説明

静電容量式タッチ部材及びその製造方法、並びに静電容量式タッチ検出装置

【課題】 フレキシブルな形状または立体的な形状を有し、光透過性の検出電極を有する静電容量式タッチ部材及びその製造方法、並びにその静電容量式タッチ部材を備えた静電容量式タッチ検出装置を提供すること。
【解決手段】 絶縁性材料からなり、フレキシブル形状または立体的形状を有する、フィルム状または板状の支持体1と、支持体1の一方の面の少なくとも一部に配置された、カーボンナノチューブなどのカーボンナノ線状構造体を含有する光透過性導電層からなる検出電極2と、検出電極2から引き出された引き出し配線3とを有する静電容量式タッチ部材10を作製する。このタッチ部材10と、引き出し配線3を介して検出電極2に電気的に接続され、タッチ面4への人体の接近又は接触による静電容量の変化を検出する静電容量検出回路60とで、静電容量式タッチ検出装置を構成する。検出電極2を保護膜で被覆し、保護膜の表面をタッチ面にしてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブルな形状または立体的な形状を有する静電容量式タッチ部材及びその製造方法、並びにその静電容量式タッチ部材を備えた静電容量式タッチ検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子機器への入力装置として、タッチパネルが多方面で利用されている。タッチパネルは、指などの人体の一部やペン先などの接触物体を接近または接触させるタッチ面を有するタッチ部材、および、上記接近または接触によって指示されたタッチ面上のタッチ位置に応じた電気信号を発生する制御回路部などによって構成される。多くの場合、タッチパネルは、タッチ部材が画像表示装置の前面に配置され、使用者は、タッチ面を透過してきた表示画像に基づいてタッチ位置を決定するように構成されている。この場合、タッチ部材は、画像表示装置の表示画像を透過させるように、光透過性であることが必要である。
【0003】
タッチパネルには様々な方式が開発されている。このうち、静電容量式タッチパネルは、人体の一部、例えば指などの接触物体が、タッチ面に接近または接触したことを感知する検出電極を備えたタッチ部材、および、上記接近または接触によって生じる、接触物体と検出電極との間の静電容量の変化を検出し、タッチ位置に応じた電気信号を発生する検出回路部などによって構成される。上述したように、タッチ部材を画像表示装置の前面に配置する場合には、検出電極は光透過性であることが必要である。
【0004】
静電容量式タッチパネルは、タッチ部材の構成が簡素であるため軽量化および光透過性の向上に有利であること、運動部分がないため耐久性が高いこと、多点入力が可能であることなど、優れた特徴を有する。従って、静電容量式タッチパネルは、今後、さらなる普及が進むものと予想されている。
【0005】
現在実用化されているタッチパネルは、タッチ面が平面の平板パネルにほぼ限定されている。しかし、三次元画像表示装置や車載用電子機器やゲーム機器などにおいては、機器の操作性を高めるために、タッチ面が曲面であるタッチパネル(以下、曲面タッチパネルと略称する。)が望まれている。そこで、後述の特許文献1には、曲面状のタッチ面を有する静電容量式タッチパネルと、タッチパネルの背面に画像を投射する画像投射部とを備えた、表示装置が提案されている。
【0006】
図11(a)は、特許文献1に示されているタッチパネル付き表示装置100の構成を示す斜視図である。表示装置100は、発光ダイオード(LED)101、液晶パネル102、および曲面タッチパネル103を備えている。液晶パネル102は、透過型の液晶パネルであり、LED101から出射された光は、液晶パネル102を透過して、曲面タッチパネル103に到達する。LED101と液晶パネル102とは、図示省略した駆動回路から供給された映像信号に基づき、表示画像を曲面タッチパネル103の背面に投射する画像投射部として構成されている。曲面タッチパネル103の背面には光散乱層が設けられており、光散乱層に到達した光は散乱され、曲面タッチパネル103の背面に表示画像を形成する。
【0007】
図11(b)は、曲面タッチパネル103の静電容量式タッチ部材110の構造を示す断面図である(但し、背面の光散乱層は図示省略した。)。タッチ部材110は、凸形に形成された曲面基板111に、透明導電膜112と保護膜113とが順に積層されたものである。曲面基板111は、例えば、厚さが1〜2mm程度のガラス基板や透明樹脂基板などである。透明導電膜112は、例えばインジウムスズ酸化物(ITO)などからなり、スパッタリング法などによって曲面基板111上に成膜される。保護膜113は、例えば酸化シリコンや窒化シリコンや透明樹脂などの絶縁性物質などからなり、スパッタリング法やCVD法(化学気相成長法)や塗布法などによって、透明導電膜112上に成膜される。タッチ部材110では、透明導電膜112に積層された保護膜113の表面がタッチ面114として用いられる。曲面基板111の、タッチ面114がある側とは反対側の面(背面)115に、図示省略した光散乱層が配置されている。
【0008】
曲面タッチパネル103は静電容量式タッチパネルとして構成されており、透明導電膜112が検出電極として機能する。図示省略したが、透明導電膜112は複数のリード線によって検出回路部に接続されている。指などの接触物体が、タッチ部材110のタッチ面114に接近または接触すると、接触物体と透明導電膜112との間に生じる静電容量によってリード線を流れる電流が変化する。この電流に基づいて検出回路部でタッチ面114上での二次元タッチ位置が算出され、タッチ位置に応じた電気信号が出力される。二次元タッチ位置が正確に算出されるためには、透明導電膜112の外周部に設けられるリード線は3本以上が必要である。
【0009】
特許文献1には、タッチパネルには、静電容量方式以外にも、抵抗膜方式、電磁誘導方式、光学方式、超音波方式などの方式があるが、静電容量方式以外の方式は曲面タッチパネルには適していないと述べられており、下記の理由が記載されている。
【0010】
抵抗膜方式では、抵抗膜を形成した2枚の基板をわずかな間隔を空けて保持する必要がある。基板の形状が球面や任意の曲面である場合には、2枚の基板の間隔を高い精度で目標値に合わせることは極めて困難である。電磁誘導方式では、不透明なセンサ基板を表示素子の背面に配置する必要がある。センサ基板をそのような位置に配置すると、センサ感度が低下する。加えて、ペンがどの程度まで接近したときにタッチしたと判定するかを決定することが困難である。光学方式では、曲面に沿ってタッチを検出することは、光の直進性によって原理的に不可能である。超音波方式では、曲面上に微細な超音波トランスデューサ(発信/受信素子)を形成することが製造上困難である。これら4つの方式とは異なり、静電容量方式では、曲面基板111の形状がどのような曲面であっても、製造上の困難は少ない。
【0011】
また、後述の特許文献2には、タッチ面が曲面形状であることを特徴とする、抵抗膜方式のタッチパネルが提案されている。このタッチパネルは、上部フィルム基板と下部フィルム基板とで構成され、各フィルム基板は、透明導電ポリマー膜、電極、および配線パターンが形成された透明プラスチックフィルムで形成される。
【0012】
また、後述の特許文献3には、ポリチオフェン誘導体ポリマーと、水溶性有機化合物(窒素含有有機化合物を除く)と、ドーパントとを少なくとも含むことを特徴とする有機導電性ポリマー組成物、この組成物を用いて形成された透明導電体、およびこの透明導電体を備えた入力装置が提案されている。この入力装置は、透明導電体を曲面状に配置した抵抗膜式タッチパネル型入力装置とすることができると述べられている。
【0013】
さて、タッチパネルを構成する光透過性導電材料として、上述したITOなどの酸化物系透明導電材料や導電性高分子以外に、カーボンナノチューブを用いる提案もなされている。例えば、後述の特許文献4には、基板表面への成長、めっき、散布、あるいはカーボンナノチューブ分散液のキャスティングによってカーボンナノチューブを分散配設した後、この上に樹脂フィルムを成膜し、次いで成膜された樹脂フィルムを分離することで、樹脂フィルムの表面部のみにカーボンナノチューブが分散もしくは層として包埋された導電性フィルムを製造する方法が提案され、この導電性フィルムを用いたフレキシブルな抵抗膜式タッチパネルが提案されている。
【0014】
また、後述の特許文献5には、ロールコーティングなどの塗布法によってカーボンナノチューブ分散液を塗布することにより、透明基材の少なくとも片面の面積の50%以上がカーボンナノチューブで被覆されており、かつ透明性が、550nmの波長の光に対し、
透明導電性フィルムの光透過率/透明基材の光透過率>0.85
の条件を満たす透明導電性フィルムが提案されており、これはタッチパネル用透明導電フィルムなどとして使用可能であると述べられている。
【0015】
一方、タッチパネルとは異なるが、後述の特許文献6には、人体などの接触物体の接近または接触を感知する、静電容量方式のタッチセンサの例が示されている。図12(a)は、特許文献6に示されているタッチセンサ200の配置例を示す斜視図、図12(b)は、斜視図(a)に12b−12b線で示した位置における断面図である。
【0016】
図12(a)に示すように、タッチセンサ200は、例えば、人形型玩具210などの電子機器の前頭部から頭頂後部にかけて、その内部に配置されている。図12(b)に示すように、タッチセンサ200は、基材201と、その電極部201aに形成された検出電極202と、その延出部201bに形成された配線(図示省略)と、検出回路部203とで構成されている。
【0017】
基材201は、可撓性を有する樹脂材料からなる絶縁シートなどである。基材201は、所定の寸法で形成された電極部201aと、この端部から検出回路部203へ向かって延びる延出部201bとからなり、これらの表面にはそれぞれ電極202および配線が配置されている。検出電極202および配線は、例えば銅などの導電性材料からなり、例えば蒸着法やめっき法などの公知の方法によって形成される。あるいは、銀ペーストなどの導電性塗料を印刷するなどの公知の方法によって形成してもよい。検出回路部203は、接触物体と検出電極202との間の静電容量の変化を検出する信号処理手段である。
【0018】
タッチセンサ200は、人形型玩具210の外形を形成している筐体211の内側の曲面に固定されている。筐体211は、金属以外の、誘電率が大きい材料、例えば合成樹脂で形成されたものが好ましい。タッチセンサ200を内蔵する電子機器は、図示した人形型玩具210以外に、PDA(情報携帯端末)、携帯電話機、ビデオカメラなどであると記載されている。
【0019】
なお、特許文献2には、電極202は外部から目視することができないので、筐体211の、電極202と対向する位置に凹部212を設け、電極202の位置を明確にすると、使用者の人体や他の接触物体による意図しない接触を抑制しやすく、誤作動を減少させることが可能となり好ましいと、記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
既述したように、タッチ部材を画像表示装置の前面に配置する場合を考慮すると、静電容量式タッチパネルを構成する検出電極は、光透過性であることが望ましい。
【0021】
現在、広く利用されている透明導電材料はインジウムスズ酸化物(ITO)またはフッ素ドープスズ酸化物(FTO)などである。これらの酸化物系透明導電材料は、一般に真空蒸着法やスパッタリング法などの物理的蒸着法(PVD)によって、ガラスやポリエチレンテレフタラート(PET)などの光透過性支持体上に成膜される。PVDでは、平面上への成膜は容易であるが、曲面などの立体物上にむらなく均一に成膜することはきわめて難しい。近年、プラズマCVD法によって、透明導電材料を曲面基板上に成膜できるようになってきたが(WO2006/033268参照。)、この方法では、プラズマの発生や条件制御のために大掛かりな装置が必要である。また、ITOやFTOなどの酸化物系透明導電材料はもろく、応力をかけると微細なひび割れが生じ、導電性が急激に低下する(特開2008−36902参照。)。このため、成膜後に、折り曲げる等の成形加工を施すことはできない。
【0022】
特許文献2および3では、導電性高分子が透明導電材料として用いられている。導電性高分子は成形性には優れるものの、ITOなどに比べ、導電性および透明性に劣り、所定の導電性が得られず、タッチパネルの誤動作の原因になることがある。また、耐久性に劣り、特に車載用など高温環境中での動作特性には問題がある。また、特許文献2および3で意図されているタッチパネルは、抵抗膜式タッチパネルである。既述したように、抵抗膜式タッチパネルでは、抵抗膜を形成した2枚の基材をわずかな間隔を空けて保持する必要がある。基材の形状が球面や任意の曲面である場合には、2枚の基材の間隔を高い精度で目標値に合わせることは極めて困難である。
【0023】
特許文献4および5では、カーボンナノチューブが透明導電材料として用いられている。しかし、特許文献2および3と同様、特許文献4および5で意図されているタッチパネルは、抵抗膜式タッチパネルであり、基材の形状が球面や任意の曲面である場合には、2枚の基材の間隔を高い精度で目標値に合わせることは極めて困難である。
【0024】
以上の理由で、現在実用化されているタッチパネルは、タッチ面が平面の平板パネルにほぼ限定されている。
【0025】
一方、特許文献6に提案されているタッチセンサでは、検出電極202は筐体211の内壁に設けられるので、光透過性である必要はないが、フレキシブルであることが必要である。しかも、検出電極が透明であれば、外観を損なうことなく、検出電極を筐体211の外壁に設けることができる。この場合、筐体211の内部に設ける場合に比べて、はるかに簡易に検出電極を設けることができる。また、検出電極202を内蔵することの難しい多くの物品にも、検出電極を設けて、タッチセンサ機能を付与することができる。
【0026】
本発明の目的は、上記のような実情に鑑み、フレキシブルな形状または立体的な形状を有し、光透過性の検出電極を有する静電容量式タッチ部材及びその製造方法、並びにその静電容量式タッチ部材を備えた静電容量式タッチ検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0027】
即ち、本発明は、
絶縁性材料からなり、フレキシブルな形状又は立体的な形状を有する、フィルム状又 は板状の支持体と、
前記支持体の一方の面の少なくとも一部に配置された、カーボンナノ線状構造体を含 有する光透過性導電層からなる検出電極と、
前記検出電極から引き出された引き出し配線と
を有し、
前記支持体の、前記検出電極が配置された面とは反対側の面をタッチ面とし、このタ ッチ面への接触物体の接近又は接触を、前記接触物体と前記検出電極との間の静電容量 の変化として感知する
、第1の静電容量式タッチ部材に係わる。
【0028】
また、
絶縁性材料からなり、フレキシブルな形状又は立体的な形状を有する、フィルム状又 は板状の支持体と、
前記支持体の一方の面の少なくとも一部に配置された、カーボンナノ線状構造体を含 有する光透過性導電層からなる検出電極と、
前記検出電極を被覆する保護膜と、
前記検出電極から引き出された引き出し配線と
を有し、
前記保護膜の表面をタッチ面とし、このタッチ面への接触物体の接近又は接触を、前 記接触物体と前記検出電極との間の静電容量の変化として感知する
、第2の静電容量式タッチ部材に係わる。
【0029】
また、
絶縁性材料からなり、フレキシブルな形状又は立体的な形状を有する、フィルム状又 は板状の支持体と、
前記支持体の一方の面の少なくとも一部に配置された、カーボンナノ線状構造体を含 有する光透過性導電層からなる第1の検出電極と、
前記検出電極を被覆する第1の保護膜と、
前記支持体の、前記一方の面の反対側の面の少なくとも一部に配置された、カーボン ナノ線状構造体を含有する光透過性導電層からなる第2の検出電極と、
前記検出電極を被覆する第2の保護膜と、
前記第1の検出電極及び前記第2の検出電極からそれぞれ引き出された引き出し配線 と
を有し、
前記第1の保護膜及び/又は前記第2の保護膜の表面をタッチ面とし、このタッチ面 への接触物体の接触又は接近を、前記接触物体と前記第1の検出電極及び/又は前記第 2の検出電極との間の静電容量の変化として感知する
、第3の静電容量式タッチ部材に係わる。
【0030】
また、本発明は、
物品の表面の少なくとも一部に配置された、カーボンナノ線状構造体を含有する光透 過性導電層からなる検出電極と、
前記検出電極を被覆する保護膜と、
前記検出電極から引き出された引き出し配線と
を有し、
前記保護膜の表面をタッチ面とし、このタッチ面への接触物体の接近又は接触を、前 記接触物体と前記検出電極との間の静電容量の変化として感知する
、第4の静電容量式タッチ部材に係わる。
【0031】
また、本発明は、
前記第1〜第4の静電容量式タッチ部材のいずれかと、
前記引き出し配線を介して前記検出電極に電気的に接続され、前記タッチ面への前記 接触物体の接近又は接触による前記静電容量の変化を検出する検出回路部と
を有する、静電容量式タッチ検出装置に係わる。
【0032】
また、本発明は、
カーボンナノ線状構造体が分散剤を含有する分散用溶媒中に分散している分散液を調 製する工程を有し、
絶縁性材料からなり、フレキシブルな形状又は立体的な形状を有する、フィルム状 又は板状の支持体の面、或いは、タッチ部材を設ける物品の表面に前記分散液を被着 させる工程と、
前記分散用溶媒を蒸発させ、前記カーボンナノ線状構造体を前記支持体の面又は前 記物品の表面に固着させる工程と、
前記支持体の面又は前記物品の表面を洗浄用溶媒によって洗浄し、前記分散剤を除 去する工程と、
前記洗浄用溶媒を蒸発させる工程と
からなる一連の工程を所定の回数行い、前記支持体の面又は前記物品の表面にカーボン ナノ線状構造体を含有する光透過性導電層からなる検出電極を形成する工程を有し、
前記検出電極に引き出し配線を設ける工程を有する
、静電容量式タッチ部材の製造方法に係わる。
【0033】
なお、本発明において、カーボンナノ線状構造体とは、典型的には、単層カーボンナノチューブ、又は二層以上の多層カーボンナノチューブであるが、カーボンナノチューブほど高い結晶性(原子配列の規則性)をもたない材料をも含むものとする。すなわち、カーボンナノ線状構造体とは、筒状に丸められたグラフェンシート構造の全部又は一部を導電領域として含み、グラフェンシート構造が断面の大きさが数nmから数十nm程度の極細線の外形形状をもち、断面方向の電子の運動がナノサイズの領域に制限され、長さ方向(軸方向)の電子の運動のみがマクロなスケールで許されている炭素系材料であれば何でもよい。その外形形状は、直線状又は曲線状であって、分岐や節を含んでいてもよい。具体的には、筒状のカーボンナノチューブの他に、カップスタック型のカーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、カーボンナノバンブー、気相成長カーボンナノファイバ(例えば、昭和電工社製VGCF)、又はカーボンナノワイヤなどであってよい。
【発明の効果】
【0034】
本発明の静電容量式タッチ部材、並びに静電容量式タッチ検出装置の特徴は、カーボンナノ線状構造体を含有する光透過性導電層を検出電極として用い、静電容量方式のタッチ検出方法と組み合わせることによって、初めて、実用的な、フレキシブルな形状又は立体的な形状を有するタッチ検出装置を実現したことにある。
【0035】
前記カーボンナノ線状構造体は、直径が可視光の波長よりはるかに小さいので、可視光をよく透過させる。しかも、前記カーボンナノ線状構造体には、金属性カーボンナノチューブのように極めて高い電気伝導性を有するものがあり、小さい面密度で十分な電気伝導性を示す。しかも、カーボンナノチューブは、ITOなどの酸化物系透明導電材料と異なり、しなやかで強靱な機械的特性を有する。また、化学的にも安定である。以上のように、前記カーボンナノ線状構造体を含有する光透過性導電層は、フレキシブルな形状又は立体的な形状を有するタッチ部材に用いられる検出電極として最良の特性を有する。
【0036】
図11および図12を用いて説明したように、静電容量方式のタッチ検出方法では、1枚の検出電極があればタッチ部材として機能させることができ、タッチ部材の構造を極めて簡素にすることができる。これは、抵抗膜式タッチパネルでは、抵抗膜を形成した2枚の基材をわずかな間隔を空けて保持する必要があることと比較すると、極めて大きい利点である。本発明は、静電容量方式のタッチ検出方法は、フレキシブルな形状又は立体的な形状を有する、実用的なタッチ検出装置を実現できる唯一の方式であるという深い認識に立脚して完成した。
【0037】
本発明の静電容量式タッチ部材の製造方法は、
絶縁性材料からなり、フレキシブルな形状又は立体的な形状を有する、フィルム状又 は板状の支持体の面、或いは、タッチ部材を設ける物品の表面に前記分散液を被着させ る工程と、
前記分散用溶媒を蒸発させ、前記カーボンナノ線状構造体を前記支持体の面又は前記 物品の表面に固着させる工程と、
前記支持体の面又は前記物品の表面を洗浄用溶媒によって洗浄し、前記分散剤を除去 する工程と、
前記洗浄用溶媒を蒸発させる工程と
からなる一連の工程を所定の回数行い、前記支持体の面又は前記物品の表面にカーボンナノ線状構造体を含有する光透過性導電層からなる検出電極を形成する工程を有する。
【0038】
この製造方法の特徴は、前記分散用溶媒を蒸発させ、前記カーボンナノ線状構造体を前記支持体の面又は前記物品の表面に固着させた後に、前記支持体の面又は前記物品の表面を洗浄用溶媒によって洗浄し、前記分散剤を除去し、その後、前記洗浄用溶媒を蒸発させることにある。前記洗浄用溶媒による洗浄工程で、前記カーボンナノ線状構造体間に介在する前記分散剤が取り除かれるので、前記カーボンナノ線状構造体同士の密着性が向上し、導電性が向上する。先の分散用溶媒を蒸発させる工程によって、前記カーボンナノ線状構造体の多くは前記支持体の面又は前記物品の表面に固着しているので、これらが洗浄工程で脱落することはない。また、固着状態の悪い少数の前記カーボンナノ線状構造体は洗浄工程で除かれる。残った前記カーボンナノ線状構造体は、洗浄用溶媒を蒸発させる工程によってさらにしっかり前記支持体の面又は前記物品の表面に固着する。以上のようにして、前記透明導電層の質が向上する。
【0039】
また、本製造方法では、前記カーボンナノ線状構造体の堆積層が所定の厚さに達し、必要な導電率が得られるまで、上述した分散液を被着させてから洗浄用溶媒を蒸発させるまでの一連の堆積工程を繰り返し行う。従って、1回の堆積工程で所定の厚さの堆積層を形成する方法に比べて、分散液におけるカーボンナノチューブの濃度を低く抑えることができる。この結果、均一性の高い堆積層を形成することができ、均一な導電性をもつ導電層を得ることができる。
【0040】
以上のように、本発明の静電容量式タッチ部材の製造方法では、簡便でスケールアップの容易な方法で、分散剤や不純物が少なく、均一にカーボンナノ線状構造体が分布した平坦性の高い堆積層を形成することができ、カーボンナノチューブなどのカーボンナノ線状構造体が有する光透過性、電気伝導特性及び機械的特性を損なわずに発現させることのできる光透過性導電層を作製することができる。本製造方法では、カーボンナノチューブ分散液を塗布するだけで透明導電層を形成でき、製造工程に高温や真空などを必要としない。このため、熱に弱い支持体、あるいは真空で破壊・変質してしまう支持体や、大きすぎて真空容器に入りきらなかい支持体であっても、前記支持体として用い、その表面に透明導電層を形成できる。このように、本発明の静電容量式タッチ部材の製造方法を用いれば、自由な形状をもつ支持体の表面に、形状を変えることなく、静電容量式タッチ部材を設けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の実施の形態1に基づく静電容量式タッチ検出装置の構造を示す斜視図(a)、および断面図(b)と(c)である。
【図2】同、別の例に基づく静電容量式タッチ検出装置の構造を示す断面図である。
【図3】同、さらに別の例に基づく静電容量式タッチ検出装置の構造を示す斜視図(a)および断面図(b)である。
【図4】同、光透過性支持体の立体的な形状の例を示す斜視図である。
【図5】本発明の実施の形態2に基づく静電容量式タッチ検出装置の構造を示す断面図である。
【図6】本発明の実施の形態3に基づく静電容量式タッチ検出装置の構造を示す断面図である。
【図7】本発明の実施の形態4に基づく静電容量式タッチ検出装置の構造を示す断面図である。
【図8】同、静電容量式タッチ部材の分画パターンの例を示す上面図(左図)および側面図(右図)である。
【図9】本発明の実施の形態4の別の例に基づく、静電容量式タッチ部材の構造を示す斜視図(a)および水平方向における断面図(b)である。
【図10】同、静電容量式タッチ部材の使用方法を説明する斜視図である。
【図11】特許文献1に示されているタッチパネル付き表示装置の構成を示す斜視図(a)、およびタッチ部材の構造を示す断面図(b)である。
【図12】特許文献6に示されているタッチセンサの配置例を示す斜視図(a)および断面図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
本発明の第1の静電容量式タッチ部材において、前記検出電極が被覆層によって被覆されているのがよい。
【0043】
本発明の第4の静電容量式タッチ部材において、前記物品の前記表面と前記光透過性導電層との間に下地層が設けられているのがよい。
【0044】
本発明の第1〜第4の静電容量式タッチ部材において、前記タッチ面上の位置を区画するように分画された複数の前記検出電極が、電極ごとに独立した引き出し配線とともに設けられており、前記接触物体が接近又は接触する前記タッチ面上のタッチ位置の違いが、前記区画を単位として識別可能であるのがよい。
【0045】
本発明の第1〜第4の静電容量式タッチ部材において、前記光透過性導電層が、前記カーボンナノ線状構造体と導電性樹脂材料との複合体からなるのがよい。前記カーボンナノ線状構造体は極めて細く、単位質量あたりの表面積(比表面積)が大きいので、補助的な材料は必ずしも必要ではないが、用いるのであれば、透明性の高い導電性高分子であるポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT;商品名 バイトロン)などがよい。また、前記カーボンナノ線状構造体がカーボンナノチューブであるのがよい。単層カーボンナノチューブには、極めて高い電気伝導性を示す金属性カーボンナノチューブが含まれる。また、二層カーボンナノチューブや多層カーボンナノチューブの中にも、極めて高い電気伝導性を示すものがある。しかも、カーボンナノチューブは、ITOなどの酸化物系透明導電材料と異なり、しなやかで強靱な機械的特性を有する。
【0046】
本発明の第1〜第3の静電容量式タッチ部材において、様々な用途を考えると、前記支持体が光透過性であるのがよい場合がある。同様に、前記保護膜が光透過性であるのがよい場合がある。例えば、タッチ部材を画像表示装置の前面に配置するタッチパネルなど、タッチ部材が光透過性であることが求められる場合などである。
【0047】
また、前記支持体の前記立体的な形状が、1つの曲面、曲面の組み合わせ、曲面と平面の組み合わせ、又は平面の組み合わせによって形成されているのがよい。例えば、前記支持体の前記立体的な形状が湾曲した曲面状であり、外側の凸形の面又は内側の凹形の面が前記タッチ面として用いられるのがよい。また、複数個のタッチ面をつなぎ合わせて、立体的に閉じた形状の前記タッチ面を有する静電容量式タッチ部材を作製することもできる。
【0048】
本発明の静電容量式タッチ検出装置は、他の電子機器とともに用いられ、前記タッチ面への前記接触物体の接近又は接触に応じて前記他の電子機器に電気信号を出力するタッチスイッチとして構成されているのがよい。例えば、前記他の電子機器が情報処理装置であり、前記接触物体が接近又は接触する前記タッチ面上のタッチ位置に応じた入力信号を前記情報処理装置へ出力する、タッチパネルとして構成されているのがよい。
【0049】
本発明の静電容量式タッチ部材の製造方法において、前記検出電極を被覆し、表面がタッチ面として用いられる保護膜を形成する工程を有するのがよい。
【0050】
また、塗布法、浸漬法、又は印刷法によって前記支持体に前記分散液を被着させるのがよい。
【0051】
次に、本発明の好ましい実施の形態を図面参照下に具体的に説明する。
【0052】
[実施の形態1]
実施の形態1では、主として、請求項1、2、8〜14に記載した静電容量式タッチ部材、請求項15、16に記載した静電容量式タッチ検出装置、および請求項18、20に記載した静電容量式タッチ部材の製造方法の例について説明する。この際、前記カーボンナノ線状構造体としてカーボンナノチューブを用いるものとする。
【0053】
図1(a)は、実施の形態1に基づく静電容量式タッチ検出装置の構造を示す斜視図であり、図1(b)はその断面図である。この静電容量式タッチ検出装置は、本発明の第1の静電容量式タッチ部材に基づく静電容量式タッチ部材10と、静電容量変化検出回路60とで構成されている。
【0054】
静電容量式タッチ部材10は、絶縁性材料からなり、立体的な形状を有するフィルム状又は板状の支持体1と、支持体1の一方の面の少なくとも一部に配置された、カーボンナノ線状構造体を含有する光透過性導電層からなる検出電極2と、検出電極2から引き出された引き出し配線3とで構成されている。
【0055】
静電容量式タッチ部材10では、支持体1の、検出電極2が配置された面とは反対側の面がタッチ面4として用いられる。すなわち、人体の一部、例えば指などの接触物体がタッチ面4に接近または接触すると、接触物体と検出電極2との間の静電容量が変化する。この静電容量の変化は、引き出し配線3を介して静電容量変化検出回路60に伝えられ、電気信号に変換して感知される。静電容量変化検出回路60としては、市販の一般的な静電容量測定装置、例えば、Cypress Semiconductor社のCapSenseシリーズ(商品名)などを用いることができる。
【0056】
静電容量方式のタッチ検出方法では、検出電極2と、検出電極2とタッチ面4とを隔てる絶縁性(誘電体)材料とがあれば、簡易に静電容量式タッチ部材を構成することができる。図1(b)に示すように、絶縁性材料からなる支持体1と、その上に形成された透明導電層からなる検出電極2とはこの構成条件を満たしており、静電容量式タッチ部材10として用いることができる。この際、タッチ検出方法が静電容量方式であることは極めて重要である。既述したように、抵抗膜式タッチパネルでは、抵抗膜を形成した2枚の基材をわずかな間隔を空けて保持する必要があり、こんなに簡易にタッチ部材を形成することはできない。
【0057】
支持体1の材料は、絶縁性材料であることを除けば、特に限定されるものではない。ただし、タッチ部材が画像表示装置の前面に配置される場合には、支持体1の材料は光透過性であることが必要である。光透過性支持体1として、ガラス板または光透過性高分子樹脂板を用いることができる。光透過性高分子樹脂板の材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタラート(PET)樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)樹脂、ポリプロピレン(PP)樹脂、ポリエチレン(PE)樹脂、ポリエーテルスルホン(PES)樹脂、ポリイミド(PI)樹脂、およびエポキシ樹脂などが挙げられる。好ましくは、透明度が高く、耐熱性および耐薬品性に優れた材料であればよく、このような材料の例としてPETなどが挙げられる。
【0058】
タッチ面4の反対側の面に検出電極2を設け、タッチ面4に接近又は接触する接触物体と検出電極2との間に静電容量を形成させることを考えると、支持体1の厚さは大きすぎないことが重要である。従って、支持体1は、例えば、厚さが0.01〜3mm、通常0.1〜0.5mm程度であって、フレキシブルなテープ状、フィルム状、またはシート状であるのがよい。この場合、任意の立体的形状を有する物品に、貼り付けるなどの形態で用いることができる。また、図1に示したように、このフィルム状、シート状、または板状の支持体1が、例えば中空半球状などの立体的な形状に成形されているのがよい。その形状は、カーボンナノチューブ分散液が流入できる程度に、一部が開口した形状が望ましい。このように、形状に多少の制限はあるものの、立体的形状を有する支持体1に、その形状を変えることなく、静電容量式タッチ検出部材を設けることができる。
【0059】
検出電極2は、カーボンナノチューブを含有する光透過性導電層で形成されている。カーボンナノチューブの種類は、特に限定されない。好ましくは、単層であり、不純物が少なく、カーボンナノチューブ自体の結晶性が高く、直径が太く、長さができるだけ長いカーボンナノチューブであるのがよい。カーボンナノチューブは、直径が可視光の波長よりはるかに小さいので、可視光をよく透過させる。しかも、カーボンナノチューブには、金属性カーボンナノチューブのように極めて高い電気伝導性を有するものがあり、小さい面密度で十分な電気伝導性を示す。しかも、カーボンナノチューブは、ITOなどの酸化物系透明導電材料と異なり、しなやかで強靱な機械的特性を有する。また、化学的にも安定である。以上のように、カーボンナノチューブを含有する光透過性導電層は、フレキシブルな形状または立体的な形状を有するタッチ部材に用いられる検出電極として最良の特性を有する。
【0060】
本発明に基づく静電容量式タッチ部材、並びに静電容量式タッチ検出装置の特徴は、カーボンナノチューブを含有する光透過性導電層を検出電極として用い、静電容量方式のタッチ検出方法と組み合わせることによって、初めて、実用的な、フレキシブルな形状又は立体的な形状を有するタッチ検出装置を実現したことにある。
【0061】
このうち、実施の形態1では、検出電極2に対向する支持体1の面をタッチ面4として用いる。このようにすると、最も簡素に静電容量式タッチ部材10を構成できる。従って、最少のコストで、生産性よく、静電容量式タッチ部材10を作製できる。
【0062】
図1(c)は、請求項2に対応して、検出電極2が被覆層5によって被覆されている静電容量式タッチ部材の例を示す断面図である。被覆層5は、カーボンナノチューブの付着性を向上させ、また光透過率を向上させる。被覆層5を構成する材料は、光学特性がよいこと(高透明性・低反射性・低グレア性)、簡単に形成できること、電気絶縁性があることが必要である。また、高分子系の材料が好ましく、スルホ基−SO3Hを有する高分子を用いるとカーボンナノチューブの導電性が安定することが知られている(特開2008−251271号公報参照。)。以上から、被覆層5を構成する材料としては、Nafion(デュポン社登録商標)が特によく、これ以外には、ポリスチレン樹脂、ポリメタクリル酸メチル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリコーン樹脂、スチレン−アクリロニトリル共重合体(AS)樹脂、およびTPX樹脂(4−メチルペンテン−1を主原料とする、結晶性のオレフィン系ポリマー)などが挙げられる。被覆層5の形成方法としては、構成材料を適当な溶媒に溶解させた後、浸漬法や吹き付け法などによって溶液を塗布する方法などが挙げられる。
【0063】
図2(a)は、実施の形態1の別の例に基づく静電容量式タッチ検出装置の構造を示す断面図である。図1に示した静電容量式タッチ部材10では、半球形の支持体1の内側の面(凹面)に検出電極2が配置され、外側の面(凸面)がタッチ面4として用いられているのに対し、図2(a)に示す静電容量式タッチ部材11では、半球形の支持体1の外側の面(凸面)に検出電極6が配置され、内側の面(凹面)がタッチ面8として用いられる。このように、検出電極が配置されている面が異なり、その結果、タッチ面が逆になるので、使用上は大きな違いを生じる。しかし、タッチ検出の仕組みに関しては両者に重要な違いはない。図2(b)は、図1(c)と同様、検出電極6が被覆層9によって被覆されている例を示している。
【0064】
図3は、実施の形態1のさらに別の例に基づく静電容量式タッチ検出装置の構造を示す斜視図(a)および断面図(b)である。図3に示す静電容量式タッチ部材12は、請求項12に対応して、2個の半球形の静電容量式タッチ部材10、すなわち、半球形の支持体1a、検出電極2a、および引き出し配線3aからなる静電容量式タッチ部材10aと、同じく、半球形の支持体1b、検出電極2b、および引き出し配線3bからなる静電容量式タッチ部材10bとを接合して作製した、タッチ面4aとタッチ面4bとからなる、閉じた球形のタッチ面を有する静電容量式タッチ部材の例である。
【0065】
図4は、光透過性支持体の立体的な形状の例を示す斜視図である。これらは、各種の柱体、錐体、球体、および楕円球などであり、これらの立体の一部、またはこれらを組み合わせて得られる任意の立体であってよい。一般的には、支持体の立体的な形状は、1つの曲面、曲面の組み合わせ、曲面と平面の組み合わせ、または平面の組み合わせによって形成される任意の立体形状であってよい。本実施の形態では、これらの支持体に、その形状を変えることなく、静電容量式タッチ検出部材を形成することができる。
【0066】
フレキシブルな形状または立体的な形状を有する静電容量式タッチ検出部材では、自身の形状が変化することで、形状が変化しない部材では生じ得ない、使用感や感触を生みだすことができる。例えば、柔軟性に富んだ立体的形状の支持体を用いて静電容量式タッチ検出部材を作製すると、触るとへこんだり、曲がったりする入力装置として用いることができ、従来にないインターフェイスとすることができる。
【0067】
また、立体的な形状を有する静電容量式タッチ検出部材では、平面形よりもタッチ検出感度を向上させることができる。立体形の検出電極では、検出電極の前面および背面をともに空気層にすることができるので、従来の平面型の静電容量式タッチ検出装置で問題となっている背面基板由来のノイズ、あるいは接地面との間の寄生容量などによる誤動作や感度低下を低減することができる。このため、立体形状の静電容量式タッチ検出装置では、タッチ検出の感度・精度が著しく向上する。
【0068】
本発明に基づく静電容量式タッチ検出装置は、支持体1がもつ模様や質感を維持したまま、静電容量式タッチ検出装置とすることができる。また、光透過性の支持体を用いて静電容量式タッチ検出部材を作製し、これを他の物品に被せる場合には、他の物体の外観や意匠をそのまま利用して、静電容量式タッチ検出部材とすることができる。
【0069】
この他、カーボンナノチューブを導電層とする立体静電容量式タッチ検出装置は、形状の自由度が高く、また光透過性とすることができることから、ディスプレイ・発光素子・光電変換素子などの上に設置しても動作に影響を与えることがないため、これらと複合したエレクトロニクス機器に展開が可能である。
【0070】
以下、主に静電容量式タッチ部材10の製造方法について説明し、静電容量式タッチ部材10についての説明を補足する。
【0071】
まず、分散剤を含有する分散用溶媒中にカーボンナノチューブが分散している分散液を調製する。分散用溶媒としては水が好ましく、分散剤としては界面活性剤が好ましい。界面活性剤を溶かした水に、カーボンナノチューブを加え、超音波を照射しながら混合して、均一に分散させる。その後、遠心分離法によって、分散性の低い沈殿物を除去する。
【0072】
分散液におけるカーボンナノチューブの濃度は、0.2mg/mLを中心に、0.1〜0.5mg/mLであるのがよい。カーボンナノチューブの濃度が低い方が、均一性の高い堆積層を形成することができ、均一な導電性をもつ導電層を得ることができる。しかし、濃度が低すぎると、十分な導電性が得られるまでに、以下に述べるカーボンナノチューブの堆積工程を繰り返す回数が多くなりすぎる。カーボンナノチューブの濃度が高すぎると、堆積工程の繰り返し回数は少なくなるが、導電性にばらつきが生じやすくなる。
【0073】
界面活性剤の種類は、例えばアルキル硫酸エステルナトリウム、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルファオレフィンスルホン酸ナトリウム、アルキルエーテル硫酸エステルナトリウム、脂肪酸アルカノールアミド、アルキルアミンオキシドなどが利用でき、またこれらを混合して用いてもよい。界面活性剤の濃度は、0.4%を中心に、0.1〜4%の範囲にあるとよい。界面活性剤の濃度が極端に小さいと、カーボンナノチューブの分散性が不十分となり、透明性および導電性の低下を招く。界面活性剤の濃度が大きすぎると、カーボンナノチューブと支持体1の面(後述の実施の形態5では物品の表面)との密着性が低下し、水洗によって、堆積させたカーボンナノチューブのほとんどが剥離してしまう不都合が生じる。
【0074】
次に、PETフィルムなどの絶縁性材料からなり、前もって成形され、立体的な形状を有する支持体1の一方の面(実施の形態5では物品の表面)に、塗布法、浸漬法、または印刷法によって分散液を被着させる。例えば、静電容量式タッチ部材10の場合、半球形の支持体1の凹面側に分散液を流し込み、全面に行きわたらせる。余分なカーボンナノチューブ分散液を流し出すと、支持体1の凹面は、全面がカーボンナノチューブ分散液で濡れた状態になる。
【0075】
次に、分散用溶媒を蒸発させ、カーボンナノチューブを支持体1の面(実施の形態5では物品の表面)に固着させる。この際、ドライヤーを用いて、温風で加熱乾燥させるのがよい。蒸発は全体が十分に乾燥するまで行うのがよく、蒸発が完了するまでの時間は30秒間程度である。温風の温度は高いほど乾燥に要する時間が短縮されるので好ましいが、支持体1がプラスチックからなる場合には、高すぎると支持体1が変形するおそれが生じるので、100℃前後が好ましい。この際、分散液の厚さが偏り、カーボンナノチューブが一部に凝集して乾固しないように、常に支持体1を動かしながら乾燥させるのがよい。
【0076】
次に、本発明の製造方法の特徴として、カーボンナノチューブを堆積させた支持体1の面(実施の形態5では物品の表面)を洗浄用溶媒によって洗浄し、分散剤を除去し、その後、洗浄用溶媒を蒸発させる。例えば、静電容量式タッチ部材10の場合、支持体1を水中に浸し、残存している分散剤を洗い流す。これを数回繰り返した後、温風で完全に乾燥させる。この洗浄用溶媒による洗浄工程でカーボンナノチューブ間に介在する分散剤が取り除かれるので、カーボンナノチューブ同士の密着性が向上し、導電性が向上する。洗浄用溶媒はゆっくりと流れる流水または溜水がよい。水に浸す時間は5秒程度でよく、洗う回数は3回程度でよい。先の分散用溶媒を蒸発させる工程によって、カーボンナノチューブの多くは支持体1の面(実施の形態5では物品の表面)に固着しているので、この工程でこれらのカーボンナノチューブが脱落することはない。また、固着状態の悪い少数のカーボンナノチューブは洗浄工程で除かれる。残ったカーボンナノチューブは、洗浄用溶媒を蒸発させる工程によってさらにしっかり支持体1の面(実施の形態5では物品の表面)に固着する。以上のようにして、カーボンナノチューブ堆積層の質が向上する。
【0077】
上述した分散液を被着させてから洗浄用溶媒を蒸発させるまでの一連の工程を、カーボンナノチューブの堆積層が所定の厚さに達し、必要な導電性が得られるまで、繰り返し行い、カーボンナノチューブ層を積層する。このようにして、支持体1の面(実施の形態5では物品の表面)にカーボンナノチューブを含有する光透過性導電層を形成する。上述したように、この方法では、1回の堆積工程で所定の厚さの堆積層を形成する方法に比べて、分散液におけるカーボンナノチューブの濃度を低く抑えることができる。この結果、均一性の高い堆積層を形成することができ、均一な導電性をもつ導電層を得ることができる。
【0078】
以上のように、本実施の形態に基づく静電容量式タッチ部材の製造方法では、簡便でスケールアップの容易な方法で、分散剤や不純物が少なく、均一にカーボンナノチューブが分布した平坦性の高い堆積層を形成することができ、カーボンナノチューブが有する光透過性、電気伝導特性および機械的特性を損なわずに発現させることのできる光透過性導電層を作製することができる。この製造方法では、カーボンナノチューブ分散液を塗布するだけで光透過性導電層を形成でき、製造工程で支持体を高温や真空に曝すことを必要としない。このため、熱に弱い支持体(実施の形態5では物品)、あるいは真空で破壊・変質してしまう支持体や、大きすぎて真空容器中に入りきらない支持体(実施の形態5では物品)であっても、その表面に光透過性導電層を形成できる。
【0079】
この後、必要に応じて、検出電極2上に、ポリマー分散液などを塗布した後、溶媒を蒸発させ、被覆層5を形成する。
【0080】
次に、検出電極2に引き出し配線3を設ける。例えば、導電接着剤を用いて検出電極2に引き出し配線3を接着する。
【0081】
以上の他に、後述の実施の形態2、3、および5では、検出電極上に保護膜を形成する工程を行う。また、後述の実施の形態4では、光透過性導電層の一部をエッチング除去して、分画された複数の検出電極42a〜fにパターニングする工程を行う。また、検出電極42a〜fのパターニングは、予め、検出電極42a〜fを形成する領域以外の支持体1の面をマスク層で覆っておき、支持体1の全面に光透過性導電層を形成した後、検出電極42a〜f以外の領域に堆積した光透過性導電層をマスク層ごと溶解除去するリフトオフ法によって行ってもよい。また、検出電極42a〜fのパターニングは、印刷法によって検出電極42a〜fを形成する領域にだけカーボンナノチューブ分散液を被着させることで行ってもよい。
【0082】
本実施の形態の静電容量式タッチ部材の製造方法では、一部が開いた形状の支持体であれば、どのような形状の支持体の表面にも光透過性導電層からなる検出電極を形成でき、静電容量式タッチ部材を作製することができる。このようにして作製される静電容量式タッチ部材は、タッチ検出装置を設けようとする装置の形状に合わせた立体的形状に形成できるので、従来タッチ検出装置を設けることができなかった装置にも設けることができ、また、デザイン性やファッション性の高い、新タイプのタッチパネルなどのタッチ検出装置として用いることができる。また、印刷法によれば、検出電極を形成する領域にだけカーボンナノチューブ分散液を被着させるので、エッチング工程なしにパターニングされた検出電極を得ることができ、製造工程が大幅に簡略化され、低コストが実現できる。
【0083】
[実施の形態2]
実施の形態2では、請求項3に記載した静電容量式タッチ部材の例について説明する。
【0084】
図5は、実施の形態2に基づく静電容量式タッチ検出装置の構造を示す断面図である。この静電容量式タッチ検出装置は、本発明の第2の静電容量式タッチ部材に基づく静電容量式タッチ部材20と、静電容量変化検出回路60とで構成されている。
【0085】
図5(a)に示した静電容量式タッチ部材20では、半球形の支持体1の外側の面(凸面)に検出電極6が配置され、さらに検出電極6を被覆する保護膜22が積層され、保護膜22の表面がタッチ面23として用いられる。また、図5(b)に示した静電容量式タッチ部材24では、半球形の支持体1の内側の面(凹面)に検出電極2が配置され、さらに検出電極2を被覆する保護膜25が積層され、保護膜25の表面がタッチ面26として用いられる。
【0086】
上記のように、実施の形態2では、検出電極2に対向する支持体1の面4をタッチ面として用いるのではなく、検出電極6(または2)に積層して配置される保護膜22(または25)の表面をタッチ面23(または26)として用いる点が、実施の形態1と異なっている。保護膜22(または25)は、指などの接触によって剥離しない密着性や、指紋や汚れがつきにくい防汚性が要求される。従って、前述した被覆層5(または9)に求められる特性に加えて、機械的ならびに化学的耐久性に優れる必要がある。また、厚さはできるだけ薄い方が、タッチ検出感度が上がるので好ましい。保護膜22(または25)の構成材料および作製方法は、上述した被覆層5(または9)の構成材料および作製方法に準ずる。
【0087】
このようにすると、実施の形態1にあった、支持体1の形状は、厚さが大きすぎない、テープ状、フィルム状、シート状、または板状であるという制限がなくなり、実施の形態2で用いる支持体1は任意の形状でよい。また、本発明に基づけば、どのような形状の支持体の表面にでも検出電極6(または2)を形成し、静電容量式タッチ検出装置を設けることができる。また、保護膜22(または25)の厚さは、支持体1の厚さに比べて薄くできるので、接触物体と検出電極6(または2)との間の静電容量が大きくなり、接触物体のタッチを検出する感度が向上する。上記の相違点以外については、実施の形態2は実施の形態1と同様であるので、重複を避け、説明を省略する。
【0088】
[実施の形態3]
実施の形態3では、請求項4に記載した静電容量式タッチ部材の例について説明する。
【0089】
図6は、実施の形態3に基づく静電容量式タッチ検出装置の構造を示す断面図である。この静電容量式タッチ検出装置は、本発明の第3の静電容量式タッチ部材に基づく静電容量式タッチ部材30と、静電容量変化検出回路60とで構成されている。
【0090】
図6に示した静電容量式タッチ部材30では、半球形の支持体1の外側の面(凸面)に検出電極6が配置され、さらに検出電極6を被覆する保護膜22が積層され、保護膜22の表面がタッチ面23として用いられる。加えて、半球形の支持体1の内側の面(凹面)にも検出電極2が配置され、さらに検出電極2を被覆する保護膜25が積層され、保護膜25の表面がタッチ面26として用いられる。ここで、検出電極6および検出電極2が前記第1の検出電極および前記第2の検出電極に相当し、保護膜22および保護膜25が前記第1の保護膜および前記第2の保護膜に相当する。検出電極6および2から引き出された各引き出し配線7および3は、それぞれ、静電容量変化検出回路60の入力端子に接続される。
【0091】
静電容量式タッチ部材30では、検出電極6と検出電極2との両方を検出電極として用い、タッチ面23とタッチ面26との両方を同時にタッチ面とすることができる。あるいは、一方の検出電極、例えば検出電極6だけを検出電極として用い、検出電極2は接地して、耐ノイズ特性を向上させるように用いることもできる。検出電極6と検出電極2とのどちらを検出電極とするか、従って、タッチ面23とタッチ面26とのどちらをタッチ面とするかは、静電容量変化検出回路60によって簡易に切り換えることができる。上記の相違点以外については、実施の形態3は実施の形態2と同様であるので、重複を避け、説明を省略する。
【0092】
[実施の形態4]
実施の形態4では、主として、請求項7に記載した静電容量式タッチ部材、および請求項16に記載した静電容量式タッチ検出装置の例について説明する。
【0093】
図7は、実施の形態4に基づく静電容量式タッチ検出装置の構造を示す断面図である。この静電容量式タッチ検出装置は、本発明の請求項7に記載した発明に基づく静電容量式タッチ部材40と、静電容量変化検出回路60とで構成されている。
【0094】
静電容量式タッチ部材40は、絶縁性材料からなり、立体的な形状を有するフィルム状又は板状の支持体1と、支持体1の一方の面の少なくとも一部に配置された、カーボンナノ線状構造体を含有する光透過性導電層からなる検出電極42と、検出電極42から引き出された引き出し配線43とで構成されている。
【0095】
実施の形態1と異なる点は、タッチ面4上の、接触物体を接近又は接触させるタッチ位置の違いに対応して、タッチ面4上の位置を区画するように分画された複数の検出電極42a〜42fが、電極ごとに独立した引き出し配線43a〜43fとともに設けられており、タッチ位置の違いが区画を単位として識別可能であることである。検出電極42a〜42fは、検出電極切り換え回路59によって時分割的に繰り返し選択される。すなわち、各検出電極42a〜42fは、1サイクルの間にある期間だけ、順次交代して、静電容量変化検出回路60に接続され、このサイクルが短い周期で高速に繰り返される。
【0096】
例えば、人体の一部、例えば指などの接触物体が、タッチ面4の、検出電極42aに対向する位置に接近または接触すると、接触物体と検出電極42aとの間の静電容量が変化する。この静電容量の変化は、引き出し配線43aを介して静電容量変化検出回路60に伝えられ、電気信号に変換して感知される。
【0097】
静電容量式タッチ部材40の検出電極42a〜42fを構成するカーボンナノチューブ層は、実施の形態1で補足として説明したように、成膜後にエッチングで不要部を除去するか、成膜前に支持体1の面の一部にマスキングを施すことで、パターン化することができる。あるいは、印刷法を用いてもよい。エッチングは、例えば機械的な切削除去、あるいはレーザーエッチングで施すことができる。
【0098】
図8は、静電容量式タッチ部材40の分画パターンを示す上面図(左図)および側面図(右図)である。図8(a)に示すパターンは、経線によって分画されており、半球面上のタッチ位置の違いが、経度の違いに基づいて判別できる。図8(b)に示すパターンは、より複雑に分画されており、半球面上のタッチ位置の違いが、緯度の違いも加えてより細かく判別できる。また、図4に示したような、任意の立体形状の支持体に形成された透明導電層も、図7または8と同様にパターニングすることができる。
【0099】
図9(a)は、実施の形態4の別の例に基づく静電容量式タッチ部材50の、分画パターンを示す斜視図である。図9(b)は、図9(a)に9b−9b線で示した、水平方向における断面図である。静電容量式タッチ部材50では、円筒形状の支持体51の内壁に、分画された多数の検出電極52が配置されている。図9(b)は、円筒形状の表示画面をもつ画像表示装置70を内部に納めた状態を示している。
【0100】
図10は、静電容量式タッチ部材50の使用方法を説明する斜視図である。図10(a)に示す例では、円筒形状の表示画面をもつ画像表示装置70の最表面側に、静電容量式タッチ部材50が配置され、互いの間に引き出し配線53を用いた通信手段が設けられている。この結果、画像表示装置70の円筒形状の表示画面が、静電容量式タッチ部材50のタッチ面を通して透けて見えるので、画像を見ながらタッチ面に触れることで、画像表示装置70を直感的に操作することができる。円筒形状の表示画面をもつ画像表示装置70の例は、ソニー株式会社プレスリリース2007年05月24日、http://www.sony.co.jp/SonyInfo/News/Press/200705/07-053/index.html)などに示されている。
【0101】
図10(b)に示す例では、上方に3次元立体画像81を形成する画像形成装置80の上側に、静電容量式タッチ部材50が配置され、互いの間に引き出し配線53を用いた通信手段が設けられている。この結果、画像形成装置80が形成する3次元立体画像81が、静電容量式タッチ部材50のタッチ面を通して透けて見えるので、立体画像81を見ながらタッチ面に触れることで、画像形成装置80を直感的に操作することができる。3次元立体画像81を形成する画像形成装置80の例は、日立製作所ニュースリリース2004年2月24日、http://www.hitachi.co.jp/New/cnews/040224a.html、または、産業技術総合研究所プレスリリース2007年7月10日、http://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2007/pr20070710/pr20070710.htmlなどに示されている。
【0102】
[実施の形態5]
実施の形態5では、請求項5および6に記載した第4の静電容量式タッチ部材の例について説明する。図示省略するが、実施の形態5に基づく静電容量式タッチ検出装置は、タッチ検出機能を付与したいと望む物品の表面の少なくとも一部に配置された、カーボンナノ線状構造体を含有する光透過性導電層からなる検出電極と、この検出電極を被覆する光透過性保護膜と、検出電極から引き出された引き出し配線とを有する第4の静電容量式タッチ部材、および静電容量変化検出回路60で構成される。この静電容量式タッチ部材では、光透過性保護膜の表面がタッチ面として用いられ、このタッチ面への、人体の一部、例えば指などの接触物体の接近又は接触を、接触物体と検出電極との間の静電容量の変化として感知する。
【0103】
この静電容量式タッチ部材を設ける物品は、カーボンナノ線状構造体を含有する光透過性導電層を設けることが可能であればよく、特に限定されるものではない。例えば、特許文献2に示されている人形型玩具210のようなものでもよく、PDA(情報携帯端末)、携帯電話機、ノートパソコン、携帯ゲーム機、およびビデオカメラなどの電子機器の筐体で、曲面形状をもつものなどがとくによい。また、ドアのノブのような家具や日用品でもよい。静電容量式タッチ部材は薄く、光透過性であるので、物品の外観を損ねることなく設けることができる。
【0104】
以上、本発明を実施の形態に基づいて説明したが、本発明はこれらの例に何ら限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能であることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0105】
本発明によって、タッチパネルなどの静電容量式タッチ検出装置の形状自由度および生産性は飛躍的に向上し、利用できる製品領域も格段に広がると予想される。
【符号の説明】
【0106】
1、1a、1b…支持体、
2、2a、2b、6…検出電極(カーボンナノチューブを含有する光透過性導電層)、
3、7…引き出し配線、4、4a、4b、8…タッチ面、5、9…被覆層、
10〜12…静電容量式タッチ部材、20、24…静電容量式タッチ部材、
22、25…保護膜、23、26…タッチ面、30…静電容量式タッチ部材、
40…静電容量式タッチ部材、42a〜42f…検出電極、
43a〜43f…引き出し配線、50…静電容量式タッチ部材、51…支持体、
52…分画された検出電極、53…引き出し配線、59…検出電極切り換え回路、
60…静電容量変化検出回路、70…円筒形状の表示画面を有する画像表示装置、
80…三次元立体画像を形成する画像形成装置、81…三次元立体画像、
100…タッチパネル付き表示装置、101…発光ダイオード(LED)、
102…液晶パネル、103…曲面タッチパネル、110…タッチ部材、
111…曲面基板、112…透明導電膜、113…保護膜、114…タッチ面、
200…静電容量方式タッチセンサ、201…基材、201a…電極部、
201b…延出部、202…検出電極、203…検出回路部、211…筐体、
210…人形型玩具、212凹部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0107】
【特許文献1】特開2007−279819号公報(第4及び5頁、図1及び3)
【特許文献2】特開2008−47026号公報(第4及び5頁、図1及び2)
【特許文献3】WO2004/106404号公報(第6−11頁、図1)
【特許文献4】WO2006/030981号公報(請求項1,2,22,及び23、第6−9及び11頁、図14)
【特許文献5】特開2008−177143号公報(請求項7及び9−14、第9,11−13,15,及び16頁、図1)
【特許文献6】特開2005−339856号公報(第4−6及び8頁、図1及び5)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性材料からなり、フレキシブルな形状又は立体的な形状を有する、フィルム状又 は板状の支持体と、
前記支持体の一方の面の少なくとも一部に配置された、カーボンナノ線状構造体を含 有する光透過性導電層からなる検出電極と、
前記検出電極から引き出された引き出し配線と
を有し、
前記支持体の、前記検出電極が配置された面とは反対側の面をタッチ面とし、このタ ッチ面への接触物体の接近又は接触を、前記接触物体と前記検出電極との間の静電容量 の変化として感知する
、静電容量式タッチ部材。
【請求項2】
前記検出電極が被覆層によって被覆されている、請求項1に記載した静電容量式タッチ部材。
【請求項3】
絶縁性材料からなり、フレキシブルな形状又は立体的な形状を有する、フィルム状又 は板状の支持体と、
前記支持体の一方の面の少なくとも一部に配置された、カーボンナノ線状構造体を含 有する光透過性導電層からなる検出電極と、
前記検出電極を被覆する保護膜と、
前記検出電極から引き出された引き出し配線と
を有し、
前記保護膜の表面をタッチ面とし、このタッチ面への接触物体の接近又は接触を、前 記接触物体と前記検出電極との間の静電容量の変化として感知する
、静電容量式タッチ部材。
【請求項4】
絶縁性材料からなり、フレキシブルな形状又は立体的な形状を有する、フィルム状又 は板状の支持体と、
前記支持体の一方の面の少なくとも一部に配置された、カーボンナノ線状構造体を含 有する光透過性導電層からなる第1の検出電極と、
前記検出電極を被覆する第1の保護膜と、
前記支持体の、前記一方の面の反対側の面の少なくとも一部に配置された、カーボン ナノ線状構造体を含有する光透過性導電層からなる第2の検出電極と、
前記検出電極を被覆する第2の保護膜と、
前記第1の検出電極及び前記第2の検出電極からそれぞれ引き出された引き出し配線 と
を有し、
前記第1の保護膜及び/又は前記第2の保護膜の表面をタッチ面とし、このタッチ面 への接触物体の接触又は接近を、前記接触物体と前記第1の検出電極及び/又は前記第 2の検出電極との間の静電容量の変化として感知する
、静電容量式タッチ部材。
【請求項5】
物品の表面の少なくとも一部に配置された、カーボンナノ線状構造体を含有する光透 過性導電層からなる検出電極と、
前記検出電極を被覆する保護膜と、
前記検出電極から引き出された引き出し配線と
を有し、
前記保護膜の表面をタッチ面とし、このタッチ面への接触物体の接近又は接触を、前 記接触物体と前記検出電極との間の静電容量の変化として感知する
、静電容量式タッチ部材。
【請求項6】
前記物品の前記表面と前記光透過性導電層との間に下地層が設けられている、請求項5に記載した静電容量式タッチ部材。
【請求項7】
前記タッチ面上の位置を区画するように分画された複数の前記検出電極が、電極ごとに独立した引き出し配線とともに設けられており、前記接触物体が接近又は接触する前記タッチ面上のタッチ位置の違いが、前記区画を単位として識別可能である、請求項1〜6のいずれか1項に記載した静電容量式タッチ部材。
【請求項8】
前記光透過性導電層が、前記カーボンナノ線状構造体と導電性樹脂材料との複合体からなる、請求項1〜6のいずれか1項に記載した静電容量式タッチ部材。
【請求項9】
前記カーボンナノ線状構造体がカーボンナノチューブである、請求項1〜6のいずれか1項に記載した静電容量式タッチ部材。
【請求項10】
前記支持体が光透過性である、請求項1〜4のいずれか1項に記載した静電容量式タッチ部材。
【請求項11】
前記保護膜が光透過性である、請求項3〜6のいずれか1項に記載した静電容量式タッチ部材。
【請求項12】
前記支持体の前記立体的な形状が、1つの曲面、曲面の組み合わせ、曲面と平面の組み合わせ、又は平面の組み合わせによって形成されている、請求項1〜4のいずれか1項に記載した静電容量式タッチ部材。
【請求項13】
前記支持体の前記立体的な形状が湾曲した曲面状であり、外側の凸形の面又は内側の凹形の面が前記タッチ面として用いられる、請求項12に記載した静電容量式タッチ部材。
【請求項14】
立体的に閉じた形状の前記タッチ面を有する、請求項12項に記載した静電容量式タッチ部材。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか1項に記載した静電容量式タッチ部材と、
前記引き出し配線を介して前記検出電極に電気的に接続され、前記タッチ面への前記 接触物体の接近又は接触による前記静電容量の変化を検出する検出回路部と
を有する、静電容量式タッチ検出装置。
【請求項16】
他の電子機器とともに用いられ、前記タッチ面への前記接触物体の接近又は接触に応じて前記他の電子機器に電気信号を出力するタッチスイッチとして構成されている、請求項15項に記載した静電容量式タッチ検出装置。
【請求項17】
前記他の電子機器が情報処理装置であり、前記接触物体が接近又は接触する前記タッチ面上のタッチ位置に応じた入力信号を前記情報処理装置へ出力する、タッチパネルとして構成されている、請求項16項に記載した静電容量式タッチ検出装置。
【請求項18】
カーボンナノ線状構造体が分散剤を含有する分散用溶媒中に分散している分散液を調 製する工程を有し、
絶縁性材料からなり、フレキシブルな形状又は立体的な形状を有する、フィルム状 又は板状の支持体の面、或いは、タッチ部材を設ける物品の表面に、前記分散液を被 着させる工程と、
前記分散用溶媒を蒸発させ、前記カーボンナノ線状構造体を前記支持体の面又は前 記物品の表面に固着させる工程と、
前記支持体の面又は前記物品の表面を洗浄用溶媒によって洗浄し、前記分散剤を除 去する工程と、
前記洗浄用溶媒を蒸発させる工程と
からなる一連の工程を所定の回数行い、前記支持体の面又は前記物品の表面にカーボン ナノ線状構造体を含有する光透過性導電層からなる検出電極を形成する工程を有し、
前記検出電極に引き出し配線を設ける工程を有する
、静電容量式タッチ部材の製造方法。
【請求項19】
前記検出電極を被覆し、表面がタッチ面として用いられる保護膜を形成する工程を有する、請求項18に記載した静電容量式タッチ部材の製造方法。
【請求項20】
塗布法、浸漬法、又は印刷法によって前記支持体に前記分散液を被着させる、請求項18に記載した光透過性導電体層の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−244772(P2010−244772A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−90694(P2009−90694)
【出願日】平成21年4月3日(2009.4.3)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】