説明

青色発光ガラスおよびその調製方法

青色発光ガラスおよびその調製方法である。青色発光ガラスは、組成がaCaO・bAl・cSiO・xCeOであって、式中a、b、cおよびxはそれぞれモル分率を表し、その値はそれぞれ、aは15〜55、bは15〜35、cは20〜60、xは0.01〜5である。その調製方法は、前記青色発光ガラスの組成に基づいて原料を量り取り、原料を均一に混合した後、溶融させてガラス溶融体を得て、ガラス溶融体を透明ガラスとして成型し、透明ガラスを還元雰囲気下で熱処理することで、完成品を得る、ことを含む。青色発光ガラスは紫外線領域で高い広帯域励起スペクトルを備え、しかも紫外線光での励起にて強い青色光を出射でき、発光媒介材料とするに適した青色発光ガラスおよびその調製方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子および照明技術分野に関し、より具体的には、青色光を発する発光ガラスおよびその調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体照明技術の発展に伴い、LED(発光ダイオード)といった革新的な新たな光源は徐々に我々の日常生活に入り込んできている。新型の照明技術として、LEDは省エネ、環境に優しい、柔軟に応用できるなどの数多くの長所を備えており、各種インジケータ、ディスプレイ、デコレーション、バックライト光源および普通の照明などの分野に広く応用できる。第3世代の半導体材料である窒化ガリウムを半導体照明の光源とすることで、同レベルの明るさでも消費電力はわずかに通常の白熱電球の1/10となり、寿命は10万時間以上に達することができ、照明分野における一革命をもたらしている。
【0003】
現在、商品化されている大部分の白色LED照明デバイスに採用されているのは青色LEDチップに青色光で励起されて黄色、緑色または橙色光に発光可能な蛍光粉体が組み合わされている。この種の蛍光粉体の発光媒介材料は高い発光効率を備え、しかも調製方法は成熟している。しかし、この種の方法で製作された光源デバイスには以下のような欠点がある。(1)封止したエポキシ樹脂は劣化しやすく、デバイスの寿命が短くなる、(2)工程が複雑で、コストが嵩む、(3)色座標が不安定で、白色光がドリフトしやすい、など。
【0004】
蛍光粉体などに似た粉体材料に比べて、青紫色レーザでの励起で発光を実現するガラスは顕著な長所を備えている。(1)優れた透光性を持つ、(2)優れた化学的安定性および熱安定性、(3)製造工程が簡単で、低コストである、(4)大型化、異なる形状に製作するのが容易である、(5)エポキシ樹脂と置換できる。これら長所により、高性能発光を実現可能なガラスはLED照明分野の発光媒介材料とするのに非常に適している。
【0005】
しかし従来の技術における発光ガラスは、ガラス製造での条件およびガラス構造での制限により、数多くの発光活性イオンのガラス中での発光強さは弱く、場合によっては発光しなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決すべき技術的課題は、従来における蛍光粉体および発光ガラスの技術的欠点に対して、優れた発光性能を備え、紫外線光の励起で発光可能な青色発光ガラスを提供するところにある。
【0007】
本発明がさらに解決すべき技術的課題は、従来における発光ガラスの調製方法がガラス製造での条件により制限され、発光活性イオンのガラス中での発光強さは弱く、場合によっては発光しないという欠点に対して、上記青色発光ガラスの調製方法を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
化学式がaCaO・bAl・cSiO・xCeOであって、式中a、b、cおよびxはそれぞれモル分率を表し、その値はそれぞれ、aは15〜55、bは15〜35、cは20〜60、xは0.01〜5である青色発光ガラスである。
本発明で記載する青色発光ガラスにおいて、前記モル分率の値はそれぞれ、aは25〜50、bは15〜30、cは25〜50、xは0.01〜2である。
【0009】
青色発光ガラスの調製方法であって、
量り取り:化学式がaCaO・bAl・cSiO・xCeOであって、式中a、b、cおよびxはそれぞれモル分率を表し、その値はそれぞれ、aは15〜55、bは15〜35、cは20〜60、xは0.01〜5であるものに基づいて、原料CaCO、Al、SiOおよびCeOを量り取る工程と、
溶融:量り取った原料を均一の混合した後、溶融させてガラス溶融体を得る工程と、
成型:前記ガラス溶融体を0.5〜3時間保温した後、さらに透明ガラスを製作する工程と、
後処理:前記透明ガラスを還元雰囲気下で650〜1050℃にまで加熱して、3〜20時間保温した後、さらに室温にまで冷却して前記青色発光ガラスを得る工程と、を含む。
【0010】
本発明の前記青色発光ガラスの調製方法において、前記モル分率の値はそれぞれ、aは25〜50、bは15〜30、cは25〜50、xは0.01〜2である。
【0011】
本発明の前記青色発光ガラスの調製方法において、前記原料の純度は分析試薬以上である。
【0012】
本発明の前記青色発光ガラスの調製方法において、前記溶融工程が、量り取った原料を均一に混合した後、コランダムるつぼまたは白金るつぼ中に移して、原料が移されたコランダムるつぼまたは白金るつぼを高温箱型炉中に入れて、高温箱型炉で加熱して原料を溶融することで、前記ガラス溶融体を得る、ことを含む。
【0013】
本発明の前記青色発光ガラスの調製方法において、前記高温箱型炉の加熱温度は1500〜1700℃である。
【0014】
本発明の前記青色発光ガラスの調製方法において、前記成型工程は、前記ガラス溶融体を0.5〜3時間保温した後、それを鋳型内に流し込んで加圧して、前記透明ガラスを成型する、ことを含む。
【0015】
前記後処理工程は、前記透明ガラスをアニール炉中に入れて、還元雰囲気がCO、H、NとHとの混合ガスまたは体系中にカーボンが存在する雰囲気下で650〜1050℃まで加熱し、2〜20時間保温し、さらに室温にまで冷却することで、前記青色発光ガラスを得る、ことを含む
【0016】
本発明の前記青色発光ガラスの調製方法において、前記還元雰囲気は体積百分率が95%Nおよび5%Hである混合ガスまたは体積百分率が97%Nおよび3%Hである混合ガスである。
【発明の効果】
【0017】
本発明の有益な効果:本発明の青色発光ガラスの調製方法は、青色発光ガラスの調製に用いられ、操作が簡単で、適用性が高く、工程条件が調節しやすい。この方法を採用して得られた青色発光ガラスは紫外線領域で高い広帯域励起スペクトルを備え、発光媒介材料とするに適し、紫外線光での励起にて高い効率の青色発光を実現する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施例3にて調製された発光ガラスの励起光スペクトルおよび出射光スペクトル。
【発明を実施するための形態】
【0019】
実施例1:55CaO・25Al・20SiO・0.8CeOの調製
それぞれ炭酸カルシウム(CaCO)を27.54g、酸化アルミニウム(Al)を12.82g、二酸化ケイ素(SiO)を6.04g、そして酸化セリウム(CeO)を0.68g量り取り、量り取った原料(原料の純度は分析試薬以上)を乳鉢中で混合して均一に粉砕した後、白金るつぼ中に移し、その後原料が移された白金るつぼを高温箱型炉中に入れて、1700℃まで加熱すると、原料がガラス溶融体として溶解し、この温度で1時間保温した後、ガラス溶融体を鋳型内に流し込んで、透明ガラスとして加圧成型し、さらに当該透明ガラスをアニール炉中に入れて、95%N+5%H(体積百分率が95%Nおよび5%Hである混合ガス)の還元雰囲気下で650℃まで加熱し、20時間保温した後に室温にまで冷却することで、分子式が55CaO・20Al・25SiO・0.8CeOであり紫外線光の励起で青色光を出射可能な発光ガラスを得た。
【0020】
実施例2:50CaO・25Al・25SiO・0.01CeOの調製
それぞれ炭酸カルシウム(CaCO)を21.89g、酸化アルミニウム(Al)を11.15g、二酸化ケイ素(SiO)を6.57g、そして酸化セリウム(CeO)を0.006g量り取り、量り取った原料(原料の純度は分析試薬以上)を乳鉢中で混合して均一に粉砕した後、白金るつぼ中に移し、その後原料が移された白金るつぼを高温箱型炉中に入れて、1650℃まで加熱すると、原料がガラス溶融体として溶解し、この温度で0.5時間保温した後、ガラス溶融体を鋳型内に流し込んで、透明ガラスとして加圧成型し、さらに当該透明ガラスをアニール炉中に入れて、COの還元雰囲気下で950℃まで加熱し、3時間保温した後に室温にまで冷却することで、分子式が50CaO・25Al・25SiO・0.01CeOであり紫外線光の励起で青色光を出射可能な発光ガラスを得た。
【0021】
実施例3:42CaO・15Al・43SiO・0.5CeOの調製
それぞれ炭酸カルシウム(CaCO)を19.46g、酸化アルミニウム(Al)を7.08g、二酸化ケイ素(SiO)を11.96g、そして酸化セリウム(CeO)を0.039g量り取り、量り取った原料(原料の純度は分析試薬以上)を乳鉢中で混合して均一に粉砕した後、コランダムるつぼ中に移し、その後原料が移されたコランダムるつぼを高温箱型炉中に入れて、1600℃まで加熱すると、原料がガラス溶融体として溶解し、この温度で2時間保温した後、ガラス溶融体を鋳型内に流し込んで、透明ガラスとして加圧成型し、さらに当該透明ガラスをアニール炉中に入れて、Hの還元雰囲気下で1000℃まで加熱し、5時間保温した後に室温にまで冷却することで、分子式が42CaO・15Al・43SiO・0.5CeOであり紫外線光の励起で青色光を出射可能な発光ガラスを得た。図1に示すように、これは本発明の実施例3にて調製された発光ガラスの励起光スペクトルおよび出射光スペクトルであり。図中に示されるように、本実施例で調製された発光ガラスの主励起ピークは355nmであり、355nmの励起下で365〜520nmの広帯域発光スペクトルを有し、主励起ピークは430nmである。
【0022】
実施例4:33CaO・33Al・34SiO・0.1CeOの調製
それぞれ炭酸カルシウム(CaCO)を13.61g、酸化アルミニウム(Al)を13.87g、二酸化ケイ素(SiO)を8.42g、そして酸化セリウム(CeO)を0.069g量り取り、量り取った原料(原料の純度は分析試薬以上)を乳鉢中で混合して均一に粉砕した後、コランダムるつぼ中に移し、その後原料が移されたコランダムるつぼを高温箱型炉中に入れて、1550℃まで加熱すると、原料がガラス溶融体として溶解し、この温度で3時間保温した後、ガラス溶融体を鋳型内に流し込んで、透明ガラスとして加圧成型し、さらに当該透明ガラスをアニール炉中に入れて、97%N+3
【0023】
%H(体積百分率が97%Nおよび3%Hである混合ガス)の還元雰囲気下で900℃まで加熱し、10時間保温した後に室温にまで冷却することで、分子式が33CaO・33Al・34SiO・0.1CeOであり紫外線光の励起で青色光を出射可能な発光ガラスを得た。
【0024】
実施例5:25CaO・15Al・60SiO・1CeOの調製
それぞれ炭酸カルシウム(CaCO)を10.93g、酸化アルミニウム(Al)を6.89g、二酸化ケイ素(SiO)を16.25g、そして酸化セリウム(CeO)を0.77g量り取り、量り取った原料(原料の純度は分析試薬以上)を乳鉢中で混合して均一に粉砕した後、コランダムるつぼ中に移し、その後原料が移されたコランダムるつぼを高温箱型炉中に入れて、1500℃まで加熱すると、原料がガラス溶融体として溶解し、この温度で1時間保温した後、ガラス溶融体を鋳型内に流し込んで、透明ガラスとして加圧成型し、さらに当該透明ガラスをアニール炉中に入れて、体系中にカーボンが存在する還元雰囲気下で1050℃まで加熱し、10時間保温した後に室温にまで冷却することで、分子式が25CaO・15Al・60SiO・1CeOであり紫外線光の励起で青色光を出射可能な発光ガラスを得た。
【0025】
実施例6:15CaO・35Al・45SiO・5CeOの調製
それぞれ炭酸カルシウム(CaCO)を5.64g、酸化アルミニウム(Al)を13.42g、二酸化ケイ素(SiO)を10.17g、そして酸化セリウム(CeO)を3.23g量り取り、量り取った原料(原料の純度は分析試薬以上)を乳鉢中で混合して均一に粉砕した後、白金るつぼ中に移し、その後原料が移された白金るつぼを高温箱型炉中に入れて、1600℃まで加熱すると、原料がガラス溶融体として溶解し、この温度で1時間保温した後、ガラス溶融体を鋳型内に流し込んで、透明ガラスとして加圧成型し、さらに当該透明ガラスをアニール炉中に入れて、95%N+5%Hの還元雰囲気下で950℃まで加熱し、5時間保温した後に室温にまで冷却することで、分子式が15CaO・35Al・45SiO・5CeOであり紫外線光の励起で青色光を出射可能な発光ガラスを得た。
【0026】
以上は、本発明の好ましい具体的な実施例に過ぎず、本発明の保護範囲はこれに限定されることはなく、本技術分野の当業者が本発明に開示する技術範囲内で、容易に想到する変化または置換は、いずれも本発明の保護範囲内に含まれる。よって、本発明の保護範囲は特許請求の範囲を基準とすべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学式がaCaO・bAl・cSiO・xCeOであって、式中a、b、cおよびxはそれぞれモル分率を表し、その値はそれぞれ、aは15〜55、bは15〜35、cは20〜60、xは0.01〜5である、ことを特徴とする青色発光ガラス。
【請求項2】
前記モル分率の値がそれぞれ、aは25〜50、bは15〜30、cは25〜50、xは0.01〜2である、ことを特徴とする請求項1に記載の青色発光ガラス。
【請求項3】
青色発光ガラスの調製方法であって、
量り取り:化学式がaCaO・bAl・cSiO・xCeOであって、式中a、b、cおよびxはそれぞれモル分率を表し、その値はそれぞれ、aは15〜55、bは15〜35、cは20〜60、xは0.01〜5であるものに基づいて、原料CaCO、Al、SiOおよびCeOを量り取る工程と、
溶融:量り取った原料を均一の混合した後、溶融させてガラス溶融体を得る工程と、
成型:前記ガラス溶融体を0.5〜3時間保温した後、さらに透明ガラスを製作する工程と、
後処理:前記透明ガラスを還元雰囲気下で650〜1050℃にまで加熱して、3〜20時間保温した後、さらに室温にまで冷却して前記青色発光ガラスを得る工程と、を含む、ことを特徴とする青色発光ガラスの調製方法。
【請求項4】
前記モル分率の値がそれぞれ、aは25〜50、bは15〜30、cは25〜50、xは0.01〜2である、ことを特徴とする請求項3に記載の青色発光ガラスの調製方法。
【請求項5】
前記原料の純度が分析試薬以上である、ことを特徴とする請求項3に記載の青色発光ガラスの調製方法。
【請求項6】
前記溶融工程が、量り取った原料を均一に混合した後、コランダムるつぼまたは白金るつぼ中に移して、原料が移されたコランダムるつぼまたは白金るつぼを高温箱型炉中に入れて、高温箱型炉で加熱して原料を溶融することで、前記ガラス溶融体を得る、ことを含む、ことを特徴とする請求項3に記載の青色発光ガラスの調製方法。
【請求項7】
前記高温箱型炉の加熱温度が1500〜1700℃である、ことを特徴とする請求項6に記載の青色発光ガラスの調製方法。
【請求項8】
前記成型工程が、前記ガラス溶融体を0.5〜3時間保温した後、それを鋳型内に流し込んで加圧して、前記透明ガラスを成型する、ことを含む、ことを特徴とする請求項3に記載の青色発光ガラスの調製方法。
【請求項9】
前記後処理工程が、前記透明ガラスをアニール炉中に入れて、還元雰囲気がCO、H、NとHとの混合ガスまたは体系中にカーボンが存在する雰囲気下で650〜1050℃まで加熱し、2〜20時間保温し、さらに室温にまで冷却することで、前記青色発光ガラスを得る、ことを含む、ことを特徴とする請求項3に記載の青色発光ガラスの調製方法。
【請求項10】
前記還元雰囲気は体積百分率が95%Nおよび5%Hである混合ガスまたは体積百分率が97%Nおよび3%Hである混合ガスである、ことを特徴とする請求項9に記載の青色発光ガラスの調製方法。

【図1】
image rotate


【公表番号】特表2012−530666(P2012−530666A)
【公表日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−516473(P2012−516473)
【出願日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際出願番号】PCT/CN2009/072446
【国際公開番号】WO2010/148562
【国際公開日】平成22年12月29日(2010.12.29)
【出願人】(511210109)海洋王照明科技股▲ふん▼有限公司 (21)
【Fターム(参考)】