ビームの強度の和が目標強度になるように第2の駆動電流の値を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被走査面を複数の光ビームで走査するための露光装置、画像形成装置に関し、特に、被走査面である感光体等の像担持体を複数の光ビームで走査する際、光ビームの光量制御を行って、複数の光ビームによって形成される多重露光することによって画素を形成する露光装置及びその露光装置を備える画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、複写機及びプリンタ等の画像形成装置において、所謂電子写真プロセスを用いて画像形成を行うものが知られている。近年、この種の画像形成装置においては、複数種類の記録紙(転写紙)に対して、高速、高画質、かつ高精度に画像形成することが求められている。
【0003】
電子写真プロセスを用いた画像形成装置には、光走査装置(光露光装置とも呼ぶ)が備えられており、光走査装置によって感光ドラムを走査・露光して、感光体上に静電潜像を形成している。感光体を走査・露光する際には、ビーム発生部から光ビーム(レーザービーム又はレーザー光ともいう)を発生させる。このレーザービームは、駆動モーター(以下、スキャナーモーターと呼ぶ)により回転駆動される回転多面鏡(ポリゴンミラー)によって偏向される。そして、偏向されたレーザービーム(偏向ビーム)によって感光体が走査・露光されて、感光体上に静電潜像が形成される。
【0004】
このような画像形成装置において、印字速度の高速化及び高解像度化に対処するため、レーザー素子の数を増やして、複数のレーザービームで感光ドラムを同時に走査・露光して、画像形成を行うようにしたものがある。複数のレーザービームを用いて走査・露光を行う画像形成装置は、シングルビームを用いて露光走査を行う画像形成装置よりも一回に走査される領域が広い。このため、副走査方向におけるレーザービームのピッチの不均一性又はポリゴンミラーの面倒れに起因する濃度むら(バンディング)が、視覚的に目立ちやすくなる。この結果、画像品位が低下してしまうという問題点がある。
【0005】
上述の濃度むらを低減する手法として、例えば、ポリゴンミラーの異なる反射面によって走査される複数のレーザービームで、感光ドラム上の同一位置を露光する手法が知られている(特許文献1参照)。以下、一度露光した位置を再び露光して静電潜像を形成する手法を多重露光と呼ぶ。多重露光によって画像を形成することによって、ポリゴンミラーの面倒れ又はレーザービームのピッチのずれ等に起因する周期的な位置ずれを目立たなくすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−109680号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の多重露光を行う装置では次のような課題が生じる。レーザービームの光量を所定の光量に保つため、光量制御を行う。まず、半導体レーザーから出射されるレーザービームをPD(フォトダイオード)によって検出し、検出結果から当該レーザービームの光量を検出する。そして、検出される光量と目標光量とを比較し、レーザービームの光量が目標光量になるように半導体レーザーに供給する駆動電流の値を制御する。このような手法は、一般に、APC(Auto Power Control)と呼ばれている。
【0008】
特許文献1における画像形成装置は、一つのドットを複数のレーザービームで形成するため、一つのドットを一つのレーザービームで形成する場合に比べて当然のことながら半導体レーザーの数を増やす必要がある。複数の半導体レーザーの各々について個別にAPCを実施すると、APCに要する時間が増大してしまうことになって、結果的に、走査ライン間の非画像領域において全てのレーザービームについてAPCを行うことが困難となってしまう。APCが実行されない半導体レーザーがあると、各走査ライン間で光量がばらつきやすくなるため、濃度むらが生じる。また、APCを実行するための制御回路を半導体レーザー各々に対して設けなければならないため、回路規模が増大してしまう。
【0009】
上述の問題点に鑑みて、本発明の目的は複数のレーザービームを用いて走査・露光を行う画像形成装置において、回路規模が増大することなく、多重露光される領域の画像濃度を安定化させることのできる露光装置及びその露光装置を備える画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するため、本発明の露光装置は、感光体を露光するための第1の光ビームを出射する第1の光源及び第2の光ビームを出射する第2の光源を有し、前記第1の光ビームによって露光される領域と前記第2の光ビームによって露光される領域との少なくとも一部が重なるように前記感光体を露光する露光装置において、前記第1の光ビームを出射させるための所定の値である第1の駆動電流を前記第1の光源に、前記第2の光ビームを出射させるための第2の駆動電流を第2の光源に供給する電流供給手段と、前記第1の光ビーム及び前記第2の光ビームそれぞれの強度、または前記第1の光ビームの強度及び前記第2の光ビームの強度の和を検出する検出手段と、前記検出手段の検出結果に基づいて、前記第1の光ビームの強度及び前記第2の光ビームの強度の和が目標強度になるように前記第2の駆動電流の値を制御する制御手段とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、本発明によれば、第2の光源に供給する第2の駆動電流の値を制御することによって第1の光ビームと第2の光ビームとの強度の和が目標強度に制御しているため、回路構成を簡略化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態による光走査装置の一例が用いられる画像形成装置の一例を示す破断して示す図である。
【図2】図1に示す光走査装置で用いられる光学系の第1の例を説明するための斜視図である。
【図3】図2に示す半導体レーザーの構成を説明するため図である。
【図4】図2に示すフォトダイオード(PD)の受光面上における反射光ビームの照射スポットを示す図である。
【図5】図2に示す感光ドラム上に形成されたレーザースポットの配置の一例を示す図である。
【図6】図1に示す光走査装置で用いられるレーザー駆動回路の一例を示すブロック図である。
【図7】図6に示すレーザー駆動回路におけるCPUの動作の第1の例を説明するためのフローチャートである。
【図8】図6に示すレーザー駆動回路におけるAPCシーケンスの第1の例を説明するための図である。
【図9】図2に示す光走査装置による多重露光において、走査位置変動が発生した場合に形成されるドットの配置を示す図である。
【図10】図2に示す光走査装置による多重露光において、多重スポットを構成する複数のスポットにおける光量差が大きくなった場合のドットの配置を示す図である。
【図11】図1に示す光走査装置で用いられる光学系の第2の例を説明するための斜視図である。
【図12】図11に示すフォトダイオード(PD)の受光面上における光ビームの走査位置を示す図である。
【図13】図11にフォトダイオード(PD)から出力されるPD検出信号の検出波形を示す図である。
【図14】図6に示すレーザー駆動回路におけるCPUの動作の第2の例を説明するためのフローチャートである。
【図15】図6に示すレーザー駆動回路におけるAPCシーケンスの第2の例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、光走査装置の一例について図面を参照して説明する。まず、本実施例に係る光走査装置の一例が用いられる画像形成装置について説明する。
【実施例1】
【0014】
この実施の形態においては、光走査装置は、複数の光ビーム(レーザービーム)で、感光体であるところの感光ドラムを露光する光源を有し、複数の光ビームによって感光ドラム上の同一位置を走査・露光する多重露光を行う。即ち、感光ドラムにおいて、異なる発光素子から出射されるレーザービームのスポット(露光領域)の全部、または少なくとも一部が重なるように、複数のレーザービームは走査される。例えば、光走査装置は、感光ドラム上の同一位置を走査・露光するレーザー素子群を同時に発光する。そして、光走査装置は、これらレーザー素子群の発光光量の合計光量が、予め規定された光量(多重スポット目標光量と呼ぶ)となるように、レーザー素子群のうちの一つのレーザー素子の発光光量を制御する(この制御は、例えば、APCに応じて行われる)。なお、ここでは、複数のレーザービームを用いて多重露光が行われる画像形成装置の一例として、8つのレーザービームによって多重露光を行って画像形成を行う画像形成装置について説明する。
【0015】
図1は、本発明の実施の形態による光走査装置の一例が用いられる画像形成装置の一例を示す破断して示す図である。なお、図1に示す画像形成装置は、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、及びブラック(K)の各色を重ね合わせてカラー画像を形成する画像形成装置である。
【0016】
図1中の画像形成装置1Aは、感光体であるところの4つの感光ドラム14、15、16、及び17を有しており、これら感光ドラム14、15、16、及び17に対面して中間転写体である中間転写ベルト(無端ベルト)13が配置されている。この中間転写ベルト13は、駆動ローラ13a、二次転写対向ローラ13b、及びテンションローラ(従動ローラ)13cに張設され、断面視において、略三角形状に規定されている。そして、この中間転写ベルト13は、図中時計回りに回転する(実線矢印で示す方向に回転する)。感光ドラム14、15、16、及び17は、中間転写ベルト13の回転方向に沿って配置されている。
【0017】
感光ドラム14の周囲には、帯電器27、現像器23、及びクリーナー31が配置されている。同様にして、感光ドラム15、16、及び17の周囲には、それぞれ帯電器28、29、及び30、現像器23、24、25、及び26、及びクリーナー31、32、33、及び34が配置されている。
【0018】
帯電器27、28、29、及び30は、それぞれ感光ドラム14、15、16、及び17の表面を均一に帯電する。感光ドラム14、15、16、及び17の上方には、光走査装置(露光装置ともいう)22が配置され、光走査装置22は、後述するようにして、画像データに応じて感光ドラム14、15、16、及び17の表面をレーザービーム(光ビーム)によって走査する。なお、図示の例では、感光ドラム14、15、16、及び17は、それぞれマゼンタ(M)、シアン(C)、イエロー(Y)、及びブラック(K)のトナーに対応しているものとする。
【0019】
ここで、図1に示す画像形成装置1Aによる画像形成(プリント)動作について説明する。図示の画像形成装置1Aは、2つのカセット給紙部1及び2と、1つの手差し給紙部3とを有している。これらカセット給紙部1及び2と手差し給紙部3とからは選択的に記録紙(転写紙)Sが給紙される。カセット給紙部1及び2は、それぞれカセット4及び5を有しており、手差し給紙部3は、トレイ6を有している。転写紙Sは、カセットカセット4及び5又はトレイ6上に積載されており、ピックアップローラ7によって、最上位に位置する転写紙Sから順次ピックアップされる。そして、ピックアップされた転写紙Sは、フィードローラ8Aとリタードローラ8Bからなる分離ローラ対8によって、最上位に位置する転写紙Sのみ分離される。カセット給紙部1又は2から送り出された転写紙Sは、搬送ローラ対9、10、及び11によってレジストローラ対12へ送られる。一方、手差し給紙部3から送られた転写紙Sは、直ちにレジストローラ対12に送られる。そして、転写紙Sはレジストローラ対12によって一旦その移動が停止されるとともに、斜行状態が矯正される。
【0020】
ところで、画像形成装置1Aには、原稿給紙装置18が備えられ、原稿給紙装置18は、積載された原稿を1枚ずつ順番に原稿台ガラス19上に搬送する。原稿が原稿台ガラス19上の所定位置へ搬送されると、スキャナユニット4Aによって原稿面が照射されて、原稿からの反射光がミラー等を介してレンズに導かれる。そして、この反射光は、イメージセンサ部(図示せず)に光学像として結像される。イメージセンサ部は、結像した光学像を、光電変換によって電気信号に変換する。この電気信号は、画像処理部(画像処理装置:図示せず)に入力される。画像処理部は、電気信号をデジタル信号に変換した後、当該デジタル信号に対して必要な画像処理を施して、画像データとする。この画像データは、直接的又は一旦画像メモリ(図示せず)に格納された後に、光走査装置(以下露光制御部ともいう)22に入力される。露光制御部22は、画像データに応じて半導体レーザー(図示せず)を駆動する。これによって、半導体レーザーからレーザービーム(光ビーム)が発光される。
【0021】
レーザービームは、ポリゴンミラー(回転多面鏡)を含む走査系を介して帯電器27、28、29、及び30によってそれぞれ帯電された感光ドラム14、15、16、及び17の表面に照射される。このレーザービームは、回転多面鏡によって変更されることによって感光ドラム14、15、16、及び17上を主走査方向(感光ドラム14、15、16、及び17の軸方向)に沿って走査される。感光ドラム14、15、16、及び17は、図中実線矢印で示す方向(副走査方向)に回転しており、これによって、感光ドラム14、15、16、及び17は、レーザービームによって副走査方向にも走査されることになる。レーザービームの走査によって、感光ドラム14、15、16、及び17上には、画像データに応じた静電潜像が形成されることになる。感光ドラム14、15、16、及び17上に形成された静電潜像は、それぞれの感光ドラムの周りに配置された現像器23、24、25、及び26が保持するトナーによってそれぞれ現像される。
【0022】
本実施例の画像形成装置では、感光ドラム14がマゼンタ成分の画像データに基づいてレーザービームLMによって露光される。これによって、感光ドラム14上に静電潜像が形成される。そして、感光ドラム14上の静電潜像は、現像器23によって現像されて、感光ドラム14上にマゼンタ(M)のトナー像が形成される。次に、感光ドラム14の露光開始から所定の時間が経過すると、感光ドラム15が、シアン成分の画像データに基づいてレーザービームLCによって露光される。これによって、感光ドラム15上に静電潜像が形成される。そして、感光ドラム15上の静電潜像は、現像器24によって現像されて、感光ドラム15上にシアン(C)トナー像が形成される。
【0023】
さらに、感光ドラム15の露光開始から所定の時間が経過すると、感光ドラム16が、イエロー成分の画像データに基づいてレーザービームLYによって露光される。これによって、感光ドラム16上に静電潜像が形成される。そして、感光ドラム16上の静電潜像は、現像器25によって現像されて、感光ドラム16上にイエロー(Y)トナー像が形成される。そして、感光ドラム16の露光開始から所定の時間が経過すると、感光ドラム17が、ブラック成分の画像データに基づいてレーザービームLBによって露光される。これによって、感光ドラム17上に静電潜像が形成される。そして、感光ドラム17上の静電潜像は、現像器25によって現像されて、感光ドラム17上にブラック(K)トナー像が形成される。
【0024】
感光ドラム14上のMトナー像は、転写帯電器90によって中間転写ベルト13上に転写される。同様にして、感光ドラム15、16、及び17から、それぞれCトナー像、Yトナー像、及びKトナー像が、転写帯電器91、92、及び93によって中間転写ベルト13上に転写される。これによって、中間転写ベルト13上に、順次Mトナー像、Cトナー像、Yトナー像、及びKトナー像が重ね合わされて、転写されることになり、中間転写ベルト13上には、一次転写像としてカラートナー像が形成される。なお、転写後、感光ドラム14、15、16、及び17に残留するトナーは、それぞれクリーナー31、32、33、及び34によって除去される。
【0025】
レジストローラ対12で一旦停止した転写紙Sは、レジストローラ対12の駆動によって2次転写位置T2に搬送される。ここでは、中間転写ベルト13上のカラートナー像と転写紙Sの先端との位置を合わせるタイミングで、レジストローラ対12が回転駆動されて、転写紙Sが2次転写位置T2に搬送される。2次転写位置T2には、2次転写ローラ40と2次転写対向ローラ13bとが配置されており、2次転写位置T2において、中間転写ベルト13上のカラートナー像が2次転写像として転写紙S上に転写される。2次転写位置T2を通過した転写紙Sは、定着装置35へ送られる。この定着装置35は、定着ローラ35A及び加圧ローラ35Bを有している。転写紙Sは、定着ローラ35Aと加圧ローラ35Bとによって形成されるニップ部を通過する際、定着ローラ35Aによって加熱されるとともに、加圧ローラ35Bによって加圧される。これによって、2次転写像を転写紙S上に定着する。定着処理済み転写紙Sは、搬送ローラ対36によって排出ローラ対37へ送られ、排出ローラ対37によって排出トレイ38上へ排出される。
【0026】
図2は、図1に示す光走査装置22で用いられる光学系の第1の例を説明するための斜視図である。図2では、説明の便宜上1つの感光ドラム14に対する光学系のみが示されている。その他の感光ドラム15、16、及び17に対する光学系にも同様の構成が用いられるため、説明を省略する。
【0027】
光走査装置22は、半導体レーザー400を有しており、この半導体レーザー400は、複数のレーザー素子(光源)A1、A2、A3、A4、B1、B2、B3、及びB4を備えている。これらレーザー素子A1〜A4及びB1〜B4の各々は駆動電流が供給されることによって駆動電流の値に応じた強度(光量)のレーザービーム(光ビーム)を出力する。
【0028】
これらのレーザービームは、各々コリメータレンズ402、開口絞り403、ハーフミラー410、及びシリンドリカルレンズ404を介してポリゴンミラー(偏向走査手段)405に入射する。そして、これらレーザービームは、ポリゴンミラー405の反射面(ポリゴン面)405−a上で反射されて、トーリックレンズ406−a及び回折光学素子406−bを通って感光ドラム408上で結像する。
【0029】
レーザー素子A1〜A4及びB1〜B4から出射されるレーザービームは発散光であるため、各レーザービームはコリメータレンズ402によって略平行光束に変換される。開口絞り403は、ここを通過するレーザービームの光束を制限する。シリンドリカルレンズ404は、副走査方向にのみ所定の屈折力を有している。シリンドリカルレンズ404は、開口絞り403を通過したレーザービームを副走査断面内において、ポリゴンミラー405の反射面405−aに結像させる。ポリゴンミラー405は、モータ等の駆動源(図示せず)によって、一定の速度で回転駆動されている。そして、ポリゴンミラー406は、その反射面405−a上に結像したレーザービームを偏向走査する。
【0030】
トーリックレンズ406−aと回折光学素子406−bとによって、f−θ特性を有する光学素子406が構成されている。この光学素子406は屈折部と回折部とを有している。そして、屈折部は、トーリックレンズ406−aによって規定されている。このトーリックレンズ406−aは、主走査方向と副走査方向とで互いに異なるパワーを有している。そして、トーリックレンズ406−aの主走査方向のレンズ面は非球面形状に形成されている。また、回折部は、回折光学素子406−bによって規定されている。この回折光学素子406−bは長尺であり、主走査方向と副走査方向とで互いに異なるパワーを有する。
【0031】
また、画像領域外の光走査領域(以下、画像領域外と呼ぶ)には、ビーム検出センサー(BDセンサー)106が配置されている。
【0032】
そして、ポリゴンミラー405によって偏光走査されたレーザービームは、反射ミラー409上で反射して、BDセンサー106の受光面上に入射する。このBDセンサー106は、入射したレーザービームを検出して、BD検出信号を出力する。そして、当該レーザービームを検出したビーム検出タイミングに応じて、つまり、BD検出信号に応じて、感光ドラム408の露光タイミングが制御されることになる。図示の例では、レーザー素子A1〜A4及びB1〜B4から出射したレーザービームの一部は、ハーフミラー410によって反射される。そして、これら反射ビームは、単一のPD(検出手段)109に入射する(つまり、PD109は反射ビームを受光可能な位置に配置されている)。PD109はこれら反射ビームの各々についてその光量(つまり、強度)検出を行う。
【0033】
図3は、図2に示す半導体レーザー400の構成を説明するため図である。図3を参照して、この半導体レーザー400では、複数のレーザー素子A1〜A4及びB1〜B4が同一のチップ上に配列されている。ここでは、レーザー素子A1〜A4及びB1〜B4のチップ面上における発光点の位置が示されている。レーザー素子A1〜A4及びB1〜B4の各々は、その間隔が一定で、かつ一列となるように配列されている。
【0034】
図4は、図2に示すPD109の受光面上における反射ビームの照射スポットを示す図である。図4を参照すると、レーザー素子A1〜A4及びB1〜B4による照射スポットは、PD109の受光面内に全ての照射スポットが収まるように集光される。ここでは、ハーフミラー410によってレーザービームの一部を反射して、単一のPD109によって反射ビームの検出を行う。この場合、レーザービームの各々について、感光ドラム408における光量とPD109で受光される光量とは、レーザー素子A1〜A4及びB1〜B4に拘わらず、一定の光量比率となる。一定の光量比率になるため、PD109の受光光量(受光強度)に基づいてレーザー素子A1〜A4及びB1〜B4の光量を制御することによって感光ドラム408に到達するレーザー光の光量を一定に制御することができる。
【0035】
なお、上記の光量比率は、各光学部品(例えば、ミラー、レンズ)の反射率と透過率とによって決定される。工場における光量調整の際には、半導体レーザー400を発光させて、感光ドラム408上の多重スポットの光量が所定の光量となった際のPD109の受光光量が目標である多重スポット目標光量とされる。画像形成の際には、PD109の受光光量が当該多重スポット目標光量となるように、半導体レーザー400の光量制御が行われる。
【0036】
図5は、図2に示す感光ドラム408上に形成されたレーザースポットの配置の一例を示す図である。図5では、レーザー素子A1〜A4及びB1〜B4に対応するレーザービームとレーザースポットとをそれぞれ同一の符号で表している。図示の例では、前述のように、8つのレーザービームA1〜A4及びB1〜B4によって感光ドラム408上を走査・露光することになる。この際、互いに隣接するポリゴン面によって走査されるレーザースポットが同一の露光位置を多重露光することになる。N(Nは1以上の整数)回目の走査におけるレーザービームA1〜A4と(N+1)回目の走査におけるレーザービームB1〜B4についてみると、図示のように、2つのレーザービームで感光ドラム408上の同一の位置を多重露光している。例えば、レーザースポットA1及びB1によって、主走査位置Xに多重スポット(図5では合成潜像)が形成される。同様にして、レーザースポットA2及びB2、レーザースポットA3及びB3、そして、レーザースポットA4及びB4によって、それぞれ主走査位置Xに多重スポット(合成潜像)が形成される。
【0037】
副走査方向における画像の書き出し時には、レーザー素子A1〜A4及びB1〜B4のうちレーザー素子A1〜A4からレーザー光が出射され、レーザー素子B1〜B4からはレーザー光は出射されない。また、副走査方向における画像の書き終わり位置では、レーザー素子A1〜A4及びB1〜B4のうちレーザー素子B1〜B4からレーザー光が出射され、レーザー素子A1〜A4からはレーザー光は出射されない。
【0038】
図6は、図1に示す光走査装置22で用いられるレーザー駆動回路22Aの一例を説明するためのブロック図である。図6を参照すると、このレーザー駆動回路22Aは、BDセンサー106(図2)から出力されるBD検出信号に同期して動作し、画像領域においては画像データに応じて、レーザー素子A1〜A4及びB1〜B4(図2)を駆動する。そして、レーザー駆動回路22Aは、非画像領域においては、後述するようにして、レーザー素子A1〜A4及びB1〜B4の光量制御(APC)を実行する。
【0039】
ここでは、多重スポットを形成する2つのレーザービームを、同一の画像データによってレーザービーム毎に露光時間を変化させて走査・露光制御する場合について説明することにする。なお、図6に示す画像処理装置107は、前述した画像データを生成する装置である。つまり、画像処理装置107は、図1で説明した画像処理部であり、画像形成装置1Aに組み込まれているものである。レーザー駆動回路22Aは、PWM(パルス幅変調)信号生成部108、セレクター群114、電流スイッチ群118、レーザー素子(LD)電流源群115、電流源群117、電流/電圧変換回路112、及びAPC制御部101を有している。
【0040】
図1に関連して説明したように、画像形成装置107は、画像データを生成する。そして、この画像データはPWM信号生成部108に与えられる。PWM信号生成部108は、画像データに基づいて、各画素内における発光時間を制御するためのPWM信号を生成する。PWM信号は、セレクター群114によって選択的に電流スイッチ群118に与えられる。図示のように、電流スイッチ群118は、レーザー素子A1〜A4及びB1〜B4に接続されている。
【0041】
電流スイッチ群118は、PWM信号に応じて動作して、レーザー素子A1〜A4及びB1〜B4の駆動電流をオン・オフ(ON・OFF)する。これによって、各画素の位置におけるレーザー素子A1〜A4及びB1〜B4の発光時間が制御されることになる。
【0042】
ここでは、レーザー素子A1〜A4の各々は第2の光源であり、レーザービームとして第2の光ビームを出射する。また、レーザー素子B1〜B4の各々は第1の光源であり、レーザービームとして第1の光ビームを出力する。画像処理装置107においては、N回目の走査におけるレーザー素子B1〜B4に係る画像データを、(N+1)回目の走査におけるレーザー素子A1〜A4に係る画像データとして複写する。この処理によって、レーザー素子A1〜A4は、一回走査前におけるレーザー素子B1〜B4と同一の画像データに応じて露光制御されることになる。これによって、多重スポットにおいては、同一の画素が同一の画像データに応じて露光されることになる。
【0043】
続いて、APC動作について説明する。図示のように、APC制御部101は、CPU(中央演算装置)102、発光切り換え部103、基準光量設定部104、及び比較部105を有している。CPU102は、APC動作の際における発光タイミングを発光切り換え部103に指示する。これによって、発光切り換え部103は各レーザー素子A1〜A4及びB1〜B4の発光を指示するAPC発光信号を発生する。これらAPC発光信号は、セレクター群114に与えられ、セレクター群114は、APC発光信号に応じて選択的にPWM信号を電流スイッチ群118に与える。これによって、電流スイッチ群118はPWM信号によってオン・オフ制御されて、電流源115及び117からレーザー素子A1〜A4及びB1〜B4に駆動電流が与えられる。
【0044】
なお、APCの際、発光切り換え部103からAPC発光信号が出力されるタイミングについては後述する。電流源115、117からは常に電流が出力されている。PWM信号生成部からPWM信号およびAPC信号がスイッチ群118に供給されることによって、電流源115、117からレーザー発光素子A1〜A4、B1〜B4に通電される。そして、電流スイッチ群118はこれらPWM信号又はAPC発光信号に応じてオン・オフして、レーザー素子A1〜A4及びB1〜B4を駆動する。
【0045】
前述のように、レーザー素子A1〜A4及びB1〜B4から出力されたレーザービームの光量は、PD109で検出される。PD109は、APCの際に、その受光光量に応じた電流を検出結果として発生する。この電流は電流/電圧変換回路112によって電圧に変換され、当該電圧はAD変換器113によってその電圧値に応じたデジタル信号に変換されて、APC制御部101に入力される。比較器105には、基準光量設定部104から基準光量が与えられており、比較器105は、この基準光量とデジタル信号が示すレーザー光量とを比較する。そして、比較器105は比較結果をCPU102に与える。
【0046】
CPU102は、比較結果に応じて基準光量とレーザー光量とが一致するように、つまり、比較結果である偏差がゼロとなるように、レーザー素子A1〜A4及びB1〜B4の駆動電流を指示する駆動電流制御信号を出力する。駆動電流制御信号は、DA変換器群114A及びDA変換器116でアナログ信号に変換される。そして、これらアナログ信号に応じてLD電流源群115及び電流源117の出力電流が決定される。図示の例では、レーザー素子A1〜A4については、DA群114Aから出力されるアナログ信号に応じてそれぞれその駆動電流が設定される(第2の駆動電流)。また、レーザー素子B1〜B4については、DA変換器116から出力されるアナログ信号に応じて共通に駆動電流(所定の値の第1の駆動電流)が設定される。
【0047】
図示の例においては、APCを行う際には、例えば、レーザー素子A1を代表レーザー素子としてAPCが行われる。そして、このAPCによって設定された駆動電流をレーザー素子B1〜B4に対する共通の駆動電流(第1の駆動電流)とするため、CPU102はDA変換器116に駆動電流制御信号を設定する。続いて、多重露光が行われて、PD109から出力されるPD検出信号に基づいて、CPU102は、レーザー素子A1〜A4に対する駆動電流(第2の駆動電流)を設定する。
【0048】
ここで、上述の動作についてさらに説明する。図7は、図6に示すレーザー駆動回路22AにおけるCPU102の動作を説明するためのフローチャートである。図6及び図7を参照して、まず、画像形成の開始前にレーザー素子A1〜A4及びB1〜B4の光量が設定される。CPU102は、レーザー素子A1〜A4及びB1〜B4の光量設定を開始する(ステップS1)。続いて、CPU102は、多重スポットの目標とする多重スポット目標光量(目標強度)に対して半分の光量を目標値として基準光量設定部104に設定する(ステップS2)。そして、CPU102は、レーザー素子A1を単独で発光制御してAPCを実行する(ステップS3)。これらステップS2及びS3によって、レーザー素子A1が多重スポット目標光量の半分の光量(目標値)で発光する際の駆動電流が求められることになる。
【0049】
次に、CPU102は、前述のステップS3で決定された駆動電流を、レーザー素子B1〜B4の駆動電流とするため、駆動電流制御信号をDA変換器116に設定する(ステップS4)。このようにして、レーザー素子A1を代表レーザー素子として、このレーザー素子A1が多重スポットの半分の光量で発光した際の駆動電流が、レーザーB1〜B4に設定されることになる。
【0050】
さらに、CPU102は、目標とする多重スポット目標光量を基準光量設定部104に設定する(ステップS5)。そして、CPU102は、レーザー素子A1〜A4及びB1〜B4を同時に発光させてAPCを開始する(同時発光APCの開始:ステップS6)。この同時発光APCは、多重スポットを形成するレーザー素子A1〜A4及びB1〜B4を同時に発光してAPCを行うものである。この際には、PD109は、2つのレーザー素子からのレーザービームの光量の合計値を検出することになる(つまり、PD109には2つのレーザー素子からのレーザービームが同時に入射することになる)。そして、合計値を示すPD検出信号(つまり、受光結果)に応じて、CPU102はAPCを行う。そして、同時発光APCの後、画像形成が開始される(ステップS7)。
【0051】
図8は、図6に示すレーザー駆動回路22AにおけるAPCシーケンスを説明するための図である。
【0052】
図6及び図8を参照して、ここで、レーザー駆動回路22Aは、レーザー素子A1及びB1、レーザー素子A2及びB2、レーザー素子A3及びB3、そして、レーザー素子A4とB4をそれぞれ同時に発光させてAPCを行う。図8に示すように、まず、1周期目において、レーザー素子A1についてAPCが行われて、同時にレーザー素子B1が発光する。そして、BDセンサー106の検出タイミングにおいて、レーザー素子A2についてAPCが行われ、同時にレーザー素子B2が発光する。同様にして、2周期目において、レーザー素子A3についてAPCが行われ、同時にレーザー素子B3が発光する。続いて、レーザー素子A4についてAPCが行われ、同時にレーザー素子B4が発光する。この際、レーザー素子B1〜B4は、図7で説明したステップS4で設定された共通の駆動電流(選択駆動電流、つまり、設定駆動電流)で駆動される。そして、CPU102はレーザー素子A1〜A4の駆動電流(第2の駆動電流)を順次制御して、各多重スポット光量を予め規定された多重スポット目標光量(目標強度)に制御する。
【0053】
このようにして、上述の例では、レーザー素子A1を代表レーザー素子として、レーザー素子A1の駆動電流に対する発光光量の特性に基づいて、レーザー素子B1〜B4の駆動電流を制御する。つまり、CPU102は、レーザー素子A1の発光光量が、予め規定された多重スポット目標光量の約半分となるように、レーザー素子B1〜B4の駆動電流を設定する。さらに、CPU102は、予め規定された多重スポット目標光量とPD109で検出された検出光量とに応じて、レーザー素子A1〜A4の光量を制御する。これによって、多重スポットにおける光量を精度よく制御することができる。
【0054】
ここで、図2で説明した光走査装置22においては、ポリゴンミラー405の隣接するポリゴン面において走査するレーザービームを、感光ドラム408の同一位置に露光する多重露光を行う。多重露光を行うことによって、ポリゴンミラー405の面倒れ(ポリゴン面倒れ)等による走査位置の変動の影響を緩和することができる。
【0055】
図9は、図2に示す光走査装置22による多重露光において、走査位置変動が発生した場合に形成されるドットの配置を示す図である。また、図10は、図2に示す光走査装置22による多重露光において、多重スポットを構成する複数のスポットにおける光量差が大きくなった場合のドットの配置を示す図である。
【0056】
図9において、複数の走査ラインで一つのドットを形成する多重露光においては、多重スポットを形成する一つの走査ラインの位置が変動すると、当該走査ラインの位置とその他の多重スポットを形成する走査ラインの位置との中心にドットが形成される。このため、ポリゴン面倒れ等によって、ある走査ラインだけ突発的に走査位置が変動しても、ドットの重心移動量が少なくて済む。よって、多重露光においては、走査位置の変動に起因して発生する濃度むらを低減することが可能である。このような多重露光による利点を生かすためには、多重スポットを形成する複数のスポットの光量をほぼ等しくすることが望ましい。
【0057】
一方、図10に示すように、多重スポットを構成する複数のスポットにおける光量差が大きくなると、スポットの強弱に起因してドットの重心移動が発生してしまう。この結果、濃度むらを低減するという効果が薄れてしまうことになる。そこで、図6で説明したレーザー駆動回路22Aにおいては、前述のように、CPU102は、レーザー素子B1〜B4における光量が、予め規定された多重スポット目標光量の約半分となるように、その駆動電流を制御することになる。
【0058】
ここで、多重スポット目標光量は、画像形成装置107の置かれた環境及び感光ドラム408の耐久による消耗によって経時的に変化する。このため、多重スポットにおける光量は、常時一定ではない。また、レーザー素子における駆動電流とその光出力(レーザービーム)とは、チップ面の温度等によって変化する。このため、レーザー素子B1〜B4を常時一定の駆動電流で発光させた場合には、多重スポット目標光量に対して、レーザー素子B1〜B4の光量の割合が大きく変化してしまうことになる。その結果、多重露光における利点を維持することが困難となってしまう。
【0059】
図6で説明したレーザー駆動回路22Aにおいては、共通の駆動電流で駆動されるレーザー素子B1〜B4の駆動電流を、代表レーザー素子であるレーザー素子A1の駆動電流特性に応じて決定する。これによって、レーザー素子A1〜A4とレーザー素子B1〜B4とにおける光量の割合は大きく変化することなく、多重露光の利点を生かすことができる。なお、上述の例では、レーザー素子A1を代表レーザー素子(として用いたが、レーザー素子A1の代わりに、レーザー素子A2、A3、又はA4を代表レーザー素子として用いるようにしてもよい。
【0060】
さらに、画像形成の前にレーザー素子B1〜B4を個別に点灯させて、多重スポット目標光量の半分の光量となる駆動電流をそれぞれ求めて、レーザー素子B1〜B4毎の駆動電流の平均値を、共通の駆動電流として設定するようにしてもよい。
【0061】
この場合には、直接的にレーザー素子B1〜B4における駆動電流に対する発光光量特性に基づいて、共通の駆動電流を設定するので、レーザー素子B1〜B4における発光光量の精度を上げることができる。そして、上述の例では、多重スポットにおける光量が多重スポット目標光量となるように、APCを行うので、多重スポットによって均一な濃度のドットを形成することができる。また、レーザー素子B1〜B4が共通の駆動電流(設定駆動電流)で制御されるので、レーザー素子B1〜B4毎にDA変換器を設ける必要がなく、回路規模を増やすことなく多重露光を行うことが可能となる。そして、工場出荷時において、レーザー素子毎に個別に特別な調整を行うことなく、目標とする光量を得ることができる。
【0062】
また、レーザー素子B1〜B4の駆動電流が、代表レーザー素子であるレーザー素子A1の発光特性に応じて設定されるので、チップ全体の昇温及び径時劣化に起因する大幅な光量の変動を効果的に防止することができる。さらに、レーザー素子B1〜B4の発光光量が、レーザー素子A1〜A4の発光光量とほぼ等しくなるので、多重露光による濃度むらを低減することができる。加えて、2つのレーザー素子を同時に発光してAPCを実行するようにしたので、レーザー素子毎に個別にAPCを行う場合に比べてAPCの実行回数が半分となる。その結果、APCの精度を高めることができる。
【0063】
なお、上述の例においては、2つのレーザービームによって多重露光を行う場合について説明したが、3つ以上のレーザービームによって多重露光する場合においても適用できるものである。この場合には、レーザー素子のうち一つのレーザー素子に対してAPCを行い、他のレーザー素子を共通の駆動電流で発光させる。これによって、同様に、回路規模の削減及びAPCの実行時間の短縮を行うことができる。
【0064】
図11は、図1に示す光走査装置22で用いられる光学系の第2の例を説明するための斜視図である。
【0065】
図11を参照して、ここでは、図2に示す光学系と同一の構成要素については、同一の参照番号を付して、説明を省略する。図11に示す第2の例における光学系では、PD109がBDセンサー106に隣接して配置されている。そして、ここでは、PD109は、ポリゴンミラー405によって走査されるレーザービームを検出して、PD検出信号として、図6に示すレーザー駆動回路22Aに与える。つまり、PD109は、ポリゴンミラー405の出力側に配置されていることになる。そして、レーザー駆動回路22Aは、前述のようにして、レーザー素子A1〜A4及びB1〜B4を駆動制御する。図11に示す第2の例においては、図2に示すハーフミラー410及び集光レンズ411等の光学部品が不要となる結果、部品点数の削減を行うことができる。そして、簡易な構成で、APCを行うことができることになる。
【0066】
図12は、図11に示すPD109の受光面上における光ビームの走査位置を示す図である。
【0067】
図12に示すように、PD109上にレーザービームを走査させ、レーザービームを検出する際には、PD109上(つまり、受光素子)をレーザービームが通過するタイミングでその光量を検出する。図示の例では、レーザー素子B1、B2、B3、B4、A1、A2、A3,A4の順で、PD109の受光面上を走査スポットが通過して、レーザー素子B1〜B4及びA1〜A4毎にその光量が検出される。
【0068】
図13は、図11に示すPD109から出力されるPD検出信号の検出波形を示す図である。
【0069】
図13において、レーザービームがPD109上を通過する順番で、レーザービームの光量検出が行われる。ここでは、レーザービームの光量が互いに異なるタイミングで検出されることになる。そして、後述するように、多重スポットを形成する光ビームの光量の合計が多重スポット目標光量となるようにAPCが実行される。図示の例では、レーザー素子B1〜B4については、定電流(つまり、設定駆動電流)によって発光が行われている。一方、レーザー素子A1〜A4については、APCによって発光制御が行われている。
【0070】
ここで、図11に示す光走査装置22において用いられるレーザー駆動回路22Aの構成自体は、図6に示すレーザー駆動回路22Aと同様であるが、ここでは、CPU102の動作が異なる。従って、以下の説明では、CPU102の動作に限定して説明することにする。
【0071】
図14は、図6に示すレーザー駆動回路22AにおけるCPU102の動作の第2の例を説明するためのフローチャートである。また、図15は、図6に示すレーザー駆動回路22AにおけるAPCシーケンスの第2の例を説明するための図である。
【0072】
図6に加えて、図14及び図15を参照して、CPU102は、図6及び図7に関連して説明したように、レーザー素子A1を代表レーザー素子(選択光源)として、前述したようにして、レーザー素子B1〜B4に共通の駆動電流を設定することになる。画像形成が開始されると(ステップS11)、CPU102は、多重スポット目標光量に対して半分の光量を目標値として基準光量設定部104に設定する(ステップS12)。そして、CPU102は、目標値(多重スポット目標光量/2)に応じてレーザー素子A1を単独で発光してAPCを実行する(ステップS13:第1の光量制御)。これらステップS12及びS13によって、レーザー素子A1が多重スポット目標光量の半分の光量で発光する際の駆動電流が求められる。
【0073】
次に、CPU102は、前述のステップS13で決定された駆動電流を、レーザー素子B1〜B4の駆動電流とするため、駆動電流制御信号をDA変換器116に設定する(ステップS14)。このようにして、レーザー素子A1を代表レーザー素子として、このレーザー素子A1が多重スポット目標光量の半分の光量で発光した際の駆動電流が、レーザー素子B1〜B4に設定されることになる。
【0074】
そして、CPU102は、図11に示すPD109で検出されたレーザー素子B1〜B4のレーザービームの光量を得る(光量検出:ステップS15)。つまり、CPU102は、PD109における通過タイミングでレーザー素子B1〜B4のレーザービームを検出することになる。続いて、CPU102は、レーザー素子A1〜A4の目標光量を算出する(ステップS16)。ステップS16においては、CPU102は、多重スポット目標光量とレーザー素子B1〜B4の光量との差分を差分光量として算出する。そして、CPU102は、これら差分光量をレーザー素子A1〜A4の目標光量として基準光量設定部104に設定する。つまり、レーザー素子A1の目標光量=多重スポット目標光量−レーザー素子B1の検出光量、レーザー素子A2の目標光量=多重スポット目標光量−レーザー素子B2の検出光量、レーザー素子A3の目標光量=多重スポット目標光量−レーザー素子B3の検出光量、そして、レーザー素子A4の目標光量=多重スポット目標光量−レーザー素子B4の検出光量が求められることになる。
【0075】
さらに、CPU102は、レーザー素子A1〜A4の各々について、前述の目標光量に基づいて、レーザー素子A1〜A4の光量検出のタイミングで、順次APCを実行する(ステップS17)。つまり、図15に示すように、レーザー素子B1〜B4が順次発光制御される。その後、レーザー素子A1〜A4について順次APCが実行されることになる。そして、CPU102は、画像形成が終了したか否かを判定する(ステップS18)。画像形成が終了していないと判定すると(ステップS18において、NO)、CPU102はステップS15に戻って処理を続行する。
【0076】
一方、画像形成が終了したと判定すると(ステップS18において、YES)、CPU102は画像形成を終了する。このようにして、CPU102は、画像形成中において、前述のステップS15〜S17を行って、走査毎にレーザー素子A1〜A4に対するAPCを繰り返すことになる。
【0077】
上述の動作によって、レーザー素子A1及びB1の光量を合計した合計光量が、多重スポット目標光量と一致するように、レーザー素子A1の目標光量が設定される。そして、CPU102は、レーザー素子A1の発光光量が目標光量となるようにAPCを実行する。なお、レーザー素子A2〜A4についても、同様にして光量制御が行われる。
【0078】
図14で説明した例では、レーザー素子毎に個別に発光して異なるタイミングで光検出を行う際に(つまり、駆動電流をレーザー素子毎にそれぞれ異なる期間供給することになる)、多重スポットを形成する光ビームの光量を合計した合計光量が、多重スポット目標光量となるように光量制御(APC)を行う。図7で説明した例と同様に、多重スポットを形成するレーザー素子のうち、一つのレーザー素子についてのみAPCを行い、他のレーザー素子については共通の駆動電流で駆動する。これによって、回路規模の増大を防止することができる。さらに、ポリゴンミラーで走査されたレーザービームについてその光量を検出するようにしたので、ハーフミラー及び集光レンズ等の光学部品を削除することができる。これによっても、回路規模の増大を防止することができる。
【0079】
なお、上述の説明から明らかなように、レーザー駆動回路22Aが電流供給手段として機能するとともに、制御手段として機能することになる。
【0080】
以上、本発明について実施の形態に基づいて説明したが、本発明は、これらの実施の形態に限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の様々な形態も本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0081】
A1,A2,A3,A4,B1,B2,B4,B5 レーザー素子
101 APC制御部
102 CPU
103 発光切り換え部
104 基準光量設定部
105 比較器
106 BDセンサー
107 画像処理装置
108 PWM信号生成部
109 フォトダイオード(PD)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
感光体を露光するための第1の光ビームを出射する第1の光源及び第2の光ビームを出射する第2の光源を有し、前記第1の光ビームによって露光される領域と前記第2の光ビームによって露光される領域との少なくとも一部が重なるように前記感光体を露光する露光装置において、
前記第1の光ビームを出射させるための所定の値である第1の駆動電流を前記第1の光源に、前記第2の光ビームを出射させるための第2の駆動電流を第2の光源に供給する電流供給手段と、
前記第1の光ビーム及び前記第2の光ビームそれぞれの強度、または前記第1の光ビームの強度及び前記第2の光ビームの強度の和を検出する検出手段と、
前記検出手段の検出結果に基づいて、前記第1の光ビームの強度及び前記第2の光ビームの強度の和が目標強度になるように前記第2の駆動電流の値を制御する制御手段と、を有することを特徴とする露光装置。
【請求項2】
前記検出手段は、前記第1の光ビーム及び前記第2の光ビームを受光可能な位置に配置され、受光した光ビームの強度に応じた信号を出力する受光手段を有し前記受光手段からの信号に基づいて前記第1の光ビーム及び前記第2の光ビームそれぞれの強度、または前記第1の光ビームの強度及び前記第2の光ビームの強度の和を検出することを特徴とする請求項1に記載の露光装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記第1の光ビームと前記第2の光ビームとが前記受光手段に異なるタイミングで入射するように、前記第1の駆動電流を前記第1の光源に、前記第2の駆動電流を前記第2の光源にそれぞれ異なる期間に供給し、前記第1の光ビームを受光することに応じて前記受光手段から出力される信号に基づいて前記第1の光ビームの強度を検出し、前記第2の光ビームを受光することに応じて前記受光手段から出力される信号に基づいて前記第2の光ビームの強度を検出することを特徴とする請求項2に記載の露光装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記第1の光ビームの強度と前記第2の光ビームの強度とに基づいて前記第1の光ビームの強度及び前記第2の光ビームの強度の和を検出し、前記第1の光ビームの強度及び前記第2の光ビームの強度の和と前記目標強度との差分に基づいて、前記第2の駆動電流を制御することを特徴とする請求項3に記載の露光装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記目標強度と前記第1の光ビームの強度との差分を算出し、当該差分と前記第2の光ビームの強度の差分とに基づいて前記第2の駆動電流を制御することを特徴とする請求項3に記載の露光装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記第1の光ビームと前記第2の光ビームとが前記受光手段に同時に入射する期間が生じるように、前記第1の駆動電流を前記第1の光源に、前記第2の駆動電流を前記第2の光源に供給し、
前記制御手段は、前記目標強度と、前記受光手段が前記第1の光ビームと前記第2の光ビームとを同時に受光する受光結果に基づいて検出される前記第1の光ビームの強度及び前記第2の光ビームの強度の和と、の差分に基づいて前記第2の駆動電流を制御することを特徴とする請求項2に記載の露光装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項記載の露光装置を有し、該露光装置が画像データに応じて前記感光体を走査・露光して、前記感光体に前記画像データに応じた静電潜像を形成した後、該静電潜像を現像して画像形成を行うことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−11719(P2012−11719A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−151988(P2010−151988)
【出願日】平成22年7月2日(2010.7.2)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】