説明

静電吸着シート

【課題】吸着力の持続性が高く、吸着力が湿度に影響され難く、インクの密着が良好であり、印刷工程でのトラブルが発生しない静電吸着シート(iii)を提供する。
【解決手段】片面に記録層(D)を備えた樹脂フィルム層(A)を含むラベル層(i)と、剥離層(B)および支持体層(C)を含む剥離シート層(ii)とを、樹脂フィルム層(A)と剥離層(B)が接触するように積層した積層体からなる静電吸着シートであって、ラベル層(i)と剥離シート層(ii)との剥離強度が1〜50g/cmであり、且つラベル層(i)のガーレ柔軟度を1とした場合の剥離シート層(ii)のガーレ柔軟度の比が0.04〜0.95であることを特徴とする静電吸着シート(iii)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電吸着シートに関するものである。静電吸着シート(iii)から剥離シート層(ii)を剥離したラベル層(i)は被着体を選ばない吸着性があり、使用後は容易に剥がすことができる帯電式のラベルである。本発明の静電吸着シート(iii)は特に印刷工程でのハンドリング性が良く、また印刷インクの密着性に優れている。
【背景技術】
【0002】
従来、壁面、ガラス面、柱、掲示板、ロッカー、書棚などの被着体に印刷により作成したポスター、広告などを貼り付ける為には、接着剤や粘着テープなどが利用されてきた。しかしながら、ポスター、広告などを接着剤や粘着テープを使用して被着体に貼り付けをした場合は、使用後に容易に剥離することが難しく、被着体表面から剥がした後に糊が残ってしまったり、被着体表面の塗装が剥れたりして、次第に汚れたり、元々の平面性が損なわれていくという問題があった。
接着剤や粘着テープを使用せずにポスター、広告などを掲示する方法としては、静電気力による貼り付け可能とした吸着方式のフィルムが提案されている。例えば、特許文献1及び2には静電吸着力を付与したポリ塩化ビニルフィルムが、特許文献3には静電吸着力を付与したポリプロピレン系フィルムが提案されている。
しかしながらこれらフィルムは、静電吸着力を維持するために特定の物質を配合しているが、吸着の持続力が不十分であるという問題があった。またこれらは印刷記録適性を有していないので、ポスター等として用いる場合には該フィルムに所望の物品に貼りあわせた上で、ポスター等の様態として使用しなければならないという問題があった。
【0003】
特許文献4乃至6には、静電吸着が可能なポリマーからなる多孔質のフィルムが提案されている。多孔質フィルムとすることにより、帯電可能な表面積が大きくなり、帯電した電荷を保持する性能が向上し、吸着の持続力が向上している。しかしながら、この多孔質フィルムは塗工法により作成するものであり、使用できるポリマーは溶剤に可溶なポリマーに限定される。またこれらのポリマーは透湿性が高く、形成された空孔も独立気泡でない(連通している)ことから、電荷の保持性能が外部湿度により変化してしまい、静電吸着力が湿度に影響されてしまうという欠点があった。
【0004】
特許文献7には、平たい形状の気泡を含有する誘電性の材料のフィルムの内部に、大きな単一極性の電荷を与えたフィルムが提案されている。この方式で作成されたフィルムは静電吸着力が高く、持続性も高いという長所があるものの、このものに印刷を施してポスターやラベルとして活用しようとしても、それ自身の静電吸着力によって印刷の際に印刷機上の走行性が非常に悪く、ロールなどに貼り付いて絵柄がズレてしまったり、印刷中にゴミなどを拾ってしまいフィルムが汚れてしまうという問題点があった。この問題を解決する為には、フィルム成形後に一度印刷を済ませ、その後改めて単一極性の電荷を与える必要があるが、工程が煩雑になり、様々な絵柄を印刷する印刷用紙としての取り回しは非常に不便である。このように該特許文献7のフィルムは、元々印刷を念頭としたものではないため、インキの密着性も不十分であるという欠点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公昭63−030940号公報
【特許文献2】特開昭58−098351号公報
【特許文献3】特開昭61−000251号公報
【特許文献4】特開平06−083266号公報
【特許文献5】特許第3770926号公報
【特許文献6】特開平07−244461号公報
【特許文献7】特表平10−504248号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の静電吸着シートは、こうした従来の静電吸着シートに見られる静電吸着力の低さや環境の影響を受けての静電吸着力の低下のしやすさ、印刷記録物として用いる場合の取り回しの不便さ、印刷インキの密着が低いといった不具合を改善したものである。
すなわち本発明は、吸着力の持続性が高く、吸着力が湿度に影響され難く、インクの密着が良好であり、印刷工程でのトラブルが発生しない静電吸着シート(iii)を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、これらの課題を解決する為に、鋭意検討を進めた結果、特定の構造を有する積層フィルムを作成することによって、所期の特性を有する静電吸着シートを提供し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、片面に記録層(D)を備えた樹脂フィルム層(A)を含むラベル層(i)と、剥離層(B)および支持体層(C)を含む剥離シート層(ii)とを、樹脂フィルム層(A)と剥離層(B)が接触するように積層した積層体からなる静電吸着シートであって、ラベル層(i)と剥離シート層(ii)との剥離強度が1〜50g/cmであり、且つラベル層(i)のガーレ柔軟度を1とした場合の剥離シート層(ii)のガーレ柔軟度の比が0.04〜0.95であることを特徴とする静電吸着シート(iii)、に関するものである。
本発明の静電吸着シート(iii)は、剥離シート層(ii)を剥離したラベル層(i)が、剥離帯電により被着体に吸着可能となることを特徴とする。
【0008】
樹脂フィルム層(A)は、無機微細粉末及び/又は有機フィラー3〜70重量%、およびポリオレフィン系樹脂及び/又は官能基含有ポリオレフィン系樹脂97〜30重量%を含有することが好ましく、この樹脂組成物を少なくとも一軸方向に延伸して得たフィルムであることが好ましい。
樹脂フィルム層(A)の空孔率は1〜70%であることが好ましく、ラベル層(i)の水蒸気透過係数は0.01〜2.50g・mm/(m・24hr)であることが好ましい。樹脂フィルム層(A)は多層構造であっても良く、その少なくとも一層が2軸方向に延伸されていることが好ましい。
【0009】
剥離層(B)は、エーテル樹脂、エステル樹脂、ウレタン樹脂、ウリア樹脂、アクリル樹脂、アミド樹脂、エポキシ樹脂の何れか1種類以上を含むことが好ましく、これらの樹脂を支持体層(C)上に塗工法により形成して得たものであることが好ましい。
支持体層(C)は紙、樹脂フィルム、合成紙の何れかからなることが好ましい。
記録層(D)は、高分子バインダー40〜100重量%と無機微細粉末0〜60重量%からなることが好ましく、記録層(D)表面の表面抵抗率は1×1013〜9×1017Ωであることが好ましい。
【0010】
ラベル層(i)のガーレ柔軟度は、5〜1000mgfであり、且つ剥離シート層(ii)のガーレ柔軟度は1〜500mgfであることが好ましい。
ラベル層(i)の厚みは20〜500μmであり、且つ剥離シート層(ii)の厚みは1〜500μmであることが好ましい。個別には、記録層(D)の厚みが0.01〜50μmであり、樹脂フィルム層(A)の厚みが20〜500μmであり、剥離層(B)の厚みが0.1〜100μmであり、且つ支持体層(C)の厚みが1〜500μmであることがより好ましい。
また剥離シート層(ii)は、それ同士を重ね合わせてもブロッキングしづらく、測定されるブロッキング値が20g/cm以下であることが好ましい。
本発明は、静電吸着シート(iii)を印刷用紙として用いて、これに印刷を施すことが容易なものであり、静電吸着シート(iii)を用いた印刷記録物を含む。またこれより剥離シート層(ii)を剥離したラベル層(i)をラベルとして用いる様態も含む。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、吸着力の持続性が高く、吸着力が湿度に影響され難く、インクの密着が良好であり、印刷工程でのトラブルが発生しない静電吸着シート(iii)を提供することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の静電吸着シートの一態様の一部拡大断面図である。
【図2】本発明の静電吸着シートの他の態様の一部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の静電吸着シートは、片面に記録層(D)を備えた樹脂フィルム層(A)を含むラベル層(i)と、剥離層(B)および支持体層(C)を含む剥離シート層(ii)とを、樹脂フィルム層(A)と剥離層(B)が接触するように積層した積層体からなる静電吸着シートであって、ラベル層(i)と剥離シート層(ii)との剥離強度が1〜50g/cmであり、且つラベル層(i)のガーレ柔軟度を1とした場合の剥離シート層(ii)のガーレ柔軟度の比が0.04〜0.95であることを特徴とするものである。
以下、本発明品の構成上の特徴について、より詳細に説明する。
【0014】
[ラベル層(i)]
ラベル層(i)は樹脂フィルム(A)と記録層(D)からなるものである。ラベル層(i)の厚みは、好ましくは20〜500μm、より好ましくは25〜400μm、さらに好ましくは27〜300μm、特に好ましくは30〜200μmの範囲である。ラベル層(i)の厚みが20μm未満では、ラベル層(i)を取り扱う際に、帯電により手などに貼り付いてしまい作業性が低下する。また被着体に貼り付けた際にシワになり易いため外観が劣るものとなる。500μmを超えてしまうとラベル層(i)の自重が大きくなりすぎ、被着体への吸着を維持することが困難になる傾向がある。
【0015】
[剥離シート層(ii)]
剥離シート層(ii)は剥離シート層(B)と支持体層(C)からなるものである。剥離シート層(ii)の厚みは、好ましくは1〜500μm、より好ましくは5〜300μm、さらに好ましくは10〜200μm、特に好ましくは15〜150μmの範囲である。剥離シート層(ii)の厚みが1μm未満では、剥離シート層(ii)を剥がす際に同層の破断が発生し易く機能が損なわれ易い。500μmを超えると、剥離シート層(ii)の腰が高く剛度が高くなりすぎてしまい、ラベル層(i)との剥離の際にラベル層(i)側にシワが入ってしまったり、ラベル層(i)がカールしてしまい、ラベル層(i)の外観が損なわれ易く、またラベル層(i)の剥離帯電も充分には起こらず、吸着力の持続性が劣るものとなる傾向がある。
【0016】
[樹脂フィルム層(A)]
本発明の樹脂フィルム層(A)は、熱可塑性樹脂からなり、内部に空孔を有することにより電荷を保持し易い構造を有しているものである。
樹脂フィルム層(A)に用いる熱可塑性樹脂の種類は特に制限されない。例えば、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、プロピレン系樹脂、ポリメチル−1−ペンテン等のポリオレフィン系樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、マレイン酸変性ポリエチレン、マレイン酸変性ポリプロピレン等の官能基含有ポリオレフィン系樹脂、ナイロン−6、ナイロン−6,6等のポリアミド系樹脂、ポリエチレンテレフタレートやその共重合体、ポリブチレンテレフタレート、脂肪族ポリエステル等の熱可塑性ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート、アタクティックポリスチレン、シンジオタクティックポリスチレン等を使用することができる。
【0017】
これらの熱可塑性樹脂の中では、加工性に優れるポリオレフィン系樹脂、官能基含有ポリオレフィン系樹脂を用いることが好ましい。又、ポリオレフィン系樹脂を主成分とするフィルムは後述の剥離層(B)となる接着剤との接着力が弱いことが知られており、樹脂フィルム層(A)と剥離層(B)との界面での剥離が容易に行なえる。
ポリオレフィン系樹脂のより具体的な例としては、エチレン、プロピレン、ブチレン、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、メチル−1−ペンテンなどのオレフィン類の単独重合体、及び、これらオレフィン類2種類以上からなる共重合体が挙げられる。
【0018】
官能基含有ポリオレフィン系樹脂のより具体的な例としては、前記オレフィン類と共重合可能な官能基含有モノマーとの共重合体が挙げられる。係る官能基含有モノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレンなどのスチレン類、酢酸ビニル、ビニルアルコール、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプロン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、ブチル安息香酸ビニル、シクロヘキサンカルボン酸ビニルなどのカルボン酸ビニルエステル類、アクリル酸、メタクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、N−メタノール(メタ)アクリルアミドなどのアクリル酸エステル類、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、シクロペンチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、フェニルビニルエーテルなどのビニルエーテル類が特に代表的なものである。これら官能基含有モノマーの中から必要に応じ1種類もしくは2種類以上を適宜選択し共重合したものが挙げられる。
【0019】
更に、これらポリオレフィン系樹脂及び/又は官能基含有ポリオレフィン系樹脂を必要によりグラフト変性し使用することも可能である。
グラフト変性には公知の手法を用いることができ、具体的な例としては、不飽和カルボン酸またはその誘導体によるグラフト変性を挙げることができる。該不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等を挙げることができる。また上記不飽和カルボン酸の誘導体としては、酸無水物、エステル、アミド、イミド、金属塩等も使用可能である。具体的には、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、マレイン酸モノエチルエステル、マレイン酸ジエチルエステル、フマル酸モノメチルエステル、フマル酸ジメチルエステル、イタコン酸モノメチルエステル、イタコン酸ジエチルエステル、アクリルアミド、メタクリルアミド、マレイン酸モノアミド、マレイン酸ジアミド、マレイン酸−N−モノエチルアミド、マレイン酸−N,N−ジエチルアミド、マレイン酸−N−モノブチルアミド、マレイン酸−N,N−ジブチルアミド、フマル酸モノアミド、フマル酸ジアミド、フマル酸−N−モノエチルアミド、フマル酸−N,N−ジエチルアミド、フマル酸−N−モノブチルアミド、フマル酸−N,N−ジブチルアミド、マレイミド、N−ブチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、アクリル酸ナトリウム、メタクリル酸ナトリウム、アクリル酸カリウム、メタクリル酸カリウム等を挙げることができる。
【0020】
グラフト変性物は、グラフトモノマーをポリオレフィン系樹脂及び官能機含有ポリオレフィン系樹脂に対して、一般に0.005〜10重量%、好ましくは0.01〜5重量%グラフト変性したものである。
樹脂フィルム層(A)の形成に用いる熱可塑性樹脂としては、上記の熱可塑性樹脂の中から1種を選択して単独で使用してもよいし、2種以上を選択して組み合わせて使用してもよい。
更にこれらポリオレフィン系樹脂及び/又は官能基含有ポリオレフィン系樹脂の中でも、プロピレン系樹脂が、耐薬品性、コストの面などから好ましい。プロピレン系樹脂としては、プロピレン単独重合体でありアイソタクティックないしはシンジオタクティック及び種々の程度の立体規則性を示すポリプロピレン、プロピレンを主成分とし、これと、エチレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、4−メチル−1−ペンテン等のα−オレフィンとを共重合させた共重合体を主成分として使用することが望ましい。この共重合体は、2元系でも3元系以上でもよく、またランダム共重合体でもブロック共重合体であってもよい。プロピレン系樹脂には、プロピレン単独重合体よりも融点が低い樹脂を2〜25重量%配合して使用することが好ましい。そのような融点が低い樹脂として、高密度ないしは低密度のポリエチレンを例示することができる。
【0021】
本発明の樹脂フィルム層(A)に使用する熱可塑性樹脂には、無機微細粉末及び/又は有機フィラーを添加したものであることが望ましい。無機微細粉末及び/又は有機フィラーの添加により後述の延伸工程により空孔を形成することが可能となる。
無機微細粉末を添加する場合は、粒径が通常0.01〜15μm、好ましくは0.1〜5μmのものを使用する。具体的には、炭酸カルシウム、焼成クレー、シリカ、けいそう土、白土、タルク、酸化チタン、硫酸バリウム、アルミナ、ゼオライト、マイカ、セリサイト、ベントナイト、セピオライト、バーミキュライト、ドロマイト、ワラストナイト、ガラスファイバーなどを使用することができる。
【0022】
有機フィラーを添加する場合は、主成分である熱可塑性樹脂とは異なる種類の樹脂を選択することが好ましい。例えば、熱可塑性樹脂フィルムがポリオレフィン系樹脂フィルムである場合には、有機フィラーとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ナイロン−6,ナイロン−6,6、環状オレフィン、ポリスチレン、ポリメタクリレート等の重合体であって、ポリオレフィン系樹脂の融点よりも高い融点(例えば、170〜300℃)ないしはガラス転移温度(例えば、170〜280℃)を有し、かつ非相溶のものを使用することができる。
樹脂フィルム層(A)には無機微細粉末及び/又は有機フィラーを3〜70重量%、およびポリオレフィン系樹脂及び/又は官能基含有ポリオレフィン系樹脂97〜30重量%を含有することが好ましい。樹脂フィルム(A)は無機微細粉末及び/又は有機フィラーを5〜50重量%、およびポリオレフィン系樹脂及び/又は官能基含有ポリオレフィン系樹脂95〜50重量%を含有することがより好ましい。
無機微細粉末及び/又は有機フィラーの含有率が3重量%未満では空孔の形成が不十分であり、フィルム内部の電荷蓄積能力が低いため吸着力の持続性が低いものとなる。一方、70重量%を超えると、互いに連通した空孔の形成によって電荷が逃げ易い構造となるために好ましくない。
【0023】
樹脂フィルム層(A)を形成する熱可塑性樹脂には、必要に応じて安定剤、光安定剤、分散剤、滑剤などを添加することができる。安定剤を添加する場合は、通常0.001〜1重量%の範囲内で添加する。具体的には、立体障害フェノール系、リン系、アミン系等の安定剤などが使用できる。光安定剤を使用する場合は、通常0.001〜1重量%の範囲内で使用する。具体的には、立体障害アミンやベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系の光安定剤などが使用できる。分散剤や滑剤は、例えば無機微細粉末を分散させる目的で使用する。使用量は通常0.01〜4重量%の範囲内である。具体的には、シランカップリング剤、オレイン酸やステアリン酸等の高級脂肪酸、金属石鹸、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸ないしはそれらの塩等が使用できる。
【0024】
樹脂フィルム層(A)の肉厚は20〜500μm、好ましくは30〜400μmの範囲である。20μm未満では樹脂フィルム層(A)単体を取り扱う際に、帯電により手などに貼り付いてしまい作業性が悪いものとなる。又、被着体に貼り付けた際にシワになり易いため外観が劣るものとなる。500μmを越えてしまうと樹脂フィルム層(A)の自重が大きくなり静電気の力では自重を保持できなくなってしまう。
樹脂フィルム層(A)は、2層構造、3層以上の多層構造のものであってもよく、この多層構造の延伸軸数が、1軸/1軸、1軸/2軸、2軸/1軸、1軸/1軸/2軸、1軸/2軸/1軸、2軸/1軸/1軸、1軸/2軸/2軸、2軸/2軸/1軸、2軸/2軸/2軸であっても良い。樹脂フィルム層(A)の多層化により筆記性、印刷性、熱転写適性、耐擦過性、2次加工適性等の様々な機能の付加が可能となる。
特に、帯電性が優れた平板状の空孔を有する2軸延伸層と、表面強度が強い1軸延伸層を組み合わせた多層構造にすると、帯電性と剥離性の両点が向上する傾向がある。
【0025】
[多層化]
樹脂フィルム層(A)を多層構造にする場合は公知の種々の方法が使用できるが、具体例としては、フィードブロック、マルチマニホールドを使用した多層ダイス方式と、複数のダイスを使用する押出しラミネーション方式等が挙げられる。又、多層ダイスと押出しラミネーションを組み合わせて使用することも可能である。
【0026】
[延伸]
樹脂フィルム層(A)の延伸は、通常用いられている種々の方法のいずれかによって行うことができる。
延伸の温度は、樹脂フィルム層(A)に主に用いる熱可塑性樹脂のガラス転移点温度以上から結晶部の融点以下の範囲であって、当該熱可塑性樹脂に好適な公知の温度範囲内で行うことができる。具体的には、樹脂フィルム層(A)の熱可塑性樹脂がプロピレン単独重合体(融点155〜167℃)の場合は100〜166℃、高密度ポリエチレン(融点121〜136℃)の場合は70〜135℃であり、融点より1〜70℃低い温度である。また、延伸速度は20〜350m/分にするのが好ましい。
【0027】
延伸方法としては、キャスト成形フィルムを延伸する場合は、ロール群の周速差を利用した縦延伸、テンターオーブンを使用した横延伸、圧延、テンターオーブンとリニアモーターの組み合わせによる同時二軸延伸などを挙げることができる。又、インフレーションフィルムの延伸方法としては、チューブラー法による同時二軸延伸を挙げることができる。
延伸倍率は特に限定されず、樹脂フィルム層(A)に用いる熱可塑性樹脂の特性等を考慮して適宜決定する。例えば、熱可塑性樹脂としてプロピレン単独重合体ないしはその共重合体を使用する時には一方向に延伸する場合は約1.2〜12倍、好ましくは2〜10倍であり、二軸延伸の場合には面積倍率で1.5〜60倍、好ましくは4〜50倍である。その他の熱可塑性樹脂を使用する時には一方向に延伸する場合は1.2〜10倍、好ましくは2〜5倍であり、二軸延伸の場合には面積倍率で1.5〜20倍、好ましくは4〜12倍である。
【0028】
このようにして得られる積層フィルムは、次式、(1)で算出された空孔率が1〜70%、好ましくは10〜45%の微細な空孔をフィルム内部に多数有するものである。空孔が存在することにより、樹脂フィルム内の界面数が増加し、内部に電荷を保持しやすくなり空孔が存在しない樹脂フィルムと比較すると内部に電荷を蓄積できる性能が向上し、高湿などの環境下でも吸着性能の低下が少ないものとなる。
【数1】

【0029】
[支持体層(C)]
本発明の支持体層(C)は、樹脂フィルム層(A)から剥離層(B)を引き剥がす際に、剥離層(B)の破断や凝集破壊が発生しない様に剥離層(B)を補強するための層である。
支持体層(C)としては、紙、樹脂フィルム、合成紙などの公知のものが使用でき、剥離層(B)との相性により適宜選択される。又、支持体層(C)は剥離層(B)との接着性が優れているものであることが好ましい。ポリオレフィンフィルムなどの接着が難しい素材を支持体層(C)に使用する場合は、コロナ放電表面処理、フレームプラズマ処理や大気圧プラズマ処理などにより接着性を向上して使用することが望ましい。
【0030】
支持体層(C)の厚みは、好ましくは1〜500μm、より好ましくは5〜300μm、さらに好ましくは10〜200μm、特に好ましくは15〜150μmの範囲である。支持体層(C)の厚みが1μm未満では、剥離シート層(ii)が破断し易くなってしまい、剥離シート層(ii)の剥離性が劣るものとなる。500μmを超えると、剥離シート層(ii)の腰が高く剛度が高くなりすぎてしまい、ラベル層(i)との剥離の際にラベル層(i)側にシワが入ってしまったり、ラベル層(i)がカールしてしまい、ラベル層(i)の外観が損なわれ易く、またラベル層(i)の剥離帯電も充分には起こらず、吸着力の持続性が劣るものとなる傾向がある。
【0031】
[剥離層(B)]
本発明の剥離層(B)としては、樹脂フィルム層(A)との接着が弱く、支持体層(C)との接着性に優れたものであれば公知の接着剤を適宜使用できる。又、接着剤との剥離性を得るためには樹脂フィルム層(A)の剥離層(B)と接触する面にはコロナ表面処理などの処理を行なっていない面であることが望ましい。
静電吸着シート(iii)は、上記の樹脂フィルム層(A)と支持体層(C)とから形成する際、これらを貼合するために剥離層(B)を用い、これを介して積層する。貼合は、樹脂フィルム層(A)または支持体層(C)上に溶剤系接着剤あるいはホットメルト型接着剤等の接着剤を、塗工、散布、溶融押出ラミネート等の手法により剥離層(B)として設け、これを介してドライラミネート、または熱融着性フィルムや溶融押出フィルムを用いた溶融ラミネート等の通常の手法により行うことができる。
【0032】
ドライラミネートを行う場合の接着剤としては、例えば、エーテル樹脂、エステル樹脂、ウレタン樹脂、ウリア樹脂、アクリル樹脂、アミド樹脂、エポキシ樹脂等からなる樹脂成分を、従来公知の溶剤を用いてその相の中に溶解、分散、乳濁分散、希釈して、流動性があり塗工の可能な、溶液型やエマルジョン型の様態の液状の接着剤が代表的である。
エーテル樹脂の例としては、水、プロピレングリコール、エチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ビスフェノールA、エチレンジアミン等の低分子量ポリオールを開始剤として用いて、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、テトラヒドロフラン等のオキシラン化合物を重合させることにより得られるポリエーテルポリオール、より具体的にはポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等が挙げられる。
【0033】
エステル樹脂の例としては、多塩基酸と多価アルコールの脱水反応物が挙げられ、多塩基酸としては、イソフタル酸、テレフタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸ジメチルエステル、テレフタル酸ジメチルエステル、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、グルタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸などであり、これらを単独あるいは2種以上で使用し、多価アルコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、トリメチロールプロパン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、水素化ビスフェノールA、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2,2,4−トリメチルペンタン1,3−ジオール、ポリエチレングリコールなどであり、これらを単独あるいは2種以上使用して重合される。
【0034】
ウレタン樹脂の例としては、前述の多価アルコール、エーテル樹脂及び/又はエステル樹脂とイソシアネート化合物の縮合反応物が挙げられる。例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,4−ジイソシアネート−1−1−メチルシクロヘキサン、ジイソシアネートシクロブタン、テトラメチレンジイソシアネート、o−、m−もしくはp−キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ジメチルジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、ドデカンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネートまたはイソホロンジイソシアネート等の脂肪族イソシアネート、トリレン−2,4−ジイソシアネート、トリレン−2,6−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、3−メチルジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、m−もしくはp−フェニレンジイソシアネート、クロロフェニレン−2,4−ジイソシアネート、ナフタリン−1,5−ジイソシアネート、ジフェニル−4,4’−ジイソシアネート、3,3’−ジメチルジフェニル−1,3,5−トリイソプロピルベンゼン−2,4−ジイソシアネートカーボジイミド変性ジフェニルメタジイソシアネート、ポリフェニルポリメチレンポリイソシアネート等の芳香族イソシアネート、ジフェニルエーテルジイソシアネート等のイソシアネートモノマー類等が挙げられる。さらに、イソシアネート化合物は、分子量を上げると共に、接着力や安定性などの種々の性能を付与するために、多価アルコールで変性したポリイソシアネート化合物を使用することもできる。
【0035】
ウリア樹脂の例としては、アミン化合物と前記イソシアネート化合物の縮合体が挙げられる。アミン化合物の例としては、エチレンジアミン、1,2−プロピレンジアミン、1,3−プロピレンジアミン、1,4−ブタンジアミンもしくは、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン等の脂肪族アミン、イソホロンジアミン、ジシクロヘキシルメタンジアミン、メチルシクロヘキサンジアミン、イソプロピリデンビス−4−シクロヘキシルジアミン、1,4−シクロヘキサンジアミン等の脂環式ポアミン、ピペラジン、メチルピペラジン、アミノエチルピペラジン等の複素環式アミンが挙げられる。
【0036】
アクリル樹脂の例としては、アクリル化合物を有機過酸化物を重合開始剤として、重合する方法が代表的である。アクリル化合物の具体的な例としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリルニトリル、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸グリシジル等が挙げられ、これらを単独あるいは2種以上使用して重合される。
【0037】
アミド樹脂の例としては、アミン化合物と多塩基酸の縮合体が挙げられる。アミン化合物、多塩基酸共に前述の化合物を用いることが可能である。
エポキシ樹脂の例としては、多価フェノール類とエピハロヒドリン及び/又は低分子量エポキシ化合物を反応して得られるポリグリシジルエーテルの単独縮合や前述のエーテル樹脂、エステル樹脂、ウレタン樹脂、ウリア樹脂アクリル樹脂、アミド樹脂との縮合反応によって得られる。多価フェノール類の具体的な例としては、ビスフェノールA(2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン) 、ビスフェノールB( 2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン) 、ビスフェノールE( 2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン) 、ビスフェノールS(2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン) 、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルプロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−2−フェニルエタン、ビフェノール、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン等のビスフェノール類が挙げられる。
【0038】
これら剥離層(B)の塗工は、ダイコーター、バーコーター、コンマコーター、リップコーター、ロールコーター、ロッドコーター、カーテンコーター、グラビアコーター、スプレーコーター、ブレードコーター、リバースコーター、エアーナイフコーター、スライドホッパー等により行われる。その後必要によりスムージングを行い、乾燥工程を経て、剥離層(B)が形成される。
剥離層(B)は、乾燥後の厚みが好ましくは0.1〜100μm、より好ましくは0.2〜50μm、さらに好ましくは0.5〜25μmとなるように塗工される。0.1μm未満では、部分的に剥離層(B)が無い箇所が発性してしまい、ラベル層(i)の帯電が充分とならない可能性がある。一方100μmを超えてしまうと、剥離層(B)層内の乾燥状態と硬化状態が不均一となり、剥離層(B)層内での破壊が発性しやすくなりラベル層(i)のみが剥がせなくなる傾向がある。
【0039】
剥離層(B)の塗工は、樹脂フィルム層(A)の表面に該接着剤を塗工し、次いで、支持体層(C)を重ね、圧着ロールで加圧接着するか、あるいは支持体層(C)の裏面に該接着剤を塗工し、次いで、樹脂フィルム層(A)を重ね、圧着ロールで加圧接着すればよい。
ホットメルト型接着剤としては、低密度ポリエチレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体の金属塩(いわゆるサーリン)、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリブチラール系樹脂、ウレタン系樹脂などを例示できる。
ホットメルト型接着剤を使用する場合は、樹脂フィルム層(A)の表面上にビート塗工、カーテン塗工、スロット塗工等の方法で塗工し、次いで、支持体層(C)を重ね、圧着ロールで加圧接着するか、支持体層(C)の表面上にダイより溶融フィルム状に押し出してラミネートし、次いで、合成樹脂フィルムである樹脂フィルム層(A)を重ね、圧着ロールで加圧接着すればよい。
【0040】
剥離層(B)の形成は、樹脂フィルム層(A)との剥離性が得やすく、又、剥離の際に樹脂フィルム層(A)との間で剥離帯電が発生し易いものが好ましい。特に、樹脂フィルム層(A)に極性成分が少ないポリオレフィン系樹脂を使用する場合は、高極性樹脂成分を剥離層(B)に使用することにより、樹脂フィルム層(A)の剥離が容易で且つ帯電が高くなる。このように極性の異なる樹脂の接触により該樹脂に帯電が発生することは古くから知られており、このことは例えば「静電気ハンドブック」(静電気学会編、第1025〜1029頁)に記載されている。この様な高極性樹脂の剥離層(B)を形成する手法としては、塗工により剥離層(B)を形成するドライラミネートが適している。
【0041】
又、剥離層(B)は粘着力が低いことが必要である。本発明の静電吸着シート(iii)は、ラベル層(i)を掴み易くする為に、ラベル層(i)を部分的に切り取り剥離シート層(ii)のみを残して不要なラベル層(i)を除去しておくことも可能であるが、剥離層(B)の粘着性が高いとラベル層(i)を除去した部分がブロッキングしてしまい本発明の初期の性能を発揮しない。剥離層(B)の粘着力を低くしてブロッキングを防止する為に、架橋剤を使用した架橋性塗料を剥離層(B)に使用することが好ましい。剥離層(B)に使用する架橋剤としては、前述のイソシアネート系化合物、およびこれらの誘導体、又は前述の多価アルコールやエーテル樹脂或いはエステル樹脂とイソシアネート系化合物を反応させNCO基が末端になるように重縮合されたウレタン樹脂系イソシアネート、ポリグリシジルエーテルおよびこれらの誘導体、さらにメラミン樹脂などが挙げられるが、特にイソシアネート系化合物とウレタン樹脂系イソシアネートによる架橋は、室温でも反応可能であることから加熱処理が不要であり、静電吸着シート(iii)が加熱による変形を起こさないので特に好ましい。
【0042】
剥離層(B)に使用する架橋剤の添加量は、ラベル層(i)の剥離強度や剥離シート(ii)のブロッキングにより適宜決定することができるが、イソシアネート系化合物やウレタン樹脂系イソシアネートは単独でも縮合する特性があり、架橋剤の添加量を増すと剥離強度とブロッキングは共に低下する傾向にある。
剥離層(B)には、樹脂フィルム層(A)との剥離性を制御する為に、滑剤や無機及び/又は有機微細粉末を添加することも可能である。係る滑剤の例としては、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ポリエチレングリコールなどのアルコール系滑剤、ステアリン酸、エルシン酸、ベヘン酸などの脂肪酸系滑剤、パルミチン酸エチル、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸ステアリルなどの脂肪酸エステル系滑剤、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ヒドロキシステアリン酸リチウムなどの脂肪酸金属塩系滑剤、ラウリン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミドなどの脂肪酸アミド系滑剤、パラフィンワックス、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、モンタンワックス、カルナバワックス、蜜ロウ、イボタロウなどのワックス系滑剤などが挙げられる。無機微細粉末の例としては、炭酸カルシウム、焼成クレイ、シリカ、けいそう土、タルク、酸化チタン、硫酸バリウム、アルミナなどが挙げられる。有機微細粉末の例としてはポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ジメチルポリシロキサン、ポリテトラフルオロエチレンなどの樹脂の粒子が挙げられる。
【0043】
[記録層(D)]
本発明の静電吸着シート(iii)の樹脂フィルム層(A)には印刷インキとの密着性を向上させるために少なくとも片方の面に記録層(D)が設けられる。
係る印刷は、オフセット印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷、レタープレス印刷、スクリーン印刷、インクジェット記録方式、感熱記録方式、熱転写記録方式、電子写真記録方式などの公知の手法を用いることが可能であるが、印刷の精細性および小ロット対応可能であるといった点から、オフセット印刷、レタープレス印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷が好ましい。さらに印刷インキとしては、油性インキならびにUVインキが使用可能であるが、耐擦化性からUVインキが好ましい。
以上のことから記録層(D)は、高分子バインダー40〜100重量%と、無機微細粉末0〜60重量%からなる塗工層であることが望ましい。高分子バインダー50〜90重量%、無機微細粉末10〜50重量%がより望ましい。UVインキと同様の記録層(D)を設けることで、UVインキ密着性を向上させることができる。
樹脂フィルム層(A)上に記録層(D)を設ける手法は、直接樹脂フィルム層(A)に塗工により設けても良く、或いは予め別のフィルムに記録層(D)を設けて、樹脂フィルム層(A)上にラミネートしても良い。
【0044】
高分子バインダーとしては、基材である熱可塑性樹脂フィルムとの密着性を有し、かつUVインキなどのインキとの密着性を向上させる目的で選択されたものが適宜使用される。
高分子バインダー具体例としては、ポリエチレンイミン、炭素数1〜12のアルキル変性ポリエチレンイミン、ポリ(エチレンイミン−尿素)およびポリアミンポリアミドのエチレンイミン付加物、およびポリアミンポリアミドのエピクロルヒドリン付加物等のポリエチレンイミン系重合体、アクリル酸アミド−アクリル酸エステル共重合体、アクリル酸アミド−アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル共重合体、ポリアクリルアミドの誘導体、オキサゾリン基含有アクリル酸エステル系重合体等のアクリル酸エステル系重合体、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール等、加えてポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニリデン、塩素化ポリプロピレン、アクリルニトリル−ブタジエン共重合体、ポリエステル等の有機溶剤希釈樹脂または水希釈樹脂等を用いることができる。これらの内で好ましくは、ポリエチレンイミン系重合体およびポリウレタン、ポリアクリル酸エステル系共重合体等である。
【0045】
無機微細粉末としては、炭酸カルシウム、焼成クレイ、酸化チタン、硫酸バリウム、シリカ、珪藻土等を適宜使用することができる。
樹脂フィルム層(A)にラミネートにより記録層(D)を設ける場合は、予め記録層を作成した他フィルムを作成し、樹脂フィルム層(A)にラミネート加工することが望ましい。
記録層(D)の膜厚は、0.01〜50μmが好ましく、0.02〜30μmであることがより好ましい。0.01μm未満の膜厚では記録層(D)の均一性を維持することが難しく、インキの密着性が低下する場所が発生する。一方50μmを超えてしまうと印刷層が重くなり樹脂フィルム層(A)の静電気による吸着力では、自重を支えることができず剥れ落ちやすくなってしまい本発明の所期の性能を発現しない。
【0046】
[帯電量の測定]
本発明の静電吸着シート(iii)は、ラベル層(i)と剥離シート層(ii)とを剥離した際に生じる剥離帯電により吸着力を発揮する。
特にラベル層(i)の吸着力は、ラベル層(i)の表面、および内部に蓄えた電荷により発揮される。この吸着力は、表面電位を測定することにより概略知ることができる。表面電位測定器としては、例えば「(株)キーエンス製、高精度静電気センサSK」や「トレック・ジャパン(株)製、高圧高速表面電位計 モデル341B」などが用いられる。測定は気温、湿度の影響を受けないように一定の環境下で行う必要がある。又、周囲物品の影響を受けないように、剥離シート層(ii)を剥離した後のラベル層(i)を中吊にした状態で行う。
表面電位はラベル層(i)自体の材質、厚み、密度や剥離層(B)と支持体層(C)の材質により変化する。一般に電荷量[C]、静電容量[Q]と電位[V]の関係はQ=CVであり、電荷量[C]が同一であってもラベル層(i)の静電容量[Q]が高い程、電位[V]は低い値となる。
【0047】
本発明のラベル層(i)の剥離後の表面電位は、気温23℃、湿度50%RHの環境下において通常−1〜−30KVの電位を示す。また同表面電位は、気温40℃、湿度80%RHの環境下では通常0〜−20KVの電位を示す。
高湿度下での表面電位はラベル層(i)から逃げ易く、0KVとなる場合もあるが、同環境下で実際にラベル層(i)を壁などに貼り付けた場合でも、強い吸着力と高い持続性を発揮する。このことから、本発明におけるラベル層(i)の吸着力は、ラベル層(i)の表面の電荷は元より、ラベル層(i)の内部の電荷の影響を大きく受けていることが推測できる。この場合は表面電位だけではラベル層(i)の性能を充分に計り得ないが、現状としてラベル層(i)内部に蓄積された電荷を測定する具体的な技術や手法がないため、本発明におけるラベル層(i)の剥離後の帯電量の測定は、一義的に表面電位の測定によって置き替えている。
【0048】
[ガーレ柔軟度]
本発明のガーレ柔軟度は、JAPAN TAPPI No.40:2000に準拠し、温度23℃、湿度50%RHの環境下でMD方向とTD方向それぞれを測定する。本発明のラベル層(i)のガーレ柔軟度は、好ましくは5〜1000mgf、より好ましくは5〜700mgf、更に好ましくは5〜400mgfであり、剥離シート層(ii)のガーレ柔軟度は、好ましくは1〜500mgf、より好ましくは1〜300mgf、更に好ましくは1〜200mgfである。又、ラベル層(i)に対する剥離シート層(ii)のガーレ柔軟度の比が好ましくは0.04〜0.95倍、より好ましくは0.05〜0.90倍である。ラベル層(i)のガーレ柔軟度が5mgf未満では、腰が弱いためラベルとしての取り扱いが困難となりシワになり易く外観を損なう。1000mgfを超えてしまうと腰が強いため、小さなカールが発生しても吸着力の弱い静電吸着では被着体に均一に貼りつかず、吸着力の持続性が劣るものとなってしまう。剥離シート(ii)のガーレ柔軟度が1mgf未満では剥離シート(ii)が掴みづらく、ラベル層(i)との剥離の際に切欠が作れないものとなってしまう。500mgfを超えると、剥離の際にラベル層(i)に歪が発生し、ラベル層(i)にカールやシワが発生し、ラベルとしての機能が損なわれる。又、ラベル層(i)に対する剥離シート層(ii)のガーレ柔軟度の比が0.04倍未満では、ラベル層(i)と剥離シート層(ii)の剥離の際に剥離層(ii)の剥離角が大きくなり剥離が安定せず、ラベル層(i)に剥離跡が残ってしまい外観を損なうものとなる。一方、0.95倍を超えるとラベル層(ii)と剥離シート層(ii)の剥離の際に、ラベル層(ii)の剥離角が大きくなり、剥離したラベル層(ii)がカールしてしまうか、或いは、シワが発生する為、ラベルとしての機能を損なわれる。
【0049】
[表面抵抗率]
本発明の表面抵抗率は、23℃、相対湿度50%の条件下で、抵抗値が1×10Ω以上の場合は、JIS−K−6911に準拠し2重リング法の電極を用いて測定する。
本発明の静電吸着シート(iii)の記録層(D)の表面抵抗率は1×1013〜9×1017Ωであることが好ましく、1×1013〜9×1015Ωであることがより好ましい。記録層(D)の表面抵抗率が1×1013Ω未満では、ラベル層(i)表面から静電気が抜け易くなってしまい、吸着力の持続性が劣るものとなる。9×1017Ωを超えるものは、表面張力が低くなる傾向があり、インクの密着性が得られず本発明の所期の性能が得られないものとなる。
【0050】
[水の接触角]
本発明の水の接触角は、23℃、相対湿度50%の条件下で接触角計(協和界面化学(株)製、型式CA−D型)を用いてイオン交換水の接触角を測定することによって求めた値である。
本発明の記録層(D)の水の接触角は50〜110度、好ましくは60〜110度、更に好ましくは80〜110度の範囲である。記録層(D)の水の接触角が110度を超えてしまうとインクの密着性が得られず印刷が剥げ易い傾向にある。又、50度未満では水との相性が良いことから空気中の水分を吸収する現象が発生し、高湿度下では帯電性能が低下してしまい吸着力が維持できない傾向にある。
【0051】
[ブロッキング]
静電吸着シート(iii)から剥離シート層(ii)を剥がし、幅150mm、長さ200mmのサイズにし、恒温室(温度23℃、相対湿度50%)に12時間以上保管した後、剥離シート層(ii)2枚を支持体層(C)と剥離層(B)が接する様に重ね合わせて10MPaの圧力で5分間保持した後、幅10mm、長さ150mmに切り取り、島津製作所製引張試験機(AUTOGRAPH)を使用し、引張速度300mm/分にて、180゜の角度で剥離シート(ii)同士を剥離させ、安定している時の応力をロードセルにより測定する。本発明の剥離シート(ii)のブロッキングは、好ましくは20g/cm以下であり、より好ましくは15g/cm以下であり、更に好ましくは10g/cm以下である。ブロッキングが20g/cmを超えると、ラベル層(i)を掴み易くする為に、ラベル層(i)を部分的に切り取り剥離シート層(ii)のみを残して不要なラベル層(i)を除去した場合に静電吸着シート(iii)同士の貼り付きが発生してしまい、ラベルとしての機能が損なわれる。
【0052】
[水蒸気透過係数]
JIS−Z−0208に準拠して、カップ法により、40℃、90%RHにて測定した。得られた透湿度(g/(m・24hr))とフィルムの厚み(mm)とから、水蒸気透過係数(g・mm/(m・24hr))を求める。
本発明の静電吸着シート(iii)のラベル層(i)の水蒸気透過係数は、0.01〜2.50、好ましくは0.02〜1.50、更に好ましくは0.05〜1.00、特に好ましくは0.10〜0.70の範囲内である。水蒸気透過係数が2.50を超えると高湿度下での帯電性の低下が激しく、フィルムの吸着性能の低下が大きく吸着ラベルとして本発明の所期の性能を発揮しない。一方、水蒸気透過率を0.01未満のラベル層(i)を得る為には、樹脂フィルム層(A)に特殊な樹脂を使用する必要があり、技術的に困難なため実現性が乏しい。
【0053】
[剥離強度]
静電吸着シート(iii)を、恒温室(温度23℃、相対湿度50%)に12時間以上保管した後、幅10mm、長さ150mmに切り取り、樹脂フィルム層(A)を剥離層(B)から剥離させてサンプル長の半分程度まで剥離させる。島津制作所製引張試験機(AUTOGRAPH)を使用し、引張速度300mm/分にて、180゜の角度で樹脂フィルム層(A)と支持体層(C)を剥離させ、安定している時の応力をロードセルにより測定する。本発明の剥離強度は、1〜50g/cmであり、好ましくは1〜30g/cm、より好ましくは1〜20g/cm、特に好ましくは2〜10g/cmである。剥離強度が1g/cm未満では、印刷、印字、断裁等の二次加工の工程で剥離が発生してしまう欠点がある。50g/cm幅を超えては、樹脂フィルム層(A)のみを剥離できないか、剥離した樹脂フィルム層(A)がカールしてしまうか、樹脂フィルム層(A)に剥離シワが発生してしまい外観を損なうものとなる。
【0054】
[印刷記録物]
本発明の静電吸着シート(iii)を使用した印刷記録物としては、POPカード(ポスター、ステッカー、ディスプレイ等)、店舗案内(パンフレット、会社案内、品書き、メニュー等)、下敷き(ランチマット、テーブルマット、文房具用品等)、マニュアル(職務、作業、操作等の各種マニュアル、工程表、時間割等)、チャート類(海図、天気図、図表、罫線表等)、カタログ、地図(海図、路線図、屋外用地図等)、店頭価格表、登山ガイド、名刺、迷子札、料理のレシピ、案内板(売り場案内、方向・行き先案内、お菓子・食品等)、スケジュール表、ロード・サイン(葬式・住宅展示場所等)、室名札、校内記録表、表示板(立ち入り禁止、林道作業等の)、区画杭、表札、カレンダー(画像入り)、簡易ホワイトボード、マウスパッド、包装資材(包装紙、箱、袋等)、コースター、等を例示することができ、何れも利用可能である。特に屋内使用を前提とした用途に好適に用いることができる。
【実施例】
【0055】
以下に実施例、比較例および試験例を用いて、本発明を更に具体的に説明する。
以下に示す材料、使用量、割合、操作等は、本発明の精神から逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例に制限されるものではない。なお、以下に記載される%は、特記しない限り重量%である。
本発明の樹脂フィルム層(A)の製造例に使用する熱可塑性樹脂を表1にまとめて示す。
【0056】
【表1】

【0057】
[樹脂フィルム層(A)の製造例1]
熱可塑性樹脂組成物aと熱可塑性樹脂組成物bを230℃に設定した3台の押出機にてそれぞれ混練した後、250℃に設定した押出ダイに供給し、ダイ内で積層したものをシート状に押し出し、これを冷却装置により冷却して無延伸シートを得た。この無延伸シートを145℃に加熱して縦方向に4.5倍延伸した。次いで、この4.5倍延伸シートを60℃まで冷却し、テンターオーブンを用いて再び約150℃に加熱して横方向に8.0倍延伸した後、160℃に調整した熱セットゾーンにより熱処理を行った。その後60℃に冷却した後、片面にコロナ放電表面処理し、次いで耳部をスリットし、3層〔5/30/5μm:延伸層構成(2軸/2軸/2軸)〕構造の肉厚40μmの樹脂フィルム層(A)を得た。
【0058】
[樹脂フィルム層(A)の製造例2]
熱可塑性樹脂組成物bを230℃に設定した押出機にて混練した後、250℃に設定した押出ダイに供給しシート状に押し出し、これを冷却装置により冷却して無延伸シートを得た。この無延伸シートを140℃に加熱して縦方向に4.5倍延伸した。熱可塑性樹脂組成物cを250℃に設定した押出機で混練した後、シート状に押し出して上で調整した4.5倍延伸フィルムの表面及び裏面それぞれに積層し、3層構造の積層フィルムを得た。次いで、この3層構造の積層フィルムを60℃まで冷却し、テンターオーブンを用いて再び約150℃に加熱して横方向に8倍延伸した後、160℃に調整した熱セットゾーンにより熱処理を行った。その後60℃に冷却した後、片面にコロナ放電処理し、次いで耳部をスリットし、3層〔10/30/10μm:延伸層構成(1軸/2軸/1軸)〕構造の肉厚50μmの樹脂フィルム層(A)を得た。
【0059】
[樹脂フィルム層(A)の製造例3]
熱可塑性樹脂組成物cを230℃に設定した押出機にて混練した後、250℃に設定した押出ダイに供給しシート状に押し出し、これを冷却装置により冷却して無延伸シートを得た。この無延伸シートを150℃に加熱して縦方向に4倍延伸した。熱可塑性樹脂組成物dを250℃に設定した押出機で混練した後、シート状に押し出して上で調整した4倍延伸フィルムの表面及び裏面それぞれに積層し、3層構造の積層フィルムを得た。次いで、この3層構造の積層フィルムを60℃まで冷却し、テンターオーブンを用いて再び約150℃に加熱して横方向に9倍延伸した後、160℃に調整した熱セットゾーンにより熱処理を行った。その後60℃に冷却した後、片面にコロナ放電処理し、次いで耳部をスリットし、3層〔10/60/10μm:延伸層構成(1軸/2軸/1軸)〕構造の肉厚80μmの樹脂フィルム層(A)を得た。
【0060】
[樹脂フィルム層(A)の製造例4]
熱可塑性樹脂組成物aを230℃に設定した押出機にて混練した後、250℃に設定した押出ダイに供給しシート状に押し出し、これを冷却装置により冷却して無延伸シートを得た。この無延伸シートを155℃に加熱して縦方向に3.5倍延伸した。熱可塑性樹脂組成物aを250℃に設定した押出機で混練した後、シート状に押し出して上で調整した3.5倍延伸フィルムの表面及び裏面それぞれに積層し、3層構造の積層フィルムを得た。次いで、この3層構造の積層フィルムを60℃まで冷却し、テンターオーブンを用いて再び約155℃に加熱して横方向に7倍延伸した後、160℃に調整した熱セットゾーンにより熱処理を行った。その後60℃に冷却した後、片面にコロナ放電処理し、次いで耳部をスリットし、3層〔10/40/10μm:延伸層構成(1軸/2軸/1軸)〕構造の肉厚60μmの樹脂フィルム層(A)を得た。
【0061】
[樹脂フィルム層(A)の製造例5]
熱可塑性樹脂組成物bを230℃に設定した押出機にて混練した後、250℃に設定した押出ダイに供給しシート状に押し出し、これを冷却装置により冷却して無延伸シートを得た。この無延伸シートを135℃に加熱して縦方向に4倍延伸した。熱可塑性樹脂組成物dを250℃に設定した押出機で混練した後、シート状に押し出して上で調整した4倍延伸フィルムの表面及び裏面それぞれに積層し、3層構造の積層フィルムを得た。次いで、この3層構造の積層フィルムを60℃まで冷却し、テンターオーブンを用いて再び約150℃に加熱して横方向に9倍延伸した後、160℃に調整した熱セットゾーンにより熱処理を行った。その後60℃に冷却した後、片面にコロナ放電処理し、次いで耳部をスリットし、3層〔30/80/30μm:延伸層構成(1軸/2軸/1軸)〕構造の肉厚140μmの樹脂フィルム層(A)を得た。
【0062】
[樹脂フィルム層(A)の製造例6]
熱可塑性樹脂組成物dを230℃に設定した押出機にて混練した後、250℃に設定した押出ダイに供給しシート状に押し出し、これを冷却装置により冷却して無延伸シートを得た。この無延伸シートを145℃に加熱して縦方向に4倍延伸した。熱可塑性樹脂組成物eを250℃に設定した押出機で混練した後、シート状に押し出して上で調整した4倍延伸フィルムの表面及び裏面それぞれに積層し、3層構造の積層フィルムを得た。次いで、この3層構造の積層フィルムを60℃まで冷却し、テンターオーブンを用いて再び約140℃に加熱して横方向に8倍延伸した後、160℃に調整した熱セットゾーンにより熱処理を行った。その後60℃に冷却した後、片面にコロナ放電処理し、次いで耳部をスリットし、3層〔15/50/15μm:延伸層構成(1軸/2軸/1軸)〕構造の肉厚80μmの樹脂フィルム層(A)を得た。
【0063】
[樹脂フィルム層(A)の製造例7]
熱可塑性樹脂組成物aを230℃に設定した押出機にて混練した後、250℃に設定した押出ダイに供給しシート状に押し出し、これを冷却装置により冷却して無延伸シートを得た。この無延伸シートを145℃に加熱して縦方向に4.5倍延伸した。熱可塑性樹脂組成物bを250℃に設定した押出機で混練した後、シート状に押し出して上で調整した4.5倍延伸フィルムの表面及び裏面それぞれに積層し、3層構造の積層フィルムを得た。次いで、この3層構造の積層フィルムを60℃まで冷却し、テンターオーブンを用いて再び約150℃に加熱して横方向に8倍延伸した後、160℃に調整した熱セットゾーンにより熱処理を行った。その後60℃に冷却した後、片面にコロナ放電処理し、次いで耳部をスリットし、3層〔5/20/5μm:延伸層構成(1軸/2軸/1軸)〕構造の肉厚30μmの樹脂フィルム層(A)を得た。
【0064】
各製造例で作成した樹脂フィルム(A)の物性をまとめて表2に示す。
【表2】

【0065】
本発明の各実施例、比較例に用いた材料を表3にまとめて示す。
【表3】

【0066】
[記録層の製造例1]
ポリアミド・エピクロロヒドリン樹脂溶液(星光PMC(株)誠、商品名:WS4002)を水で希釈して固形分を1%に調整し、記録層用の塗工溶液を得た。
多孔性ポリオレフィンフィルム層の製造例1〜7の片面(放電処理を施した面)に、この塗工溶液を乾燥固形分が0.05g/mとなるように塗工し、その後80℃で5分間乾燥して、記録層を有するラベル層(i)を形成した。
【0067】
[記録層の製造例2]
2−ヒドロキシエチルメタクリレート15重量部、メチルメタクリレート50重量部、エチルアクリレート35重量部およびトルエン100重量部を、攪拌機、環流冷却管及び温度計を装着した三ツ口フラスコに仕込み、窒素置換後、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル0.6重量部を開始剤として導入し80℃で4時間重合させた。得られた溶液は、水酸基価65の水酸基含有メタクリル酸エステル重合体の50%トルエン溶液であった。次いで、この溶液100重量部に、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体(新第1塩ビ(株)製、商品名:ZEST C150ML)20%メチルエチルケトン溶液を30重量部、ヘキサメチレンジイソシアネート(日本ポリウレタン工業(株)製、商品名:コロネートHL)75%酢酸エチル溶液を20重量部、平均粒径1.5μmの重質炭酸カルシウム粉末(備北粉化工業(株)製、商品名:ソフトン1500)を20重量部で配合した。この混合物に酢酸ブチルを添加して固形分を35%に調整し、記録層用の塗工溶液を得た。
多孔性ポリオレフィンフィルム層の製造例1〜2の片面(放電処理を施した面)に、この塗工溶液を乾燥固形分が2g/mとなるように塗工し、その後80℃で60分間乾燥して、記録層を有するラベル層(i)を形成した。
【0068】
[記録層の製造例3]
肉厚12μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡績(株)製、商品名:エスペットフイルム E5100)に、記録層の製造例2で作成した塗工溶液を乾燥固形分が2g/mとなるように塗工し、その後80℃で1時間硬化させて、塗工層を有する記録層フィルムを形成した。多孔性ポリオレフィンフィルム層の製造例1〜2の片面(放電処理を施した面)に、接着層例1の塗料を乾燥後の塗工量が3g/mとなるように塗工し、その後40℃で1分間乾燥した後に、記録層フィルムを貼り合わせ記録層を有するラベル層(i)を形成した。
【0069】
[実施例1〜10、比較例1〜5]
本発明の実施例1〜10および比較例1〜5の積層方法および下記試験例に基づく評価結果を表4にまとめて示す。尚、各実施例と比較例の積層フィルムは上記の製造例、および表3の材料を用いて、次の手順にて作成した。
各ラベル層(i)の記録層を有していない面に接着層例の塗料を乾燥後の塗工量が表4に記載の塗工量となる様に塗工し、その後40℃で1分間乾燥した後に、剥離シート層(ii)を貼り合わせ静電吸着シート(iii)を形成した。
【0070】
【表4】

【0071】
[試験例]
(インキ密着性)
静電吸着シート(iii)を23℃の温度、相対湿度50%の雰囲気下で1日間保管した後、静電吸着シート(iii)の記録層(D)面に印刷機「RI−III型印刷適性試験機」((株)明製作所社製、商品名)にて印刷インキ「ベストキュアー161(墨)」((株)T&K TOKA社製、商品名)を1.5g/m 2の厚さとなるように印刷し、アイグラフィック(株)製メタルハライド灯(80W/cm)下でUV照射強度0.04W/cm2でUV照射し、再び23℃の温度、相対湿度50%の雰囲気下で1日間保管した後、密着強度測定機「インターナルボンドテスター」(熊谷理機工業(株)社製、商品名)にてインキの密着強度を測定し、密着強度が1.0kg・cm以上のものを合格とした。
○(合格) :密着強度が1.0kg・cm以上
×(不合格):密着強度が1.0kg・cm未満
【0072】
(抜き適性)
A5サイズにした静電吸着シートの中央部分をロータリーダイカッター平抜き機「R・D・C」((株)塚谷刃物製作所製、商品名)と「ピナクルダイ」((株)塚谷刃物製作所製)を使用して長手89mm×幅57mmにハーフカットを行ないラベル層のみの切り抜きが出来るかを下記基準より評価した。
○(良好):ラベル層(i)のみ切り抜き可能。
×(不良):剥離シート層(ii)まで切れてしまう。
【0073】
(サバキ性)
抜き適性で作成したハーフカット済みの静電吸着シートの周囲部分のラベル層を手で剥がして、ラベル層が無い部分と残っている部分を持つ静電吸着シートを100枚作成し、温度40℃、湿度80%の環境で積み重ねた状態で保管した後に、静電吸着シートを手で捌けるかを評価した。
○(良好) :100枚全てが貼り付かず、全て捌ける。
△(やや良好):貼りついた状態のものが50枚未満である。
×(不良) :50枚以上が張り付いてしまっている。
【0074】
(剥離性)
静電吸着シート(iii)をラベル層(i)と剥離シート層(ii)の界面で剥離し、剥離したラベル層のカール状態と剥離跡の有無を確認し、以下の基準で評価した。
○(良好) :ラベル層(i)にカールもシワも発生しない。
△(やや良好):ラベル層(i)がカールする。或いは、剥離跡が残る。
×(不良) :ラベル層(i)が円筒状にカールしラベルとして使用できない。
【0075】
(吸着力の耐久性)
抜き適性にて作成した静電吸着シート(iii)のラベル層10枚を鏡面アルミ板に静電吸着で貼り付け、温度40℃湿度80%の環境にアルミ板を垂直に立てた状態で保管し、一ヶ月後に状態を観察して以下の基準で評価した。
○(良好) :全てのサンプルがはじめの状態を維持している。
△(やや良好):はじめの状態を維持していないサンプルが1枚以内。
×(不良) :2枚以上のサンプルが始めの状態を維持していない。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明の静電吸着シート(iii)を使用した印刷記録物は、POPカード(ポスター、ステッカー、ディスプレイ等)、店舗案内(パンフレット、会社案内、品書き、メニュー等)、下敷き(ランチマット、テーブルマット、文房具用品等)、マニュアル(職務、作業、操作等の各種マニュアル、工程表、時間割等)、チャート類(海図、天気図、図表、罫線表等)、カタログ、地図(海図、路線図、屋外用地図等)、店頭価格表、登山ガイド、名刺、迷子札、料理のレシピ、案内板(売り場案内、方向・行き先案内、お菓子・食品等)、スケジュール表、ロード・サイン(葬式・住宅展示場所等)、室名札、校内記録表、表示板(立ち入り禁止、林道作業等の)、区画杭、表札、カレンダー(画像入り)、簡易ホワイトボード、マウスパッド、包装資材(包装紙、箱、袋等)、コースター、等の用途に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0077】
11 静電吸着シート(iii)
2、12 ラベル層(i)
3、13 剥離シート層(ii)
4、14 樹脂フィルム層(A)
5、15 剥離層(B)
6、16 支持体層(C)
7、17 記録層(D)
18 記録層作成用フィルム層
19 記録層貼合用接着層
a 剥離可能な面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
片面に記録層(D)を備えた樹脂フィルム層(A)を含むラベル層(i)と、剥離層(B)および支持体層(C)を含む剥離シート層(ii)とを、樹脂フィルム層(A)と剥離層(B)が接触するように積層した積層体からなる静電吸着シートであって、ラベル層(i)と剥離シート層(ii)との剥離強度が1〜50g/cmであり、且つラベル層(i)のガーレ柔軟度を1とした場合の剥離シート層(ii)のガーレ柔軟度の比が0.04〜0.95であることを特徴とする静電吸着シート(iii)。
【請求項2】
剥離シート層(ii)から剥離したラベル層(i)が、剥離帯電により被着体に吸着可能となることを特徴とする請求項1に記載の静電吸着シート(iii)。
【請求項3】
樹脂フィルム層(A)が、無機微細粉末及び/又は有機フィラー3〜70重量%、およびポリオレフィン系樹脂及び/又は及び官能基含有ポリオレフィン系樹脂97〜30重量%を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の静電吸着シート(iii)。
【請求項4】
樹脂フィルム層(A)が、少なくとも一軸方向に延伸されていることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の静電吸着シート(iii)。
【請求項5】
樹脂フィルム層(A)の下記式(1)で示される空孔率が、1〜70%であることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の静電吸着シート(iii)。
【数1】

【請求項6】
ラベル層(i)の水蒸気透過係数が、0.01〜2.50g・mm/(m・24hr)であることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の静電吸着シート(iii)。
【請求項7】
樹脂フィルム層(A)が多層構造であって、その少なくとも一層が2軸方向に延伸されていることを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の静電吸着シート(iii)。
【請求項8】
剥離層(B)が、エーテル樹脂、エステル樹脂、ウレタン樹脂、ウリア樹脂、アクリル樹脂、アミド樹脂、エポキシ樹脂の何れか1種類以上を含むことを特徴とする請求項1〜7の何れかに記載の静電吸着シート(iii)。
【請求項9】
剥離層(B)が、塗工法により形成されていることを特徴とする請求項1〜8の何れかに記載の静電吸着シート(iii)。
【請求項10】
支持体層(C)が、紙、樹脂フィルム、合成紙の何れかからなることを特徴とする請求項1〜9の何れかに記載の静電吸着シート(iii)。
【請求項11】
記録層(D)が、高分子バインダー40〜100重量%と無機微細粉末0〜60重量%からなることを特徴とする請求項1〜10の何れかに記載の静電吸着シート(iii)。
【請求項12】
記録層(D)表面の表面抵抗率が、1×1013〜9×1017Ωであることを特徴とする請求項1〜11の何れかに記載の静電吸着シート(iii)。
【請求項13】
ラベル層(i)のガーレ柔軟度が5〜1000mgfであり、且つ剥離シート層(ii)のガーレ柔軟度が1〜500mgfであることを特徴とする請求項1〜12の何れかに記載の静電吸着シート(iii)。
【請求項14】
ラベル層(i)の厚みが20〜500μmであり、且つ剥離シート層(ii)の厚みが1〜500μmであることを特徴とする請求項1〜13に記載の静電吸着シート(iii)。
【請求項15】
記録層(D)の厚みが0.01〜50μmであり、樹脂フィルム層(A)の厚みが20〜500μmであり、剥離層(B)の厚みが0.1〜100μmであり、且つ支持体層(C)の厚みが1〜500μmであることを特徴とする請求項1〜14に記載の静電吸着シート(iii)。
【請求項16】
剥離シート層(ii)同士を重ね合わせて測定したブロッキング値が、20g/cm以下であることを特徴とする請求項1〜15に記載の静電吸着シート(iii)。
【請求項17】
請求項1〜16のいずれかに記載の静電吸着シート(iii)を用いた印刷記録物。
【請求項18】
請求項17に記載の印刷記録物より剥離シート層(ii)を剥離したラベル層(i)を用いたラベル。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−266474(P2010−266474A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−115076(P2009−115076)
【出願日】平成21年5月12日(2009.5.12)
【出願人】(000122313)株式会社ユポ・コーポレーション (73)
【Fターム(参考)】