説明

非接触給電システム

【課題】非接触送電システムにおいて交流電力を発生させる増幅器におけるスイッチング損失の低減を図ることを目的とする。
【解決手段】非接触状態で送電を行うシステムにおいて、電力を受電する受電側アンテナと、受電側アンテナに対して電力を送電する送電側アンテナとを備えて、共振周波数で振動する交流電力がアンテナ間の電磁的結合により送電される際、送電側アンテナはアンテナ自身が有する共振周波数を透過し且つ共振周波数の高調波を交流電力ドライバ側に反射させる。交流電力ドライバの負荷インピーダンスの短絡状態と開放状態とを奇数次高調波と偶数次高調波とで互いに異ならせてスイッチング損失を低減する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願に開示の技術は、電気エネルギーを動力源として利用する機器に非接触で給電する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車車両の新たな走行駆動技術として、電気エネルギーを動力源として電動機により駆動力を発生する電気自動車や、内燃機関と電動機との補完により駆動力を発生する、いわゆるハイブリッド自動車車両の開発が進められ実用化されてきている。
【0003】
電気エネルギーは車両に搭載されている蓄電装置により車両内に蓄積される。蓄電装置にはニッケル水素電池やリチウムイオン電池などの再充電可能な二次電池が使用されており、二次電池への充電は車両外部の電源からの給電により行われることが一般的である。給電の方法として、車両外部の電源と二次電池を含む蓄電装置との間をケーブルで接続する場合の他、非接触状態で給電する方法が注目されている。
【0004】
車両外部の電源から非接触状態で充電電力を電動車両へ送電するために、高周波電力ドライバと、一次コイルと、一次自己共振コイルとを備える車両用給電装置が開示されている。高周波電力ドライバにより電源からの電力が高周波電力に変換され、一次コイルによって一次自己共振コイルに与えられる。一次自己共振コイルは車両にある二次自己共振コイルとの間で磁気的に結合され、非接触状態で車両に電力が送電される(特許文献1)。
【0005】
また、コイルまたはアンテナを利用して非接触給電を行う技術として、特許文献2、非特許文献1が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−106136号公報
【特許文献2】特表2009−501510号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】アリステディス カラリス(Aristeidis Karalis)、他2名、「エフィシェント ワイヤレス ノンラディエイティブ ミッドレンジ エネルギー トランスファ(Efficient wireless non-radiativemid-range energy transfer)」、[online]、2007年4月27日、アニュアル オブ フィジックス(Annals of Physics)323 (2008) p.34-48、[平成21年11月20日検索], インターネット<URL:www.sciencedirect.com>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、背景技術は、アンテナにより非接触状態で送電を行うための回路構成を例示するに過ぎない。回路構成の中で高周波の交流電力を発生させる増幅器について開示はない。該増幅器においてスイッチング動作によるスイッチング損失が大きい場合には消費電力が大きくなってしまい問題である。スイッチング損失とは、スイッチング時のスイッチング素子における電圧と電流の重なりによって生じる。これを低減するための1つの方法としてF級増幅器が知られている。しかしながら、従来から知られているF級増幅器の構成では、回路構成が複雑になり、回路規模が大きくなってしまう。そのため高価である。また、調整も複雑であるといった課題がある。
【0009】
そこで、送信用および受信用のアンテナの周波数特性を調整し、高調波成分を交流電力ドライバに、また特に、交流電力ドライバ内に備えられたスイッチング素子に、反射させるような動作を持たせることにより、アンテナを含んだ系によりF級動作をさせる。偶数次高調波と奇数次高調波とで、スイッチング素子の負荷インピーダンス特性が、短絡と開放とで互いに異なる構成とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願に開示される技術に係る非接触送電システムは、電気エネルギーを動力源として利用する機器に対して非接触状態で送電を行う非接触送電システムである。機器に搭載され、電磁的結合により受電する受電側アンテナと、受電側アンテナに対して電磁的結合により送電するともに高周波成分の高調波を交流電力ドライバ側に反射させる特性を有する送電側アンテナと、送電側アンテナに接続され、送電時に所定周波数の交流電力を供給する交流電力ドライバと、とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本願に開示される技術に係る非接触送電システムによれば、送電側アンテナ及び受電側アンテナが有する共振周波数で交流電力ドライバから交流電力を供給するとともに、送電側アンテナと受電側アンテナとを含んだ系において周波数特性を調整して、高調波を交流電力ドライバ側に反射させる。これにより、交流電力ドライバに備えられたスイッチング素子の負荷インピーダンスの短絡状態と開放状態とを、反射する奇数次高調波と偶数次高調波とで互いに異ならせてスイッチング損失の低減を図る、いわゆるF級増幅動作を行わせる。すなわち、送電側アンテナと充電側アンテナとを含んでF級増幅動作を行わせる。これにより、交流電力ドライバにおける電圧及び電流の時間波形が重なっていない状態を作り出すことができ交流電力ドライバで消費する電力を低減することができ、内部損失を抑えることで、効率よく電力を供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】非接触送電システムを示す図である。
【図2】送電装置の回路ブロック図である。
【図3】受電装置の回路ブロック図である。
【図4】アンテナの一例としてダイポールアンテナを示す図である。
【図5】図4に例示したアンテナの周波数特性を示す図である。
【図6】第1の組み合わせ(2倍高調波に対して短絡、3倍高調波に対して開放)に対応するシミュレーションを行うための等価回路図を示す。
【図7】第2の組み合わせ(3倍高調波に対して開放)に対応するシミュレーションを行うための等価回路図を示す。
【図8】図6、7によるシミュレーション結果である。
【図9】送電装置の動作時のフローである。
【図10】受電装置の動作時のフローである。
【図11】アンテナの一例として、円形パッチアンテナを示す図である。
【図12】図11に例示したアンテナの周波数特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は非接触送電システムを電気自動車あるいはハイブリッド自動車への送電に適用する場合のシステム構成図である。車両2が電気自動車あるいはハイブリッド自動車である。車両2が送電エリア1に入庫している状態を示す。送電エリア1には送電装置10が埋設されており、車両2に搭載されている受電装置20との間で、非接触送電が行われる。
【0014】
非接触送電では、送電装置10の送電側アンテナ11から受電装置20の受電側アンテナ21への電磁波による電磁的結合により電力の送電が行われる。送電側アンテナ11は、送電エリア1の地表面に沿って、電磁的結合がなされる結合面11Aが配置される。受電側アンテナ21は、車両2の下面に沿って、電磁的結合がなされる結合面21Aが配置される。送電側アンテナ11は、所定周波数の交流電力を給電する交流電力ドライバを含む送電部12により駆動される。送電部12は制御回路13により制御される。また、受電側アンテナ21にて受電された交流電力は受電部22により整流されて蓄電池等に蓄積される。受電部22は制御回路23により制御される。
【0015】
図2は送電装置10の回路ブロック図である。制御回路13、発振器14、駆動回路12A、整合回路12B、定在波比(Standing Wave Ratio、以下、SWRと略記する)計12C、および送電側アンテナ11を備える。更に、送電エリア1にはエリア内検出センサ15を備える。
【0016】
発振器14から出力されるクロック信号は、制御回路13へ入力され、制御回路13内の動作クロックおよび駆動回路12Aの交流電力の給電などの周期制御に用いられる。
【0017】
制御回路13は、発振器14、SWR計12C、エリア内検出センサ15から受信した信号をもとに、駆動回路12A、整合回路12Bを制御する。
【0018】
駆動回路12Aはインバータや増幅器などで構成される交流電力ドライバを含み、整合回路12BおよびSWR計12Cを通じて送電側アンテナ11に交流電力を供給する。該交流電力は制御回路13により所定周波数の交流電力として周期制御される。
【0019】
整合回路12Bは、駆動回路12Aから供給される交流電力を送電側アンテナ11へ効率よく供給するために、制御回路13からの制御により、送電側アンテナ11と駆動回路12Aとのインピーダンス整合をとる。
【0020】
SWR計12Cは駆動回路12Aから送電側アンテナ11へと送られる交流電力についてのSWR値を計測し制御回路13に結果を送信する。交流電力の伝搬による反射波の有無を検出する。
【0021】
送電側アンテナ11はインダクタンス成分とキャパシタンス成分とを有するLC共振コイルであり、後述する受電装置20の受電側アンテナ21との間で電磁的に結合され、受電側アンテナ21へ電力を送電する。
【0022】
エリア内センサ15は送電エリア1に車両2が進入したか否かを検出し、その結果を制御回路13に送信する。
【0023】
図3は、受電装置20の回路ブロック図である。受電装置20は、制御回路23、発振器24、受電側アンテナ21、受電検出回路22A、切替回路22B、整合回路22C、整流平滑回路22D、および充電回路22Eを備える。
【0024】
発振器24から出力されるクロック信号は、制御回路23に入力され、制御回路23内の動作クロックとして用いられる。
【0025】
制御回路23は、発振器24、および受電検出回路22Aから受信した信号をもとに、切替回路22B,および充電回路22Eを制御する。
【0026】
受電検出回路22Aは、例えば、電流センサを備え、受電側アンテナ21に流れる電流を検出する。送電装置10からの交流電力の送電が行われているか否かを検出する。
【0027】
切替回路22Bは、制御回路23から受信した信号により、受電側アンテナ21を閉ループ状態にするか、充電回路22Eに接続するか、開ループ状態にするかを切替える。
【0028】
整合回路22Cは、受電側アンテナ21に受電された交流電力が反射されずに整流平滑回路22Dを通じて充電回路22Eへと供給されるように、受電側アンテナ21から整流平滑回路22Dに至る系のインピーダンス整合をとる。
【0029】
整流平滑回路22Dは、受電側アンテナ21から供給される交流電力を直流電力に変換および平滑化し、充電回路22Eに供給する。
【0030】
充電回路22Eは、整流平滑回路22Dから供給される電力をバッテリー等の蓄電装置(不図示)に充電する回路である。ここで、蓄電装置とは、たとえばリチウムイオンやニッケル水素などの二次電池や大容量のキャパシタから成る。制御回路23から制御され充電制御を行う。
【0031】
受電側アンテナ21は、インダクタ成分とキャパシタンス成分とを有するLC共振コイルであり、送電側アンテナ11との間で電磁的に結合され、送電側アンテナ11より交流電力を受電する。
【0032】
送電側アンテナ11は、駆動回路12Aより周期的に矩形波状にスイッチングされる交流電力を送電側アンテナ11に出力する。スイッチングの周波数が共振周波数(F=F0)である。送電側アンテナ11は受電側アンテナ21と電磁的に結合して共振周波数の基本波を受電側アンテナ21に透過させると共に、矩形波状にスイッチングすることに伴って発生する高調波成分を駆動回路12A側に反射させる特性を有している。この特性は、送電装置10と受電側アンテナ21とを含む回路の周波数特性を調整することにより得られる。
【0033】
ここで、駆動回路12Aに備えられるスイッチング素子では、その負荷インピーダンスが、偶数次高調波に対し短絡であり奇数次高調波に対し開放である負荷特性、またはその逆である、偶数次高調波に対し開放であり奇数次高調波に対し短絡である負荷特性を有する。
【0034】
送電装置10と受電側アンテナ21とを含む回路の周波数特性および駆動回路12Aのスイッチング素子におけるインピーダンス特性の組み合わせは以下の場合が考えられる。
【0035】
第1の組み合わせは、スイッチング素子において、偶数次高調波(特に2倍波)に対して短絡、且つ奇数次高調波(特に3倍波)に対して開放となるインピーダンス特性である。送電側アンテナ11または/および受電側アンテナ21のパラメータを調整することにより、この特性を得ることができる。スイッチング素子の負荷インピーダンスを短絡、あるいは開放のいずれか適切な設定になるようにアンテナ形状を決定すればよい。
【0036】
第1の組み合わせを実施すると、駆動回路12Aのスイッチング素子における電圧の時間波形は、共振周波数である基本波と奇数次高調波成分を主たる波形成分とする矩形波で表され、また電流の時間波形は、共振周波数である基本波と偶数次高調波成分を主たる波形成分とする半波形で表される。その結果、電圧および電流の時間波形が重ならない状態を作り出すことができ、スイッチング損失による消費電力を低減することができる。駆動回路12Aの損失を抑えることができる。スイッチング素子における電圧波形と電流波形との重なりが低減しスイッチング損失が低減して送電効率が向上する。
【0037】
第2の組み合わせは、スイッチング素子において、奇数次高調波(特に3倍高調波)に対して開放となるインピーダンス特性である。送信側アンテナ11または/および受電側アンテナ21のパラメータを調整することにより、この特性を得ることができる。スイッチング素子の負荷インピーダンスを奇数次高調波(特に3倍高調波)に対して開放になるようにアンテナ形状を決定すればよい。
【0038】
第2の組み合わせを実施すると、駆動回路12Aのスイッチング素子における電圧の時間波形は、共振周波数である基本波と奇数次高調波成分を主たる波形成分とする半波形で表され、また電流の時間波形は、共振周波数である基本波を主たる波形成分とする矩形波で表せる。その結果、電圧及び電流の時間波形が重ならない状態を作り出すことができ、スイッチング損失による消費電力を低減することができる。駆動回路12Aの損失を抑えることができる。スイッチング素子における電圧波形と電流波形との重なりが低減しスイッチング損失が低減して送電効率が向上する。
【0039】
第3の組み合わせは、スイッチング素子において、偶数次高調波(特に2倍高調波)に対して開放、且つ奇数次高調波(特に3倍高調波)に対して短絡となるインピーダンス特性である。送信側アンテナ11または/および受電側アンテナ21のパラメータを調整することにより、この特性を得ることができる。スイッチング素子の負荷インピーダンスを偶数次高調波(特に2倍高調波)に対して開放、且つ奇数次高調波(特に3倍高調波)に対して短絡になるようにアンテナ形状を決定すればよい。
【0040】
第3の組み合わせを実施すると、駆動回路12Aのスイッチング素子における電圧の時間波形は、共振周波数である基本波と偶数次高調波成分を主たる波形成分とする半波形で表され、また電流の時間波形は、共振周波数である基本波と奇数次高調波成分を主たる波形成分とする矩形波で表される。その結果、電圧及び電流の時間波形が重ならない状態を作り出すことができ、スイッチング損失による消費電力を低減することができる。駆動回路12Aの損失を抑えることができる。スイッチング素子における電圧波形と電流波形との重なりが低減しスイッチング損失が低減して送電効率が向上する。
【0041】
第4の組み合わせは、スイッチング素子において、偶数次高調波(特に2倍高調波)に対して開放となるインピーダンス特性である。送電側アンテナ11または/および受電側アンテナ21のパラメータを調整することにより、この特性を得ることができる。スイッチング素子の負荷インピーダンスを偶数次高調波(特に2倍高調波)に対して開放になるようにアンテナ形状を決定すればよい。
【0042】
第4の組み合わせを実施すると、駆動回路12Aのスイッチング素子における電圧の時間波形は、共振周波数である基本波と偶数次高調波成分を主たる波形成分とする矩形波で表され、また電流の時間波形は、共振周波数である基本波を主たる波形成分とする半波形で表される。その結果、電圧および電流の時間波形が重ならない状態を作り出すことができ、スイッチング損失による消費電力を低減することができる。駆動回路12Aの損失を抑えることができる。スイッチング素子における電圧波形と電流波形との重なりが低減しスイッチング損失が低減して送電効率が向上する。
【0043】
図4に示すように送電側と受電側でダイポールアンテナを用いる場合を例示する。送電側アンテナ11の長さ(ls)をλ/64,受電側アンテナ21の長さ(lr)をλ/128とし、アンテナ間の距離(d)を2mとした場合である。尚、送電側アンテナ11の中点、および受電側アンテナ21の中点が、各々、給電点11A、21Aである。
【0044】
図4に例示した構成では、図5に示すように2倍高調波が反射される。ここで、λは基本波の波長、導線の半径は2mmとしている。
図11に例示した構成では、図12の実線に示すように2倍高調波と3倍高調波が反射される。ここではρ0/a=0.4、Φs=150°である。また図12点線は、スリットのない場合を示している。
図11に示すように送電側と受電側ともに同じ形状の円形パッチアンテナを用いる場合を例示する。円形パッチアンテナ(半径a)には、2つのスリットを入れることで望む特性が得られる。
【0045】
図6に、2倍高調波に対して短絡であり3倍高調波に対して開放である第1の組み合わせに対応するシミュレーションを行うための等価回路図を示す。また、図7に、3倍高調波に対して開放である第2の組み合わせに対応するシミュレーションを行うための等価回路図を示す。また、図6、7には、シミュレーションに必要なその他のパラメータも合わせて記載する。
【0046】
図8にシミュレーション結果を示す。第1の組み合わせ、および第2の組み合わせにおいて損失が低減され効率が向上することが判った。
【0047】
次に、送電装置10と受電装置20の動きについてフローチャートを用いて説明する。
【0048】
送電装置10の動作時のフローチャートを図9に示す。送電装置10の動作開始(ST0)後、送電装置10はエリア内検出センサ15により受電装置20の進入が検知されるまで待機する(ST2)。エリア内検出センサ15により受電装置20の進入を検出されるまで待機し、受電装置20の進入を検出した後、周波数走査及び送電を行うことで、消費電力を低減することが可能となる。
【0049】
エリア内検出センサ15により受電装置20の進入が検知された後、駆動回路12Aは受電側の受電側アンテナ21に電流が流れる程度の低電力で電流を出力し始め(ST4)、受電装置の準備が整うまで(ST6:No)まで低電力での出力を維持する。これにより、消費電力を低減することが可能となる。
【0050】
この間、制御回路13は、交流電力の周波数が、送電側アンテナ11あるいは受電側アンテナ21が有する固有の共振周波数(f=f0=1/2π(LC)1/2)となるように、駆動回路12Aを制御する。
【0051】
受電装置の準備が整うと(ST6:Yes)、送電装置10から受電装置20に送電を行うため、駆動回路12Aは制御回路13の制御により、出力を増大させる(ST8)。
ここで、受電装置の準備が整うことの確認は、受電装置20において受電側アンテナ21と充電回路22Eとを接続することに伴い送電される電力量が増加することを捉えて確認される。例えば、電流増大を検出することで確認される。
【0052】
受電装置20は、充電回路22Eへの充電が終わると受電側アンテナ21のループを開く。これにより、送電装置10のSWR計12Cにより計測されるSWR値が変化する。これにより、受電装置20において充電回路22Eへの充電が完了されたことが検出され、送電装置10は充電終了を検知する(ST10:Yes)。充電終了を検知した送電装置10の制御回路13は駆動回路12Aの出力を停止させる(ST12)。送電装置10は動作を終了する(ST14)。
【0053】
次に受電装置20の動作時のフローチャートを図10に示す。動作開始(SR0)時において受電装置20の切替回路22Bは受電側アンテナ21を閉ループ状態にするように接続する(SR2)。これにより、充電回路22Eに接続した場合に比べて、負荷が下がり、消費電力を低減することができる。受電検出回路22Aは送電装置10から電力が供給され受電側アンテナ21に電力が流れるまで待機する(SR4)。
【0054】
受電側アンテナ21に電力が流れた後、即ち、送電装置10が存在することを確認できた後、受電側アンテナ21から充電回路22Eまでを接続するように、受電装置20の制御回路23は切替回路22Bを制御する(SR6)。
【0055】
これにより、受電側アンテナ21に接続された充電回路22Eはバッテリーの充電を開始する(SR8)。バッテリーの充電が終了するまで以上の状態が保持される(SR10:No)。バッテリーの充電が終了すると(SR10:Yes)、制御回路23は切替回路22Bを制御し、受電側アンテナ21と充電回路22Eの接続を切断した上で、受電側アンテナ21のループを開く(SR12)。これにより、受電終了後の電力消費を低減することができる。受電装置20は動作を終了する(SR14)。
【0056】
送電可能エリア内に受電側アンテナが存在すると判断された場合には、駆動回路12Aの出力する交流電力の出力周波数Fを共振周波数F0とすることで効率よく電力を供給できる。
【0057】
また送電側アンテナまたは/および受電側アンテナが、発生する高調波成分(特に2倍高調波と3倍高調波)を反射する特性を持ち、且つスイッチング素子の負荷インピーダンスの短絡と開放の状態が、偶数次高調波(特に2倍高調波)および奇数次高調波(特に3倍高調波)の各々に対して互いに逆特性とすることで、駆動回路12Aのスイッチング損失を低減することができる。
【0058】
ここで、駆動回路12Aは交流電力ドライバの一例であり、SWR計12Cは反射特性を検出する検出回路の一例である。
【0059】
尚、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内での種々の改良、変更が可能であることは言うまでもない。
電気エネルギーを動力源として利用する機器は、本願の実施例における車両でなくとも良く、例えば、携帯電話機、デジタル・カメラ、およびノート・パソコンといった携帯型機器、ならびに、テレビ、ホームシアターおよびデジタル・フォト・フレームといった据え置き型機器でもよい。
反射特性を検出する検出回路は、本願の実施例におけるSWR計でなくとも良く、例えば、送電部12から送電側アンテナ11へと供給される電流量を計測する回路や供給される電圧の波形を計測する回路など、交流電力の反射の多少を検出することができるものであればよい。
【符号の説明】
【0060】
1 送電エリア
2 車両
10 送電装置
11 送電側アンテナ
11A 結合面
12 送電部
13、23 制御回路
12A 駆動回路
12B 整合回路
12C 定在波比(SWR)計
14、24 発振器
15 エリア内検出センサ
20 受電装置
21 受電側アンテナ
21A 結合面
22 受電部
22A 受電検出回路
22B 切替回路
22C 整合回路
22D 整流平滑回路
22E 充電回路


【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気エネルギーを動力源として利用する機器に対して非接触状態で送電を行う非接触送電システムであって、
前記機器に搭載され、電磁的結合により受電する受電側アンテナと、
前記受電側アンテナに対して前記電磁的結合により送電する送電側アンテナと、
前記送電側アンテナに接続され、前記送電側アンテナから前記受電側アンテナへアンテナ自身が有する共振周波数に合わせるように交流電力を前記送電側アンテナに供給する交流電力ドライバとを備え、
少なくとも前記送電側アンテナはアンテナ自身が有する共振周波数の基本波を透過し且つ共振周波数の高調波を前記交流電力ドライバ側に反射させる特性を有することを特徴とする非接触給電システム。
【請求項2】
前記交流電力ドライバはスイッチング素子を備え、該スイッチング素子の負荷インピーダンスが、反射された偶数次高調波に対して短絡、且つ奇数次高調波に対して開放となるインピーダンス特性を有することを特徴とする請求項1記載の非接触給電システム。
【請求項3】
前記交流電力ドライバはスイッチング素子を備え、該スイッチング素子の負荷インピーダンスが、反射された奇数次高調波に対して開放となるインピーダンス特性を有することを特徴とする請求項1記載の非接触給電システム。
【請求項4】
前記交流電力ドライバはスイッチング素子を備え、該スイッチング素子の負荷インピーダンスが、偶数次高調波に対して開放、且つ奇数次高調波に対して短絡となるインピーダンス特性を有することを特徴とする請求項1記載の非接触給電システム。
【請求項5】
前記交流電力ドライバはスイッチング素子を備え、該スイッチング素子の負荷インピーダンスが、偶数次高調波に対して開放になるインピーダンス特性を有することを特徴とする請求項1記載の非接触給電システム。
【請求項6】
前記機器が送電可能エリア内に進入したことを検出するエリア内検出センサを備え、
前記機器が送電側アンテナの送電可能エリア内に進入したことを検出した場合に電力供給を開始することを特徴とする請求項1乃至5の少なくとも何れか1項に記載の非接触送電システム。
【請求項7】
前記受電側アンテナの接続先を切り替える切替回路を備え、
前記切替回路は、受電終了時に前記受電側アンテナを負荷の含まない開ループとすることを特徴とする請求項1乃至6の少なくとも何れか1項に記載の非接触送電システム。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2011−234565(P2011−234565A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−104206(P2010−104206)
【出願日】平成22年4月28日(2010.4.28)
【出願人】(591261509)株式会社エクォス・リサーチ (1,360)
【出願人】(504173471)国立大学法人北海道大学 (971)
【Fターム(参考)】