説明

非接触型データキャリア用導電部材の製造方法及び装置

【課題】非接触型データキャリア用導電部材の製造において、導電層と基材との間に空気を巻き込まないようにする。
【解決手段】表面に非導電性の熱可塑性接着剤層6が形成されている導電体3を、熱可塑性接着剤層の側から非導電性の基材2に重ね合わせる重畳工程と、基材上で導電体を所定のパターンで打ち抜く打ち抜き工程と、導電体を基材に上記パターンで加熱接着する接着工程とを含む。導電体の熱可塑性接着剤層と基材との一方又は双方を帯電処理し、導電体の熱可塑性接着剤層と基材とが帯電した互いに異種の電荷の吸引力により、重畳工程で導電体と基材とを密着させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナ、ブリッジ等の非接触型データキャリア用導電部材の製造方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、商品に使用される無線タグはアンテナ等の非接触型データキャリア用導電部材を使用して作られる。
【0003】
従来、非接触型データキャリア用導電部材であるアンテナ等を所定のパターンで形成する場合、主として、基材上に積層した導電体であるアルミニウム、銅等の金属箔上にレジストパターンを形成し、エッチングすることにより製造される。
【0004】
また、別の方法として打抜き刃を用いて直接アンテナを形成する方法がある。これは合成樹脂フィルム等のキャリア上に、加熱により接着力が低下する粘着剤を介して導電体である金属箔を接着し、金属箔の上に熱可塑性接着剤を塗布してなる積層体を用意する。そして、この積層体の金属箔に熱可塑性接着剤側から上記パターンで切り込みを入れて基材と重ね合わせ、上記パターンに対応した凸部を有する金型でキャリア上から金属箔を基材に対して押圧し加熱する。これにより、粘着剤の接着性が低下し同時に熱可塑性接着剤の接着性が高まり、上記切り込みによりパターン化された金属箔のみが基材に付着する。その後、キャリアを基材から剥がすと、余分な金属箔がキャリアと共に基材から除去され、アンテナ等所望のパターンの金属箔が付着した基材を得ることができる(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
【特許文献1】特開平9−44762号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の製造方法によれば、導電体である金属箔を基材に対して加熱プレスする際に、金属箔と基材との間に空気が封じ込められる場合がある。このように金属箔と基材との間に空気が閉じ込められると金属箔と基材との間に気泡が生じ、その結果、金属箔と基材の接着強度が低下したり、アンテナ等としての回路の性能が低下したり、後の工程でのICチップの取り付けが不確実になったり、基材の表面が水泡状になって見栄えが低下したりするという問題が生じる。
【0007】
例えば、金属箔及び基材を帯状に走行させつつ重ね合わせる場合、複数組のニップローラ等で挟むことにより、金属箔と基材との間から空気を排除することも考えられるが、金属箔及び基材が蛇行したり、波打ったり、破断したりし、金属箔と基材との重ね合わせや、パターンの打抜き等が不正確になるという問題が生じる。
【0008】
従って、本発明は上記課題を解決する手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明は次のような構成を採用する。
【0010】
すなわち、請求項1に係る発明は、表面に非導電性の熱可塑性接着剤層(6)が形成されている導電体(3)を、熱可塑性接着剤層(6)の側から非導電性の基材(2)に重ね合わせる重畳工程と、上記基材(2)上で上記導電体(3)を所定のパターンで打ち抜く打ち抜き工程と、上記導電体(3)を上記基材(2)に上記パターンで加熱接着する接着工程とを包含してなる非接触型データキャリア用導電部材の製造方法において、上記導電体(3)の熱可塑性接着剤層(6)と上記基材(2)との一方又は双方を帯電処理し、上記導電体(3)の熱可塑性接着剤層(6)と上記基材(2)とが帯電した互いに異種の電荷の吸引力により、上記重畳工程で上記導電体(3)と上記基材(2)とを密着させるようにしたことを特徴とする。
【0011】
尚、帯電処理の方式として、接触式でもコロナ放電等の非接触式でも同等の帯電効果を得ることができる。
【0012】
ここで、導電体(3)及び基材(2)はそれぞれ枚葉状、帯状等の形態で用いることができる。導電体(3)は、例えば金属箔で形成される。基材(2)は、絶縁性のある例えば合成樹脂シートで形成される。熱可塑性接着剤層(6)は、例えば、ポリエステル系接着剤、ウレタン系接着剤で形成される。導電体(3)と基材(2)は定位置で重ね合わせることもできるし、双方を同期的に走行させつつ重ね合わせることもできる。導電体(3)の打ち抜きと加熱接着は、それぞれ平プレスで行うこともできるし、ロールプレスで行うこともできる。導電体(3)の熱可塑性接着剤層(6)と基材(2)とは、いずれか一方を帯電処理したうえで重ね合わせてもよいし、重ね合わせたうえで帯電処理してもよい。導電体(3)と基材(2)とは、導電体(3)の熱可塑性接着剤層(6)と基材(2)とが帯電した互いに異種の電荷により、両者間に空気を巻き込むことなく重畳工程で密着する。
【0013】
上記製造方法において、導電体(3)の熱可塑性接着剤層(6)を帯電処理した後、この導電体(3)を基材(2)に重ね合わせることが可能であり、また、導電体(3)と基材(2)とを重ね合わせた後に帯電処理することも可能である。
【0014】
上記製造方法において、導電体(3)と基材(2)とを一方向に走行させ、両者を重ね合わせる位置の上流側で導電体(3)と基材(2)との間から空気を吸引することも可能である。これにより、両者間の空気の残留を更に低減することができる。
【0015】
上記製造方法において、基材(2)から導電体(3)の不要部(3e)を分離する分離工程を更に含むことが可能である。
【0016】
上記製造方法において、分離工程で導電体(3)の不要部(3e)が除去された後の基材から除電することも可能である。この除電はコロナ放電により非接触で除電することができるほか、ブラシの接触等によっても除電可能である。この除電により上記帯電処理により帯電した電荷、分離工程において導電体(3)の不要部(3e)を除去することにより基材(2)に帯電した電荷等が除去され、後に実装されるICチップ(10)等に対し悪影響が及ばないようにすることができる。
【0017】
上記製造方法において、接着工程と打ち抜き工程とは、同時に行うか又はいずれか一方を先に行うことが可能である。
【0018】
次に、本発明の製造装置は上記方法を実施するために次のような構成を採用する。
【0019】
すなわち、請求項8に係る発明は、表面に非導電性の熱可塑性接着剤層(6)が形成されている導電体(3)を、熱可塑性接着剤層(6)の側から非導電性の基材(2)に重ね合わせる重畳手段と、上記基材(2)上で上記導電体(3)を所定のパターンで打ち抜く打ち抜き手段と、上記導電体(3)を上記基材(2)に上記パターンで加熱接着する接着手段とを包含してなる非接触型データキャリア用導電部材の製造装置において、帯電器(9)を所定箇所に設けることにより上記導電体(3)上の熱可塑性接着剤層(6)と上記基材(2)との一方又は双方を帯電させ、上記導電体(3)の熱可塑性接着剤層(6)と上記基材とが帯電した互いに異種の電荷の吸引力により、上記重畳手段で上記導電体(3)と上記基材(2)とを密着させるようにしたことを特徴とする。
【0020】
上記製造装置において、帯電器(9)は、導電体(3)が基材(2)に重ね合わされる前の導電体(3)の走行路に設けることができるし、導電体(3)が基材(2)に重ね合わされた後の導電体(3)及び基材(2)の走行路に設けることもできる。
【0021】
上記製造装置において、導電体(3)と基材(2)との走行路における両者の重ね合わせ位置の上流側に、導電体(3)と基材(2)との間から空気を吸引するノズル(20)を設けることも可能である。
【0022】
上記製造装置において、導電体(3)の打ち抜き後に基材(2)から導電体(3)の不要部(3e)を分離する分離手段を更に設けることも可能である。
【0023】
上記製造装置において、分離手段により導電体(3)の不要部(3e)が除去された後の基材(2)から除電する除電器(18)を設けることも可能である。除電器(18)としては、コロナ放電式除電器、ブラシ等を用いることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、導電体(3)の熱可塑性接着剤層(6)と基材(2)との一方又は双方を帯電処理し、導電体(3)の熱可塑性接着剤層(6)と基材(2)とに帯電した互いに異種の電荷により、重畳工程で導電体(3)と基材(2)とを密着させるようにしたので、導電体(3)と基材(2)との密着に際して両者間への空気の封じ込みが防止される。したがって、非接触型データキャリア用導電部材内の気泡の発生を阻止し、導電体と基材の接着強度の低下、アンテナ等としての回路の性能低下、ICチップの取り付け不良、外観性能の低下等が防止される。また、導電体(3)と基材(2)とを非接触で密着させることができるので、導電体(3)及び基材(2)の蛇行、波打ち、破断等を適正に防止し、金属箔と基材との重ね合わせ、パターンの打ち抜き等をきわめて正確に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、図面を参照して本発明を実施するための最良の形態について説明する。
【0026】
<実施の形態1>
図1乃至図4に示すように、非接触型データキャリア用導電部材1又はその素材シート1aにおける非導電性の基材2の表裏面には、それぞれ熱可塑性接着剤層6,7が所定のパターンに形成され、この熱可塑性接着剤層6,7の上から同様なパターンの導電体3,4がそれぞれ積層され固着される。
【0027】
非導電性の基材2は、合成樹脂製シートあるいはそれらを積層したシートにより形成される。基材2の厚さは、大体30μm〜70μmである。基材2は、図示例では長方形に形成されるが、その他の所望の形状とすることができる。合成樹脂としては例えばポリエチレンテレフタレート(PET)を用いることができる。
【0028】
導電体3,4は、例えばアルミニウム箔により形成される。アルミニウム箔の厚さは6μm〜30μm程度である。導電体3,4としては、アルミニウム箔のほか、アルミニウム合金、銅、銅合金等の箔を用いることができる。
【0029】
導電体3,4のうち基材2の表面の導電体3は、アンテナのパターン及びコンデンサの一方の電極のパターンにそれぞれ形成される。また、導電体3,4のうち基材2の裏面の導電体4は、ブリッジのパターン及びコンデンサの他方の電極のパターンにそれぞれ形成される。図1〜図4(A)(B)において、符号3aはアンテナのパターンに対応した導電体、符号3bはコンデンサの一方の電極のパターンに対応した導電体、符号4aはブリッジのパターンに対応した導電体、符号4bはコンデンサの他方の電極のパターンに対応した導電体をそれぞれ示す。
【0030】
アンテナのパターンは、図示例では渦巻状パターンとされるが、それ以外にも通信周波数帯によってバー形状パターン、パット形状パターン、クロス形状パターンなど様々のパターンとすることができる。
【0031】
ブリッジのパターンは、図示例では細長い長方形であるが、それ以外の形状に適宜変更可能である。ブリッジを構成する導電体4aは図示例ではアンテナのパターンを構成する導電体3aと反対側に設けられているが、アンテナの導電体3a上に熱可塑性接着剤層等からなる絶縁層を介して積層することも可能である。
【0032】
コンデンサのパターンは、一方の電極について細長い長方形に形成されるが、他方の電極については多数個の互いに電気的に接続された細片に形成される。非接触型データキャリア用導電部材1が完成した後、細片間のつなぎ部の導電体4cを切断することにより、静電容量を調節し、非接触型データキャリア用導電部材1としての共振周波数を最適値に補正することができる。
【0033】
図4(A)に示す積層シートは非接触型データキャリア用導電部材1の素材シート1aであり、図4(B)及び図5に示すようにアンテナの両端部のパターンに対応した導電体3cとブリッジのパターンに対応した導電体4aとを接合することにより両導電体3,4間の電気的導通が確保される。
【0034】
この電気的導通は、アンテナの両端部のパターンに対応した導電体3cとブリッジのパターンに対応した導電体4aとを基材2の厚さ方向で超音波溶接、加熱プレス等をすることによって行われる。これにより、一方の導電体3に形成された凹陥部5が基材2を貫いて他方の導電体4に接合される。図中符号5aは接合部を示す。
【0035】
図1に示すように、非接触型データキャリア用導電部材1の素材シート1aにおけるアンテナのパターンの導電体3aは、ICチップ接続電極に対応する導電体3dを含んでいる。図3に示すように、このICチップ接続電極の導電体3dにICチップ10が乗せられ、電気的に接続される。
【0036】
基材2上にICチップ10が実装された非接触型データキャリア用導電部材1は、基材2の表裏面が所望のラベル用被覆層(図示せず)で覆われることによりラベル状のICタグとされ、あるいはICカードとされる。
【0037】
次に、図1及び図4(A)に示した非接触型データキャリア用導電部材の製造方法及び装置について説明する。
【0038】
ここでは、非接触型データキャリア用導電部材1の素材シート1aにおけるアンテナパターン等の導電体3の形成を例にとって説明する。
【0039】
図5に示すように、この製造方法は、表面に非導電性の熱可塑性接着剤層6が形成されている導電体3を、熱可塑性接着剤層6の側から非導電性の基材2に重ね合わせる重畳工程(I)と、導電体3上の熱可塑性接着剤層6と基材2とを帯電処理する帯電工程(II)と、基材2上で導電体3をアンテナ等所定のパターンで打ち抜く打ち抜き工程(III)と、導電体3を基材2に上記パターンで加熱接着する接着工程(IV)と、基材2から導電体3の不要部を分離する分離工程(V)と、基材2に対し除電処理する除電工程(VI)とを順次行うようになっている。
【0040】
(I)重畳工程
まず、基材2の連続体と金属箔である導電体3の連続体とを用意する。金属箔の導電体3の片面には、予め熱可塑性接着剤が塗布され乾燥されることにより熱可塑性接着剤層6が積層されている。
【0041】
基材2は厚さが大体12μm〜200μm程度のPET製フィルムである。PETに代えて他の樹脂や、紙等を用いることができ、また、それらの積層体を用いることもできる。
【0042】
金属箔は厚さが6μm〜50μm程度のアルミニウム箔が使用される。金属箔としては、アルミニウム箔のほか、アルミニウム合金、銅、銅合金等の箔を用いることができる。
【0043】
熱可塑性接着剤層6の熱可塑性接着剤は、例えば、ホットメルトであり、導電体3である金属箔の片面に1μm〜5μm程度の厚さで塗布され乾燥される。熱可塑性接着剤層6は金属箔にベタで形成されるが、上記アンテナ等の所定のパターンに対応したパターンで塗布してもよい。
【0044】
導電体3と基材2の各連続体はそれぞれ図示しない巻取りロールから繰り出され、熱可塑性接着剤層6が基材2に接するように重畳手段としてのニップローラ8a,8bに通されることにより重ね合わされる。
【0045】
導電体3と基材2の各連続体には図示しないがマージナルパンチホールが形成され、両連続体はマージナルパンチホールに嵌り込むピンを備えた図示しないピン車により一方向に送られるようになっている。ピン車はニップローラ8a,8bよりも下流側に配置される。また、この実施の形態1ではピン車は間欠駆動するようになっており、これにより双方の連続体は矢印方向に同速度で間欠走行する。この間欠走行のための送りピッチpは図5に例示される。
【0046】
(II)帯電工程
ここでは一例としてコロナ放電式帯電器を用いた場合について説明するが、接触式帯電器を用いることももちろん可能である。
【0047】
導電体3と基材2の両連続体の走行方向に見てニップローラ8a,8bよりも下流側には、コロナ放電式帯電器9が設けられ、両連続体の重なり合ったものを挟んで帯電器9に対向するようにアースバー11が設けられる。具体的には帯電器9が基材2側に10mm〜40mmの隙間を置いて配置され、アースバー11が導電体3側に10mm〜20mmの隙間を置いて配置される。アースバー11は省略可能である。
【0048】
この帯電器9とアースバー11との間に負(−)極直流電圧等の高電圧が印加されることにより、コロナ放電によって発生したイオンが基材2に導かれ、図5に示すように、誘電体である基材2に負(−)の電荷が帯電する。また、帯電器9は正(+)極直流電圧の高電圧を印加するもの可能であり、その場合、誘電体である基材2は印加された正(+)極の電荷が帯電する。帯電器9における出力電圧は0〜50kV、電流は0〜1mmAとすることができる。また、帯電時の両連続体の走行速度は30m/min〜50m/minとすることができる。
【0049】
この帯電処理により、導電体3における誘電体としての熱可塑性接着剤層6に正(+)の電荷が生じ、互いに異種の電荷の吸引力により、導電体3が基材2に密着する。
【0050】
(III)打ち抜き工程
導電体3と基材2の両連続体の走行方向に見て帯電器9よりも下流側には、平プレス盤が配置される。平プレス盤は上型12と下型13とを備え、両型12,13が密着した連続体を間に挟んで対峙する。
【0051】
上型12には、アンテナのパターンに対応した打ち抜き刃12aが固定され、下型13には打ち抜き刃12aを受け止める平坦面が形成される。この下型13の平坦面はPET等の帯電しやすいシートにより形成される。
【0052】
上下二条の連続体の密着した重畳体が平プレス盤に到達すると、上型12が上下方向に往復移動し、基材2の連続体上で導電体3の連続体をアンテナのパターンで打ち抜く。
【0053】
(IV)接着工程
上記平プレス盤の上型12には、上記打ち抜き刃12aに隣接してアンテナのパターンに対応した凸部12bが形成される。上型12には凸部12bを加熱するための図示しない電気熱線が埋設される。
【0054】
アンテナのパターンが打ち抜かれた後、重畳体は一ピッチpだけ下流側に送られ一時停止する。そこで、上記平プレス盤の上型12が上下方向に往復移動し、上記導電体3におけるアンテナのパターンで打ち抜かれた部分を基材2上に加熱しつつプレスする。これにより、導電体3下のアンテナのパターンに対応した熱可塑性接着剤層6が溶融し、導電体3のアンテナのパターンに対応した箇所が基材2上に接着される。
【0055】
なお、上記接着工程を先に行い、その後に打ち抜き工程を行うこともできる。また、上記上型12の打ち抜き刃12aの内側に凸部12bを設けることにより、接着工程と打ち抜き工程とを同時に行うことも可能である。
【0056】
接着工程と打ち抜き工程とが完了した連続体は、その後重なった状態のまま巻き取られ保管されるか、あるいは次の分離工程に送られる。
【0057】
(V)分離工程
上記重ね合わされた導電体3と基材2の両連続体の走行方向に見て平プレス盤よりも下流側には、ガイドローラ14のほか分離装置が配置される。
【0058】
分離装置は、吸引管15と分離ローラ16とを備える。基材2の連続体が吸引管15と分離ローラ16の設置箇所に到来すると、導電体3の不要部3eが吸引管15により吸引され、一方基材2の連続体は分離ローラ16に案内されつつ反転走行する。これにより、導電体3の不要部3eは基材2の連続体上から適正に引き剥がされ、吸引管15が繋がる図示しない回収箱に回収される。アンテナのパターンが渦巻状である場合、導電体3の不要部3eも渦巻状に発生するが、このように吸引管15で吸引すると、渦巻状の不要部3eを円滑に回収することができる。
【0059】
導電体3の不要部3eが基材2の連続体上から分離する箇所には、必要に応じて空気等の気体を噴出するノズル17が配置される。このノズル17から噴射される気体が基材2の連続体と導電体3の不要部3eとの境界部に向って吹き掛けられることにより、導電体3の不要部3eの剥離除去が促進される。
【0060】
上記導電体3の不要部3eを除去された基材2は、次の除電工程へと送られる。
【0061】
(VI)除電工程
上記分離装置の下流側には、必要に応じて除電器18が設けられる。ここで除電器18としてはコロナ放電式除電器が用いられているが、この除電はブラシの接触等によっても可能である。除電器18は上記帯電器9と同様に配置される。除電器18等は上記分離装置よりも上流側に配置することも可能である。
【0062】
この除電器18によって交流電圧等の高電圧が印加されることにより、コロナ放電によって発生したイオンが基材2に導かれ、残留した電荷や上記分離装置での剥離過程で生じた電荷が基材2や導電体3の熱可塑性接着剤層6から除去される。
【0063】
この後、基材2の連続体は、図5に示した装置と同様な装置に供給され、その裏側に他の導電体4の連続体が重ね合わされ、図2に示したブリッジのパターン等がこの裏側の導電体4に形成される。その後、基材2の連続体はさらに図4(B)に示したような基材2の表裏の導電体3,4同士を接合する処理等に付され、あるいはICチップ10の実装工程に付される。
【0064】
<実施の形態2>
図6に示すように、この実施の形態2では実施の形態1における非接触型データキャリア用導電部材の製造装置に空気吸引手段が付加される。
【0065】
すなわち、導電体3の連続体と基材2の連続体とを重ね合わせる位置の上流側で、両連続体の間から空気を吸引するノズル20が設けられる。このように、導電体3の連続体と基材2の連続体との間から両者を重ね合わせる直前においてノズル20により空気を吸引することにより、両者間への空気の封入が低減する。両連続体はニップローラ8a,8bよりも下流側で帯電器9により帯電し、実施の形態1で示した図5(B)のごとく両連続体が密着するが、その際両連続体間に巻き込まれる空気がさらに低減する。
【0066】
その他、図6において実施の形態1の場合と同じ部分については同一符号を用いて示すこととし重複した説明を省略する。
【0067】
<実施の形態3>
図7に示すように、この実施の形態3では実施の形態1、2の場合と異なり、帯電器9とアースバー11とが導電体3の連続体におけるニップローラ8a,8bよりも上流側に配置される。この帯電器9は導電体3の熱可塑性接着剤層6である誘電体を正(+)または負(−)の電荷に帯電させる。
【0068】
また、実施の形態2と同様に両連続体間から重ね合わせ前に空気を吸引するノズル20が設けられるが、このノズル20は省略可能である。
【0069】
このように、帯電器9によって正(+)または負(−)の電荷に帯電した導電体3の連続体がニップローラ8a,8bを通って基材2の連続体に重ね合わせられると、熱可塑性接着剤層6に対峙する基材2に負(−)または正(+)の電荷が生じる。その結果、異極の電荷同士の吸引力によって、両連続体が両者間に空気を残さないように密着する。
【0070】
その他、図7において図1,2における部分と同じ部分は同じ参照符号を付して示すこととし、重複した説明を省略する。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明に係る非接触型データキャリア用導電部材の素材シートの表面図である。
【図2】図1に示す素材シートの裏面図である。
【図3】ICチップを実装した非接触型データキャリア用導電部材の表面図である。
【図4】(A)は図1中IVA−IVA線矢視断面図、(B)は図3中IVB−IVB線矢視断面図である。
【図5】(A)は図1に示すアンテナのパターン等を形成するための装置の概略正面図、(B)は帯電器を通過する際の導電体と基材との帯電状態を示す模式図である。
【図6】図5に示す装置に吸引ノズルを付加した態様で示す概略正面図である。
【図7】図5に示す装置の帯電器を別の箇所に配置した態様で示す概略正面図である。
【符号の説明】
【0072】
2…基材
3…導電体
3e…導電体の不要部
6…熱可塑性接着剤層
9…帯電器
10…ICチップ
18…除電器
20…ノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に非導電性の熱可塑性接着剤層が形成されている導電体を、熱可塑性接着剤層の側から非導電性の基材に重ね合わせる重畳工程と、上記基材上で上記導電体を所定のパターンで打ち抜く打ち抜き工程と、上記導電体を上記基材に上記パターンで加熱接着する接着工程とを包含してなる非接触型データキャリア用導電部材の製造方法において、上記導電体の熱可塑性接着剤層と上記基材との一方又は双方を帯電処理し、上記導電体の熱可塑性接着剤層と上記基材とが帯電した互いに異種の電荷の吸引力により、上記重畳工程で上記導電体と上記基材とを密着させるようにしたことを特徴とする非接触型データキャリア用導電部材の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の非接触型データキャリア用導電部材の製造方法において、導電体の熱可塑性接着剤層を帯電処理した後、この導電体を基材に重ね合わせることを特徴とする非接触型データキャリア用導電部材の製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載の非接触型データキャリア用導電部材の製造方法において、導電体と基材とを重ね合わせた後に帯電処理することを特徴とする非接触型データキャリア用導電部材の製造方法。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の非接触型データキャリア用導電部材の製造方法において、導電体と基材とを一方向に走行させ、両者を重ね合わせる位置の上流側で導電体と基材との間から空気を吸引することを特徴とする非接触型データキャリア用導電部材の製造方法。
【請求項5】
請求項1に記載の非接触型データキャリア用導電部材の製造方法において、基材から導電体の不要部を分離する分離工程を更に含むことを特徴とする非接触型データキャリア用導電部材の製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載の非接触型データキャリア用導電部材の製造方法において、分離工程で導電体の不要部が除去された後の基材から除電することを特徴とする非接触型データキャリア用導電部材の製造方法。
【請求項7】
請求項1に記載の非接触型データキャリア用導電部材の製造方法において、接着工程と打ち抜き工程とを同時に行うか又はいずれか一方を先に行うことを特徴とする非接触型データキャリア用導電部材の製造方法。
【請求項8】
表面に非導電性の熱可塑性接着剤層が形成されている導電体を、熱可塑性接着剤層の側から非導電性の基材に重ね合わせる重畳手段と、上記基材上で上記導電体を所定のパターンで打ち抜く打ち抜き手段と、上記導電体を上記基材に上記パターンで加熱接着する接着手段とを包含してなる非接触型データキャリア用導電部材の製造装置において、帯電器を所定箇所に設けることにより上記導電体上の熱可塑性接着剤層と上記基材との一方又は双方を帯電させ、上記導電体の熱可塑性接着剤層と上記基材とが帯電した互いに異種の電荷の吸引力により、上記重畳手段で上記導電体と上記基材とを密着させるようにしたことを特徴とする非接触型データキャリア用導電部材の製造装置。
【請求項9】
請求項8に記載の非接触型データキャリア用導電部材の製造装置において、導電体が基材に重ね合わされる前の導電体の走行路に帯電器が設けられたことを特徴とする非接触型データキャリア用導電部材の製造装置。
【請求項10】
請求項8に記載の非接触型データキャリア用導電部材の製造装置において、導電体が基材に重ね合わされた後の導電体及び基材の走行路に帯電器が設けられたことを特徴とする非接触型データキャリア用導電部材の製造装置。
【請求項11】
請求項8乃至請求項10のいずれかに記載の非接触型データキャリア用導電部材の製造装置において、導電体と基材との走行路における両者の重ね合わせ位置の上流側に、導電体と基材との間から空気を吸引するノズルが設けられたことを特徴とする非接触型データキャリア用導電部材の製造装置。
【請求項12】
請求項8に記載の非接触型データキャリア用導電部材の製造装置において、導電体の打ち抜き後に基材から導電体の不要部を分離する分離手段が更に設けられたことを特徴とする非接触型データキャリア用導電部材の製造装置。
【請求項13】
請求項12に記載の非接触型データキャリア用導電部材の製造装置において、分離手段により導電体の不要部が除去された後の基材から除電する除電器が設けられたことを特徴とする非接触型データキャリア用導電部材の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−15969(P2008−15969A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−189065(P2006−189065)
【出願日】平成18年7月10日(2006.7.10)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】