説明

非接触式ICカード製造方法及び非接触式ICカード。

【課題】低コストで信頼性に優れた非接触式ICカードの製造方法及びその製造方法で製造された非接触式ICカードを提供する。
【解決手段】カード表皮材1に、予め表面にはデザイン印刷2、裏面にはアンテナ回路3を形成しておく。なお、アンテナ回路3は表皮材1の約半分の面積部分に形成する。次に前記表皮材1の裏面にICチップ接続材料4を塗布した後、その上からICチップ9を実装し、更に表皮材1裏面上の半分の面積に接着材6を塗布する。その後、表皮材1の半分を折り返し前記接着材6の上に貼り合せ、非接触式ICカードを完成させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報読み取り装置により非接触で情報等を送受信するICカードの製造方法及びその製造方法によって製造された非接触式ICカードに関する。
【背景技術】
【0002】
非接触式ICカードは、キャッシュカード(バンクカード)、クレジットカード及びプリペイドカード並びに鉄道・バス・ETC等の交通機関、デジタル放送及び第三世代携帯電話の加入者カード並びに図書館の窓口サービス、学生証、社員証及び住民基本台帳カードなど、幅広い業界に導入され、生活者の身近な生活からビジネスまで様々な分野で利用が始まっている。
【0003】
例えば、下記特許文献1には従来の非接触式ICカード製造方法について記載されている。図5はその非接触式ICカード27を示す断面図である。先ず、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム7に銀ペーストをシルクスクリーン印刷によりアンテナ回路8を形成した後、ICチップ9を異方導電性フィルム10によって接続し、ロール状の印刷回路層16を製作する。次にスペーサ層17としてPETフィルム11の片面に接着材12を塗布した後、ICチップ9に相当する箇所に開口部15を設け、ロール状のスペーサ層17を作製する。次に、前記印刷回路層16と前記スペーサ層17をラミネートロール(図示しない。)を用いて連続ラミネートを行う。次に、PETフィルム13の片面に接着材14を塗布したスキン層18を、前記印刷回路層16とスペーサ層17の積層品の上下から連続ラミネートを行い非接触式ICカード27を作製する。またデザイン印刷が必要な場合は、カードを個片状に打抜いた後に実施する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−329463号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし図5に示す非接触式ICカード27は、構成部材や製造プロセスが多く、近年の市場ニーズに対応したコストに抑えることは非常に困難であった。本発明は上記問題点を解決するものであり、低コストで信頼性に優れた非接触式ICカードの製造方法及びその製造方法によって製造された非接触式ICカードの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下のものに関する。
(1) カード表皮材の表面にデザイン印刷を施すステップ(S1)と、前記カード表皮材裏面の幅方向の一方の領域にアンテナ回路を形成するステップ(S2)と、前記アンテナ回路上にICチップ接続材料を塗布するステップ(S3)と、前記接続材料の上からICチップを実装するステップ(S4)と、前記表皮材裏面の幅方向の他方の領域に接着材を塗布するステップ(S5)と、前記表皮材裏面の幅方向の他方の領域を折り返すステップ(S6)と、前記接着材をICチップの上に貼り合せるステップ(S7)と、この貼り合わせたカード表皮材をカード形状に打抜くステップ(S8)とを有することを特徴とする非接触式ICカード製造方法。
(2) カード表皮材の表面にデザイン印刷を施すステップ(S1)及びカード表皮材裏面の幅方向の一方の領域にアンテナ回路を形成するステップ(S2)は、グラビア印刷、フレキソ印刷又はシルクスクリーン印刷の何れかによって形成されることを特徴とする(1)に記載の非接触式ICカード製造方法。
(3) ICチップ接続材料を塗布するステップ(S3)は、異方導電性接着材を用いて塗布することを特徴とする(1)又は(2)に記載の非接触式ICカード製造方法。
(4) 接続材料の上からICチップを実装するステップ(S4)は、フェースダウン方式にて加熱圧着することにより、接続材料を介してICチップとアンテナ回路を接続させることを特徴とする(1)乃至(3)のいずれかに記載の非接触式ICカード製造方法。
(5) 表皮材裏面の幅方向の他方の領域に接着材を塗布するステップ(S5)は、熱可塑性接着材、熱硬化性接着材又はUV硬化性接着材の何れかを用いて塗布することを特徴とする(1)乃至(4)のいずれかに記載の非接触式ICカード製造方法。
(6) 接着材をICチップの上に貼り合せるステップ(S7)は、ロールラミネート方式又は連続プレス方式により貼り合せることを特徴とする(1)乃至(5)のいずれかに記載の非接触式ICカード製造方法。
(7) カード形状に打抜くステップ(S8)は、刃型を用いて打抜くことを特徴とする(1)乃至(6)のいずれかに記載の非接触式ICカード製造方法。
(8) 各ステップ(S1)〜(S8)を、ロールツーロール方式で製造することを特徴とする(1)乃至(7)のいずれかに記載の非接触式ICカード製造方法。
(9) 接続材料の上からICチップを実装するステップ(S4)は、実装されるICチップが、予めICチップ裏面をミラーポリッシュ加工にて鏡面研磨するステップを有することを特徴とする、(1)乃至(8)のいずれかに記載の非接触式ICカード製造方法。
(10) (1)乃至(9)のいずれかに記載の非接触式ICカード製造方法により製造される非接触式ICカード。
【発明の効果】
【0007】
本発明の非接触式ICカード製造方法及びその製造方法によって製造された非接触式ICカードを用いることによって、低コストで信頼性に優れた非接触式ICカードを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の非接触式ICカード製造方法のステップ(S1)及び(S2)を示す。
【図2】本発明の非接触式ICカード製造方法のステップ(S3)及び(S4)を示す。
【図3】本発明の非接触式ICカード製造方法のステップ(S5)〜(S8)を示す。
【図4】本発明の非接触式ICカード製造方法で製造された非接触式ICカードの断面図を示す。
【図5】従来の非接触式ICカード製造方法で製造された非接触式ICカードの断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。又、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0010】
又、以下に示す実施の形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0011】
図1から図3は、本発明の実施の形態に係る非接触式ICカード製造方法の一例を示すものである。本発明の非接触式ICカード製造方法は、カード表皮材1の表面にデザイン印刷2を施すステップ(S1)と、前記カード表皮材1裏面の幅方向の一方の領域25にアンテナ回路3を形成するステップ(S2)と、前記アンテナ回路3上にICチップ接続材料4を塗布するステップ(S3)と、前記接続材料4の上からICチップ5を実装するステップ(S4)と、前記表皮材1裏面の幅方向の他方の領域26に接着材6を塗布するステップ(S5)と、前記表皮材1裏面の他方の領域26を折り返すステップ(S6)と、前記接着材6をICチップ5の上に貼り合せるステップ(S7)と、この貼り合わせたカード表皮材1をカード形状に打抜くステップ(S8)とを有する。図4は、前記非接触式ICカード製造方法によって、最終的に非接触式ICカード19を完成した時の断面構造図の一例である。
【0012】
まず、カード表皮材1は例えばポリエチレンテレフタレート(PET)等のプラスチック材料を用いる。また経済性の点では、発泡タイプのPETフィルムや、ポリプロピレン、紙基材等を用いることが好ましい。後工程での生産効率を考慮すると、ロール状で準備しておくことが有効である。
【0013】
次に、図1のステップ(S1)で、カード表皮材1の表面にデザイン印刷2を行う。本発明でいうデザイン印刷2とは、模様や色彩などのデザイン的効果を示すものや文字などの可視化情報を印刷するものである。印刷方式は、生産ロット数に応じてコストの安い方式を選定する。大量ロットの場合は、生産スピードの速いグラビア印刷やフレキソ印刷が好ましく、少量生産の場合は、イニシャルコストを比較的低価格にできるシルクスクリーン印刷が好ましい。また、塗布するインクは、乾燥スピードの速いUV(紫外線)硬化タイプを選定するのが望ましい。更に、カード使用時の印刷耐久性を向上するために、デザイン印刷2の上面にニス等の保護膜を同じ印刷方式で形成することもできる。デザイン印刷2は、非接触式ICカード19の表裏両面のデザインを、カード表皮材1の同じ面(ここでは表面側)にロールツーロールで印刷する。ここで、本発明においてロールツーロールとは、ロール状の材料を繰り出して、間欠的又は連続的に搬送しながら必要な処理を行いつつ、処理が終わった材料を再びロール状に巻き取る処理方式である。
【0014】
図1のステップ(S2)では、カード表皮材1の裏面にアンテナ回路3を形成する。アンテナ回路3の形成は、カード表皮材1に導電性ペーストを印刷することにより可能であるが、例えば、カード表皮材1に積層された金属膜をエッチングすることにより形成しても良く、絶縁被覆された電線(例えば、エナメル線)を同一面上に巻き回してアンテナ回路3を形成しても良い。その中でも、印刷によるアンテナ回路3の形成は、前記デザイン印刷と同工程で形成できる利点がある。すなわち、グラビア印刷、フレキソ印刷、シルクスクリーン印刷が可能であり、経済性の点でも有利である。なお、グラビア印刷とは、写真製版技術の一つで、銅板の上に原図の凹板をつくり、この上に印刷インキを盛って印刷する方法である。フレキソ印刷とは、フレキシブルなゴム又は樹脂からなる凸版と、水又はアルコールを主とする溶剤系の蒸発乾燥型のインキを用いた印刷方法である。シルクスクリーン印刷とは、孔版印刷の一種で、パターン支持材としてスクリーンメッシュを用い、その上に作られた版画像を通して印刷インクを被印刷体に転移させ画像複製を行う技術の総称である。
【0015】
アンテナ回路3を印刷する導電性インクは、銀ペーストインクが好ましく、デザイン印刷2と同様にUV硬化タイプを選定するのが、乾燥スピードの速い点で望ましい。尚アンテナ回路3は、デザイン印刷2を行なったカード表皮材1の表面とは反対側の面、即ちカード表皮材1の裏面に形成する。
【0016】
カード表皮材1の裏面へのアンテナ回路3を形成する一方の領域25は、カード表皮材1裏面の幅方向の半分とするのが望ましい。このように、カード表皮材1裏面の幅方向の半分にだけアンテナ回路3を形成するのは、ステップ(S6)、(S7)において、カード表皮材1裏面の面積の残り半分(他方の領域26)を折り返し(ステップ(S6))、接着材6をICチップ5の上に貼り合せる(ステップ(S7))ためである。また、アンテナ回路3を形成する領域を、カード表皮材1裏面の幅方向の半分までの範囲内とすると、アンテナ回路3を形成する領域がカード表皮材1裏面の面積の半分となる。このため、折り返し線20をカード表皮材1の幅方向の中央に配置することができるので、折り返して貼り合わせることで形成される重なり領域の面積が最大となるため、材料歩留りの点で有利である。つまり、この場合、アンテナ回路3を形成する領域は、アンテナ回路側の端部22から折り返し線20までの範囲内となる。また、このように、カード表皮材1の幅方向の半分を折り返して貼り合わせることにより、ロール状に巻き取ったカード表皮材1を巻き出しながら、連続的に折り返し線20で折り返して、ロールラミネート方式や連続プレス方式で貼り合わせた後、再びロール状に巻き取る工法(ロールツーロール方式)を採用できるため、生産効率がよい。なお、折り返し線20をカード表皮材1の幅方向の中央に配置しない場合でも、折り返して貼り合わせることで重なり領域が形成され、接着材6をICチップ5の上に貼り合せることが可能であれば、必ずしも折り返し線20をカード表皮材1の幅方向の中央に位置させる必要はなく、任意の位置に適宜変更してもよい。
【0017】
図2のステップ(S3)で、前記アンテナ回路3上にICチップ5の接続材料4を塗布し、ステップ(S4)で前記接続材料4の上からICチップ5を実装する。接続材料4には異方導電性接着材を用いると、接続信頼性がより向上される。ICチップ5はフェースダウンにて加熱圧着することにより、前記接続材料4を介してアンテナ回路3と接続される。
【0018】
図3のステップ(S5)で、カード表皮材1裏面の他方の領域26に接着材6を塗布する。つまり、接着材6の塗布箇所は、アンテナ回路3が形成されていない領域に設けられるため、接着材6の塗布ヘッド等がアンテナ回路3に接触してダメージを与えるのを防止できる。アンテナ回路3形成のある領域に塗布しようとすると、接着材6の塗布ヘッド等がICチップ5やアンテナ回路3に接触する可能性があり、ダメージを受けやすいからである。接着材6には、熱可塑性接着材、熱硬化性接着材、UV硬化性接着材等を用いることができる。
【0019】
図3のステップ(S6)、(S7)では、カード表皮材1裏面の他方の領域26を折り返し(ステップ(S6))、接着材6をICチップ5の上に貼り合せる(ステップ(S7))。カード表皮材1の他方の領域26を折り返す際は、図3に示すように、カード表皮材1の長さ方向に折り返し線20が形成されるように折り返すのが望ましい。これにより、ロール状に巻き取ったアンテナ表皮材1を巻き出しながら、連続的に折り返し線20で折り返して、連続的に貼り合わせた後、再びロール状に巻き取る工法(ロールツーロール方式)を採用できるため、生産効率がよい。貼り合せる際は、ロールラミネート方式又は連続プレス方式を採用すると、連続的に貼り合わせることができるので、生産性が良い。従来の枚葉プレス(多段プレス)方式では、シート状に裁断した後1枚1枚を積層してセットする必要があるので、効率が低下する。
【0020】
図3の最後のステップ(S8)で、カード表皮材1裏面の他方の領域26を折り返し、貼り合わせたカード表皮材1を、非接触式ICカード19の形状に打ち抜く。非接触式ICカード19の打ち抜きでは、ビク刃やピナクル刃を用いる刃型方式と、オスメスの金型を用いパンチ方式で打ち抜く方法がある。非接触式ICカード19切断面のバリ発生を少なくするには、刃型24を用いた方が有効である。
【0021】
上記図1から図3のステップ(S1)〜(S8)では、カード表皮材1として、例えば、幅500mmで長さ500mm程度のシート状のものを用いても生産可能であるが、ロール状のものを用いると、全てのステップで、一貫したロールツーロール方式を採用することができるので、生産効率が良い。
【0022】
実装されるICチップ5は、予めバックグラインド加工を行い所定のチップ厚みにしておくのが望ましい。バックグラインド加工とは、非接触式ICカード等に組み込み可能な厚さ100μm以下の極薄肉のチップを製造する場合、多数のチップにダイシングされる前のIC回路が形成された半導体ウエハに対し、IC回路が形成されていない他の片面を再度研削加工して100μm以下の極薄肉の半導体ウエハに仕上げる加工である。このバックグラインド加工は、通常、IC回路が形成された半導体ウエハの片面に保護フィルムを貼付して行なわれる。この時、チップ厚みの設定は、完成した非接触式ICカード19の総厚、カード表皮材1の厚み、接着材6の厚み等の設計により決定されるが、一般的には150μm程度の厚みが用いられる。しかしながら非接触式ICカード19の総厚を薄く、例えば0.25mm程度に設計したい場合、非接触式ICカード19の特性や量産性、加工性を考慮した場合の設計厚みは、カード表皮材1(表裏)が100μm、接着材6が50μm程度となる。その際、非接触式ICカード19の表面にICチップ5の凹凸が発生すると、見栄えが悪くなり、非接触式ICカード19を複数枚重ねた時に傾きが発生するなど悪影響を及ぼすことから、ICチップ5の厚みは50μm以内を選定することになる。ICチップ5は厚みが薄いほど耐点圧強度が低下し、フィールドでの信頼性が低下するが、バックグラインド加工での最終仕上げ方法を工夫することで、フィールドで耐えうるチップ強度を確保することができる。一般的なバックグラインド加工の仕上げでは、#4000程度の研磨ホイールを用いているが、研磨ホイールの番手を#8000程度にすると、チップ点圧強度は約2.5倍向上する。更に#8000バックグラインドの後、ミラーポリッシュ加工にて鏡面研磨すると、#4000バックグラインドに対し、約5倍向上する。
【0023】
前記図1から図3を用いて説明した非接触式ICカード製造方法により、前記従来の非接触式ICカード製造方法に比べ構成部材や製造プロセスを低減することができ、また、異方導電性接着材を用いたフェースダウンICチップ実装方式により接続信頼性を確保でき、また、実装されるICチップは予めミラーポリッシュ加工にて鏡面研磨することによりチップ強度を確保できることから、低コストで信頼性に優れた非接触式ICカード製造することができる。
【実施例】
【0024】
以下、図1から図4を用いて、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0025】
(実施例1)
まずはカード表皮材1となる、100μm厚の発泡PET(東洋紡績株式会社製クリスパー、登録商標)を、250mm幅、1,000m巻きのロール状で準備した。
【0026】
[デザイン・アンテナ印刷]
最初の工程では、フレキソ印刷機(両面12色刷り対応機)を用い、前記発泡PET上にロール状で(即ち、ロールツーロールで)印刷を施した。印刷手順としては、図1のスッテプ(S1)に示すように、まずカード表皮材1である発泡PETのA面側(表面側)に非接触式ICカード19のデザイン印刷2を、Y(イエロー)、M(マゼンダ)、C(シアン)、B(ブラック)のUVインク4色とUV硬化ニスを用い、合計5色刷りにて形成した。この際に、ロール状の発泡PET幅方向の半分の領域(125mm幅の領域)には非接触式ICカード19表面のデザイン印刷2aを、もう半分の領域(125mm幅の領域)には非接触式ICカード19裏面のデザイン印刷2bを、各色で同時に印刷した。従って、Y、M、C、B、ニスの各々の印刷版には、非接触式ICカード19表面のデザインと裏面のデザインが同一の版に形成されている。次に、図1のステップ(S2)に示すように、発泡PETのB面側(裏面側)にアンテナ回路3を、UV硬化型の銀ペーストインクとレジストインクを用い、合計3色刷りにて印刷した。なお、アンテナ回路3の印刷は、ロール状の発泡PET幅方向の半分の領域(125mm幅の領域)に対して実施した。上記フレキソ印刷機(両面12色刷り対応機)を用いたフレキソ印刷工法により、非接触式ICカード19表面のデザイン印刷2a、裏面のデザイン印刷2b及びアンテナ回路3をワンパスで形成することができた。ここで、ワンパスとは、カード表皮材1である発泡PETを、処理装置に1回のみ通過させることをいい、本実施例におけるこの工程では、カード表皮材1である発泡PETを、フレキソ印刷機(両面12色刷り対応機)に1回のみ通過させることをいう。
【0027】
[IC実装]
次の工程では、図2のステップ(S3)、(S4)に示すように、前記の印刷済みの発泡PETを、ロールツーロール方式にて、ICチップ5の接続材料4塗布(ステップ(S3))からICチップ5実装(ステップ(S4))までの工程をワンパスで実施した。手順としては、まずICチップ5の接続材料4であるエポキシ系の異方導電性接着材(日立化成工業株式会社製ACP、ACPは異方導電性ペーストを示す。)を、ディスペンサーを用いてアンテナ回路3上に塗布した(ステップ(S3))。ICチップ5の1個あたりの塗布量は0.1mg程度である。次に予め加工されたウエハ上から、吸着ノズルでICチップ5をピックアップし、異方導電性接着材の上にフェースダウンで搭載した。なおウエハ加工においては、#8000バックグラインド後にミラーポリッシュ加工仕上げを行いウエハ厚みを50μmとした後、ダイシング加工により約0.5mm×0.5mmのICチップ5に仕上げた。次に、ICチップ5上から5mm×5mmの熱板で、170℃20秒程加熱圧着し、異方導電性接着材を熱硬化させた(ステップ(S4))。これにより、ICチップ5とアンテナ回路3が接続部材4を介して電気的に導通し、発泡PET上に固定されるようになる。最後にロール状に巻き取った。
【0028】
[接着材塗布〜打抜き]
次の工程では、図3のステップ(S5)〜(S8)に示すように、前記のICチップ5実装済みの発泡PETを、ロールツーロール方式にて接着材塗布((ステップ(S5))、折り返し((ステップ(S6))、貼り合せ((ステップ(S7))、打抜き(ステップ(S8))までの工程をワンパスで実施した。手順としては、まず熱硬化性接着材6を固形状態で準備しておき、前記接着材6をアプリケータで溶かしながらダイヘッドを用いて発泡PETのB面側(裏面側)に塗布した((ステップ(S5))。この接着材6の塗布は、発泡PET幅方向の半分の領域(125mm幅の領域)で、かつアンテナ回路3の形成されていない領域に、50μmの厚みとなるように行なった。次に、発泡PET幅方向中央の折り返し線20からB面側(裏面側)を谷折りにしながら折り返し(ステップ(S6))、その後、80℃の熱ラミネートロール23にて貼り合せた(ステップ(S7))。なお、発泡PETのA面(表面)に印刷された非接触式ICカード19表面と裏面のデザイン印刷2a、2bは、同一の印刷版で印刷されている為、発泡PET幅方向中央の折り返し線20から折り返すことで、貼り合わせの際に位置ずれすることは無い。次に、非接触式ICカード19の外形寸法に合わせた刃型24を用い、前記貼り合わせ済みの発泡PETを打ち抜き、個片状の非接触式ICカード19に仕上げた。
【0029】
上記により完成された非接触式ICカード19は0.25mmの厚みを保ち、既存のプリペイドカード(磁気カード)と遜色ない薄さと剛性感を達成することができた。
【0030】
(比較例)
図5に示した従来の非接触式ICカード27を比較例とし、以下のように作製した。
【0031】
[アンテナ印刷]
先ず、PETフィルム7に銀ペーストをシルクスクリーン印刷によりアンテナ回路8を形成した。
【0032】
[IC実装]
次に、ICチップ9を異方導電性フィルム10によって接続し、ロール状の印刷回路層16を製作した。
【0033】
[接着材塗布]
次に、スペーサ層17としてPETフィルム11(スペーサ材)の片面に接着材12を塗布した後、ICチップ9に相当する箇所に開口部15を設け、ロール状のスペーサ層17を作製した。
【0034】
[ラミネート]
次に、前記印刷回路層16と前記スペーサ層17を、ラミネートロール23を用いて連続ラミネートを行った。また、PETフィルム13の片面に接着材14を塗布したスキン層18を、前記印刷回路層16とスペーサ層17の積層品の上下から連続ラミネートを行った。
【0035】
[打抜き]
次に、刃型(図示しない。)により打抜いて、個片状の非接触式ICカード27を作製した。
【0036】
[デザイン印刷]
最後に、個片状カードに対してデザイン印刷(図示しない。)を実施し、図5に示すような非接触式ICカード27を作製した。
【0037】
実施例1及び比較例について、各種評価を行なった結果を表1に示す。これらの評価結果から、比較例の非接触式ICカードと比較して、本実施例の非接触式ICカード19の厚さは、0.2mm薄型化が可能となり、しかも通信距離及び信頼性については同等以上の特性を確保できた。
【0038】
【表1】

【0039】
なお、表1において、通信距離は、リーダライタ(ジーエルサイエンス株式会社製)のアンテナ中央部から垂直方向に非接触式ICカードを置いた時の最大応答距離を示した。高温高湿試験は、85℃・85RH%(相対湿度)の恒温恒湿槽に非接触式ICカードを48時間放置した後、非接触式ICカードの外観検査や通信距離を測定した。チップ部点圧強度は、鋼板の上に非接触式ICカードを置き、その上から半径1.5mmの鋼球で、ICチップが搭載された箇所に、徐々に荷重を加えていき、ICチップが破壊された時の荷重を測定した。印刷品質は、デザイン印刷とアンテナ回路について、テープ剥離試験によって、印刷層の剥離の有無を確認することにより行なった。
【0040】
更に、工程数、部材数、製造コストは、表2に示す通りとなった。なお、表2において、製造コストは指数で表した数値である。表2に示す通り、主な工程数は、比較例の6工程に対して、実施例1は3工程と少なく、また、主な部材数は、比較例の6個に対して、実施例1は3個と少ない。このため、工数及び部材数の大幅な低減を図ることができた。
【0041】
【表2】

【符号の説明】
【0042】
1…カード表皮材、2…デザイン印刷、2a…非接触式ICカード表面のデザイン印刷、2b…非接触式ICカード裏面のデザイン印刷、3…アンテナ回路、4…接続材料、5…ICチップ、6…接着材、7…PETフィルム(印刷回路層用)、8…アンテナ回路、9…ICチップ、10…異方導電性フィルム、11…PETフィルム(スペーサ層用)、12…接着材(スペーサ層用)、13…PETフィルム(スキン層用)、14…接着材(スキン層用)、15…開口部、16…印刷回路層、17…スペーサ層、18…スキン層、19…非接触式ICカード、20…折り返し線、21…端部(接着材塗布側)、22…端部(アンテナ回路側)、23…ラミネートロール、24…刃型、25…一方の領域、26…他方の領域、27…非接触式ICカード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カード表皮材の表面にデザイン印刷を施すステップ(S1)と、前記カード表皮材裏面の幅方向の一方の領域にアンテナ回路を形成するステップ(S2)と、前記アンテナ回路上にICチップ接続材料を塗布するステップ(S3)と、前記接続材料の上からICチップを実装するステップ(S4)と、前記表皮材裏面の幅方向の他方の領域に接着材を塗布するステップ(S5)と、前記表皮材裏面の幅方向の他方の領域を折り返すステップ(S6)と、前記接着材をICチップの上に貼り合せるステップ(S7)と、この貼り合わせたカード表皮材をカード形状に打抜くステップ(S8)とを有することを特徴とする非接触式ICカード製造方法。
【請求項2】
カード表皮材の表面にデザイン印刷を施すステップ(S1)及びカード表皮材裏面の幅方向の一方の領域にアンテナ回路を形成するステップ(S2)は、グラビア印刷、フレキソ印刷又はシルクスクリーン印刷の何れかによって形成されることを特徴とする請求項1に記載の非接触式ICカード製造方法。
【請求項3】
ICチップ接続材料を塗布するステップ(S3)は、異方導電性接着材を用いて塗布することを特徴とする請求項1又は2に記載の非接触式ICカード製造方法。
【請求項4】
接続材料の上からICチップを実装するステップ(S4)は、フェースダウン方式にて加熱圧着することにより、接続材料を介してICチップとアンテナ回路を接続させることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の非接触式ICカード製造方法。
【請求項5】
表皮材裏面の幅方向の他方の領域に接着材を塗布するステップ(S5)は、熱可塑性接着材、熱硬化性接着材又はUV硬化性接着材の何れかを用いて塗布することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の非接触式ICカード製造方法。
【請求項6】
接着材をICチップの上に貼り合せるステップ(S7)は、ロールラミネート方式又は連続プレス方式により貼り合せることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の非接触式ICカード製造方法。
【請求項7】
カード形状に打抜くステップ(S8)は、刃型を用いて打抜くことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の非接触式ICカード製造方法。
【請求項8】
各ステップ(S1)〜(S8)を、ロールツーロール方式で製造することを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の非接触式ICカード製造方法。
【請求項9】
接続材料の上からICチップを実装するステップ(S4)は、実装されるICチップが、予めICチップ裏面をミラーポリッシュ加工にて鏡面研磨するステップを有することを特徴とする、請求項1乃至8のいずれかに記載の非接触式ICカード製造方法。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれかに記載の非接触式ICカード製造方法により製造される非接触式ICカード。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−262570(P2010−262570A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−114475(P2009−114475)
【出願日】平成21年5月11日(2009.5.11)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】