非常停止用押ボタンスイッチ
【課題】カバーなどの別部品を設けることなく、非常停止用押ボタンスイッチの不用意なリセットを確実に防止できるようにする。
【解決手段】操作部1とスイッチ部2とを備え、操作部1は軸方向に押動操作されると押し込み状態にロックされ、このロック位置の操作部1は捻回操作されるとロックが解除され、待機位置に復帰する非常停止用押ボタンスイッチにおいて、押ボタン3の周壁3bに沿う周壁11bを有するベゼル11をスイッチ部2に固定して設け、その周壁11bに錠前を通す施錠穴16を形成するとともに、押ボタン3の周壁3bに操作部1のロック位置でベゼル11の施錠穴16に重なる施錠穴17を形成し、これらの施錠穴16,17に跨らせて錠前を通し、操作部1をロック位置に施錠するようにする。カバーなどの別部品が不要であり、また施錠穴16,17は複数対設けることが可能なので、複数個の錠前で同時に施錠することができる。
【解決手段】操作部1とスイッチ部2とを備え、操作部1は軸方向に押動操作されると押し込み状態にロックされ、このロック位置の操作部1は捻回操作されるとロックが解除され、待機位置に復帰する非常停止用押ボタンスイッチにおいて、押ボタン3の周壁3bに沿う周壁11bを有するベゼル11をスイッチ部2に固定して設け、その周壁11bに錠前を通す施錠穴16を形成するとともに、押ボタン3の周壁3bに操作部1のロック位置でベゼル11の施錠穴16に重なる施錠穴17を形成し、これらの施錠穴16,17に跨らせて錠前を通し、操作部1をロック位置に施錠するようにする。カバーなどの別部品が不要であり、また施錠穴16,17は複数対設けることが可能なので、複数個の錠前で同時に施錠することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、非常時に負荷を停止させる非常停止用押ボタンスイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
非常停止用押ボタンスイッチ(以下、単に「押ボタンスイッチ」という。)は、緊急時や機械の保守点検時などに押ボタンを押動操作して負荷回路を強制開路し、かつ開路状態に自己保持(ロック)する機能を有するものである。押動操作した押ボタンスイッチを待機(操作待ち)状態に復帰(リセット)する方式として、押ボタンを捻回するもの(プッシュロック・ターンリセット方式)(特許文献2参照)や押ボタンを引き戻すもの(プッシュロック・プルリセット方式)がある。いずれにしても、負荷の停止状態で誤ってリセットされると、人命に関わる事故が発生する恐れがありきわめて危険である。そのため、操作の押ボタン部分を覆う施錠可能な保護カバー(誤操作防止カバー)を取り付けたり、押ボタン中心部にキーを挿入しなければリセット操作できない鍵付きスイッチを用いたりしている。誤操作防止カバーについては、例えば特許文献1に記載されている。
【特許文献1】特開平5−20951号公報
【特許文献2】特開2003−178643号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、誤操作防止カバーはスイッチ本体と別部品であるため、手配モレや取付ミスにより設置が確保されない危険がある。また、鍵付きスイッチは挿入するキーが1本のみであるため、複数者が同時にキーを保有して二重、三重の安全を図りたい場合に対応できないという問題がある。
【0004】
この発明の課題は、別部品を設けることなく非常停止用押ボタンスイッチの不用意なリセット(誤操作)を確実に防止できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、この発明は、頭部にキャップ状の押ボタンを有し、軸方向及び回転方向の両方向にばね力を受ける操作部と、この操作部により操作されるスイッチ部とを備え、前記操作部は前記ばね力に抗して軸方向に押動操作されると押し込み状態にロックされ、このロック位置の操作部は前記ばね力に抗して捻回操作されるとロックが解除され、前記ばね力により待機位置に復帰する非常停止用押ボタンスイッチにおいて、前記押ボタンの周壁に沿う周壁を有するベゼルを前記スイッチ部に固定して設け、このベゼルの周壁に錠前を通す施錠穴を形成するとともに、前記押ボタンの周壁に前記操作部のロック位置で前記ベゼルの施錠穴に重なる施錠穴を形成し、これらの施錠穴に跨らせて錠前を通すことにより前記操作部をロック位置に施錠するようにするものである(請求項1)。
【0006】
この発明は、誤操作防止カバーを用いることなく、非常停止用押ボタンスイッチに直に施錠できるようにするものである。そのために、施錠穴を有するベゼルをスイッチ部に固定して設けるとともに、操作部のロック位置でベゼルの施錠穴と重なる施錠穴を押ボタンに設け、これらの施錠穴に錠前を通すことにより、非常停止用押ボタンスイッチをロック状態に施錠する。請求項1の発明によれば、カバーなどの別部品が不要であり、また施錠穴は複数対設けることが可能なので、複数個の錠前で同時に施錠し、それらのキーを複数者に持たせることができる。
【0007】
請求項1の発明において、前記押ボタンにその周壁の外周面から突出するピンを固定して設けるとともに、前記ベゼルの周壁の内周面に前記ピンと係合して前記操作部を回転方向に係止する段部を設け、前記操作部の待機位置で前記ピンを前記段部に係合させることにより、前記操作部をロック位置から前記ばね力に抗して一定角度捻回した状態に係止し、この待機位置で前記操作部を押動操作すると前記ピンの係合が外れ、前記操作部はばね力によりロック位置まで前記一定角度回転するようにするとよい(請求項2)。
【0008】
この発明の押ボタンスイッチにおいて、ベゼルの施錠穴と押ボタンの施錠穴とは、待機位置では互いに位置がずれており、ロック位置で重なって施錠可能となる。その際、待機位置でベゼルと押ボタンの施錠穴に部分的に重なりがあると、この部分が隙間となって異物がスイッチ内に侵入する原因となる。従って、待機位置では両方の施錠穴の位置が完全にずれていることが望ましいが、軸方向(押ボタンの押動方向)のみの位置ずれでは部分的な重なりを避けることが困難な場合が起こり得る。その場合に、請求項2の発明により、操作部をロック位置からばね力に抗して一定角度捻回した位置に係止して待機させるようにすれば、待機状態の施錠穴の位置をベゼルの施錠穴から軸方向のみならず回転方向にもずらし、待機位置での施錠穴の重なり避けることが容易となる。待機位置の操作部は押動操作によりピンの係合が外れると、ばね力によりロック位置まで自動的に回転する。
【0009】
請求項2の発明において、前記押ボタンの内側に円筒状のシャッタを挿入し、このシャッタを軸方向には前記押ボタンと一緒に移動し、回転方向には前記押ボタンに対してスライドするように保持するとともに、このシャッタの外周面に前記操作部のロック位置で前記ベゼル及び押ボタンの施錠穴に重なる案内溝を設け、この案内溝により前記施錠穴に通す錠前を案内するようにするとよい(請求項3)。
【0010】
錠前を通す施錠穴は一つの錠前について2個設け、これら2個の施錠穴に跨らせて錠前を閂状に挿通するのが普通である。その場合、錠前が例えば南京錠であれば、U字形に湾曲した弦を2個の施錠穴に跨らせる作業は手探りになり厄介である。そこで、請求項3の発明により、押ボタンの内側に挿入したシャッタに錠前を案内する案内溝を設ければ、弦を挿通する施錠作業が容易になる。また、押ボタンの内側のシャッタは押ボタンやベゼルの周壁にあけられた施錠穴などの開口を塞ぎ、異物の侵入を防ぐ役割を兼ねることができる。
【0011】
請求項3の発明において、前記操作部のロック位置において互いに重なるように、前記押ボタンの周壁及び前面壁と前記ベゼルの周壁とに施錠穴を形成するとともに、前記シャッタにこれらの施錠穴に跨る施錠溝を形成し、これらの穴及び施錠溝を通して錠前を装着するようにするとよい(請求項4)。
【0012】
請求項1ないし4の何れかの発明において、前記押しボタンに設けて施錠穴とベゼルに設けた施錠穴に跨ってシザースロックを装着するようにしてもよい(請求項5)
この発明の押ボタンスイッチには複数個の錠前を同時に設置するようにすることが可能であるが、錠前に南京錠などを使用する場合、設置スペースの都合から、錠前の数は2〜3個に抑えられる。そこで、請求項5の発明により、押ボタンとベゼルとに跨らせてシザースロックを装着すれば、設置する錠前の数を任意に増加することができる。なお、ここでシザースロックとは、一対の開閉アームからなる鋏状のロック用具で、開閉アームの一端に施錠穴に嵌入されるフックを有し、他端に開閉アームの動作をロックするための多数の施錠穴を有するものを称している。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、押ボタンスイッチに直に施錠可能であるため、誤操作防止カバーのような別部品が不要であり、別部品の手配モレ等による施錠不能を招く恐れがない。また、1つの押ボタンスイッチに複数の錠前のための施錠穴を設けることが可能であるため、それらの錠前のキーを複数者に持たせ、重層的に誤操作防止を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、この発明の実施の形態を、図に示す実施例について説明する。
【実施例1】
【0015】
図1〜図5に、この発明の実施例1を示す。
【0016】
ここで、図1は押ボタンスイッチの待機(操作待ち)状態の斜視図、図2は同じくロック(操作)状態の斜視図、図3は図2の III−III線に沿う要部縦断面図、図4は図1におけるベゼル内周面の段差を示す拡大説明図、図5は図2の押ボタンスイッチの施錠した状態の斜視図である。まず、図1において、押ボタンスイッチは頭部にキャップ状の押ボタンを有し、軸方向及び回転方向の両方向にばね力を受ける操作部1と、この操作部1により操作されるスイッチ部2とを備えている。なお、押ボタンスイッチは、ばねや接点などの金属部品を除いて樹脂成形品により製作されている。次に、その詳細な構成について説明する。
【0017】
図1及び図3、特に図3において、操作部1は、押ボタン3、ターンボタン4、シャッタ5、押し棒6等からなっている。押ボタン3はキャップ状で操作面となる前面壁3aと周壁3bとからなり、前面壁中心に円形穴があけられるとともにその周縁に環状壁3cが同心に形成され、環状壁3cの内周4箇所には係合爪3dが弾性変形可能に一体形成されている。ターンボタン4は一端の小径部4aと他端の大径部4bとからなる段付き中空円筒体で、大径部4bの周壁には環状凹部4cが形成されている。ターンボタン4の頂部には、図示しないランプの光を透過させる半透明のグローブ7がねじ込みにより装着されている。
【0018】
シャッタ5は押ボタン3と緩く嵌合する中空円筒体で、内壁面に段部が設けられ、この段部の端面は押ボタン3の環状壁3cと同一面に揃えられている。ターンボタン4は、シャッタ5が挿入された後の押ボタン3の中心穴に小径部4aを介して嵌め込まれ、小径部付け根の溝と押ボタン3の係合爪3dとの係合により押ボタン3に結合されている。シャッタ5はターンボタン4により軸方向に押さえられ、押ボタン3の内側に回転方向にスライド可能に保持されている。押し棒6は中空円筒体で、下部に一対のロックチップ8を半径方向に出入自在に保持し、各ロックチップ8は図示しない圧縮コイルばねによりに外向きに付勢されている。
【0019】
押し棒6は、圧縮コイルばねからなるトリガースプリング9を挟んで、ターンボタン4に軸方向に摺動可能に挿入され、その際、外周面に軸方向に形成された突条6aがターンボタン4の大径部内周面に形成された軸方向の条溝4dと嵌合することにより、軸方向に案内されるとともに回転方向に回り止めされている。また、ターンボタン4に挿入された押し棒6は、外周面に突出形成された角柱状の突起6bがターンボタン4の大径部周壁にあけられた長方形の角穴4eに摺動可能に嵌め込まれ、トリガースプリング9のばね力に対抗して抜け止めされている。
【0020】
次に、スイッチ部2は、フレーム10、ベゼル11、リングナット12、図示しない接点ユニット等からなっている。フレーム10は大径部10aと小径部10bとからなる段付き中空円筒体で、大径部10aの周壁には、内外二重の環状凹部が同心的に設けられている。また、小径部10bの内周面には、押し棒6のロックチップ8と係合するロックフランジ10fが操作部1の捻回範囲に渡って一体形成されている。
【0021】
ベゼル11は、底板11aと周壁11bとからなる底付き円筒体で、周壁11bの外周面にはわずかなテーパが下太りに付けられている。このベゼル11は底板中心の穴を介してフレーム10の小径部10bに嵌め込まれ、底板11aが大径部10aの段付き端面に超音波溶接や接着などにより固着されてフレーム10に固定されている。リングナット12は押ボタンスイッチを図示しない盤パネルに固定するためのもので、フレーム10の小径部10bに切られたねじ部に螺合されている。ベゼル11及びリングナット12の盤パネルとの接触面には、それぞれパッキン13及び14が取り付けられている。
【0022】
操作部1はスイッチ部2に図3の上方から軸方向に挿入され、互いの環状の凹凸部の噛みあわせにより図示の通り摺動可能に組み合わされる。その際、ターンボタン4の環状凹部4c及びフレーム10の内側の環状凹部には復帰スプリング15が挿入される。復帰スプリング15は圧縮ばねと捩じりばねとを兼ねた円筒状のコイルスプリングで、両端がターンボタン4及びフレーム10にそれぞれ結合され、操作部1はスイッチ部2から軸方向及び回転方向の両方向にばね力を受ける。トリガースプリング9は円筒状の圧縮コイルばねで、復帰スプリング15に比べて小さなばね定数を有している。
【0023】
図1の待機状態において、復帰スプリング15は軸方向(圧縮方向)及び回転方向(捩じり方向)に予備変形され、その結果として操作部1は図1に円弧矢印で示す反時計方向の実線矢印で示す方向に常時付勢されている。その場合、図3の断面図では図示できないが、一対のロックチップ8を結ぶ直径と直交するに直径(図3の紙面に垂直な直径)上で押し棒6の外周部に爪が形成されており、この爪がフレーム10のストッパに係合することにより、操作部1は復帰スプリング15による軸方向力に対抗して待機位置に保持されている。なお、トリガースプリング9も、ターンボタン4と押し棒6との間で圧縮されている。
【0024】
一方、図3のロック状態において、操作部1はロックチップ8がフレーム10のロックフランジ10fに係合して軸方向に保持され、ロックチップ8がロックフランジ10fの周方向終端でフレーム10の図示しないストッパに突き当たって回転方向に位置決めされている。図示しないが、スイッチ部2には図2の下端部に接点ユニットが収容されており、図3のロック状態において押し棒6は接点ユニットの操作棒を押し下げている。これにより、押ボタンスイッチの常閉接点(b接点)が開離され、負荷回路の強制開路が達成されている。
【0025】
ここで、図3を参照しながら、図1の待機状態から図2及び図3のロック状態に至る押動操作を説明すると次の通りである。待機状態(図1)から押ボタン3を押動操作すると、後述するピンの係止が外れ、操作部1は復帰スプリング15の回転力によりロック位置(図2)まで、図1に実線矢印で示す反時計方向に一定角度回転した後、ロックチップ8がロックフランジ10fに係合する。その際、押ボタン3が押動されると、押し棒6はトリガースプリング9を介して軸方向に押され、ロックチップ8がロックフランジ10fに突き当たる。押ボタン3が更に押されると、ロックチップ8がロックフランジ10fに突き当たったままトリガースプリング9が圧縮される。そして、トリガースプリング9の圧縮力が一定レベルを超えると、ロックチップ8がロックフランジ10fを乗り越えて図3に示すように係合する。
【0026】
上記動作において、ばね定数が復帰スプリング15より小さいトリガースプリング9の役割は、押ボタン3が一定ストローク以上押動されないと、上記の通りロックチップ8を係合させないことにあり、これにより押ボタン3に不用意な接触が生じた場合の誤動作の防止が図られている。
【0027】
図3の押ボタンスイッチをリセットするには、操作部1を復帰スプリング15に抗して時計方向(図2の破線矢印方向)に所定角度捻回させる。すると、ロックチップ8がロックフランジ10fに形成された図示しない軸方向の切欠きに達して係合が外れ、操作部1は復帰スプリング15の軸方向力により持ち上げられる。これにより、押ボタンスイッチの常閉接点が閉成され負荷回路が閉路される。更に、ロックチップ8がロックフランジ10fの切欠きを通過した時点で、操作部1は復帰スプリング15の回転方向力により反時計方向(図1の実線矢印方向)に駆動され待機位置に達する。なお、プッシュロック・ターンリセット方式の押ボタンスイッチの基本構造については、例えば特許文献2を参照されたい。
【0028】
ここで、図1及び図2において、ベゼル11の周壁11bには、2個を1組とする施錠穴16(16a,16b)が2組形成されている。なお、図1及び図2では、2組の内の一方の組の2個の施錠穴16a,16bのみが図上に現れており、他方の組はその反対側にある。また、押ボタン3の周壁3bには、施錠穴16と同形の2個を1組とする施錠穴17(17a,17b)が、施錠穴16と対応するように2組形成されている。そして、ベゼル11の施錠穴16と押ボタン3の施錠穴17とは、図2に示す操作部1のロック位置で互いに重なり、図1に示す待機位置で軸方向及び回転方向に位置ずれして、施錠穴16は押ボタン3の周壁3bで隠されるように位置設定されている。なお、図1に示す押ボタンスイッチの待機状態で、操作部1は図2のロック位置から破線矢印で示す時計方向に一定角度捻回された位置にあるが、この点について次に説明する。
【0029】
すなわち、図1及び図2において、押ボタン3には、その周壁3bの外周面から突出するように、円柱状の短いピン18が固定して設けられている。そして、ベゼル11の周壁11bの内周面には、ピン18と係合する段部19が設けられている。段部19は周壁11bの内周面の肉が、図4に示す形状の範囲で除去されることにより形成され、ピン18は段部19の内側では自由に移動できるが段部19に当ると係止されるようになっている。
【0030】
操作部1がロック位置にある図2の押ボタンスイッチにおいて、ピン18は図4のEの位置にある。また、操作部1が待機位置にある図1の押ボタンスイッチにおいて、ピン18は図4のAの位置で段部19の垂直部19aに係止されている。この待機位置Aはロック位置Eから復帰スプリング15の回転方向力に抗して一定角度(図示の場合は32°)捻回された状態にある。更に、上に述べた押ボタンスイッチのリセット動作の過程において、操作部1はピン18がF位置に来るまで捻回される。
【0031】
この押ボタンスイッチの操作時におけるピン18の動きは次のようになる。図4において、待機状態(図1)の押ボタンスイッチの押ボタン3を押動操作すると、位置Aにあったピン18は下向き矢印の方向に動き、位置Bにおいて段部19aによる係止が外れる。そこで、ピン18は復帰スプリング15の回転方向力により、右向き矢印の方向に動いて位置Cに移動する。そのまま押動操作を続けると、ピン18は下向き矢印の方向に動いて位置Dまで達する。ここで操作を完了し押ボタン3を開放すると、ピン18は上向き矢印方向に動いて位置Eまで移動し、押ボタンスイッチはロック状態(図2)となる。このロック状態では図3に示した通り、押し棒6のロックチップ8がフレーム10のロックフランジ10fに係合し、図示しない接点ユニットの常閉接点は開離する。
【0032】
押ボタンスイッチのリセット時には、押ボタン3を時計方向の捻回操作すると、位置Eのピン18は左向き矢印方向に一定角度(図示の場合は45°)動いて位置Fまで移動する。同時にロックチップ8の係合がはずれ、復帰スプリング15の軸方向力により位置Gまで移動し、次いで回転方向力により一定角度(図示の場合は45°−32°=13°)反時計方向に動き、位置Aまで達して待機状態に戻る。
【0033】
ここで、図示の実施例1ではピン18を段部19aで位置Aに係止することにより、操作部1をロック位置(E)から一定角度(32°)手前の位置で待機させているが、リセット時にピン18による係止を行わず、操作部1をロック位置と同じ角度位置まで復帰させてもよい。しかし、その場合には、待機位置とロック位置との間の施錠穴16と施錠穴17の位置ずれが軸方向のみとなり、待機状態で施錠穴16をベゼル11で完全に隠すことができないことが起こり得る。その場合、ロック位置の一定角度手前で操作部1を待機させれば、図1に示す通り、待機位置で施錠穴17の位置を施錠穴16から回転方向にもずらし、施錠穴16を押ボタン3の周壁3bで隠すことが容易になる。
【0034】
さて、ベゼル11の施錠穴16(16a,16b)と押ボタン3の施錠穴17(17a,17b)とが重なる図2のロック状態において、図5に示すように、施錠穴16,17に跨るように錠前20が通され、操作部1はロック位置に施錠される。図示の場合、錠前20には南京錠が用いられ、その弦20aは施錠穴16及び17の各2個の穴16a,16b及び17a,17bをそれぞれ閂状に貫通している。施錠穴16及び17は2組設けられているため、錠前20は図示の通り2個装着される。図示押ボタンスイッチによれば、錠前20が直に装着可能であるため、誤操作防止カバーのような別部品が不要である。また、2個の錠前が同時に装着可能であるため、2者が各々の鍵を別々に保有し、それらの鍵が揃わなければ解錠できないようにすることにより、安易な解錠による押ボタンスイッチの不測のリセットがより確実に防止される。
【0035】
ここで、図1〜図3において、シャッタ5の外周面には、押ボタン3の2組の施錠穴17にそれぞれ対応するように、2個の施錠溝21が形成されている。なお、図1及び図2では施錠溝21は1個のみ見えており、他の1個はその反対側にある。施錠溝21は図3に示すように断面U字状で、周方向に長く形成されている。そして、施錠溝21は図2のロック状態において、押ボタン3の施錠穴17と重なり、その2個の穴17a,17b間に、従って施錠穴16の2個の穴16a,16b間にも渡るように位置が定められている。そこで、ロック状態で錠前20を装着する際、弦20aを施錠溝21に沿わせて挿入すれば、弦20aを穴16a,16b及び穴17a,17bに円滑に貫通させることができる。
【0036】
また、図1及び図2において、操作部1のロック位置において互いに重なるように、押ボタン3の前面壁3aと周壁3b及びベゼル11の周壁11bとに、施錠穴22、23及び24がそれぞれ形成されるとともに、シャッタ5にロック穴22〜24に跨る施錠溝25が形成されている。これらのロック穴22〜24及び施錠溝25には、図5に示すようにシザースロック26が装着される。ここで、シザースロック26は、軸27で鋏状に連結された一対の開閉アーム28及び29からなるロック用具で、開閉アーム28,29の一端にフックを有し、他端に開閉アーム28,29の動作をロックするために多数(図示は6個)の錠前を装着するための施錠穴30を有している。
【0037】
このシザースロック26は、図5に示すようにフックが施錠穴22〜24に嵌入され、施錠穴30に図示しない錠前、例えば南京錠が装着されることにより操作部1をロックする。シザースロック26を用いることにより、押ボタンスイッチに直に装着される錠前20の他に錠前を別途装着し、施錠をより重層化することができる。
【実施例2】
【0038】
図6〜図12にこの発明の実施例2を示す。
【0039】
ここで、図6は押ボタンスイッチの待機(操作待ち)状態の斜視図、図7は同じくロック(操作)状態の斜視図、図8はロック状態における復帰操作を説明する斜視図、図9は構成を説明するための分解斜視図、図10は、図6のX−X線に沿う要部断面図、図11は図7のXI−XI線に沿
う要部縦断面図、図12は図7のロック状態の押ボタンスイッチに施錠した状態を示す斜視図である。
【0040】
この実施例2の構成は、ほとんど前記実施例1の構成と同じであるので、同一構成要素は同一符号を付して示す。
【0041】
図6〜図12に示すように、この実施例2の押ボタンスイッチはスイッチ部2(接点ユニットは図示を省略)の円筒状のフレーム10の外周に間隔をおいてベゼル11を固定的に取り付ける。そしてカップ状に構成された押ボタン3の周壁3bをフレーム10とベゼル11との間の隙間内にスライド可能に挿入し、押ボタン3とフレーム10の間に復帰スプリング9を介装する。押ボタン3内に嵌着されたターンボタン4およびこれにトリガースプリング9を介して結合された押し棒6をフレーム10の中心穴内にスライド可能に挿入する。押し棒6には、スプリング81を介して直径方向に出没可能に保持された1対のロックチップ8が設けられる。フレーム10の内周には、このロックチップ8を係止するためのロックフランジ10fが設けられる。
【0042】
押ボタンスイッチの待機状態(図6および図10)においては、図10に示すようにロックチップ8は、押し棒6が押し込まれていないので、ロックフランジ10fの上方に位置し、これに係合することはない。押ボタン3を矢印方向に押動操作したとき、押し棒6が押し込まれることにより、ロックチップ8がこのロックフランジ10fと係合し、これを乗り越えた位置で図11に示すようにこれに係止され、押ボタン3を押し込み位置でロックし、この状態を保持(図7、図11参照)する。これにより図示しないスイッチ部2の接点ユニットの操作棒を押し下げることにより、押ボタンスイッチの常閉接点(b接点)が開離され、負荷回路が強制開路される。
【0043】
これをリセット(復帰)するときは、図8に示すように、押ボタン3を矢印で示すように時計方向へ所定の角度、例えば45°回転すると、これとともに押し棒6が回転し、ロックチップ8が、ロックフランジ10fにロック位置から45°の位置に設けられた部分的な切欠き(図示せず)で係止が解かれるため、押ボタン3等が復帰スプリング15により軸方向および回転方向に駆動され、図6および図10に示す待機位置に復帰され、押ボタンスイッチの、いわゆるプッシュロック・ターンリセット動作が行われる。
【0044】
ロック位置において、リセット操作ができないようにするため、ベゼル11の周壁には、2個1組の施錠穴16(16a、16b)が1組以上設けられる。図示する実施例では2組設けられている。フレーム10のベゼル11に設けた施錠穴16と対向する位置に各組の2個の施錠穴16aと16bに亘る長さの施錠溝10gが設けられる。そしてベゼル11とフレーム10との間の押ボタン3の周壁3bには、押ボタン3をロック位置に押し込んだ状態において、ベゼル11の施錠穴16およびフレーム10の施錠溝10gと対向する位置に施錠穴3hが設けられる(図6、図9、図10参照)。
【0045】
リセット(待機)状態においては、図6および図10に示すように、押ボタン3が復帰スプリング15により押し上げられた状態にあるため、押ボタン3の周壁3bに設けられた施錠穴3hがベゼル11およびフレーム10の施錠穴16および施錠溝10gの位置から上方に位置にする。このため、施錠穴16と施錠溝10gが押ボタン3の周壁3bによって遮られ、施錠穴16に錠前やシザースロックを装着することができない。
【0046】
押ボタン3を押し込み、押ボタンスイッチを図7および図11に示すようなロック状態にすると、押ボタン3の周壁3bの施錠穴3hが、ベゼル11およびフレーム10の施錠穴16および施錠溝10gと対向する位置に置かれるため、3つの施錠穴16、3h、10gが貫通する。したがってロック状態では、施錠穴16から図12に示すように錠前20またはシザースロック26を装着することができ、これにより押ボタン3が施錠される。このように押ボタン3が施錠されると、押ボタン3を回転操作しても、錠前20の弦20aおよびシザースロック26の開閉アーム28、29が、施錠穴16の一方の施錠穴16aまたは16bの内壁に当たるところで回動が阻止され、リセット動作に必要な所定の角度、例えば45°は回転させることができず、リセット動作が阻止される。錠前20およびシザースロック26の施錠を解いてこれらを押ボタン3から外してから、押ボタン3の回転操作を行うことによりリセット動作を行うことができる。
【0047】
ベゼル11、フレーム10および押ボタン3に設けた施錠穴16等は、錠前の弦や、シザースロックのアームを緩く通すことができるような大きさに選ばれており、押ボタン3等に装着された錠前20等は、図12に円弧矢印で示すようにかなり自由に揺動することができる。これにより、錠前20等を外すときに鍵の装着や開錠操作がやりやすい向きに向けることができ、開錠操作が容易となる。
【0048】
この実施例2の押ボタンスイッチは、押ボタン3を押し込んでセット(ロック)状態に操作するときは、押ボタン3は軸方向のみに移動させ、リセットするとき、押ボタンスイッチを回転操作することによってロック状態を解除してリセット(復帰)位置に復帰させるとき軸方向および回転方向に移動させるようにして、実施例1の場合に比べてベゼル11の高さを高くして、待機位置において押ボタン3の周壁3bに設けた施錠穴3hがベゼル11の内側に隠れるようにしている。これにより実施例1におけるシャッタ5が不要となる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】この発明の実施例1を示す非常停止用押ボタンスイッチの待機状態の斜視図である。
【図2】図1の押ボタンスイッチのロック状態の斜視図である。
【図3】図2のIII−III線に沿う縦断面図である。
【図4】図1におけるベゼル内周面の段差を示す拡大説明図である。
【図5】図2の押ボタンスイッチに施錠した状態を示す斜視図である。
【図6】この発明の実施例2を示す非常停止用押ボタンスイッチの待機状態の斜視図である。
【図7】図6の押ボタンスイッチのロック状態の斜視図である。
【図8】図6の押ボタンスイッチのリセット操作を説明する斜視止図である。
【図9】図1の押ボタンスイッチの分解斜視図である。
【図10】図6のX−X線に沿う縦断面図である。
【図11】図7のXI−XI線に沿う縦断面図である。
【図12】図7の押ボタンスイッチに施錠した状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0050】
1 操作部
2 スイッチ部
3 押ボタン
3h、16、22〜24 施錠穴
4 ターンボタン
5 シャッタ
6 押し棒
8 ロックチップ
10 フレーム
10g、21、25 施錠溝
11 ベゼル
15 復帰スプリング
17 施錠穴
18 ピン
19 段部
20 錠前
26 シザースロック
【技術分野】
【0001】
この発明は、非常時に負荷を停止させる非常停止用押ボタンスイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
非常停止用押ボタンスイッチ(以下、単に「押ボタンスイッチ」という。)は、緊急時や機械の保守点検時などに押ボタンを押動操作して負荷回路を強制開路し、かつ開路状態に自己保持(ロック)する機能を有するものである。押動操作した押ボタンスイッチを待機(操作待ち)状態に復帰(リセット)する方式として、押ボタンを捻回するもの(プッシュロック・ターンリセット方式)(特許文献2参照)や押ボタンを引き戻すもの(プッシュロック・プルリセット方式)がある。いずれにしても、負荷の停止状態で誤ってリセットされると、人命に関わる事故が発生する恐れがありきわめて危険である。そのため、操作の押ボタン部分を覆う施錠可能な保護カバー(誤操作防止カバー)を取り付けたり、押ボタン中心部にキーを挿入しなければリセット操作できない鍵付きスイッチを用いたりしている。誤操作防止カバーについては、例えば特許文献1に記載されている。
【特許文献1】特開平5−20951号公報
【特許文献2】特開2003−178643号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、誤操作防止カバーはスイッチ本体と別部品であるため、手配モレや取付ミスにより設置が確保されない危険がある。また、鍵付きスイッチは挿入するキーが1本のみであるため、複数者が同時にキーを保有して二重、三重の安全を図りたい場合に対応できないという問題がある。
【0004】
この発明の課題は、別部品を設けることなく非常停止用押ボタンスイッチの不用意なリセット(誤操作)を確実に防止できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、この発明は、頭部にキャップ状の押ボタンを有し、軸方向及び回転方向の両方向にばね力を受ける操作部と、この操作部により操作されるスイッチ部とを備え、前記操作部は前記ばね力に抗して軸方向に押動操作されると押し込み状態にロックされ、このロック位置の操作部は前記ばね力に抗して捻回操作されるとロックが解除され、前記ばね力により待機位置に復帰する非常停止用押ボタンスイッチにおいて、前記押ボタンの周壁に沿う周壁を有するベゼルを前記スイッチ部に固定して設け、このベゼルの周壁に錠前を通す施錠穴を形成するとともに、前記押ボタンの周壁に前記操作部のロック位置で前記ベゼルの施錠穴に重なる施錠穴を形成し、これらの施錠穴に跨らせて錠前を通すことにより前記操作部をロック位置に施錠するようにするものである(請求項1)。
【0006】
この発明は、誤操作防止カバーを用いることなく、非常停止用押ボタンスイッチに直に施錠できるようにするものである。そのために、施錠穴を有するベゼルをスイッチ部に固定して設けるとともに、操作部のロック位置でベゼルの施錠穴と重なる施錠穴を押ボタンに設け、これらの施錠穴に錠前を通すことにより、非常停止用押ボタンスイッチをロック状態に施錠する。請求項1の発明によれば、カバーなどの別部品が不要であり、また施錠穴は複数対設けることが可能なので、複数個の錠前で同時に施錠し、それらのキーを複数者に持たせることができる。
【0007】
請求項1の発明において、前記押ボタンにその周壁の外周面から突出するピンを固定して設けるとともに、前記ベゼルの周壁の内周面に前記ピンと係合して前記操作部を回転方向に係止する段部を設け、前記操作部の待機位置で前記ピンを前記段部に係合させることにより、前記操作部をロック位置から前記ばね力に抗して一定角度捻回した状態に係止し、この待機位置で前記操作部を押動操作すると前記ピンの係合が外れ、前記操作部はばね力によりロック位置まで前記一定角度回転するようにするとよい(請求項2)。
【0008】
この発明の押ボタンスイッチにおいて、ベゼルの施錠穴と押ボタンの施錠穴とは、待機位置では互いに位置がずれており、ロック位置で重なって施錠可能となる。その際、待機位置でベゼルと押ボタンの施錠穴に部分的に重なりがあると、この部分が隙間となって異物がスイッチ内に侵入する原因となる。従って、待機位置では両方の施錠穴の位置が完全にずれていることが望ましいが、軸方向(押ボタンの押動方向)のみの位置ずれでは部分的な重なりを避けることが困難な場合が起こり得る。その場合に、請求項2の発明により、操作部をロック位置からばね力に抗して一定角度捻回した位置に係止して待機させるようにすれば、待機状態の施錠穴の位置をベゼルの施錠穴から軸方向のみならず回転方向にもずらし、待機位置での施錠穴の重なり避けることが容易となる。待機位置の操作部は押動操作によりピンの係合が外れると、ばね力によりロック位置まで自動的に回転する。
【0009】
請求項2の発明において、前記押ボタンの内側に円筒状のシャッタを挿入し、このシャッタを軸方向には前記押ボタンと一緒に移動し、回転方向には前記押ボタンに対してスライドするように保持するとともに、このシャッタの外周面に前記操作部のロック位置で前記ベゼル及び押ボタンの施錠穴に重なる案内溝を設け、この案内溝により前記施錠穴に通す錠前を案内するようにするとよい(請求項3)。
【0010】
錠前を通す施錠穴は一つの錠前について2個設け、これら2個の施錠穴に跨らせて錠前を閂状に挿通するのが普通である。その場合、錠前が例えば南京錠であれば、U字形に湾曲した弦を2個の施錠穴に跨らせる作業は手探りになり厄介である。そこで、請求項3の発明により、押ボタンの内側に挿入したシャッタに錠前を案内する案内溝を設ければ、弦を挿通する施錠作業が容易になる。また、押ボタンの内側のシャッタは押ボタンやベゼルの周壁にあけられた施錠穴などの開口を塞ぎ、異物の侵入を防ぐ役割を兼ねることができる。
【0011】
請求項3の発明において、前記操作部のロック位置において互いに重なるように、前記押ボタンの周壁及び前面壁と前記ベゼルの周壁とに施錠穴を形成するとともに、前記シャッタにこれらの施錠穴に跨る施錠溝を形成し、これらの穴及び施錠溝を通して錠前を装着するようにするとよい(請求項4)。
【0012】
請求項1ないし4の何れかの発明において、前記押しボタンに設けて施錠穴とベゼルに設けた施錠穴に跨ってシザースロックを装着するようにしてもよい(請求項5)
この発明の押ボタンスイッチには複数個の錠前を同時に設置するようにすることが可能であるが、錠前に南京錠などを使用する場合、設置スペースの都合から、錠前の数は2〜3個に抑えられる。そこで、請求項5の発明により、押ボタンとベゼルとに跨らせてシザースロックを装着すれば、設置する錠前の数を任意に増加することができる。なお、ここでシザースロックとは、一対の開閉アームからなる鋏状のロック用具で、開閉アームの一端に施錠穴に嵌入されるフックを有し、他端に開閉アームの動作をロックするための多数の施錠穴を有するものを称している。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、押ボタンスイッチに直に施錠可能であるため、誤操作防止カバーのような別部品が不要であり、別部品の手配モレ等による施錠不能を招く恐れがない。また、1つの押ボタンスイッチに複数の錠前のための施錠穴を設けることが可能であるため、それらの錠前のキーを複数者に持たせ、重層的に誤操作防止を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、この発明の実施の形態を、図に示す実施例について説明する。
【実施例1】
【0015】
図1〜図5に、この発明の実施例1を示す。
【0016】
ここで、図1は押ボタンスイッチの待機(操作待ち)状態の斜視図、図2は同じくロック(操作)状態の斜視図、図3は図2の III−III線に沿う要部縦断面図、図4は図1におけるベゼル内周面の段差を示す拡大説明図、図5は図2の押ボタンスイッチの施錠した状態の斜視図である。まず、図1において、押ボタンスイッチは頭部にキャップ状の押ボタンを有し、軸方向及び回転方向の両方向にばね力を受ける操作部1と、この操作部1により操作されるスイッチ部2とを備えている。なお、押ボタンスイッチは、ばねや接点などの金属部品を除いて樹脂成形品により製作されている。次に、その詳細な構成について説明する。
【0017】
図1及び図3、特に図3において、操作部1は、押ボタン3、ターンボタン4、シャッタ5、押し棒6等からなっている。押ボタン3はキャップ状で操作面となる前面壁3aと周壁3bとからなり、前面壁中心に円形穴があけられるとともにその周縁に環状壁3cが同心に形成され、環状壁3cの内周4箇所には係合爪3dが弾性変形可能に一体形成されている。ターンボタン4は一端の小径部4aと他端の大径部4bとからなる段付き中空円筒体で、大径部4bの周壁には環状凹部4cが形成されている。ターンボタン4の頂部には、図示しないランプの光を透過させる半透明のグローブ7がねじ込みにより装着されている。
【0018】
シャッタ5は押ボタン3と緩く嵌合する中空円筒体で、内壁面に段部が設けられ、この段部の端面は押ボタン3の環状壁3cと同一面に揃えられている。ターンボタン4は、シャッタ5が挿入された後の押ボタン3の中心穴に小径部4aを介して嵌め込まれ、小径部付け根の溝と押ボタン3の係合爪3dとの係合により押ボタン3に結合されている。シャッタ5はターンボタン4により軸方向に押さえられ、押ボタン3の内側に回転方向にスライド可能に保持されている。押し棒6は中空円筒体で、下部に一対のロックチップ8を半径方向に出入自在に保持し、各ロックチップ8は図示しない圧縮コイルばねによりに外向きに付勢されている。
【0019】
押し棒6は、圧縮コイルばねからなるトリガースプリング9を挟んで、ターンボタン4に軸方向に摺動可能に挿入され、その際、外周面に軸方向に形成された突条6aがターンボタン4の大径部内周面に形成された軸方向の条溝4dと嵌合することにより、軸方向に案内されるとともに回転方向に回り止めされている。また、ターンボタン4に挿入された押し棒6は、外周面に突出形成された角柱状の突起6bがターンボタン4の大径部周壁にあけられた長方形の角穴4eに摺動可能に嵌め込まれ、トリガースプリング9のばね力に対抗して抜け止めされている。
【0020】
次に、スイッチ部2は、フレーム10、ベゼル11、リングナット12、図示しない接点ユニット等からなっている。フレーム10は大径部10aと小径部10bとからなる段付き中空円筒体で、大径部10aの周壁には、内外二重の環状凹部が同心的に設けられている。また、小径部10bの内周面には、押し棒6のロックチップ8と係合するロックフランジ10fが操作部1の捻回範囲に渡って一体形成されている。
【0021】
ベゼル11は、底板11aと周壁11bとからなる底付き円筒体で、周壁11bの外周面にはわずかなテーパが下太りに付けられている。このベゼル11は底板中心の穴を介してフレーム10の小径部10bに嵌め込まれ、底板11aが大径部10aの段付き端面に超音波溶接や接着などにより固着されてフレーム10に固定されている。リングナット12は押ボタンスイッチを図示しない盤パネルに固定するためのもので、フレーム10の小径部10bに切られたねじ部に螺合されている。ベゼル11及びリングナット12の盤パネルとの接触面には、それぞれパッキン13及び14が取り付けられている。
【0022】
操作部1はスイッチ部2に図3の上方から軸方向に挿入され、互いの環状の凹凸部の噛みあわせにより図示の通り摺動可能に組み合わされる。その際、ターンボタン4の環状凹部4c及びフレーム10の内側の環状凹部には復帰スプリング15が挿入される。復帰スプリング15は圧縮ばねと捩じりばねとを兼ねた円筒状のコイルスプリングで、両端がターンボタン4及びフレーム10にそれぞれ結合され、操作部1はスイッチ部2から軸方向及び回転方向の両方向にばね力を受ける。トリガースプリング9は円筒状の圧縮コイルばねで、復帰スプリング15に比べて小さなばね定数を有している。
【0023】
図1の待機状態において、復帰スプリング15は軸方向(圧縮方向)及び回転方向(捩じり方向)に予備変形され、その結果として操作部1は図1に円弧矢印で示す反時計方向の実線矢印で示す方向に常時付勢されている。その場合、図3の断面図では図示できないが、一対のロックチップ8を結ぶ直径と直交するに直径(図3の紙面に垂直な直径)上で押し棒6の外周部に爪が形成されており、この爪がフレーム10のストッパに係合することにより、操作部1は復帰スプリング15による軸方向力に対抗して待機位置に保持されている。なお、トリガースプリング9も、ターンボタン4と押し棒6との間で圧縮されている。
【0024】
一方、図3のロック状態において、操作部1はロックチップ8がフレーム10のロックフランジ10fに係合して軸方向に保持され、ロックチップ8がロックフランジ10fの周方向終端でフレーム10の図示しないストッパに突き当たって回転方向に位置決めされている。図示しないが、スイッチ部2には図2の下端部に接点ユニットが収容されており、図3のロック状態において押し棒6は接点ユニットの操作棒を押し下げている。これにより、押ボタンスイッチの常閉接点(b接点)が開離され、負荷回路の強制開路が達成されている。
【0025】
ここで、図3を参照しながら、図1の待機状態から図2及び図3のロック状態に至る押動操作を説明すると次の通りである。待機状態(図1)から押ボタン3を押動操作すると、後述するピンの係止が外れ、操作部1は復帰スプリング15の回転力によりロック位置(図2)まで、図1に実線矢印で示す反時計方向に一定角度回転した後、ロックチップ8がロックフランジ10fに係合する。その際、押ボタン3が押動されると、押し棒6はトリガースプリング9を介して軸方向に押され、ロックチップ8がロックフランジ10fに突き当たる。押ボタン3が更に押されると、ロックチップ8がロックフランジ10fに突き当たったままトリガースプリング9が圧縮される。そして、トリガースプリング9の圧縮力が一定レベルを超えると、ロックチップ8がロックフランジ10fを乗り越えて図3に示すように係合する。
【0026】
上記動作において、ばね定数が復帰スプリング15より小さいトリガースプリング9の役割は、押ボタン3が一定ストローク以上押動されないと、上記の通りロックチップ8を係合させないことにあり、これにより押ボタン3に不用意な接触が生じた場合の誤動作の防止が図られている。
【0027】
図3の押ボタンスイッチをリセットするには、操作部1を復帰スプリング15に抗して時計方向(図2の破線矢印方向)に所定角度捻回させる。すると、ロックチップ8がロックフランジ10fに形成された図示しない軸方向の切欠きに達して係合が外れ、操作部1は復帰スプリング15の軸方向力により持ち上げられる。これにより、押ボタンスイッチの常閉接点が閉成され負荷回路が閉路される。更に、ロックチップ8がロックフランジ10fの切欠きを通過した時点で、操作部1は復帰スプリング15の回転方向力により反時計方向(図1の実線矢印方向)に駆動され待機位置に達する。なお、プッシュロック・ターンリセット方式の押ボタンスイッチの基本構造については、例えば特許文献2を参照されたい。
【0028】
ここで、図1及び図2において、ベゼル11の周壁11bには、2個を1組とする施錠穴16(16a,16b)が2組形成されている。なお、図1及び図2では、2組の内の一方の組の2個の施錠穴16a,16bのみが図上に現れており、他方の組はその反対側にある。また、押ボタン3の周壁3bには、施錠穴16と同形の2個を1組とする施錠穴17(17a,17b)が、施錠穴16と対応するように2組形成されている。そして、ベゼル11の施錠穴16と押ボタン3の施錠穴17とは、図2に示す操作部1のロック位置で互いに重なり、図1に示す待機位置で軸方向及び回転方向に位置ずれして、施錠穴16は押ボタン3の周壁3bで隠されるように位置設定されている。なお、図1に示す押ボタンスイッチの待機状態で、操作部1は図2のロック位置から破線矢印で示す時計方向に一定角度捻回された位置にあるが、この点について次に説明する。
【0029】
すなわち、図1及び図2において、押ボタン3には、その周壁3bの外周面から突出するように、円柱状の短いピン18が固定して設けられている。そして、ベゼル11の周壁11bの内周面には、ピン18と係合する段部19が設けられている。段部19は周壁11bの内周面の肉が、図4に示す形状の範囲で除去されることにより形成され、ピン18は段部19の内側では自由に移動できるが段部19に当ると係止されるようになっている。
【0030】
操作部1がロック位置にある図2の押ボタンスイッチにおいて、ピン18は図4のEの位置にある。また、操作部1が待機位置にある図1の押ボタンスイッチにおいて、ピン18は図4のAの位置で段部19の垂直部19aに係止されている。この待機位置Aはロック位置Eから復帰スプリング15の回転方向力に抗して一定角度(図示の場合は32°)捻回された状態にある。更に、上に述べた押ボタンスイッチのリセット動作の過程において、操作部1はピン18がF位置に来るまで捻回される。
【0031】
この押ボタンスイッチの操作時におけるピン18の動きは次のようになる。図4において、待機状態(図1)の押ボタンスイッチの押ボタン3を押動操作すると、位置Aにあったピン18は下向き矢印の方向に動き、位置Bにおいて段部19aによる係止が外れる。そこで、ピン18は復帰スプリング15の回転方向力により、右向き矢印の方向に動いて位置Cに移動する。そのまま押動操作を続けると、ピン18は下向き矢印の方向に動いて位置Dまで達する。ここで操作を完了し押ボタン3を開放すると、ピン18は上向き矢印方向に動いて位置Eまで移動し、押ボタンスイッチはロック状態(図2)となる。このロック状態では図3に示した通り、押し棒6のロックチップ8がフレーム10のロックフランジ10fに係合し、図示しない接点ユニットの常閉接点は開離する。
【0032】
押ボタンスイッチのリセット時には、押ボタン3を時計方向の捻回操作すると、位置Eのピン18は左向き矢印方向に一定角度(図示の場合は45°)動いて位置Fまで移動する。同時にロックチップ8の係合がはずれ、復帰スプリング15の軸方向力により位置Gまで移動し、次いで回転方向力により一定角度(図示の場合は45°−32°=13°)反時計方向に動き、位置Aまで達して待機状態に戻る。
【0033】
ここで、図示の実施例1ではピン18を段部19aで位置Aに係止することにより、操作部1をロック位置(E)から一定角度(32°)手前の位置で待機させているが、リセット時にピン18による係止を行わず、操作部1をロック位置と同じ角度位置まで復帰させてもよい。しかし、その場合には、待機位置とロック位置との間の施錠穴16と施錠穴17の位置ずれが軸方向のみとなり、待機状態で施錠穴16をベゼル11で完全に隠すことができないことが起こり得る。その場合、ロック位置の一定角度手前で操作部1を待機させれば、図1に示す通り、待機位置で施錠穴17の位置を施錠穴16から回転方向にもずらし、施錠穴16を押ボタン3の周壁3bで隠すことが容易になる。
【0034】
さて、ベゼル11の施錠穴16(16a,16b)と押ボタン3の施錠穴17(17a,17b)とが重なる図2のロック状態において、図5に示すように、施錠穴16,17に跨るように錠前20が通され、操作部1はロック位置に施錠される。図示の場合、錠前20には南京錠が用いられ、その弦20aは施錠穴16及び17の各2個の穴16a,16b及び17a,17bをそれぞれ閂状に貫通している。施錠穴16及び17は2組設けられているため、錠前20は図示の通り2個装着される。図示押ボタンスイッチによれば、錠前20が直に装着可能であるため、誤操作防止カバーのような別部品が不要である。また、2個の錠前が同時に装着可能であるため、2者が各々の鍵を別々に保有し、それらの鍵が揃わなければ解錠できないようにすることにより、安易な解錠による押ボタンスイッチの不測のリセットがより確実に防止される。
【0035】
ここで、図1〜図3において、シャッタ5の外周面には、押ボタン3の2組の施錠穴17にそれぞれ対応するように、2個の施錠溝21が形成されている。なお、図1及び図2では施錠溝21は1個のみ見えており、他の1個はその反対側にある。施錠溝21は図3に示すように断面U字状で、周方向に長く形成されている。そして、施錠溝21は図2のロック状態において、押ボタン3の施錠穴17と重なり、その2個の穴17a,17b間に、従って施錠穴16の2個の穴16a,16b間にも渡るように位置が定められている。そこで、ロック状態で錠前20を装着する際、弦20aを施錠溝21に沿わせて挿入すれば、弦20aを穴16a,16b及び穴17a,17bに円滑に貫通させることができる。
【0036】
また、図1及び図2において、操作部1のロック位置において互いに重なるように、押ボタン3の前面壁3aと周壁3b及びベゼル11の周壁11bとに、施錠穴22、23及び24がそれぞれ形成されるとともに、シャッタ5にロック穴22〜24に跨る施錠溝25が形成されている。これらのロック穴22〜24及び施錠溝25には、図5に示すようにシザースロック26が装着される。ここで、シザースロック26は、軸27で鋏状に連結された一対の開閉アーム28及び29からなるロック用具で、開閉アーム28,29の一端にフックを有し、他端に開閉アーム28,29の動作をロックするために多数(図示は6個)の錠前を装着するための施錠穴30を有している。
【0037】
このシザースロック26は、図5に示すようにフックが施錠穴22〜24に嵌入され、施錠穴30に図示しない錠前、例えば南京錠が装着されることにより操作部1をロックする。シザースロック26を用いることにより、押ボタンスイッチに直に装着される錠前20の他に錠前を別途装着し、施錠をより重層化することができる。
【実施例2】
【0038】
図6〜図12にこの発明の実施例2を示す。
【0039】
ここで、図6は押ボタンスイッチの待機(操作待ち)状態の斜視図、図7は同じくロック(操作)状態の斜視図、図8はロック状態における復帰操作を説明する斜視図、図9は構成を説明するための分解斜視図、図10は、図6のX−X線に沿う要部断面図、図11は図7のXI−XI線に沿
う要部縦断面図、図12は図7のロック状態の押ボタンスイッチに施錠した状態を示す斜視図である。
【0040】
この実施例2の構成は、ほとんど前記実施例1の構成と同じであるので、同一構成要素は同一符号を付して示す。
【0041】
図6〜図12に示すように、この実施例2の押ボタンスイッチはスイッチ部2(接点ユニットは図示を省略)の円筒状のフレーム10の外周に間隔をおいてベゼル11を固定的に取り付ける。そしてカップ状に構成された押ボタン3の周壁3bをフレーム10とベゼル11との間の隙間内にスライド可能に挿入し、押ボタン3とフレーム10の間に復帰スプリング9を介装する。押ボタン3内に嵌着されたターンボタン4およびこれにトリガースプリング9を介して結合された押し棒6をフレーム10の中心穴内にスライド可能に挿入する。押し棒6には、スプリング81を介して直径方向に出没可能に保持された1対のロックチップ8が設けられる。フレーム10の内周には、このロックチップ8を係止するためのロックフランジ10fが設けられる。
【0042】
押ボタンスイッチの待機状態(図6および図10)においては、図10に示すようにロックチップ8は、押し棒6が押し込まれていないので、ロックフランジ10fの上方に位置し、これに係合することはない。押ボタン3を矢印方向に押動操作したとき、押し棒6が押し込まれることにより、ロックチップ8がこのロックフランジ10fと係合し、これを乗り越えた位置で図11に示すようにこれに係止され、押ボタン3を押し込み位置でロックし、この状態を保持(図7、図11参照)する。これにより図示しないスイッチ部2の接点ユニットの操作棒を押し下げることにより、押ボタンスイッチの常閉接点(b接点)が開離され、負荷回路が強制開路される。
【0043】
これをリセット(復帰)するときは、図8に示すように、押ボタン3を矢印で示すように時計方向へ所定の角度、例えば45°回転すると、これとともに押し棒6が回転し、ロックチップ8が、ロックフランジ10fにロック位置から45°の位置に設けられた部分的な切欠き(図示せず)で係止が解かれるため、押ボタン3等が復帰スプリング15により軸方向および回転方向に駆動され、図6および図10に示す待機位置に復帰され、押ボタンスイッチの、いわゆるプッシュロック・ターンリセット動作が行われる。
【0044】
ロック位置において、リセット操作ができないようにするため、ベゼル11の周壁には、2個1組の施錠穴16(16a、16b)が1組以上設けられる。図示する実施例では2組設けられている。フレーム10のベゼル11に設けた施錠穴16と対向する位置に各組の2個の施錠穴16aと16bに亘る長さの施錠溝10gが設けられる。そしてベゼル11とフレーム10との間の押ボタン3の周壁3bには、押ボタン3をロック位置に押し込んだ状態において、ベゼル11の施錠穴16およびフレーム10の施錠溝10gと対向する位置に施錠穴3hが設けられる(図6、図9、図10参照)。
【0045】
リセット(待機)状態においては、図6および図10に示すように、押ボタン3が復帰スプリング15により押し上げられた状態にあるため、押ボタン3の周壁3bに設けられた施錠穴3hがベゼル11およびフレーム10の施錠穴16および施錠溝10gの位置から上方に位置にする。このため、施錠穴16と施錠溝10gが押ボタン3の周壁3bによって遮られ、施錠穴16に錠前やシザースロックを装着することができない。
【0046】
押ボタン3を押し込み、押ボタンスイッチを図7および図11に示すようなロック状態にすると、押ボタン3の周壁3bの施錠穴3hが、ベゼル11およびフレーム10の施錠穴16および施錠溝10gと対向する位置に置かれるため、3つの施錠穴16、3h、10gが貫通する。したがってロック状態では、施錠穴16から図12に示すように錠前20またはシザースロック26を装着することができ、これにより押ボタン3が施錠される。このように押ボタン3が施錠されると、押ボタン3を回転操作しても、錠前20の弦20aおよびシザースロック26の開閉アーム28、29が、施錠穴16の一方の施錠穴16aまたは16bの内壁に当たるところで回動が阻止され、リセット動作に必要な所定の角度、例えば45°は回転させることができず、リセット動作が阻止される。錠前20およびシザースロック26の施錠を解いてこれらを押ボタン3から外してから、押ボタン3の回転操作を行うことによりリセット動作を行うことができる。
【0047】
ベゼル11、フレーム10および押ボタン3に設けた施錠穴16等は、錠前の弦や、シザースロックのアームを緩く通すことができるような大きさに選ばれており、押ボタン3等に装着された錠前20等は、図12に円弧矢印で示すようにかなり自由に揺動することができる。これにより、錠前20等を外すときに鍵の装着や開錠操作がやりやすい向きに向けることができ、開錠操作が容易となる。
【0048】
この実施例2の押ボタンスイッチは、押ボタン3を押し込んでセット(ロック)状態に操作するときは、押ボタン3は軸方向のみに移動させ、リセットするとき、押ボタンスイッチを回転操作することによってロック状態を解除してリセット(復帰)位置に復帰させるとき軸方向および回転方向に移動させるようにして、実施例1の場合に比べてベゼル11の高さを高くして、待機位置において押ボタン3の周壁3bに設けた施錠穴3hがベゼル11の内側に隠れるようにしている。これにより実施例1におけるシャッタ5が不要となる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】この発明の実施例1を示す非常停止用押ボタンスイッチの待機状態の斜視図である。
【図2】図1の押ボタンスイッチのロック状態の斜視図である。
【図3】図2のIII−III線に沿う縦断面図である。
【図4】図1におけるベゼル内周面の段差を示す拡大説明図である。
【図5】図2の押ボタンスイッチに施錠した状態を示す斜視図である。
【図6】この発明の実施例2を示す非常停止用押ボタンスイッチの待機状態の斜視図である。
【図7】図6の押ボタンスイッチのロック状態の斜視図である。
【図8】図6の押ボタンスイッチのリセット操作を説明する斜視止図である。
【図9】図1の押ボタンスイッチの分解斜視図である。
【図10】図6のX−X線に沿う縦断面図である。
【図11】図7のXI−XI線に沿う縦断面図である。
【図12】図7の押ボタンスイッチに施錠した状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0050】
1 操作部
2 スイッチ部
3 押ボタン
3h、16、22〜24 施錠穴
4 ターンボタン
5 シャッタ
6 押し棒
8 ロックチップ
10 フレーム
10g、21、25 施錠溝
11 ベゼル
15 復帰スプリング
17 施錠穴
18 ピン
19 段部
20 錠前
26 シザースロック
【特許請求の範囲】
【請求項1】
頭部にキャップ状の押ボタンを有し、軸方向及び回転方向の両方向にばね力を受ける操作部と、この操作部により操作されるスイッチ部とを備え、前記操作部は前記ばね力に抗して軸方向に押動操作されると押し込み状態にロックされ、このロック位置の操作部は前記ばね力に抗して捻回操作されるとロックが解除され、前記ばね力により待機位置に復帰する非常停止用押ボタンスイッチにおいて、
前記押ボタンの周壁に沿う周壁を有するベゼルを前記スイッチ部に固定して設け、このベゼルの周壁に錠前を通す施錠穴を形成するとともに、前記押ボタンの周壁に前記操作部のロック位置で前記ベゼルの施錠穴に重なる施錠穴を形成し、これらの施錠穴に跨らせて錠前を通すことにより前記操作部をロック位置に施錠するようにしたことを特徴とする非常停止用押ボタンスイッチ。
【請求項2】
前記押ボタンにその周壁の外周面から突出するピンを固定して設けるとともに、前記ベゼルの周壁の内周面に前記ピンと係合して前記操作部を回転方向に係止する段部を設け、前記操作部の待機位置で前記ピンを前記段部に係合させることにより、前記操作部をロック位置から前記ばね力に抗して一定角度捻回した状態に係止し、この待機位置で前記操作部を押動操作すると前記ピンの係合が外れ、前記操作部はばね力によりロック位置まで前記一定角度回転するようにしたことを特徴とする請求項1記載の非常停止用押ボタンスイッチ。
【請求項3】
前記押ボタンの内側に円筒状のシャッタを挿入し、このシャッタを軸方向には前記押ボタンと一緒に移動し、回転方向には前記押ボタンに対してスライドするように保持するとともに、このシャッタの外周面に前記操作部のロック位置で前記ベゼル及び押ボタンの施錠穴に重なる案内溝を設け、この案内溝により前記施錠穴に通す錠前を案内するようにしたことを特徴とする請求項2記載の非常停止用押ボタンスイッチ。
【請求項4】
前記操作部のロック位置において互いに重なるように、前記押ボタンの周壁及び前面壁と前記ベゼルの周壁とに施錠穴を形成するとともに、前記シャッタにこれらの施錠穴に跨る施錠溝を形成し、これらの施錠穴及び施錠溝を通して錠前を装着するようにしたことを特徴とする請求項3記載の非常停止用押ボタンスイッチ。
【請求項5】
前記押ボタンに設けた施錠穴と前記ベゼルに設けた施錠穴に跨ってシザースロックを装着するようにしたことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の非常停止用押ボタンスイッチ。
【請求項1】
頭部にキャップ状の押ボタンを有し、軸方向及び回転方向の両方向にばね力を受ける操作部と、この操作部により操作されるスイッチ部とを備え、前記操作部は前記ばね力に抗して軸方向に押動操作されると押し込み状態にロックされ、このロック位置の操作部は前記ばね力に抗して捻回操作されるとロックが解除され、前記ばね力により待機位置に復帰する非常停止用押ボタンスイッチにおいて、
前記押ボタンの周壁に沿う周壁を有するベゼルを前記スイッチ部に固定して設け、このベゼルの周壁に錠前を通す施錠穴を形成するとともに、前記押ボタンの周壁に前記操作部のロック位置で前記ベゼルの施錠穴に重なる施錠穴を形成し、これらの施錠穴に跨らせて錠前を通すことにより前記操作部をロック位置に施錠するようにしたことを特徴とする非常停止用押ボタンスイッチ。
【請求項2】
前記押ボタンにその周壁の外周面から突出するピンを固定して設けるとともに、前記ベゼルの周壁の内周面に前記ピンと係合して前記操作部を回転方向に係止する段部を設け、前記操作部の待機位置で前記ピンを前記段部に係合させることにより、前記操作部をロック位置から前記ばね力に抗して一定角度捻回した状態に係止し、この待機位置で前記操作部を押動操作すると前記ピンの係合が外れ、前記操作部はばね力によりロック位置まで前記一定角度回転するようにしたことを特徴とする請求項1記載の非常停止用押ボタンスイッチ。
【請求項3】
前記押ボタンの内側に円筒状のシャッタを挿入し、このシャッタを軸方向には前記押ボタンと一緒に移動し、回転方向には前記押ボタンに対してスライドするように保持するとともに、このシャッタの外周面に前記操作部のロック位置で前記ベゼル及び押ボタンの施錠穴に重なる案内溝を設け、この案内溝により前記施錠穴に通す錠前を案内するようにしたことを特徴とする請求項2記載の非常停止用押ボタンスイッチ。
【請求項4】
前記操作部のロック位置において互いに重なるように、前記押ボタンの周壁及び前面壁と前記ベゼルの周壁とに施錠穴を形成するとともに、前記シャッタにこれらの施錠穴に跨る施錠溝を形成し、これらの施錠穴及び施錠溝を通して錠前を装着するようにしたことを特徴とする請求項3記載の非常停止用押ボタンスイッチ。
【請求項5】
前記押ボタンに設けた施錠穴と前記ベゼルに設けた施錠穴に跨ってシザースロックを装着するようにしたことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の非常停止用押ボタンスイッチ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2007−207600(P2007−207600A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−25645(P2006−25645)
【出願日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【出願人】(000000309)IDEC株式会社 (188)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【出願人】(000000309)IDEC株式会社 (188)
【Fターム(参考)】
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