説明

非接触電力伝送システム

【課題】非接触にて電力伝送を行うにあたり、金属異物の発熱を検知可能としつつも、構成の簡素化を図ることのできる非接触電力伝送システムを提供する。
【解決手段】この非接触電力伝送システムでは、交番電力の供給により1次コイルL1から発生する交番磁束が2次コイルL2に鎖交することにより1次コイルL1に供給した交番電力が2次コイルL2を介して受電される。そして、この受電した受電電力が2次電池10に供給される。ここでは、線状サーミスタが格子状に配列された温度検出シート30を1次コイルL1の上面に貼り付ける。この温度検出シート30では、線状サーミスタを通じて検出される温度に基づいて同シート30の異常加熱が検知される。そして、温度検出シート30の異常加熱が検知された場合には、1次コイルL1への交番電力の供給が停止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁誘導を利用して機器間の電力伝送を非接触にて行う非接触電力伝送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばデジタルカメラやパソコンなどの電子機器に内蔵されている電源用の2次電池(バッテリ)に非接触で充電を行う非接触電力伝送システムが知られている。このシステムでは、電子機器及びこれに対応する専用の充電器にそれぞれ1次コイルと2次コイルとを設けるようにしている。そして、例えば充電器に電子機器が置かれると、両コイルの間の電磁誘導を通じて充電器から電子機器に交番電力が伝送されて、電子機器でこれを直流電力に変換することにより2次電池の充電が行われるようになっている。
【0003】
一方、このような非接触電力伝送システムでは、1次コイルと2次コイルとの間に金属異物が介在しているような場合、1次コイルから発生する交番磁束が金属異物に付与されると、金属異物中に渦電流が誘起されてジュール熱が発生する。このため、金属異物の熱によって充電器や電子機器のハウジングが変形してしまうといった懸念がある。
【0004】
そこで、例えば特許文献1及び2では、1次コイルの周辺に設定された複数の測定点に温度センサをそれぞれ配置するようにしている。そして、各温度センサを通じて検出される複数の測定点の温度のうちのいずれかが所定温度以上を示している場合には、1次コイルと2次コイルとの間に金属異物が介在していると判断して、充電器による電力伝送を停止するようにしている。これにより、金属異物の発熱を抑制することができるため、充電器及び電子機器の熱変形を的確に回避することができるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−208383号公報
【特許文献2】特開2010−288429号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1及び2に記載の非接触電力伝送システムのように、1次コイルの周辺に設定された複数の測定点で温度を検出するようにした場合、広い検出範囲を確保しようとすると、測定点の数が自ずと増加する。そして、測定点の増加に伴って温度センサの数も増加するため、温度センサ等により構成される温度検出部全体の構造が複雑化するおそれがある。すなわち、非接触電力伝送システムとしての構成上の簡素化を図る上では、なお改良の余地を残すものとなっている。
【0007】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、非接触にて電力伝送を行うにあたり、金属異物の発熱を検知可能としつつも、構成の簡素化を図ることのできる非接触電力伝送システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、交番電力の供給により1次コイルから発生する交番磁束を2次コイルに鎖交させることにより前記1次コイルに供給した交番電力を前記2次コイルを介して受電し、この受電した受電電力を負荷に供給する非接触電力伝送システムであって、前記1次コイルと前記2次コイルとの間に配置されるとともに、線状に伸びる温度検出素子が設けられた温度検出部と、同温度検出部に設けられて、前記温度検出素子を通じて検出される温度に基づいて前記温度検出部の異常加熱を検知する異常検知手段と、同異常検知手段を通じて前記温度検出部の異常加熱が検知されることに基づいて前記1次コイルへの交番電力の供給を停止する送電制御手段とを備えることを要旨とする。
【0009】
この非接触電力伝送システムにおいては、前記温度検出部をシート状に形成することが好ましい。
この非接触電力伝送システムにおいては、前記温度検出部に、前記温度検出素子を格子状に配列することが好ましい。
【0010】
この非接触電力伝送システムにおいては、前記温度検出部に、前記1次コイルから発生する交番磁束と鎖交する受電コイルを設け、前記温度検出部が、前記交番磁束の鎖交により前記受電コイルに誘起される交番電力を電源として利用することが好ましい。
【0011】
この非接触電力伝送システムにおいては、前記温度検出部を、前記1次コイルに設けることが好ましい。
この非接触電力伝送システムにおいては、前記温度検出部を、前記1次コイルの外周を覆うハウジングの表面に設けることが好ましい。
【0012】
この非接触電力伝送システムにおいては、前記温度検出部を、前記2次コイルに設けることが好ましい。
この非接触電力伝送システムにおいては、前記温度検出部を、前記2次コイルの外周を覆うハウジングの表面に設けることが好ましい。
【0013】
この非接触電力伝送システムにおいては、前記異常検知手段が、前記送電制御手段と無線通信可能に接続されていることが好ましい。
この非接触電力伝送システムにおいては、前記温度検出部に、前記1次コイルと磁気結合する磁気結合コイルと、同磁気結合コイルの両端を短絡させるスイッチング素子とを設け、前記異常検知手段が、前記温度検出部の異常加熱を検知したとき、前記スイッチング素子を通じて前記磁気結合コイルの両端を短絡させることにより前記1次コイルに発生する交番電力の振幅を変化させ、前記送電制御手段が、前記1次コイルに発生する交番電力の振幅の変化に基づいて前記温度検出部の異常加熱を検知することが好ましい。
【0014】
この非接触電力伝送システムにおいては、前記2次コイルを搭載した機器に、前記送電制御手段と無線通信を行うことが可能な無線通信手段を設け、前記異常検知手段が、前記無線通信手段と通信可能に接続されて、前記温度検出部の異常加熱を検知したとき、その旨を前記無線通信手段を介して前記送電制御手段に無線送信することが好ましい。
【0015】
この非接触電力伝送システムにおいては、前記異常検知手段が、前記無線通信手段と無線通信可能に接続されていることが好ましい。
この非接触電力伝送システムにおいては、前記温度検出部に、前記2次コイルと結合する磁気結合コイルと、同磁気結合コイルの両端を短絡させるスイッチング素子とを設け、前記異常検知手段が、前記温度検出部の異常加熱を検知したとき、前記スイッチング素子を通じて前記磁気結合コイルの両端を短絡させることにより前記2次コイルに発生する交番電力の振幅を変化させ、前記送電制御手段が、前記2次コイルに発生する交番電力の振幅の変化に基づいて前記温度検出部の異常加熱を検知することが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明にかかる非接触電力伝送システムによれば、非接触にて電力伝送を行うにあたり、金属異物の発熱を検知可能としつつも、構成の簡素化を図ることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明にかかる非接触電力伝送システムの第1の実施形態についてその概略構成を示す断面図。
【図2】同第1の実施形態の非接触電力伝送システムを構成する温度検出シートの斜視構造を示す斜視図。
【図3】同第1の実施形態の非接触電力伝送システムについてそのシステム構成を示す回路図。
【図4】同第1の実施形態の非接触電力伝送システムについて線状サーミスタの温度とセンサ制御部に設けられた端子の電位との関係を示すグラフ。
【図5】同第1の実施形態の非接触電力伝送システムによる異常検知処理の手順を示すフローチャート。
【図6】本発明にかかる非接触電力伝送システムの第2の実施形態についてその概略構成を示す断面図。
【図7】同第2の実施形態の非接触電力伝送システムについてそのシステム構成を示す回路図。
【図8】(a)は、同第2の実施形態の非接触電力伝送システムについてスイッチング素子のオン/オフの切り替え例を示すタイムチャート。(b)は、2次コイルに誘起される交番電力(電圧)の推移例を示すタイムチャート。(c)は、1次コイルに誘起される交番電力(電圧)の推移例を示すタイムチャート。(d)は、1次コイルに誘起された電圧が整流されて1次側制御部に取り込まれる直流電圧の推移例を示すタイムチャート。
【図9】本発明にかかる非接触電力伝送システムの第3の実施形態について同システムを構成する温度検出シートの斜視構造を示す斜視図。
【図10】同第3の実施形態の非接触電力伝送システムを構成する温度検出シートの構成を示す回路図。
【図11】本発明にかかる非接触電力伝送システムの第4の実施形態について同システムを構成する温度検出シートの構成を示す回路図。
【図12】同第4の実施形態の非接触電力伝送システムを構成する充電器及び携帯機器の構成を示す回路図。
【図13】本発明にかかる非接触電力伝送システムの第5の実施形態についてその概略構成を示す断面図。
【図14】同第5の実施形態の非接触電力伝送システムを構成する温度検出シートの斜視構造を示す斜視図。
【図15】同第5の実施形態の非接触電力伝送システムを構成する温度検出シートの構成を示す回路図。
【図16】(a)は、同第5の実施形態の非接触電力伝送システムについて2次コイルに誘起される交番電力(電圧)の推移例を示すタイムチャート。(b)は、1次コイルに誘起される交番電力(電圧)の推移例を示すタイムチャート。(c)は、スイッチング素子のオン/オフの切り替え例を示すタイムチャート。
【図17】同第5の実施形態の非接触電力伝送システムを構成する充電器及び携帯機器の構成を示す回路図。
【図18】本発明にかかる非接触電力伝送システムの他の例について同システムを構成する温度検出シートの斜視構造を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<第1の実施形態>
以下、本発明にかかる非接触電力伝送システムの第1の実施形態について図1〜図5を参照して説明する。はじめに、図1を参照して、本実施形態にかかる非接触電力伝送システムの概略構成について説明する。
【0019】
図1に示すように、この非接触電力伝送システムは、電源(負荷)としての2次電池10を備えたデジタルカメラ、ノート型パーソナルコンピュータ等の携帯機器1と、携帯機器1の2次電池10に非接触で電力を供給する充電器2とを有して構成されている。
【0020】
充電器2は、携帯機器1に電力を伝送する1次側コイルモジュール20を備えている。また、充電器2は、1次側コイルモジュール20をはじめとする各種電子部品の外部をハウジング21により覆うことで、それらを外部環境から保護する構造をなしている。なお、ハウジング21の上面21aは、携帯機器1の置かれる部分となっている。
【0021】
1次側コイルモジュール20は、電力の供給により磁束が発生する1次コイルL1と、1次コイルL1からの磁束の漏れを抑制するフェライト系の部材からなる磁性体M1とによって構成されている。1次コイルL1としては、平面方向に導線が巻回された平面コイルが用いられている。なお、本実施形態では、1次コイルL1の巻数が20ターンに設定されるとともに、その外径が40[mm]に設定されている。また、1次コイルL1と磁性体M1とを合わせた厚みが1[mm]程度となっている。そして、1次コイルL1の磁性体M1が当接する端面と反対側の端面には、その周辺の温度を検出する温度検出シート30が接着剤などにより貼り付けられている。
【0022】
図2に示すように、温度検出シート30は、例えばPET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂などの高分子フィルムからなるシート状の部材であって、その内部に、線状のサーミスタSH1〜SH5,SV1〜SV5が格子状にパターン形成されている。線状サーミスタSH1〜SH5,SV1〜SV5は、自身の温度が増加するほど抵抗値が増加する温度検出素子である。また、図中のx軸方向に伸びる線状サーミスタSH1〜SH5とy軸方向に伸びる線状サーミスタSV1〜SV5とは、それらの間に設けられた絶縁層によって互いに絶縁されている。そして、線状サーミスタSH1〜SH5,SV1〜SV5は、それぞれの両端に形成されたランドLH11〜LH15,LH21〜LH25,LV11〜LV15,LV21〜L25を介して温度検出シート30に内蔵された処理回路(図示略)に電気的に接続されている。なお、温度検出シート30の外縁には、その周囲の環境温度(室温)を検出する部分として、線状サーミスタSH1〜SH5,SV1〜SV5に準じた抵抗温度特性を有するサーミスタ(図示略)が設けられている。本実施形態では、このように、線状サーミスタSH1〜SH5,SV1〜SV5やその処理回路等を備える温度検出部として、シート状に形成された温度検出シート30を用いることとしている。これにより、温度検出シート30を1次コイルL1の上面に容易に貼り付けることができるため、その取り付けが容易となっている。
【0023】
一方、図1に示すように、携帯機器1は、充電器2から伝送される電力を受ける2次側コイルモジュール11を備えている。また、携帯機器1は、2次側コイルモジュール11及び2次電池10をはじめとする各種電子部品の外周をハウジング12により覆うことで、それらを外部環境から保護する構造をなしている。
【0024】
2次側コイルモジュール11は、1次コイルL1から発生した磁束と鎖交することにより電流を発生する2次コイルL2と、2次コイルL2からの磁束の漏れを抑制するフェライト系の部材からなる磁性体M2とによって構成されている。2次コイルL2としては、1次コイルL1と同様に、平面コイルが用いられている。なお、本実施形態では、2次コイルL2の巻数が15ターンに設定されるとともに、その外径が35[mm]に設定されている。また、2次コイルL2と磁性体M2とを合わせた厚みが0.5[mm]程度に設定されている。
【0025】
次に、図3を参照して、本実施形態の非接触電力伝送システムの回路構成について詳述する。
図3に示すように、充電器2は、1次コイルL1に共振用コンデンサC1が並列に接続された1次側のLC回路22を備えている。1次側のLC回路22は、NチャンネルMOSトランジスタからなるスイッチング素子FET1が直列に接続された直列回路を構成しており、この直列回路が、例えば電源電圧5[V]の直流電源E1及びコンデンサC2に並列に接続されている。なお、スイッチング素子FET1は、マイクロコンピュータを中心に構成された1次側制御部23から制御電圧(ゲート電圧)が印加されることによりオン/オフ駆動される。そして、1次側制御部23からのゲート電圧に応じてスイッチング素子FET1がオン/オフされることにより、電源E1から常時供給されている直流電力によって1次コイルL1に交番電力が誘起される。すなわち、本実施形態では、1次側制御部23が、1次コイルL1への交番電力の供給を制御する送電制御手段となっている。なお、スイッチング素子FET1のオン/オフを通じて1次コイルL1から発振される交番電力の発振周波数は100kHz程度となっている。
【0026】
一方、携帯機器1は、2次コイルL2にダイオードD1が直列に接続された半波整流回路を備えている。すなわち、2次コイルL2により受電された交番電力は、ダイオードD1を通じて半波整流されることにより直流電力に変換され、この変換された直流電力が負荷としての2次電池10に供給(充電)される。
【0027】
他方、温度検出シート30は、線状サーミスタSH1〜SH5,SV1〜SV5及びサーミスタSAに抵抗R1〜R11が直列にそれぞれ接続された直列回路を備えている。線状サーミスタSH1〜SH5,SV1〜SV5及びサーミスタSAに対応するそれぞれの直列回路は、例えば電源電圧3.3[V]の直流電源E2に接続されている。なお、直流電源E2は、充電器2から取り込まれている。そして、線状サーミスタSH1〜SH5,SV1〜SV5の抵抗と各抵抗R1〜R10とにより直流電源E2の電源電圧が分圧されて、それぞれの電位が、端子A1〜A10を介して、マイクロコンピュータを中心に構成されたセンサ制御部31に取り込まれている。また、サーミスタSAと抵抗R11とによって直流電源E2の電源電圧が分圧されて、その電位が端子A11を介してセンサ制御部31に取り込まれている。なお、センサ制御部31は、温度検出シート30と充電器2とを電気的に接続する適宜の配線40を介して1次側制御部23と通信可能に接続されている。すなわち、センサ制御部31及び1次側制御部23は、配線40を介して各種信号を授受することができるようになっている。
【0028】
そして、センサ制御部31は、端子A1〜A10の電位に基づいて各線状サーミスタSH1〜SH5,SV1〜SV5の温度TH1〜TH5,TV1〜TV5を監視するとともに、端子A11の電位に基づいて温度検出シート30の周囲の環境温度TBを監視する。なお、センサ制御部31は、不揮発性メモリ31aを有しており、このメモリ31a内に、端子A1〜A10の電位と線状サーミスタSH1〜SH5,SV1〜SV5の温度との関係が例えば図4に示すようなマップとして記憶されている。センサ制御部31は、図4に示すマップを参照して、各端子A1〜A10の電位から各線状サーミスタSH1〜SH5,SV1〜SV5の温度をマップ演算する。また、センサ制御部31の不揮発性メモリ31aには、端子A11の電位と環境温度TBとの関係を示すマップ(図示略)も記憶されており、センサ制御部31は、このマップを用いて、端子A11の電位から環境温度TBをマップ演算する。そして、線状サーミスタSH1〜SH5,SV1〜SV5の温度と環境温度TBとを比較することで温度検出シート30に異常加熱が発生しているか否かを判断する。そして、温度検出シート30の異常加熱を検知した場合には、その旨を示す異常検知信号を配線40を介して1次側制御部23に送信する。このように、本実施形態では、センサ制御部31が、温度検出シート30の異常加熱を検知する異常検知手段となっている。一方、1次側制御部23は、センサ制御部31から異常検知信号が送信されると、スイッチング素子FET1のオン/オフの切り替えを停止することにより、1次コイルL1への交番電力の供給を停止する。
【0029】
次に、図5を参照して、センサ制御部31を通じて実行される、温度検出シート30の異常加熱を検知する処理について詳述する。なお、図5に示す処理は、1次コイルL1への交番電力の供給が行われている期間に所定の演算周期をもって繰り返し実行される。
【0030】
図5に示すように、この処理では、まず、先の図4に例示したマップを用いたマップ演算により、各端子A1〜A10の電位から全ての線状サーミスタSH1〜SH5,SV1〜SV5の温度TH1〜TH5,TV1〜TV5がそれぞれ検出される(ステップS1)。また、同じくマップ演算により、端子A11の電位から環境温度TBが検出される(ステップS2)。そして、続くステップS3の処理として、各線状サーミスタSH1〜SH5,SV1〜SV5の温度TH1〜TH5,TV1〜TV5から環境温度TBを減算した温度差分値ΔTH1〜ΔTH5,ΔTV1〜ΔTV5がそれぞれ演算される。また、演算された温度差分値ΔTH1〜ΔTH5,ΔTV1〜ΔTV5のいずれかが所定値Ta以上であるか否かが判断される(ステップS4)。なお、所定値Taは、上述した金属異物の異常発熱を検出することのできる値として予めの実験等を通じて求められている。ここで、温度差分値ΔTH1〜ΔTH5,ΔTV1〜ΔTV5の全てが所定値Taよりも小さい場合には(ステップS4:NO)、センサ制御部31はこの一連の処理を一旦終了する。
【0031】
一方、温度差分値ΔTH1〜ΔTH5,ΔTV1〜ΔTV5のいずれかが所定値Ta以上である場合には(ステップS4:YES)、温度検出シート30に異常加熱が発生していると判断されて、異常検知信号が1次側制御部23に送信される(ステップS5)。すなわちこの場合には、1次コイルL1への交番電力の供給が1次側制御部23によって停止される。
【0032】
次に、先の図1〜図3を参照して、本実施形態にかかる非接触電力伝送システムの動作例(作用)について説明する。なおここでは、充電器2の周囲の環境温度TBが25[℃]であるとする。また、上記所定値Taが10[℃]に設定されているとする。
【0033】
例えば先の図1に示した充電器2から携帯機器1への充電が開始されたときに、充電器2のハウジング21の上面21aのうち、1次コイルL1の上方にあたる部分に金属異物が置かれていたとする。このとき、金属異物が発熱すると、その熱によって温度検出シート30が熱せられる。ここで、本実施形態では、先の図2に示すように、温度検出シート30に線状サーミスタが格子状に配列されているため、複数の測定点に温度センサをそれぞれ配置する場合と比較すると、広い温度検出範囲を確保しつつ、温度検出素子の数を低減することができる。このため、温度検出シート30の構造を簡素化することができる。そして、金属異物の発熱によって温度検出シート30の図中に2点鎖線で示す部位Aが強く熱せられたとすると、部位Aに位置する線状サーミスタSV4の温度が例えば環境温度TBに相当する25[℃]から40[℃]まで上昇することとなる。
【0034】
一方、図3に示すように、センサ制御部31では、端子A7及び端子A11の電位に基づいて線状サーミスタSV4の温度及び環境温度TBが監視されている。そして、線状サーミスタSV4の温度が40[℃]まで上昇したときに、その温度から環境温度TB(25[℃])を減算した温度差分値が上記所定値Taよりも大きいことがセンサ制御部31によって検知されると、1次側制御部23に異常検知信号が送信される。これにより、1次コイルL1への交番電力の供給が停止されるため、金属異物の異常発熱が抑制される。
【0035】
温度検出シート30としてのこのような構成によれば、温度検出シート30から1次側制御部23に異常検知信号を送信するだけでよいため、図3に示すように、温度検出シート30と充電器2とを配線40を介して接続するだけでよい。これにより、温度検出シート30と充電器2との間の通信構造を極めて簡素化することができるため、金属異物の発熱を検知可能としつつも、非接触電力伝送システムとしての構成の簡素化を図ることができるようになる。
【0036】
以上説明したように、本実施形態にかかる非接触電力伝送システムによれば、以下のような効果が得られるようになる。
(1)温度検出シート30には、線状サーミスタSH1〜SH5,SV1〜SV5を設けることとした。また、温度検出シート30には、線状サーミスタSH1〜SH5,SV1〜SV5を通じて検出される温度に基づいて温度検出シート30の異常加熱を検知するセンサ制御部31を設けることとした。そして、センサ制御部31によって温度検出シート30の異常加熱が検知されたとき、1次コイルL1への交番電力の供給を停止することとした。これにより、広い温度検出範囲を確保しつつも、温度検出素子の数を低減することができるとともに、温度検出シート30と充電器2との間の通信構造を極めて簡素化することもできる。したがって、金属異物の発熱を検知可能としつつも、非接触電力伝送システムとしての構成の簡素化を図ることができるようになる。
【0037】
(2)線状サーミスタSH1〜SH5,SV1〜SV5やセンサ制御部31等を備える温度検出部として、シート状に形成された温度検出シート30を用いることとした。これにより、温度検出部を1次コイルL1の上面に容易に貼り付けることができるため、その取り付けが容易となる。
【0038】
(3)温度検出シート30には、線状サーミスタSH1〜SH5,SV1〜SV5を格子状に配列することとした。これにより、温度検出シート30の温度をより的確に検出することができるようになる。
【0039】
(4)温度検出シート30を1次コイルL1に貼り付けることとした。これにより、温度検出シート30と充電器2との電気的な接続を容易に行うことができるため、温度検出シート30の取り付けが容易となる。
【0040】
<第2の実施形態>
次に、本発明にかかる非接触電力伝送システムの第2の実施形態について図6〜図8を参照して説明する。なお、この第2の実施形態では、温度検出シート30を携帯機器1側に設けた点で先の第1の実施形態と異なっている。そこで本実施形態では、第1の実施形態との相違点を中心に説明し、第1の実施形態と同様の要素については同一の符号を付すことにより重複する説明を割愛する。はじめに、図6を参照して、本実施形態にかかる非接触電力伝送システムの概略構成について説明する。
【0041】
図6に示すように、本実施形態では、2次コイルL2の磁性体M2と接触する端面と反対側の端面に温度検出シート30が接着剤などにより貼り付けられている。
次に、図7を参照して、本実施形態の非接触電力伝送システムの回路構成について詳述する。なお、温度検出シート30の回路構成については、先の図3に例示した構成と同様であるため、便宜上、ここでは図示を割愛する。
【0042】
図7に示すように、充電器2では、1次側制御部23がゲート抵抗R20を介してスイッチング素子FET1にゲート電圧を印加することによって、スイッチング素子FET1のオン/オフ制御が行われる。また、1次側制御部23は、1次側のLC回路22とスイッチング素子FET1との間の接続点N1にダイオードD2を介して接続される端子B1を備えている。すなわち、端子B1には、接続点N1の電力が半波整流されて入力されるようになっており、1次側制御部23は、端子B1を通じて1次コイルL1の発振により生じる交番電力の電圧波形からその最大電圧などを取得することができるようになっている。
【0043】
一方、携帯機器1は、ダイオードD1を介して整流された直流電力の2次電池10への供給と非供給とを切り替えるスイッチング素子FET2を備えている。スイッチング素子FET2は、PチャンネルMOSトランジスタからなるものであって、マイクロコンピュータを中心に構成された2次側制御部13からゲート抵抗R21を介してゲート電圧が印加されることによりオン/オフ駆動される。なお、スイッチング素子FET2のドレイン・ソース間には抵抗R22が設けられている。また、携帯機器1は、2次コイルL2とダイオードD1とにより構成される直列回路に並列に接続される負荷調整回路14を備えている。負荷調整回路14は、抵抗R23とNチャンネルMOSトランジスタからなるスイッチング素子FET3とが直列に接続された回路として構成されている。なお、抵抗R23の抵抗値は47[mΩ]程度に設定されている。また、スイッチング素子FET3は、2次側制御部13からゲート抵抗R24を介してゲート電圧が印加されることによりオン/オフ駆動される。そして、本実施形態では、2次側制御部13によりスイッチング素子FET2がオフされたまま、スイッチング素子FET3がオン/オフされることにより、2次コイルL2に対して抵抗R23が負荷となる状態と、負荷とならない状態とに切り替えられる。これにより、2次コイルL2の受電する交番電力の振幅が変化(変調)させられる。すなわち、1次コイルの供給する電力に対する2次コイルL2の受電特性が変更されるようになる。
【0044】
ところで、2次コイルL2の受電特性の変化は、2次コイルL2の受電する交番電力の電力波形の振幅を変化させるのみならず、2次コイルL2に磁気的に結合されている1次コイルL1の交番電力の電力波形の振幅をも変化させる。すなわち、2次コイルL2での交番電力の電力波形(電圧波形)の振幅の変化に応じて1次コイルL1に誘起される交番電力の電力波形(電圧波形)の振幅も変化する。これにより、充電器2の接続点N1に生じる交番電力の電圧波形の振幅(最大電圧値)に変化が生じるようになる。
【0045】
一方、2次側制御部13には、適宜の配線41を介して温度検出シート30が接続されている。すなわち、2次側制御部13は、温度検出シート30から送信される異常検知信号を配線41を介して受信する。そして2次側制御部13は、充電器2から交番電力が伝送されている期間、スイッチング素子FET2をオン状態に維持することにより、2次電池10への給電を行う。また、この期間に異常検知信号を受信した場合には、スイッチング素子FET2をオフさせてその状態を維持したまま、スイッチング素子FET3をオン/オフさせる。これにより、2次コイルL2の受電する交番電力の振幅を変化させることで、1次コイルL1の伝送する交番電力の振幅を異常検知信号に応じて変化(変調)させる。このように、携帯機器1では、2次側制御部13、スイッチング素子FET3、及び抵抗R23によって、充電器2と無線通信を行うための無線通信手段が構成されている。
【0046】
次に、2次側制御部13による、2次コイルL2の受電する交番電力の振幅の変調態様について図8を参照して説明する。
例えば2次側制御部13が異常検知信号に基づいてスイッチング素子FET3のオン/オフの切り替えを図8(a)に示す態様にて行ったとする。このとき、スイッチング素子FET3がオフされている期間T1では、図8(b)に示すように、2次コイルL2の受電する交番電力の振幅は振幅A1aのもとに推移する。また、図8(c)に示すように、1次コイルL1の伝送する交番電力の振幅は振幅A2aのもとに推移する。これにより、図8(d)に示すように、1次コイルL1に誘起されて上記ダイオードD2により半波整流された直流電力の電圧値は電圧Vaとなる。そして、この直流電力が端子B1を介して取り込まれる1次側制御部23では、端子B1の電圧Vaが所定の閾値V0を超えたか否かの判断に基づき、充電器2から伝達された情報が論理レベル「H」あるいは論理レベル「L」のいずれであるかの判定が行われる。すなわち、期間T1においては、2次側制御部13から1次側制御部23に伝達された情報が論理レベル「H」であると判断される。なお、閾値V0は、1次コイルL1に誘起される交番電力の振幅の変化を判別することのできる値として予め実験などを通じて設定されている。
【0047】
一方、スイッチング素子FET3がオンされている期間T2では、図8(b)に示すように、2次コイルL2の受電する交番電力の振幅は振幅A1aから振幅A1bへと低下する。また、図8(c)に示すように、1次コイルL1の伝送する交番電力の振幅は振幅A2aよりも低い振幅A2bへと低下する。これにより、図8(d)に示すように、1次コイルL1に誘起されて上記ダイオードD2により半波整流された直流電力の電圧値も電圧Vaから電圧Vbへと変化する。そして、この電圧Vbが上記閾値V0よりも低いことから、1次側制御部23では、期間T2において2次側制御部13から伝達された情報が論理レベル「L」であると判定される。
【0048】
そして、1次側制御部23は、こうした方法のもとに2次側制御部13から送信された異常検知信号を復調する。そして、異常検知信号を受信すると、スイッチング素子FET1のオン/オフの切り替えを停止することにより、1次コイルL1への交番電力の供給を停止する。
【0049】
非接触電力伝送システムとしてのこのような構成によれば、温度検出シート30に異常加熱が発生したときに、その旨を携帯機器1から充電器2に伝達して、充電器2の電力伝送を停止させることができる。これにより、温度検出シート30を携帯機器1側に設けた場合であれ、充電器2と携帯機器1との間に介在する金属異物の異常発熱を抑制することが可能となる。そしてこのように、温度検出シート30を携帯機器1側に設けることが可能となれば、例えば構造上の制約により充電器2に温度検出シート30を設けることが難しい場合であっても、非接触電力伝送システムに温度検出シート30を搭載することができる。このため、利便性が向上するようになる。
【0050】
以上説明したように、本実施形態にかかる非接触電力伝送システムによっても、先の第1の実施形態による上記(1)〜(3)の効果と同等の効果、あるいはこれに準じた効果が得られるとともに、上記(4)の効果に代えて以下の効果が得られるようになる。
【0051】
(5)温度検出シート30を携帯機器1側に設けることとした。また、温度検出シート30の異常加熱が検知されたとき、その旨を温度検出シート30から携帯機器1を介して充電器2に送信することとした。これにより、例えば構造上の制約により充電器2に温度検出シート30を設けることが難しい場合であっても、携帯機器1に設けられた温度検出シート30を通じて金属異物の異常発熱を抑制することができるようになる。
【0052】
<第3の実施形態>
次に、本発明にかかる非接触電力伝送システムの第3の実施形態について図9及び図10を参照して説明する。なお、本実施形態は、温度検出シート30の構成が先の第1の実施形態と相違するが、それ以外の構成については第1の実施形態と同様である。そこで本実施形態では、第1の実施形態との相違点と中心に説明し、第1の実施形態と同様の要素については同一の符号を付すことにより重複する説明を割愛する。はじめに、図9を参照して、温度検出シート30の構成について説明する。
【0053】
図9に示すように、本実施形態の温度検出シート30は、1次コイルL1から発生する交番磁束と鎖交する受電コイルL3を備えている。この受電コイルL3は、線状サーミスタSV1と線状サーミスタSV3とにより挟まれる領域に配置されている。なお、受電コイルL3は、線状サーミスタSH1〜SH5,SV1〜SV5がパターン形成された層とは別の層に設けられており、線状サーミスタSH1〜SH5,SV1〜SV5と絶縁されている。本実施形態の温度検出シート30は、1次コイルL1から発生する交番磁束が受電コイルL3に鎖交した際に受電コイルL3に誘起される交番電力を電源電圧として利用する。
【0054】
次に、図10を参照して、温度検出シート30の回路構成について説明する。
図10に示すように、温度検出シート30では、受電コイルL3に誘起された交番電力がダイオードD3及びコンデンサC3からなる整流回路32を介して整流されることで直流電力に変換される。また、整流回路32を介して変換された直流電力は、レギュレータ33を通じて例えば電源電圧3.3[V]に安定化されて、センサ制御部31などに供給される。
【0055】
このように、本実施形態では、1次コイルL1から発生する交番磁束が受電コイルL3を鎖交した際に受電コイルL3に誘起される交番電力を温度検出シート30の電源として利用しているため、温度検出シート30に電源配線を設ける必要がない。このため、温度検出シート30の配線構造を簡素化することができるようになる。
【0056】
以上説明したように、本実施形態にかかる非接触電力伝送システムによっても、先の第1の実施形態による上記(1)〜(4)の効果と同等の効果、あるいはこれに準じた効果が得られるとともに、以下のような効果が得られるようになる。
【0057】
(6)温度検出シート30に、1次コイルL1から発生する交番磁束と鎖交する受電コイルL3を設けることとした。そして、交番磁束の鎖交により受電コイルL3に誘起される交番電力を温度検出シート30の電源として利用することとした。これにより、温度検出シート30に電源配線を設ける必要がないため、温度検出シート30の配線構造を簡素化することができるようになる。
【0058】
<第4の実施形態>
次に、本発明にかかる非接触電力伝送システムの第4の実施形態について図11及び図12を参照して説明する。なお、本実施形態は、温度検出シート30及び充電器2の回路構成が先の第3の実施形態と相違するが、それ以外の構成については第3の実施形態と同様である。そこで本実施形態では、第3の実施形態との相違点を中心に説明し、第3の実施形態と同様の要素については同一の符号を付すことにより重複する説明を割愛する。はじめに、図11を参照して、温度検出シート30の回路構成について説明する。
【0059】
図11に示すように、温度検出シート30は、1次コイルL1に誘起される交番電力の発振周波数(100[kHz])と比較して十分に高い周波数(例えば1[MHz])を有する無線電波を発振するコルピッツ発振回路34を備えている。また、温度検出シート30は、コルピッツ発振回路34の給電経路を断続させるスイッチング素子SW1を備えている。そして、スイッチング素子SW1のオン/オフの切り替えがセンサ制御部31によって制御されることにより、コルピッツ発振回路34の駆動/停止が切り替えられる。具体的には、センサ制御部31は、通常はスイッチング素子SW1をオフ状態に維持することにより、コルピッツ発振回路34からの無線電波の発振を停止するようにしている。また、センサ制御部31は、上記異常検知信号を送信する処理に代えて、スイッチング素子SW1をオンさせる処理を行うことにより、コルピッツ発振回路34からの無線電波の発振を行う。すなわち、この温度検出シート30では、線状サーミスタSH1〜SH5,SV1〜SV5の異常加熱が検知されたとき、無線電波が発振されるようになっている。
【0060】
一方、図12に示すように、充電器2は、コルピッツ発振回路34から発振される無線電波を受信する部分として、コイルL4及び共振用コンデンサC4からなる共振回路25を備えている。そして、無線電波を受信した際に共振回路25に発生する電圧は、ダイオードD4及びコンデンサC5からなる整流回路26によって整流、平滑化されて、端子B2を介して1次側制御部23に取り込まれる。すなわち、コルピッツ発振回路34から発振された電波が共振回路25を介して受信されると、端子B2の電位が所定の電圧値を示す。そして、1次側制御部23は、端子B2の電位が所定の閾値を超えているか否かの判断に基づき、温度検出シート30から送信された無線電波を受信したか否かを判定する。なお、所定の閾値は、コルピッツ発振回路34から発振される無線電波の受信の有無を判別することのできる値として予めの実験などを通じて設定されている。そして、温度検出シート30から送信された無線電波を受信したと判定した場合には、スイッチング素子FET1のオン/オフの切り替えを停止することにより、1次コイルL1への交番電力の供給を停止する。
【0061】
このように、本実施形態では、温度検出シート30から充電器2への異常通知を無線にて行うこととしているため、温度検出シート30と充電器2との間に通信用の配線を設ける必要がない。このため、非接触電力伝送システムとしての構造の簡素化を図ることができるようになる。
【0062】
以上説明したように、本実施形態にかかる非接触電力伝送システムによっても、先の第1及び3の実施形態による上記(1)〜(4)及び(6)の効果と同等の効果、あるいはこれに準じた効果が得られるとともに、以下のような効果が得られるようになる。
【0063】
(7)温度検出シート30に設けられたセンサ制御部31と充電器2に設けられた1次側制御部23とを無線通信可能に接続することとした。これにより、温度検出シート30と充電器2との間に通信用の配線を設ける必要がないため、非接触電力伝送システムとしての構造の簡素化を図ることができるようになる。
【0064】
<第5の実施形態>
次に、本発明にかかる非接触電力伝送システムの第5の実施形態について図13〜図17を参照して説明する。なお、本実施形態では、第3の実施形態との相違点を中心に説明し、第3の実施形態と同様の要素については同一の符号を付すことにより重複する説明を割愛する。はじめに、図13を参照して、非接触電力伝送システムの概略構成について説明する。
【0065】
図13に示すように、本実施形態では、充電器2のハウジング21の上面21aのうち、1次コイルL1の上方にあたる部分に、温度検出シート30を接着剤などにより貼り付けるようにしている。
【0066】
次に、図14を参照して、本実施形態の温度検出シート30の構成について説明する。
図14に示すように、本実施形態の温度検出シート30は、1次コイルL1と磁気結合する磁気結合コイルL5を備えている。この磁気結合コイルL5は、温度検出シート30の外縁に沿って配置されている。なお、磁気結合コイルL5は、線状サーミスタSH1〜SH5,SV1〜SV5がパターン形成された層とは別の層に設けられており、線状サーミスタSH1〜SH5,SV1〜SV5と絶縁されている。
【0067】
次に、図15を参照して、温度検出シート30の回路構成について説明する。
図15に示すように、磁気結合コイルL5は、その一方の端部が接地ラインに接続されるとともに、その他方の端部がスイッチング素子SW2を介して接地ラインに接続されている。そして、スイッチング素子SW2のオン/オフの切り替えがセンサ制御部31によって制御されることにより、磁気結合コイルL5の接地ラインへの短絡及び短絡の解除が行われる。具体的には、センサ制御部31は、通常はスイッチング素子SW2をオフに維持することにより、磁気結合コイルL5の短絡を解除している。また、センサ制御部31は、上記異常検知信号を送信する処理に代えて、スイッチング素子SW2をオンさせる処理を行うことにより、磁気結合コイルL5を接地ラインへ短絡させる。これにより、磁気結合コイルL5が障害物となって1次コイルL1と2次コイルL2との間の磁気結合が弱められるため、1次コイルL1から2次コイルL2に伝送される交番電力が目減りする。このとき、1次コイルL1及び2次コイルL2にそれぞれ誘起される交番電力の振幅は例えば図16に示すように変化する。すなわち、スイッチング素子SW2の切り替えが図16(c)に示すように行われたとすると、スイッチング素子SW2がオンされたとき、2次コイルL2に誘起される交番電力の振幅は、図16(a)に示すように、振幅A3aから振幅A3bに低下する。これに対し、1次コイルL1に誘起される交番電力の振幅は、図16(b)に示すように、振幅A4aから振幅A4bに増加する。
【0068】
次に、図17を参照して、充電器2の回路構成について説明する。
図17に示すように、1次側制御部23は、スイッチング素子SW1のドレイン・グランド間の電位が印加される端子B3を備えている。1次側制御部23は、端子B3の電位を監視することで、1次コイルL1に誘起される交番電力の振幅を監視する。そして、1次コイルL1に誘起される交番電力の振幅が先の図16(b)に例示したように振幅A4aから振幅A4bに変化したことを検知した場合には、温度検出シート30において異常加熱が検知されたと判定する。この場合、1次側制御部23は、スイッチング素子FET1のオン/オフの切り替えを停止することにより、1次コイルL1への交番電力の供給を停止する。
【0069】
非接触電力伝送システムとしてのこのような構成によれば、温度検出シート30と充電器2との間に通信用の配線を設けることなく、温度検出シート30から充電器2に異常を通知することができる。このため、非接触電力伝送システムとしての構造の簡素化を図ることができるようになる。
【0070】
一方、こうした非接触電力伝送システムでは、充電器2のハウジング21の上面21aに金属異物が置かれることが多い。このため、温度検出シート30を充電器2のハウジング21の上面21aに貼り付けることとすれば、ハウジング21の上面21aに置かれる金属異物の発熱を検出し易くなり、ひいては金属異物の異常発熱をより的確に抑制することができるようになる。
【0071】
以上説明したように、本実施形態にかかる非接触電力伝送システムによっても、先の第1及び第3の実施形態による上記(1)〜(4)及び(6)の効果と同等の効果、あるいはこれに準じた効果が得られるとともに、以下のような効果が得られるようになる。
【0072】
(8)温度検出シート30には、1次コイルL1と磁気結合するとともに、両端がスイッチング素子SW2を介して短絡可能とされた磁気結合コイルL5を設けることとした。また、センサ制御部31では、温度検出シート30の異常加熱を検知したとき、スイッチング素子SW2をオンさせて磁気結合コイルL5を短絡させることにより、1次コイルL1に誘起される交番電力の振幅を変化させることとした。さらに、1次側制御部23では、1次コイルL1に誘起される交番電力の振幅の変化に基づいて温度検出シート30の異常加熱を検知することとした。これにより、温度検出シート30と充電器2との間に通信用の配線を設ける必要がないため、非接触電力伝送システムとしての構造の簡素化を図ることができるようになる。
【0073】
(9)温度検出シート30を充電器2のハウジング21の上面21aに貼り付けることとした。これにより、金属異物の発熱を検出し易くなり、ひいては金属異物の異常発熱をより的確に抑制することができるようになる。
【0074】
<他の実施形態>
なお、上記各実施形態は、これを適宜変更した以下の形態にて実施することもできる。
・上記第2の実施形態では、2次コイルL2に誘起される交番電力の振幅を変調することによって2次側制御部13から1次側制御部23に異常検知信号を無線送信することとした。これに代えて、例えば携帯機器1及び充電器2にそれらの間で無線通信を行うための無線通信装置(無線通信手段)が搭載されている場合には、同無線通信装置を利用して2次側制御部13から1次側制御部23に異常検知信号を送信してもよい。また、こうした無線通信装置が携帯機器1及び充電器2に搭載されていない場合には、これを携帯機器1及び充電器2に新たに搭載してもよい。
【0075】
・上記第3の実施形態では、受電コイルL3を、温度検出シート30の線状サーミスタSV1と線状サーミスタSV3とより挟まれている領域に配置することとしたが、受電コイルL3の形状及び配置については適宜変更することが可能である。
【0076】
・上記第4の実施形態では、コルピッツ発振回路34を利用して温度検出シート30と充電器2との間で無線通信を行うこととしたが、これらの間の無線通信については適宜の無線通信装置を利用したものを採用することができる。
【0077】
・上記第4の実施形態では、温度検出シート30から送信される無線電波を受信する無線通信手段を充電器2に設けることとしたが、同無線通信手段を携帯機器1に設けてもよい。このような構成は、先の図6〜図8を参照して説明した第2の実施形態において、温度検出シート30を携帯機器1の表面に貼り付けるようにした場合に特に有効である。すなわち、このような構成を採用すれば、温度検出シート30のセンサ制御部31と、図7に例示した携帯機器1の2次側制御部13とを無線通信可能に接続することができるため、温度検出シート30と携帯機器1との間に通信用の配線構造を設ける必要がない。このため、非接触電力伝送システムとしての構造の簡素化を図ることができるようになる。
【0078】
・上記第5の実施形態では、温度検出シート30を充電器2のハウジング21の表面に貼り付けることとしたが、これに代えて、携帯機器1のハウジング12の表面に貼り付けてもよい。この場合、例えば図7に2点鎖線で示すように、2次側制御部13に、2次コイルL2に誘起される電圧が印加される端子B4を設ける。そして、2次側制御部13は、端子B4の電位を監視することで、2次コイルL2に誘起される交番電力の振幅を監視する。また、2次コイルL2に誘起される交番電力の振幅が振幅A3bに変化したことを検知した場合には、温度検出シート30において異常加熱が発生したと判定する。この場合、2次側制御部13は、スイッチング素子FET3のオン/オフの切り替えを通じて2次コイルL2に誘起される交番電力の振幅を所要に変化させることで、温度検出シート30において異常加熱が検知された旨を1次側制御部23に通知する。このような構成によれば、携帯機器1のハウジング12の表面に温度検出シート30を貼り付けることが可能となる。このため、例えば構造上の制約により充電器2の表面に温度検出シート30を貼り付けることが難しい場合であっても、携帯機器1に設けられた温度検出シート30を通じて金属異物の発熱を抑制することができるようになる。
【0079】
・上記各実施形態では、温度検出シート30に線状サーミスタSH1〜SH5,SV1〜SV5を格子状に配列することとしたが、これに代えて、例えば図18に示すように、線状サーミスタSH1〜SH5を図中のy軸方向のみに沿って並べて配列してもよい。このような構成によれば、線状サーミスタを格子状に配列する場合と比較すると、温度検出素子の数を低減することができるため、コストを低減することができるようになる。
【0080】
・上記各実施形態では、線状サーミスタSH1〜SH5,SV1〜SV5やセンサ制御部31等を備える温度検出部をシート状に形成することとしたが、同温度検出部を例えば箱状に形成するなど、温度検出部の形状を適宜変更してもよい。
【0081】
・上記各実施形態では、1次コイルL1を含んで構成される受電回路部を充電器に、また、2次コイルL2を含んで構成される送電回路部を携帯機器に搭載することとしたが、受電回路部及び送電回路部の搭載対象は、これら充電器や携帯機器に限られない。要は、1次コイルに供給した交番電力を2次コイルを介して受電するとともに、この受電した電力を負荷に供給する非接触電力伝送システムであれば、本発明の適用が可能である。
【符号の説明】
【0082】
L1…1次コイル、L2…2次コイル、L3…受電コイル、L5…磁気結合コイル、SW2…スイッチング素子、SH1〜SH5,SV1〜SV5…線状サーミスタ(温度検出素子)、12,21…ハウジング、14…負荷調整回路(無線通信手段)、30…温度検出シート(温度検出部)、31…センサ制御部(異常検知手段)、23…1次側制御部(送電制御手段)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交番電力の供給により1次コイルから発生する交番磁束を2次コイルに鎖交させることにより前記1次コイルに供給した交番電力を前記2次コイルを介して受電し、この受電した受電電力を負荷に供給する非接触電力伝送システムであって、
前記1次コイルと前記2次コイルとの間に配置されるとともに、線状に伸びる温度検出素子が設けられた温度検出部と、
同温度検出部に設けられて、前記温度検出素子を通じて検出される温度に基づいて前記温度検出部の異常加熱を検知する異常検知手段と、
同異常検知手段を通じて前記温度検出部の異常加熱が検知されることに基づいて前記1次コイルへの交番電力の供給を停止する送電制御手段と
を備えることを特徴とする非接触電力伝送システム。
【請求項2】
前記温度検出部がシート状に形成されてなる
請求項1に記載の非接触電力伝送システム。
【請求項3】
前記温度検出部には、前記温度検出素子が格子状に配列されている
請求項1又は2に記載の非接触電力伝送システム。
【請求項4】
前記温度検出部には、前記1次コイルから発生する交番磁束と鎖交する受電コイルが設けられ、前記温度検出部は、前記交番磁束の鎖交により前記受電コイルに誘起される交番電力を電源として利用するものである
請求項1〜3のいずれか一項に記載の非接触電力伝送システム。
【請求項5】
前記温度検出部が、前記1次コイルに設けられている
請求項1〜4のいずれか一項に記載の非接触電力伝送システム。
【請求項6】
前記温度検出部が、前記1次コイルの外周を覆うハウジングの表面に設けられている
請求項1〜4のいずれか一項に記載の非接触電力伝送システム。
【請求項7】
前記温度検出部が、前記2次コイルに設けられている
請求項1〜4のいずれか一項に記載の非接触電力伝送システム。
【請求項8】
前記温度検出部が、前記2次コイルの外周を覆うハウジングの表面に設けられている
請求項1〜4のいずれか一項に記載の非接触電力伝送システム。
【請求項9】
前記異常検知手段は、前記送電制御手段と無線通信可能に接続されてなる
請求項1〜8のいずれか一項に記載の非接触電力伝送システム。
【請求項10】
前記温度検出部には、前記1次コイルと磁気結合する磁気結合コイルと、同磁気結合コイルの両端を短絡させるスイッチング素子とが設けられ、
前記異常検知手段は、前記温度検出部の異常加熱を検知したとき、前記スイッチング素子を通じて前記磁気結合コイルの両端を短絡させることにより前記1次コイルに発生する交番電力の振幅を変化させ、
前記送電制御手段は、前記1次コイルに発生する交番電力の振幅の変化に基づいて前記温度検出部の異常加熱を検知する
請求項1〜8のいずれか一項に記載の非接触電力伝送システム。
【請求項11】
前記2次コイルを搭載した機器には、前記送電制御手段と無線通信を行うことが可能な無線通信手段が設けられ、
前記異常検知手段は、前記無線通信手段と通信可能に接続されて、前記温度検出部の異常加熱を検知したとき、その旨を前記無線通信手段を介して前記送電制御手段に無線送信する
請求項7又は8に記載の非接触電力伝送システム。
【請求項12】
前記異常検知手段は、前記無線通信手段と無線通信可能に接続されてなる
請求項11に記載の非接触電力伝送システム。
【請求項13】
前記温度検出部には、前記2次コイルと結合する磁気結合コイルと、同磁気結合コイルの両端を短絡させるスイッチング素子とが設けられ、
前記異常検知手段は、前記温度検出部の異常加熱を検知したとき、前記スイッチング素子を通じて前記磁気結合コイルの両端を短絡させることにより前記2次コイルに発生する交番電力の振幅を変化させ、
前記送電制御手段は、前記2次コイルに発生する交番電力の振幅の変化に基づいて前記温度検出部の異常加熱を検知する
請求項11に記載の非接触電力伝送システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2013−5682(P2013−5682A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−137358(P2011−137358)
【出願日】平成23年6月21日(2011.6.21)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】