静電容量方式にも抵抗膜方式にも対応可能な押圧検出機能を有するタッチパネル
【課題】厚みを抑えるとともに、感度のバラツキを抑えることができる押圧検出機能を有するタッチパネルを提供する。
【解決手段】上部透明基板の下面にストライプ状に複数の上部透明電極を設け、下部透明電極の上面に上部透明電極に対して交差する方向にストライプ状に複数の下部透明電極を設け、上部透明電極と下部透明電極との間に隙間が形成されるように、上部透明基板と下部透明基板との対向領域に隙間形成部材を設け、上部透明電極又は下部透明電極の少なくとも一方を覆うように透明感圧インク部材を設け、上部透明基板の厚み方向に外力が加えられたとき、透明感圧インク部材が上部透明電極及び下部透明電極の両方に接触して両者を導通させるように構成する。
【解決手段】上部透明基板の下面にストライプ状に複数の上部透明電極を設け、下部透明電極の上面に上部透明電極に対して交差する方向にストライプ状に複数の下部透明電極を設け、上部透明電極と下部透明電極との間に隙間が形成されるように、上部透明基板と下部透明基板との対向領域に隙間形成部材を設け、上部透明電極又は下部透明電極の少なくとも一方を覆うように透明感圧インク部材を設け、上部透明基板の厚み方向に外力が加えられたとき、透明感圧インク部材が上部透明電極及び下部透明電極の両方に接触して両者を導通させるように構成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、面に加わった外力のうち、当該面に垂直な方向成分の圧力を測定する押圧検出機能を有するタッチパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、タッチパネルを有する電子機器、特に、携帯電話機や携帯ゲーム機などの携帯型電子機器においては、例えば決定ボタンに代わるものとして、タッチパネルに押圧検出機能を付加することが求められている。ここで、押圧検出機能とは、ある面に加わった外力の圧力(押圧力ともいう)を測定する機能をいう。押圧検出機能を有するタッチパネルとしては、例えば、特許文献1(特許第4642158号公報)に開示されたものがある。以下、押圧検出機能を有するタッチパネルをタッチ入力デバイスという。
【0003】
図13は、特許文献1のタッチ入力デバイスを電子機器に取り付けた状態を示す断面図である。図13に示すように、特許文献1のタッチ入力デバイスは、タッチパネル本体101と、タッチパネル本体101の下面に粘着剤103により貼着された感圧センサ102とを備えている。感圧センサ102は、枠状に形成され、電子機器の表示部104の周囲に位置する筐体105の額縁部分105aに接着されている。
【0004】
図14は、感圧センサ102の分解斜視図である。図13及び図14に示すように、感圧センサ102は、上部フィルム121と、上部フィルム121の下面に対して対向配置された下部フィルム122とを備えている。上部フィルム121の下面には、上部電極121aが配置されている。下部フィルム122の上面には、下部電極122aが配置されている。
【0005】
上部フィルム121のコーナー部には、上部電極121aを被覆するようにドット状の上部感圧インク部材123aが配置されている。下部フィルム122のコーナー部には、下部電極122aを被覆し且つ上部感圧インク部材123aと対向するようにドット状の下部感圧インク部材123bが配置されている。上部フィルム121と下部フィルム122との対向領域には、隙間保持部材124が配置されている。隙間保持部材124は、粘着性を有して上部フィルム121と下部フィルム122とを接着するとともに、上部感圧インク部材123aと下部感圧インク部材123bとの各対向面間に隙間131を保持するための絶縁性部材である。隙間保持部材124のコーナー部には、貫通穴124aが設けられている。当該貫通穴124a内に上部及び下部感圧インク部材123a,123bが配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4642158号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記構成を有する特許文献1のタッチ入力デバイスにおいては、タッチパネル本体101と感圧センサ102とを厚み方向に直列的に積層しているので、タッチ入力デバイスの厚みが大きいという課題がある。また、感圧センサ102が枠状に形成されているため、タッチパネル本体101の中心部を押圧したときと、タッチパネル本体101の周縁部を押圧したときとでは、感圧センサ102の感度が異なる。すなわち、押圧位置によって感圧センサ102の感度にバラツキがあるという課題がある。
【0008】
また、近年、電子機器の表示部104の面積を大きくすることが求められている。表示部104の面積を大きくするには、感圧センサ102及び筐体105の額縁部分105aの幅寸法を小さくことが有効であると考えられる。しかしながら、感圧センサ102の幅寸法を小さくすることは、前記感度のバラツキを大きくすることにつながる。このため、感圧センサ102の幅寸法を小さくすることには限界がある。
【0009】
また、従来の感圧センサ102は、上部フィルム121、上部電極121a、上部感圧インク部材123aと、下部フィルム122、下部電極122b、下部感圧インク部材123bとが隙間保持部材124を介して接着される構造となっている。隙間保持部材124には、感圧センサ102を押圧したときに上部感圧インク部材123aと下部感圧インク部材123bとが接触するように、貫通穴124aが形成されている。この貫通穴124aが形成された部分では、当然ながら、上部フィルム122、上部電極121a、上部感圧インク部材123aと、下部フィルム122、下部電極122b、下部感圧インク部材123bとが接着しない。そのため、上部フィルム121と下部フィルム122とが剥がれ易いという問題がある。
【0010】
従って、本発明の目的は、前記課題を解決することにあって、厚みを抑えるとともに、感度のバラツキを抑えることができる押圧検出機能を有するタッチパネルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するために、本発明は以下のように構成する。
本発明の第1態様によれば、上部透明基板と、
前記上部透明基板の下面にストライプ状に配置された複数の上部透明電極と、
前記上部透明基板の下面に対して対向配置された下部透明基板と、
前記下部透明電極の上面に、前記複数の上部透明電極に対して交差する方向にストライプ状に配置された複数の下部透明電極と、
前記上部透明基板と前記下部透明基板との対向領域に配置され、粘着性を有して前記上部透明基板と前記下部透明基板とを接着するとともに、前記複数の上部透明電極と前記複数の下部透明電極との間に隙間を形成する隙間形成部材と、
前記複数の上部透明電極又は前記複数の下部透明電極の少なくとも一方を覆うように設けられ、加えられた押圧力により電気特性が変化する導電性の透明感圧インク部材と、
を備え、
前記上部透明基板の厚み方向に外力が加わることにより前記上部透明基板が変形したとき、前記透明感圧インク部材が前記上部透明電極及び前記下部透明電極の両方に接触して両者を導通させる、押圧検出機能を有するタッチパネルを提供する。
【0012】
本発明の第2態様によれば、前記透明感圧インク部材は、前記複数の下部透明電極のみを覆うように設けられている、第1態様に記載の押圧検出機能を有するタッチパネルを提供する。
【0013】
本発明の第3態様によれば、前記隙間には、絶縁性を有する透明液が充填されている、第1又は2態様に記載の押圧検出機能を有するタッチパネルを提供する。
【0014】
本発明の第4態様によれば、前記透明液の屈折率は、空気の屈折率よりも高い、第3態様に記載の押圧検出機能を有するタッチパネルを提供する。
【0015】
本発明の第5態様によれば、前記透明液の25℃における動粘度は、50万mm2/Sより低い、第3又は4態様に記載の押圧検出機能を有するタッチパネルを提供する。
【0016】
本発明の第6態様によれば、前記透明液の耐熱性の範囲は、−45℃〜125℃である、第3〜5態様のいずれか1つに記載の押圧検出機能を有するタッチパネルを提供する。
【0017】
本発明の第7態様によれば、前記上部透明電極の上面には、透明導電膜が形成されている、第1〜6態様のいずれか1つに記載の押圧検出機能を有するタッチパネルを提供する。
【0018】
本発明の第8態様によれば、前記複数の上部透明電極及び前記複数の下部透明電極のそれぞれと接続された、前記上部透明基板が押圧された位置を検出するための検出回路と、
前記複数の上部透明電極及び前記複数の下部透明電極のそれぞれと前記検出回路とを間を接離する複数のスイッチと、
前記複数のスイッチを、互いに隣り合う所定数のスイッチ毎にオンオフを制御する制御部と、
を備える、第1〜7態様のいずれか1つに記載の押圧検出機能を有するタッチパネルを提供する。
【発明の効果】
【0019】
従来の押圧検出機能を有するタッチパネルは、タッチパネル本体と感圧センサとを別々に作製した後、組み合わせるという思想の下で作製されている。このため、タッチパネル本体の各電極及び感圧センサの各電極を支持する複数の基板、それらの基板を接着する複数の接着層がそれぞれ必要になり、厚みが大きくなる。
【0020】
これに対し、本発明にかかる押圧検出機能を有するタッチパネルによれば、上部透明基板と下部透明基板の2つの基板に、タッチパネルの機能を発揮するために必要な上部透明電極及び下部透明電極と、感圧センサの機能を発揮するために必要な感圧インク部材とを設けるようにしている。これにより、厚みを大幅に抑えることができる。
【0021】
また、本発明にかかる押圧検出機能を有するタッチパネルによれば、透明感圧インク部材を、枠状に設けるのではなく、複数の上部透明電極又は複数の下部透明電極の少なくとも一方を覆うように設けている。すなわち、複数の上部透明基板又は複数の下部透明基板の略全体に透明感圧インク部材を設けるようにしている。これにより、感度のバラツキを抑えることができる。また、感圧インク部材として透明感圧インク部材を用いているので、感圧インク部材による透過率(表示部の視認性)の低下を抑えることができる。また、特許文献1のように、隙間形成部材に貫通穴を設ける必要がないので、上部透明基板と下部透明基板との接着性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1実施形態にかかるタッチ入力デバイスを搭載する携帯電話機の斜視図である。
【図2】図1のA1−A1線の模式断面図である。
【図3】図1のタッチ入力デバイスにおいて、上部透明基板の入力面に押圧力が加えられたときの状態を示す模式断面図である。
【図4】本発明の第1実施形態にかかるタッチ入力デバイスの第1変形例を示す模式断面図である。
【図5】本発明の第1実施形態にかかるタッチ入力デバイスの第2変形例を示す模式断面図である。
【図6】複数の上部透明電極がそれぞれスイッチを介して連結されると共に、複数の下部透明電極がそれぞれスイッチを介して連結された状態を模式的に示す説明図である。
【図7】本発明の第2実施形態にかかるタッチ入力デバイスの模式断面図である。
【図8】図7のタッチ入力デバイスにおいて、上部透明基板の入力面に押圧力が加えられたときの状態を示す模式断面図である。
【図9】本発明の第3実施形態にかかるタッチ入力デバイスの模式断面図である。
【図10】上部透明電極の上面に形成される透明導電膜の第1形成パターンを示す上面図である。
【図11】上部透明電極の上面に形成される透明導電膜の第2形成パターンを示す上面図である。
【図12】上部透明電極の上面に形成される透明導電膜の第3形成パターンを示す上面図である。
【図13】従来のタッチ入力デバイスを電子機器に取り付けた状態を示す断面図である。
【図14】従来のタッチ入力デバイスが備える感圧センサの分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の全ての図において、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0024】
《第1実施形態》
本発明の第1実施形態にかかるタッチ入力デバイスは、例えば、電子機器、特に携帯電話機若しくはゲーム機などの携帯型電子機器のディスプレイのタッチ入力デバイスとして好適に機能する。本第1実施形態では、タッチ入力デバイスが携帯電話機に搭載される例を説明する。
【0025】
図1は、本発明の第1実施形態にかかるタッチ入力デバイスを搭載する携帯電話機の斜視図であり、図2は、図1のA1−A1線の断面図である。
【0026】
図1及び図2に示すように、携帯電話機1は、前面に矩形の表示窓2Aが形成された合成樹脂製の略直方体形状の筐体2と、液晶若しくは有機ELなどの矩形の表示部3Aを有し且つ筐体2内に内蔵された表示装置3と、表示窓2Aに嵌め込まれたタッチ入力デバイス4と、筐体2の前面に配置された複数の入力キー5とを備えている。
【0027】
筐体2の表示窓2Aは、タッチ入力デバイス4の嵌め込みを許容するため、段差を有するように形成されている。表示窓2Aの底面には、表示装置3の表示部3Aが視認できるように矩形の開口部2aが形成されている。タッチ入力デバイス4は、開口部2aの周囲の矩形枠状の額縁部分2b上に粘着剤(図示せず)により貼着されて、開口部2aを塞ぐ。
【0028】
なお、表示窓2Aの形状若しくは大きさは、タッチ入力デバイス4の形状若しくは大きさに応じて種々の変更が可能である。表示窓2Aの段差は、タッチ入力デバイス4の厚みなどに応じて種々の変更が可能である。表示窓2Aの開口部2aの形状若しくは大きさは、表示部3Aの形状若しくは大きさなどに応じて種々の変更が可能である。本第1実施形態では一例として、表示窓2A、開口部2a、表示部3A、及びタッチ入力デバイス4の形状を矩形とし、筐体2の表面とタッチ入力デバイス4の表面との高さが同じになるように、表示窓2Aの段差を設定している。
【0029】
タッチ入力デバイス4は、タッチ入力デバイス4の入力面に対するタッチ操作に基づいて、その操作位置となる平面座標(XY座標)を検出するとともに、入力面と直交する方向(Z方向)に加えられた押圧力の強さを検出するように構成されている。
【0030】
具体的には、タッチパネル入力デバイス4は、入力面となる上部透明基板11と、筐体2の額縁部分2bに接着される部分となる下部透明基板12とを備えている。上部透明基板11の下面には、複数の上部透明電極11aがストライプ状に配置されている。下部透明基板12の上面には、複数の下部透明電極12aが、複数の上部透明電極11aに対して交差する方向(好ましくは直交する方向)にストライプ状に配置されている。本第1実施形態では一例として、複数の上部透明電極11aをX軸方向にストライプ状に形成し、複数の下部透明電極12aをY軸方向にストライプ状に形成している。なお、上部透明電極11a及び下部透明電極12aは、直線形状に限定されるものではなく、例えば、波形状であっても、太さが途中で変わるようなものであってもよい。また、複数の上部透明電極11a及び複数の下部透明電極12aは、図示していないが、バスバー若しくは引き回し先等の外部と通電するための所定のパターンの引き回し回路と接続されている。
【0031】
複数の下部透明電極12a上には、導電性を有する透明感圧インク部材13が複数の下部透明電極12aを覆うように配置されている。すなわち、透明感圧インク13は、複数の下部透明電極12aの略全体に設けられている。透明感圧インク部材13は、加えられた押圧力により電気特性が変化する性質を有している。上部透明基板11と下部透明基板12との対向領域には、隙間形成部材14が配置されている。隙間形成部材14は、粘着性を有して上部透明基板11と下部透明基板12とを接着するとともに、複数の上部透明電極12aと感圧センサ13との間に隙間21を形成するための絶縁性部材である。隙間形成部材14は、タッチ入力デバイス4を厚み方向から見たとき、複数の上部透明電極11a、複数の下部透明電極12a、及び感圧インク部材13を包含するように枠状に形成されている。
【0032】
図2に示す上部透明基板11の上方から使用者の指などの導体が近づけられたとき、上部透明電極11aと導体との距離が変化することにより、上部透明電極11aと導体との間に発生する静電容量が変化する。また、下部透明電極12aと導体との距離が変化することにより、下部透明電極12aと導体との間に発生する静電容量が変化する。これらの静電容量の変化を検出することにより、平面視における導体の位置(XY座標)を検出することができる。
【0033】
図3は、上部透明基板11の入力面に押圧力Pが加えられたときのタッチ入力デバイス4の状態を示している。図3に示すように、上部透明基板11の入力面に指などの導体により押圧力Pが加えられたとき、上部透明基板11が撓むなどして変形する。これにより、少なくとも押圧力Pが加えられた部分に最も近い透明感圧インク部材13aが上部透明電極11a及び下部透明電極12aの両方に接触して両者が導通する。透明感圧インク部材13は、上部及び下部透明電極11a,12aから受ける挟持力の変化により、電気的特性(抵抗値)が変化するので、当該透明感圧インク部材13を介して導通した上部透明電極11aと下部透明電極12aとの間の電圧値を測定することにより、入力面と直交する方向(Z方向)に加えられた押圧力Pの強さを検出することができる。
【0034】
一方、図2に示す上部透明基板11の上方からペンなどの不導体が近づけられたときは、不導体と上部透明電極11aとの間の静電容量、及び不導体と下部透明電極12aとの間の静電容量は変化しない。このため、不導体の位置及び不導体による押圧力Pは以下のように検知する。
【0035】
すなわち、ペンなどの不導体により図3に示すように押圧力Pが加えられたとき、前述したように、少なくとも押圧力Pが加えられた部分に最も近い透明感圧インク部材13aが上部透明電極11a及び下部透明電極12aの両方に接触して両者が導通する。このとき、複数の上部透明電極11a及び複数の下部透明電極12aのうちいずれの上部透明電極11a及び下部透明電極12aが導通したかを検出することにより、操作位置となる平面座標(XY座標)を検出することができる。また、前述したように、透明感圧インク部材13を介して導通した上部透明電極11aと下部透明電極12aとの間の電圧値を測定することにより、入力面と直交する方向(Z方向)に加えられた押圧力Pの強さを検出することができる。
【0036】
なお、導体又は不導体で上部透明基板11を下方に撓ませたとき、上部透明電極11aと下部透明電極12aとの距離が変化するため、上部透明電極11aと下部透明電極12aとの間で発生する静電容量が変化する。この静電容量の変化に基づいて、前記操作位置となる平面座標(XY座標)を検出することもできる。
【0037】
上部及び下部透明基板11,12の厚み寸法は、例えば、25μm〜100μmに設定されている。上部及び下部透明基板11,12の材質としては、透視性、剛性、及び加工性に優れた材質を用いることが好ましい。例えば、上部透明基板11の材質としては、ガラス、ポリメチルメタクリレート(PMMA)樹脂、若しくは、ポリカーボネート(PC)樹脂などを用いることができる。また、上部及び下部透明基板11,12の材質として、フレキシブル基板に使用可能な材質、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ABS樹脂、AS樹脂、アクリル系樹脂、若しくは、AN樹脂などの汎用樹脂を用いることができる。さらに、上部及び下部透明基板11,12の材質として、ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリカーボネート変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、若しくは、超高分子量ポリエチレン樹脂などの汎用エンジニアリング樹脂、又は、ポリスルホン樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂、ポリフェニレンオキシド系樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリイミド樹脂、液晶ポリエステル樹脂、若しくは、ポリアリル系耐熱樹脂などのスーパーエンジニアリング樹脂を用いることもできる。
【0038】
上部及び下部透明電極11a,12aの厚み寸法は、例えば、50〜2000Åに設定されている。上部及び下部透明電極11a,12aは、透明導電膜より構成されている。透明導電膜の材料としては、酸化錫、酸化インジウム、酸化アンチモン、酸化亜鉛、酸化カドミウム、若しくはITO等の金属酸化物、又は、銀ナノワイヤー、カーボンナノチューブ、導電性ポリマーの薄膜が一例として挙げられる。上部及び下部透明電極11a,12aの形成方法としては、例えば、真空蒸着法、スパッタリング、イオンプレーティング、CVD法、若しくは、ロールコーター法などを用いて各透明基板11,12の全面に導電性被膜を形成した後、不要な部分をエッチング除去する方法がある。前記エッチングは、電極として残したい部分にフォトリソ法又はスクリーン法などによりレジストを形成した後、塩酸などのエッチング液に浸漬することにより行うことができる。また、前記エッチングは、前記レジストの形成後、エッチング液を噴射してレジストが形成されていない部分の導電性被膜を除去し、その後、溶剤に浸漬することによりレジストを膨潤又は溶解させて除去することにより行うこともできる。また、上部及び下部透明電極11a,12aの形成は、レーザーにより行うこともできる。
【0039】
透明感圧インク部材13の厚み寸法(下部透明基板12からの高さ)は、下部透明電極12aの厚み寸法よりも大きく、例えば1μm〜10μmに設定されている。透明感圧インク部材13を構成する組成物は、外力に応じて電気抵抗値などの電気特性が変化する導電性の素材で構成されている。より具体的には、透明感圧インク部材13は、圧力の印加に伴って、前記組成物の内部に多数含まれる導電性の粒子である感圧粒子間であって、近接している複数の感圧粒子間で、直接的な接触の有無とは関係なく、トンネル電流が流れて、絶縁状態から通電状態に変化するものである。前記組成物として、例えば、英国のダーリントン(Darlington)のペラテック社(Peratech LTD)から商品名「QTC Clear」で入手可能な量子トンネル現象複合材料(Quantum Tunneling Composite)を用いることができる。なお、量子トンネル現象複合材料を用いることで、透明感圧インク部材13は、加えられた力に応じて抵抗値を変化させることができる。透明感圧インク部材13は、塗布により下部透明基板12に配置することができる。透明感圧インク部材13の塗布方法としては、スクリーン印刷、オフセット印刷、グラビア印刷、又はフレキソ印刷などの印刷法を用いることができる。
【0040】
隙間保持部材14の厚み寸法は、例えば、2〜300μmに設定されている。隙間形成部材14としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルムなどの芯材の両面にアクリル系の接着糊などの粘着剤を形成した両面粘着テープのほか、UV硬化性接着剤、熱硬化性接着剤、湿気硬化型接着剤、嫌気性硬化型接着剤を用いることができる。
【0041】
以上、本第1実施形態にかかるタッチ入力デバイスによれば、上部透明基板11と下部透明基板12の2つの基板に、タッチパネルの機能を発揮するために必要な上部透明電極11a及び下部透明電極12aと、感圧センサの機能を発揮するために必要な透明感圧インク部材13とを設けるようにしている。これにより、従来のタッチ入力デバイスに比べて、厚みを大幅に抑えることができる。
【0042】
また、本第1実施形態にかかるタッチ入力デバイスによれば、透明感圧インク部材13を、枠状に設けるのではなく、複数の下部透明電極12aを覆うように設けている。すなわち、複数の下部透明基板12aの略全体に透明感圧インク部材13を設けるようにしている。これにより、感度のバラツキを抑えることができる。また、感圧インク部材として透明感圧インク部材13を用いているので、感圧インク部材による透過率(表示部3Aの視認性)の低下を抑えることができる。また、特許文献1のように、隙間形成部材14に貫通穴を設ける必要がないので、上部透明基板11と下部透明基板12との接着性を向上させることができる。
【0043】
また、本第1実施形態にかかるタッチ入力デバイスによれば、透明感圧インク部材13の幅寸法に依存することなく、筐体2の額縁部分2bの幅寸法を小さくすることができるので、表示部3Aの面積を大きくすることができる。
【0044】
また、本第1実施形態にかかるタッチ入力デバイスは、抵抗膜方式のタッチパネルとしても、静電容量方式のタッチパネルとしても、またそれら両方の方式に対応可能なタッチパネルとしても使用することができる。
【0045】
なお、本発明は前記第1実施形態に限定されるものではなく、その他種々の態様で実施可能である。例えば、前記第1実施形態では、図2に示すように、複数の下部透明電極12aのそれぞれに透明感圧インク部材13を形成するようにしたが、本発明はこれに限定されない。例えば、図4に示すように、複数の下部透明電極12aを1つの透明感圧インク部材13で覆うようにしてもよい。
【0046】
また、前記第1実施形態では、複数の下部透明電極12aのみに透明感圧インク部材13を形成するようにしたが、本発明はこれに限定されない。例えば、図5に示すように、複数の上部透明電極11a及び複数の下部透明電極12aの両方を透明感圧インク部材13で覆うようにしてもよい。また、複数の上部透明電極11aのみに透明感圧インク部材13を形成するようにしてもよい。すなわち、複数の上部透明電極11a及び複数の下部透明電極12aの少なくともいずれか一方を透明感圧インク部材13で覆うようにすればよい。なお、上部透明基板11に押圧力Pが加えられたとき、通常、上部透明基板11の方が下部透明基板12に比べて変形量(撓み量)が大きくなる。この変形量の違いにより、上部透明電極11aに設けられた透明感圧インク部材13の方が、下部透明電極12aに設けられた透明感圧インク部材13よりも劣化しやすい。このため、複数の上部透明電極11a及び複数の下部透明電極12aのいずれか一方に透明感圧インク部材13を設ける場合は、複数の下部透明電極12aに透明感圧インク部材13を設ける方が好ましい。
【0047】
また、前記第1実施形態では、上部透明基板11の上面を入力面とし、上部透明基板11が直接押圧されるように構成したが、本発明はこれに限定されない。例えば、上部透明基板11の上面に、保護パネルなどの別の透明基板を設けて、上部透明基板11が間接的に押圧されるように構成してもよい。この場合、上部透明基板11が外部に露出しないので、上部透明基板11の材質として表面耐擦性などが優れた材質を用いる必要性をなくすことができる。なお、保護パネルは、上部透明基板11を保護するためのフィルム又は板材であり、耐傷性、防汚性を備えるものである。保護パネルの厚み寸法は、例えば、0.25〜3.00mmである。保護パネルとしては、例えば、有機無機ハイブリッド材料を使用することができる。また、上部透明基板11の上面に本発明のタッチパネルを装飾する加飾層を設けてもよい。
【0048】
また、前記第1実施形態では、下部透明基板12の下面を筐体2の額縁部分2bに直接接着するようにしたが、本発明はこれに限定されない。例えば、下部透明基板12の下面に別の透明基板を設けて、下部透明基板12が間接的に筐体2の額縁部分2bに接着されるように構成してもよい。また、下部透明基板12の下面には、表示装置3から発生する妨害電磁波(交流のノイズ)を遮蔽する、いわゆる電磁シールドの役割を果たす電磁シールド用透明電極が設けられることが好ましい。この電磁シールド用透明電極は、前記別の透明基板に設けられてもよい。
【0049】
次に、図6を用いて、本第1実施形態にかかるタッチ入力デバイス4の押圧位置検出方法の一例について説明する。図6は、複数の上部透明電極がそれぞれスイッチを介して連結されると共に、複数の下部透明電極がそれぞれスイッチを介して連結された状態を模式的に示す説明図である。
【0050】
ここでは、説明の便宜上、複数の上部透明電極11aは、8本の上部透明電極11a1〜11a8で構成されるものする。また、複数の下部透明電極12aは、8本の下部透明電極12a1〜12a8で構成されるものとする。また、タッチ入力デバイス4は、静電容量方式のタッチパネルとして使用されるものとする。
【0051】
図6に示すように、上部透明電極11a1〜11a8及び下部透明電極12a1〜12a8は、上部透明基板11が押圧された位置を検出するための検出回路6と接続されている。上部透明電極11a1〜11a8のそれぞれと検出回路6とは、スイッチS1〜S8により接離されている。また、下部透明電極12a1〜12a8のそれぞれと検出回路6とは、スイッチS11〜S18により接離されている。スイッチS1〜S8及びスイッチS11〜S18はそれぞれ、制御部7によりオンオフを制御される。
【0052】
例えば、制御部7は、スイッチS1〜S8及びスイッチS11〜S18のオンオフを以下のように制御する。
【0053】
まず、制御部7は、スイッチS1〜S8のうちスイッチS1のみをオンする。これにより、検出回路6が上部透明電極11a1と指との間に発生する静電容量を検出する。
次いで、制御部7は、スイッチS1をオフしてスイッチS2をオンする。これにより、検出回路6が上部透明電極11a2と指との間に発生する静電容量を検出する。
次いで、制御部7は、スイッチS2をオフしてスイッチS3をオンする。これにより、検出回路6が上部透明電極11a3と指との間に発生する静電容量を検出する。
以下同様にして、制御部7は、1つのスイッチをオンして他のスイッチをオフする制御をスイッチS1〜S8まで繰り返し、検出回路6は、オンされたスイッチに接続された上部透明電極と指との間に発生する静電容量を逐次検出する。
【0054】
前記スイッチS1〜S8のオンオフ制御に同期して又は前記オンオフ制御の後、制御部7は、スイッチS11〜S18のうちスイッチS11のみをオンする。これにより、検出回路6が下部透明電極12a1と指との間に発生する静電容量を検出する。
次いで、制御部7は、スイッチS11をオフしてスイッチS12をオンする。これにより、検出回路6が下部透明電極12a2と指との間に発生する静電容量を検出する。
次いで、制御部7は、スイッチS12をオフしてスイッチS13をオンする。これにより、検出回路6が、下部透明電極12a3と指との間に発生する静電容量を検出する。
以下同様にして、制御部7は、1つのスイッチをオンして他のスイッチをオフする制御をスイッチS11〜S18まで繰り返し、検出回路6は、オンされたスイッチに接続された上部透明電極と指との間に発生する静電容量を逐次検出する。
【0055】
例えば、上部透明電極11a3と下部透明電極12a3との交点B1に使用者の指が近づいたとき、上部透明電極11a1〜8と指との間に発生する各静電容量の検出値のうち、
上部透明電極11a3と指との間に発生する静電容量の検出値が最も大きくなる。また、下部透明電極12a1〜8と指との間に発生する各静電容量の検出値のうち、下部透明電極12a3と指との間に発生する静電容量の検出値が最も大きくなる。従って、これら最も大きい検出値に基づいて、指が近づいた位置を特定することができる。
【0056】
なお、前述したように、本第1実施形態にかかるタッチ入力デバイス4は、抵抗膜方式のタッチパネルとしても、静電容量方式のタッチパネルとしても使用することができる。例えば、タッチ入力デバイス4は、抵抗膜式デジタル型タッチパネルやミューチュアル(mutual)式静電容量方式タッチパネル、セルフ(self)式静電容量方式タッチパネルなどに適用可能である。一般に、抵抗膜式デジタル型タッチパネルは、ミューチュアル(mutual)式静電容量方式タッチパネルと比べて、電極幅(配線幅)が狭いため、感度の低下が懸念されている。また、抵抗膜式デジタル型タッチパネルでは、上部電極と下部電極の電極幅がほぼ同じであることが多いが、ミューチュアル式静電容量方式タッチパネルでは、送信側と受信側とで電極幅が異なることが多い(相互の干渉による感度低下を防ぐため)。また、セルフ(self)式静電容量方式タッチパネルは、各電極幅が狭く、感度が十分に確保できない。さらに、静電検出状態のまま、上部電極と下部電極が接触した場合、静電容量の検出ができなくなるおそれがある。
【0057】
そこで、制御部7は、スイッチS1〜S8及びスイッチS11〜S18のオンオフを、例えば以下のように制御することが好ましい。
【0058】
まず、制御部7は、スイッチS1〜S8のうちスイッチS1,S2(互いに隣接する2つのスイッチ)を同時にオンする。これにより、検出回路6が上部透明電極11a1,11a2と指との間に発生する静電容量を検出する。
次いで、制御部7は、スイッチS1,S2をオフしてスイッチS3,S4をオンする。これにより、検出回路6が上部透明電極11a3,11a4と指との間に発生する静電容量を検出する。
以下同様にして、制御部7は、互いに隣り合う2つのスイッチをオンして他のスイッチをオフする制御をスイッチS1〜S8まで繰り返し、検出回路6は、オンされたスイッチに接続された2本の上部透明電極と指との間に発生する静電容量を逐次検出する。
【0059】
前記スイッチS1〜S8のオンオフ制御に同期して又は前記オンオフ制御の後、制御部7は、スイッチS11〜S18のうちスイッチS11,S12(互いに隣接する2つのスイッチ)をオンする。これにより、検出回路6が下部透明電極12a1,12a2と指との間に発生する静電容量を検出する。
次いで、制御部7は、スイッチS11,S12をオフしてスイッチS13,S14をオンする。これにより、検出回路6が下部透明電極12a3,12a4と指との間に発生する静電容量を検出する。
以下同様にして、制御部7は、互いに隣り合う2つのスイッチをオンして他のスイッチをオフする制御をスイッチS11〜S18まで繰り返し、検出回路6は、オンされたスイッチに接続された2本の下部透明電極と指との間に発生する静電容量を逐次検出する。
【0060】
例えば、上部透明電極11a3と下部透明電極12a3との交点B1に使用者の指が近づいたとき、上部透明電極11a1〜8と指との間に発生する各静電容量の検出値のうち、
上部透明電極11a3,11a4と指との間に発生する静電容量の検出値が最も大きくなる。また、下部透明電極12a1〜8と指との間に発生する各静電容量の検出値のうち、下部透明電極12a3,12a4と指との間に発生する静電容量の検出値が最も大きくなる。従って、これら最も大きい検出値に基づいて、指が近づいた位置を特定することができる。
【0061】
前述のような互いに隣り合う2つのスイッチを同期してオンする制御を行うことで、見かけ上、電極幅を2倍にすることができる。これにより、上部透明電極11及び下部透明電極12の電極幅が狭い場合であっても、見かけ上、それらの電極幅を大きくして、感度を向上させることができる。なお、前記では、互いに隣り合う2つのスイッチを同期してオンする制御を行うようにしたが、互いに隣り合う3以上のスイッチを同期してオンする制御を行うようにしてもよい。これにより、感度を任意に変化させることが可能になる。
【0062】
また、前記では、スイッチS1〜S8及びスイッチS11〜S18の全てを順にオンするようにしたが、例えば、スイッチS1、スイッチS3、スイッチS5、スイッチS7の順にオンするなど、オンするスイッチを減らしてもよい。すなわち、検出解像度が低下しない範囲で、オンするスイッチを間引いてもよい。これにより、見かけ上、電極幅を狭くすることができ、検出速度の低下を防ぐことができる。
【0063】
また、前記では、スイッチS1〜S8を,スイッチS1,S2→スイッチS3,S4→スイッチS5,S6・・・の順にオンするようにしたが、スイッチS1,S2→スイッチS2,S3→スイッチS3,S4・・・の順にオンするようにしてもよい。スイッチS1,S2→スイッチS3,S4→スイッチS5,S6・・・の順にオンするようにした場合、スイッチS1〜S8を1つずつ順にオンする場合と比べて解像度が半分になる。この解像度の低下は、互いに隣り合う3以上のスイッチを同期してオンする制御を行うようにした場合に特に顕著になる。スイッチS1,S2→スイッチS2,S3→スイッチS3,S4・・・の順にオンする、すなわち、オンするスイッチを一部重複させることで、感度を向上させつつ、解像度の低下を低減することが可能になる。なお、前記では、スイッチS1〜S8のオンオフ制御について述べたが、スイッチS11〜S18についても同様である。
【0064】
《第2実施形態》
図7は、本発明の第2実施形態にかかるタッチ入力デバイスの模式断面図である。本第2実施形態にかかるタッチ入力デバイス4Aが、前記第1実施形態にかかるタッチ入力デバイス4と異なる点は、隙間21に絶縁性を有する透明液41が充填されている点である。
【0065】
前記第1実施形態のタッチ入力デバイス4において隙間21には空気が存在する。空気は透明であるので、タッチ入力デバイス4の全体の透過率は高い。しかしながら、タッチ入力デバイス4を見る角度によっては、隙間21に存在する空気に起因して光が反射し、透過率が低下することがある。
【0066】
これに対し、本第2実施形態にかかるタッチ入力デバイス4Aによれば、隙間21に絶縁性を有する透明液41を充填することにより、光の反射を抑えて、透過率の低下を抑えることができる。また、液体は、通常、空気よりも誘電率が高いので、隙間21に絶縁性を有する透明液41を充填することにより、感度を向上させることができる。
【0067】
なお、隙間21に透明液41を充填する場合、透明液41が漏れ出さないように、隙間21の密閉度を高くする必要がある。このため、図8に示すように、タッチ入力デバイス4Aに押圧力Pが加えられ、上部透明基板11などが変形したときであっても、隙間21の体積が変わらないように、隙間形成部材14は弾性変形可能に構成されることが好ましい。
【0068】
透明液41としては、シリコーン系、フッ素系、炭化水素系又はアルコール系の不活性液体を用いることが好ましい。この種の透明液としては、例えば、3M社製のフロリナート(登録商標)、ノベック(登録商標)、信越化学社製のシリコンオイル(商品名「KF」、「HIVAC」)、炭化水素系の光学オイル、アルコール系のポリエチレングリコールなどが挙げられる。
【0069】
また、透明液41の屈折率は、空気よりも高い、すなわち1.0より高いことが好ましい。これにより、ニュートンリングの発生を抑えて、光学特性透過率を向上させ、表示部3Aの視認性を向上させることができる。また、透明液41の屈折率は、上部透明基板11の屈折率の±0.5の範囲にあることがさらに好ましい。これにより、ニュートンリングの発生をより一層抑えて、光学特性透過率を一層向上させ、表示部3Aの視認性を一層向上させることができる。
【0070】
また、透明液41の動粘度が高すぎると、タッチ入力デバイス4Aを押圧したときに、上部透明電極11aと透明感圧インク部材13とが接触し難くなる。このため、透明液41の25℃における動粘度は、50万mm2/Sより低いことが好ましい。また、透明液41の25℃における動粘度は、5万mm2/Sより低いことがさらに好ましい。これにより、上部透明電極11aと透明感圧インク部材13とをより一層接触し易くすることができるとともに、当該接触後に元の状態に戻り易くすることができる。また、透明液41の25℃における動粘度が低いと、透明液41を密封する部材(例えば、上部透明基板11及び下部透明基板12など)の剛性が低い場合においてタッチ入力デバイス4Aを垂直方向に配置したときに、絶縁性を保持することができないおそれがある。このため、透明液41の25℃における動粘度は、0.65mm2/Sであることが好ましい。
【0071】
また、透明液41には、耐熱性の範囲が−45℃〜125℃であるものを使用することが好ましい。これにより、通常の使用環境によって、透明液41が固まったり、緩くなったりせず、タッチ入力デバイス4Aの使用時に安定した入力値を得ること(再現性(精度)を高くすること)ができる。
【0072】
《第3実施形態》
図9は、本発明の第3実施形態にかかるタッチ入力デバイスの模式断面図である。本第3実施形態にかかるタッチ入力デバイス4Bが、前記第2実施形態にかかるタッチ入力デバイス4Aと異なる点は、上部透明電極11の上面に透明導電膜51が形成されている点である。
【0073】
透明導電膜51は、例えば携帯電話機のアンテナなどとして機能するよう形成されている。これにより、タッチ入力デバイス4Bを携帯電話機等に取り付ける際に、別途アンテナを取り付けるなどの手間を省くことができる。
【0074】
なお、タッチ入力デバイス4Bが静電容量方式のタッチパネルとして使用される場合、上部透明電極11a及び下部透明電極12aが形成されている領域VAに透明導電膜51を形成すると、当該透明導電膜51により指と上部透明電極11a又は下部透明電極12aとの間に発生する静電容量の検知が阻害される。このため、タッチ入力デバイス4Bが静電容量方式のタッチパネルとして使用される場合には、図10に示すように、領域VAの外側の領域に透明導電膜51Aを形成することが好ましい。一方、タッチ入力デバイス4Bが抵抗膜方式のタッチパネルとして使用される場合には、前記問題が生じない。すなわち、抵抗膜方式の位置検出は、上部透明電極11aと下部透明電極12aとが導通するか否かを検知することによって行うので、指と上部透明電極11a又は下部透明電極12aとの間に発生する静電容量を検知する必要がない。このため、図11又は図12に示すように、領域VAを横切るように透明導電膜51B,51Cを形成することができる。
【0075】
なお、前記様々な実施形態のうちの任意の実施形態を適宜組み合わせることにより、それぞれの有する効果を奏するようにすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明にかかる押圧機能を有するは、厚みを抑えるとともに、感度のバラツキを抑えることができるので、PDA、ハンディターミナルなどの携帯情報端末、コピー機、ファクシミリなどのOA機器、スマートフォン、携帯電話機、携帯ゲーム機器、電子辞書、カーナビゲーションシステム、小型PC、若しくは各種家電品などの電子機器に有用である。
【符号の説明】
【0077】
1 携帯電話機
2 筐体
2A 表示窓
3 表示装置
3A 表示部
4 タッチ入力デバイス
5 入力キー
6 検出回路
7 制御部
11 上部透明基板
11a 上部透明電極
12 下部透明基板
12a 下部透明電極
13 透明感圧インク部材
14 隙間形成部材
21 隙間
31 スイッチ
41 透明液
51 透明導電膜
【技術分野】
【0001】
本発明は、面に加わった外力のうち、当該面に垂直な方向成分の圧力を測定する押圧検出機能を有するタッチパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、タッチパネルを有する電子機器、特に、携帯電話機や携帯ゲーム機などの携帯型電子機器においては、例えば決定ボタンに代わるものとして、タッチパネルに押圧検出機能を付加することが求められている。ここで、押圧検出機能とは、ある面に加わった外力の圧力(押圧力ともいう)を測定する機能をいう。押圧検出機能を有するタッチパネルとしては、例えば、特許文献1(特許第4642158号公報)に開示されたものがある。以下、押圧検出機能を有するタッチパネルをタッチ入力デバイスという。
【0003】
図13は、特許文献1のタッチ入力デバイスを電子機器に取り付けた状態を示す断面図である。図13に示すように、特許文献1のタッチ入力デバイスは、タッチパネル本体101と、タッチパネル本体101の下面に粘着剤103により貼着された感圧センサ102とを備えている。感圧センサ102は、枠状に形成され、電子機器の表示部104の周囲に位置する筐体105の額縁部分105aに接着されている。
【0004】
図14は、感圧センサ102の分解斜視図である。図13及び図14に示すように、感圧センサ102は、上部フィルム121と、上部フィルム121の下面に対して対向配置された下部フィルム122とを備えている。上部フィルム121の下面には、上部電極121aが配置されている。下部フィルム122の上面には、下部電極122aが配置されている。
【0005】
上部フィルム121のコーナー部には、上部電極121aを被覆するようにドット状の上部感圧インク部材123aが配置されている。下部フィルム122のコーナー部には、下部電極122aを被覆し且つ上部感圧インク部材123aと対向するようにドット状の下部感圧インク部材123bが配置されている。上部フィルム121と下部フィルム122との対向領域には、隙間保持部材124が配置されている。隙間保持部材124は、粘着性を有して上部フィルム121と下部フィルム122とを接着するとともに、上部感圧インク部材123aと下部感圧インク部材123bとの各対向面間に隙間131を保持するための絶縁性部材である。隙間保持部材124のコーナー部には、貫通穴124aが設けられている。当該貫通穴124a内に上部及び下部感圧インク部材123a,123bが配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4642158号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記構成を有する特許文献1のタッチ入力デバイスにおいては、タッチパネル本体101と感圧センサ102とを厚み方向に直列的に積層しているので、タッチ入力デバイスの厚みが大きいという課題がある。また、感圧センサ102が枠状に形成されているため、タッチパネル本体101の中心部を押圧したときと、タッチパネル本体101の周縁部を押圧したときとでは、感圧センサ102の感度が異なる。すなわち、押圧位置によって感圧センサ102の感度にバラツキがあるという課題がある。
【0008】
また、近年、電子機器の表示部104の面積を大きくすることが求められている。表示部104の面積を大きくするには、感圧センサ102及び筐体105の額縁部分105aの幅寸法を小さくことが有効であると考えられる。しかしながら、感圧センサ102の幅寸法を小さくすることは、前記感度のバラツキを大きくすることにつながる。このため、感圧センサ102の幅寸法を小さくすることには限界がある。
【0009】
また、従来の感圧センサ102は、上部フィルム121、上部電極121a、上部感圧インク部材123aと、下部フィルム122、下部電極122b、下部感圧インク部材123bとが隙間保持部材124を介して接着される構造となっている。隙間保持部材124には、感圧センサ102を押圧したときに上部感圧インク部材123aと下部感圧インク部材123bとが接触するように、貫通穴124aが形成されている。この貫通穴124aが形成された部分では、当然ながら、上部フィルム122、上部電極121a、上部感圧インク部材123aと、下部フィルム122、下部電極122b、下部感圧インク部材123bとが接着しない。そのため、上部フィルム121と下部フィルム122とが剥がれ易いという問題がある。
【0010】
従って、本発明の目的は、前記課題を解決することにあって、厚みを抑えるとともに、感度のバラツキを抑えることができる押圧検出機能を有するタッチパネルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するために、本発明は以下のように構成する。
本発明の第1態様によれば、上部透明基板と、
前記上部透明基板の下面にストライプ状に配置された複数の上部透明電極と、
前記上部透明基板の下面に対して対向配置された下部透明基板と、
前記下部透明電極の上面に、前記複数の上部透明電極に対して交差する方向にストライプ状に配置された複数の下部透明電極と、
前記上部透明基板と前記下部透明基板との対向領域に配置され、粘着性を有して前記上部透明基板と前記下部透明基板とを接着するとともに、前記複数の上部透明電極と前記複数の下部透明電極との間に隙間を形成する隙間形成部材と、
前記複数の上部透明電極又は前記複数の下部透明電極の少なくとも一方を覆うように設けられ、加えられた押圧力により電気特性が変化する導電性の透明感圧インク部材と、
を備え、
前記上部透明基板の厚み方向に外力が加わることにより前記上部透明基板が変形したとき、前記透明感圧インク部材が前記上部透明電極及び前記下部透明電極の両方に接触して両者を導通させる、押圧検出機能を有するタッチパネルを提供する。
【0012】
本発明の第2態様によれば、前記透明感圧インク部材は、前記複数の下部透明電極のみを覆うように設けられている、第1態様に記載の押圧検出機能を有するタッチパネルを提供する。
【0013】
本発明の第3態様によれば、前記隙間には、絶縁性を有する透明液が充填されている、第1又は2態様に記載の押圧検出機能を有するタッチパネルを提供する。
【0014】
本発明の第4態様によれば、前記透明液の屈折率は、空気の屈折率よりも高い、第3態様に記載の押圧検出機能を有するタッチパネルを提供する。
【0015】
本発明の第5態様によれば、前記透明液の25℃における動粘度は、50万mm2/Sより低い、第3又は4態様に記載の押圧検出機能を有するタッチパネルを提供する。
【0016】
本発明の第6態様によれば、前記透明液の耐熱性の範囲は、−45℃〜125℃である、第3〜5態様のいずれか1つに記載の押圧検出機能を有するタッチパネルを提供する。
【0017】
本発明の第7態様によれば、前記上部透明電極の上面には、透明導電膜が形成されている、第1〜6態様のいずれか1つに記載の押圧検出機能を有するタッチパネルを提供する。
【0018】
本発明の第8態様によれば、前記複数の上部透明電極及び前記複数の下部透明電極のそれぞれと接続された、前記上部透明基板が押圧された位置を検出するための検出回路と、
前記複数の上部透明電極及び前記複数の下部透明電極のそれぞれと前記検出回路とを間を接離する複数のスイッチと、
前記複数のスイッチを、互いに隣り合う所定数のスイッチ毎にオンオフを制御する制御部と、
を備える、第1〜7態様のいずれか1つに記載の押圧検出機能を有するタッチパネルを提供する。
【発明の効果】
【0019】
従来の押圧検出機能を有するタッチパネルは、タッチパネル本体と感圧センサとを別々に作製した後、組み合わせるという思想の下で作製されている。このため、タッチパネル本体の各電極及び感圧センサの各電極を支持する複数の基板、それらの基板を接着する複数の接着層がそれぞれ必要になり、厚みが大きくなる。
【0020】
これに対し、本発明にかかる押圧検出機能を有するタッチパネルによれば、上部透明基板と下部透明基板の2つの基板に、タッチパネルの機能を発揮するために必要な上部透明電極及び下部透明電極と、感圧センサの機能を発揮するために必要な感圧インク部材とを設けるようにしている。これにより、厚みを大幅に抑えることができる。
【0021】
また、本発明にかかる押圧検出機能を有するタッチパネルによれば、透明感圧インク部材を、枠状に設けるのではなく、複数の上部透明電極又は複数の下部透明電極の少なくとも一方を覆うように設けている。すなわち、複数の上部透明基板又は複数の下部透明基板の略全体に透明感圧インク部材を設けるようにしている。これにより、感度のバラツキを抑えることができる。また、感圧インク部材として透明感圧インク部材を用いているので、感圧インク部材による透過率(表示部の視認性)の低下を抑えることができる。また、特許文献1のように、隙間形成部材に貫通穴を設ける必要がないので、上部透明基板と下部透明基板との接着性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1実施形態にかかるタッチ入力デバイスを搭載する携帯電話機の斜視図である。
【図2】図1のA1−A1線の模式断面図である。
【図3】図1のタッチ入力デバイスにおいて、上部透明基板の入力面に押圧力が加えられたときの状態を示す模式断面図である。
【図4】本発明の第1実施形態にかかるタッチ入力デバイスの第1変形例を示す模式断面図である。
【図5】本発明の第1実施形態にかかるタッチ入力デバイスの第2変形例を示す模式断面図である。
【図6】複数の上部透明電極がそれぞれスイッチを介して連結されると共に、複数の下部透明電極がそれぞれスイッチを介して連結された状態を模式的に示す説明図である。
【図7】本発明の第2実施形態にかかるタッチ入力デバイスの模式断面図である。
【図8】図7のタッチ入力デバイスにおいて、上部透明基板の入力面に押圧力が加えられたときの状態を示す模式断面図である。
【図9】本発明の第3実施形態にかかるタッチ入力デバイスの模式断面図である。
【図10】上部透明電極の上面に形成される透明導電膜の第1形成パターンを示す上面図である。
【図11】上部透明電極の上面に形成される透明導電膜の第2形成パターンを示す上面図である。
【図12】上部透明電極の上面に形成される透明導電膜の第3形成パターンを示す上面図である。
【図13】従来のタッチ入力デバイスを電子機器に取り付けた状態を示す断面図である。
【図14】従来のタッチ入力デバイスが備える感圧センサの分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の全ての図において、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0024】
《第1実施形態》
本発明の第1実施形態にかかるタッチ入力デバイスは、例えば、電子機器、特に携帯電話機若しくはゲーム機などの携帯型電子機器のディスプレイのタッチ入力デバイスとして好適に機能する。本第1実施形態では、タッチ入力デバイスが携帯電話機に搭載される例を説明する。
【0025】
図1は、本発明の第1実施形態にかかるタッチ入力デバイスを搭載する携帯電話機の斜視図であり、図2は、図1のA1−A1線の断面図である。
【0026】
図1及び図2に示すように、携帯電話機1は、前面に矩形の表示窓2Aが形成された合成樹脂製の略直方体形状の筐体2と、液晶若しくは有機ELなどの矩形の表示部3Aを有し且つ筐体2内に内蔵された表示装置3と、表示窓2Aに嵌め込まれたタッチ入力デバイス4と、筐体2の前面に配置された複数の入力キー5とを備えている。
【0027】
筐体2の表示窓2Aは、タッチ入力デバイス4の嵌め込みを許容するため、段差を有するように形成されている。表示窓2Aの底面には、表示装置3の表示部3Aが視認できるように矩形の開口部2aが形成されている。タッチ入力デバイス4は、開口部2aの周囲の矩形枠状の額縁部分2b上に粘着剤(図示せず)により貼着されて、開口部2aを塞ぐ。
【0028】
なお、表示窓2Aの形状若しくは大きさは、タッチ入力デバイス4の形状若しくは大きさに応じて種々の変更が可能である。表示窓2Aの段差は、タッチ入力デバイス4の厚みなどに応じて種々の変更が可能である。表示窓2Aの開口部2aの形状若しくは大きさは、表示部3Aの形状若しくは大きさなどに応じて種々の変更が可能である。本第1実施形態では一例として、表示窓2A、開口部2a、表示部3A、及びタッチ入力デバイス4の形状を矩形とし、筐体2の表面とタッチ入力デバイス4の表面との高さが同じになるように、表示窓2Aの段差を設定している。
【0029】
タッチ入力デバイス4は、タッチ入力デバイス4の入力面に対するタッチ操作に基づいて、その操作位置となる平面座標(XY座標)を検出するとともに、入力面と直交する方向(Z方向)に加えられた押圧力の強さを検出するように構成されている。
【0030】
具体的には、タッチパネル入力デバイス4は、入力面となる上部透明基板11と、筐体2の額縁部分2bに接着される部分となる下部透明基板12とを備えている。上部透明基板11の下面には、複数の上部透明電極11aがストライプ状に配置されている。下部透明基板12の上面には、複数の下部透明電極12aが、複数の上部透明電極11aに対して交差する方向(好ましくは直交する方向)にストライプ状に配置されている。本第1実施形態では一例として、複数の上部透明電極11aをX軸方向にストライプ状に形成し、複数の下部透明電極12aをY軸方向にストライプ状に形成している。なお、上部透明電極11a及び下部透明電極12aは、直線形状に限定されるものではなく、例えば、波形状であっても、太さが途中で変わるようなものであってもよい。また、複数の上部透明電極11a及び複数の下部透明電極12aは、図示していないが、バスバー若しくは引き回し先等の外部と通電するための所定のパターンの引き回し回路と接続されている。
【0031】
複数の下部透明電極12a上には、導電性を有する透明感圧インク部材13が複数の下部透明電極12aを覆うように配置されている。すなわち、透明感圧インク13は、複数の下部透明電極12aの略全体に設けられている。透明感圧インク部材13は、加えられた押圧力により電気特性が変化する性質を有している。上部透明基板11と下部透明基板12との対向領域には、隙間形成部材14が配置されている。隙間形成部材14は、粘着性を有して上部透明基板11と下部透明基板12とを接着するとともに、複数の上部透明電極12aと感圧センサ13との間に隙間21を形成するための絶縁性部材である。隙間形成部材14は、タッチ入力デバイス4を厚み方向から見たとき、複数の上部透明電極11a、複数の下部透明電極12a、及び感圧インク部材13を包含するように枠状に形成されている。
【0032】
図2に示す上部透明基板11の上方から使用者の指などの導体が近づけられたとき、上部透明電極11aと導体との距離が変化することにより、上部透明電極11aと導体との間に発生する静電容量が変化する。また、下部透明電極12aと導体との距離が変化することにより、下部透明電極12aと導体との間に発生する静電容量が変化する。これらの静電容量の変化を検出することにより、平面視における導体の位置(XY座標)を検出することができる。
【0033】
図3は、上部透明基板11の入力面に押圧力Pが加えられたときのタッチ入力デバイス4の状態を示している。図3に示すように、上部透明基板11の入力面に指などの導体により押圧力Pが加えられたとき、上部透明基板11が撓むなどして変形する。これにより、少なくとも押圧力Pが加えられた部分に最も近い透明感圧インク部材13aが上部透明電極11a及び下部透明電極12aの両方に接触して両者が導通する。透明感圧インク部材13は、上部及び下部透明電極11a,12aから受ける挟持力の変化により、電気的特性(抵抗値)が変化するので、当該透明感圧インク部材13を介して導通した上部透明電極11aと下部透明電極12aとの間の電圧値を測定することにより、入力面と直交する方向(Z方向)に加えられた押圧力Pの強さを検出することができる。
【0034】
一方、図2に示す上部透明基板11の上方からペンなどの不導体が近づけられたときは、不導体と上部透明電極11aとの間の静電容量、及び不導体と下部透明電極12aとの間の静電容量は変化しない。このため、不導体の位置及び不導体による押圧力Pは以下のように検知する。
【0035】
すなわち、ペンなどの不導体により図3に示すように押圧力Pが加えられたとき、前述したように、少なくとも押圧力Pが加えられた部分に最も近い透明感圧インク部材13aが上部透明電極11a及び下部透明電極12aの両方に接触して両者が導通する。このとき、複数の上部透明電極11a及び複数の下部透明電極12aのうちいずれの上部透明電極11a及び下部透明電極12aが導通したかを検出することにより、操作位置となる平面座標(XY座標)を検出することができる。また、前述したように、透明感圧インク部材13を介して導通した上部透明電極11aと下部透明電極12aとの間の電圧値を測定することにより、入力面と直交する方向(Z方向)に加えられた押圧力Pの強さを検出することができる。
【0036】
なお、導体又は不導体で上部透明基板11を下方に撓ませたとき、上部透明電極11aと下部透明電極12aとの距離が変化するため、上部透明電極11aと下部透明電極12aとの間で発生する静電容量が変化する。この静電容量の変化に基づいて、前記操作位置となる平面座標(XY座標)を検出することもできる。
【0037】
上部及び下部透明基板11,12の厚み寸法は、例えば、25μm〜100μmに設定されている。上部及び下部透明基板11,12の材質としては、透視性、剛性、及び加工性に優れた材質を用いることが好ましい。例えば、上部透明基板11の材質としては、ガラス、ポリメチルメタクリレート(PMMA)樹脂、若しくは、ポリカーボネート(PC)樹脂などを用いることができる。また、上部及び下部透明基板11,12の材質として、フレキシブル基板に使用可能な材質、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ABS樹脂、AS樹脂、アクリル系樹脂、若しくは、AN樹脂などの汎用樹脂を用いることができる。さらに、上部及び下部透明基板11,12の材質として、ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリカーボネート変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、若しくは、超高分子量ポリエチレン樹脂などの汎用エンジニアリング樹脂、又は、ポリスルホン樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂、ポリフェニレンオキシド系樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリイミド樹脂、液晶ポリエステル樹脂、若しくは、ポリアリル系耐熱樹脂などのスーパーエンジニアリング樹脂を用いることもできる。
【0038】
上部及び下部透明電極11a,12aの厚み寸法は、例えば、50〜2000Åに設定されている。上部及び下部透明電極11a,12aは、透明導電膜より構成されている。透明導電膜の材料としては、酸化錫、酸化インジウム、酸化アンチモン、酸化亜鉛、酸化カドミウム、若しくはITO等の金属酸化物、又は、銀ナノワイヤー、カーボンナノチューブ、導電性ポリマーの薄膜が一例として挙げられる。上部及び下部透明電極11a,12aの形成方法としては、例えば、真空蒸着法、スパッタリング、イオンプレーティング、CVD法、若しくは、ロールコーター法などを用いて各透明基板11,12の全面に導電性被膜を形成した後、不要な部分をエッチング除去する方法がある。前記エッチングは、電極として残したい部分にフォトリソ法又はスクリーン法などによりレジストを形成した後、塩酸などのエッチング液に浸漬することにより行うことができる。また、前記エッチングは、前記レジストの形成後、エッチング液を噴射してレジストが形成されていない部分の導電性被膜を除去し、その後、溶剤に浸漬することによりレジストを膨潤又は溶解させて除去することにより行うこともできる。また、上部及び下部透明電極11a,12aの形成は、レーザーにより行うこともできる。
【0039】
透明感圧インク部材13の厚み寸法(下部透明基板12からの高さ)は、下部透明電極12aの厚み寸法よりも大きく、例えば1μm〜10μmに設定されている。透明感圧インク部材13を構成する組成物は、外力に応じて電気抵抗値などの電気特性が変化する導電性の素材で構成されている。より具体的には、透明感圧インク部材13は、圧力の印加に伴って、前記組成物の内部に多数含まれる導電性の粒子である感圧粒子間であって、近接している複数の感圧粒子間で、直接的な接触の有無とは関係なく、トンネル電流が流れて、絶縁状態から通電状態に変化するものである。前記組成物として、例えば、英国のダーリントン(Darlington)のペラテック社(Peratech LTD)から商品名「QTC Clear」で入手可能な量子トンネル現象複合材料(Quantum Tunneling Composite)を用いることができる。なお、量子トンネル現象複合材料を用いることで、透明感圧インク部材13は、加えられた力に応じて抵抗値を変化させることができる。透明感圧インク部材13は、塗布により下部透明基板12に配置することができる。透明感圧インク部材13の塗布方法としては、スクリーン印刷、オフセット印刷、グラビア印刷、又はフレキソ印刷などの印刷法を用いることができる。
【0040】
隙間保持部材14の厚み寸法は、例えば、2〜300μmに設定されている。隙間形成部材14としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルムなどの芯材の両面にアクリル系の接着糊などの粘着剤を形成した両面粘着テープのほか、UV硬化性接着剤、熱硬化性接着剤、湿気硬化型接着剤、嫌気性硬化型接着剤を用いることができる。
【0041】
以上、本第1実施形態にかかるタッチ入力デバイスによれば、上部透明基板11と下部透明基板12の2つの基板に、タッチパネルの機能を発揮するために必要な上部透明電極11a及び下部透明電極12aと、感圧センサの機能を発揮するために必要な透明感圧インク部材13とを設けるようにしている。これにより、従来のタッチ入力デバイスに比べて、厚みを大幅に抑えることができる。
【0042】
また、本第1実施形態にかかるタッチ入力デバイスによれば、透明感圧インク部材13を、枠状に設けるのではなく、複数の下部透明電極12aを覆うように設けている。すなわち、複数の下部透明基板12aの略全体に透明感圧インク部材13を設けるようにしている。これにより、感度のバラツキを抑えることができる。また、感圧インク部材として透明感圧インク部材13を用いているので、感圧インク部材による透過率(表示部3Aの視認性)の低下を抑えることができる。また、特許文献1のように、隙間形成部材14に貫通穴を設ける必要がないので、上部透明基板11と下部透明基板12との接着性を向上させることができる。
【0043】
また、本第1実施形態にかかるタッチ入力デバイスによれば、透明感圧インク部材13の幅寸法に依存することなく、筐体2の額縁部分2bの幅寸法を小さくすることができるので、表示部3Aの面積を大きくすることができる。
【0044】
また、本第1実施形態にかかるタッチ入力デバイスは、抵抗膜方式のタッチパネルとしても、静電容量方式のタッチパネルとしても、またそれら両方の方式に対応可能なタッチパネルとしても使用することができる。
【0045】
なお、本発明は前記第1実施形態に限定されるものではなく、その他種々の態様で実施可能である。例えば、前記第1実施形態では、図2に示すように、複数の下部透明電極12aのそれぞれに透明感圧インク部材13を形成するようにしたが、本発明はこれに限定されない。例えば、図4に示すように、複数の下部透明電極12aを1つの透明感圧インク部材13で覆うようにしてもよい。
【0046】
また、前記第1実施形態では、複数の下部透明電極12aのみに透明感圧インク部材13を形成するようにしたが、本発明はこれに限定されない。例えば、図5に示すように、複数の上部透明電極11a及び複数の下部透明電極12aの両方を透明感圧インク部材13で覆うようにしてもよい。また、複数の上部透明電極11aのみに透明感圧インク部材13を形成するようにしてもよい。すなわち、複数の上部透明電極11a及び複数の下部透明電極12aの少なくともいずれか一方を透明感圧インク部材13で覆うようにすればよい。なお、上部透明基板11に押圧力Pが加えられたとき、通常、上部透明基板11の方が下部透明基板12に比べて変形量(撓み量)が大きくなる。この変形量の違いにより、上部透明電極11aに設けられた透明感圧インク部材13の方が、下部透明電極12aに設けられた透明感圧インク部材13よりも劣化しやすい。このため、複数の上部透明電極11a及び複数の下部透明電極12aのいずれか一方に透明感圧インク部材13を設ける場合は、複数の下部透明電極12aに透明感圧インク部材13を設ける方が好ましい。
【0047】
また、前記第1実施形態では、上部透明基板11の上面を入力面とし、上部透明基板11が直接押圧されるように構成したが、本発明はこれに限定されない。例えば、上部透明基板11の上面に、保護パネルなどの別の透明基板を設けて、上部透明基板11が間接的に押圧されるように構成してもよい。この場合、上部透明基板11が外部に露出しないので、上部透明基板11の材質として表面耐擦性などが優れた材質を用いる必要性をなくすことができる。なお、保護パネルは、上部透明基板11を保護するためのフィルム又は板材であり、耐傷性、防汚性を備えるものである。保護パネルの厚み寸法は、例えば、0.25〜3.00mmである。保護パネルとしては、例えば、有機無機ハイブリッド材料を使用することができる。また、上部透明基板11の上面に本発明のタッチパネルを装飾する加飾層を設けてもよい。
【0048】
また、前記第1実施形態では、下部透明基板12の下面を筐体2の額縁部分2bに直接接着するようにしたが、本発明はこれに限定されない。例えば、下部透明基板12の下面に別の透明基板を設けて、下部透明基板12が間接的に筐体2の額縁部分2bに接着されるように構成してもよい。また、下部透明基板12の下面には、表示装置3から発生する妨害電磁波(交流のノイズ)を遮蔽する、いわゆる電磁シールドの役割を果たす電磁シールド用透明電極が設けられることが好ましい。この電磁シールド用透明電極は、前記別の透明基板に設けられてもよい。
【0049】
次に、図6を用いて、本第1実施形態にかかるタッチ入力デバイス4の押圧位置検出方法の一例について説明する。図6は、複数の上部透明電極がそれぞれスイッチを介して連結されると共に、複数の下部透明電極がそれぞれスイッチを介して連結された状態を模式的に示す説明図である。
【0050】
ここでは、説明の便宜上、複数の上部透明電極11aは、8本の上部透明電極11a1〜11a8で構成されるものする。また、複数の下部透明電極12aは、8本の下部透明電極12a1〜12a8で構成されるものとする。また、タッチ入力デバイス4は、静電容量方式のタッチパネルとして使用されるものとする。
【0051】
図6に示すように、上部透明電極11a1〜11a8及び下部透明電極12a1〜12a8は、上部透明基板11が押圧された位置を検出するための検出回路6と接続されている。上部透明電極11a1〜11a8のそれぞれと検出回路6とは、スイッチS1〜S8により接離されている。また、下部透明電極12a1〜12a8のそれぞれと検出回路6とは、スイッチS11〜S18により接離されている。スイッチS1〜S8及びスイッチS11〜S18はそれぞれ、制御部7によりオンオフを制御される。
【0052】
例えば、制御部7は、スイッチS1〜S8及びスイッチS11〜S18のオンオフを以下のように制御する。
【0053】
まず、制御部7は、スイッチS1〜S8のうちスイッチS1のみをオンする。これにより、検出回路6が上部透明電極11a1と指との間に発生する静電容量を検出する。
次いで、制御部7は、スイッチS1をオフしてスイッチS2をオンする。これにより、検出回路6が上部透明電極11a2と指との間に発生する静電容量を検出する。
次いで、制御部7は、スイッチS2をオフしてスイッチS3をオンする。これにより、検出回路6が上部透明電極11a3と指との間に発生する静電容量を検出する。
以下同様にして、制御部7は、1つのスイッチをオンして他のスイッチをオフする制御をスイッチS1〜S8まで繰り返し、検出回路6は、オンされたスイッチに接続された上部透明電極と指との間に発生する静電容量を逐次検出する。
【0054】
前記スイッチS1〜S8のオンオフ制御に同期して又は前記オンオフ制御の後、制御部7は、スイッチS11〜S18のうちスイッチS11のみをオンする。これにより、検出回路6が下部透明電極12a1と指との間に発生する静電容量を検出する。
次いで、制御部7は、スイッチS11をオフしてスイッチS12をオンする。これにより、検出回路6が下部透明電極12a2と指との間に発生する静電容量を検出する。
次いで、制御部7は、スイッチS12をオフしてスイッチS13をオンする。これにより、検出回路6が、下部透明電極12a3と指との間に発生する静電容量を検出する。
以下同様にして、制御部7は、1つのスイッチをオンして他のスイッチをオフする制御をスイッチS11〜S18まで繰り返し、検出回路6は、オンされたスイッチに接続された上部透明電極と指との間に発生する静電容量を逐次検出する。
【0055】
例えば、上部透明電極11a3と下部透明電極12a3との交点B1に使用者の指が近づいたとき、上部透明電極11a1〜8と指との間に発生する各静電容量の検出値のうち、
上部透明電極11a3と指との間に発生する静電容量の検出値が最も大きくなる。また、下部透明電極12a1〜8と指との間に発生する各静電容量の検出値のうち、下部透明電極12a3と指との間に発生する静電容量の検出値が最も大きくなる。従って、これら最も大きい検出値に基づいて、指が近づいた位置を特定することができる。
【0056】
なお、前述したように、本第1実施形態にかかるタッチ入力デバイス4は、抵抗膜方式のタッチパネルとしても、静電容量方式のタッチパネルとしても使用することができる。例えば、タッチ入力デバイス4は、抵抗膜式デジタル型タッチパネルやミューチュアル(mutual)式静電容量方式タッチパネル、セルフ(self)式静電容量方式タッチパネルなどに適用可能である。一般に、抵抗膜式デジタル型タッチパネルは、ミューチュアル(mutual)式静電容量方式タッチパネルと比べて、電極幅(配線幅)が狭いため、感度の低下が懸念されている。また、抵抗膜式デジタル型タッチパネルでは、上部電極と下部電極の電極幅がほぼ同じであることが多いが、ミューチュアル式静電容量方式タッチパネルでは、送信側と受信側とで電極幅が異なることが多い(相互の干渉による感度低下を防ぐため)。また、セルフ(self)式静電容量方式タッチパネルは、各電極幅が狭く、感度が十分に確保できない。さらに、静電検出状態のまま、上部電極と下部電極が接触した場合、静電容量の検出ができなくなるおそれがある。
【0057】
そこで、制御部7は、スイッチS1〜S8及びスイッチS11〜S18のオンオフを、例えば以下のように制御することが好ましい。
【0058】
まず、制御部7は、スイッチS1〜S8のうちスイッチS1,S2(互いに隣接する2つのスイッチ)を同時にオンする。これにより、検出回路6が上部透明電極11a1,11a2と指との間に発生する静電容量を検出する。
次いで、制御部7は、スイッチS1,S2をオフしてスイッチS3,S4をオンする。これにより、検出回路6が上部透明電極11a3,11a4と指との間に発生する静電容量を検出する。
以下同様にして、制御部7は、互いに隣り合う2つのスイッチをオンして他のスイッチをオフする制御をスイッチS1〜S8まで繰り返し、検出回路6は、オンされたスイッチに接続された2本の上部透明電極と指との間に発生する静電容量を逐次検出する。
【0059】
前記スイッチS1〜S8のオンオフ制御に同期して又は前記オンオフ制御の後、制御部7は、スイッチS11〜S18のうちスイッチS11,S12(互いに隣接する2つのスイッチ)をオンする。これにより、検出回路6が下部透明電極12a1,12a2と指との間に発生する静電容量を検出する。
次いで、制御部7は、スイッチS11,S12をオフしてスイッチS13,S14をオンする。これにより、検出回路6が下部透明電極12a3,12a4と指との間に発生する静電容量を検出する。
以下同様にして、制御部7は、互いに隣り合う2つのスイッチをオンして他のスイッチをオフする制御をスイッチS11〜S18まで繰り返し、検出回路6は、オンされたスイッチに接続された2本の下部透明電極と指との間に発生する静電容量を逐次検出する。
【0060】
例えば、上部透明電極11a3と下部透明電極12a3との交点B1に使用者の指が近づいたとき、上部透明電極11a1〜8と指との間に発生する各静電容量の検出値のうち、
上部透明電極11a3,11a4と指との間に発生する静電容量の検出値が最も大きくなる。また、下部透明電極12a1〜8と指との間に発生する各静電容量の検出値のうち、下部透明電極12a3,12a4と指との間に発生する静電容量の検出値が最も大きくなる。従って、これら最も大きい検出値に基づいて、指が近づいた位置を特定することができる。
【0061】
前述のような互いに隣り合う2つのスイッチを同期してオンする制御を行うことで、見かけ上、電極幅を2倍にすることができる。これにより、上部透明電極11及び下部透明電極12の電極幅が狭い場合であっても、見かけ上、それらの電極幅を大きくして、感度を向上させることができる。なお、前記では、互いに隣り合う2つのスイッチを同期してオンする制御を行うようにしたが、互いに隣り合う3以上のスイッチを同期してオンする制御を行うようにしてもよい。これにより、感度を任意に変化させることが可能になる。
【0062】
また、前記では、スイッチS1〜S8及びスイッチS11〜S18の全てを順にオンするようにしたが、例えば、スイッチS1、スイッチS3、スイッチS5、スイッチS7の順にオンするなど、オンするスイッチを減らしてもよい。すなわち、検出解像度が低下しない範囲で、オンするスイッチを間引いてもよい。これにより、見かけ上、電極幅を狭くすることができ、検出速度の低下を防ぐことができる。
【0063】
また、前記では、スイッチS1〜S8を,スイッチS1,S2→スイッチS3,S4→スイッチS5,S6・・・の順にオンするようにしたが、スイッチS1,S2→スイッチS2,S3→スイッチS3,S4・・・の順にオンするようにしてもよい。スイッチS1,S2→スイッチS3,S4→スイッチS5,S6・・・の順にオンするようにした場合、スイッチS1〜S8を1つずつ順にオンする場合と比べて解像度が半分になる。この解像度の低下は、互いに隣り合う3以上のスイッチを同期してオンする制御を行うようにした場合に特に顕著になる。スイッチS1,S2→スイッチS2,S3→スイッチS3,S4・・・の順にオンする、すなわち、オンするスイッチを一部重複させることで、感度を向上させつつ、解像度の低下を低減することが可能になる。なお、前記では、スイッチS1〜S8のオンオフ制御について述べたが、スイッチS11〜S18についても同様である。
【0064】
《第2実施形態》
図7は、本発明の第2実施形態にかかるタッチ入力デバイスの模式断面図である。本第2実施形態にかかるタッチ入力デバイス4Aが、前記第1実施形態にかかるタッチ入力デバイス4と異なる点は、隙間21に絶縁性を有する透明液41が充填されている点である。
【0065】
前記第1実施形態のタッチ入力デバイス4において隙間21には空気が存在する。空気は透明であるので、タッチ入力デバイス4の全体の透過率は高い。しかしながら、タッチ入力デバイス4を見る角度によっては、隙間21に存在する空気に起因して光が反射し、透過率が低下することがある。
【0066】
これに対し、本第2実施形態にかかるタッチ入力デバイス4Aによれば、隙間21に絶縁性を有する透明液41を充填することにより、光の反射を抑えて、透過率の低下を抑えることができる。また、液体は、通常、空気よりも誘電率が高いので、隙間21に絶縁性を有する透明液41を充填することにより、感度を向上させることができる。
【0067】
なお、隙間21に透明液41を充填する場合、透明液41が漏れ出さないように、隙間21の密閉度を高くする必要がある。このため、図8に示すように、タッチ入力デバイス4Aに押圧力Pが加えられ、上部透明基板11などが変形したときであっても、隙間21の体積が変わらないように、隙間形成部材14は弾性変形可能に構成されることが好ましい。
【0068】
透明液41としては、シリコーン系、フッ素系、炭化水素系又はアルコール系の不活性液体を用いることが好ましい。この種の透明液としては、例えば、3M社製のフロリナート(登録商標)、ノベック(登録商標)、信越化学社製のシリコンオイル(商品名「KF」、「HIVAC」)、炭化水素系の光学オイル、アルコール系のポリエチレングリコールなどが挙げられる。
【0069】
また、透明液41の屈折率は、空気よりも高い、すなわち1.0より高いことが好ましい。これにより、ニュートンリングの発生を抑えて、光学特性透過率を向上させ、表示部3Aの視認性を向上させることができる。また、透明液41の屈折率は、上部透明基板11の屈折率の±0.5の範囲にあることがさらに好ましい。これにより、ニュートンリングの発生をより一層抑えて、光学特性透過率を一層向上させ、表示部3Aの視認性を一層向上させることができる。
【0070】
また、透明液41の動粘度が高すぎると、タッチ入力デバイス4Aを押圧したときに、上部透明電極11aと透明感圧インク部材13とが接触し難くなる。このため、透明液41の25℃における動粘度は、50万mm2/Sより低いことが好ましい。また、透明液41の25℃における動粘度は、5万mm2/Sより低いことがさらに好ましい。これにより、上部透明電極11aと透明感圧インク部材13とをより一層接触し易くすることができるとともに、当該接触後に元の状態に戻り易くすることができる。また、透明液41の25℃における動粘度が低いと、透明液41を密封する部材(例えば、上部透明基板11及び下部透明基板12など)の剛性が低い場合においてタッチ入力デバイス4Aを垂直方向に配置したときに、絶縁性を保持することができないおそれがある。このため、透明液41の25℃における動粘度は、0.65mm2/Sであることが好ましい。
【0071】
また、透明液41には、耐熱性の範囲が−45℃〜125℃であるものを使用することが好ましい。これにより、通常の使用環境によって、透明液41が固まったり、緩くなったりせず、タッチ入力デバイス4Aの使用時に安定した入力値を得ること(再現性(精度)を高くすること)ができる。
【0072】
《第3実施形態》
図9は、本発明の第3実施形態にかかるタッチ入力デバイスの模式断面図である。本第3実施形態にかかるタッチ入力デバイス4Bが、前記第2実施形態にかかるタッチ入力デバイス4Aと異なる点は、上部透明電極11の上面に透明導電膜51が形成されている点である。
【0073】
透明導電膜51は、例えば携帯電話機のアンテナなどとして機能するよう形成されている。これにより、タッチ入力デバイス4Bを携帯電話機等に取り付ける際に、別途アンテナを取り付けるなどの手間を省くことができる。
【0074】
なお、タッチ入力デバイス4Bが静電容量方式のタッチパネルとして使用される場合、上部透明電極11a及び下部透明電極12aが形成されている領域VAに透明導電膜51を形成すると、当該透明導電膜51により指と上部透明電極11a又は下部透明電極12aとの間に発生する静電容量の検知が阻害される。このため、タッチ入力デバイス4Bが静電容量方式のタッチパネルとして使用される場合には、図10に示すように、領域VAの外側の領域に透明導電膜51Aを形成することが好ましい。一方、タッチ入力デバイス4Bが抵抗膜方式のタッチパネルとして使用される場合には、前記問題が生じない。すなわち、抵抗膜方式の位置検出は、上部透明電極11aと下部透明電極12aとが導通するか否かを検知することによって行うので、指と上部透明電極11a又は下部透明電極12aとの間に発生する静電容量を検知する必要がない。このため、図11又は図12に示すように、領域VAを横切るように透明導電膜51B,51Cを形成することができる。
【0075】
なお、前記様々な実施形態のうちの任意の実施形態を適宜組み合わせることにより、それぞれの有する効果を奏するようにすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明にかかる押圧機能を有するは、厚みを抑えるとともに、感度のバラツキを抑えることができるので、PDA、ハンディターミナルなどの携帯情報端末、コピー機、ファクシミリなどのOA機器、スマートフォン、携帯電話機、携帯ゲーム機器、電子辞書、カーナビゲーションシステム、小型PC、若しくは各種家電品などの電子機器に有用である。
【符号の説明】
【0077】
1 携帯電話機
2 筐体
2A 表示窓
3 表示装置
3A 表示部
4 タッチ入力デバイス
5 入力キー
6 検出回路
7 制御部
11 上部透明基板
11a 上部透明電極
12 下部透明基板
12a 下部透明電極
13 透明感圧インク部材
14 隙間形成部材
21 隙間
31 スイッチ
41 透明液
51 透明導電膜
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部透明基板と、
前記上部透明基板の下面にストライプ状に配置された複数の上部透明電極と、
前記上部透明基板の下面に対して対向配置された下部透明基板と、
前記下部透明電極の上面に、前記複数の上部透明電極に対して交差する方向にストライプ状に配置された複数の下部透明電極と、
前記上部透明基板と前記下部透明基板との対向領域に配置され、粘着性を有して前記上部透明基板と前記下部透明基板とを接着するとともに、前記複数の上部透明電極と前記複数の下部透明電極との間に隙間を形成する隙間形成部材と、
前記複数の上部透明電極又は前記複数の下部透明電極の少なくとも一方を覆うように設けられ、加えられた押圧力により電気特性が変化する導電性の透明感圧インク部材と、
を備え、
前記上部透明基板の厚み方向に外力が加わることにより前記上部透明基板が変形したとき、前記透明感圧インク部材が前記上部透明電極及び前記下部透明電極の両方に接触して両者を導通させる、押圧検出機能を有するタッチパネル。
【請求項2】
前記透明感圧インク部材は、前記複数の下部透明電極のみを覆うように設けられている、請求項1に記載の押圧検出機能を有するタッチパネル。
【請求項3】
前記隙間には、絶縁性を有する透明液が充填されている、請求項1又は2に記載の押圧検出機能を有するタッチパネル。
【請求項4】
前記透明液の屈折率は、空気の屈折率よりも高い、請求項3に記載の押圧検出機能を有するタッチパネル。
【請求項5】
前記透明液の25℃における動粘度は、50万mm2/Sより低い、請求項3又は4に記載の押圧検出機能を有するタッチパネル。
【請求項6】
前記透明液の耐熱性の範囲は、−45℃〜125℃である、請求項3〜5のいずれか1つに記載の押圧検出機能を有するタッチパネル。
【請求項7】
前記上部透明電極の上面には、透明導電膜が形成されている、請求項1〜6のいずれか1つに記載の押圧検出機能を有するタッチパネル。
【請求項8】
前記複数の上部透明電極及び前記複数の下部透明電極のそれぞれと接続された、前記上部透明基板が押圧された位置を検出するための検出回路と、
前記複数の上部透明電極及び前記複数の下部透明電極のそれぞれと前記検出回路とを間を接離する複数のスイッチと、
前記複数のスイッチを、互いに隣り合う所定数のスイッチ毎にオンオフを制御する制御部と、
を備える、請求項1〜7のいずれか1つに記載の押圧検出機能を有するタッチパネル。
【請求項1】
上部透明基板と、
前記上部透明基板の下面にストライプ状に配置された複数の上部透明電極と、
前記上部透明基板の下面に対して対向配置された下部透明基板と、
前記下部透明電極の上面に、前記複数の上部透明電極に対して交差する方向にストライプ状に配置された複数の下部透明電極と、
前記上部透明基板と前記下部透明基板との対向領域に配置され、粘着性を有して前記上部透明基板と前記下部透明基板とを接着するとともに、前記複数の上部透明電極と前記複数の下部透明電極との間に隙間を形成する隙間形成部材と、
前記複数の上部透明電極又は前記複数の下部透明電極の少なくとも一方を覆うように設けられ、加えられた押圧力により電気特性が変化する導電性の透明感圧インク部材と、
を備え、
前記上部透明基板の厚み方向に外力が加わることにより前記上部透明基板が変形したとき、前記透明感圧インク部材が前記上部透明電極及び前記下部透明電極の両方に接触して両者を導通させる、押圧検出機能を有するタッチパネル。
【請求項2】
前記透明感圧インク部材は、前記複数の下部透明電極のみを覆うように設けられている、請求項1に記載の押圧検出機能を有するタッチパネル。
【請求項3】
前記隙間には、絶縁性を有する透明液が充填されている、請求項1又は2に記載の押圧検出機能を有するタッチパネル。
【請求項4】
前記透明液の屈折率は、空気の屈折率よりも高い、請求項3に記載の押圧検出機能を有するタッチパネル。
【請求項5】
前記透明液の25℃における動粘度は、50万mm2/Sより低い、請求項3又は4に記載の押圧検出機能を有するタッチパネル。
【請求項6】
前記透明液の耐熱性の範囲は、−45℃〜125℃である、請求項3〜5のいずれか1つに記載の押圧検出機能を有するタッチパネル。
【請求項7】
前記上部透明電極の上面には、透明導電膜が形成されている、請求項1〜6のいずれか1つに記載の押圧検出機能を有するタッチパネル。
【請求項8】
前記複数の上部透明電極及び前記複数の下部透明電極のそれぞれと接続された、前記上部透明基板が押圧された位置を検出するための検出回路と、
前記複数の上部透明電極及び前記複数の下部透明電極のそれぞれと前記検出回路とを間を接離する複数のスイッチと、
前記複数のスイッチを、互いに隣り合う所定数のスイッチ毎にオンオフを制御する制御部と、
を備える、請求項1〜7のいずれか1つに記載の押圧検出機能を有するタッチパネル。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2013−8231(P2013−8231A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−140926(P2011−140926)
【出願日】平成23年6月24日(2011.6.24)
【出願人】(000231361)日本写真印刷株式会社 (477)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月24日(2011.6.24)
【出願人】(000231361)日本写真印刷株式会社 (477)
【Fターム(参考)】
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