説明

非常用電源システム、非常用電源装置、及び非常用電源システムの制御方法

【課題】停電の発生を防止することが可能な非常用電源システムを提供すること。
【解決手段】指示を出力する中央指令部10と、負荷に電力を出力する電力出力部81、電力出力部81と接続可能な商用電源入力部82、電力出力部81と接続可能な充電池83、電力出力部81との接続を、商用電源入力部82又は充電池83に切り替える切替部84、及び中央指令部10からの指示に基づいて切替部84を制御する制御部86とをそれぞれ有する、複数の非常用電源装置8とを備えた非常用電源システムであって、中央指令部10からの指示と連携して、複数の非常用電源装置8における電力出力部81との接続は、時間差を設けて充電池83から商用電源入力部82へ切り替えられる、非常用電源システムである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、常用又は非常用電源システム、常用又は非常用電源装置、及び常用又は非常用電源システムの制御方法に関する。尚、本明細書及び特許請求の範囲では、常用又は非常用電源システム、常用又は非常用電源装置、及び常用又は非常用電源システムの制御方法を、非常用電源システム、非常用電源装置、及び非常用電源システムと省略して記載する。
【背景技術】
【0002】
東日本大震災が発生し、福島第1原子力発電所の停止による電力不足が深刻化している。この電力不足を補うために、東北電力は他の電力会社から電力の供給を受けたり、計画停電の実施を行ったりしている。
【0003】
更に、福島第1原子力発電所の事故を受けて、他の原子力発電所の停止も行われるとともに、定期検査による停止からの再稼働が行われていない状態が続いている。
【0004】
このため、他の電力会社においても電力不足が発生し、夏場に向けて、節電等の呼びかけを行っている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、計画停電を実施した際にも、実施するか否かの予定も頻繁に変更され、企業、家庭に混乱を生じさせた。また、医療施設等の電力供給が不可欠な施設にとっては、停電は大変な混乱を巻き起こすものである。
【0006】
更に、他の電力会社の管轄内においても呼びかけだけでは、どの程度節電されるかという保証もなく、停電が発生する可能性があるという不安を常に抱くことになる。
【0007】
本発明は、上記課題を考慮して、停電の発生を防止することが可能な非常用電源システム、非常用電源装置、及び非常用電源システムの制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、第1の本発明は、
指示を出力する中央指令部と、
負荷に電力を出力する電力出力部、前記電力出力部と接続可能な商用電源入力部、前記電力出力部と接続可能な充電池、前記電力出力部との接続を、前記商用電源入力部又は前記充電池に切り替える切替部、及び前記中央指令部からの指示に基づいて前記切替部を制御する制御部とをそれぞれ有する、複数の非常用電源装置とを備えた非常用電源システムであって、
前記中央指令部からの指示と連携して、前記複数の非常用電源装置における前記電力出力部との接続は、時間差を設けて前記充電池から前記商用電源入力部へ切り替えられる、非常用電源システムである。
【0009】
第2の本発明は、
前記中央指令部は、前記電力出力部との接続を、前記商用電源入力部から前記充電池に切り替える第1指示を、前記複数の非常用電源装置に同時に送信する、第1の本発明の非常用電源システムである。
【0010】
第3の本発明は、
前記中央指令部は、記複数の非常用電源装置における前記電力出力部との接続が、時間差を設けて前記充電池から前記商用電源入力部へ切り替えられるように制御する第2指示を送信する、第1の本発明の非常用電源システムである。
【0011】
第4の本発明は、
前記中央指令部からの前記指示を受信する端末を備え、
前記端末は、前記複数の非常用電源装置のうち、少なくとも2台以上の前記非常用電源装置に対する前記中央指令部からの前記指示を仲介する、第1の本発明の非常用電源システムである。
【0012】
第5の本発明は、
前記時間差は、それぞれの前記非常用電源装置又は前記端末に割り当てられているID番号を利用して設けられる、第1又は第4の本発明の非常用電源システムである。
【0013】
第6の本発明は、
前記中央指令部からの前記指示は、放送波又はインターネットによって送信される、第1の本発明の非常用電源システムである。
【0014】
第7の本発明は、
前記中央指令部は、前記複数の非常用電源装置に、充電を行う旨の充電指示を送信し、
前記複数の非常用電源装置における前記充電は、時間差を設けて行われる、第1の本発明の非常用電源システムである。
【0015】
第8の本発明は、
負荷に電力を出力する電力出力部と、
前記電力出力部と接続可能な商用電源入力部と、
前記電力出力部と接続可能な充電池と、
前記電力出力部との接続を、前記商用電源入力部又は前記充電池に切り替える切替部と、
中央指令部からの指示に基づいて前記切替部を制御する制御部とを備えた、非常用電源装置であって、
前記非常用電源装置における前記電力出力部との接続は、少なくとも1台以上の他の前記非常用電源装置と時間差を設けて、前記充電池から前記商用電源入力部へ切り替えられる、非常用電源装置である。
【0016】
第9の本発明は、
指示を出力する中央指令部と、
負荷に電力を出力する電力出力部、前記電力出力部と接続可能な商用電源入力部、前記電力出力部と接続可能な充電池、前記電力出力部との接続を、前記商用電源入力部又は前記充電池に切り替える切替部、及び前記中央指令部からの指示に基づいて前記切替部を制御する制御部とをそれぞれ有する、複数の非常用電源装置とを備えた非常用電源システムの制御方法であって、
前記中央指令部からの指示と連携して、前記複数の非常用電源装置における前記電力出力部との接続を、前記商用電源入力部から前記充電池に切り替える商用電源切断ステップと、
前記中央指令部からの指示と連携して、前記複数の非常用電源装置における前記電力出力部との接続を、時間差を設けて前記充電池から前記商用電源入力部へ切り替える商用電源復帰ステップとを備えた、非常用電源システムの制御方法である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、停電の発生を防止することが可能な非常用電源システム、非常用電源装置、及び非常用電源システムの制御方法を提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明にかかる実施の形態1における非常用電源システムの全体構成図
【図2】本発明にかかる実施の形態1における非常用電源装置の構成図
【図3】本発明にかかる実施の形態1における非常用電源システムの制御を説明するためのフロー図
【図4】本発明にかかる実施の形態2における送信内容を説明するための図
【図5】本発明にかかる実施の形態1の変形例における非常用電源装置の構成図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明にかかる実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0020】
(実施の形態1)
以下に、本発明にかかる実施の形態1における非常用電源システムについて説明する。
【0021】
図1は、本発明にかかる実施の形態1における非常用電源システムの構成図である。本実施の形態1の非常用電源システムには、放送局1と、電力会社2と、電力会社2の管轄区域内の複数の家庭3が設けられている。各家庭3には、電力会社2からの商用電源20が設置されている。
【0022】
この放送局1には、家庭3にワンセグ通信を用いて指示を送信するための中央指令部10が設けられており、各家庭3には、放送局1からのワンセグ通信を受信する専用携帯端末4が1台設けられている。そして、各家庭3のパソコン5、冷蔵庫6、及び照明器具7等の複数の負荷と、商用電源20の間には、それぞれ非常用電源装置8が設けられている。この各家庭3内に設けられている複数の非常用電源装置8(図1では3台)は、その家庭3の専用携帯端末4とWIFIを用いた通信が行われる。
【0023】
次に、本発明の非常用電源装置の一例の構成について説明する。
【0024】
図2は、非常用電源装置8の構成図である。図2に示すように、非常用電源装置8には、パソコン5、冷蔵庫6、又は照明器具7等の負荷11に接続される電力出力部81と、商用電源20から商用電力が入力され、電力出力部81に接続可能な商用電源入力部82と、電力出力部81に接続可能な充電池83と、電力出力部81との接続を、商用電源入力部82又は充電池83に切り替える切替部84と、専用携帯端末4と無線LAN通信を行うWIFI部85と、WIFI部85が受信した放送局1からの指示に基づいて切替部84の制御を行う制御部86が設けられている。この制御部86とWIFI部85は入出力インターフェースによって情報の送受信が行われる。
【0025】
又、充電池83としては、リチウムイオン電池、鉛蓄電池等の充電可能な二次電池を用いることができる。この充電池83を充電する充電器87が設けられており、充電器87は、商用電源20の交流を直流に変換する変換部を有している。そして、充電器87と充電池83の間を電気的に接続又は切断するためのスイッチ88が設けられている。更に、充電池83から出力された電力を直流から交流に変換するためのDC・AC変換部89が、充電池83と切替部84の間に設けられている。
【0026】
尚、上記制御部86は、切替部84とともにスイッチ88の制御も行い、制御部86には、充電池83とDC・AC変換部89の状態信号が入力される。
【0027】
次に、本実施の形態1の非常用電源システムの制御方法について説明する。
【0028】
電力会社2では、一日の中で、予想される最大の使用電力(予想最大電力という)と、供給可能な電力(供給可能電力という)を算出している。このような予想最大電力と供給可能電力は、最近では、でんき予報等としてホームページでも紹介されている。
【0029】
この予想最大電力が、供給可能電力を上回っている場合には、以下の商用電源切断ステップが行われる。尚、通常は、電力出力部81は商用電源入力部82と電気的に接続されており、電力出力部81に接続されている負荷11へは、商用電源20から電力が供給されている。
【0030】
予想最大電力が供給可能電力を上回っている時間帯に到達する前に、商用電源切断ステップが行われる。このような上回る時間帯としては、例えば、夏日の平日13時〜18時などが挙げられる。
【0031】
はじめに、放送局1の中央指令部10から全ての専用携帯端末4に向けて、電力出力部81との接続を、商用電源入力部82から充電池83に切り替える商用電源切断指示が、暗号化されて、ワンセグ通信によって送信される。
【0032】
この送信された商用電源切断指示を、各家庭3に一台設けられている専用携帯端末4が受信し、暗号を解読し、その解読された商用電源切断指示を各家庭3に配置されている複数の非常用電源装置8のWIFI部85が、専用携帯端末4から受信する。
【0033】
この商用電源切断指示を受け取ると、制御部86が、切替部84を制御し、電力出力部81との接続が商用電源入力部82から充電池83に切り替えられる。
【0034】
すなわち、放送局1から商用電源切断指示を送信することによって、全ての非常用電源装置8における電力出力部81との接続は、商用電源入力部82から充電池83に切り替えられ、電力出力部81に接続されている負荷11への電力供給は充電池83から行われることになる。そのため、予想最大電力が供給可能電力を上回っている時間帯における商用電源20からの消費電力が減少し、消費電力が供給可能電力を上回らないようにすることが出来、停電を回避することが可能となる。
【0035】
次に、負荷11への電力供給を充電池83から商用電源20に復帰させる商用電源復帰ステップについて説明する。
【0036】
図3は、本実施の形態2の非常用電源システムの制御方法における商用電源復帰ステップのフローを示す図である。
【0037】
ここで専用携帯端末4のそれぞれには、図1に示すようにID番号が割り当てられており、このID番号により固体が識別可能となっている。尚、説明のために、簡略化してID番号として、n個の専用携帯端末4に対して、それぞれ1〜n(nは自然数)番が割り当てられているものとする。
【0038】
予想最大電力が供給可能電力を上回っている時間帯を過ぎると、放送局1の中央指令部10は、電力出力部81との接続を、充電池83から商用電源入力部82に切り替える商用電源復帰指示を送るが、この時、ID番号を指定する情報も同時に送信する。専用携帯端末4がn件の家庭3にそれぞれ設けられており、各専用携帯端末4に1〜n番までのID番号がそれぞれ割り当てられている場合、中央指令部10は、IDを1〜s(1≦s≦n:sは自然数)番までを指定する情報とともに、上記商用電源復帰指示を暗号化してワンセグ通信を介して送信する(ステップS1)。
【0039】
すると、全ての専用携帯端末4が、上記送信内容を受信し、暗号を解読するが、IDが1〜s番の専用携帯端末4のみが商用電源復帰指示を、非常用電源装置8に送信し、IDがs+1〜n番までの他の専用携帯端末4は、商用電源復帰指示を送信しない。すなわち、IDが1〜s番の専用携帯端末4のそれぞれとWIFIによる通信を行っている非常用電源装置8では、制御部86から切替部84に切替信号が出力され、電力出力部81との接続が、充電池83から商用電源入力部82に切り替えられ、電力出力部81に接続されている負荷11に商用電源20からの電力が供給される(ステップS2)。
【0040】
続いて、中央指令部10は、このようなIDを指定した商用電源復帰指示を送信し、所定時間経過した後に、他のIDを指定した商用電源復帰指示を暗号化して送信する。例えば、はじめにID1〜s番を指定した場合には、次にIDがs+1〜t(s+1≦t≦n)番までを指定して、商用電源入力部82へ切り替える商用電源復帰指示を暗号化して送信する(ステップS3)。
【0041】
そして、指定されたIDを有する専用携帯端末4とWIFI通信を行っている非常用電源装置8では、制御部86から切替部84に切替信号が出力され、電力出力部81との接続が、充電池83から商用電源入力部82に切り替えられる(ステップS4)。
【0042】
続いて、中央指令部10は、このようにs+1〜t(s+1≦t≦n)番までのIDを指定した商用電源復帰指示を送信し、所定時間経過した後に、他のIDを指定した商用電源切替指示を暗号化して送信する。例えば、IDがt+1〜n番までを指定して、商用電源入力部82への商用電源復帰指示を暗号化して送信する(ステップS5)。
【0043】
そして、指定されたIDを有する専用携帯端末4とWIFI通信を行っている非常用電源装置8では、制御部86から切替部84に切替信号が出力され、電力出力部81との接続が、充電池83から商用電源入力部82に切り替えられる(ステップS6)。
【0044】
このようにして、本実施の形態では、n個の専用携帯端末4を3つのグループに分けて、グループ毎に時間差を設けて、商用電源への復帰指示が行われた。
【0045】
このように、複数の専用携帯端末4を、IDによって複数のグループに分けて、グループ毎に時間差を設けて、電力出力部81との接続を、充電池83から商用電源入力部82に切り替える。これは、全ての非常用電源装置8における電力出力部81との接続を、同時に商用電源入力部82に切り替えることによって供給可能な電力量を超えて停電を引き起こすことを回避するためである。尚、本発明の商用電源復帰指示の一例は、本実施の形態1のステップS1、ステップS2、及びステップS3に対応する。
【0046】
尚、制御部86は、充電池83の充電状態、DC・AC変換部89による出力の状態の信号によって、充電池83の充電がなくなる場合や、DC・AC変換部89から電力が出力されていない場合等には、切替部84を操作して、電力出力部81との接続を商用電源入力部82に切り替え、負荷に電力が供給されなくなることを防止する。
【0047】
次に、充電池83を充電させる制御について説明する。
【0048】
放送局1の中央指令部10は、夜間などの電力の安い時間帯に、充電池83の充電を行う充電指示を、IDを指定して専用携帯端末4にワンセグ通信を利用して送信する。
【0049】
そして、指定されたIDを有する専用携帯端末4とWIFI通信を行っている非常用電源装置8では、制御部86が充電OK信号をスイッチ88に出力し、スイッチ88によって充電器87と充電池83を電気的に接続し、商用電源20からの充電が開始される。尚、充電池83の状態信号を制御部86は受信しており、充電が完了した場合には、スイッチ88を操作し、充電器87と充電池83の電気的接続が遮断される。
【0050】
続いて、他のIDを指定し、充電指示を専用携帯端末4にワンセグ通信を利用して送信する。
【0051】
そして、全てのIDが指定され、全ての充電池83の充電が終了し、充電の制御が完了する。
【0052】
このように、充電池83の充電の際にも、複数の専用携帯端末4を、IDによって複数をグループに分けて、グループ毎に時間差を設けて、充電を行うことで、全ての非常用電源装置8の充電を同時に行うことによって供給可能電力量を超えて停電を引き起こすことを回避することが出来る。
【0053】
又、本実施の形態では、1つのグループ内におけるID番号は連続していたが、連続していなくても良い。すなわち、IDが、1、4、7・・・等の番号の専用携帯端末4を指定して復帰指示が送信されてもよい。
【0054】
(実施の形態2)
次に、本発明にかかる実施の形態2における非常用電源システムについて説明する。本実施の形態2の非常用電源システムは、実施の形態1と基本的な構成は同じであるが、実施の形態1とは、商用電源復帰ステップが異なっている。そのため、本相違点を中心に説明する。尚、実施の形態1と同様の構成については同一の符号が付される。
【0055】
実施の形態1では、複数の専用携帯端末4をグループに分けて、グループ毎に商用電源復帰指示が送信されていたが、本実施の形態2では、グループ毎に時間を指定して復帰指示が送信される。
【0056】
図4は、本実施の形態2において中央指令部10から送信される商用電源復帰指示の内容を示す図である。
【0057】
図4に示すように、本実施の形態2の商用電源復帰指示は、例えば、IDが1〜s番の専用携帯端末4に対しては、A時間後に、電力出力部18との接続を商用電源入力部82に切り替える指示であり、IDがs+1〜t番の専用携帯端末4に対しては、B時間後に、電力出力部18との接続を商用電源入力部82に切り替える指示であり、IDがt+1〜n番の専用携帯端末4に対しては、C時間後に、電力出力部18との接続を商用電源入力部82に切り替える指示である。そして、A、B、Cをずらすことによって、グループ毎に時間差を設けて、充電池83の使用から商用電源20の使用への復帰を行うことが出来る。
【0058】
このような商用電源復帰指示が中央指令部10から暗号化して送信され、受信した各専用携帯端末4は、暗号を解読し、それぞれの有するID番号に対応する指示を非常用電源装置8へと送信する。そして、非常用電源装置8において、指示された時間に商用電源への復帰が行われる。
【0059】
このように、本実施の形態2の商用電源復帰指示は、1回の指示だけでよく、実施の形態1のように複数回に分けて指示を送信する必要がない。
【0060】
尚、上記時間とは分、秒であってもよく、一部のグループについては、商用電源復帰指示を受信後、すぐに実施してもよい。
【0061】
尚、A時間後等といった設定にせず、時刻を設定するようにしても良い。
【0062】
又、充電池83を充電させる制御についても、上記商標電力復帰指示と同様に、IDを指定した上で、それぞれのIDに対して充電時間を指定した充電指示を、専用携帯端末4にワンセグ通信を利用して送信する。
【0063】
そして、専用携帯端末4とWIFI通信を行っている非常用電源装置8では、その専用携帯端末4のIDに対応する指示に従って、所定の時間に、制御部86が充電OK信号をスイッチ88に出力し、スイッチ88によって充電器87と充電池83を電気的に接続し、商用電源20からの充電が開始される。尚、充電池83の状態信号を制御部86は受信しており、充電が完了した場合には、スイッチ88を操作し、充電器87と充電池83の電気的接続が遮断される。
【0064】
このようにして、充電する際にも、時間差を設けて充電するため、供給可能電力を上回らないようにすることが出来る。
【0065】
(実施の形態3)
次に、本発明にかかる実施の形態3における非常用電源システムについて説明する。本実施の形態3の非常用電源システムは、実施の形態2と基本的な構成は同じであるが、実施の形態2とは、商用電源復帰ステップが異なっている。そのため、本相違点を中心に説明する。尚、実施の形態2と同様の構成については同一の符号が付される。
【0066】
実施の形態2では、中央指令部10から送信される内容に、復帰制御を行う時間が含まれていたが、本実施の形態3では、復帰制御を行う時間が専用携帯端末4毎に予め設定されており、復帰指示を受信すると、それぞれ予め設定されている時間に復帰動作が行われる。
【0067】
すなわち、IDが1〜s番の専用携帯端末4では、商用電源復帰指示後、E時間後に復帰動作が行われ、IDがs+1〜t番の専用携帯端末4では、商用電源復帰指示後、F時間後に復帰動作が行われ、IDがt+1〜n番の専用携帯端末4では、商用電源復帰指示後、G時間後に復帰動作が行われるように予め設定されている。この設定は、ワンセグ通信によって行われても良いし、専用携帯端末4に送信された情報を視て、ユーザが設定を行っても良い。そして、E、F、Gをずらすことによって、グループ毎に時間差を設けて、充電池83の使用から商用電源20の使用への復帰を行うことが出来る。
【0068】
又、充電池83を充電させる制御についても、上記商標電力復帰指示と同様に、充電制御を行う時間が専用携帯端末4毎に予め設定されており、充電指示を受信すると、それぞれ予め設定されている時間に、制御部86から充電OK信号がスイッチ88へと出力される。そして、充電池83と充電器87が電気的に接続され、充電が行われる。
【0069】
このようにして、充電する際にも、時間差を設けて充電するため、供給可能電力を上回らないようにすることが出来る。
【0070】
尚、上記非常用電源装置8の出力としては、例えば、AC100V、最大500Wの出力が好ましい。また、例えば、充電池83の容量が50Ahの場合では、最大389wh削減されることになり、100万家庭に1台ずつ導入されたとすると、389000Kwh削減されることになる。
【0071】
又、上記実施の形態1〜3では、予想消費電力が供給可能電力を上回らないようにするために、放送局1の放送波の届く範囲の家庭3の非常用電源装置8の全てについて、電力出力部81との接続を、商用電源入力部82から充電池83へと切り替えているが、電力会社2の供給可能電力を上回らなければ、一部の非常用電源装置8についてのみ切り替えるように制御が行われても良い。
【0072】
上記実施の形態1〜3では、放送局1はワンセグ放送を用いて各専用携帯端末4に各指示を送信しているが、デジタル放送、データ暗号化放送などの放送波を用いても良いし、インターネット等を用いても良い。
【0073】
又、上記実施の形態1〜3では、専用携帯端末4と非常用電源装置8は、WIFIを用いて通信を行っていたが、有線を用いて通信を行っても良い。
【0074】
又、非常用電源装置8は、パソコン5、冷蔵庫6、照明器具7等の負荷11に外付けされているが、負荷11の内部に設けられていても良い。
【0075】
又、上記実施の形態では、予想される消費電力が供給可能な電力を上回る時にのみ、電力出力部81との接続を、充電池83に切り替えていたが、電力会社2の要請により、放送局1が商用電源遮断指示を専用携帯端末4に送信するようにしてもよい。このようにすることにより、予想外に消費電力が上昇した際であっても、停電を回避することが出来る。
【0076】
又、上記実施の形態1〜3では、n個の専用携帯端末4を3つのグループに分けて時間差を設けて商用電源に復帰又は充電させたが、2つだけのグループ毎に行っても良いし、4以上のグループに分けて行っても良い。更に、専用携帯端末4毎に時間差を設けて商用電源に復帰又は充電させるように制御が行われても良い。尚、多数のグループに分けた場合には、それぞれのグループの商用電源復帰のタイミング又は充電タイミングは、遺伝的アルゴリズムを用いて決定されればよい。
【0077】
又、上記実施の形態1〜3では、各家庭3に専用携帯端末4が設けられていたが、専用携帯端末4が設けられておらず、各非常用電源装置8が放送局1からの通信を直接受信してもよい。この場合、各非常用電源装置8に割り当てられているID番号を利用して、時間差を設けて、商用電源20への復帰動作又は充電動作が行われる。又、非常用電源装置8毎に時間差を設けて、商用電源に復帰又は充電させるように制御が行われていても良い。
【0078】
尚、上記実施の形態1〜3の非常用電源装置8には、停電時に負荷に電力を供給する無停電電源装置としての機能を持たせても良い。例えば、制御部86が、商用電源入力部82の状態信号を検知しており、商用電源入力部82からの電源入力が途切れた時に、切替部84を制御し、充電池83に切り替えればよい。
【0079】
又、実施の形態1〜3では、ID番号を利用して複数の非常用電源装置8に対して時間差を設けて復帰又は充電させていたが、ID番号を利用せず、中継局毎に、時間をずらして復帰指示を送信することによって、複数の非常用電源装置8において復帰又は充電時に時間差を設けることが可能となる。
【0080】
又、上記非常用電源装置8に、地震などの緊急速報を知らせるための構成が設けられていても良い。このような非常用電源装置80が、図5に示されている。図5に示す非常用電源装置80には、緊急情報通知部90が設けられており、放送局1から送信される緊急速報が専用携帯端末4によって受信されると、WIFI部85が緊急速報を受信し、制御部86が、緊急情報通知部90によって緊急情報を通知するよう制御を行う。この緊急情報の通知は、音声、LED、液晶画面等を用いて行われ、放送局1以外の放送を視ている場合や、テレビを消している状態であっても通知が行われる。
【0081】
更に、地上波デジタル信号の双方向通信機能を利用することにより、充電池83の自己診断、劣化診断などのリモートメンテナンスを行うことが出来、充電池83の状態の常時監視も広域にシステム化を図ることが可能となる。
【0082】
すなわち、充電終了信号、状態信号(商用電源20による運転、充電池83によるバッテリー運転、充放電等の準備OK)、及びアラーム信号(充電池低電圧、充電池過電流、充電池温度異常)等を中央指令部10側に送信することによって、非常用電源装置8を広域にシステム化を図ることが可能となる。
【0083】
又、双方向通信機能を用いて、非常用電源機能だけでなく、例えば、一人暮らしの老人の安否確認システムとして活用することも出来る。例えば、ボタンを押すことにより登録重視に在宅していることを送信することが出来る。更に、人感知センサーにより自動発報機能なども利用可能となる。
【0084】
又、充電池83は、並列接続することにより適宜容量を増大させることが可能に構成されている。
【0085】
尚、上記実施の形態1〜3の非常用電源装置8は、家庭3内に配置されているが、持ち運び可能に構成されていてもよい。そして、この非常用電源装置8に内蔵USBを設けることによって、災害時などに持ち運び携帯電話等のUSB充電機器が充電可能となる。このように充電可能な電力をモバイル的に供給できる。また地上波デジタル信号の双方向通信機能を利用することにより、放送局1が、分散した非常用電源装置8のそれぞれの電池容量の掌握を行うことも出来る。更に、図5に示した緊急情報通知部90を設けることにより、災害対策本部からの自動/手動による避難警告、災害情報などの強制的な通信伝達の端末の役割を担うことも可能となる。
【0086】
又、本発明の非常用電源システムの制御方法をプログラムで実行するようにしてもよい。
【0087】
このプログラムは、上述した本発明の非常用電源システムの制御方法の少なくとも、商用電源切断ステップと、商用電源復帰ステップの動作をコンピュータにより実行させるプログラムであって、コンピュータと協働して動作するプログラムである。
【0088】
又、このプログラムの一利用形態として記憶媒体に記憶されて用いても良い。
【0089】
又、この記録媒体は、上述した本発明の電力供給方法の商用電源切断ステップと、商用電源復帰ステップの全部又は一部の動作をコンピュータにより実行させるプログラムを記録した記録媒体であり、コンピュータにより読み取り可能且つ、読み取られた前記プログラムが前記コンピュータと協動して前記動作を実行する記録媒体である。
【0090】
又、上記「ステップの動作」とは、前記ステップの全部又は一部の動作を意味する。
【0091】
又、このプログラムの一利用形態は、コンピュータにより読み取り可能な、ROM等の記録媒体に記録され、コンピュータと協働して動作する態様であっても良い。
【0092】
又、このプログラムの一利用形態は、インターネット等の伝送媒体、光・電波・音波等の伝送媒体中を伝送し、コンピュータにより読みとられ、コンピュータと協働して動作する態様であっても良い。
【0093】
又、上述したコンピュータは、CPU等の純然たるハードウェアに限らず、ファームウェアや、OS、更に周辺機器を含むものであっても良い。
【0094】
尚、以上説明した様に、本発明の構成は、ソフトウェア的に実現しても良いし、ハードウェア的に実現しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明の非常用電源システム、非常用電源装置、及び非常用電源システムの制御方法は、停電の発生を防止することが可能な効果を有し、電力不足への対策等として有用である。
【符号の説明】
【0096】
1 放送局
2 電力会社
3 家庭
4 専用携帯端末
5 パソコン
6 冷蔵庫
7 照明器具
8 非常用電源装置
10 中央指令部
20 商用電源
81 電力出力部
82 商用電源入力部
83 電池
84 切替部
85 WIFI部
86 制御部
87 充電器
88 スイッチ
89 DC・AC変換部
90 緊急情報通知部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
指示を出力する中央指令部と、
負荷に電力を出力する電力出力部、前記電力出力部と接続可能な商用電源入力部、前記電力出力部と接続可能な充電池、前記電力出力部との接続を、前記商用電源入力部又は前記充電池に切り替える切替部、及び前記中央指令部からの指示に基づいて前記切替部を制御する制御部とをそれぞれ有する、複数の非常用電源装置とを備えた非常用電源システムであって、
前記中央指令部からの指示と連携して、前記複数の非常用電源装置における前記電力出力部との接続は、時間差を設けて前記充電池から前記商用電源入力部へ切り替えられる、非常用電源システム。
【請求項2】
前記中央指令部は、前記電力出力部との接続を、前記商用電源入力部から前記充電池に切り替える商用電源切断指示を、前記複数の非常用電源装置に同時に送信する、請求項1記載の非常用電源システム。
【請求項3】
前記中央指令部は、前記複数の非常用電源装置における前記電力出力部との接続が、時間差を設けて前記充電池から前記商用電源入力部へ切り替えられるように制御する商用電源復帰指示を送信する、請求項1記載の非常用電源システム。
【請求項4】
前記中央指令部からの前記指示を受信する端末を備え、
前記端末は、前記複数の非常用電源装置のうち、少なくとも2台以上の前記非常用電源装置に対する前記中央指令部からの前記指示を仲介する、請求項1記載の非常用電源システム。
【請求項5】
前記時間差は、それぞれの前記非常用電源装置又は前記端末に割り当てられているID番号を利用して設けられる、請求項1又は4記載の非常用電源システム。
【請求項6】
前記中央指令部からの前記指示は、放送波又はインターネットによって送信される、請求項1記載の非常用電源システム。
【請求項7】
前記中央指令部は、前記複数の非常用電源装置に、充電を行う旨の充電指示を送信し、
前記複数の非常用電源装置における前記充電は、時間差を設けて行われる、請求項1記載の非常用電源システム。
【請求項8】
負荷に電力を出力する電力出力部と、
前記電力出力部と接続可能な商用電源入力部と、
前記電力出力部と接続可能な充電池と、
前記電力出力部との接続を、前記商用電源入力部又は前記充電池に切り替える切替部と、
中央指令部からの指示に基づいて前記切替部を制御する制御部とを備えた、非常用電源装置であって、
前記非常用電源装置における前記電力出力部との接続は、少なくとも1台以上の他の前記非常用電源装置と時間差を設けて、前記充電池から前記商用電源入力部へ切り替えられる、非常用電源装置。
【請求項9】
指示を出力する中央指令部と、
負荷に電力を出力する電力出力部、前記電力出力部と接続可能な商用電源入力部、前記電力出力部と接続可能な充電池、前記電力出力部との接続を、前記商用電源入力部又は前記充電池に切り替える切替部、及び前記中央指令部からの指示に基づいて前記切替部を制御する制御部とをそれぞれ有する、複数の非常用電源装置とを備えた非常用電源システムの制御方法であって、
前記中央指令部からの指示と連携して、前記複数の非常用電源装置における前記電力出力部との接続を、前記商用電源入力部から前記充電池に切り替える商用電源切断ステップと、
前記中央指令部からの指示と連携して、前記複数の非常用電源装置における前記電力出力部との接続を、時間差を設けて前記充電池から前記商用電源入力部へ切り替える商用電源復帰ステップとを備えた、非常用電源システムの制御方法。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図1】
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【公開番号】特開2013−42641(P2013−42641A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−179626(P2011−179626)
【出願日】平成23年8月19日(2011.8.19)
【出願人】(301049571)八洲電業株式会社 (12)
【出願人】(508049466)山本工業株式会社 (4)
【Fターム(参考)】