説明

非接触型土留め壁変位計測方法

【課題】 コストを大幅に増やすことなく計測点を増やすことができる非接触型土留め壁変位計測方法を提供する。
【解決手段】 非接触型土留め壁変位計測方法において、傾斜計4〜9が深さ方向に間隔を取って配置され、変位が計測される基準となる土留め壁2を設定し、この土留め壁2の深さ方向に間隔を取って配置される傾斜計4〜9の位置に、この傾斜計4〜9の箇所と対面に位置する土留め壁3の箇所との距離を計測する非接触型距離計10とを配置し、前記非接触型距離計10による測定値に基づいて前記対面に位置する土留め壁3の変位を計測する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地下構造物を構築する際、掘削のために構築される土留め壁の変位を計測する土留め壁変位計測方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、地下構造物を構築する際、掘削のために土留め壁を構築することが多い(下記非特許文献1参照)。
図4は従来の土留め壁を示す模式図、図5はその土留め壁の変位計測方法の説明図である。
これらの図において、101は地盤、102は地下構造物、103,104は地下構造物102を構築するための土留め壁、105〜110は土留め壁103の表面に配置された傾斜計である。なお、図5においては、一方側の土留め壁103についてのみ説明しているが、この土留め壁103に対向する側の土留め壁104においても、同様に傾斜計が配置される。
【0003】
このように、土留め壁103の表面には、その変位を計測するため、通常傾斜計105〜110などの計測機器が深さ方向に一定間隔で設置されている。ここでは、土留め壁103の深さ方向に間隔をあけて傾斜計105〜110が配置されている。それぞれの傾斜計105〜110の傾斜角からそれぞれの深さの箇所の土留め壁の変位X1 〜X6 をそれぞれ算出することで、土留め壁103の変位を計測することができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】「地下水流動保全工法」,2002年6月,地下水流動保全工法に関する研究委員会,巻末資料
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記した傾斜計などの計測機器による土留め壁の変位計測においては、計測機器それぞれが高価なものであり、計測点を増やすために計測機器を増設しようとすると、設置費用が嵩んでしまうといった問題があった。
本発明は、上記状況に鑑みて、コストを大幅に増やすことなく計測点を増やすことができる、非接触型土留め壁変位計測方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記目的を達成するために、
〔1〕非接触型土留め壁変位計測方法において、傾斜計が深さ方向に間隔を取って配置され、変位が計測される基準となる土留め壁を設定し、この土留め壁の深さ方向に間隔を取って配置される傾斜計の位置に、この傾斜計の箇所と対面に位置する土留め壁の箇所との距離を計測する非接触型距離計とを配置し、前記非接触型距離計による測定値に基づいて前記対面に位置する土留め壁の変位を計測することを特徴とする。
【0007】
〔2〕上記〔1〕記載の非接触型土留め壁変位計測方法において、前記非接触型距離計としてレーザ距離計を用いることを特徴とする。
〔3〕上記〔2〕記載の非接触型土留め壁変位計測方法において、前記レーザ距離計を前記基準となる土留め壁の深さ方向に移動して用いることを特徴とする。
〔4〕上記〔1〕記載の非接触型土留め壁変位計測方法において、前記土留め壁の頭部変位を計測する計測装置を用いることを特徴とする。
【0008】
〔5〕上記〔4〕記載の非接触型土留め壁変位計測方法において、前記計測装置としてデジタルカメラを用いることを特徴とする。
〔6〕上記〔4〕記載の非接触型土留め壁変位計測方法において、前記計測装置としてGPSセンサーを用いることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、次のような効果を奏することができる。
(1)コストを大幅に増やすことなく、計測点を増やすことができる。
(2)土留め壁全体の3次元的な変形を把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1実施例を示す非接触型土留め壁変位計測方法を説明する断面図である。
【図2】本発明の第1実施例を示す非接触型土留め壁変位計測方法を説明する平面図である。
【図3】本発明の第2実施例を示す非接触型土留め壁変位計測方法の説明図である。
【図4】従来の土留め壁を示す模式図である。
【図5】従来の土留め壁の変位計測方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の非接触型土留め壁変位計測方法は、傾斜計が深さ方向に間隔を取って配置され、変位が計測される基準となる土留め壁を設定し、この土留め壁の深さ方向に間隔を取って配置される傾斜計の位置に、この傾斜計の箇所と対面に位置する土留め壁の箇所との距離を計測する非接触型距離計とを配置し、前記非接触型距離計による測定値に基づいて前記対面に位置する土留め壁の変位を計測する。
【実施例】
【0012】
以下、本発明の非接触型土留壁変位計測方法について説明する。
図1は本発明の第1実施例を示す非接触型土留め壁変位計測方法を説明する断面図、図2はその土留め壁の平面図である。
これらの図において、1は地盤、2,3は土留め壁、4〜9は傾斜計、10はレーザーなどの非接触型距離計である。
【0013】
本発明では、計測機器が設置されている一方の土留め壁から対面に位置する土留め壁までの距離をレーザー距離計などの非接触型距離計を用いて測定することにより、計測機器を配置しない土留め壁の変形も簡便に測定することができる。
まず、土留め壁2,3を構築する際、計測機器として傾斜計4〜9を土留め壁2に設置しておく。土留め壁2,3を構築後、傾斜計4〜9を配置した各計測点における土留め壁2の頭部に対する相対変位を計測する。その後傾斜計4〜9を配置した土留め壁2の計測点と対面の土留め壁3の箇所4′〜9′の間の距離を、レーザー距離計などの非接触型距離計10を用いて非接触により計測する。ここでは、1個の非接触型距離計10を用いており、この非接触型距離計10を所定深さに配置した傾斜計4〜9の位置に移動させ、土留め壁2の傾斜計を配置した計測点から対面に位置する土留め壁3の箇所4′〜9′との間の距離を計測し、土留め壁3の相対変位を把握する。このように構成することにより、高価な傾斜計を多数設置することなく土留め壁3の変位を計測することができる。
【0014】
なお、図2に示すように、傾斜計は土留め壁2,3に交互に配置するようにする。つまり、土留め壁2の傾斜計4〜9を配置した計測点に対する土留め壁3の箇所4′〜9′の相対変位を求め、次は、土留め壁3の傾斜計11〜16を配置した計測点に対する土留め壁3の箇所11′〜16′の相対変位を求めるようにしている。これを順次繰り返すことにより、土留め壁2,3の変位を計測することができる。土留め壁21,22についても、同様の方法により変位を計測することができる。
【0015】
図3は本発明の第2実施例を示す非接触型土留め壁変位計測方法の説明図である。
これらの図において、31は地盤、32,33は土留め壁、34〜39は傾斜計、40はレーザーなどの非接触型距離計、43は土留め壁32,33の頭部41,42の絶対位置を計測するデジタルカメラ、44はデジタルカメラ43と同様に土留め壁32,33の頭部41,42の絶対位置を計測するGPSセンサーである。
【0016】
ここでは、土留め壁32,33の頭部41,42の絶対変位をデジタルカメラ43やGPSセンサー44などで計測する。この土留め壁32,33の頭部41,42の絶対変位を基準として第1実施例と同様の方法で土留め壁32,33の変位を計測することで、より高い精度で変位を把握することができる。
また、本発明の変位計測を初期値計測から定期的に行うことで、傾斜計を用いた土留め壁の計測管理の補助として活用することができる。
【0017】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づき種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0018】
本発明の非接触型土留め壁変位計測方法は、傾斜計の設置個数及び設置コストを大幅に増やすことなく、計測点を増やすことができる非接触型土留め壁変位計測方法として利用可能である。
【符号の説明】
【0019】
1,31 地盤
2,3,21,22,32,33 土留め壁
4〜9,11〜16,34〜39 傾斜計
4′〜9′ 対面に位置する土留め壁の箇所
10,40 非接触型距離計
41,42 土留め壁の頭部
43 デジタルカメラ
44 GPSセンサー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)傾斜計が深さ方向に間隔を取って配置され、変位が計測される基準となる土留め壁を設定し、
(b)該土留め壁の深さ方向に間隔を取って配置される傾斜計の位置に、該傾斜計の箇所と対面に位置する土留め壁の箇所との距離を計測する非接触型距離計とを配置し、
(c)前記非接触型距離計による測定値に基づいて前記対面に位置する土留め壁の変位を計測することを特徴とする非接触型土留め壁変位計測方法。
【請求項2】
請求項1記載の非接触型土留め壁変位計測方法において、前記非接触型距離計としてレーザ距離計を用いることを特徴とする非接触型土留め壁変位計測方法。
【請求項3】
請求項2記載の非接触型土留め壁変位計測方法において、前記レーザ距離計を前記基準となる土留め壁の深さ方向に移動して用いることを特徴とする非接触型土留め壁変位計測方法。
【請求項4】
請求項1記載の非接触型土留め壁変位計測方法において、前記土留め壁の頭部変位を計測する計測装置を用いることを特徴とする非接触型土留め壁変位計測方法。
【請求項5】
請求項4記載の非接触型土留め壁変位計測方法において、前記計測装置としてデジタルカメラを用いることを特徴とする非接触型土留め壁変位計測方法。
【請求項6】
請求項4記載の非接触型土留め壁変位計測方法において、前記計測装置としてGPSセンサーを用いることを特徴とする非接触型土留め壁変位計測方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2011−185017(P2011−185017A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−54631(P2010−54631)
【出願日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【出願人】(000173784)公益財団法人鉄道総合技術研究所 (1,666)
【出願人】(000210908)中央開発株式会社 (25)
【Fターム(参考)】