説明

青梅又は完熟梅の加工処理装置並びに梅製品製造方法

【課題】青梅又は完熟梅の殺菌における処理時間の短縮および高付加価値化処理プロセス(塩漬け不要・旨み向上・殺菌・短時間処理・環境負荷低減)を同時実現する青梅又は完熟梅の加工処理装置および青梅又は完熟梅の新製造プロセスを提供する。
【解決手段】
青梅又は完熟梅の固有の処理プロセスに応じて蒸気加熱装置による過熱水蒸気を熱媒体として、ほぼ大気圧下・低酸素雰囲気の処理室に供給して自動又は半自動制御で青梅又は完熟梅の種類に対応した最適な青梅又は完熟梅の処理方法を実現する加工処理装置及び新しい梅製品製造プロセスを主要な特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸気加熱装置により昇温した過熱水蒸気を熱媒体として乾燥室内で青梅又は完熟梅を短時間で均質処理させる青梅又は完熟梅の加工処理装置および梅製品製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の青梅又は完熟梅を使用した梅製品の生産は、自然乾燥(天日干)または人工乾燥(冷凍、遠赤外線など)が主流であり、前者の自然乾燥では3〜4日の晴れの日が必要であり、後者の人工乾燥では処理コストが高く青梅の完熟にもっていけない上に、塩漬けによる殺菌効果を前提とした従来の梅加工技術であり、脱塩の環境負荷や健康負荷が大きい。
【0003】
すなわち、従来は塩漬け・天日干し・脱塩という3段階のプロセスが必要で、この間に梅は1ケ月程度重しをかけて塩漬けされるためつぶれが発生したりして歩留まりが低下する上、果肉細胞を死滅させており、廃水処理費用などのロスコストも必要である。
【0004】
また従来の方法は、青梅又は完熟梅の3段階のプロセスでのエネルギー損失、運転コストが必要である上、次工程への移相時に製品疵(皮破れ)を発生させたりしてここでも、品質低下や歩留まりロスを余儀なくされている欠点があった。
【0005】
この改善策として、天日干し工程の短縮に対して遠赤外線照射と空気噴射による先願特許が出ているが、乾燥での熱効率が低いのと品質が安定しない上、短時間の処理が難しい。
【特許文献1】特許公開2005−6612 果実を凍結することを特徴とした梅干しの製造方法で、従来の製造法は塩漬けにすることによって果実の組織を死滅させていたものを、凍結することによって果実の組織を死滅させ、成熟への成長を遮断するものであり果実の新鮮さは残らない。また、冷凍による方法は、完熟梅に対して有効であり青梅の熟成はできない。
【特許文献2】特許公開2005−261276
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
これら従来の青梅又は完熟梅の加工処理機は、処理室室内制御を熱風や遠赤外線で乾燥する方式であり、青梅又は完熟梅を短時間に安定して、均質に熟成できない諸問題点をかかえているものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、青梅又は完熟梅の固有の処理プロセスに応じて過熱水蒸気を蒸気加熱装置(3)を通じて低酸素雰囲気の熱媒体として、ほぼ大気圧下の乾燥室に供給した青梅又は完熟梅の処理機(4)および最適な青梅又は完熟梅の処理方法を最も主要な特徴とする。
上述した問題点を解決する請求項1の発明は、水蒸気ボイラー(1)によって供給される過熱水蒸気で青梅又は完熟梅の昇温段階、熟成段階の熱供給に応じた温度状態に蒸気加熱装置(3)によって昇温し、これらを熱媒体として処理室内(4)で青梅又は完熟梅を短時間で安定的な完熟状態且つ殺菌処理状態に処理させる青梅又は完熟梅の加工処理装置である。請求項2の発明は、温度制御と流量制御は処理室内温度検出器(9)、青梅又は完熟梅の温度検出器(10)からの信号によって制御、すなわち、処理室内温度検出器(9)の温度上昇割合に比べ青梅又は完熟梅の温度検出器(10)の温度上昇割合が高い時は蒸気加熱装置(3)の設定温度を下げ、逆の場合は温度を上げて、処理プロセスによって設定した温度範囲に処理室(4)内を制御する水蒸気流量調整弁(7)によって、流量を調整することで、青梅又は完熟梅の昇温段階、熟成段階のそれぞれの青梅又は完熟梅の最適乾燥条件とするために処理室(4)内の過熱水蒸気量を水蒸気流量調整弁(7)で自動又は半自動で調整処理させる青梅又は完熟梅食の処理装置である。請求項1は、ドレン分離器(5)でドレンを排出するための装置を配置した青梅又は完熟梅の処理装置である。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の発明によると、水蒸気ボイラー(1)によって供給される水蒸気を蒸気加熱装置(3)によって昇温された熱媒体を乾燥室内(4)に投入できるので、青梅又は完熟梅の処理プロセスに応じた熱供給が可能となり青梅又は完熟梅を短時間で処理が可能となり、熱供給量を自由に調整できるため青梅又は完熟梅に適した高付加処理が可能となる。請求項2の発明によると、青梅又は完熟梅の昇温段階、熟成段階のそれぞれの青梅又は完熟梅の最適処理条件とするために処理室(4)内の過熱水蒸気及を水蒸気流量調整弁および制御装置(11)で自動又は半自動で制御が可能であり高付加処理(従来の塩漬けプロセス省略並びに梅品質の改質及び殺菌を同時に行う短時間処理)させることができる。また、本乾燥方法は、ほぼ大気圧下で露点以上の高温常圧過熱水蒸気を発生させることができ、それぞれのプロセスに最適な熱媒体温度が1台の加熱装置で実現可能である蒸気加熱装置(3)によって運転できるという利点がある。
結果的に、本発明は次のような効果がある。
1.未熟で果肉が硬い青梅も過熱蒸気で完熟にできるし、熟して果肉が軟らかくなった果実まで加熱殺菌と熟成品質の均質な製品にすることが出来る。
2.塩漬け不要のプロセスであり、移送時や重しによるつぶれがなくなり歩留まり向上、及び塩加減等塩漬け期間と労力の手間が省け、排水処理の環境負荷も低減する。
3.製品の製造プロセス省略による製造日数の大幅な短縮が出来、大幅なコスト縮減となる。
4.短時間の殺菌処理であり果実の組織を壊さない処理であり新鮮味が確保され、果実に重圧がかからないため中身のエキスがそのまま残り過熱蒸気の効果が付加され香り、味とも濃厚な製品が仕上がる。
5.製造工程に塩漬工程が無く、塩分含有ゼロの製品が出来るので健康食品に適し、女性や子供達の嗜好にも適した製品を提供できる。
6.塩漬けや天日干しなど、短期間かつ天候に左右されるプロセスが省略され、過酷な作業者のピークを軽減できるため少子高齢化対策となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
蒸気加熱装置(3)の入口側に水蒸気ボイラー(1)を青梅又は完熟梅の各プロセスに必要な熱媒量をバルブで調整できるように接続し効率的な熱伝達法で、青梅又は完熟梅を短時間に安定して、高付加乾燥できる青梅又は完熟梅の乾燥装置が実現した。
【実施例1】
【0010】
図1は、本発明装置の1実施例であって、(1)は水蒸気ボイラー、(2)は空気送風機、(3)は蒸気加熱装置、(4)は処理室、(5)はドレン分離器、(6)は水蒸気減圧弁、(7)は水蒸気流量調整弁、(8)は空気流量調整弁、(9)は処理室内温度検出器、(10)は青梅又は完熟梅の温度検出器、(11)は制御装置、(12)は青梅又は完熟梅の原料である。
【0011】
水蒸気ボイラー(1)からの水蒸気は水蒸気減圧弁(6)による圧力調整、水蒸気流量調整弁(7)による流量制御を経て、蒸気加熱装置(3)に入り、過熱水蒸気に加熱したのち処理室(4)に供給される。その温度制御と流量制御は処理室内温度検出器(9)、青梅又は完熟梅の温度検出器(10)からの信号によって制御される。すなわち、処理室内温度検出器(9)の温度上昇割合に比べ青梅又は完熟梅の温度検出器(10)の温度上昇割合が高い時は蒸気加熱装置(3)の設定温度を下げ、逆の場合は温度を上げて、処理プロセスによって設定した温度範囲に処理室(4)を制御する。
【0012】
乾燥室内(4)の温度を急速冷却させる場合は、空気送風機(2)により空気流量調整弁(8)を経て冷却空気を供給できる。
【0013】
乾燥室(4)内に発生する液体水分はドレン分離器(5)によって、処理室(4)外に排出される。
【0014】
プロセスごとの熱媒体の使用方法は、昇温段階、熟成段階において過熱水蒸気の流量を自動又は半自動で調節する。
【0015】
水蒸気は、大気圧下でも容易に結露に至らない温度まで、蒸気加熱装置(3)で加熱し、処理室(4)内に充満させるために水蒸気流量調整弁(7)を調整して、処理室(4)内を、ほぼ大気圧に制御する。
【0016】
処理室(4)内における温度分布を均一化するため、過熱水蒸気の噴出しノズルを乾燥室の各部に配列する。
【0017】
青梅又は完熟梅の温度検出器(10)は、青梅又は完熟梅の原料の中央部に差し込む検出器(10)を利用して青梅又は完熟梅の乾燥の自動制御を制御装置(11)によっておこなう。
【実施例2】
【0018】
図2は、本発明の応用事例であり、(12)は青梅又は完熟梅の原料、(13)は梅の過熱処理品、(14)は梅酢味液、(15)は味漬け込み容器、(16)が梅漬け製品である。
【0019】
本発明の応用事例による本発明の新製造プロセス(新しい高付加価値の梅漬け製品の製造プロセス)と従来の製造プロセスの比較を図3、梅ジャムその他梅製品製造プロセスを図4、本発明のプロセスにおける各種梅製品加工の改善効果マップと参考標準時間を図5に示す。すなわち塩漬け不要の梅製品加工の全く新しい梅製造プロセスが、実用化できることになり1.大幅な工程短縮、2.加熱殺菌により塩漬けによる排水処理が不要となり環境負荷低減と塩分量の低減によるヘルシー性向上、3.短時間処理により梅組織を活かした新鮮度を確保した品質向上、4.大幅なコストダウンや多様な新梅製品創出などマルチメリットを提供する。
【産業上の利用可能性】
【0020】
天日干や遠赤外線乾燥機では、実現できなかった短い処理時間と高付加乾燥の高品質な青梅又は完熟梅の多様な加工処理を実行できるので、使用価値は高いと考える。また、図2のように、塩漬けや天日無しで味液(梅酢など)に漬けた梅漬けが本処理装置で加工することで梅漬け製品の他にも、梅ジャム、梅酒、梅蜂蜜、梅シロップ、乾燥梅など多種類の梅加工製品の製造が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】青梅又は完熟梅の処理機の実現方法を示した説明図である。(実施例1)
【図2】青梅や完熟梅の梅漬け製品の梅漬け状況を示した説明図である。(実施例2)
【図3】従来の梅製造プロセスと本発明の梅製造プロセスの比較を示した説明図である。(実施例2)
【図4】梅ジャムその他梅製品の製造プロセスを示した説明図である。
【図5】本発明の製造プロセスによる各種梅製品加工の改善効果マップと参考標準時間を示した説明図である。
【符号の説明】
【0022】
1 水蒸気ボイラー
2 空気送風機
3 蒸気加熱装置
4 乾燥室
5 ドレン分離器
6 水蒸気減圧弁
7 水蒸気流量調整弁
8 空気流量調整弁
9 乾燥室内温度検出器
10 魚肉や食肉の温度検出器
11 制御装置
12 魚肉や食肉の原料(生魚や生肉)
13 乾燥食品
14 味液
15 味漬け込み容器
16 梅漬け製品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気加熱装置(3)によって高温の過熱水蒸気を熱媒体として青梅又は完熟梅を処理室(4)内に供給することによって60℃〜150℃の任意の過熱水蒸気で加熱昇温し短時間(10分〜30分)で半完熟又は完熟梅状態にさせる自動又は半自動加工処理装置。
【請求項2】
請求項1において、青梅又は完熟梅のそれぞれの梅果肉の最適処理条件とするために処理室(4)内の水蒸気流量調整弁(7)で自動又は半自動で調整乾燥させる青梅又は完熟梅の加工処理方法。
【請求項3】
請求項1において、青梅又は完熟梅の殺菌効果を確保するための温度制御は、青梅又は完熟梅の重量、含水率、鮮度などの条件からの最適制御を行なうための水蒸気流量調整弁(7)で自動又は半自動で調整処理させる青梅又は完熟梅の加工処理方法。
【請求項4】
請求項1において、微細な無酸素雰囲気の過熱水蒸気や特有の熱媒体により青梅又は完熟梅の植物成分の均質化で旨みのある青梅又は完熟梅の加工食品を製造する自動又は半自動加工処理装置、並びに必要に応じて具備される青梅又は完熟梅の供給及び過熱蒸気処理後の取り出し並びに冷却などの装置。
【請求項5】
請求項4において、多様な味わいのある青梅又は完熟梅の加工食品を製造するため過熱蒸気処理したのち梅酢やシソ等を入れた調味液に浸して、請求項1の自動又は半自動加工処理装置で加工した原料を用いて塩漬け無しの新しい梅製品を製造する方法。
【請求項6】
従来の梅製品製造プロセスにおける塩漬け・塩抜き不要とする画期的なプロセスで環境・健康負荷低減及び殺菌・完熟等の品質向上を両立させる新しい製造プロセス。
【請求項7】
請求項4において処理された梅原料を元に、加工処理が可能なA梅漬け製品、B梅ジャム、C梅酒、D梅はちみつ、E梅シロップ、F乾燥梅等の塩漬け無しの天然の梅加工製品類。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−129994(P2007−129994A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−328812(P2005−328812)
【出願日】平成17年11月14日(2005.11.14)
【出願人】(302012420)
【出願人】(592086684)株式会社瀬田技研 (9)
【Fターム(参考)】