説明

非侵襲生体情報測定装置

【課題】 低消費電力で特徴量を推定する非侵襲生体情報測定装置を提供する。
【解決手段】 光源210と、光源210あるいは後述する各手段の起動を制御する制御手段300と、生体情報を測定するNチャンネルの生体情報センサ220と、生体情報センサ220の出力信号を増幅し、増幅された信号をA/D変換して、変換されたデジタルデータを記憶する記憶手段250と、光源210を点灯させデジタルデータを記憶手段250に記録するまでの一連の動作をX回繰り返し記憶手段250に記憶されているデジタルデータを平均化し、平均化したMチャンネル(M<N)のデータを解析して生体情報の特徴量を推定する特徴量推定手段260とを備え、一連の動作をY回(Y<X)繰り返した時点で、前記Mチャンネルをあらかじめ決定し、以降X回までは特徴量推定に用いないチャンネルの増幅手段以降の動作を停止することにより低消費電力を実現することが出来る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体情報を測定して、生体の状態を監視する生体情報検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
代表的な生活習慣病である糖尿病の患者数は世界的に増加傾向にある。糖尿病患者は、糖尿病による合併症を抑制し、患者の生活の質を向上するために、日常的な血糖コントロールが必要である。そのため、患者は医師の指導のもと、毎日定期的に血糖値を測定しなければならない。血糖値を測定する代表的な方法としては、患者の指を刺して血液を採取し血糖値を測定する侵襲型の血糖測定装置がある。指を刺して血液を採取する際に手間と痛みを伴うこと、さらに感染症などの危険が伴うことから、血液の採取を必要としない、非侵襲型の血糖測定装置が提案されている。
【0003】
非侵襲型の血糖測定装置として、光音響効果を用いた「生物学的測定システム」が記載されている。グルコースに吸収される波長の光を、生物学的測定システムから指先のような生体の部分に照射し、照射された光は生体内の比較的小さい焦点領域に集光され、また一般的に光はグルコースに吸収されて焦点領域と隣接する領域の組織内で運動エネルギーに変換される。運動エネルギーは、吸収組織領域の温度及び圧力を増大させ、音波を生成する。この音波を、以下「光音響波信号」と表記する。光音響波信号は吸収組織領域から放射され、生物学的測定システムが備える音響センサによって検出される。音響センサは生体表面と接するよう装着される。光音響波信号の強度は、吸収組織領域内のグルコースの関数であり、センサによって計測された強度は血糖値を調べるために使用される。このとき、1回の測定において、ノイズの影響を最小限にするために測定を複数回行い、一連の測定結果を平均化して血糖値を測定する(例えば、特許文献1)。
【0004】
また、光音響効果を用いた別の非侵襲型の血糖測定装置として「非侵襲の生体情報測定方法及び生体情報計測装置」が記載されている。生体に照射された光によって生じる光音響波信号を複数の音響センサによって検出し、検出された複数の信号をそれぞれ増幅した後、必要な信号を選択して血糖値の計測を行う方法である。光音響波信号の発生源と音響センサとの距離が最小となる音響センサを選択することにより検出効率を最大化できる(例えば、特許文献2)。
【特許文献1】特表2001−526557号公報
【特許文献2】特開2004−147940号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1、上記特許文献2に記載された技術では、ノイズの影響や体動の影響を最小限にするために、測定を複数回行い、一連の測定結果を平均化する動作をそれぞれの音響センサに対して行うため、信号増幅やA/D変換用の電気回路も複数備える必要がある。そのため、大きな消費電力を必要とし、ポータブル製品としては不向きであるという課題を有していた。
【0006】
本発明は、従来の課題を解決するためになされたもので、低消費電力を実現することができる非侵襲生体情報測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記従来の課題を解決するために、本発明にかかる非侵襲生体情報測定装置は、少なくとも一つの光源と、前記光源の点灯タイミングと後述する各手段の起動を制御する制御手段と、生体情報を所定時間測定するNチャンネル(Nは2以上の自然数)の生体情報センサと、前記生体情報センサから得られるNチャンネルの出力信号を増幅する増幅手段と、前記増幅されたNチャンネルの増幅信号をA/D変換するA/D変換手段と、前記A/D変換されたNチャンネルのデジタルデータを記憶する第一の記憶手段と、前記光源を点灯させデジタルデータを前記第一の記憶手段に記録するまでの一連の動作をX回(Xは2以上の自然数)繰り返し前記第一の記憶手段に記憶されているデジタルデータを平均化する平均化手段と、前記平均化したデータを解析して後述する特徴量推定手段で使用するMチャンネル(MはN以下の自然数)の平均化データを選択する信号選択手段と、前記選択手段で選択された平均化データより生体情報の特徴量を推定する特徴量推定手段を備えた非侵襲生体情報測定装置において、前記一連の動作をY回(YはXより少ない自然数)繰り返した時点で、前記平均化手段と前記信号選択手段により前記特徴量推定手段で使用するチャンネルをあらかじめ決定し、以降X回までは、前記特徴量推定手段で使用しないチャンネルの前記増幅手段以降の動作を停止する、ことを特徴とするものである。
【0008】
さらに、非侵襲生体情報測定装置において、前記信号選択手段は、前記平均化したデジタルデータの振幅ピークレベルをNチャネル分比較し、振幅ピークレベルが最大となるチャンネルを含んだ隣接するMチャンネルを選択する、ことを特徴とするものである。
【0009】
さらに、非侵襲生体情報測定装置において、前記信号選択手段は、前記平均化したデジタルデータの振幅ピークが発生するサンプリングタイミングをNチャネル分比較し、振幅ピークの発生タイミングが最も早いチャンネルを含んだ隣接するMチャンネルを選択する、ことを特徴とするものである。
【0010】
さらに、非侵襲生体情報測定装置において、前記信号選択手段は、書き込み可能な第一のレジスタを備え、前記第一のレジスタによって前記光源を点灯させデジタルデータを前記第一の記憶手段に記録するまでの一連の動作回数である前記X回を外部から変更することが可能である、ことを特徴とするものである。
【0011】
さらに、非侵襲生体情報測定装置において、前記信号選択手段は、書き込み可能な第二のレジスタを備え、前記第二のレジスタによって前記特徴量推定手段で使用しないチャンネルの前記増幅手段以降の動作停止タイミングを示す前記Y回を外部から変更することが可能である、ことを特徴とするものである。
【0012】
また、本発明にかかる非侵襲生体情報測定装置は、少なくとも一つの光源と、前記光源の点灯タイミングと後述する各手段の起動を制御する制御手段と、生体情報を所定時間測定するNチャンネル(Nは2以上の自然数)の生体情報センサと、前記生体情報センサから得られるNチャンネルの出力信号を増幅する増幅手段と、前記増幅されたNチャンネルの増幅信号をA/D変換するA/D変換手段と、前記A/D変換されたNチャンネルのデジタルデータを記憶する第一の記憶手段と、前記光源を点灯させデジタルデータを前記第一の記憶手段に記録するまでの一連の動作をX回(Xは2以上の自然数)繰り返し前記第一の記憶手段に記憶されているデジタルデータを平均化する平均化手段と、前記平均化したデータを解析して後述する特徴量推定手段で使用するMチャンネル(MはN以下の自然数)の平均化データを選択する信号選択手段と、前記選択手段で選択された平均化データより生体情報の特徴量を推定する特徴量推定手段を備えた非侵襲生体情報測定装置において、前記一連の動作開始時にはZチャンネル(ZはN未満の自然数)において前記増幅手段以降の動作を行い、前記一連の動作をY回(YはXより少ない自然数)繰り返した時点で、前記平均化手段において入力されたZチャンネルのデータを補間することによりNチャネルのデータを作成し、前記信号選択手段において該Nチャネルのデータにより前記特徴量推定手段で使用するチャンネルをあらかじめ決定し、以降X回までは、前記特徴量推定手段で使用しないチャンネルの前記増幅手段以降の動作を停止することを特徴とするものである。
【0013】
さらに、非侵襲生体情報測定装置において、前記信号選択手段は、前記平均化したデジタルデータの振幅ピークレベルをNチャネル分比較し、振幅ピークレベルが最大となるチャンネルを含んだ隣接するMチャンネルを選択する、ことを特徴とするものである。
【0014】
さらに、非侵襲生体情報測定装置において、前記信号選択手段は、前記平均化したデジタルデータの振幅ピークが発生するサンプリングタイミングをNチャネル分比較し、振幅ピークの発生タイミングが最も早いチャンネルを含んだ隣接するMチャンネルを選択する、ことを特徴とするものである。
【0015】
さらに、非侵襲生体情報測定装置において、前記信号選択手段は、書き込み可能な第三のレジスタを備え、前記第三のレジスタによって前記光源を点灯させデジタルデータを前記第一の記憶手段に記録するまでの一連の動作回数である前記X回を外部から変更することが可能である、ことを特徴とするものである。
【0016】
さらに、非侵襲生体情報測定装置において、前記信号選択手段は、書き込み可能な第四のレジスタを備え、前記第四のレジスタによって前記特徴量推定手段で使用しないチャンネルの前記増幅手段以降の動作停止タイミングを示す前記Y回を外部から変更することが可能である、ことを特徴とするものである。
【0017】
さらに、非侵襲生体情報測定装置において、前記信号選択手段は、書き込み可能な第五のレジスタを備え、前記第五のレジスタによって全Nチャンネルの中で前記一連の動作開始時に前記増幅手段以降の動作を行うチャンネルを示す前記Zチャンネルを外部から変更することが可能である、ことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明の非侵襲生体情報測定装置によれば、低消費電力の装置を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に、本発明の非侵襲生体情報測定装置の実施の形態を、図面とともに詳細に説明する。
【0020】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1においては、非侵襲生体情報測定装置は、光音響方式を用いた非侵襲血糖測定装置100を想定している。
【0021】
図1は、本発明の実施の形態1による非侵襲血糖測定装置100を含むシステム構成を示す図である。図1において、100は非侵襲血糖測定装置、111は光、120は生体、130は血管、131は光音響波信号である。(a)は起動信号302、(b)は点灯タイミング301、(c)は光音響波信号131、(d)は終了信号303、(e)は推定血糖値出力タイミングである。繰り返し測定において1回の測定間隔を測定ユニット、血糖値を推定するまでの区間を測定基本サイクルとして測定周期ごとに一連の動作を行う。
【0022】
本実施の形態1の非侵襲血糖測定装置100は、生体120の表面に接するように装着し、光111を入射させる。光111は生体120の内部を伝播し、血管130内の血糖値を推定可能な物質で吸収され光音響波信号131が生成される。血管130内の血糖値を推定可能な物質により生成された光音響波信号131を非侵襲血糖測定装置100が検出し、特徴量(以下、推定血糖値291とする。)を推定する。
【0023】
図2は、本発明の実施の形態1による非侵襲血糖測定装置100のブロック構成を示す図である。図2において、100は非侵襲血糖測定装置、210は光源、220は生体情報センサ、230は増幅手段、240はA/D変換手段、250は記憶手段、260は特徴量推定手段、270は平均化手段、280は信号選択手段、290は血糖推定手段、300は制御手段、310は測定周期カウンタ、313はパワーオフレジスタ、314はパワーオンレジスタである。
【0024】
光源210は、少なくとも一つ以上備え、血糖値を推定可能な物質が吸収する波長の光111を放出する。制御手段300は、光源210の繰り返し回数に応じた点灯タイミング301を制御し、さらに増幅手段230とA/D変換手段240に起動信号302を、増幅手段230とA/D変換手段240と特徴量推定手段260に終了信号303を、特徴量推定手段260に信号選択タイミング311と信号選択リセットタイミング312を出力し、各手段の動作を制御する。
【0025】
生体情報センサ220は、光音響波信号131を圧電信号A221、圧電信号B222、圧電信号C223に変換する。本実施の形態1において、生体情報センサ220で検出するチャンネルはチャンネルA、チャンネルB、チャンネルCの順に配置された3チャンネルとする。
【0026】
増幅手段230は、制御手段300からの起動信号302に基づき、圧電信号A221、圧電信号B222、圧電信号C223をそれぞれ増幅して、増幅信号A231、増幅信号B232、増幅信号C233を生成する。
【0027】
A/D変換手段240は、制御手段300からの起動信号302に基づき、増幅信号A231、増幅信号B232、増幅信号C233をそれぞれサンプリングデータA241、サンプリングデータB242、サンプリングデータC243に変換する。
【0028】
記憶手段250は、サンプリングデータA241とサンプリングデータB242とサンプリングデータC243を記録する領域で、A/D変換手段240によって書き込まれ、特徴量推定手段260によって読み出される。
【0029】
特徴量推定手段260は、平均化手段270、信号選択手段280、血糖推定手段290から構成され、制御手段300からの終了信号303に基づき、記憶データA251と記憶データB252と記憶データC253を読み出す。
【0030】
平均化手段270は読み出した記憶データA251と記憶データB252と記憶データC253のそれぞれに対して平均化処理を行い、平均化信号A271、平均化信号B272、平均化信号C273を信号選択手段280に出力する。
【0031】
信号選択手段280は平均化信号A271、平均化信号B272、平均化信号C273の中から少なくとも1チャンネル以上の信号を選択し、選択後平均化信号281を血糖推定手段290に、増幅手段230とA/D変換手段240の中の特定チャンネルの動作を制御する選択信号282を増幅手段230とA/D変換手段240に出力する。本実施の形態1では信号選択手段280で選択するチャンネル数を1とする。
【0032】
血糖推定手段290は選択後平均化信号281を用いて推定血糖値291を算出して外部に出力する。
【0033】
図3は、本発明の実施の形態1による非侵襲血糖測定装置100の、推定血糖値291を出力するまでの代表的な信号のタイミングチャートである。図3において、(a)は起動信号302、(b)は信号選択タイミング311、(c)は推定血糖値出力タイミング、(d)は信号選択リセットタイミング、(e)は選択信号282、(f)はチャンネルAの増幅手段及びA/D変換手段の動作、(g)はチャンネルBの増幅手段及びA/D変換手段の動作、(h)はチャンネルCの増幅手段及びA/D変換手段の動作を模式的に示したものである。
【0034】
図3(e)の選択信号282は0から7の範囲で変化する信号であり、チャンネルA、チャンネルB、チャンネルCのうちどのチャンネルの動作を行うかを示す信号である。選択信号282と各チャンネルの動作を(選択信号282、チャンネルAの動作、チャンネルBの動作、チャンネルCの動作)の形式で示すと、(0、OFF、OFF、OFF)、(1、OFF、OFF、ON)、(2、OFF、ON、OFF)、(3、OFF、ON、ON)、(4、ON、OFF、OFF)、(5、ON、OFF、ON)、(6、ON、ON、OFF)、(7、ON、ON、ON)となる。
【0035】
以下、図1、図2、図3を用いて、本実施の形態1の非侵襲血糖測定装置100の、血糖値の推定を行う場合の動作を説明する。
【0036】
本実施の形態1において、測定ユニットは0.1秒、繰り返し回数は50回、測定基本サイクルは5.0秒、測定周期は3分とする。ここで、外部より書き込み可能なレジスタの初期値として、パワーオフレジスタ313に0.9(秒)、パワーオンレジスタ314に170(秒)を設定する。なお、本実施の形態1においては、パワーオフレジスタ313、パワーオンレジスタ314の設定値として時間で設定したが、測定ユニットの回数で設定してもよく、同等の設定が可能であることは明らかである。
【0037】
まず、本実施の形態1による非侵襲血糖測定装置100を、図1に示すように患者の腕などの生体120の表面に装着する。その後、患者が本非侵襲血糖測定装置100に設けられた血糖値測定開始スイッチ(図示せず)を起動すると、制御手段300が増幅手段230とA/D変換手段240に起動信号302を出力し、増幅手段230とA/D変換手段240が安定動作に入るタイミングで光源210の点灯タイミング301を制御し、光源210を点灯する。
【0038】
光源210からの光111は生体120内を伝播し、血管130内の血糖値を推定可能な物質で吸収され光音響波信号131が生成される。
【0039】
生体情報センサ220は、光音響波信号131を検出し、チャンネルAで検出した結果を圧電信号A221、チャンネルBで検出した結果を圧電信号B222、チャンネルCで検出した結果を圧電信号C223に変換する。
【0040】
増幅手段230は生体情報センサ220によって変換された圧電信号A221と圧電信号B222と圧電信号C223をあらかじめ設定されているゲインで増幅し、チャンネルAの増幅結果を増幅信号A231、チャンネルBの増幅結果を増幅信号B232、チャンネルCの増幅結果を増幅信号C233としてA/D変換手段240に出力する。ここで増幅手段230に起動信号302と終了信号303が入力されているのは、光音響波信号131の発生するタイミングでのみ増幅手段230の構成要素であるオペアンプ等の素子の動作をイネーブルにするためのものであり、増幅手段230の低消費電力化を図る目的のものである。従って、これらの信号が入力されていなくても、同等の動作をすることは可能である。
【0041】
A/D変換手段240は、制御手段300からの起動信号302を受け取り、増幅手段230から出力された増幅信号A231と増幅信号B232と増幅信号C233を特定の間隔でアナログデジタル変換し、チャンネルAにおけるサンプリングデータA241とチャンネルBにおけるサンプリングデータB242とチャンネルCにおけるサンプリングデータC243を記憶手段250に書き込む。
【0042】
ここでA/D変換手段240に終了信号303が入力されているのは、光音響波信号131の発生しているタイミングでのみA/D変換手段240の構成要素であるA/Dコンバータ等の素子の動作をイネーブルにするためのものであり、A/D変換手段240の低消費電力化を図る目的のものである。従って、この信号が入力されていなくても同等の動作をすることは可能である。
【0043】
以下、上記制御手段300が起動信号302を出力してサンプリングデータA241とサンプリングデータB242とサンプリングデータC243を記憶手段250に書き込むまでの一連の動作をデータ取得期間と呼ぶ。
【0044】
特徴量推定手段260は、制御手段300からの終了信号303を受け取り、記憶手段250に記録されている記憶データA251と記憶データB252と記憶データC253を読み出し、平均化手段270において平均化処理を行い、チャンネルAにおける平均化結果を平均化信号A271、チャンネルBにおける平均化結果を平均化信号B272、チャンネルCにおける平均化結果を平均化信号C273として信号選択手段280に出力する。
【0045】
信号選択手段280は、平均化動作の途中で発生する制御手段300からの信号選択タイミング311が示すタイミングにおいて、増幅手段230とA/D変換手段240における各チャンネルの動作ON、OFFを個別に制御する選択信号282を出力し、繰り返し回数分の測定が終了すると平均化信号A271と平均化信号B272と平均化信号C273の中から選択信号282が示すチャンネルの平均化信号である選択後平均化信号281を血糖推定手段290に出力する。
【0046】
血糖推定手段290は選択後平均化信号281を基に血糖値の推定を行い、推定血糖値出力タイミングで推定血糖値291を外部に出力する。
【0047】
以下、図3を用いて、本実施の形態1の非侵襲血糖測定装置100における、時間経過に応じた特徴量推定手段260の詳細な動作の説明を行う。
【0048】
時間0秒において、制御手段300が増幅手段230とA/D変換手段240に1回目の起動信号302を出力する。このとき、選択信号282は7を示しているため、1回目の起動信号302によるデータ取得期間で、増幅手段230とA/D変換手段240の全チャンネルが動作し、記憶手段250にサンプリングデータA241とサンプリングデータB242とサンプリングデータC243が記録される。1回目の終了信号303が出力されると、特徴量推定手段260は1回目の起動信号302に対応した記憶データA251と記憶データB252と記憶データC253を読み出す。
【0049】
このとき制御手段300内の測定周期カウンタ310は動作クロックによる時間測定を開始し、測定時間がパワーオフレジスタ313の示す時間0.9秒と異なるために信号選択タイミング311を出力せず、また測定時間がパワーオンレジスタ314の示す時間170秒とも異なるために信号選択リセットタイミング312も出力しない。
【0050】
時間0.1秒において、2回目の起動信号302によるデータ取得期間で、増幅手段230とA/D変換手段240の全チャンネルが動作し、データ取得期間終了後、終了信号303が出力されると、特徴量推定手段260は、時間0秒と同様に、記憶データA251と記憶データB252と記憶データC253を読み出す。
【0051】
時間0.2秒以降時間0.8秒までの間、測定ユニットである時間0.1秒毎に時間0秒と同様の動作を行う。
【0052】
時間0.9秒において、制御手段300が増幅手段230とA/D変換手段240に10回目の起動信号302を出力する。このとき、選択信号282は7を示しているため、10回目の起動信号302によるデータ取得期間で、増幅手段230とA/D変換手段240の全チャンネルが動作し、記憶手段250にサンプリングデータA241とサンプリングデータB242とサンプリングデータC243が記録される。10回目の終了信号303が出力されると、特徴量推定手段260は10回目の起動信号302に対応した記憶データA251と記憶データB252と記憶データC253を読み出す。
【0053】
このとき制御手段300内の測定周期カウンタ310による測定時間がパワーオフレジスタ313の示す時間0.9秒と等しいため信号選択タイミング311を出力する。
【0054】
信号選択リセットタイミング312は測定時間がパワーオンレジスタ314の示す時間170秒と異なるために出力しない。
【0055】
信号選択タイミング311が出力されると、平均化手段270においてチャンネルA、チャンネルB、チャンネルCそれぞれについて記憶手段250から読み出された10回分のデータに対する平均化処理を行い、平均化結果を信号選択手段280に出力する。
【0056】
信号選択手段280では平均化信号A271、平均化信号B272、平均化信号C273について、血管130において発生した光音響波信号131の変動量に相当する振幅レベルをそれぞれ検出し、最も絶対値の大きい振幅レベルを有するチャンネルを選択する。本実施の形態1ではチャンネルBが選択されたとし、選択信号282が2に変化する。このとき、血糖値の推定はまだ行わないため、選択後平均化信号281には何も出力しない。
【0057】
時間1.0秒において、制御手段300が増幅手段230とA/D変換手段240に11回目の起動信号302を出力する。このとき、選択信号282は2を示しているため、11回目の起動信号302によるデータ取得期間で、増幅手段230とA/D変換手段240のうち、チャンネルAとチャンネルCは動作を停止し、記憶手段250にサンプリングデータB242が記録される。11回目の終了信号303が出力されると、特徴量推定手段260は11回目の起動信号302に対応した記憶データB252を読み出す。
【0058】
このとき制御手段300内の測定周期カウンタ310による測定時間がパワーオフレジスタ313の示す時間0.9秒と異なるため信号選択タイミング311は出力せず、信号選択リセットタイミング312も測定時間がパワーオンレジスタ314の示す時間170秒と異なるために出力しない。
【0059】
時間1.1秒以降時間4.9秒までの間、測定ユニットである時間0.1秒毎に時間1.0秒と同様の動作を行う。
【0060】
時間5.0秒において、推定血糖値出力タイミング(c)が出力され、平均化手段270は、記憶手段250が出力したチャンネルBにおける50個の記憶データB252を平均化し、平均化信号B272として信号選択手段280に出力する。信号選択手段280は平均化信号B272を選択後平均化信号281として血糖推定手段290に出力し、血糖推定手段290は、選択後平均化信号281を解析して、血糖値を推定し、推定血糖値291を出力する。
【0061】
時間5.1秒から時間169.9秒までの間、制御手段300は起動信号302を出力せず、測定周期カウンタ310による時間測定のみを行う。
【0062】
時間170秒において、測定周期カウンタ310による測定時間がパワーオフレジスタ313の示す時間0.9秒と異なるために信号選択タイミング311は出力しないが、測定時間がパワーオンレジスタ314の示す時間170秒と等しいために信号選択リセットタイミング312を出力する。
【0063】
信号選択リセットタイミング312が出力されると信号選択手段280において選択信号282を7にリセットする。
【0064】
なお、本実施の形態1においては、生体情報センサ220で検出するチャンネル数を3、血糖推定手段290で使用するチャンネル数を1として説明したが、これらのチャンネル数は任意の数に設定可能である。
【0065】
また、本実施の形態1において、信号選択手段280における選択方法は、各チャンネルそれぞれに対する平均化信号の振幅レベル絶対値を検出し、その中で最も大きい振幅レベル絶対値を有するチャンネルが血管130に最も近いチャンネルであるとして選択を行っているが、振幅情報ではなく時間情報を用いて選択を行っても良い。この場合、各チャンネルそれぞれに対する平均化信号の中から光111の照射タイミングと血管130において発生した光音響波信号131のピーク発生タイミングの時間差を検出し、その中で最も早く血管130において発生した光音響波信号131のピークが発生したチャンネルを血管130に最も近いチャンネルであるとして選択を行っても良い。
【0066】
また、本実施の形態1においては、パワーオフレジスタ313に0.9(秒)、パワーオンレジスタ314に170(秒)を設定したが、これらの設定時間は外部から自由に変更することが可能である。
【0067】
このとき、パワーオフレジスタ313の設定時間は、血管130に最も近い位置に設置されているチャンネルを選択するのに十分な光音響波信号131の信号品質が得られる回数以上かつ、測定基本サイクル以下にすればよい。
【0068】
また、パワーオンレジスタ314の設定時間は、推定血糖値出力タイミング以降で、かつ、増幅手段230及びA/D変換手段240の中で動作を停止していたチャンネルが次の測定周期までに安定して動作するまでの時間を考慮して設定すればよい。
【0069】
また、本実施の形態1の信号選択手段280において、次のような動作を行ってもよい。
【0070】
生体情報センサ220で検出するチャンネルをチャンネルA、チャンネルB、チャンネルC、チャンネルD、チャンネルE、チャンネルF、チャンネルG、チャンネルH、チャンネルIの順に配置された9チャンネル、血糖推定手段290で使用するチャンネル数を1とする。
【0071】
ここで、測定周期開始時に9チャンネル全ての増幅手段230及びA/D変換手段240の動作を行うのではなく、例えばチャンネルA、チャンネルC、チャンネルE、チャンネルG、チャンネルIの5チャンネルについて動作を行う。
【0072】
そして信号選択タイミング311が出力されたタイミングにおいて、平均化手段270においてチャンネルA、チャンネルC、チャンネルE、チャンネルG、チャンネルIそれぞれについて記憶手段250から読み出されたデータに対する平均化処理を行い、平均化結果を信号選択手段280に出力する。
【0073】
信号選択手段280では入力された5つの平均化信号を補間することによりチャンネルB、チャンネルD、チャンネルF、チャンネルHにおける補間平均化信号を作成した後、全9チャンネルの中から上述した選択方法にて血糖推定手段290で使用するチャンネルを選択する。例えばこのときチャンネルDが選択されたとする。
【0074】
その後信号選択リセットタイミング312が出力されるまでの間、増幅手段230及びA/D変換手段240の中でチャンネルDを除く8チャンネルの動作を停止する。
【0075】
推定血糖値出力タイミング(c)が出力されると、平均化手段270は、チャンネルDにおいて測定基本サイクル開始から信号選択タイミング311が出力されるまでの測定に対する補間信号と、信号選択タイミング311が出力されてから測定基本サイクルが終了するまでの間に得られたデータから選択後平均化信号281を作成し、血糖推定手段290から推定血糖値291を出力する。
【0076】
また、選択後平均化信号281を作成する際に、補間された平均化データを用いず、信号選択タイミング311が出力されてから測定基本サイクルが終了するまでの間に得られたデータを用いて選択後平均化信号281を作成しても良い。
【0077】
また、本実施の形態1では、光音響方式を用いた非侵襲血糖測定装置で説明したが、信号選択手段280における信号選択方法が振幅レベルの大きさによる比較であれば光音響方式の他の生体情報測定装置、あるいは、ラマン分光検査法やOCT(光干渉断層法)、旋光角、光の吸収や透過を用いた他の非侵襲生体情報測定装置にも適用が可能である。
【0078】
以上のように、本発明の実施の形態1による非侵襲血糖測定装置100においては、測定ユニットの一連の動作をX回行う測定基本サイクルにおいて、Y回(YはXより少ない自然数)繰り返した時点で、平均化手段270と信号選択手段280により血糖値を推定するために使用するチャンネルをあらかじめ決定し、以降X回までは特徴量推定手段260で使用しないチャンネルの増幅手段230以降の動作を停止することにより、低消費電力の装置を実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明にかかる非侵襲生体情報測定装置は、複数チャンネルを有し、複数回の測定結果をそれぞれ平均化してから生体情報を測定する場合において、平均化の途中で生体情報を測定するためのチャンネルをあらかじめ決定し、以降平均化が終了するまでの間、生体情報を測定するために使用しないチャンネルにおける増幅手段以降の動作を停止することによって低消費電力の装置を実現することが可能となり、ポータブル機器の連続測定時間を向上することに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明の実施の形態1におけるシステム構成を示す図
【図2】本発明の実施の形態1による非侵襲血糖測定装置100のブロック構成を示す図
【図3】本発明の実施の形態1による非侵襲血糖測定装置100の動作を示すタイミングチャート
【符号の説明】
【0081】
100 非侵襲血糖測定装置
111 光
120 生体
130 血管
131 光音響波信号
210 光源
220 生体情報センサ
221 圧電信号A
222 圧電信号B
223 圧電信号C
230 増幅手段
231 増幅信号A
232 増幅信号B
233 増幅信号C
240 A/D変換手段
241 サンプリングデータA
242 サンプリングデータB
243 サンプリングデータC
250 記憶手段
251 記憶データA
252 記憶データB
253 記憶データC
260 特徴量推定手段
270 平均化手段
271 平均化信号A
272 平均化信号B
273 平均化信号C
280 信号選択手段
281 選択後平均化信号
282 選択信号
290 血糖推定手段
291 推定血糖値
300 制御手段
301 点灯タイミング
302 起動信号
303 終了信号
310 測定周期カウンタ
311 信号選択タイミング
312 信号選択リセットタイミング
313 パワーオフレジスタ
314 パワーオンレジスタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つの光源と、
前記光源の点灯タイミングと後述する各手段の起動を制御する制御手段と、
生体情報を所定時間測定するNチャンネル(Nは2以上の自然数)の生体情報センサと、
前記生体情報センサから得られるNチャンネルの出力信号を増幅する増幅手段と、
前記増幅されたNチャンネルの増幅信号をA/D変換するA/D変換手段と、
前記A/D変換されたNチャンネルのデジタルデータを記憶する第一の記憶手段と、
前記光源を点灯させデジタルデータを前記第一の記憶手段に記録するまでの一連の動作をX回(Xは2以上の自然数)繰り返し
前記第一の記憶手段に記憶されているデジタルデータを平均化する平均化手段と、
前記平均化したデータを解析して後述する特徴量推定手段で使用するMチャンネル(MはN以下の自然数)の平均化データを選択する信号選択手段と、
前記選択手段で選択された平均化データより生体情報の特徴量を推定する特徴量推定手段を備えた非侵襲生体情報測定装置において、
前記一連の動作をY回(YはXより少ない自然数)繰り返した時点で、前記平均化手段と前記信号選択手段により前記特徴量推定手段で使用するチャンネルをあらかじめ決定し、以降X回までは、前記特徴量推定手段で使用しないチャンネルの前記増幅手段以降の動作を停止することを特徴とする非侵襲生体情報測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の非侵襲生体情報測定装置において、前記信号選択手段は、前記平均化したデジタルデータの振幅ピークレベルをNチャネル分比較し、振幅ピークレベルが最大となるチャンネルを含んだ隣接するMチャンネルを選択する、ことを特徴とする非侵襲生体情報測定装置。
【請求項3】
請求項1に記載の非侵襲生体情報測定装置において、前記信号選択手段は、前記平均化したデジタルデータの振幅ピークが発生するサンプリングタイミングをNチャネル分比較し、振幅ピークの発生タイミングが最も早いチャンネルを含んだ隣接するMチャンネルを選択する、ことを特徴とする非侵襲生体情報測定装置。
【請求項4】
請求項1に記載の非侵襲生体情報測定装置において、前記信号選択手段は、書き込み可能な第一のレジスタを備え、前記第一のレジスタによって前記光源を点灯させデジタルデータを前記第一の記憶手段に記録するまでの一連の動作回数である前記X回を外部から変更することが可能である、ことを特徴とする非侵襲生体情報測定装置。
【請求項5】
請求項1に記載の非侵襲生体情報測定装置において、前記信号選択手段は、書き込み可能な第二のレジスタを備え、前記第二のレジスタによって前記特徴量推定手段で使用しないチャンネルの前記増幅手段以降の動作停止タイミングを示す前記Y回を外部から変更することが可能である、ことを特徴とする非侵襲生体情報測定装置。
【請求項6】
少なくとも一つの光源と、前記光源の点灯タイミングと後述する各手段の起動を制御する制御手段と、
生体情報を所定時間測定するNチャンネル(Nは2以上の自然数)の生体情報センサと、
前記生体情報センサから得られるNチャンネルの出力信号を増幅する増幅手段と、前記増幅されたNチャンネルの増幅信号をA/D変換するA/D変換手段と、
前記A/D変換されたNチャンネルのデジタルデータを記憶する第一の記憶手段と、
前記光源を点灯させデジタルデータを前記第一の記憶手段に記録するまでの一連の動作をX回(Xは2以上の自然数)繰り返し前記第一の記憶手段に記憶されているデジタルデータを平均化する平均化手段と、
前記平均化したデータを解析して後述する特徴量推定手段で使用するMチャンネル(MはN以下の自然数)の平均化データを選択する信号選択手段と、
前記選択手段で選択された平均化データより生体情報の特徴量を推定する特徴量推定手段を備えた非侵襲生体情報測定装置において、
前記一連の動作開始時にはZチャンネル(ZはN未満の自然数)において前記増幅手段以降の動作を行い、前記一連の動作をY回(YはXより少ない自然数)繰り返した時点で、前記平均化手段において入力されたZチャンネルのデータを補間することによりNチャネルのデータを作成し、前記信号選択手段において該Nチャネルのデータにより前記特徴量推定手段で使用するチャンネルをあらかじめ決定し、以降X回までは、前記特徴量推定手段で使用しないチャンネルの前記増幅手段以降の動作を停止することを特徴とする非侵襲生体情報測定装置。
【請求項7】
請求項6に記載の非侵襲生体情報測定装置において、前記信号選択手段は、前記平均化したデジタルデータの振幅ピークレベルをNチャネル分比較し、振幅ピークレベルが最大となるチャンネルを含んだ隣接するMチャンネルを選択する、ことを特徴とする非侵襲生体情報測定装置。
【請求項8】
請求項6に記載の非侵襲生体情報測定装置において、
前記信号選択手段は、前記平均化したデジタルデータの振幅ピークが発生するサンプリングタイミングをNチャネル分比較し、振幅ピークの発生タイミングが最も早いチャンネルを含んだ隣接するMチャンネルを選択する、ことを特徴とする非侵襲生体情報測定装置。
【請求項9】
請求項6に記載の非侵襲生体情報測定装置において、
前記信号選択手段は、書き込み可能な第三のレジスタを備え、前記第三のレジスタによって前記光源を点灯させデジタルデータを前記第一の記憶手段に記録するまでの一連の動作回数である前記X回を外部から変更することが可能である、ことを特徴とする非侵襲生体情報測定装置。
【請求項10】
請求項6に記載の非侵襲生体情報測定装置において、前記信号選択手段は、書き込み可能な第四のレジスタを備え、前記第四のレジスタによって前記特徴量推定手段で使用しないチャンネルの前記増幅手段以降の動作停止タイミングを示す前記Y回を外部から変更することが可能である、ことを特徴とする非侵襲生体情報測定装置。
【請求項11】
請求項6に記載の非侵襲生体情報測定装置において、
前記信号選択手段は、書き込み可能な第五のレジスタを備え、前記第五のレジスタによって全Nチャンネルの中で前記一連の動作開始時に前記増幅手段以降の動作を行うチャンネルを示す前記Zチャンネルを外部から変更することが可能である、ことを特徴とする非侵襲生体情報測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−39265(P2009−39265A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−206567(P2007−206567)
【出願日】平成19年8月8日(2007.8.8)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】