説明

露出演算装置、露出演算方法、露出演算プログラム

【課題】複数の焦点検出領域の中からいずれの焦点検出領域が選択された場合でも、主要被写体が適正に露光されるようにするカメラを提供する。
【解決手段】3個所の焦点検出領域のうち、選択された焦点検出領域のデフォーカス量seldfと各焦点検出領域のデフォーカス量dfL、dfC、dfRとからデフォーカス量の相対差ddfL、ddfC、ddfRを演算する。このデフォーカス量の相対差を基に、テーブルTableWtを用いて各焦点検出領域の輝度値BvL、BvC、BvRの寄与度wtL、wtC、wtRを求める。これらの輝度値と寄与度を用いて、最適輝度値BvAF=(wtL×BvL+wtC×BvC+wtR×BvR)/(wtL+wtC+wtR)の演算を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画面を複数に分割して測光を行ない、露出演算を行う露出演算装置、露出演算方法および露出演算プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、複数に分割した測光素子を用いて画面の複数領域の測光値を算出するとともに、画面内の複数の焦点検出領域で焦点検出を行うカメラが知られている。下記特許文献1では、選択された焦点検出領域から離れた焦点検出領域における輝度の重み付けを小さくして測光を行なうものが開示されている。
【特許文献1】特公平7−27152
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献では、複数の焦点検出領域の焦点検出結果に基づいて自動的に焦点検出領域を選択する場合、複数の焦点検出領域に撮影距離のほぼ等しい別々の被写体が存在すると、焦点検出のバラツキにより焦点検出をやり直す度に、または撮影を繰り返す度に異なる焦点検出領域が選択される場合がある。このような場合に、それら焦点検出領域同士が離れていて、それらに対応する測光領域の測光値が大きく異なると、露出値が大きく変化するという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
請求項1に記載の露出演算装置は、複数の焦点検出領域における焦点調節状態のうちの1つに対する他の焦点調節状態の差(以下、相対差)と、複数の測光領域における測光値とに応じて、露出値を演算する露出値演算手段を備えることを特徴とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の露出演算装置において、相対差は、選択された焦点調節状態と、選択されなかった焦点調節状態との差であることを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の露出演算装置において、露出値演算手段は、相対差が大きい焦点検出領域に対応する測光値については、相対差が小さい焦点検出領域に対応する測光値に比べて、露出値の演算における寄与度を小さくすることを特徴とする。
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の露出演算装置において、相対差が大きくなるほど露出値の演算における寄与度を徐々に小さくすることを特徴とする。
請求項5に記載の発明は、請求項3または4に記載の露出演算装置において、選択されなかった焦点調節状態を検出する焦点検出領域における相対差が所定の範囲内である場合は、焦点検出領域に対応する測光値の寄与度を、選択された焦点調節状態を検出する焦点検出領域に対応する測光値の寄与度とほぼ同一とすることを特徴とする。
請求項6に記載の発明は、請求項3乃至5のいずれか1項に記載の露出演算装置において、寄与度を、撮影距離または焦点距離に応じて変更することを特徴とする。
請求項7に記載のカメラは、請求項1乃至6に記載の露出演算装置を備えることを特徴とする。
請求項8に記載の露出演算方法は、複数の焦点検出領域における焦点調節状態を検出し、複数の焦点検出領域に対応する測光領域における測光値を検出し、複数の焦点検出領域における焦点調節状態のひとつに対する他の焦点調節状態の差(以下、相対差)と、測光領域における測光値とに応じて、露出値を演算することを特徴とする。
請求項9〜13に記載の発明は、それぞれ請求項2〜6に記載の露出演算装置に対応する露出演算方法である。
請求項14〜19に記載の露出演算プログラムは、請求項8〜13の露出演算方法をコンピュータで実行するための露出演算プログラムである。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、焦点検出領域の選択のバラツキによらず、適正で安定した露出値を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図1に示すように、この実施の形態による一眼レフ電子スチルカメラは、カメラ本体10と、ファインダ装置20Aと、撮影レンズ31a〜31cおよび絞り32を有しカメラ本体10に着脱される交換レンズ30とを備える。レンズ群31bが焦点調節レンズ(以下、AFレンズと呼ぶ)であり、レンズ駆動モータ(以下、AFモータと呼ぶ)33で駆動される。
【0007】
被写体光は交換レンズ30を通ってカメラ本体10に入射し、レリーズスイッチ61の全押し操作前はクイックリターンミラー11で反射して、ファインダスクリーン20に結像する。その被写体像はペンタプリズム21からリレーレンズ22を通って接眼レンズ23に導かれるとともに、ペンタプリズム21から測光用再結像レンズ24により、SPDやCCD等からなる測光素子25の受光面上に再結像する。測光素子25により被写体の輝度分布が光電変換された後、後述のAE用演算部52Bに送出され、露出値が決定される。測光素子25は図2に示すように、撮影画面を24個の領域に分割して測光を行なう。なお、測光素子25の領域分割数は24個に限定されるものではない。
【0008】
また、レリーズスイッチ61の全押し操作前、クイックリターンミラー11の半透過領域を透過した被写体光は、サブミラー12で下方に反射され、焦点検出装置40に入射する。一方、レリーズスイッチ61の全押し操作の後は、クイックリターンミラー11が上方に回動し、被写体光は図示しないシャッタを介してCCD、CMOS等を有する撮像素子14上に結像する。
【0009】
焦点検出装置40はたとえば周知の位相差式焦点検出装置であり、焦点検出領域を透過した焦点検出光束を一対の焦点検出用光像に分割する焦点検出光学系と、分割された一対の光像が入射し、それに応じた焦点検出信号を出力する一対のCCDラインセンサとを備える。CCDラインセンサから出力される焦点検出信号は、制御回路50を構成する後述のCCD制御部51に入力さる。制御回路50は、焦点検出信号に基づいて、AFレンズ31bを合焦位置まで駆動させるレンズ駆動量を算出し、AFレンズ駆動信号を出力する。
【0010】
制御回路50はCPU、ROM、RAM、各種周辺回路から構成され、機能的には、CCDラインセンサを制御するCCD制御部51と、AF用演算部52Aと、AE用演算部52Bと、カメラの撮影のためのシーケンス全体を制御するシーケンス制御部52Cとを備えている。これら各演算部52A、52B、52Cは、それぞれ独立してCPUなどを有する。なお、62は、AE用演算部52Bで算出されたシャッタ速度により撮像素子14の電荷蓄積時間を制御するシャッタ速度制御部である。また、63は、AE用演算部52Bで算出された絞り値により絞り32を制御する絞り制御部である。
【0011】
AF用演算部52Aは、CCD制御部51から出力される蓄積信号に基づく予定焦点面に対する焦点調節状態の量(デフォーカス量)を演算し、その結果をAE用演算部52Bとシーケンス制御部52Cへ出力する。AE用演算部52Bは、測光素子25から受信した輝度値を演算するとともに、輝度値とAF用演算部52Aから入力したデフォーカス量を基に露出値を演算する。算出された露出値を基に、シャッタ速度および絞り値を算出して、シーケンス制御部52Cへ出力する。シーケンス制御部52Cは、AF用演算部52Aから入力したデフォーカス量に基づいて、AFレンズ31bの目標位置を演算し、目標位置の演算結果に基づくAFレンズ駆動信号をAFモータ33へ出力する。また、AE用演算部52Bから入力したシャッタ速度および絞り値を基に、シャッタ速度信号をシャッタ速度制御部62へ、絞り値信号を絞り制御部63へ出力する。
【0012】
AF用演算部52Aで行うデフォーカス量の演算について説明する。図3に示すように、デフォーカス量の演算は、画面内の異なる3個所の焦点検出領域を透過した被写体光を用いる。撮影者による焦点検出領域選択部60の操作により、3個所の焦点検出領域の中から焦点調節に使用する領域を選択できる。また、撮影者により焦点検出領域を自動選択するモードが設定されていた場合は、3個所のデフォーカス量に基づいて、たとえば、最もカメラに対して近距離側の焦点検出領域のデフォーカス量に対する重み付けを大きくする。なお、焦点検出領域の数は3個所に限定されるものではなく、2個所であっても4個所以上であってもよい。
【0013】
AE用演算部52Bで行なう露出値演算について説明する。AE用演算部52Bは、測光素子25から、図2に示す24分割されたそれぞれの測光領域に対応する輝度信号を入力して、輝度値B1からB24を求める。撮影画面上で24分割された測光領域と3個所の焦点検出領域との位置関係を図4に示す。この図4に示す位置関係を基に、24分割された測光領域のうち4個の領域を1個のグループとし、撮影画面全体をオーバーラップした15個のグループに再分割したものを、図5に示す。グループのまとめ方は以下に示す式の通りである。
G1=(B1+B2+B7+B8)/4 ・・・(1)
G2=(B2+B3+B8+B9)/4 ・・・(2)
G3=(B3+B4+B9+B10)/4 ・・・(3)
G4=(B4+B5+B10+B11)/4 ・・・(4)
G5=(B5+B6+B11+B12)/4 ・・・(5)
G6=(B7+B8+B13+B14)/4 ・・・(6)
G7=(B8+B9+B14+B15)/4 ・・・(7)
G8=(B9+B10+B15+B16)/4 ・・・(8)
G9=(B10+B11+B16+B17)/4 ・・・(9)
G10=(B11+B12+B17+B18)/4 ・・・(10)
G11=(B13+B14+B19+B20)/4 ・・・(11)
G12=(B14+B15+B20+B21)/4 ・・・(12)
G13=(B15+B16+B21+B22)/4 ・・・(13)
G14=(B16+B17+B22+B23)/4 ・・・(14)
G15=(B17+B18+B23+B24)/4 ・・・(15)
なお、1個のグループを構成する測光素子25の領域の数は4個に限定されるものではない。グループ数も15個に限定されるものではなく、測光素子25の領域分割数と1個のグループを構成する測光素子25の領域の数により変わる。
【0014】
上記の15個のグループのそれぞれの輝度G1からG15を用いて、被写体の特徴となる情報である平均輝度BvMean、最小輝度BvMin、最大輝度BvMax、最大輝度と最小輝度との差dBv、画面上部と画面下部との輝度差dHEを以下の式に基づき演算する。
BvMean=(G1+G2+G3+G4+G5+G6+G7+G8+G9+G10+G11+G12+G13+G14+G15)/15 ・・・(16)
BvMax=Max(G1、・・・、G15) ・・・(17)
BvMin=Min(G1、・・・、G15) ・・・(18)
BvC=G8 ・・・(19)
BvL=G7 ・・・(20)
BvR=G9 ・・・(21)
dHE=ABS((G1+G3+G5)/3−(G11+G13+G15)/3) ・・・(22)
ただし、Max(x1、・・・、xn)はx1からxnの最大値を返す関数であり、Min(x1、・・・、xn)はx1からxnの最小値を返す関数である。また、ABS(x)はxの絶対値を返す関数である。
【0015】
最適輝度BvAFは、式(19)〜(21)で求めた中央部の輝度BvC、中央左の輝度BvL、中央右の輝度BvRに対して、3個所の焦点検出領域のデフォーカス量に基づいた寄与度を与えた以下の式により算出する。
BvAF=(wtL×BvL+wtC×BvC+wtR×BvR)/(wtL+wtC+wtR) ・・・(23)
【0016】
なお、wtL、wtC、wtRは各焦点検出領域に対応する輝度に与える寄与度であり、図6に示すテーブルTableWtを用いて以下の式により求める。
wtL=TableWt[ddfL] ・・・(24)
wtC=TableWt[ddfC] ・・・(25)
wtR=TableWt[ddfR] ・・・(26)
選択焦点検出領域に相当する部分については、対応する輝度へ与える寄与度を1.0とする。非選択焦点検出領域に相当する部分については、選択焦点検出領域との間のデフォーカス量の相対差に応じて、対応する輝度値へ与える寄与度を決定する。以下で寄与度の決定方法を説明する。
【0017】
図6のテーブルTableWtの横軸は、選択焦点検出領域とのデフォーカス量の相対差を表し、前ピンをマイナスとしている。デフォーカス量の相対差の絶対値が所定値の範囲内では寄与度は一定とし、また、相対差の絶対値が所定値以上の領域では、その絶対差が大きいほど寄与度を下げるようにしている。図6では、170μm以上デフォーカス量が離れている場合は寄与度を0とし、デフォーカス量の相対差が70μm以下の場合は選択焦点検出領域と同じ寄与度である1.0を与える。なお、寄与度を決定する基準となるデフォーカス量の相対差は、70μm以下または170μm以上に限定されるものではない。
【0018】
上記のように式(23)で求めた最適輝度値BvAFを用いて、以下の式により露出制御用輝度値BvAnsを求める。
BvAns=K+k×BvAF ・・・(27)
(K=k1×BvMean+k2×BvMin+k3×dBv+k4×dHE+k5)
なお、被写体の撮影状況によっては、すなわち、以下のように式(28)で表してもよい。
BvAns=k×BvAF ・・・(28)
なお、係数k、k1、k2、k3、k4、k5は、さまざまな撮影シーンで最適な露出結果になるように予め最適化された係数である。また、平均輝度値BvMean、最大輝度値BvMax、最小輝度値MvMin、輝度差dBv、中央部の輝度値BvC、中央左の輝度値BvL、中央右の輝度値BvR、画面上部と画面下部の輝度差dHEは、式(16)〜(22)で求めた被写体の特徴となる情報である。以上のようにして算出された輝度値に基づいて、シャッタ速度および絞り値を算出し、シーケンス制御部52Cへ出力する。
【0019】
以下で、図7,8に示すフローチャートを用いて本実施形態におけるカメラの撮影処理および露出演算処理を説明する。なお、図7の処理手順は、シーケンス制御部52CのCPUでプログラムを実行して行なわれ、図8の各処理手順は制御回路50のAE演算部52BのCPUでプログラムを起動して行なわれる。
図7のフローチャートの処理は、レリーズスイッチ61の半押しが判定されると開始される。ステップS101では、位相差式焦点検出装置によるAF処理を行いステップS102へ進む。
【0020】
ステップS102では、周知の露出値演算式を用いて、BvAnsとフィルム感度などから、シャッタ速度と絞り値とを算出するAE処理を行い、ステップS103へ進む。
【0021】
ステップS103では、デフォーカス量seldfに基づきAFレンズ31bが駆動されたか否かを判定する。肯定された場合は、AF/AEロック状態に設定しステップS104へ進む。否定された場合は、ステップS101へ戻る。
【0022】
ステップS104では、撮影者によりレリーズスイッチ61がさらに押し込まれ、全押しと判定されるまで待機する。レリーズスイッチ61の全押しが判定された場合、ステップS105へ進み、被写体を撮影して記録する撮影処理を行なう。ステップS105で撮影処理が行なわれた後、本フローチャートに従った動作を終了する。
【0023】
図8のフローチャートは、図7のステップS102でのAE処理の詳細を説明するものである。レリーズスイッチ61の半押しが判定されるとAE処理が開始される。ステップS1では、AF用演算部52Aから、異なる3個所の焦点検出領域に対応するデフォーカス量dfL、dfC、dfRを読み込む。ここで、dfLは左端の焦点検出領域、dfCは中央の焦点検出領域、dfRは右端の焦点検出領域に対応するデフォーカス量である。なお、被写体のコントラストが低いため焦点検出が不能の場合は、便宜的にデフォーカス量が非常に大きな値に設定されるものとする。ステップS1でデフォーカス量の取得が終了したら、ステップS2へ進む。
【0024】
ステップS2では、AF用演算部52Aから、選択された焦点検出領域を読み込む。本実施形態では、最も近距離のデフォーカス量が小さい焦点検出領域を被写体位置とみなして選択焦点検出領域とする。この選択焦点検出領域のデフォーカス量がseldfと設定されるものとし、ステップS3へ進む。
【0025】
ステップS3では、AF用演算部52Aから読み込んだデフォーカス量を基に、デフォーカス量の差ddfL、ddfC、ddfRを算出する。デフォーカス量の差ddfL、ddfC、ddfRの演算は、AE用演算部52Bにおいて、以下の式を用いて行なう。
ddfL=dfL−seldf
ddfC=dfC−seldf
ddfR=dfR−seldf
各デフォーカス量を取得したら、ステップS4へ進む。
【0026】
ステップS4では、図6に示すテーブルTableWtを用いて、各焦点検出領域の輝度値に与える寄与度wtL、wtC、wtRを前述の式(24)〜(26)により求める。各焦点検出領域の輝度値に与える寄与度が決定したら、ステップS5へ進む。
【0027】
ステップS5では、測光素子25の24分割された領域のそれぞれの輝度値B1からB24を検出する。
【0028】
ステップS6では、輝度値B1からB24について、4個ずつを1つのグループにまとめて15個のグループとし、それぞれのグループ輝度G1からG15を前述の式(1)〜(15)により算出して、ステップS7へ進む。
【0029】
ステップS7では、ステップS6にて求めたグループ輝度G1からG15に基づき、平均輝度値BvMean、最大輝度値BvMax、最小輝度値MvMin、輝度差dBv、中央部の輝度値BvC、中央左の輝度値BvL、中央右の輝度値BvR、画面上部と画面下部の輝度差dHEを前述の式(16)〜(22)より求め、ステップS8へ進む。
【0030】
ステップS8では、各焦点検出領域に対応する輝度値BvC、BvL、BvRにステップS4で求めた寄与度を与えた最適輝度値BvAFを前述の式(23)を用いて求め、ステップS9へ進む。
【0031】
ステップS9では、ステップS8で求めた最適輝度値BvAFを用いて、前述の式(27)により露出制御用輝度値BvAnsを求め、ステップS10へ進む。なお、上述したように、露出制御用輝度値BvAnsは式(28)により算出されるものであってもよい。
【0032】
ステップS10では、露出制御用輝度値BvAnsを基に、シャッタ速度および絞り値を算出する。シャッタ速度および絞り値をシーケンス制御部52Cへ出力し、本フローチャートに従った処理を終了する。
【0033】
以上で説明したように、本実施形態によるカメラによれば、次の作用効果が得られる。
(1)3つの焦点検出領域における焦点調節状態のうちの1つに対する他の焦点調節状態(デフォーカス量)の差ddfL,ddfC、ddfRと、24の測光領域における測光値B1〜B24とに応じて、露出値を演算するようにした。たとえば、実施形態では、主要被写体が存在すると想定される一つの領域と、主要被写体が存在しないと想定される他の領域とのデフォーカス量の相対差を露出値演算に採用するようにした。したがって、主要被写体が存在しないと想定されるか、存在すると想定されたが想定が変動しても、主要被写体を安定した露出値で撮影できる。
【0034】
(2)相対差演算で基準とする領域を、複数の焦点検出領域のなかで選択された焦点検出領域とし、その焦点調節状態と、選択されなかった焦点検出領域の焦点調節状態との差を相対差とした。したがって、ユーザが手動で焦点検出領域を選択する際、隣接するいずれの領域を選択した場合でも、変化の少ない露光をすることができる。
(3)相対差が大きい焦点検出領域に対応する測光値に対しては、相対差が小さい焦点検出領域に対応する測光値に比べて、露出値演算に用いる寄与度を小さくした。このため、露出値演算に際して、主要被写体から被写体距離が離れている被写体を含む領域での測光値の影響を小さくすることができる。
【0035】
(4)相対差の絶対値が70μm以上170μm以下の範囲では、相対差が大きくなるほど露出値演算に用いる寄与度を徐々に小さくするようにした。このため、測光値の影響度合いを、主要被写体からの距離に応じて徐々に小さくすることができる。すなわち、主要被写体が存在しない領域に存在する被写体の露出値演算に対する影響度を低減することができる。
【0036】
(5)上記相対差演算で基準とされない焦点検出領域に対応する測光値の寄与度については、基準とされた焦点検出領域との相対差の絶対値が所定値以下であれば、基準とされた焦点検出領域の寄与度とほぼ同一とした。すなわち、実施形態では、相対差の絶対値が70μm以下では、選択された焦点検出領域も選択されなかった焦点検出領域も露出値演算の際の寄与度を共通とした。このため、主要被写体と近い距離の被写体が直接に露光される。
【0037】
本発明による露出演算装置を備えるカメラは上記実施の形態に限定されず、次のように変形することができる。
(1)上記実施の形態の説明では、位相差式焦点検出装置を一例として説明したが、コントラスト式焦点検出装置を用いた場合にも本発明を適用できる。この場合、全域スキャンを行い、焦点検出領域ごとの最大コントラスト位置を算出してデフォーカス量に換算すればよい。
(2)また本発明は、アクティブ測距装置を用いた場合にも適用できる。この場合、照明した被写体からの反射光による距離測定の結果をデフォーカス量に換算すればよい。
【0038】
(3)さらに本発明は、パッシブ測距装置を用いた場合にも適用できる。この場合、被写体の像ずれ量を基にして得られた距離測定の結果をデフォーカス量に換算すればよい。
(4)上記実施の形態の説明では、電子スチルカメラを用いたが、フィルムカメラであってもよい。また、レンズは交換可能としたがレンズ付きカメラであってもよい。
【0039】
(5)図9に示すように、レンズの焦点距離と撮影距離とに応じて、寄与度すなわち寄与度の特性を変化させることもできる。所定の焦点距離を有するレンズを用いた場合、実線1は撮影距離3mの被写体を撮影する場合を示し、破線2は撮影距離1mの被写体を撮影する場合を示し、一点差線3は撮影距離5m以上の被写体を撮影する場合を示す。また、所定の撮影距離の被写体を撮影する場合、二点差線4は焦点距離100mm以上のレンズを用いた場合を示し、実線5は焦点距離35mm以下のレンズを用いた場合を示す。
このように、デフォーカス量の相対差だけではなく、撮影距離または焦点距離に応じて寄与度を変更すれば、使用するレンズや種々の撮影条件をも考慮しつつ、上述したような作用効果をより適切に奏することができるカメラを提供できる。
なお、図9は寄与度の特性を撮影距離や焦点距離に応じてどのように変更するのかを定性的に示すグラフであり、撮影距離1m、3m、5mや焦点距離35mm、100mmは単なる例示である。また、焦点距離または撮影距離との関係によっては、太線6や実線7で示す特性であってもよい。
【0040】
以上の実施の形態では、図7や図8のプログラムをシーケンス制御部52CやAE演算部52Bに格納したカメラについて説明した。しかし、カメラのバージョンアップ時などにおいて、インターネット経由や可搬記録媒体を介して既存ユーザに対するサポートを実施する場合もあり得る。したがって、本発明は、そのようなバージョンアップ用のソフトウエアに対しても適用できる。
【0041】
また、本発明の特徴を損なわない限り、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の形態についても、本発明の範囲内に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の露出演算装置を内蔵したカメラのブロック図である。
【図2】撮影画面上における測光素子の分割を説明する図である。
【図3】撮影画面上における焦点検出領域の配置を説明する図である。
【図4】撮影画面上で24分割の測光素子と3個所の焦点検出領域を重ねて表示した図である。
【図5】撮影画面上で4個の測光素子を一つのグループとした15個のグループの配置を説明する図である。
【図6】寄与度の決定方法を説明する図である。
【図7】本発明の実施の形態によるカメラの動作を説明するフローチャートである。
【図8】本発明の実施の形態におけるAE処理を説明するフローチャートである。
【図9】寄与度の特性が焦点距離または撮影距離により変化することを説明する図である。
【符号の説明】
【0043】
10 カメラ本体 14 撮像素子
25 測光素子 30 交換レンズ
40 焦点検出装置 50 制御回路
51 CCD制御部 52A AF演算部
52B AE演算部 52C シーケンス制御部
60 焦点検出領域選択部 61 レリーズスイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の焦点検出領域における焦点調節状態のうちの1つに対する他の焦点調節状態の差(以下、相対差)と、複数の測光領域における測光値とに応じて、露出値を演算する露出値演算手段を備えることを特徴とする露出演算装置。
【請求項2】
請求項1に記載の露出演算装置において、
前記相対差は、選択された焦点調節状態と、選択されなかった焦点調節状態との差であることを特徴とする露出演算装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の露出演算装置において、
前記露出値演算手段は、前記相対差が大きい焦点検出領域に対応する測光値については、前記相対差が小さい焦点検出領域に対応する測光値に比べて、前記露出値の演算における寄与度を小さくすることを特徴とする露出演算装置。
【請求項4】
請求項3に記載の露出演算装置において、
前記相対差が大きくなるほど前記露出値の演算における寄与度を徐々に小さくすることを特徴とする露出演算装置。
【請求項5】
請求項3または4に記載の露出演算装置において、
前記選択されなかった焦点調節状態を検出する焦点検出領域における前記相対差が所定の範囲内である場合は、該焦点検出領域に対応する測光値の寄与度を、前記選択された焦点調節状態を検出する焦点検出領域に対応する測光値の寄与度とほぼ同一とすることを特徴とする露出演算装置。
【請求項6】
請求項3乃至5のいずれか1項に記載の露出演算装置において、
前記寄与度を、撮影距離または焦点距離に応じて変更することを特徴とする露出演算装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の露出演算装置を備えることを特徴とするカメラ。
【請求項8】
複数の焦点検出領域における焦点調節状態を検出し、
前記複数の焦点検出領域に対応する測光領域における測光値を検出し、
前記複数の焦点検出領域における焦点調節状態のひとつに対する他の焦点調節状態の差(以下、相対差)と、前記測光領域における測光値とに応じて、露出値を演算することを特徴とする露出演算方法。
【請求項9】
請求項8に記載の露出演算方法において、
前記相対差は、選択された焦点調節状態と、選択されなかった焦点調節状態との差であることを特徴とする露出演算方法。
【請求項10】
請求項8または9に記載の露出演算方法において、
前記相対差が大きい焦点検出領域に対応する測光値については、前記相対差が小さい焦点検出領域に対応する測光値に比べて、前記露出値の演算における寄与度を小さくすることを特徴とする露出演算方法。
【請求項11】
請求項10に記載の露出演算方法において、
前記相対差が大きくなるほど前記露出値の演算における寄与度を徐々に小さくすることを特徴とする露出演算方法。
【請求項12】
請求項10または11に記載の露出演算方法において、
前記選択されなかった焦点調節状態を検出する焦点検出領域における前記相対差が所定の範囲内である場合は、該焦点検出領域に対応する測光値の寄与度を、前記選択された焦点調節状態を検出する焦点検出領域に対応する測光値の寄与度とほぼ同一とすることを特徴とする露出演算方法。
【請求項13】
請求項10乃至12のいずれか1項に記載の露出演算方法において、
前記寄与度を、撮影距離または焦点距離に応じて変更することを特徴とする露出演算方法。
【請求項14】
コンピュータに、
複数の焦点検出領域に対応する測光領域における測光値を検出する測光処理と、
前記複数の焦点検出領域における焦点調節状態のひとつに対する他の焦点調節状態の差(以下、相対差)と、前記測光領域における測光値とに応じて、露出値を演算する露出値演算処理とを実行させる露出演算プログラム。
【請求項15】
請求項14に記載の露出演算プログラムにおいて、
前記相対差は、選択された焦点調節状態と、選択されなかった焦点調節状態との差であることを特徴とする露出演算プログラム。
【請求項16】
請求項14または15に記載の露出演算プログラムにおいて、
前記相対差が大きい焦点検出領域に対応する測光値については、前記相対差が小さい焦点検出領域に対応する測光値に比べて、前記露出値の演算における寄与度を小さくすることを特徴とする露出演算プログラム。
【請求項17】
請求項16に記載の露出演算プログラムにおいて、
前記相対差が大きくなるほど前記露出値の演算における寄与度を徐々に小さくすることを特徴とする露出演算プログラム。
【請求項18】
請求項16または17に記載の露出演算プログラムにおいて、
前記選択されなかった焦点調節状態を検出する焦点検出領域における前記相対差が所定の範囲内である場合は、該焦点検出領域に対応する測光値の寄与度を、前記選択された焦点調節状態を検出する焦点検出領域に対応する測光値の寄与度とほぼ同一とすることを特徴とする露出演算プログラム。
【請求項19】
請求項16乃至18のいずれか1項に記載の露出演算プログラムにおいて、
前記寄与度を、撮影距離または焦点距離に応じて変更することを特徴とする露出演算プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−121897(P2007−121897A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−316893(P2005−316893)
【出願日】平成17年10月31日(2005.10.31)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】