説明

非接触ICカードの製造方法

【課題】表面側基材および裏面側基材が枚葉状に断裁されている場合においても、高品質の非接触ICカードを製造することができる非接触ICカードの製造方法を提供する。
【解決手段】本発明による非接触ICカード1の製造方法において、まず、表面側基材2と裏面側基材5との間に、インレットシート8を介在させたICカード積層体12が作製される。次に、ICカード積層体12のうち、表面側基材2と裏面側基材5の前方端縁近傍2a、5aおよび両側端縁近傍2b、5bを仮接合するとともに、インレットシート8と表面側基材2との間の前方端縁近傍2aもしくは両側端縁近傍2b、またはインレットシート8と裏面側基材5との間の前方端縁近傍5aもしくは両側端縁近傍5bを仮接合手段24を用いて仮接合される。その後、表面側基材2および裏面側基材5とインレットシート8とを接着させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ICチップがアンテナとして機能する導電体に接続されて構成されるインレットシートを有する非接触ICカードを、高品質に製造することができる非接触ICカードの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、リーダ・ライタ等の外部装置と非接触で通信する非接触ICカードが普及しつつある。非接触ICカードの需要は、今後、急速な勢いで拡大していくものと予想されており、これにともなって、高品質の非接触ICカードを低コストで製造することが強く望まれている。
【0003】
非接触ICカードは、第1基材と、第1基材の一方の面に設けられた第1接着剤層とを含む表面側基材と、第2基材と、第2基材の一方の面に設けられた第2接着剤層とを含む裏面側基材とを備えている。また、表面側基材と裏面側基材間に、インレット用基材と、インレット用基材上に設けられたICチップと、ICチップに対応して設けられたアンテナとを含むインレットシートが設けられている(例えば、特許文献1参照)。このような構成からなる非接触ICカードにおいて、表面側基材の第1基材および裏面側基材の第2基材が所謂枚葉状に各々断裁され、かつ各々印刷されている場合、第1基材および第2基材に施された印刷を合わせるために、表面側基材と裏面側基材とインレットシートとを精確に位置合わせし、ラミネートする必要がある。
【0004】
ここで、表面側基材と裏面側基材とインレット用シートとを位置合わせしてラミネートする場合、図8に示すように、まず、表面側基材42の第1基材43に形成された十字形状のアライメントマーク50と、裏面側基材45の第2基材46に形成された十字形状のアライメントマーク51と、インレットシート48のインレット用基材49に形成された丸形状のアライメントマーク52を用いて位置合わせが行われる。その後、第1基材43に形成されたアライメントマーク50近辺において、超音波ウェルダー53により30〜250mm間隔で仮接合が施される。
【特許文献1】特開2003−162697号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような方法により表面側基材と裏面側基材とインレットシートとをラミネートして加熱ローラにより加熱する場合、表面側基材とインレットシートとの間または裏面側基材とインレットシートとの間から、仮接合される箇所が比較的少ないため、加熱されて溶融した接着剤が外方に流れ出すことがある。この場合、流れ出した接着剤が加熱ローラに付着し、表面側基材または裏面側基材を汚染させるという問題がある。
【0006】
また、上述したように加熱ローラにより加熱する際、非接触ICカードに歪みが生じることがある。これは、表面側基材の厚みと裏面側基材の厚みの違いによる熱収縮率が異なること、仮接合する際に残留応力が生じていること、加熱ロールから押付力を受けることが原因と考えられる。この場合、断裁して得られる非接触ICカードに反りが発生するという問題がある。
【0007】
さらに、上述したように歪みが生じた場合、表面側基材とインレットシートとの間もしくは裏面側基材とインレットシートとの間に空気が入り込むこともある。この場合、非接触ICカードの表面および裏面に凹凸が生じ、表面および裏面を平坦にさせることが困難になる。
【0008】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、表面側基材および裏面側基材が枚葉状に断裁されている場合に、表面および裏面が接着剤により汚されることを防止するとともに、表面および裏面が平坦となる高品質の非接触ICカードを製造することができる非接触ICカードの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、非接触ICカードの製造方法において、第1基材と、第1基材の一方の面に流動性ホットメルトを塗布して形成された第1ホットメルト層とを含む表面側基材を準備する工程と、第2基材と、第2基材の一方の面に流動性ホットメルトを塗布して形成された第2ホットメルト層とを含む裏面側基材を準備する工程と、インレット用基材と、インレット用基材上に設けられたICチップと、ICチップに対応して設けられたアンテナとを含むインレットシートを準備する工程と、表面側基材の第1ホットメルト層と、裏面側基材の第2ホットメルト層を乾燥して固化する工程と、表面側基材と裏面側基材間にインレットシートを介在させたICカード積層体を作製する工程と、ICカード積層体のうち、表面側基材と裏面側基材の前方端縁近傍および両側端縁近傍を仮接合するとともに、インレットシートと表面側基材との間の前方端縁近傍もしくは両側端縁近傍、またはインレットシートと裏面側基材との間の前方端縁近傍もしくは両側端縁近傍を仮接合手段を用いて仮接合する工程と、少なくとも一対の加熱ローラ間において、仮接合されたICカード積層体を搬送させて、第1ホットメルト層および第2ホットメルト層を溶融させて、表面側基材とインレットシートとを接着させるとともに、裏面側基材とインレットシートとを接着させる工程と、を備えたことを特徴とする非接触ICカードの製造方法である。
【0010】
本発明は、インレットシートは、インレット用基材と、インレット用基材上に設けられた複数のICチップと、各ICチップに対応して設けられたアンテナとを有し、表面側基材とインレットシートとが接着し、かつ裏面側基材とインレットシートとが接着した後、ICカード積層体をICチップおよびアンテナ毎に断裁して非接触ICカードを得る工程を更に備えたことを特徴とする非接触ICカードの製造方法である。
【0011】
本発明は、仮接合手段は、超音波ウェルダー、熱圧着機、接着材塗布機、または粘着材塗布機からなり、超音波ウェルダー、熱圧着機、接着材塗布機、または粘着材塗布機は、ICカード積層体のうち断裁されて得られる非接触ICカード以外の領域に施されることを特徴とする非接触ICカードの製造方法である。
【0012】
本発明は、仮接合手段は、超音波ウェルダーからなり、この超音波ウェルダーは、複数のヘッドを含むことを特徴とする非接触ICカードの製造方法である。
【0013】
本発明は、第1ホットメルト層は、第1基材の一方の面に、第1基材の前方端縁および両側端縁の内側に所定の帯状マージンを各々残して形成されるとともに、第2ホットメルト層は、第2基材の一方の面に、第2基材の前方端縁および両側端縁から内側に所定の帯状マージンを各々残して形成されることを特徴とする非接触ICカードの製造方法である。
【0014】
本発明は、仮接合する工程において、仮接合手段によりICカード積層体の複数箇所に仮接合が行われて複数の仮接合部が形成され、各仮接合部間の距離は、1〜20mmであることを特徴とする非接触ICカードの製造方法である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、表面側基材と裏面側基材との間にインレットシートを介在させたICカード積層体を作製し、このICカード積層体のうち、表面側基材と裏面側基材の前方端縁近傍および両側端縁近傍を仮接合するとともに、インレットシートと表面側基材との間の前方端縁近傍もしくは両側端縁近傍、またはインレットシートと裏面側基材との間の前方端縁近傍もしくは両側端縁近傍を仮接合手段を用いて仮接合される。その後、少なくとも一対の加熱ローラ間において、仮接合されたICカード積層体を搬送させて、表面側基材とインレットシートとを接着させるとともに、裏面側基材とインレットシートとを接着させて、非接触ICカードが得られる。このように、ICカード積層体を仮接合する際、表面側基材および裏面側基材の前方端縁近傍および両側端縁近傍が仮接合されるため、ICカード積層体の強度を増大させることができる。このことにより、仮接合されたICカード積層体を加熱ローラにより加熱する場合に、ICカード積層体が歪むことを抑制することができる。このため、非接触ICカードが反ることを抑制して、非接触ICカードの表面および裏面を平坦状に形成し、高品質の非接触ICカードを製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
第1の実施の形態
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。ここで、図1乃至図5は、本発明による非接触ICカードの製造方法の第1の実施の形態を示す図である。このうち、図1は、本発明の第1の実施の形態における製造方法によって製造される非接触ICカードの断面構成を示す図であり、図2は、本発明の第1の実施の形態における製造方法によって製造される非接触ICカードのインレットシートの一例を示す斜視図であり、図3は、本発明の第1の実施の形態における非接触ICカードの製造方法および製造装置を示す概略図である。また、図4は、本発明の第1の実施の形態における非接触ICカードの製造方法において作製されるICカード積層体を示す斜視図であり、図5は、本発明の第1の実施の形態における非接触ICカードの製造方法において、ICカード積層体を作製する方法を説明する図である。
【0017】
まず、図1および図2により、本発明における製造方法によって製造される非接触ICカードについて説明する。ここで、非接触ICカードは、リーダ・ライタ等の外部装置と非接触で通信することができるものである。
【0018】
図1に示すように、非接触ICカード1は、第1基材3と、第1基材3の一方の面に流動性ホットメルト14(図3参照)を塗布して形成された第1ホットメルト層4とを含む表面側基材2と、第2基材6と、第2基材6の一方の面に流動性ホットメルト14を塗布して形成された第2ホットメルト層7とを含む裏面側基材5とを備えている。また、図1、図2、および図4に示すように、表面側基材2と裏面側基材5間に、インレット用基材9と、インレット用基材9上に設けられた複数のICチップ11と、各ICチップ11に対応して設けられたアンテナ10とを含むインレットシート8が設けられている。
【0019】
図2に示すように、ICチップ11は直方体状に形成され、ICチップ11の厚さは、例えば150μmから300μmとなっている。また、ICチップ11は、情報を記録するためのメモリを含み、外部装置(リーダ・ライタ等)により、アンテナ10を介してICチップ11に記録された情報を読み出したり、アンテナ10を介してICチップ11に新たな情報を書き込んだりすることができるようになっている。そして、非接触ICカード1のこのような機能を発現するための回路配線がICチップ11に書き込まれている。
【0020】
また、図2に示すように、アンテナ10は、インレット用基材9上で略コイル状に形成され、ICチップ11と電気的に接続されている。なお、本実施の形態においては、アンテナ10が略コイル状に形成された例を示したが、これに限定されるものではない。
【0021】
また、アンテナ10は、例えば、スクリーン印刷機を用いて導電性インキをインレット用基材9上に塗布することにより、あるいはインレット用基材9上に銅やアルミニウム等からなる導電性箔を打ち抜き転写することにより、あるいはインレット用基材9上に積層された銅やアルミニウム等からなる導電性箔にエッチングを施して所望の形状にパターニングすること等により、インレット用基材9上に形成することができる。
【0022】
また、表面側基材2の第1基材3、裏面側基材5の第2基材6、およびインレットシート8のインレット用基材9は、PETフィルムや紙等からなっている。
【0023】
また、第1ホットメルト層4および第2ホットメルト層7は、いずれもインレットシート8のICチップ11の厚さよりも各々厚く形成されている。また、第1ホットメルト層4および第2ホットメルト層7を各々形成する流動性ホットメルト14は、湿気硬化型ウレタン樹脂からなっている。
【0024】
次に、図3により、非接触ICカード1の製造装置20について説明する。非接触ICカード1の製造装置20は、表面側基材2の第1基材3の一方の面に、流動性ホットメルト14を塗布する第1接着剤塗布手段21と、裏面側基材5の第2基材6の一方の面に、流動性ホットメルト14を塗布する第2接着剤塗布手段22とを有している。また、非接触ICカード1の製造装置20は、第1接着剤塗布手段21と第2接着剤塗布手段22の下流側に配置され、表面側基材2と裏面側基材5間にインレットシート8を介在させたICカード積層体12を作製する積層手段23と、積層手段23の下流側に配置され第1ホットメルト層4および第2ホットメルト層7を部分的に接合させてICカード積層体12を仮接合する仮接合手段24とを有している。このうち、仮接合手段24は、超音波ウェルダー25からなっているが、超音波ウェルダー25に限らず、熱圧着機29、接着材塗布機30、または粘着材塗布機31を用いても良い。また、非接触ICカード1の製造装置20は、仮接合手段24の下流側に配置されるとともに、ICカード積層体12を溶融させて表面側基材2とインレットシート8とを接着させ、裏面側基材5とインレットシート8とを接着させる接着手段26を有している。このうち、接着手段26は、ICカード積層体12に対して表側および裏側に配置される一対または複数対の加熱ローラ27からなっている。さらに、非接触ICカード1の製造装置20は、接着手段26の下流側に配置され、接着されたICカード積層体12をICチップ11およびアンテナ10毎に断裁する断裁手段28を有している。
【0025】
次に、このような構成からなる本実施の形態の作用、すなわち非接触ICカード1の製造方法について説明する。
【0026】
まず、図1および図3に示すように、第1基材3と、第1基材3の一方の面に流動性ホットメルト14を塗布して形成された第1ホットメルト層4とを含む表面側基材2を準備する。この場合、まず図4に示すように、多列で多段の非接触ICカード1を作製することができる大きさであって、所定の位置に十字形状を有するアライメントマーク3c(図5参照)が形成された第1基材3を準備する。図4において、第1基材3は、3列×3段=9枚の非接触ICカード1を作製することが可能な大きさを持つ。本実施の形態においては、基材を巻いた巻取コアが回転して、1枚の帯状に延びるシート状の基材を連続的に供給する方法ではなく、所謂枚葉状の第1基材3を準備する。このことにより、小ロットの非接触ICカード1を容易に製造することができる。なお、1枚の表面側基材2に対して作製することができる非接触ICカード1の枚数は9枚に限定されるものではない。
【0027】
次に、第1接着剤塗布手段21により、第1基材3の裏面に湿気硬化型ウレタン樹脂からなる流動性ホットメルト14を塗布する。この場合、流動性ホットメルト14を塗布して形成される第1ホットメルト層4の厚さは、ICチップ11の厚さよりも厚くなるようにする。このことにより、インレットシート8が有する凹凸形状に影響を受けることなく、非接触ICカード1の表面を平坦にすることができる。また、図5に示すように、第1基材3の一方の面に塗布される流動性ホットメルト14は、第1基材3の前方端縁3aの内側に幅x(例えば、10〜20mm)で示される帯状マージン4aを残すとともに、両側端縁3bの内側に幅y(例えば、10〜50mm)で示される帯状マージン4bを各々残して塗布される。すなわち、第1ホットメルト層4は、第1基材3の前方端縁3aの内側に幅xで示される帯状マージン4aを残すとともに、第1基材3の両側端縁3bの内側に幅yで示される帯状マージン4bを各々残して形成される。このことにより、後述するように加熱ローラにより加熱する際、第1ホットメルト層4が溶融されて外方に流れ出すことを防止することができる。
【0028】
次に、図1および図3に示すように、第2基材6と、第2基材6の一方の面に流動性ホットメルト14を塗布して形成された第2ホットメルト層7とを含む裏面側基材5を準備する。この場合、まず表面側基材2と同様にして、図4に示すように、多列で多段の非接触ICカード1を作製することが可能な大きさをもつ第1基材3と略同一の大きさであって、所定の位置に十字形状を有するアライメントマーク6c(図5参照)が形成された第2基材6を準備する。
【0029】
次に、第2接着剤塗布手段22により、第2基材6の表面に湿気硬化型ウレタン樹脂からなる流動性ホットメルト14を塗布する。この場合、第1ホットメルト層4と同様に、流動性ホットメルト14を塗布して形成される第2ホットメルト層の厚さは、ICチップ11の厚さよりも厚くなるようにする。このことにより、インレットシート8が有する凹凸形状に影響を受けることなく、非接触ICカード1の裏面を平坦にすることができる。また、図5に示すように、第2基材6の一方の面に塗布される流動性ホットメルト14は、第2基材6の前方端縁6aの内側に幅x(例えば、10〜20mm)で示される帯状マージン7aを残すとともに、両側端縁6bの内側に幅y(例えば、10〜50mm)で示される帯状マージン7bを各々残して塗布される。すなわち、第2ホットメルト層7は、第2基材6の前方端縁6aの内側に幅xで示される帯状マージン7aを残すとともに、第2基材6の両側端縁6bの内側に幅yで示される帯状マージン7bを各々残して形成される。このことにより、後述するように加熱ローラにより加熱する際、第2ホットメルト層7が溶融されて外方に流れ出すことを防止することができる。
【0030】
次に、図2および図3に示すように、インレット用基材9と、インレット用基材9上に設けられた複数のICチップ11と、各ICチップ11に対応して設けられたアンテナ10とを含むインレットシート8を準備する。この場合、まず、図5に示すように、第1基材3および第2基材6の幅よりも短い幅を有し、所定の位置に丸形状を有するアライメントマーク9cが形成されたインレット用基材9を準備する。このインレット用基材9に形成されたアライメントマーク9cの位置は、上述した第1基材3および第2基材6に形成されたアライメントマーク3c、6cの位置に対応している。なお、インレット用基材9に形成されたアライメントマーク9cを第1基材3および第2基材6に形成されたアライメントマーク3c、6cに合わせた場合、インレット用基材9の両側端縁9bは、第1基材3および第2基材6の両側端縁3b、6bの内側に所定の幅で示される帯状マージン9dを各々残して配置される。
【0031】
次に、図2に示すように、インレット用基材9上にアンテナ10を形成する。この際、9枚の非接触ICカード1を作製することができるよう、インレット用基材9上にはアンテナ10が9箇所に形成される。インレット用基材9上にアンテナ10を形成する手段としては、導電性インキをインレット用基材9上に塗布するスクリーン印刷機、あるいはインレット用基材9上に銅やアルミニウム等からなる導電性箔を転写する転写装置、あるいはインレット用基材9上に積層された銅やアルミニウム等からなる導電性箔にエッチングを施して所望の形状にパターニングするエッチング装置等を用いることができる。これらのアンテナを形成する手段を用いれば、コイル状のアンテナを有するインレットシート8だけでなく、種々の形状を有するアンテナをインレットシート8に形成することができる。その後、インレット用基材9上に形成された各アンテナ10に対応してICチップ11を取り付け、これによりインレット用基材9上にはアンテナ10が9箇所に形成され、かつ9個のICチップ11が設けられる。
【0032】
次に、図3に示すように、表面側基材2の第1ホットメルト層4と、裏面側基材5の第2ホットメルト層7を冷却固化する。ところで、湿気硬化型ウレタン樹脂からなる流動性ホットメルト14は、常温における気中環境下に曝すもしくは急冷した場合、数秒〜数十秒でタック性が喪失されて固化する。このことにより、第1ホットメルト層4と第2ホットメルト層7を気中環境下に数秒〜数十秒曝すもしくは冷却し、第1ホットメルト層4と第2ホットメルト層7とがタック性が喪失されるまで固化させる。
【0033】
次に、図3に示すように、積層手段23により、表面側基材2と裏面側基材5間にインレットシート8を介在させたICカード積層体12を作製する。この場合、まず、例えば、表面側基材2とインレットシート8とを位置合わせする。この際、図5に示すように、表面側基材2の第1基材3に形成されたアライメントマーク3cと、インレットシート8のインレットシート用基材9に形成されたアライメントマーク9cとを合わせる。次に、裏面側基材5とインレットシート8とを位置合わせする。この際、裏面側基材5の第2基材6に形成されたアライメントマーク6cとインレットシート8のインレットシート用基材9に形成されたアライメントマーク9cとを合わせる。このことにより、表面側基材2と裏面側基材5とインレットシート8とを位置合わせすることができる。
【0034】
この間、表面側基材2の第1ホットメルト層4はタック性が喪失されているため、表面側基材2とインレットシート8とが接触しても接合されない。このことにより、表面側基材2とインレットシート8とを位置合わせしながら容易かつ精確にICカード積層体12を作製することができる。同様に、裏面側基材5の第2ホットメルト層7もタック性が喪失されているため、裏面側基材5とインレットシート8とが接触しても接合されない。このことにより、裏面側基材5とインレットシート8とを位置合わせしながら容易かつ精確にICカード積層体12を作製することができる。ところで、図1に示すように、インレット用基材9上に配置されたICチップ11およびアンテナ10は、表面側基材2側に向いているが、裏面側基材5側に向けても良い。
【0035】
また、この場合、上述したように、インレット用基材9の両側端縁9bは、第1基材3および第2基材6の両側端縁3b、6bの内側に所定の幅で示される帯状マージン9dを各々残して配置されている。このことにより、表面側基材2の両側端縁近傍2bと裏面側基材5の両側端縁近傍5bとの間に、インレットシート8の両側端縁近傍(図示せず)が介在されることがなく、表面側基材2の前方端縁近傍2aと裏面側基材5の前方端縁近傍5aとの間に、インレットシート8の前方端縁近傍8aを介在させて、ICカード積層体12が作製される。
【0036】
次に、図3および図5に示すように、超音波ウェルダー25を用いて、ICカード積層体12のうち、インレットシート8と表面側基材2と裏面側基材5との間の前方端縁近傍8a、2a、5aが仮接合されるとともに、表面側基材2と裏面側基材5の両側端縁近傍5a、5bが仮接合される。この場合、まず、断裁されて得られる非接触ICカード1以外の領域であって、インレットシート8と表面側基材2と裏面側基材5の前方端縁近傍8a、2a、5aが、1〜20mm間隔で複数箇所仮接合され、複数の仮接合部13が、各接合部13間の距離が1〜20mmとなるように形成される。次に、断裁されて得られる非接触ICカード1以外の領域であって、表面側基材2と裏面側基材5の両側端縁近傍2b、5bが、1〜20mm間隔で複数箇所仮接合され、複数の仮接合部13が、各接合部13間の距離が1〜20mmとなるように形成される。このようにして、断裁されて得られる非接触ICカード1以外の領域に仮接合部13が形成されるため、非接触ICカード1の表面および裏面に、仮接合部13を原因とした凹凸を生じさせることなく、ICカード積層体12を仮接合することができる。
【0037】
次に、図3に示すように、接着手段26を構成する一対または複数対の加熱ローラ27間において、仮接合されたICカード積層体12を搬送させて、第1ホットメルト層4および第2ホットメルト層7を溶融させて、表面側基材2とインレットシート8とを接着させるとともに、裏面側基材5とインレットシート8とを接着させる。本実施の形態においては、前述したように、第1ホットメルト層4および第2ホットメルト層7は、タック性が喪失された状態にある。このため、一対または複数対の加熱ローラ27により加熱されるまでは、表面側基材2および裏面側基材5とインレットシート8が粘着されることはない。このことにより、第1ホットメルト層4および第2ホットメルト層7は、ICカード積層体12の前方から後方に向けて順次溶融され、表面側基材2および裏面側基材5とインレットシート8とは順次接着されていく。この間、表面側基材2および裏面側基材5と、インレットシート8との間に介在する空気は、後方に抜けていく。このため、表面側基材2および裏面側基材5と、インレットシート8との間に、空気層が形成されることを確実に防止することができる。
【0038】
また、この間、表面側基材2および裏面側基材5の両側端縁近傍2b、5bにおいて1〜20mm間隔で複数の仮接合部13が形成されている。このことにより、加熱ローラ27により加熱された第1ホットメルト層4および第2ホットメルト層7が溶融されて、ICカード積層体12の外方へ流れ出すことを確実に防止することができる。
【0039】
ここで、上述したように、インレットシート8は、その前方端縁近傍8aのみが表面側基材2および裏面側基材5に仮接合される。ところで、インレットシート8の前方端縁近傍8aだけではなく、その両側端縁近傍が表面側基材2の両側端縁近傍2bおよび裏面側基材5の両側端縁近傍5bにも仮接合した場合、このICカード積層体12を加熱ローラ27により加熱すると、インレットシート8が表面側基材2および裏面側基材5に対して強固に仮接合されているため、第1ホットメルト層4および第2ホットメルト層7が溶融されて後方に順次送られる流れを妨げることが考えられる。この場合、ICカード積層体12に歪みが生じる。このため、インレットシート8の両側端縁近傍は仮接合させることなく、前方端縁近傍8aだけを仮接合することにより、インレットシート8が表面側基材2および裏面側基材5に対して過度に仮接合されることを避けて、ICカード積層体12に歪みが生じることを防止することができる。
【0040】
次に、図3に示すように、ICカード積層体12を冷却加圧保持して、第1ホットメルト層4および第2ホットメルト層7を硬化させる。この場合、湿気硬化型ウレタン樹脂からなる流動性ホットメルト14は、溶融した後、気中の湿気を吸収することにより架橋反応して硬化する。このことにより、ICカード積層体12を冷却加圧状態において5日間程度放置して、第1ホットメルト層4および第2ホットメルト層7を硬化させることができる。このため、非接触ICカード1の使用中に、非接触ICカードを高温状態においても、非接触ICカード1が軟化することがない。
【0041】
次に、図3に示すように、第1ホットメルト層4および第2ホットメルト層7が完全に硬化した後、ICカード積層体12をICチップ11およびアンテナ10毎に断裁手段28により断裁する。以上のようにして、個々の非接触ICカード1を得ることができる。
【0042】
このように本実施の形態によれば、ICカード積層体12のうち、インレットシート8と表面側基材2と裏面側基材5との間の前方端縁近傍8a、2a、5aが複数箇所において仮接合されるとともに、表面側基材2と裏面側基材5の両側端縁近傍5a、5bが複数箇所において仮接合される。このことにより、ICカード積層体12の強度を増大させることができる。このため、表面側基材2および裏面側基材5の厚み違いによる熱収縮率が異なること、仮接合する際に残留応力が生じていること、加熱ローラ27から押付力を受けることにより歪みが発生することを抑制することができる。このため、ICカード積層体12を断裁して得られる非接触ICカード1が反ることを確実に抑制することができる。
【0043】
また、本実施の形態によれば、上述したように歪みが発生することを防止するとともに、タック性が喪失された第1ホットメルト層4および第2ホットメルト層7を前方から順次溶融させて接着させている。このことにより、表面側基材2とインレットシート8との間、または裏面側基材5とインレットシート8との間に空気が介在することを抑制することができる。このため、非接触ICカード1の表面および裏面を確実に平坦にすることができる。
【0044】
なお、本実施の形態においては、インレットシート8と表面側基材2と裏面側基材5の前方端縁近傍8a、2a、5aを仮接合している。しかしながら、このことに限られることはなく、インレットシート8の前方端縁近傍8aは、表面側基材2の前方端縁近傍2aおよび裏面側基材5の前方端縁近傍5aうちのいずれかの前方端縁近傍と仮接合するだけでもよい。
【0045】
また、本実施の形態においては、ICカード積層体12のうち、インレットシート8と表面側基材2と裏面側基材5との間の前方端縁近傍8a、2a、5aを仮接合するとともに、表面側基材2と裏面側基材5の両側端縁近傍5a、5bを仮接合している。しかしながら、このことに限られることはなく、ICカード積層体12のうち、インレットシート8と表面側基材2と裏面側基材5との間の両側端縁近傍8b、2b、5bを仮接合するとともに、表面側基材2と裏面側基材5の前方端縁近傍2a、5aを仮接合してもよい。また、この場合、インレットシート8の両側端縁近傍(図示せず)は、表面側基材2の両側端縁近傍2bおよび裏面側基材5の両側端縁近傍5bのうちのいずれか一方の両側端縁近傍と仮接合するだけでもよい。
【0046】
第2の実施の形態
次に、図6および図7により、本発明の第2の実施の形態における非接触ICカードの製造方法について説明する。ここで図6は、本発明の第2の実施の形態における非接触ICカードの製造方法において使用される超音波ウェルダーを示す図であり、図7は、本発明の第2の実施の形態における非接触ICカードの製造方法において、仮接合を施す方法を説明する図である。
【0047】
図6および図7に示す第2の実施の形態において、仮接合手段は、複数のヘッドを含む超音波ウェルダーからなる点が異なるのみであり、他の構成は、図1乃至図5に示す第1の実施の形態と略同一である。なお、図6および図7において、図1乃至図5に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0048】
図6に示すように、非接触ICカード1の製造装置20(図3参照)の仮接合手段24は、超音波ウェルダー32からなり、この超音波ウェルダー32は、複数のヘッド32aを含んでいる。なお、本実施の形態においては、超音波ウェルダー32は4つのヘッド32aを含んでいるが、このことに限られることはなく、任意の数のヘッド32aを含んでいても良い。
【0049】
図6に示す複数のヘッド32aを含む超音波ウェルダー32を用いてICカード積層体12を仮接合する場合、図7に示すように、表面側基材2の前方端縁近傍2aの幅方向に渡って、仮接合部13が複数単位で順次形成される。すなわち、複数の仮接合部13を含む複数の仮接合部集合体14が順次形成される。同様にして、表面側基材2および裏面側基材5の両側端縁近傍2b、5bの長手方向に渡って、複数の仮接合部13を含む複数の仮接合部集合体14が順次形成される。
【0050】
このように本実施の形態によれば、複数のヘッド32aを含む超音波ウェルダー32を用いて、ICカード積層体12に複数の仮接合部13を含む複数の仮接合部集合体14を順次形成させることができる。このため、ICカード積層体12に複数の仮接合部13を効率良く形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】図1は、本発明の第1の実施の形態における製造方法によって製造される非接触ICカードの断面構成を示す図。
【図2】図2は、本発明の第1の実施の形態における製造方法によって製造される非接触ICカードのインレットシートの一例を示す斜視図。
【図3】図3は、本発明の第1の実施の形態における非接触ICカードの製造方法および製造装置を示す概略図。
【図4】図4は、本発明の第1の実施の形態における非接触ICカードの製造方法において作製されるICカード積層体を示す斜視図。
【図5】図5は、本発明の第1の実施の形態における非接触ICカードの製造方法において、ICカード積層体を作製する方法を説明する図。
【図6】図6は、本発明の第2の実施の形態における非接触ICカードの製造方法において使用される超音波ウェルダーを示す図。
【図7】図7は、本発明の第2の実施の形態における非接触ICカードの製造方法において、仮接合を施す方法を説明する図。
【図8】図8は、従来のICカード積層体を仮接合する方法を説明する図。
【符号の説明】
【0052】
1 非接触ICカード
2 表面側基材
2a 前方端縁近傍
2b 両側端縁近傍
3 第1基材
3a 前方端縁
3b 両側端縁
3c アライメントマーク
4 第1ホットメルト層
4a 帯状マージン
4b 帯状マージン
5 裏面側基材
5a 前方端縁近傍
5b 両側端縁近傍
6 第2基材
6a 前方端縁
6b 両側端縁
6c アライメントマーク
7 第2ホットメルト層
7a 帯状マージン
7b 帯状マージン
8 インレットシート
8a 前方端縁近傍
9 インレット用基材
9a 前方端縁
9b 両側端縁
9d 帯状マージン
9c アライメントマーク
10 アンテナ
11 ICチップ
12 ICカード積層体
13 仮接合部
14 仮接合部集合体
20 製造装置
21 第1接着剤塗布手段
22 第2接着剤塗布手段
23 積層手段
24 仮接合手段
25 超音波ウェルダー
26 接着手段
27 加熱ローラ
28 断裁手段
29 熱圧着機
30 接着材塗布機
31 粘着材塗布機
32 超音波ウェルダー
32a ヘッド
42 表面側基材
43 第1基材
45 裏面側基材
46 第2基材
48 インレットシート
49 インレット用基材
50 アライメントマーク
51 アライメントマーク
52 アライメントマーク
53 超音波ウェルダー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非接触ICカードの製造方法において、
第1基材と、第1基材の一方の面に流動性ホットメルトを塗布して形成された第1ホットメルト層とを含む表面側基材を準備する工程と、
第2基材と、第2基材の一方の面に流動性ホットメルトを塗布して形成された第2ホットメルト層とを含む裏面側基材を準備する工程と、
インレット用基材と、インレット用基材上に設けられたICチップと、ICチップに対応して設けられたアンテナとを含むインレットシートを準備する工程と、
表面側基材の第1ホットメルト層と、裏面側基材の第2ホットメルト層を乾燥して固化する工程と、
表面側基材と裏面側基材間にインレットシートを介在させたICカード積層体を作製する工程と、
ICカード積層体のうち、表面側基材と裏面側基材の前方端縁近傍および両側端縁近傍を仮接合するとともに、インレットシートと表面側基材との間の前方端縁近傍もしくは両側端縁近傍、またはインレットシートと裏面側基材との間の前方端縁近傍もしくは両側端縁近傍を仮接合手段を用いて仮接合する工程と、
少なくとも一対の加熱ローラ間において、仮接合されたICカード積層体を搬送させて、第1ホットメルト層および第2ホットメルト層を溶融させて、表面側基材とインレットシートとを接着させるとともに、裏面側基材とインレットシートとを接着させる工程と、を備えたことを特徴とする非接触ICカードの製造方法。
【請求項2】
インレットシートは、インレット用基材と、インレット用基材上に設けられた複数のICチップと、各ICチップに対応して設けられたアンテナとを有し、
表面側基材とインレットシートとが接着し、かつ裏面側基材とインレットシートとが接着した後、ICカード積層体をICチップおよびアンテナ毎に断裁して非接触ICカードを得る工程を更に備えたことを特徴とする請求項1に記載の非接触ICカードの製造方法。
【請求項3】
仮接合手段は、超音波ウェルダー、熱圧着機、接着材塗布機、または粘着材塗布機からなり、超音波ウェルダー、熱圧着機、接着材塗布機、または粘着材塗布機は、ICカード積層体のうち断裁されて得られる非接触ICカード以外の領域に施されることを特徴とする請求項2に記載の非接触ICカードの製造方法。
【請求項4】
仮接合手段は、超音波ウェルダーからなり、この超音波ウェルダーは、複数のヘッドを含むことを特徴とする請求項3に記載の非接触ICカードの製造方法。
【請求項5】
第1ホットメルト層は、第1基材の一方の面に、第1基材の前方端縁および両側端縁の内側に所定の帯状マージンを各々残して形成されるとともに、
第2ホットメルト層は、第2基材の一方の面に、第2基材の前方端縁および両側端縁の内側に所定の帯状マージンを各々残して形成されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の非接触ICカードの製造方法。
【請求項6】
仮接合する工程において、仮接合手段によりICカード積層体の複数箇所に仮接合が行われて複数の仮接合部が形成され、各仮接合部間の距離は、1〜20mmであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の非接触ICカードの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−20717(P2010−20717A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−183055(P2008−183055)
【出願日】平成20年7月14日(2008.7.14)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】