説明

露光装置及び画像形成装置

【課題】不要露光を低減しながら、基板と垂直な方向に回折光を取り出すことができる露光装置と、該露光装置を備える画像形成装置とを提供する。
【解決手段】複数の発光素子が第1の方向に並ぶように配列された基板と、基板上に配置された記録層であって、複数の発光素子の各々から射出された射出光が、対応するホログラム素子により基板の法線方向に回折及び集光されて、被露光面上に第1の方向に並ぶ集光点列が形成されるように、光軸が基板の法線方向に平行な信号光と法線方向に対し光軸が第1の方向と交差する第2の方向に傾いた参照光とを干渉させて、複数の発光素子の各々に対応する複数のホログラム素子が多重記録された記録層と、基板と記録層との間に配置され、複数の発光素子から射出される射出光の光路を第2の方向に折り曲げて、射出光を対応するホログラム素子に入射させる光路変換素子と、を備えた露光装置とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、露光装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、画像を多数の微小な画素に分割し、一つもしくは複数の光源から各画素の濃度に対応した強度の光束を射出し、当該光束による輝点を、閾値以上の光量密度の光が照射されることにより、感光して表面電位変化や化学的変化等の潜像が形成される、又は感光して濃度変化を持つ画像が形成される画像記録媒体の上に走査して、各画素領域を順次感光させることにより画像を書込む光書込み装置において、前記光源と前記画像記録媒体との間であって光源側から順に、光束を集束させる光集束素子部と、光束が集束する位置に設けられた微小な光学的開口部と、該光学的開口部より射出した光束をおおむね平行な光束とするコリメータ部と、光束を複数の方向へ分解して放射すると共に複数の光束をおおむね同一の平面上に集束させるホログラム素子と、を配列された一つのユニットを、主走査方向に画素数と同数のアレイ状に配置したことを特徴とする光書込み装置が記載されている。
【0003】
特許文献2には、光源基板上に配列された複数の発光素子と、透過する光を回折させることにより当該光の光線束を収束させて像を結ぶ複数の回折正レンズを有する第1レンズアレイと、複数のレンズを有し、前記複数の発光素子の各々との間に前記第1レンズアレイを挟む第2レンズアレイとを備え、前記複数の回折正レンズの各々は、前記光源基板に垂直な方向において前記複数の発光素子の各々に重なっていることを特徴とする露光装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−330058号公報
【特許文献2】特開2007−237576号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、基板上に配列された複数の発光素子とこれに対応する複数のホログラム素子とを備えた露光装置において、不要露光を低減しながら、基板と垂直な方向に回折光を取り出すことができる露光装置と、該露光装置を備える画像形成装置と、を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために各請求項に記載の発明は、下記構成を備えたことを特徴としている。
【0007】
請求項1に記載の発明は、複数の発光素子が第1の方向に並ぶように配列された基板と、前記基板上に配置された記録層であって、前記複数の発光素子の各々から射出された射出光が、対応するホログラム素子により前記基板の法線方向に回折及び集光されて、被露光面上に前記第1の方向に並ぶ集光点列が形成されるように、光軸が前記基板の法線方向に平行な信号光と前記法線方向に対し光軸が前記第1の方向と交差する第2の方向に傾いた参照光とを干渉させて、前記複数の発光素子の各々に対応する複数のホログラム素子が多重記録された記録層と、前記基板と前記記録層との間に配置され、前記射出光の光路を前記第2の方向に折り曲げて、前記射出光を対応するホログラム素子に入射させる光路変換素子と、を備えた露光装置である。
【0008】
請求項2に記載の発明は、前記光路変換素子は、前記基板の主面に対し前記第2の方向に傾けられた第1の斜面を備え且つ前記第1の方向に延びる棒状のプリズムであり、前記複数の発光素子の各々は、対応するホログラム素子を記録した参照光の光軸と前記第1の斜面とが交差する点の下方に配置される、請求項1に記載の露光装置である。
【0009】
請求項3に記載の発明は、前記第1の斜面の傾斜角度をθ、前記参照光の前記記録層への入射角をθ、前記記録層内での伝搬角をθ、前記記録層の材料の屈折率をnとした場合に、傾斜角度θ、入射角θ、伝搬角θ、及び屈折率nは、下記式(1)及び下記式(2)の関係を満たす、請求項2に記載の露光装置である。
nsin(θ−θ)=sinθ式(1)
θ=arcsin((1/n)sinθ) 式(2)
【0010】
請求項4に記載の発明は、前記参照光の前記記録層への入射角θが、45°以上で且つ60°以下である、請求項2又は請求項3に記載の露光装置である。
【0011】
請求項5に記載の発明は、前記複数の発光素子は複数列に分けて配列されており、各列に配列された複数の発光素子の各々は、対応するホログラム素子を記録した参照光の光軸と前記第1の斜面とが交差する点の下方に配置される、請求項2から請求項4までの何れか1項に記載の露光装置である。
【0012】
請求項6に記載の発明は、前記記録層は容器内に収納されて前記基板上に配置されており、前記容器の一部が前記光路変換素子を構成する、請求項1から請求項5までの何れか1項に記載の露光装置である。
【0013】
請求項7に記載の発明は、請求項1から請求項6までの何れか1項に記載の露光装置と、前記露光装置と作動距離だけ離間して配置されると共に、前記露光装置に対して前記第1の方向と交差する第2の方向に相対移動され、前記露光装置により画像データに応じて走査露光されて、画像が書き込まれる感光体と、を含む画像形成装置である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の各請求項に記載の発明によれば、以下の効果がある。
【0015】
請求項1に記載の発明によれば、基板上に配列された複数の発光素子とこれに対応する複数のホログラム素子とを備えた露光装置において、不要露光を低減しながら、基板と垂直な方向に回折光を取り出すことができる、という効果がある。
【0016】
請求項2に記載の発明によれば、複数の発光素子を高密度に配列しても、複数の発光素子が配列される第1の方向では、各発光素子について高い位置決め精度は不要になる、という効果がある。
【0017】
請求項3に記載の発明によれば、複数の発光素子を発光させたときに、対応するホログラム素子に入射する光が増加するように、プリズムを設計することができる、という効果がある。
【0018】
請求項4に記載の発明によれば、複数の発光素子を発光させたときに、対応するホログラム素子に入射する光を更に増加させて、不要露光を一層低減することができる、という効果がある。
【0019】
請求項5に記載の発明によれば、複数の発光素子は複数列に分けて配列しても、複数の発光素子を発光させたときに、対応するホログラム素子に入射する光を増加させることができる、という効果がある。
【0020】
請求項6に記載の発明によれば、光路変換素子を、記録層を収納する容器と一体に形成することができる、という効果がある。
【0021】
請求項7に記載の発明によれば、露光装置は不要露光を低減しながら基板と垂直な方向に回折光を取り出すことができるので、感光体の被露光面に対向するように露光装置を配置することができる、という効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施の形態に係る画像形成装置の構成の一例を示す概略図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るLEDプリントヘッドの構成の一例を示す概略斜視図である。
【図3】光路変換素子の一例を示す概略斜視図である。
【図4】ホログラム素子の概略形状を示す斜視図である。
【図5】(A)及び(B)はLEDプリントヘッドの副走査方向に沿った断面図である。
【図6】LEDプリントヘッドの主走査方向に沿った部分断面図である。
【図7】光路変換素子の設計の一例を示す副走査方向に沿った断面図である。
【図8】ホログラムが記録される様子を示す図である。
【図9】位相共役記録によりホログラムが記録される様子を示す図である。
【図10】回折光が基板と直交する方向に取り出される様子を示す図である。
【図11】回折光が基板と交差する方向に取り出される様子を示す図である。
【図12】(A)はホログラム記録層が容器内に収納された一体型LPHの具体的な構成を示す断面図であり、(B)は(A)に示す容器の一部を取り出して示す斜視図である。
【図13】(A)〜(E)は、図12(A)に示す一体型LPHの製造工程を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態の一例を詳細に説明する。
【0024】
<画像形成装置>
図1は本発明の実施の形態に係る画像形成装置の構成の一例を示す概略図である。この装置は、電子写真方式で画像を形成する画像形成装置であり、発光ダイオード(LED)を光源に用いたLED方式の露光装置(LEDプリントヘッド、略称「LPH」)を搭載している。LEDプリントヘッドは、機械的な駆動が不要という利点を有する。また、この画像形成装置は、所謂タンデム型のデジタルカラープリンタであり、各色の画像データに対応して画像形成を行う画像形成部としての画像形成プロセス部10、画像形成装置の動作を制御する制御部30、及び画像読取装置3と例えばパーソナルコンピュータ(PC)2等の外部装置とに接続され、これらの装置から受信された画像データに対して予め定めた画像処理を施す画像処理部40を備えている。
【0025】
画像形成プロセス部10は、一定の間隔で並列に配置される4つの画像形成ユニット11Y、11M、11C、11Kを備えている。画像形成ユニット11Y、11M、11C、11Kの各々は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)のトナー像を形成する。なお、画像形成ユニット11Y、11M、11C、11Kを、適宜「画像形成ユニット11」と総称する。
【0026】
各画像形成ユニット11は、静電潜像を形成してトナー像を保持する像保持体としての感光体ドラム12、感光体ドラム12の表面を予め定めた電位で一様に帯電する帯電器13、帯電器13によって帯電された感光体ドラム12を露光する露光装置としてのLEDプリントヘッド(LPH)14、LPH14によって得られた静電潜像を現像する現像器17、転写後の感光体ドラム12表面を清掃するクリーナ16を備えている。
【0027】
従来のLPHは、LEDアレイとロッドレンズアレイとで構成されていた。ロッドレンズアレイには、セルフォック(登録商標)など、屈折率分布型のロッドレンズが用いられていた。各LEDから射出された光は、ロッドレンズにより集光されて、感光体ドラム上に正立等倍像が結像される。本実施の形態に係る画像形成装置は、「ロッドレンズ」に代えて「ホログラム素子」を用いたLPHを備えている。
【0028】
LPH14は、感光体ドラム12の軸線方向の長さと略同じ長さの長尺状のプリントヘッドである。LPH14には、長さ方向に沿って複数のLEDがアレイ状(列状)に配列されている。LPH14は、その長さ方向が感光体ドラム12の軸線方向を向くように、感光体ドラム12の周囲に配置されている。本実施の形態のLPH14は、感光体ドラム12の表面から作動距離だけ離間して配置されている。本実施の形態のLPH14は、従来のLPHに比べて作動距離が長い。このため、感光体ドラム12の周方向における占有幅が小さく、感光体ドラム12の周囲の混雑が緩和されている。
【0029】
また、画像形成プロセス部10は、各画像形成ユニット11の感光体ドラム12にて形成された各色のトナー像が多重転写される中間転写ベルト21、各画像形成ユニット11の各色トナー像を中間転写ベルト21に順次転写(一次転写)させる一次転写ロール22、中間転写ベルト21上に転写された重畳トナー像を記録媒体である用紙Pに一括転写(二次転写)させる二次転写ロール23、及び二次転写された画像を用紙P上に定着させる定着器25を備えている。
【0030】
次に上記画像形成装置の動作について説明する。
まず、画像形成プロセス部10は、制御部30から供給された同期信号等の制御信号に基づいて画像形成動作を行う。その際に、画像読取装置3やPC2から入力された画像データは、画像処理部40によって画像処理が施され、インターフェースを介して各画像形成ユニット11に供給される。
【0031】
例えば、イエローの画像形成ユニット11Yでは、帯電器13により予め定めた電位で一様に帯電された感光体ドラム12の表面が、画像処理部40から得られた画像データに基づいて発光するLPH14により露光されて、感光体ドラム12上に静電潜像が形成される。即ち、LPH14の各LEDが画像データに基づいて発光することで、感光体ドラム12の表面が主走査されると共に、感光体ドラム12が回転することで副走査されて、感光体ドラム12上に静電潜像が形成される。形成された静電潜像は現像器17により現像され、感光体ドラム12上にはイエローのトナー像が形成される。同様に、画像形成ユニット11M,11C,11Kにおいて、マゼンタ、シアン、黒の各色トナー像が形成される。
【0032】
各画像形成ユニット11で形成された各色トナー像は、図1の矢印A方向に回転動作する中間転写ベルト21上に、一次転写ロール22により順次静電吸引されて転写される(一次転写)。中間転写ベルト21上には、重畳されたトナー像が形成される。重畳トナー像は、中間転写ベルト21の移動に伴って二次転写ロール23が配設された領域(二次転写部)に搬送される。重畳トナー像が二次転写部に搬送されると、トナー像が二次転写部に搬送されるタイミングに合わせて用紙Pが二次転写部に供給される。
【0033】
そして、二次転写部にて二次転写ロール23により形成される転写電界により、重畳トナー像は搬送されてきた用紙P上に一括して静電転写される(二次転写)。重畳トナー像が静電転写された用紙Pは、中間転写ベルト21から剥離され、搬送ベルト24により定着器25まで搬送される。定着器25に搬送された用紙P上の未定着トナー像は、定着器25によって熱および圧力による定着処理を受けることで用紙P上に定着される。そして定着画像が形成された用紙Pは、画像形成装置の排出部に設けられた排紙トレー(不図示)に排出される。
【0034】
<LEDプリントヘッド(LPH)>
図2は本実施の形態に係る露光装置としてのLEDプリントヘッドの構成の一例を示す概略斜視図である。図2に示すように、LEDプリントヘッド(LPH14)は、複数のLED50を備えたLEDアレイ52と、複数のLED50の各々に対応して設けられた複数のホログラム素子54を備えたホログラム素子アレイ56と、を備えている。
【0035】
LEDアレイ52には、複数のLED50がm列に分けて配列されている。m列のn番目のLED50を「LED50mn」と表記する。図2に示す例では、複数のLED50が2列に分けて配列されている。1列目の6個のLED5011〜5016と、2列目の6個のLED5021〜5026と、が図示されている。なお、各々を区別する必要がない場合には、これらのLEDを「LED50」と総称する。
【0036】
ホログラム素子アレイ56には、複数のLED50の各々に対応して、複数のホログラム素子54が配列されている。LED50mnに対応するホログラム素子54を「ホログラム素子54mn」と表記する。図2に示す例では、1列目の6個のLED5011〜5016に対応する6個のホログラム素子5411〜5416と、2列目の6個のLED5021〜5026に対応する6個のホログラム素子5421〜5426と、が図示されている。なお、各々を区別する必要がない場合には、これらのホログラム素子を「ホログラム素子54」と総称する。
【0037】
複数のLED50の各々は、複数のLEDチップ53に分けられて、LEDチップ53上に配列されている。図2に示す例では、複数のLEDチップ53が、千鳥状に配列されている。m列のn番目のLEDチップ53を「LEDチップ53mn」と表記する。1列目のLEDチップ5311と2列目のLEDチップ5321とが図示されている。なお、各々を区別する必要がない場合には、これらのLEDチップを「LEDチップ53」と総称する。
【0038】
複数のLED50が配列されたLEDチップ53は、LED50の各々を駆動する駆動回路(図示せず)と共に、長尺状のLED基板58上に実装されている。LEDチップ53は、複数のLED50が主走査方向に並ぶように位置合せをして、LED基板58上に配置されている。これにより、LED50の各々は、感光体ドラム12の軸線方向と平行な方向に沿って配列される。
【0039】
LED50の配列方向が「主走査方向」である。また、LED50の各々は、互いに隣接する2つのLED50(発光点)の主走査方向の間隔(発光点ピッチ)が一定間隔となるように配列されている。また、感光体ドラム12の回転により副走査が行われるが、「主走査方向」と直交する方向を「副走査方向」として図示している。また、以下では、LED50の配置される位置を、適宜「発光点」と称する。
【0040】
複数のLED50の各々は、対応するホログラム素子54が記録された記録層60側に光を射出するように、発光面を記録層60側に向けて、LEDチップ53上に配置されている。LED50の「発光光軸」は、LED50からLED基板58と直交する方向(法線方向)に射出される光の光軸である。LED基板58は、LED50や駆動回路が実装される側の表面が「主面」である。この主面の法線方向が、LED基板58の法線方向である。従って、LED50の「発光光軸」は、LED基板58の法線方向を向いている。図示した通り、発光光軸は、上記の主走査方向及び副走査方向の各々とも直交する。
【0041】
なお、図2においては、数個のLEDチップ53が配列されたLPH14の一部を、概略的に図示しているに過ぎない。後述するように、実際の画像形成装置では、主走査方向の解像度に応じて、数百個のLEDチップ53を配列することで、数千個のLED50が配列されている。
【0042】
また、図2に示す例では、複数のLEDチップ53は千鳥状に配列されているが、1次元状に配置してもよく、複数列に分けて2次元状に配置してもよい。千鳥状に配置する場合には、複数のLEDチップ53は、主走査方向に並ぶように一列に配置されると共に、副走査方向に一定間隔ずらして二列に配置される。LEDチップ53の単位に分けられていても、複数のLED50の各々は、互いに隣接する2つのLED50の主走査方向の間隔が、略一定の間隔となるように配列されている。
【0043】
LEDチップ53としては、複数の自己走査型LED(SLED:Self-scanning LED)が配列されたSLEDチップを用いてもよい。SLEDチップは、スイッチのオン・オフを二本の信号線によって行い、各SLEDを選択的に発光させて、データ線を共通化する。このSLEDチップを用いることで、基板上での配線数が少なくて済む。
【0044】
LED基板58上には、ホログラム記録層60が配置されている。ホログラム素子アレイ56は、ホログラム記録層60内に形成されている。ホログラム記録層60は、LEDチップ53から予め定めた高さだけ離間された位置に、図示しない保持部材によって保持されている。LED50とホログラム記録層60との間には、LED50の各々から射出された光の光路を、副走査方向に折り曲げる光路変換素子66が配置されている。
【0045】
ホログラム記録層60には、複数のLED50の各々に対応して、主走査方向に沿って複数のホログラム素子54が形成されている。ホログラム素子54の各々は、互いに隣接する2つのホログラム素子54の主走査方向の間隔(中心点の間隔)が、上記のLED50の主走査方向の間隔と、略同じ間隔となるように配列されている。即ち、互いに隣接する2つのホログラム素子54が互いに重なり合うように、径の大きいホログラム素子54が多重記録されている。また、複数のホログラム素子54の各々は、互いに異なる形状を有していてもよい。
【0046】
ホログラム記録層60は、ホログラムを永続的に記録保持することが可能な高分子材料から構成されている。このような高分子材料としては、いわゆるフォトポリマーを用いてもよい。フォトポリマーは、光重合性モノマーのポリマー化による屈折率変化を利用してホログラムを記録する。
【0047】
光路変換素子66は、LED50と離間させて、LED50の上方に配置されている。LED50と光路変換素子66との間には、空気や透明樹脂等、LED50から射出される光に透明な材料で構成された離間層が存在している。光路変換素子66は、ガラスや樹脂等、離間層の材料とは屈折率の異なる材料で構成されている。また、光路変換素子66は、後述する通り、LED基板58の主面に対して副走査方向に傾けられた斜面を備えている。光路変換素子66は、離間層との屈折率差により、この斜面に入射した光を副走査方向に屈折させる。
【0048】
後述する通り、ホログラム素子54の各々は、光軸がLED基板58の法線方向に平行な信号光と、法線方向に対し光軸が副走査方向に傾いた参照光と、を干渉させて記録される。従って、ホログラム素子54に参照光の光路を通る光を照射すると、信号光が再生されて、LED基板58と垂直な方向に回折光が射出される。
【0049】
光路変換素子66は、対応するホログラム素子54に入射する光が増加するように、LED50の各々から射出された光の光路を、副走査方向に折り曲げる。換言すれば、光路変換素子66は、ホログラム素子54に入射する発光光の光軸が、参照光の光軸に近付くように、LED50からの射出光を屈折させる。この光路変換素子66の屈折機能により、対応するホログラム素子54に入射する光が増加する。
【0050】
離間層を空気層とする場合には、空気の屈折率は1であり、ホログラム記録材料の屈折率は約1.5であるから、光路変換素子66を屈折率が1.4〜1.6の範囲の層としてもよい。光路変換素子66を構成する材料としては、屈折率が1.5前後のアクリレート樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレンなど、成形性に優れた非晶質ポリオレフィン等を用いてもよい。
【0051】
図3は光路変換素子の一例を示す概略斜視図である。図3に示すように、光路変換素子66は、主走査方向に延びる棒状の偏角プリズムとしてもよい。主走査方向に並ぶ複数のLED50に対して、主走査方向に延びる棒状の偏角プリズムが設けられるので、複数のLED50を高密度に配列しても、高い位置決め精度は不要になる。以下では、光路変換素子66と同じ符号を付して、プリズム66と称する。プリズム66は、第1の斜面66Aを備えている。第1の斜面66Aは、LED基板58の主面に対し、副走査方向に予め定めた傾斜角度で傾けられている。
【0052】
図3に示す例では、プリズム66は3つの側面を有する三角プリズムである。以下では、プリズム66が三角プリズムである場合について説明するが、プリズム66は第1の斜面66Aを備えていればよく、三角プリズムには限定されない。例えば、4つの側面を有する四角プリズムでもよい。
【0053】
プリズム66は、第1の斜面66A以外に、第2の斜面66Bと、第1の斜面66Aの一端と第2の斜面66Bの一端とを連結する連結面66Cと、を備えている。第2の斜面66Bは、LED基板58の主面に対して第1の斜面66Aとは異なる方向に傾けられている。例えば、副走査方向の順方向及び逆方向を想定する。第1の斜面66Aの法線は、LED基板58の法線方向に対し副走査方向の順方向に傾く。一方、第2の斜面66Bの法線は、LED基板58の法線方向に対し副走査方向の逆方向に傾く。また、連結面66Cは、LED基板58の主面に対し平行な平面である。第1の斜面66Aに入射した光は、副走査方向に屈折されて連結面66Cから射出される。
【0054】
プリズム66は、連結面66Cが記録層60の光入射側の表面に対向するように、LED50とホログラム記録層60との間に配置されている。また、プリズム66は、LED50の上方に配置されている。対応するホログラム素子54を記録した参照光の光軸と、第1の斜面66Aとは、ある点で交差する。LED50は、この点の下方に配置されている。なお、LED50と第1の斜面66Aとの位置関係については、後で詳しく説明する(図7参照)。
【0055】
なお、図示は省略するが、LPH14は、ホログラム素子54で生成された回折光が感光体ドラム12の方向に射出されるように、ハウジングやホルダー等の保持部材により保持されて、図1に示す画像形成ユニット11内の予め定めた位置に取り付けられている。なお、LPH14は、調整ネジ(図示せず)等の調整手段により、回折光の光軸方向に移動するように構成されていてもよい。ホログラム素子54による結像位置(焦点面)が、感光体ドラム12表面上に位置するように、上記の調整手段により調整する。また、ホログラム記録層60上に、カバーガラスや透明樹脂等で保護層が形成されていてもよい。保護層によりゴミの付着を防止する。
【0056】
また、ホログラム記録層60は、ガラスや樹脂等で構成された容器内に収納されていてもよい。例えば、ホログラム記録層60を、容器内に封入されたホログラム記録材料で構成してもよい。容器内に収納されたホログラム記録層60は、取り扱いが容易である。また、容器は保護層としても機能する。ホログラム記録層60が容器内に収納されている場合には、光路変換素子(プリズム)66を容器の一部として形成してもよい。具体的な実施の形態については、後で詳しく説明する。
【0057】
<LEDプリントヘッドの動作>
LED50を発光させると、LED50から射出された光は、第1の斜面66Aからプリズム66に入射する。インコヒーレント光源であるLED50から射出される光は、発散して拡がることが知られている。この現象は「ランバーシアン配光」と称される。同じくインコヒーレント光源である電界発光素子(EL)においても、同様の現象が観測される。
【0058】
本実施の形態では、LED50から射出された光は、プリズム66により光路が折り曲げられて、ホログラム記録層60に照射される。プリズム66は、対応するホログラム素子54に入射する光が増加するように、LED50から射出された光の光路を、副走査方向に折り曲げる。従って、LED50の発光により、ホログラム素子54に参照光が照射されたのと略同じ状況となる。これにより、光の利用効率が向上する。
【0059】
図2に示すように、LEDアレイ52とホログラム素子アレイ56とを備えたLPH14では、LED50の各々から射出された各光は、第1の斜面66Aからプリズム66に入射する。プリズム66に入射した光は、プリズム66により光路が折り曲げられて、対応するホログラム素子54に入射される。ホログラム素子54の各々は、入射された光を回折して回折光を生成する。ホログラム素子54の各々で生成された各回折光は、LED基板58の法線方向に射出される。各回折光の光軸は、LED基板58の法線方向と平行であり、LED50の発光光軸とも平行である。
【0060】
LED基板58の法線方向に射出された各回折光は、感光体ドラム12の方向に収束して、作動距離だけ離間した焦点面に配置された感光体ドラム12の表面で結像される。即ち、複数のホログラム素子54の各々は、対応するLED50から射出された光を回折して集光し、感光体ドラム12表面に結像させる光学部材として機能する。
【0061】
図2に示すように、感光体ドラム12の表面12Aには、各回折光による微小なスポット62〜6212が、主走査方向に一列に配列されるように形成される。換言すれば、LPH14により、感光体ドラム12が主走査される。なお、各々を区別する必要がない場合には、スポット62〜6212を「スポット62」と総称する。
【0062】
例えば、A3幅まで印字可能な画像形成装置において、1インチ当たり1200スポットの解像度を得るためには、LED基板58上には、14848個のLED50が21μmの間隔で配列される。これに応じて、感光体ドラム12の表面12Aには、21μmの間隔で主走査方向に並ぶように14848個のスポット62が形成される。
【0063】
一般に、インコヒーレント光(非干渉性の光)を射出するLEDを用いるLPHでは、コヒーレンス性が低下してスポットぼけ(いわゆる色収差)が生じ、微小スポットを形成することは容易ではない。これに対して、本実施の形態のLPH14は、ホログラム素子54の入射角選択性及び波長選択性が高く、高い回折効率が得られる。
【0064】
また、LED50の各々から射出され、ホログラム素子54で回折されずに透過した不要光が、感光体12に到達すると、バックグラウンドノイズが増加してコントラストが低下する。これに対して、本実施の形態のLPH14では、光路変換素子66が存在しなければ感光体12に到達する不要光の光路も、光路変換素子66により副走査方向に折り曲げられて、対応するホログラム素子54に入射する光が増加する。
【0065】
このため、本実施の形態のLPH14では、バックグラウンドノイズ(背景雑音)が低減され、信号光が精度よく再生されて、輪郭の鮮明な微小スポット62(集光点)が形成される。
【0066】
<ホログラム素子の形状>
図4はホログラム素子の概略形状を示す斜視図である。図5(A)及び(B)はLEDプリントヘッドの副走査方向に沿った断面図である。図6はLEDプリントヘッドの主走査方向に沿った部分断面図である。
【0067】
図4〜図6に示すように、ホログラム素子54の各々は、一般に厚いホログラム素子と称される体積ホログラムである。また、ホログラム素子54の各々は、ホログラム記録層60の表面側を底面とし、LED50側に向かって収束する円錐台状に形成されている。この例では円錐台状のホログラム素子について説明するが、ホログラム素子の形状はこれには限定されない。例えば、円錐、楕円錐、楕円錐台等の形状としてもよい。円錐台状のホログラム素子54の直径は、底面で最も大きくなる。この円形の底面の直径を「ホログラム径r」とする。なお、「ホログラム径h」は、ホログラム素子54の厚さである。
【0068】
ホログラム素子54の各々は、LED50の主走査方向の間隔よりも大きな「ホログラム径r」を有している。例えば、LED50の主走査方向の間隔は30μmであり、ホログラム径rは2mm、ホログラム厚さhは250μmである。従って、図2及び図6に示すように、互いに隣接する2つのホログラム素子54は、互いに大幅に重なり合うように形成されている。複数のホログラム素子54は、例えば、球面波シフト多重により多重記録されている。なお、複数のホログラム素子54の各々は、同一波長で記録してもよく、複数の波長を組み合わせて(波長多重)記録してもよい。
【0069】
<光路変換素子の形状及び配置>
次に、光路変換素子(プリズム)の形状及び配置について説明する。図7は光路変換素子の設計の一例を示す副走査方向に沿った断面図である。ホログラム記録層60は、その光入射側の表面及び光出射側の表面の各々が、LED基板58の主面と略平行になるように配置されている。光入射側の表面とは、読み出し光が入射するホログラム記録層60の裏側(図面では下側)の表面である。光出射側の表面とは、回折光が射出されるホログラム記録層60の表側(図面では上側)の表面である。ホログラム素子54の各々は、ホログラム記録層60の上側から垂直に入射する信号光と、ホログラム記録層60の上側から入射角θで入射する参照光と、を干渉させて記録される。
【0070】
上述した通り、ホログラム記録層60は、容器内に封入されたホログラム記録材料で構成されていてもよい。この場合、ホログラム記録層60の上下両側には、保護層が配置される。ここでは、保護層を省略して説明する。通常、保護層を構成する材料の屈折率は、ホログラム記録材料の屈折率と略等しい。このため、ホログラム記録層60と保護層との間では光は屈折しない。従って、保護層がある場合でも、保護層が無い場合と同様に、光路変換素子の形状及び配置を設計してもよい。
【0071】
図7に示すように、参照光の光軸Lr1は、LED基板58の法線方向Lに対して、副走査方向に入射角θだけ傾けられている。また、既に説明した通り、ホログラム記録層60に入射する信号光の光軸は、LED基板58の法線方向Lと平行である。ホログラム記録層60に入射した参照光は、ホログラム記録層60を伝搬してプリズム66に入射し、プリズム66によりLED50(発光点)が配置される位置に集光される。
【0072】
ホログラム記録層60内での伝搬角をθとすると、参照光の光軸Lr1は、ホログラム記録層60及びプリズム66により、法線方向Lと角度θをなす方向に折り曲げられる。従って、法線方向Lと角度θをなす参照光の光軸Lr2は、プリズム66の第1の斜面66Aと交差する。LED50(発光点)は、この交差点の下方に配置される。LED50は、交差点の略真下に配置してもよい。LED50の発光光軸Lは、第1の斜面66Aと同じ点で交差する。
【0073】
プリズム66の第1の斜面66Aは、ホログラム記録層60の下側の表面、ひいては、LED基板58の主面に対し、傾斜角度θで傾けられている。LED50の発光光軸Lは、第1の斜面66Aの法線Laと角度θで交差する。ホログラム記録層60内での伝搬角をθとし、ホログラム記録層60の材料の屈折率をnとした場合に、傾斜角度θ、入射角θ、伝搬角θ、及び屈折率nが、下記式(1)及び下記式(2)の関係を満たすように、傾斜角度θと入射角θとが設定されている。
【0074】
nsin(θ−θ)=sinθ 式(1)
θ=arcsin((1/n)sinθ) 式(2)
【0075】
上記の関係を満たす場合には、プリズム66を配置しない場合と比較して、ホログラム素子54に入射する光が増加する。例えば、屈折率nを1.5で近似すると、(θ、θ)の組み合わせとしては、(45°、65°)、(50°、69°)、(55°、73°)等となる。LED50から射出された光の内、ホログラム素子54に入射しない光は「迷光」となる。これらの組み合わせでは、LED50から射出された光の内、7割程度の光が、ホログラム素子54に入射する。
【0076】
参照光の入射角θは、45°以上で且つ60°以下としてもよい。参照光の入射角θが45°以上で且つ60°以下の場合には、参照光の入射角θが45°未満の場合や60°を超える場合と比較して、ホログラム素子54に入射する光が増加する。その結果、ホログラム素子で回折されずに透過する不要光が低減される。
【0077】
プリズム66の径dは、ホログラム記録層60の下側の表面(保護層を備える場合には保護層の表面)から、第1の斜面66Aの先端部までの高さで表される。第1の斜面66Aの先端部とは、第1の斜面66Aと第2の斜面66Bとが形成する稜である。プリズム66の径dが大きいと、LED50の位置公差を大きくとれる。また、プリズム66の径dが小さいほど、プリズム66の成形が容易である。プリズム66の径dは、0.5mm〜1mmの範囲としてもよい。
【0078】
LED基板58の法線方向において、プリズム66はLED50から距離dだけ離間されている。距離dは、LED50から第1の斜面66Aの先端部までの距離である。プリズム66は、LED50から離間されて、LED50を覆うように設けられるオンチップレンズよりも優れた集光機能を発揮する。距離dは、0.1mm〜0.2mmの範囲としてもよい。
【0079】
LEDチップ53の副走査方向の幅wは、0.15mm〜0.3mmの範囲とされる。図7に示す例では、LED50はLEDチップ53の右側端部に配置されている。この場合には、距離dがゼロでも、第1の斜面66Aの先端部がLEDチップ53に支えることは無い。一方、LED50がLEDチップ53の左側端部に配置されている場合には、距離dがゼロだと、第1の斜面66Aの先端部がLEDチップ53に支えてしまう。このため、プリズム66は、LED50から予め定めた距離dだけ離間されている。
【0080】
ホログラム素子54の各々は、光軸がLED基板58の法線方向に平行な信号光と、法線方向に対し光軸が副走査方向に傾いた参照光と、を干渉させて記録される。参照光の光軸Lは、プリズム66の第1の斜面66Aと交差する。複数のLED50が複数列に分けて配列されている場合には、例えば、参照光の光軸LをLED基板58の法線方向に対し異なる角度で傾ける等して、列毎に交差点の副走査方向の位置を異ならせる。例えば、図2に示すように、LEDチップ53が千鳥状に配置され、複数のLED50が2列に分けて配列されている場合について説明する。
【0081】
図5(A)に示すように、2列目のn番目に配置されたLEDチップ532nに、2列目のn番目のLED502nが配列されている。LED502nに対応して、ホログラム素子542nが記録されている。この例では、1本の参照光の光軸Lが一点鎖線で図示されている。この光軸Lは、図7に示す参照光の光軸Lr2に相当する。参照光の光軸Lは、副走査方向の予め定めた位置Aで、プリズム66の第1の斜面66Aと交差する。LED502nはこの点Aの真下に配置されている。
【0082】
また、図5(B)に示すように、1列目のn番目に配置されたLEDチップ531nに、1列目のn番目のLED501nが配列されている。LED501nに対応して、ホログラム素子541nが記録されている。参照光の光軸Lは、副走査方向の位置Aとは異なる位置Bで、プリズム66の第1の斜面66Aと交差する。LED502nは、この点Bの真下に配置される。
【0083】
位置Aの真下に配置された2列目のLED502nと、位置Bの真下に配置された1列目のLED501nとでは、プリズム66の第1の斜面66Aに入射する光量が異なる。対応するホログラム素子54を記録する際に、この光量に応じてホログラム素子54の回折効率等を変更することで、結像面での光量は補正される。
【0084】
なお、上記では、列毎に交差点の副走査方向の位置を異ならせる例について説明したが、これに限定される訳ではない。LED50が複数列で配列されたLEDアレイの副走査方向の中心線の略真上に、交差点が位置するようにしてもよい。この場合には、異なる列のLED50について、参照光の光軸Lは、LED基板58の法線方向に対し同じ角度で傾けられる。
【0085】
<ホログラムの記録方法>
次に、ホログラムの記録方法について説明する。図8及び図9は、ホログラム記録層にホログラム素子54が形成される様子、即ち、ホログラム記録層にホログラムが記録される様子を示す図である。感光体ドラム12の図示は省略し、結像面である表面12Aだけを図示する。また、ホログラム記録層60Aは、ホログラム素子54が形成される前の記録層であり、符号Aを付して、ホログラム素子54が形成されたホログラム記録層60と区別する。
【0086】
図8に示すように、表面12A上の集光点に結像される回折光の光路を通るコヒーレント光が、信号光としてホログラム記録層60Aに照射される。また、ホログラム記録層60Aを通過する際に、所望のホログラム径rまで拡がる拡散光の光路を通るコヒーレント光が、参照光としてホログラム記録層60Aに照射される。より詳細には、参照光は、発光点から射出されてプリズム66に入射し、プリズム66によりその光路が折り曲げられて、ホログラム記録層60Aに照射される。発光点から射出されたコヒーレント光は、プリズム66により光路変更されて、所望のホログラム径rまで拡がる拡散光の光路を通る。コヒーレント光の照射には、半導体レーザ等のレーザ光源が用いられる。
【0087】
信号光と参照光との干渉により得られる干渉縞(強度分布)が、ホログラム記録層60Aの厚さ方向にわたって記録される。これにより、透過型のホログラム素子54が形成されたホログラム記録層60が得られる。ホログラム素子54は、面方向及び厚さ方向に干渉縞の強度分布が記録された体積ホログラムである。このホログラム記録層60を、LEDアレイ52が実装されたLED基板58上に取り付けることで、LPH14が作製される。
【0088】
図9に示すように、ホログラム記録層60AをLEDアレイ52が実装されたLED基板58上に取り付けた後に、位相共役記録によりホログラムを記録してもよい。ホログラム記録層60Aを取り付けた後でホログラムを記録するので、LED50と対応するホログラム素子54との距離が確保されると共に、LED50と対応するホログラム素子54との高い位置決め精度は不要になる。位相共役記録では、上記と同じ光路を通る信号光と参照光とが、LED基板58等が配置されていない側、即ち、ホログラム記録層60Aの表面側から照射される。この場合も同様に、ホログラム記録層60には、透過型のホログラム素子54が形成される。
【0089】
<回折光が射出される方向>
次に、回折光が射出される方向について説明する。図10は回折光が基板と直交する方向に取り出される様子を示す図である。図11は回折光が基板と交差する方向に取り出される様子を示す図である。
【0090】
図11に示すように、各回折光がLED基板58の法線方向と交差する方向に射出される場合には、感光体ドラム12は回折光の射出方向に配置される。即ち、LPH14は、感光体ドラム12の結像面に対し斜めに傾けて配置される。この場合には、LPH14の表面から感光体ドラム12の表面までの最短距離は、LPH14の作動距離よりも短くなる。例えば、回折光の光軸がLED基板58の法線方向と45°で交差する場合には、作動距離を約4mmとすると、最短距離は約2mmと短くなる。
【0091】
これに対し、図10に示すように、本実施の形態に係るLPH14の場合には、感光体ドラム12は、LED基板58の法線方向、即ち、LED基板58に対し垂直な方向に配置される。換言すれば、LPH14は、感光体ドラム12の結像面に対向するように配置される。この場合は、LPH14の表面から感光体ドラム12の表面までの最短距離は、LPH14の作動距離と等しい。従って、トナー汚れの影響を受け難く、整備性にも優れている。
【0092】
<一体型LPHの具体的な構成例>
図12(A)はホログラム記録層が容器内に収納された一体型LPHの具体的な構成を示す断面図である。図12(B)は図12(A)に示す容器の一部を取り出して示す斜視図である。
【0093】
図12(A)に示すように、一体型LPH14は、複数のLED50を備えたLEDチップ53が複数配列されたLED基板58と、複数のLED50の各々に対応して複数のホログラム素子54が記録されたホログラム記録層60と、を備えている。ホログラム記録層60は、ガラスや樹脂等で構成された容器70内に収納されて保護されている。ホログラム記録層60は、ホログラム記録材料を容器70内に封入する等して、容器70内に収納されている。複数のホログラム素子54は、容器内に収納されたホログラム記録層60A(記録前)に対し、位相共役記録により記録される。
【0094】
容器70は、主走査方向に延びる長尺状で且つ平板状の第1の平板部72と、ホログラム記録層60を挟んで第1の平板部72と対向する長尺状で且つ平板状の第2の平板部74と、側面を形成して第1の平板部72と第2の平板部74とを連結する連結部76と、第1の平板部72を一定の高さに支持する支持部78と、を備えている。第1の平板部72は、容器70の一部を構成する。また、図12(B)に示すように、第1の平板部72は、主走査方向に延びると共に外側に突き出したプリズム部73を備えている。
【0095】
プリズム部73は、第1の斜面73Aと第2の斜面73Bとを備えている。第1の斜面73Aは、LED基板58の主面に対し副走査方向に予め定めた傾斜角度で傾けられている。第2の斜面73Bは、LED基板58の主面に対して第1の斜面66Aとは異なる方向に傾けられている。プリズム部73は、対応するホログラム素子54を記録した参照光の光軸と第1の斜面73Aとが交差する点の下方にLED50が配置されるように、LED50の上方に配置されている。
【0096】
容器70は、空気より屈折率の高いガラスや樹脂等の材料で構成されている。容器70を構成する材料としては、図2の光路変換素子66の材料として例示された材料を用いてもよい。容器70は、例えば、型を用いた射出成形等により作製してもよい。また、容器70を複数の部材に分けて、各部材を射出成形等により作製してもよい。プリズム部73は、第1の平板部72と一体に形成される。
【0097】
支持部78は、主走査方向に延びる長尺状の部材で構成されている。支持部78は、第1の平板部72の幅方向の両端に設けられている。支持部78は、第1の平板部72から見ると、第1の平板部72からその法線方向に延びる脚部である。容器70は、脚部である支持部78の一端をLED基板58上に着けて、LED基板58上に載せ置かれる。
【0098】
容器70がLED基板58上に載せ置かれることにより、プリズム部73を備えた第1の平板部72が、LED基板58上の一定の高さに支持される。これにより、LED50とプリズム部73とが離間されて、LED50とプリズム部73との間には、空気層が介在することになる。同時に、ホログラム記録層60が、LED基板58上の一定の高さに配置される。また、LED基板58上の複数のLED50は、第1の平板部72と支持部78とで形成されるハウジング内に収納される。
【0099】
本実施の形態では、LED50から射出された光は、プリズム部73の第1の斜面73Aに入射し、プリズム部73により光路が折り曲げられて、ホログラム記録層60に照射される。プリズム部73は、LED50から射出された光の光路を、副走査方向に折り曲げる。これにより、対応するホログラム素子54を記録した参照光の光路を通る光が増加して、光の利用効率が向上する。
【0100】
また、LED50とプリズム部73とが離間されており、プリズム部73は、LED50を覆うように設けられるオンチップレンズよりも優れた集光機能を発揮する。更に、主走査方向に並ぶ複数のLED50に対して、主走査方向に延びるプリズム部73が設けられるので、複数のLED50を高密度に配列しても、高い位置決め精度は不要にとなる。
【0101】
図13(A)〜(E)は、図12(A)に示す一体型LPHの製造工程を示す断面図である。まず、図13(A)に示すように、容器70を構成する各部品を作製する。この例では、容器70は、第1の部材と第2の部材とに分けて作製される。第1の部材は、第2の平板部74及び連結部76の一部76Aで構成される。第2の部材は、第1の平板部72、連結部76の一部76B及び支持部78で構成される。各部材は、射出成形等により所望の形状に形成される。
【0102】
次に、図13(B)に示すように、連結部76の一部76Aと連結部76の一部76Bとを接合することで、第1の部材と第2の部材とを一体化して、第1の平板部72、第2の平板部74、連結部76及び支持部78を備えた容器70を完成させる。続いて、図13(C)に示すように、容器70内にホログラム記録材料を充填して、容器70内にホログラム記録層60A(記録前)を形成する。
【0103】
次に、図13(D)に示すように、容器70内に収納されたホログラム記録層60A(記録前)に対し、位相共役記録により複数のホログラム素子54記録する。最後に、図13(E)に示すように、ホログラム記録層60が収納された容器70を、LED基板58上に載せ置く。
【0104】
一体型LPH14では、プリズム部73は容器70と一体に形成されている。また、ホログラム記録層60は、プリズム部73を含む容器70と一体に形成されている。容器70は、プリズム部73を備えた第1の平板部72及び支持部78を備えているので、ホログラム記録層60が収納された容器70を、LED基板58上に載せ置くだけで、ホログラム記録層60及びプリズム部73が所望の位置に配置されると共に、複数のLED50がハウジング内に収納される。
【0105】
<その他の変形例>
なお、上記では、複数のLEDを備えたLEDプリントヘッドを備える例について説明したが、LEDに代えて電界発光素子(EL)、レーザダイオード(LD)等、他の発光素子を用いてもよい。発光素子の特性に応じてホログラム素子を設計すると共に、インコヒーレント光による不要露光を低減することで、インコヒーレント光を射出するLEDやELを発光素子として用いた場合でも、コヒーレント光を射出するLDを発光素子として用いた場合と同様に、輪郭が鮮明な微小スポットが形成される。
【0106】
また、上記では、球面波シフト多重により複数のホログラム素子を多重記録する例について説明したが、所望の回折光が得られる多重方式であれば、他の多重方式で複数のホログラム素子を多重記録してもよい。また、複数種類の多重方式を併用しても良い。他の多重方式としては、参照光の入射角度を変えながら記録する角度多重記録、参照光の波長を変えながら記録する波長多重記録、参照光の位相を変えながら記録する位相多重記録等が挙げられる。
【0107】
また、上記では、画像形成装置がタンデム型のデジタルカラープリンタであり、その各画像形成ユニットの感光体ドラムを露光する露光装置としてのLEDプリントヘッドについて説明したが、露光装置により感光性の画像記録媒体を像様露光することで画像が形成される画像形成装置であればよく、上記の応用例には限定されない。例えば、画像形成装置は、電子写真方式のデジタルカラープリンタには限定されない。銀塩方式の画像形成装置や光書込み型電子ペーパー等の書き込み装置等にも本発明の露光装置を搭載してもよい。また、感光性の画像記録媒体は、感光体ドラムには限定されない。シート状の感光体や写真感光材料、フォトレジスト、フォトポリマー等の露光にも、上記応用例に係る露光装置を適用してもよい。
【符号の説明】
【0108】
2 PC
3 画像読取装置
10 画像形成プロセス部
11 画像形成ユニット
12 感光体ドラム
12A 表面
13 帯電器
14 LEDプリントヘッド
15 現像器
16 クリーナ
21 中間転写ベルト
22 一次転写ロール
23 二次転写ロール
24 搬送ベルト
25 定着器
30 制御部
40 画像処理部
50 LED
52 LEDアレイ
53 LEDチップ
54 ホログラム素子
56 ホログラム素子アレイ
58 LED基板
60 ホログラム記録層
60A ホログラム記録層
62 スポット
64 離間層
66 光路変換素子(プリズム)
66A 第1の斜面
66B 第2の斜面
70 容器
72 第1の平板部
73 プリズム部
73A 第1の斜面
73B 第2の斜面
74 第2の平板部
76 連結部
78 支持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の発光素子が第1の方向に並ぶように配列された基板と、
前記基板上に配置された記録層であって、前記複数の発光素子の各々から射出された射出光が、対応するホログラム素子により前記基板の法線方向に回折及び集光されて、被露光面上に前記第1の方向に並ぶ集光点列が形成されるように、光軸が前記基板の法線方向に平行な信号光と前記法線方向に対し光軸が前記第1の方向と交差する第2の方向に傾いた参照光とを干渉させて、前記複数の発光素子の各々に対応する複数のホログラム素子が多重記録された記録層と、
前記基板と前記記録層との間に配置され、前記射出光の光路を前記第2の方向に折り曲げて、前記射出光を対応するホログラム素子に入射させる光路変換素子と、
を備えた露光装置。
【請求項2】
前記光路変換素子は、前記基板の主面に対し前記第2の方向に傾けられた第1の斜面を備え且つ前記第1の方向に延びる棒状のプリズムであり、
前記複数の発光素子の各々は、対応するホログラム素子を記録した参照光の光軸と前記第1の斜面とが交差する点の下方に配置される、
請求項1に記載の露光装置。
【請求項3】
前記第1の斜面の傾斜角度をθ、前記参照光の前記記録層への入射角をθ、前記記録層内での伝搬角をθ、前記記録層の材料の屈折率をnとした場合に、傾斜角度θ、入射角θ、伝搬角θ、及び屈折率nは、下記式(1)及び下記式(2)の関係を満たす、請求項2に記載の露光装置。
nsin(θ−θ)=sinθ式(1)
θ=arcsin((1/n)sinθ) 式(2)
【請求項4】
前記参照光の前記記録層への入射角θは、45°以上で且つ60°以下である、請求項2又は請求項3に記載の露光装置。
【請求項5】
前記複数の発光素子は複数列に分けて配列されており、各列に配列された複数の発光素子の各々は、対応するホログラム素子を記録した参照光の光軸と前記第1の斜面とが交差する点の下方に配置される、請求項2から請求項4までの何れか1項に記載の露光装置。
【請求項6】
前記記録層は容器内に収納されて前記基板上に配置されており、前記容器の一部が前記光路変換素子を構成する、請求項1から請求項5までの何れか1項に記載の露光装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6までの何れか1項に記載の露光装置と、
前記露光装置と作動距離だけ離間して配置されると共に、前記露光装置に対して前記第1の方向と交差する第2の方向に相対移動され、前記露光装置により画像データに応じて走査露光されて、画像が書き込まれる感光体と、
を含む画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−166447(P2012−166447A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−28902(P2011−28902)
【出願日】平成23年2月14日(2011.2.14)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】