説明

露光装置

【課題】パターンを形成した後の切断処理が困難な基板であっても、効率よく露光処理を行うことができる露光装置を提供する。
【解決手段】マスク(18a等)を経た照明系1からの露光光により基板21を露光するプロキシミティタイプまたはコンタクトタイプの露光装置10である。照明系1では、マスクを照明することのできる照明可能領域Laが、マスクを複数に分割した大きさ寸法に設定され、照明系1は、マスクに対して移動することにより、照明可能領域Laをマスクの全領域に行き渡らせることが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロキシミティタイプまたはコンタクトタイプ(密着露光タイプ)の露光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
フォトレジストなどの感光材料を塗布した基板の表面に、所定のマスクパターンを露光装置により露光し、その後エッチング工程により基板上にマスクパターンを形成するフォトリソグラフィ法が種々の分野で広く応用されており、プリント配線基板や液晶基板等も露光装置を用いて製造されている。このような露光装置として、マスクと基板とを僅かな隙間を空けて配置し、1対1の関係(倍率)で基板にパターンを形成するいわゆるプロキシミティ露光を行うものが知られている(例えば、特許文献1参照)。このような露光装置では、基板に複数の回路部品に対応するパターンを形成し、その基板を単一の回路部品に対応する大きさに切断することにより、作業効率を高めつつ複数の回路部品を形成することができる。
【0003】
ここで、携帯型電子機器のタッチパネルにおいて表面の保護に用いられる硬質のガラス板を基板とし、その基板(ガラス板)に上述した露光装置を用いてタッチセンサ用のパターン(プリント配線)を形成することが考えられる。このようなガラス板は、硬化処理を施されることにより、表面の保護に用いることのできる所望の硬度とされる。この硬化処理後のガラス板は、非常に硬いものであることから、硬化処理後に切断することは困難である。このため、硬化処理前のガラス板を露光対象としての基板とし、その基板に複数の回路部品に対応するパターンを形成することが考えられるが、硬化処理の性質上当該処理前にパターンを形成することは大変困難である。そこで、所望の大きさに切断して硬化処理を施したガラス板を露光対象としての基板とし、その基板を個別に露光装置を用いてタッチセンサ用のパターン(プリント配線)を形成する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−292902号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、所望の大きさに切断して硬化処理を施したガラス板を、1つ1つ露光装置における露光位置へと導いて露光処理を行うことは、作業効率の大幅な低下を招いてしまうことから、改善することが望ましい。
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑みて為されたもので、その目的は、パターンを形成した後の切断処理が困難な基板であっても、効率よく露光処理を行うことのできる露光装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、マスクを経た照明系からの露光光により基板を露光するプロキシミティタイプまたはコンタクトタイプ(密着露光タイプ)の露光装置であって、前記照明系では、前記マスクを照明することのできる照明可能領域が、該マスクを複数に分割した大きさ寸法に設定され、前記照明系は、前記マスクに対して移動することにより、前記照明可能領域を前記マスクの全領域に行き渡らせることが可能であることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の露光装置であって、前記照明可能領域は、少なくとも露光対象とする前記基板を一度で照明することのできる大きさ寸法に設定されていることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の露光装置であって、さらに、前記マスクに対する前記基板の姿勢の調整を可能とすべく該基板が取り付けられる取付板を移動可能に保持する露光ステージを備え、前記照明系は、前記照明可能領域を前記マスクの全領域に行き渡らせるために、前記マスクに対して複数回移動され、前記露光ステージは、前記照明系が移動される毎に、前記照明可能領域内に存在する前記基板の前記マスクに対する姿勢を調整すべく前記取付板を移動させることを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の露光装置であって、さらに、前記照明系からの露光光の一部のみの前記マスクへの到達を許すマスクブラインドを備え、該マスクブラインドは、前記照明可能領域を複数に分割した大きさ寸法の分割照明領域を形成可能であるとともに、前記マスクおよび前記基板に対して移動することにより、前記分割照明領域を前記照明可能領域の全領域に行き渡らせることが可能であることを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の露光装置を用いる露光方法であって、前記照明可能領域を前記マスクの全領域に行き渡らせるために、前記マスクに対して前記照明系を移動させる複数の照明位置を設定し、該照明位置のうちの1つに存在する前記照明系からの露光光により前記基板を露光する露光工程と、前記照明位置のうちの前記露光工程が行われていない1つに前記照明系を移動させる移動工程と、を設定した全ての前記照明位置での露光が終わるまで交互に行うことを含むことを特徴とする。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項4に記載の露光装置を用いる露光方法であって、前記照明可能領域を前記マスクの全領域に行き渡らせるために、前記マスクに対して前記照明系を移動させる複数の照明位置を設定し、該各照明位置において、前記分割照明領域を前記照明可能領域の全領域に行き渡らせるために、前記マスクおよび前記基板に対して前記マスクブラインドを移動させる複数の分割照明位置を設定し、前記照明位置のうちの1つに存在する前記照明系からの露光光により前記基板を露光する露光工程と、前記照明位置のうちの前記露光工程が行われていない1つに前記照明系を移動させる移動工程と、を設定した全ての前記照明位置での露光が終わるまで交互に行うことを含み、前記露光工程は、前記照明系が存在する前記照明位置において、前記分割照明位置のうちの1つに存在する前記マスクブラインドを経た前記照明系からの露光光により前記基板を露光する第1工程と、前記分割照明位置のうちの前記第1工程が行われていない1つに前記マスクブラインドを移動させる第2工程と、を設定した全ての前記分割照明位置での露光が終わるまで交互に行うことを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の露光装置によれば、パターンを形成した後の切断処理が困難な基板であっても、効率よく露光処理を行うことができる。
【0014】
上記した構成に加えて、前記照明可能領域は、少なくとも露光対象とする前記基板を一度で照明することのできる大きさ寸法に設定されていることとすると、照明系からの照明可能領域での照明により、基板を露光することができる。
【0015】
上記した構成に加えて、さらに、前記マスクに対する前記基板の姿勢の調整を可能とすべく該基板が取り付けられる取付板を移動可能に保持する露光ステージを備え、前記照明系は、前記照明可能領域を前記マスクの全領域に行き渡らせるために、前記マスクに対して複数回移動され、前記露光ステージは、前記照明系が移動される毎に、前記照明可能領域内に存在する前記基板の前記マスクに対する姿勢を調整すべく前記取付板を移動させることとすると、露光対象とする単一の基板とマスクとのアライメントを行ってから、その基板を露光するので、当該基板を適切に露光することができる。
【0016】
上記した構成に加えて、さらに、前記照明系からの露光光の一部のみの前記マスクへの到達を許すマスクブラインドを備え、該マスクブラインドは、前記照明可能領域を複数に分割した大きさ寸法の分割照明領域を形成可能であるとともに、前記マスクおよび前記基板に対して移動することにより、前記分割照明領域を前記照明可能領域の全領域に行き渡らせることが可能であることとすると、照明可能領域内に複数の基板が取り付けられた取付板を用いることにより、さらに効率よく露光処理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本願発明に係る露光装置の一例としての露光装置10における主に照明系1の構成を模式的に示す説明図である。
【図2】露光装置10における主に露光ステージ19の周辺の構成を模式的に示す説明図である。
【図3】マスクステージ18に設けられるマスクの例を示す説明図であり、(a)はマスク18aを模式的に示し、(b)はマスク18bを模式的に示している。
【図4】4個の基板21Aが取り付けられた取付板22と、照明可能領域Laと、を模式的に示す説明図である。
【図5】28個の基板21Bが取り付けられた取付板22と、照明可能領域Laと、を模式的に示す説明図である。
【図6】露光装置10における露光処理の際の動作を説明するための図2と同様の説明図であり、(a)は取付板22が載置される様子を示し、(b)はアライメント観察機構23を用いて調整(アライメント)を行う様子を示し、(c)は1個の基板21Aの露光を行う様子を示し、(d)は(c)とは異なる1個の基板21Aの露光を行う様子を示している。
【図7】露光装置10における露光処理において、取付板22(載置面19a)において照明可能領域La(照明系1)の位置が変化される様子を説明するための説明図であり、(a)は第1照明位置の照明可能領域Laを示し、(b)は第2照明位置の照明可能領域Laを示し、(c)は第3照明位置の照明可能領域Laを示し、(d)は第4照明位置の照明可能領域Laを示している。
【図8】露光装置10の動作を統括的に制御する制御部24において、4個の基板21Aが取り付けられた取付板22を用いた露光処理の内容の一例を示すフローチャートである。
【図9】露光装置10における露光処理において、取付板22(載置面19a)において照明可能領域La(照明系1)の位置が変化される様子を説明するための説明図であり、(a)は第1照明位置の照明可能領域Laを示し、(b)は第2照明位置の照明可能領域Laを示し、(c)は第3照明位置の照明可能領域Laを示し、(d)は第4照明位置の照明可能領域Laを示している。
【図10】露光装置10における第1照明位置の照明可能領域La内の露光処理において、分割照明領域Daの設定とその位置が変化される様子を説明するための説明図であり、(a)は分割照明領域Daが設定される前であって基板21B−1のアライメントが行なわれる様子を示し、(b)は基板21B−1に適合させて分割照明領域Daが設定された様子を示し、(c)は基板21B−2のアライメントが行なわれる様子を示し、(d)は基板21B−2に適合させて分割照明領域Daが設定された様子を示している。
【図11】露光装置10の動作を統括的に制御する制御部24において、28個の基板21Bが取り付けられた取付板22を用いた露光処理の内容の一例を示すフローチャートである。
【図12】24個の基板21Cが取り付けられた取付板22と、その取付板22に対して設定された各照明位置の設定および各照明位置における各分割照明位置の設定と、それに伴う効果と、を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本願発明に係る露光装置の発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
【実施例】
【0019】
先ず、本願発明に係る露光装置10の概略的な構成について説明する。図1は、本願発明に係る露光装置の一例としての露光装置10における主に照明系1の構成を模式的に示す説明図である。図2は、露光装置10における主に露光ステージ19の周辺の構成を模式的に示す説明図である。なお、理解容易のために、図1では、アライメント観察機構23の構成を省略して示し、図2では、照明系1の構成を省略して示している。
【0020】
露光装置10は、マスクと基板(露光対象)とを僅かな隙間を空けて配置し、1対1の関係(倍率)で基板にパターンを形成するいわゆるプロキシミティ露光を行うものである(図2参照)。この露光装置10は、図1に示すように、光軸方向に沿って出射側から順に、光源11と、コールドミラー12と、露光シャッタ13と、紫外線バンドパスフィルタ14と、インテグレータレンズ15と、コリメータミラー16と、マスクブラインド17と、マスクステージ18と、露光ステージ19と、を有する。この露光装置10(照明系1)は、露光光として紫外線を用いている。
【0021】
光源11は、露光に用いる露光光としての紫外線の照射のために設けられており、本実施例では、水銀ランプ11aが楕円反射鏡(楕円鏡)11bの第1焦点位置に配置されて構成されている。この光源11(その水銀ランプ11a)は、後述する制御部24による制御下で点灯および消灯される。光源11では、水銀ランプ11aから出射された出射光を、楕円反射鏡11bに反射してコールドミラー12へと進行させる。
【0022】
コールドミラー12は、入射した光のうち、赤外領域の熱線を透過させるとともに他の波長帯域の光を反射するものであり、入射した光から赤外領域の熱線を分離することができる。このため、光源11からの出射光は、コールドミラー12により赤外領域の熱線が分離されて、露光シャッタ13もしくは紫外線バンドパスフィルタ14へと進行する。
【0023】
その露光シャッタ13は、コールドミラー12により反射された出射光の透過および遮断の切り替えを可能とすべく、コールドミラー12から紫外線バンドパスフィルタ14へと向かう光路(後述する照明光路)上に出し入れ自在とされている。この露光シャッタ13は、光路上から退避されると後述するように基板21(図2、図6(c)、図6(d)等参照)の露光を可能とし、光路上に位置されると後述する基板21の露光を停止させる。この露光シャッタ13は、後述する制御部24による制御下で後述する照明光路に対して出し入れされる。
【0024】
紫外線バンドパスフィルタ14は、入射した光のうち紫外線のみの透過を許すものであり、本実施例では、波長365nmの水銀のスペクトル線であるi線の透過を許すi線バンドパスフィルタにより構成されている。このため、コールドミラー12により反射された出射光は、紫外線バンドパスフィルタ14により紫外線(i線)の波長帯域のみの光(実際には、i線の波長帯域の近傍の強度が高い光)とされて、インテグレータレンズ15へと進行する。なお、i線以外にも、h線、i線とh線の組み合わせ、またはその間の波長を利用することができる。
【0025】
インテグレータレンズ15は、入射した光の照度ムラを打ち消して照射面において周辺部まで均一で明るい照度分布とする。このため、紫外線バンドパスフィルタ14を経て紫外線(i線)の波長帯域のみの光とされた入射光は、インテグレータレンズ15により均一な照度分布とされてコリメータミラー16へと進行する。なお、このインテグレータレンズ15と紫外線バンドパスフィルタ14とは、配置を逆転させても同様の作用を得ることができる。
【0026】
コリメータミラー16は、入射した光を平行光(光束)として反射する。このため、インテグレータレンズ15を経て均一な照度分布とされた出射光は、コリメータミラー16により反射されることにより、平行光とされてマスクブラインド17およびマスクステージ18へと進行する。このコリメータミラー16は、インテグレータレンズ15との協働により、平行光とした出射光が、マスクブラインド17における最も大きくした状態の後述する透過開口17a(図6(c)、(d)参照)を、過不足なく照射することができるように、光学的な設定が為されている。ここでいう過不足なく照射するとは、透過開口17aの内方を余すことなく照射することができるとともに、透過開口17aの周縁部(マスクブラインド17)により蹴られる領域(当該周縁部を照射する領域)が可能な限り小さくされていることをいう。
【0027】
マスクステージ18は、所望のパターンが形成されたマスク18aを、コリメータミラー16により反射された出射光の光路上に位置させて保持する。このマスク18aでは、本実施例では、後述する4個の基板21A(図4参照)に対応する4個のパターンPcAが形成されている(図3(a)参照)。また、マスクステージ18では、図示は略すが、マスク18aの取り外しが可能とされており、マスク18aとは異なる所望のパターンが形成されたマスクへの交換が可能とされている。この他のマスクとして、本実施例では、マスク18b(図3(b)参照)を用意している。このマスク18bでは、本実施例では、後述する28個の基板21B(図5参照)に対応する28個のパターンPcBが形成されている(図3(b)参照)。これらのマスク18aおよびマスク18bを含む交換対象とされる各マスクでは、各パターン(PcA、PcB参照)において、アライメントマークPaが形成されている(図3参照)。このパターンPcAおよびパターンPcBは、図示は略すが、タッチセンサ用(タッチセンサパネル用)のパターン(プリント配線)とされている。
【0028】
マスクステージ18は、本実施例では、交換対象とされる各マスク(18a等)を鉛直方向の上側に載置させた状態で保持することが可能とされている。これにより、マスクステージ18では、各マスク(18a等)の交換作業を容易なものとすることができるとともに、その各マスク(18a等)を保持するための構成を容易なものとすることができる。また、マスクステージ18は、保持した各マスク(18a等)の鉛直方向の下側であって、各マスク(18a等)を保持する構成の内方に、露光ステージ19を受け入れることが可能とされている。これは、後述するように、露光ステージ19の載置面19aに載置された取付板22(そこに取り付けられた各基板21)を、プロキシミティ露光を行う観点から、マスク(18a等)に対して所定の位置とする必要があることによる。
【0029】
本実施例では、マスク18aおよびマスク18bを含む交換対象とされる各マスクが、後述する露光ステージ19の載置面19a(図2参照)を全面に渡って覆うことが可能な大きさ寸法とされている。また、交換対象とされる各マスクでは、その全領域を効率よく利用すべくパターン(図3のPcA、PcB参照)の個数およびその配置が設定されている。この各パターンの個数および配置の設定は、後述する露光ステージ19の載置面19a(図2参照)に載置される取付板22において、取り付けられる基板21の個数およびその配置に対応するものとされている。換言すると、各パターンの個数および配置は、取付板22の全領域を効率よく利用すべく個数およびその配置が設定されて取り付けられる複数の基板21に対応するものとされている。このため、コリメータミラー16により反射された出射光は、マスク18aを透過することにより、マスク18aに形成されたパターン(パターンPcA)の形状に応じたものとされて露光ステージ19(基板21の表面)へと進行する。この交換対象とされる各マスクにおけるパターンの個数および配置の情報は、制御部24の記憶部(図示せず)に格納されている。
【0030】
このマスクステージ18とコリメータミラー16との間に、マスクブラインド17が設けられている。このマスクブラインド17は、コリメータミラー16により反射されてマスク18aに向かう出射光の照明光路上に進退自在とすべくマスクステージ18に設けられている。マスクブラインド17は、マスクステージ18に設けられたマスク(18a等)のマスクパターンに応じて適宜光路上に進出されて、透過を許す領域(以下では、透過開口17a(図6(c)、(d)参照)ともいう)が可変とされている。このため、マスクブラインド17は、マスクステージ18に設けられたマスク(18a等)のマスクパターン(パターンPcA等)のうち所望の領域(後述する照明可能領域Laもしくは分割照明領域Da)のみのマスクパターン像を、露光ステージ19に載置された後述する基板21上に形成させることができる(図4および図5参照)。マスクブラインド17では、マスクブラインド駆動機構26により、マスクステージ18に設けられたマスク(18a等)に対して、その平面に沿う方向(後述するX−Y平面に沿う方向)への移動が行われる。また、マスクブラインド17では、マスクブラインド駆動機構26により、マスク(18a等)に対する位置に拘らず、透過開口17aの大きさ寸法および形状の調整が行われる。このマスクブラインド駆動機構26は、後述する制御部24による制御下で駆動される。このことから、露光装置10では、マスクブラインド17およびマスクステージ18が、マスク(18a等)に対して、後述する照明系1からの露光光により照明される領域(後述する照明可能領域Laもしくは分割照明領域Da)を設定するマスクステージ機構2として機能する。
【0031】
このマスクブラインド17は、透過開口17aを最も大きくした状態において、コリメータミラー16を経た出射光の進行方向に直交する断面形状を、マスクステージ18に設けられるマスク(18a等)(後述する露光ステージ19の載置面19a)の全領域を複数に分割した大きさ寸法に相当させるものとされている。なお、ここでいう全領域を複数に分割した大きさ寸法とは、その全領域を0および1を除く自然数で除算したものに限定されるものではなく、2つ以上の当該大きさ寸法により一部重複することを含んで全領域を行き渡らせることができるものであればよい。
【0032】
マスクブラインド17は、本実施例では、コリメータミラー16を経た出射光が最も大きくされた透過開口17aを通過すると、その断面形状が、マスクステージ18に設けられるマスク(18a等)(後述する露光ステージ19の載置面19a)の全領域を略4つに分割した大きさ寸法に相当する矩形状とされる(図4および図5の符号La参照)。以下では、透過開口17aを通過した出射光により照明される領域を照明可能領域La(図4および図5等参照)という。
【0033】
このことから、露光装置10では、光源11から、コールドミラー12、露光シャッタ13、紫外線バンドパスフィルタ14、インテグレータレンズ15およびコリメータミラー16を経る光路が、マスク18aを露光光としての紫外線(i線)で照明するための照明系(照明光学系)1として機能する。この照明系1は、最大で、マスク18aにおける照明可能領域La(複数(この例では4つ)に分割した領域)を、紫外線(i線)で照明することができる。
【0034】
照明系1は、照明系移動機構25により、マスクステージ18(そこに設けられたマスク)に対して、その平面に沿う方向(後述するX−Y平面に沿う方向)への移動が可能とされている。すなわち、照明系移動機構25は、マスクステージ18(そこに設けられたマスク)に対して、照明系1を後述するX軸方向およびY軸方向へと適宜移動させることができる。この照明系移動機構25は、後述する制御部24による制御下で駆動される。この照明系1は、マスク(18a等)および載置面19aに対して移動されることにより、照明可能領域Laをマスク(18a等)および載置面19aの全領域に行き渡らせることが可能とされている。なお、この照明系1の移動は、手動により行うものであってもよい。
【0035】
このため、露光装置10では、照明系1によるマスク18aにおける照明可能領域Laでの紫外線(i線)の照明により、そのマスク18aのパターンPcAの像(以下、マスクパターン像ともいう)を、照明可能領域Laで露光ステージ19に載置された後述する基板21の表面に形成する(図4および図5等参照)。このとき、照明系1では、コリメータミラー16により反射された出射光が平行光とされていることから、マスク18aのパターンPcAに対して、1対1の比率で後述する基板21の表面にマスクパターン像を形成する。以下では、この照明系1の照明により、マスク18a(そのパターンPcA)のマスクパターン像を形成する光路を露光光路とし、その光軸方向をZ軸方向とする。また、露光光路の光軸方向(Z軸方向)に直交する面をX−Y平面とする。
【0036】
露光ステージ19には、図2に示すように、マスクパターンの露光のために複数の基板21が取り付けられた取付板22が、載置面19aに載置される。この露光ステージ19は、載置面19aをX軸方向に移動させることができるとともに、載置面19aをY軸方向に移動させることができ、かつその載置面19aをZ軸方向に移動させることが可能とされている。また、露光ステージ19は、載置面19aをZ軸回りに回転させることができるとともに、載置面19aのZ軸方向に対する傾斜を調整することが可能とされている。このため、露光ステージ19は、載置面19aに載置される各基板21の表面をマスクステージ18に保持されたマスク18aに近接させて取付板22を保持することができ、保持した取付板22(各基板21)を露光光路に直交する面に沿って移動させることができ、保持した取付板22(各基板21)を露光光路に直交する面上で回転させることができ、保持した取付板22(各基板21)の露光光路に対する傾斜を調整することができる。このことから、露光ステージ19は、マスクステージ18に保持されたマスク(18a等)に対する基板21の姿勢の調整を行うことができる。
【0037】
この露光ステージ19における取付板22の移動は、本実施例では、後述する制御部24により露光ステージ19の内方に設けられたステージ駆動機構27が制御されることで行われる。なお、露光ステージ19における取付板22の移動は、手動により行うものであってもよい。本実施例では、取付板22は、そこに取り付けられた各基板21に対してプリアライメントされた状態で露光ステージ19上に載置される。このプリアライメントとは、各基板21を照明系1における基準位置とするものであり、各基板21に対するマスクパターンの露光位置に要求される位置精度を満たすものではない。
【0038】
その各基板21は、本実施例では、携帯型電子機器のタッチパネルにおいて表面の保護に用いられる硬質のガラス板に、紫外線(i線)に対して光反応するフォトレジスト等の感光材料が塗布または張り付けられて形成されている。このため、各基板21は、紫外線(i線)の照射により露光可能とされている。その各ガラス板は、図示は略すが、携帯型電子機器のタッチパネルの保護ガラスとしての形状に成形された後、硬化処理が施されて形成されている。各基板21は、少なくとも、照明系1による照明可能領域Laよりも小さな大きさ寸法のものが用いられる。換言すると、照明系1による照明可能領域Laは、少なくとも露光対象とする基板21を一度で照明することのできる大きさ寸法に設定されている。
【0039】
本実施例では、マスク18a(図3(a)参照)が対応され照明可能領域Laに近い大きさ寸法とされた基板21A(図4参照)と、マスク18b(図3(b)参照)が対応され基板21Aよりも小さい大きさ寸法とされた基板21B(図5参照)と、が露光対象として設定されている。この各基板21(21A、21B)は、図示は略すが、タッチセンサ用(タッチセンサパネル用)のパターン(プリント配線)を形成するために、露光される。各基板21(21A、21B)には、それぞれ複数のアライメントマークAm(図4および図5参照)が設けられている。この各基板21は、取付板22を介して露光ステージ19に保持される。
【0040】
その取付板22は、平坦な板状を呈し、露光ステージ19の載置面19aよりも小さな大きさ寸法とされている。取付板22は、載置面19aに載置された状態で露光ステージ19により保持可能とされている。この露光ステージ19による取付板22の保持は、吸着によるものであってもよく、保持爪によるものであってもよい。この取付板22では、各基板21に対応するマスク(18a等)に形成されたパターンに適合されて、各基板21が取り付けられる。換言すると、取付板22では、マスクステージ18に保持されたマスク(18a等)における各パターンの個数に等しい個数の基板21が、その各パターンの配置に適合されて取り付けられる。取付板22では、本実施例では、マスク18a(図3(a)参照)に対応されて、4個の基板21Aが取付板22に取り付けられ(図4参照)、マスク18b(図3(b)参照)に対応されて、28個の基板21Bが取付板22に取り付けられる(図5参照)。この各基板21の取り付けは、露光ステージ19の載置面19a上への取付板22の載置、および載置面19a上における後述するアライメントのための取付板22の移動の際、位置ずれを起こすことなく取り付けられていれば、接着材を用いるものであっても、補助器具による固定であっても、凹所に嵌め込むものであってもよい。本実施例では、取付板22では、複数の基板21(21A、21B)が接着材により取り付けられている。
【0041】
さらに、本実施例では、取付板22には、複数の基板21が取り付けられる領域と干渉しない(重ならない)位置に、複数のアライメントマークBa(図4および図5参照)が設けられている。このアライメントマークBaは、後述するように、取付板22に取り付けられた各基板21のアライメントマークAmとの相対的な位置関係に基づいて、取付板22上における各基板21の各アライメントマークAmの位置の特定のために用いられる。このアライメントマークBaは、本実施例では、取付板22における4隅に設けられている。
【0042】
この露光装置10では、照明系1において、光源11から出射された出射光が、コールドミラー12、紫外線バンドパスフィルタ14、インテグレータレンズ15、コリメータミラー16およびマスクブラインド17を経て、マスクステージ18へと到達することにより、マスクステージ18に保持されたマスク18aの照明可能領域Laを紫外線(i線)で一様に照射する。すると、露光装置10では、露光ステージ19の載置面19a(そこに載置された各基板21)上に、照明可能領域Laで紫外線(i線)によるマスクパターン像が適切に形成される。また、露光装置10では、マスクステージ18(そこに設けられたマスク18a)および露光ステージ19(その載置面19a)に対して、その平面に沿う方向(X−Y平面に沿う方向)に照明系1を移動させて、照明可能領域Laをマスク18aの全領域に行き渡らせることにより、載置面19a(そこに載置されたすべての基板21)に対して紫外線(i線)によるマスクパターン像が適切に形成される。このとき、露光装置10では、露光ステージ19(その載置面19a)を、マスクステージ18(そこに設けられたマスク18a)に対して移動させる必要がないことから、所謂ノンステップステージ機構として機能する。
【0043】
このことから、露光装置10では、移動された照明系1の位置(照明可能領域La)において、マスクパターン像と各基板21とが適切な位置となるように、取付板22の位置を設定することにより、各基板21にマスクパターン像を適切に露光することができる。このマスクパターン像に対する各基板21の位置、すなわちマスク18aに対する各基板21の光学的な位置は、露光ステージ19が保持する取付板22を適宜移動させることにより、調整する(アライメントする)ことができる。このため、露光装置10では、露光ステージ19が、マスク(18a等)に対して、各基板21が取り付けられた取付板22の位置を調整する位置調整機構3として機能する。この露光装置10では、この調整(アライメント)のために、アライメント観察機構23(図2等参照)が設けられている。
【0044】
このアライメント観察機構23は、照明系1のコリメータミラー16と、マスクステージ18(マスク18a)と、の間で照明光路に対して進退可能に設けられている。アライメント観察機構23は、マスクパターン像におけるアライメントマークPa(図3参照)と、観察対象とする基板21のアライメントマークAm(図4および図5参照)と、をZ軸方向(露光光路における光軸方向)で観察することが可能とされている。このアライメント観察機構23は、図示は略すが、Z軸方向に沿う撮影光軸を有し、マスク18aおよびそれを経た観察対象とした基板21の画像を取得可能な撮像装置を備えている。アライメント観察機構23は、取得した観察画像を制御部24(図1参照)に出力することができる。
【0045】
制御部24は、露光装置10の動作を統括的に制御する。この制御部24は、図示は略すが、照明系1のコリメータミラー16とマスクステージ18(マスク18a)との間の照明光路上の任意の位置にアライメント観察機構23を存在させることができるとともに、その照明光路上からアライメント観察機構23を退避させることができる。また、制御部24は、図示は略すが、アライメント観察機構23から出力された観察画像を適宜表示部に表示させることができるとともに、当該画像を画像解析することにより、マスクパターン像におけるアライメントマークPa(その中心位置(図3参照))と、観察対象とした基板21のアライメントマークAm(その中心位置(図4および図5参照))と、の位置ずれ量(調整代)を取得することが可能とされている。制御部24は、アライメント観察機構23を経て取得した位置ずれ量(調整代)に基づいて、露光ステージ19に保持された取付板22を移動させることにより、マスクパターン像と観察対象とした基板21とを適切な位置関係とする調整(アライメント)を行う。
【0046】
また、制御部24は、上述したように、照明系移動機構25、マスクブラインド駆動機構26およびステージ駆動機構27の駆動を制御することができる。このため、制御部24は、マスクステージ18(そこに設けられたマスク)に対するX−Y平面に沿う方向での照明系1の位置を調整することができ、マスクステージ18に保持されたマスク(18a等)に対する照明可能領域Laの位置を調整することができ、マスクステージ18に保持されたマスク(18a等)に対する後述する分割照明領域Daの設定およびその位置を調整することができ、マスクパターン像に対する各基板21の位置(マスク18aに対する各基板21の光学的な位置)を調整することができる。
【0047】
さらに、制御部24は、本実施例では、露光ステージ19の載置面19aに載置される取付板22上における各基板21の各アライメントマークAmの位置の情報を取得することが可能とされている。この情報は、例えば、図示は略すが、複数の基板21が取り付けられた取付板22の画像を取得し、その画像を画像解析することにより、取付板22の各アライメントマークBaと、各基板21の各アライメントマークAm(図4および図5参照)と、の位置ずれ量(調整代)を取得することにより、取得することができる。この情報を取得する位置情報取得機構は、取得した情報を制御部24に送信することを可能とするものであれば、露光装置10の一部として設けるものであってもよく、露光装置10とは別体として設けるものであってもよい。このため、制御部24は、本実施例では、図示を略す位置情報取得機構からの取付板22上における各基板21の各アライメントマークAmの位置の情報に基づいて、マスクステージ18(マスク18a)に対して露光ステージ19(載置面19a)を移動させる(位置を調整する)ことにより、取付板22に取り付けられた複数の基板21のうち、任意の基板21のアライメントマークAmと、それに対応するマスクパターンにおけるアライメントマークPaと、をアライメント観察機構23が観察対象とすることができる位置関係とすること(位置調整)ができる。
【0048】
次に、実施例1の露光装置10において、4個の基板21Aが取り付けられた取付板22(図4参照)を用いた露光処理について説明する。図6は、露光装置10における露光処理の際の動作を説明するための図2と同様の説明図であり、(a)は取付板22が載置される様子を示し、(b)はアライメント観察機構23を用いて調整(アライメント)を行う様子を示し、(c)は1個の基板21Aの露光を行う様子を示し、(d)は(c)とは異なる1個の基板21Aの露光を行う様子を示している。図7は、露光装置10における露光処理において、取付板22(載置面19a)において照明可能領域La(照明系1)の位置が変化される様子を説明するための説明図であり、(a)は第1照明位置の照明可能領域Laを示し、(b)は第2照明位置の照明可能領域Laを示し、(c)は第3照明位置の照明可能領域Laを示し、(d)は第4照明位置の照明可能領域Laを示している。図8は、露光装置10の動作を統括的に制御する制御部24において、4個の基板21Aが取り付けられた取付板22を用いた露光処理の内容の一例を示すフローチャートである。以下、この露光処理の際の制御部24における制御処理の一例である図8のフローチャートの各ステップについて、図6および図7を用いて説明する。
【0049】
この図8のフローチャートでは、基板21A(図4参照)を露光対象としており、露光装置10のマスクステージ18にはマスク18a(図3(a)参照)を設けている。このため、載置する取付板22では、マスク18aにおける4個のパターンPcAの並びに対応させて、4個の基板21Aが取り付けられている(図4および図7参照)。この載置される取付板22上における4個の基板21Aの各アライメントマークAmの位置の情報は、上述した位置情報取得機構(図示せず)により取得されて、制御部24に送信される。制御部24は、この情報を自らの記憶部(図示せず)に格納するとともに、後述するステップS3を実行する前に、この情報に基づいて最初に露光を行うアライメント観察機構23が基板21AのアライメントマークAmを観察対象とすることができる位置となるように露光ステージ19により当該基板21Aを移動させてその位置を調整する。このとき、制御部24は、予め保存されているマスク18aにおけるマスクパターンPcA(そのアライメントマークPa)の位置情報に基づいて、最初に露光を行う基板21Aに対応するマスクパターンPcAのアライメントマークPaを観察対象とすることができる位置に、アライメント観察機構23を移動させる。本実施例では、図4を正面視して左上の基板21AのアライメントマークAmを観察対象とすることができる位置(照明系1(照明可能領域La)における第1照明位置)にアライメント観察機構23を移動させる。
【0050】
また、制御部24では、照明可能領域Laをマスク18aの全領域に行き渡らせる、すなわちマスク18aに設けられた複数(この例では4個)のパターンPcAを余すことなく照明することを可能とするために、マスク18aに対して照明系1を移動させる複数(この例では4箇所)の照明位置を設定する。この複数の照明位置は、できる限り少ない数ですべてのパターンPcAを照明することができる、すなわちより効率よく照明可能領域Laをマスク18aの全領域に行き渡らせることができるように設定する。本実施例では、図7の(a)に示す位置を第1照明位置とし、(b)に示す位置を第2照明位置とし、(c)に示す位置を第3照明位置とし、(d)に示す位置を第4照明位置としている。さらに、後述するように、露光処理が開始される際、照明可能領域La(照明系1)の上述した照明位置の番号をカウントするカウント値nは1とされている。
【0051】
ステップS1では、載置面19aに載置された取付板22を露光ステージ19で保持して、ステップS2へ進む。このステップS1では、図示を略す搬送機構により取付板22が載置面19aに載置されると、その取付板22を露光ステージ19で保持する(図6(a)参照)。このとき、取付板22は、載置面19a上において、プリアライメントされた状態で載置される。
【0052】
ステップS2では、ステップS1での取付板22の保持に続き、載置面19aに載置された取付板22(そこに取り付けられた各基板21A)をマスク18aに対して所定の位置として、ステップS3へ進む。このステップS2では、露光ステージ19をZ軸方向でマスク18aに近接する方向へと移動することにより、取付板22をマスク18aに対する所定の位置とする(図6(b)参照)。この所定の位置とは、プロキシミティ露光を行う観点から、照明系1によるマスク18aの紫外線(i線)の照明により、そのマスク18aのマスクパターン像を1対1の関係(倍率)で基板21Aの表面に適切に形成することができることを言う。この状態において、本実施例では、照明系1は、マスクステージ18および露光ステージ19(その載置面19a)に対するX−Y平面に沿う方向で見た位置が、図7を正面視して取付板22上における左上の基板21Aを照明可能領域Laの内方に位置させる第1照明位置とされている(図7(a)参照)。
【0053】
ステップS3では、ステップS2での取付板22をマスク18aに対して所定の位置とすること、あるいは、ステップS7での照明系1の第n照明位置への移動に続き、アライメント情報を取得して、ステップS4へ進む。このステップS3では、第n照明位置とした照明系1のコリメータミラー16とマスクステージ18(マスク18a)との間の照明光路上において、その照明可能領域Laに存在する基板21AのアライメントマークAmとマスクパターンのアライメントマークPaとを観察対象とすることができる位置に露光ステージ19(その載置面19a)とアライメント観察機構23とを相対的に移動(位置調整)させて(図6(b)参照)、そのアライメント観察機構23からアライメントマークAmとアライメントマークPaとの位置ずれ量(調整代)を取得する(図4および図7参照)。この観察対象とすることができる位置とは、照明系1が第1照明位置である場合(n=1である場合)、図4および図7(a)に示すように、左上の基板21AのアライメントマークAmと、そこに対応する左上のパターンPcAのアライメントマークPaと、をアライメント観察機構23での観察画像内に捕捉することを言う。このとき、本実施例では、上述した位置情報取得機構(図示せず)からの情報と、予め保存されているマスク18aにおけるマスクパターンPcA(そのアライメントマークPa)の位置情報と、に基づいて、露光ステージ19(その載置面19a)とアライメント観察機構23との相対的な移動(位置調整)を行う。
【0054】
ステップS4では、ステップS3でのアライメント情報の取得に続き、そのアライメント情報に基づいてアライメントを行い、ステップS5へ進む。このステップS4では、アライメント観察機構23を経て取得した位置ずれ量(調整代)に基づいて、露光ステージ19に保持された取付板22を移動させることにより、マスクパターン像と観察対象とした基板21Aとを適切な位置関係とする調整いわゆるアライメントを行う。この調整(アライメント)では、載置面19a(取付板22)をX軸方向およびY軸方向へと移動させたり、載置面19a(取付板22)をZ軸方向周りに回転させたり、載置面19a(取付板22)のZ軸方向に対する傾斜を調整したりすることにより、第n照明位置とされた照明可能領域Laに存在する基板21Aのマスクステージ18(マスク18a)および照明系1に対する位置関係を適切なものとする。このため、ステップS3およびステップS4は、第n照明位置とされた照明可能領域Laに存在する基板21Aのマスクステージ18のマスク18a(照明系1)に対する位置を調整する調整工程となる。なお、ステップS4では、アライメント観察機構23を照明光路上から退避させる。この際、本実施例では、上述した予め保存されているマスク18aにおけるマスクパターン(そのアライメントマークPa)の位置情報に基づいて、次に露光を行う基板21Aに対応するマスクパターンのアライメントマークPaを観察対象とすることができる位置、すなわち第(n+1)照明位置での照明系1の照明光路上に存在する基板21Aに対応するマスクパターンのアライメントマークPaを観察対象とすることができる位置へと、アライメント観察機構23を移動させる。このアライメント観察機構23の移動は、次にステップS3へと戻ってくるまでの間に、それらの動作(主に後述する露光工程(ステップS5))に並行して行う。
【0055】
ステップS5では、ステップS4でのアライメントの実行に続き、露光を行い、ステップS6へ進む。このステップS5では、ステップS4でアライメントされた状態を維持し、照明系1によるマスク18aにおける照明可能領域Laでの紫外線(i線)の照明により、そのマスク18aのパターンPcAのマスクパターン像を、照明可能領域Laで露光ステージ19に載置された基板21Aの表面に形成する(図6(c)参照)。すると、照明可能領域Laにある基板21Aの表面(図7参照)には、マスク18aのパターンPcAのマスクパターン像に倣うパターンが形成される。このため、ステップS5は、第n照明位置とされた照明可能領域Laに存在する基板21Aを露光する露光工程となる。
【0056】
ステップS6では、ステップS5での露光の実行に続き、n=4であるか否かを判断し、Yesの場合はステップS8へ進み、Noの場合は、照明位置の番号をカウントするカウント値nを、n=n+1の式により書き換え(1を加算した値に書き換え)て、ステップS7へ進む。このステップS6では、カウント値nが4である、すなわち照明可能領域La(照明系1)の照明位置が第4照明位置であるか否かを判断している。ここで、本実施例の露光装置10では、上述したように、照明可能領域Laが露光ステージ19の載置面19a(マスク18a)の全領域を略4つに分割した大きさ寸法に相当するものとされていることから、照明位置が第4照明位置であるということは、露光ステージ19の載置面19a(マスク18a)の全領域に対する露光が終了したことを意味する。このため、ステップS6では、載置面19aに載置された取付板22(4個の基板21A)に対する露光が終了した否かを判断していることとなる。
【0057】
ステップS7では、ステップS6でのn=4ではないとの判断に続き、照明系1を第n照明位置へと移動させて、ステップS3に戻る。このステップS7では、照明系移動機構25(図1および図2参照)を制御することにより、マスクステージ18および露光ステージ19(その載置面19a)に対して、照明系1をX−Y平面に沿って第n照明位置へと移動させる(図6(d)参照)。ここで、ステップS7へと進んできた場合、ステップS6においてカウント値nが1を加算した値に書き換えられていることから、ステップS6における照明位置とは異なる照明位置(次の照明位置)へと照明系1を移動させることとなる。すなわち、照明系1が第1照明位置(図7(a)参照)である場合(ステップS6においてn=1である場合)、図7(b)に示すように、図7を正面視して取付板22上における左上の基板21Aを照明可能領域Laの内方に位置させる状態(図7(a)参照)から、同じく左下の基板21Aを照明可能領域Laの内方に位置させる状態(第2照明位置(図7(b)参照))へと、照明系1を移動させる。このため、ステップS7は、照明系1を、設定した照明位置のうち露光工程が行われていない1つに移動する移動工程となる。
【0058】
ステップS8では、ステップS6でのn=4であるとの判断に続き、カウント値nを初期値(1)として、このフローチャートを終了する。この後、載置面19aに載置された取付板22が、図示を略す搬送機構により載置面19a上から他の箇所へと搬送される。
【0059】
このように、露光装置10では、4個の基板21Aが取り付けられた取付板22(図4参照)が、プリアライメントされた状態で載置面19aに載置されると(図6(a)参照)、ステップS1→ステップS2へと進んで、第1照明位置での照明可能領域La内の基板21Aを露光対象とする(図7(a)参照)。その後、ステップS3→ステップS4→ステップS5へと進んで、第1照明位置での照明可能領域La内の基板21Aに対してアライメントを行なってから露光を行う。その後、ステップS6→ステップS7へと進んで、マスクステージ18および露光ステージ19(その載置面19a)に対して、照明系1をX−Y平面に沿って第2照明位置へと移動させて(図7(b)参照)、第2照明位置での照明可能領域La内の基板21Aを露光対象とする。その後、ステップS3→ステップS4→ステップS5へと進んで、第2照明位置での照明可能領域La内の基板21Aに対してアライメントを行なってから露光を行う。その後、ステップS6→ステップS7へと進んで、マスクステージ18および露光ステージ19(その載置面19a)に対して、照明系1をX−Y平面に沿って第3照明位置へと移動させて(図7(c)参照)、第3照明位置での照明可能領域La内の基板21Aを露光対象とする。その後、ステップS3→ステップS4→ステップS5へと進んで、第3照明位置での照明可能領域La内の基板21Aに対してアライメントを行なってから露光を行う。その後、ステップS6→ステップS7へと進んで、マスクステージ18および露光ステージ19(その載置面19a)に対して、照明系1をX−Y平面に沿って第4照明位置へと移動させて(図7(d)参照)、第4照明位置での照明可能領域La内の基板21Aを露光対象とする。その後、ステップS3→ステップS4→ステップS5へと進んで、第4照明位置での照明可能領域La内の基板21Aに対してアライメントを行なってから露光を行う。その後、ステップS6→ステップS8へと進むことで、取付板22に取り付けられた4個の基板21Aの適切な露光が終了する。
【0060】
このため、露光装置10では、4個の基板21Aが取り付けられた取付板22(図4参照)と、マスク18a(図3(a)参照)と、を用いることで、取付板22を載置面19a上に載置する作業を1度行うだけで、4個の基板21Aを適切に露光することができる。このとき、露光装置10では、基本的に、マスクステージ18(そこに設けられたマスク18a)および露光ステージ19(その載置面19a)に対して、その平面に沿う方向(X−Y平面に沿う方向)に照明系1を移動させるのみである。このため、露光装置10では、マスクステージ18(そこに設けられたマスク18a)および露光ステージ19(その載置面19a)に対して、その平面に沿う方向(X−Y平面に沿う方向)に照明系1を移動させる照明系ステップ機構(アライメント顕微鏡ステップ機構)と、マスクステージ18(そこに設けられたマスク18a)に対して露光ステージ19(その載置面19a)を移動させることのないノンステップステージ機構(アライメントのための調整を除く)と、を採用した構成とされている。
【0061】
なお、上記した本実施例の露光処理(図8のフローチャート)では、アライメントを実行するステップS4において、上述した予め保存されているマスク18aにおけるマスクパターン(そのアライメントマークPa)の位置情報に基づいて、次に露光を行う基板21Aに対応するマスクパターンのアライメントマークPaを観察対象とすることができる位置、すなわち第(n+1)照明位置での照明系1の照明光路上に存在する基板21Aに対応するマスクパターンのアライメントマークPaを観察対象とすることができる位置へと、アライメント観察機構23を移動させていることから、ステップS3において、上述した位置情報取得機構(図示せず)からの情報に基づいて、マスクパターン(そのアライメントマークPa)(アライメント観察機構23)に対して露光ステージ19(その載置面19a)を移動させて位置調整を行うだけとすることができるので、より効率よく露光処理を行うことができる。
【0062】
次に、実施例1の露光装置10において、28個の基板21Bが取り付けられた取付板22(図5参照)を用いた露光処理について説明する。この露光処理は、後述する分割照明領域Da(第m分割照明位置)に関する制御を除くと、基本的には、上述した露光処理(図8のフローチャート)と同様である。図9は、露光装置10における露光処理において、取付板22(載置面19a)において照明可能領域La(照明系1)の位置が変化される様子を説明するための説明図であり、(a)は第1照明位置の照明可能領域Laを示し、(b)は第2照明位置の照明可能領域Laを示し、(c)は第3照明位置の照明可能領域Laを示し、(d)は第4照明位置の照明可能領域Laを示している。図10は、露光装置10における第1照明位置の照明可能領域La内の露光処理において、分割照明領域Daの設定とその位置が変化される様子を説明するための説明図であり、(a)は分割照明領域Daが設定される前であって基板21B−1のアライメントが行なわれる様子を示し、(b)は基板21B−1に適合させて分割照明領域Daが設定された様子を示し、(c)は基板21B−2のアライメントが行なわれる様子を示し、(d)は基板21B−2に適合させて分割照明領域Daが設定された様子を示している。図11は、露光装置10の動作を統括的に制御する制御部24において、28個の基板21Bが取り付けられた取付板22を用いた露光処理の内容の一例を示すフローチャートである。以下、この露光処理の際の制御部24における制御処理の一例である図11のフローチャートの各ステップについて、図9および図10を用いて説明する。また、以下では、取付板22に取り付けられた28個の基板21Bに対して、理解容易のために、図5を正面視して左上から横へ向けて順に付けた番号を用いる場合もある。
【0063】
この図11のフローチャートでは、基板21B(図5参照)を露光対象としており、露光装置10のマスクステージ18にはマスク18b(図3(b)参照)を設けている。このため、載置する取付板22では、マスク18bにおける28個のパターンPcBの並びに対応させて、28個の基板21Bが取り付けられている(図5および図9参照)。この載置される取付板22上における28個の基板21Bの各アライメントマークAmの位置の情報は、上述した位置情報取得機構(図示せず)により取得されて、制御部24に送信されている。制御部24は、この情報を自らの記憶部(図示せず)に格納するとともに、この情報に基づいて、後述するステップS14を実行する前に、最初に露光を行う基板21BのアライメントマークAmをアライメント観察機構23で観察対象とすることができる位置となるように露光ステージ19により当該基板21Bの位置を調整する。このとき、制御部24は、予め保存されているマスク18bにおけるマスクパターンPcB(そのアライメントマークPa)の位置情報に基づいて、最初に露光を行う基板21Bに対応するマスクパターンPcBのアライメントマークPaを観察対象とすることができる位置に、アライメント観察機構23を移動させる。本実施例では、図4を正面視して左上の基板21BのアライメントマークAmを観察対象とすることができる位置(照明系1(照明可能領域La)における第1照明位置の第1分割照明位置)にアライメント観察機構23を移動させる。
【0064】
また、制御部24では、後述する分割照明領域Daを照明可能領域Laの全領域に行き渡らせる、すなわち各照明可能領域La内においてマスク18bに設けられた複数(この例では8個または6個)のパターンPcBを余すことなく照明することを可能とするために、マスク18bおよび基板21Bに対してマスクブラインド17(その透過開口17a)の位置を調整する複数の分割照明位置を設定する。この複数の分割照明位置は、できる限り少ない数ですべてのパターンPcBを照明することができる、すなわちより効率よく分割照明領域Daを照明可能領域Laの全領域に行き渡らせることができるように設定する。本実施例では、第1照明位置での照明可能領域Laでは、矢印A1の順に基板21Bに適合する8箇所の分割照明位置を設定し(図9(a)参照)、第2照明位置での照明可能領域Laでは、矢印A2の順に基板21Bに適合する8箇所の分割照明位置を設定し(図9(b)参照)、第3照明位置での照明可能領域Laでは、矢印A3の順に基板21Bに適合する6箇所の分割照明位置を設定し(図9(c)参照)、第4照明位置での照明可能領域Laでは、矢印A4の順に基板21Bに適合する6箇所の分割照明位置を設定する(図9(d)参照)。さらに、後述するように、露光処理が開始される際、各照明位置での照明可能領域La内において上述した分割照明位置の番号(露光を行う回数)をカウントするカウント値mは1とされている。
【0065】
ステップS11では、載置面19aに載置された取付板22を露光ステージ19で保持して、ステップS12へ進む。このステップS11は、図8のフローチャートにおけるステップS1と同様である。
【0066】
ステップS12では、ステップS11での取付板22の保持に続き、載置面19aに載置された取付板22(そこに取り付けられた各基板21B)をマスク18bに対して所定の位置として、ステップS13へ進む。このステップS12は、図8のフローチャートにおけるステップS2と同様である。
【0067】
ステップS13では、ステップS12での取付板22をマスク18bに対して所定の位置とすること、あるいは、ステップS20での照明系1の第n照明位置への移動に続き、第n照明位置での照明可能領域La内において露光を行う回数の最大値kを設定して、ステップS14へ進む。このステップS13では、第n照明位置での照明可能領域La内において露光を行う回数、すなわち第n照明位置での照明可能領域La内に存在する基板21Bの個数を最大値kとして設定する。本実施例では、照明系1が第1照明位置である場合(n=1である場合)、図5および図9(a)に示すように、基板21B−1から基板21B−4と、基板21B−8から基板21B−11と、の合計8個が照明可能領域La内に存在されていることから、最大値k=8とする。これは、照明系1が第2照明位置(n=2)である場合も同様である。また、照明系1が第4照明位置である場合(n=4である場合)、図9(d)に示すように、基板21B−4から基板21B−7と、基板21B−11から基板21B−14と、の合計8個が照明可能領域La内に存在されているが、基板21B−4と基板21B−11とは第1照明位置の際に照明可能領域La内に存在されていたことから、これらを差し引いて合計6個が照明可能領域La内に存在するものとし、最大値k=6とする。これは、照明系1が第3照明位置(n=3)である場合も同様である。
【0068】
ステップS14では、ステップS13での最大値kの設定、あるいは、ステップS18でのm=kではないとの判断に続き、第m分割照明位置に存在する基板21Bのアライメント情報を取得して、ステップS15へ進む。このステップS14では、第n照明位置とされた照明系1のコリメータミラー16とマスクステージ18(マスク18b)との間の照明光路上において、その照明可能領域Laの中の第m分割照明位置に存在する基板21BのアライメントマークAmとマスクパターンのアライメントマークPaとを観察対象とすることができる位置に露光ステージ19(その載置面19a)とアライメント観察機構23とを相対的に移動(位置調整)させて、そのアライメント観察機構23からアライメントマークAmとアライメントマークPaとの位置ずれ量(調整代)を取得する。この観察対象とすることができる位置とは、照明系1が第1照明位置であって(n=1である)、その照明可能領域Laの中の第1分割照明位置を露光する(最初に露光を行う(m=1である))場合、図10(a)に示すように、基板21B−1のアライメントマークAmと、そこに対応する左上のパターンPcBのアライメントマークPaと、をアライメント観察機構23での観察画像内に捕捉することを言う。このとき、本実施例では、上述した位置情報取得機構(図示せず)からの情報と、予め保存されているマスク18bにおけるマスクパターンPcB(そのアライメントマークPa)の位置情報と、に基づいて、露光ステージ19(その載置面19a)とアライメント観察機構23との相対的な移動(位置調整)を行う。
【0069】
ステップS15では、ステップS14でのアライメント情報の取得に続き、そのアライメント情報に基づいてアライメントを行い、ステップS16へ進む。このステップS15は、図8のフローチャートにおけるステップS4と同様である。また、ステップS15では、第(m+1)分割照明位置に存在する基板21Bを観察対象とすることができる位置へとアライメント観察機構23を移動させる。この際、本実施例では、予め保存されているマスク18bにおけるマスクパターンPcB(そのアライメントマークPa)の位置情報に基づいて、次に露光を行う基板21Bに対応するマスクパターンPcBのアライメントマークPaを観察対象とすることができる位置、すなわち第(m+1)分割照明位置に存在する基板21Bに対応するマスクパターンPcBのアライメントマークPaを観察対象とすることができる位置へとアライメント観察機構23を移動させる。このアライメント観察機構23の移動は、本実施例では、次にステップS14へと戻ってくるまでの間に、それらの動作(主に後述する第1工程(ステップS17))に並行して行う。本実施例では、第1分割照明位置の露光のためのアライメントを行う(m=1である)場合、上述したように第2分割照明位置を基板21B−2に対応するものとしていることから(図9の矢印A1参照)、基板21B−2に対応するマスクパターンのアライメントマークPaを観察対象とすることができる位置にアライメント観察機構23とを移動させる(図10(a)に二点差線で示すアライメント観察機構23および矢印参照)。このため、ステップS14およびステップS15は、第n照明位置とされた照明可能領域Laに存在するいずれかの基板21Bのマスクステージ18のマスク18a(照明系1)に対する位置を調整する調整工程となる。
【0070】
ステップS16では、ステップS15でのアライメントの実行に続き、分割照明領域Daを第m分割照明位置に適合させて、ステップS17へ進む。このステップS16では、コリメータミラー16により反射された出射光を、第m分割照明位置に存在するパターンPcBおよび基板21Bのみに到達させるように(図10(b)参照)、コリメータミラー16とマスク18bとの間の照明光路上にマスクブラインド17を進出させて、その透過開口17aの大きさを調整する。この調整により照明される領域を分割照明領域Daとする。このため、ステップS16では、マスクブラインド17を調整して、その透過開口17aを通過した出射光が、第m分割照明位置のみを照明するものとして分割照明領域Daを設定し、第n照明位置での照明可能領域Laにおける第m分割照明位置のみの露光を可能とする。このため、ステップS16は、分割照明位置のうちの後述する第1工程(ステップS17)が行われていない1つにマスクブラインド17(その透過開口17a)の位置を調整する第2工程となる。
【0071】
ステップS17では、ステップS16での分割照明領域Daを第m分割照明位置に適合させることに続き、露光を行い、ステップS18へ進む。このステップS17は、図8のフローチャートにおけるステップS4と同様である。すなわち、ステップS17では、照明系1によるマスク18bにおける照明可能領域Laでの紫外線(i線)の照明により、マスクブラインド17を経ることで分割照明領域Daのみで、マスク18bのパターンPcBのマスクパターン像を露光ステージ19に載置された基板21Bの表面に形成する(図10(b)参照)。すると、照明可能領域Laの第m分割照明位置にある基板21Bの表面には、マスク18bのパターンPcBに適合するマスクパターン像に倣うパターンが形成される。このため、ステップS17は、照明系1が存在する第n照明位置において、第m分割照明位置に存在する(その位置に調整された)マスクブラインド17(その透過開口17a)を経た照明系1からの露光光により基板21Bを露光する第1工程となる。
【0072】
ステップS18では、ステップS17での露光の実行に続き、m=kであるか否かを判断し、Yesの場合は、カウント値mを初期値(1)としてステップS19へ進み、Noの場合は、第n照明位置での照明可能領域La内において分割照明位置の番号(露光を行う回数)をカウントするカウント値mを、m=m+1の式により書き換え(1を加算した値に書き換え)て、ステップS14に戻る。このステップS18では、カウント値mがkである、すなわち第n照明位置での照明可能領域Laにおいて露光を行った回数が最大値となったか否かを判断している。ここで、本実施例の露光装置10では、上述したように、第n照明位置での照明可能領域La内に存在する基板21Bの個数を最大値kとして設定していることから(ステップS13)、露光を行った回数が最大値であるということは、第n照明位置での照明可能領域La内の全ての基板21Bに対する露光が終了したことを意味するので、ステップS18は第n照明位置での照明可能領域Laにおける露光が終了した否かを判断していることとなる。このため、ステップS14からステップS18は、第n照明位置とされた照明可能領域Laに存在する各基板21Bを露光する露光工程となる。
【0073】
ステップS19では、ステップS18でのm=kであるとの判断に続き、n=4であるか否かを判断し、Yesの場合はステップS21へ進み、Noの場合は、照明位置の番号をカウントするカウント値nを、n=n+1の式により書き換え(1を加算した値に書き換え)て、ステップS20へ進む。このステップS19は、図8のフローチャートにおけるステップS6と同様であり、露光ステージ19の載置面19a(マスク18b)の全領域に対する露光が終了したかを判断している。
【0074】
ステップS20では、ステップS19でのn=4ではないとの判断に続き、照明系1を第n照明位置へと移動させて、ステップS13に戻る。このステップS20は、図8のフローチャートにおけるステップS7と同様であり、照明系移動機構25(図1および図2参照)を制御することにより、マスクステージ18および露光ステージ19(その載置面19a)に対して、照明系1をX−Y平面に沿って第n照明位置へと移動させる。このため、ステップS20は、照明系1を、設定した照明位置のうち露光工程が行われていない1つに移動する移動工程となる。
【0075】
ステップS21では、ステップS19でのn=4であるとの判断に続き、カウント値nを初期値(1)として、このフローチャートを終了する。この後、載置面19aに載置された取付板22が、図示を略す搬送機構により載置面19a上から他の箇所へと搬送される。
【0076】
このように、露光装置10では、28個の基板21Bが取り付けられた取付板22(図5参照)が、プリアライメントされた状態で載置面19aに載置されると、ステップS11→ステップS12へと進んで、第1照明位置での照明可能領域La内の各基板21Bのうち、第1分割照明位置に存在する基板21B−1を露光対象とする(図7(a)参照)。その後、ステップS13→ステップS14→ステップS15→ステップS16→ステップS17へと進んで、第1照明位置での照明可能領域La内の第1分割照明位置を分割照明領域Daとして、その中にある基板21B−1に対してアライメントを行なってから露光を行う。その後、ステップS18→ステップS14へと進んで、第1照明位置での照明可能領域La内の第2分割照明位置に存在する基板21B−2を露光対象とし、ステップS15→ステップS16→ステップS17へと進んで、第1照明位置での照明可能領域La内の第2分割照明位置を分割照明領域Daとして、その中にある基板21B−2に対してアライメントを行なってから露光を行う。このことを、図9(a)に示す矢印A1の順に繰り返し行うことにより、第1照明位置での照明可能領域La内の全ての基板21B(本実施例では21B−1から21B−4、および21B−8から21B−11の8個)の適切な露光が終了する。
【0077】
その後、ステップS19→ステップS20へと進んで、マスクステージ18および露光ステージ19(その載置面19a)に対して、照明系1をX−Y平面に沿って第2照明位置へと移動させて(図9(b)参照)、第2照明位置での照明可能領域La内の各基板21Bの露光工程を開始する。この第2照明位置での照明可能領域Laにおいても、第1照明位置と同様に、ステップS13からステップS18の露光工程を、図9(b)に示す矢印A2の順に繰り返し行うことにより、第2照明位置での照明可能領域La内の全ての基板21B(本実施例では21B−15から21B−18、および21B−22から21B−25の8個)の適切な露光が終了する。
【0078】
その後、ステップS19→ステップS20へと進んで、マスクステージ18および露光ステージ19(その載置面19a)に対して、照明系1をX−Y平面に沿って第3照明位置へと移動させて(図9(c)参照)、第3照明位置での照明可能領域La内の各基板21Bの露光工程を開始する。この第3照明位置での照明可能領域Laにおいても、第1照明位置等と同様に、ステップS13からステップS18の露光工程を、図9(c)に示す矢印A3の順に繰り返し行うことにより、第3照明位置での照明可能領域La内の全ての基板21B(本実施例では21B−19から21B−21、および21B−26から21B−28の6個)の適切な露光が終了する。
【0079】
その後、ステップS19→ステップS20へと進んで、マスクステージ18および露光ステージ19(その載置面19a)に対して、照明系1をX−Y平面に沿って第4照明位置へと移動させて(図9(d)参照)、第4照明位置での照明可能領域La内の各基板21Bの露光工程を開始する。この第4照明位置での照明可能領域Laにおいても、第1照明位置等と同様に、ステップS13からステップS18の露光工程を、図9(d)に示す矢印A4の順に繰り返し行うことにより、第4照明位置での照明可能領域La内の全ての基板21B(本実施例では21B−5から21B−7、および21B−12から21B−14の6個)の適切な露光が終了する。その後、ステップS19→ステップS21へと進むことで、取付板22に取り付けられた28個の基板21Bの適切な露光が終了する。
【0080】
このため、露光装置10では、28個の基板21Bが取り付けられた取付板22(図5参照)と、マスク18b(図3(b)参照)と、を用いることで、取付板22を載置面19a上に載置する作業を1度行うだけで、28個の基板21Bを適切に露光することができる。このとき、露光装置10では、基本的に、マスクステージ18(そこに設けられたマスク18b)および露光ステージ19(その載置面19a)に対して、その平面に沿う方向(X−Y平面に沿う方向)に照明系1を移動させるのみである。このため、露光装置10では、マスクステージ18(そこに設けられたマスク18b)および露光ステージ19(その載置面19a)に対して、その平面に沿う方向(X−Y平面に沿う方向)に照明系1を移動させる照明系ステップ機構(アライメント顕微鏡ステップ機構)と、マスクステージ18(そこに設けられたマスク18b)に対して露光ステージ19(その載置面19a)を移動させることのないノンステップステージ機構(アライメントのための調整を除く)と、を採用した構成とされている。
【0081】
なお、上記した本実施例の露光処理(図11のフローチャート)では、アライメントを実行するステップS15において、上述した予め保存されているマスク18aにおけるマスクパターン(そのアライメントマークPa)の位置情報に基づいて、次に露光を行う基板21Bに対応するマスクパターンのアライメントマークPaを観察対象とすることができる位置へとアライメント観察機構23を移動させていることから、ステップS14において、上述した位置情報取得機構(図示せず)からの情報に基づいて、マスクパターン(そのアライメントマークPa)(アライメント観察機構23)に対して露光ステージ19(その載置面19a)を移動させて位置調整を行うだけとすることができるので、より効率よく露光処理を行うことができる。
【0082】
次に、プロキシミティ露光を行う際の技術の課題について説明する。プロキシミティ露光では、マスクのマスクパターンと1対1の関係(倍率)で基板上にマスクパターン像を形成するものであることから、大きなマスクを用いることにより、一度に大きな範囲で基板を露光することができる。このため、プロキシミティ露光を行う露光装置では、複数の回路部品に対応する大きさ寸法の基板と、その基板に適合する大きさ寸法であって複数の回路部品のためのパターンが設けられたマスクと、を用いることにより、基板に複数の回路部品に対応するパターンを形成し、その基板を単一の回路部品に対応する大きさに切断することにより、作業効率を高めつつ複数の回路部品を形成することが考えられている。
【0083】
ここで、近年、携帯型電子機器のタッチパネルにおいて表面の保護に用いられる硬質のガラス板に、タッチセンサ用(タッチセンサパネル用)のパターン(プリント配線)を形成することにより、タッチパネルの機能を備えさせることが考えられている。このガラス板に、プロキシミティ露光を用いてパターンを形成する場合、上述したガラス板を露光対象としての基板とすることとなる。このようなガラス板は、硬化処理が施されることにより、表面の保護に用いることのできる所望の硬度とされる。この硬化処理後のガラス板は、非常に硬いものであることから、硬化処理後に切断することは困難である。このことから、硬化処理後のガラス板を露光対象としての基板とすると、上述したように作業効率を高めつつ複数の回路部品を形成することはできなくなってしまう。そこで、硬化処理前のガラス板に、複数の回路部品に対応するパターンを形成することが考えられる。しかしながら、上記した硬化処理を行うと、その性質上形成したパターンを傷めてしまうことから、その硬化処理前にパターンを形成することは大変困難である。
【0084】
このため、硬化処理前のガラス板を所望の大きさに切断し、それらに硬化処理を施してから、その硬化処理後のガラス板を露光対象としての基板とし、当該ガラス板を個別に露光装置に配することにより、各ガラス板にタッチセンサ用のパターン(プリント配線)を形成することとなる。このように、所望の大きさに切断して硬化処理を施した1つのガラス板を、露光装置における露光位置へと導いて露光処理を行い、その後パターンを形成したガラス板を露光位置から退避させ、次のガラス板を露光装置における露光位置へと導いて露光処理を行う、ということを繰り返すことは、作業効率の大幅な低下を招いてしまう。
【0085】
これに対し、本発明に係る露光装置10では、マスク(18a等)および載置面19aに対して照明系1を移動させることにより、照明可能領域Laをマスク(18a等)および載置面19aの全領域に行き渡らせることが可能であることから、複数の基板21が取り付けられた取付板22と、それに対応するマスク(18a等)と、を用いることにより、照明系1をX−Y平面に沿って移動させて、それぞれの基板21が取り付けられた位置を照明可能領域Laとすることで、すべての基板21の露光を行うことができるので、1度載置面19a上に取付板22を載置するだけで、複数の基板21を露光することができる。このため、各基板21に対して、1つ1つ載置面19a上に載置する作業を行う必要がないことから、複数の基板21の露光に要する時間を短縮することができ、作業効率を高めることができる。
【0086】
また、露光装置10では、取付板22に複数の基板21を取り付けることで当該各基板21の露光を行うものであることから、所望の大きさに切断してから硬化処理を施した複数のガラス板を取付板22に取り付けることで、それら複数のガラス板を露光対象としての基板21とすることができ、作業効率を高めつつ複数のガラス板にパターンを形成することができる。
【0087】
さらに、露光装置10では、マスク(18a等)および載置面19aに対して照明系1を移動させることにより、照明可能領域Laをマスク(18a等)および載置面19aの全領域に行き渡らせることが可能であることから、できる限り少ない数ですべてのパターン(PcA等)を照明することができるように複数の照明位置を設定することより、より効率よく照明可能領域Laをマスク(18a等)の全領域に行き渡らせることができ、すべての基板21の露光をより効率よく行うことができる。
【0088】
露光装置10では、照明系1による照明可能領域Laを、少なくとも露光対象とする基板21を一度で照明することのできる大きさ寸法に設定していることから、マスク(18a等)に設けられた複数のパターン(PcA等)を余すことなく照明することを可能とする複数の照明位置を、より効率よく設定することができる。このため、さらに作業効率を高めることができる。
【0089】
露光装置10では、照明系1をX−Y平面に沿って各照明位置へと移動させた後、その照明位置に存在する基板21のアライメントマークAmとマスク(18a等)のアライメントマークPaとに基づいてアライメントを行うことから、作業効率を高めつつ複数の基板21を適切に露光することができる。換言すると、露光装置10では、その露光対象とする単一の基板21(21A)とマスク(18a等)とのアライメントを行ってから、その基板21の露光工程を実行するので、当該基板21を適切に露光することができる。
【0090】
露光装置10では、照明系1を各照明位置に移動させることにより、複数の基板21を露光するものであることから、マスク(18a等)(マスクステージ18)や複数の基板21(取付板22)を移動させる必要がないので、簡易な構成としつつ複数の基板21をより適切に露光することができる。これは、マスクステージ18が、保持したマスク(18a等)の鉛直方向の下側であって各マスク(18a等)を保持する構成の内方に、露光ステージ19を受け入れ可能な構成とされていることと、その構成により露光ステージ19の載置面19aに載置された取付板22(そこに取り付けられた各基板21)を、プロキシミティ露光を行う観点から、マスク(18a等)に対して所定の位置とすることが容易であることによる。また、照明系1は、マスクステージ18や露光ステージ19に比較して、簡易で小さな構成とすることができるとともに、露光工程において要求される設定位置の精度が低いことにもよる。
【0091】
露光装置10では、照明系1が存在する各照明位置に存在する基板21(そのアライメントマークAm)およびそれに対応するマスクパターンのアライメントマークPaを観察対象とすることができる位置にアライメント観察機構23を移動させることにより、すべての基板21のアライメント情報を取得することができるので、複数の基板21の適切な露光を可能としつつ作業効率を高めることができる。
【0092】
露光装置10では、照明系1(その光源11(水銀ランプ11a))を照明可能領域Laのみを適切に照射することのできる出力に設定すればよいことから、露光ステージ19の載置面19a(マスク18a)の全領域を適切に照射することのできる出力に設定する構成と比較して、照明系1の出力を抑制することができる。
【0093】
露光装置10では、照明系1を照明可能領域Laのみを適切に照射することのできる出力に設定すればよいことから、露光ステージ19の載置面19a(マスク18a)の全領域を適切に照射することのできる出力と同等の出力に設定することにより、各照明位置での露光に要する時間を短縮することができる。
【0094】
露光装置10では、照明系1を照明可能領域Laのみを照射することのできる構成とすればよいことから、露光ステージ19の載置面19a(マスク18a)の全領域を照射する構成と比較して、照明系1の構成を簡易で小さなものとすることができる。
【0095】
露光装置10では、照明系1の出力を抑制することができるとともに、照明系1の構成を簡易で小さなものとすることができることから、照明系1の移動を容易なものとすることができるとともに、照明系1の移動のための照明系移動機構25を簡易で小さなものとすることができる。
【0096】
露光装置10では、1つの照明位置での照明系1の照明光路上の露光を行う際、アライメント観察機構23を次の照明位置での照明系1の照明光路上へと移動させることから、より作業効率を高めることができる。特に、上記した実施例では、1つの照明位置でのアライメントおよび露光を行う間に(その動作に並行して)、次に露光を行う基板21(21A)に対応するマスクパターンのアライメントマークPaを観察対象とすることができる位置へとアライメント観察機構23を移動させることから、より作業効率を高めることができる。加えて、上記した実施例では、上述した位置情報取得機構(図示せず)からの情報に基づいて、アライメント観察機構23が観察対象とすることのできる位置へと次に露光を行う基板21(21A)の調整を行うものであることから、アライメント観察機構23によるアライメントマークAmとアライメントマークPaとの位置ずれ量(調整代)の取得を確実なものとすることができるので、より作業効率を高めることができる。
【0097】
露光装置10では、各照明位置においてマスクブラインド17がマスク(18a等)に対する分割照明領域Daの設定およびその位置の調整が可能であることから、照明可能領域La内に複数の基板21(21B)が取り付けられた取付板22を用いることにより、各照明位置での照明可能領域La内において、各基板21(21B(そのための各パターンPcB))が存在する分割照明位置毎に露光工程を行うことができるので、1度載置面19a上に取付板22を載置するだけで、さらに多くの基板21(21B)を適切に露光することができる。このため、さらに多くの基板21に対して、1つ1つ載置面19a上に載置する作業を行う必要がないことから、多くの基板21の露光に要する時間を短縮することができ、作業効率をより高めることができる。
【0098】
露光装置10では、取付板22に単一の照明可能領域La内に相当する箇所に複数の基板21(21B)を取り付けることで当該各基板21(21B)の露光を行うものであることから、所望の大きさに切断してから硬化処理を施した複数のガラス板を取付板22に取り付けることで、それら複数のガラス板を露光対象としての基板21(21B)とすることができ、さらに作業効率を高めつつ複数のガラス板にパターンを形成することができる。
【0099】
露光装置10では、各照明位置においてマスクブラインド17を調整することにより、分割照明領域Daを照明可能領域Laの全領域に行き渡らせることが可能であることから、できる限り少ない数ですべてのパターン(PcB)を照明することができるように複数の分割照明位置を設定することより、より効率よく分割照明領域Daを照明可能領域Laの全領域に行き渡らせることができ、すべての基板21(21B)の露光をより効率よく行うことができる。
【0100】
露光装置10では、マスクブラインド17により調整される分割照明領域Daを、コリメータミラー16により反射された出射光が第m分割照明位置に存在するパターンPcBおよび基板21Bのみに到達するように設定していることから、マスク(18b等)に設けられた複数のパターン(PcB等)を余すことなく照明することを可能とする複数の分割照明位置を、より効率よく設定することができる。このため、さらに作業効率を高めることができる。
【0101】
露光装置10では、各照明位置に照明系1をX−Y平面に沿って移動させた後、各照明位置での照明可能領域La内の各分割照明位置において、そこに存在する基板21(21B)のアライメントマークAmとマスク(18b等)のアライメントマークPaとに基づいてアライメントを行うことから、作業効率を高めつつさらに多くの基板21を適切に露光することができる。換言すると、露光装置10では、その露光対象とする単一の基板21(21B)とマスク(18b等)とのアライメントを行ってから、その基板21の露光工程を実行するので、当該基板21を適切に露光することができる。
【0102】
露光装置10では、照明可能領域La内に複数の基板21が取り付けられた取付板22を用いる場合、光学系1を移動させることなくマスクブラインド17により分割照明領域Daの設定を調整することで各照明位置での照明可能領域La内における分割照明位置毎の露光を行うことから、より容易に分割照明位置を変移させることができ、作業効率を高めることができる。
【0103】
露光装置10では、照明系1が存在する各照明位置のうち各分割照明位置に存在する基板21(21B)(そのアライメントマークAm)およびそれに対応するマスクパターンのアライメントマークPaを観察対象とすることができる位置にアライメント観察機構23を移動させることにより、すべての基板21(21B)のアライメント情報を取得することができるので、複数の基板21(21B)の適切な露光を可能としつつ作業効率を高めることができる。
【0104】
露光装置10では、照明可能領域La内に複数の基板21が取り付けられた取付板22を用いる場合、1つの分割照明位置の露光を行う際、アライメント観察機構23を次の分割照明位置へと移動させることから、より作業効率を高めることができる。特に、上記した実施例では、1つの分割照明位置でのアライメントおよび露光を行う間に(その動作に並行して)、次に露光を行う基板21(21B)に対応するマスクパターンのアライメントマークPaを観察対象とすることができる位置へとアライメント観察機構23を移動させることから、より作業効率を高めることができる。加えて、上記した実施例では、上述した位置情報取得機構(図示せず)からの情報に基づいて、アライメント観察機構23が観察対象とすることのできる位置へと次に露光を行う基板21(21B)の調整を行うものであることから、アライメント観察機構23によるアライメントマークAmとアライメントマークPaとの位置ずれ量(調整代)の取得を確実なものとすることができるので、より作業効率を高めることができる。
【0105】
したがって、本発明に係る露光装置10では、パターンを形成した後の切断処理が困難な基板21を露光対象としても、効率よく露光処理を行うことができる。
【0106】
[変形例]
次に、照明可能領域La内に複数の基板21が取り付けられた取付板22を用いる際の各照明位置の設定と、各照明位置における各分割照明位置の設定と、が異なる変形例について、図12を用いて説明する。図12は、24個の基板21Cが取り付けられた取付板22と、その取付板22に対して設定された各照明位置の設定および各照明位置における各分割照明位置の設定と、それに伴う効果と、を説明するための説明図である。
【0107】
この変形例は、光学系1およびアライメント観察機構23の移動をより効率の良いものとする観点から、各照明位置およびそれらでの各分割照明位置を設定するものの一例である。この変形例では、図12に示すように、24個の基板21Cが取り付けられた取付板22(図5参照)を用いるものとする。なお、この変形例は、各照明位置およびそれらでの各分割照明位置の設定が異なることを除くと、28個の基板21Bが取り付けられた取付板22(図5参照)を用いた場合と同様であることから、上記した図11のフローチャートにより露光処理を行うことができる。
【0108】
この変形例では、基板21Cを露光対象としており、露光装置10のマスクステージ18には基板21Cに対応して24個のパターンが設けられたマスク(図示せず)を設けている。このため、載置する取付板22では、当該マスクにおける24個のパターン(図示せず)の並びに対応させて、24個の基板21Cが取り付けられている。この変形例では、照明可能領域La´が露光ステージ19の載置面19a(マスク)の全領域を略12個に分割した大きさ寸法に相当するものとされており、後述する行方向で並列された2つの基板21Cを一度で照明することのできる大きさ寸法に設定されている。また、分割照明領域Da´は、各基板21Cのみにコリメータミラー16により反射された出射光を到達させる大きさ寸法に設定されている。
【0109】
この変形例では、複数の照明位置およびそれらにおける複数の分割照明位置を、図12に示す矢印A5で示す順に設定している。すわなち、図12を正面視して、各基板21Cが横方向に並ぶ方向を行(行方向)とし、かつ縦方向に並ぶ方向を列(列方向)とすると、第1照明位置は、1行目における1列目および2列目に存在する2個の基板21Cを覆うことのできる照明可能領域La´を形成するものとしている。また、その第1照明位置において、第1分割照明位置は、1行目における1列目に存在する1個の基板21Cを、第2分割照明位置は、1行目における2列目に存在する1個の基板21Cを覆うことのできる分割照明領域Da´を形成するものとしている。同様に、第2照明位置は、1行目における3列目および4列目に存在する2個の基板21Cを覆うことのできる照明可能領域La´を形成するものとし、その第2照明位置において、第1分割照明位置は、1行目における3列目に存在する1個の基板21Cを、第2分割照明位置は、1行目における4列目に存在する1個の基板21Cを覆うことのできる分割照明領域Da´を形成するものとしている。同様に、第3照明位置は、1行目における5列目および6列目に存在する2個の基板21Cを覆うことのできる照明可能領域La´を形成するものとし、その第3照明位置において、第1分割照明位置は、1行目における5列目に存在する1個の基板21Cを、第2分割照明位置は、1行目における6列目に存在する1個の基板21Cを覆うことのできる分割照明領域Da´を形成するものとしている。同様に、第4照明位置は、2行目における5列目および6列目に存在する2個の基板21Cを覆うことのできる照明可能領域La´を形成するものとしている。また、その第4照明位置において、第1分割照明位置は、2行目における6列目に存在する1個の基板21Cを、第2分割照明位置は、2行目における5列目に存在する1個の基板21Cを覆うことのできる分割照明領域Da´を形成するものとしている。以下の設定は、同様に矢印A5で示す順に設定しており、最後となる第12照明位置は、4行目における1列目および2列目に存在する2個の基板21Cを覆うことのできる照明可能領域La´を形成するものとしている。また、その第12照明位置において、第1分割照明位置は、4行目における2列目に存在する1個の基板21Cを、第2分割照明位置は、4行目における1列目に存在する1個の基板21Cを覆うことのできる分割照明領域Da´を形成するものとしている。
【0110】
この変形例では、24個の基板21Cが取り付けられた取付板22を用いるとともに、上記した設定としていることから、最大値kの設定(ステップS13)の際に最大値k=2とするとともに、載置面19aに載置された取付板22に対する露光が終了した否かの判断(ステップS19)の際にカウント値n=24であるか否かを判断するものとすることにより、図11のフローチャートと同様の工程により、24個の基板21Cを適切に露光することができることとなる。
【0111】
この変形例では、複数の照明位置およびそれらにおける複数の分割照明位置を、矢印A5で示す順、取付板22(それが載置された載置面19aおよび対応するマスク)上において所謂一筆書きの経路に沿う順に設定していることから、24個の基板21Cにおいて、露光対象とした基板21Cに対して隣接する基板21Cを次の露光対象とすることができるとともに、全体で見ると取付板22上において極めて短い経路で(極めて効率よく)全ての基板21Cを露光対象とすることができる。
【0112】
詳細には、この変形例の露光装置10では、マスクステージ18(そこに設けられたマスク)および露光ステージ19(その載置面19a)に対して、矢印A5で示す方向(一筆書きの経路)へと照明系1を移動させることで、12箇所の照明位置での各照明可能領域La´により、マスク、載置面19aおよび取付板22の全領域に露光光を行き渡らせることができる。このとき、照明系1では、取付板22(マスク)上において所謂一筆書きの経路に沿って移動すれば良いことから、照明位置(照明可能領域La´)を12箇所に形成するために必要な移動量を極めて短いものとすることができる。
【0113】
また、この変形例の露光装置10では、マスクステージ18(そこに設けられたマスク)および露光ステージ19(その載置面19a)に対して、矢印A5で示す方向(一筆書きの経路)へとアライメント観察機構23を移動させることにより、24個の基板21Cの全てを観察対象とすることができる。このとき、アライメント観察機構23では、取付板22(マスク)上において所謂一筆書きの経路に沿って移動すれば良いことから、24個の基板21Cの全てを観察対象とするために必要な移動量を極めて短いものとすることができる。
【0114】
さらに、この変形例の露光装置10では、マスクステージ18(そこに設けられたマスク)および露光ステージ19(その載置面19a)に対して、矢印A5で示す方向(一筆書きの経路)へとマスクブラインド17における透過開口17aの位置(大きさ)を調整することで、24箇所の分割照明位置(各照明位置において2箇所づつ)での各分割照明領域Da´により、マスク、載置面19aおよび取付板22の全領域に行き渡らせることができる。このとき、マスクブラインド17では、取付板22(マスク)上において所謂一筆書きの経路に沿って透過開口17aの位置を移動すれば良いことから、分割照明位置(分割照明領域Da´)を24箇所に形成するために必要な調整量を極めて小さいものとすることができる。
【0115】
これらのことから、この変形例の露光装置10では、照明系1の移動、アライメント観察機構23の移動およびマスクブラインド17の調整をより効率よく行うことができるので、より作業効率を高めることができる。
【0116】
なお、上記した実施例(変形例を含む)では、本発明に係る露光装置の一例としての露光装置10について説明したが、マスクを経た照明系からの露光光により基板を露光するプロキシミティタイプまたはコンタクトタイプ(密着露光タイプ)の露光装置であって、前記照明系では、前記マスクを照明することのできる照明可能領域が、該マスクを複数に分割した大きさ寸法に設定され、前記照明系は、前記マスクに対して移動することにより、前記照明可能領域を前記マスクの全領域に行き渡らせることが可能である露光装置であればよく、上記した実施例に限定されるものではない。
【0117】
また、上記した実施例では、照明可能領域Laが露光ステージ19の載置面19a(マスク18a)の全領域を略4つに分割した大きさ寸法に相当するものとされていたが、少なくとも露光対象とする基板21を一度で照明することのできる大きさ寸法に設定されていればよく、上記した実施例に限定されるものではない。
【0118】
さらに、上記した実施例では、4個の基板21Aが取り付けられた取付板22を用いる例を示していたが、この個数は照明可能領域Laとともに適宜設定すればよく、上記した実施例に限定されるものではない。例えば、28個の基板21Bが取り付けられた取付板22を用いる場合、照明可能領域Laを基板21Bの大きさ寸法に相当するものとして、載置面19aに載置された取付板22に対する露光が終了した否かの判断(ステップS6)の際にカウント値n=28であるか否かを判断するものとすることにより、図8のフローチャートと同様の工程により、28個の基板21Bを適切に露光することができることとなる。
【0119】
上記した実施例では、図7および図9に示すように第1照明位置から第4照明位置が設定されていたが、効率良く次の照明位置へと移動することを可能とするものであればよく、上記した実施例に限定されるものではない。このとき、変形例のように、光学系1およびアライメント観察機構23の移動をより効率の良いものとする観点から、取付板22上において所謂一筆書きの経路に沿う順に設定する、換言すると、複数の基板21(21C)において、露光対象とした基板21(21C)に対して隣接する基板21(21C)を次の露光対象とするとともに、全体で見て取付板22上において極めて短い経路で全ての基板21(21C)を露光対象とすることを可能とするように、各照明位置を設定することが望ましい。
【0120】
上記した実施例では、28個の基板21Bが取り付けられた取付板22を用いる例を示していたが、この個数は適宜設定すればよく、上記した実施例に限定されるものではない。
【0121】
上記した実施例では、図9に矢印(A1、A2、A3、A4)で示すように第1照明位置から第4照明位置における分割照明位置に対する露光工程の順序が設定されていたが、効率良く次の分割照明位置へと移行することを可能とするものであればよく、上記した実施例に限定されるものではない。このとき、変形例のように、アライメント観察機構23の移動およびマスクブラインド17の調整をより効率の良いものとする観点から、取付板22上において所謂一筆書きの経路に沿う順に設定する、換言すると、複数の基板21(21C)において、露光対象とした基板21(21C)に対して隣接する基板21(21C)を次の露光対象とするとともに、全体で見て取付板22上において極めて短い経路で全ての基板21(21C)を露光対象とすることを可能とするように、各分割照明位置を設定することが望ましい。
【0122】
上記した実施例では、各照明可能領域Laにおいて複数の基板が設けられた例(28個の基板21Bが取り付けられた取付板22)に対して、各照明可能領域Laで分割照明位置を設定する構成としていたが、照明可能領域Laを露光対象とする基板の大きさ寸法に適合する大きさに変更するとともに照明位置の設定を変更して、露光工程と移動工程とを交互に行う回数を変更する構成としてもよい。このような照明可能領域Laの変更は、例えば、インテグレータレンズ15もしくはインテグレータレンズ15およびコリメータミラー16を変更することにより、行うことができる。インテグレータレンズ15もしくはインテグレータレンズ15およびコリメータミラー16を変更する構成としては、複数のインテグレータレンズ15、もしくは複数のインテグレータレンズ15とコリメータミラー16との組み合わせを設けるとともに、それらを照明光軸に対して交換可能とすることにより実現することができる。また、照明可能領域Laの変更は、照明光路におけるインテグレータレンズ15とコリメータミラー16との間に、ズーム光学系を設ける構成としても実現することができる。
【0123】
上記した実施例では、露光光として紫外線(i線)の波長帯域の光を用いていたが、異なる波長帯域の光であってもよく、上記した実施例に限定されるものではない。
【0124】
上記した実施例では、基板21のアライメントマークAmとマスク(18b等)のアライメントマークPaとが2つずつ設けられていたが、マスク(18b等)に対する基板21の位置を適切なものとすることができるものであって、それぞれが少なくとも1つ以上設けられていればよく、上記した実施例に限定されるものではない。
【0125】
上記した実施例では、露光工程を実行する前にアライメント情報を取得する構成とされていたが、アライメント観察機構23を照明光路上から退避させる際、次の照明位置もしくは分割照明位置へと移動させていることから、露光工程を実行している間にアライメント情報を取得する構成であってもよく、上記した実施例に限定されるものではない。このような構成の場合、より作業効率を高めることができる。
【0126】
上記した実施例では、本願発明の構成をプロキシミティタイプの露光装置に適用した例について説明したが、コンタクトタイプ(密着露光タイプ)の露光装置に適用してもよく、上記した実施例に限定されるものではない。
【0127】
以上、本発明の露光装置を実施例に基づき説明してきたが、具体的な構成については実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【符号の説明】
【0128】
1 照明系
10 露光装置
17 マスクブラインド
18a、18b マスク
19 露光ステージ
21、21A、21B、21C 基板
22 取付板
Da 分割照明領域
La 照明可能領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マスクを経た照明系からの露光光により基板を露光するプロキシミティタイプまたはコンタクトタイプの露光装置であって、
前記照明系では、前記マスクを照明することのできる照明可能領域が、該マスクを複数に分割した大きさ寸法に設定され、
前記照明系は、前記マスクに対して移動することにより、前記照明可能領域を前記マスクの全領域に行き渡らせることが可能であることを特徴とする露光装置。
【請求項2】
前記照明可能領域は、少なくとも露光対象とする前記基板を一度で照明することのできる大きさ寸法に設定されていることを特徴とする請求項1に記載の露光装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の露光装置であって、
さらに、前記マスクに対する前記基板の姿勢の調整を可能とすべく該基板が取り付けられる取付板を移動可能に保持する露光ステージを備え、
前記照明系は、前記照明可能領域を前記マスクの全領域に行き渡らせるために、前記マスクに対して複数回移動され、
前記露光ステージは、前記照明系が移動される毎に、前記照明可能領域内に存在する前記基板の前記マスクに対する姿勢を調整すべく前記取付板を移動させることを特徴とする露光装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の露光装置であって、
さらに、前記照明系からの露光光の一部のみの前記マスクへの到達を許すマスクブラインドを備え、
該マスクブラインドは、前記照明可能領域を複数に分割した大きさ寸法の分割照明領域を形成可能であるとともに、前記マスクおよび前記基板に対して移動することにより、前記分割照明領域を前記照明可能領域の全領域に行き渡らせることが可能であることを特徴とする露光装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の露光装置を用いる露光方法であって、
前記照明可能領域を前記マスクの全領域に行き渡らせるために、前記マスクに対して前記照明系を移動させる複数の照明位置を設定し、
該照明位置のうちの1つに存在する前記照明系からの露光光により前記基板を露光する露光工程と、
前記照明位置のうちの前記露光工程が行われていない1つに前記照明系を移動させる移動工程と、を設定した全ての前記照明位置での露光が終わるまで交互に行うことを含むことを特徴とする露光方法。
【請求項6】
請求項4に記載の露光装置を用いる露光方法であって、
前記照明可能領域を前記マスクの全領域に行き渡らせるために、前記マスクに対して前記照明系を移動させる複数の照明位置を設定し、
該各照明位置において、前記分割照明領域を前記照明可能領域の全領域に行き渡らせるために、前記マスクおよび前記基板に対して前記マスクブラインドを移動させる複数の分割照明位置を設定し、
前記照明位置のうちの1つに存在する前記照明系からの露光光により前記基板を露光する露光工程と、
前記照明位置のうちの前記露光工程が行われていない1つに前記照明系を移動させる移動工程と、を設定した全ての前記照明位置での露光が終わるまで交互に行うことを含み、
前記露光工程は、前記照明系が存在する前記照明位置において、前記分割照明位置のうちの1つに存在する前記マスクブラインドを経た前記照明系からの露光光により前記基板を露光する第1工程と、
前記分割照明位置のうちの前記第1工程が行われていない1つに前記マスクブラインドを移動させる第2工程と、を設定した全ての前記分割照明位置での露光が終わるまで交互に行うことを有することを特徴とする露光方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−15761(P2013−15761A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−150045(P2011−150045)
【出願日】平成23年7月6日(2011.7.6)
【出願人】(000220343)株式会社トプコン (904)
【Fターム(参考)】