説明

非接触ICカード用インレットおよび非接触ICカード

【課題】物理強度が高く信頼性の高い非接触ICカード用インレットおよび非接触ICカードを得る。
【解決手段】四角形の補強板11の四隅にアールをつけることにより、補強板11の下に万遍なく補強板用接着剤15を回りこませることが出来るため、補強板11による補強を効率よくできる。またICチップの形状に合わせて、補強板11の形状を長方形にし、ICチップの形状に合わせて強度が弱いICチップの長手方向を補強するとともに、かつ四隅にアールをとった後も直線部を残すことにより、部品を整列しやすいようにしている。以上の構成により、信頼性が高く、生産性も高いインレットおよび非接触ICカードを提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触用ICカードに内蔵されるインレットおよび非接触用ICカードに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コイルアンテナとICチップとを内蔵し、電磁誘導により非接触で端末機器等の外部機器との間でデータの交換を行う非接触ICカードの開発が進んでいる。この非接触ICカードは、記憶容量の大きさと高度のセキュリティ機能を有するという特徴に加えて、外部機器に近づけるだけで通信が可能であるという特徴を有している。非接触ICカードにおいては、端末機器との接点を有する接触式ICカードの当該接点に起因する欠点、つまり接点のキズや汚れによる接触不良がないので信頼性が高く、また、ICカードを端末装置のスロットに挿入する手間が不要になるなど利便性が高く、非接触ICカードは、今後より広範囲な分野への普及が予想される。
【0003】
この非接触ICカードにおいては、外部に設けられた情報書き込み/読み出し装置からの電磁誘導によりコイルアンテナに情報の書き込みや読み出しに対応した誘導起電力が発生しICチップに情報の書き込みや読み出しが行われる。
【0004】
非接触ICカードは、身分証明のためのIDカードや、プリペイドカード、キャッシュカード、定期券等に用いられ、磁気カード等のカードと同様に、薄型化が求められる。一方で、非接触ICカードは、このような用途のために、携帯して用いられるものであるため、外力によってICチップに応力が働き、ICチップが破損するおそれがある。そこで、補強板を用いてICチップを保護したICカードが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
図8は、従来の補強板を用いた非接触ICカード用インレットの構造の例を示す図である。この非接触ICカードは、複数の層からなるカード基材とカード基材を構成する複数の層間に埋め込まれたインレット1とから構成されている。インレット1は、アンテナ基板13と、このアンテナ基板13上に渦巻状に形成されたコイルアンテナ12と、このコイルアンテナ12の両端に形成された接点電極17と、この接点電極17にバンプを介して搭載されたICチップ14と、ICチップ14をアンテナ基板13に接合する異方性導電材よりなる半導体用接合材と、ICチップ14の非回路面に補強板用接着剤を介して固定配置された補強板11とから構成される。補強板用接着剤は、ICチップの非回路面側からの衝撃に対して、補強板を介してICチップにかかる応力を緩衝する機能と、ICチップの回路面側からの衝撃に対して、ICチップを保持する機能を有する。このように、補強板用接着剤を介して補強板を設けることにより、薄型の非接触ICカードにおいて、衝撃からICチップを保護することができる。
【特許文献1】特開2002−74309号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、非接触ICカードは、身分証明用写真や透かし等を配置する都合上、ICチップの実装位置や補強板を配置可能な範囲は、所定の矩形領域に限られている。また、補強板について、非接触ICカードの物理強度は補強板の面積が大きいほど高いことが、点圧強度試験、鋼球落下強度試験の結果から分かっている。したがって、補強板の形状を矩形にすることにより、限られた領域において補強板の面積を最大にし、非接触ICカードの強度を最も高めることができる。
【0007】
しかしながら、補強板用接着剤を介して矩形の補強板をICチップに搭載した場合、補強板用接着剤が一様にいきわたらず、結果として、非接触ICカードの物理強度が低下するおそれがある。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、物理強度が高く信頼性の高い非接触ICカード用インレットおよび非接触ICカードを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的は下記構成により達成される。
(1)本発明の非接触ICカード用インレットは、コイルアンテナおよび電極を有するアンテナ基板と、前記電極に対して、フェースダウンで電気的に接合されたICチップと、接着剤を介して前記ICチップの回路形成面の反対側に配置される補強板と、を備え、前記補強板は、四角形の四隅に丸みをもたせた形状である。
【0010】
(2)本発明の非接触ICカード用インレットは、上記(1)の非接触ICカード用インレットにおいて、前記補強板は、長方形の四隅に丸みをもたせ、かつ、外形の少なくとも一部に直線部を有する形状であり、長手方向を前記ICチップの長手方向に一致させて配置される。
【0011】
(3)本発明の非接触ICカードは、上記(1)または(2)の非接触ICカード用インレットを内蔵する。
【発明の効果】
【0012】
上記(1)に記載の非接触ICカード用インレットによれば、補強板の面積を、限られた領域で最大限確保するとともに、補強板とICチップとの間に万遍なく接着剤をいきわたらせることが出来るため、補強板による補強が効率よくでき、物理強度が高く信頼性の高い非接触ICカード用インレットを提供することができる。
【0013】
上記(2)に記載の非接触ICカード用インレットによれば、補強板の長手方向をICチップの長手方向に一致させて配置することにより、強度が弱いICチップの長手方向を補強できる。また、補強板の直線部を利用することにより、部品を整列しやすくなる。
【0014】
上記(3)に記載の非接触ICカードによれば、物理強度が高く信頼性の高い非接触ICカードを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、添付した図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0016】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係るインレットを説明するための模式図であり、図2および図3は、補強板と接着剤の形状を示す平面図及びその断面図である。
【0017】
インレット1は、樹脂製のアンテナ基板13と、このアンテナ基板上13に1回ないし数回程度渦巻状に印刷された銀ペースト等の導電ペーストを加熱炉中で加熱硬化してなる、あるいはアルミニウムのエッチングにより形成される、導電性のコイルアンテナ12と、このコイルアンテナ12の両端に形成された接点電極17と、NCP(非導電接着剤)、ACP(異方性導電接着剤)等よりなり、高温時にも安定した接合強度を与えるアンダーフィル樹脂としての半導体用接合材16と、接点電極17にバンプ18を下向きとしてフェイスダウン方式で半導体接合材16を介してフリップチップ接続されたICチップ14と、ICチップ14の周囲を封止するモールド封止樹脂であるとともに補強板の支持用として補強板用接着剤15と、この補強板用接着剤15を介して、固定配置された金属製の補強板11とから構成される。
【0018】
以上の構成を備えた実施の形態1のインレット1において、補強板11は、四角形の四隅にアールをつけた形状(四角形の四隅に丸みをもたせた形状)であり、かつ、四角形の四辺全てに直線部を有する形状である。
【0019】
このような構成にすることによる効果を以下に説明する。図4((a)平面図、(b)断面図)に示すように、補強板用接着剤15をICチップ14上に滴下すると、補強板用接着剤15はほぼ円形に広がる。このことから、補強板を円形にすると、接着剤がICチップと補強板との間に万遍なくいきわたるため、接着剤の機能を最も発揮させ、非接触ICカードの強度を最も高めることができることを、発明者は見出した。しかし、上述したように、非接触ICカードの物理強度は、補強板の面積が大きいほど強いことがわかっており、その点で、補強板の形状は円形より四角形が望ましい。これらの両者のメリットを生かすよう、四角形の四隅にアールをつけることにより、補強板用接着剤15をICチップ14と補強板11との間に万遍なくいきわたらせ、かつ補強板11の面積を確保できる。すなわち、このような構成により、補強板11の面積を、限られた領域で最大限確保するとともに、補強板11とICチップ14との間に万遍なく接着剤をいきわたらせることが出来るため、補強板11による補強が効率よくでき、物理強度が高く信頼性の高い非接触ICカード用インレット1を提供することができる。
【0020】
図5に、補強板11を押し付けることにより補強板用接着剤15が広がる様子を示す。広がった補強板接着剤15の形状と補強板11のアールに類似性があるため、補強板用接着剤15が補強板11になじみやすくなり、補強板11の下に万遍なく補強板用接着剤15がいきわたることになる。
【0021】
また、補強板11を実装するときに、補強板11を整列させる必要があるが、そのときに、補強板11の直線部を利用して整列させることが出来る。アールの大きさ(四角形の四隅につける丸みの半径)は、補強板用接着剤15の広がりを考えると、一辺(丸みをつける前の四角形の短辺)の長さの3分の1が好適である。
【0022】
(実施の形態2)
図6は、実施の形態2に係るインレット1のICチップ14と補強板用接着剤15の形状を示す模式図である((a)平面図、(b)断面図)。ICチップ14が長方形の四隅に丸みをもたせ形状とし、補強板11の長手方向をICチップ14の長手方向に一致させて配置し、補強板用接着剤15が細長い形状に広がっている点が、実施の形態1と異なる。補強板11の長手方向をICチップ14の長手方向に一致させて配置することにより、強度が弱いICチップ14の長手方向を補強できる。
【0023】
描画方式(ノズルを絵を描くように移動させながら接着剤を滴下する方式)で滴下すると、補強板用接着剤15は、図6のように広がり、アールを持った形状となる。図7は補強板11を押し付けることにより補強板用接着剤15が広がる様子を示している。補強板用接着剤15の形状と補強板11のアールに類似性があるため、補強板用接着剤15が補強板11になじみやすくなり、補強板11の下に万遍なく補強板用接着剤15がいきわたることになる。
【0024】
アールの大きさは、補強板用接着剤15の広がりを考えると、長方形の短辺の長さの3分の1が好適である。
【0025】
(実施の形態3)
図9は実施の形態3にかかわる非接触ICカードの断面図である。非接触ICカード2は、複数の層からなるカード基材3と複数のカード基材3の層間に埋め込まれたインレット1とから構成される。カード基材3は、中間のコア層31,32、および表裏の保護層(シート)33,34を備える。中間のコア層31,32は、たとえばホットメルト接着剤で構成され、ICチップ14実装部に凹凸があっても、それら凹凸のまわりに回り込みインレット1を平らに装填することができるようにするものである。保護層33,34は、インレット1の表裏の中間コア層31,32の表面にラミネート加工されるものである。
【0026】
このようにして作成された非接触ICカード2は、インレット1が有する物理強度に優れた特徴を同様にもつ。また、アールの無い四角形と比べて直線部が少ないため、カード折り曲げ時に、補強板11の直線部でカードが破損する可能性を低くすることが出来る。
【0027】
なお、補強板の形状は、正方形、長方形のみに限らず、平行四辺形、台形等、四角形の四隅に丸みをもたせたものであればよい。
【0028】
以上説明した本発明にかかる非接触ICカード用インレットおよび非接触ICカードは、複雑な構成を必要とすることなく、物理強度が高く信頼性の高い構造を実現できるため、生産性の観点からも有用である。今後非接触ICカードが広く使われるようになると、使い方もさまざまとなり、さらに強い物理強度を要求されることになり、本発明の有用性が高まると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明は、物理強度が高く信頼性の高い非接触ICカード用インレットおよび非接触ICカードを提供することができるという効果を有し、非接触用ICカードに内蔵されるインレットおよび非接触用ICカード等に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施の形態1に係る非接触ICカード用インレットを説明するための模式図
【図2】本発明の実施の形態1に係る非接触ICカード用インレットの補強板と接着剤の形状を示す平面図
【図3】本発明の実施の形態1に係る非接触ICカード用インレットの補強板と接着剤の形状を示す断面図
【図4】本発明の実施の形態1に係る非接触ICカード用インレットにおける補強板と補強板用接着剤の配置図
【図5】本発明の実施の形態1に係る非接触ICカード用インレットの補強板用接着剤の広がり方を示す模式図
【図6】本発明の実施の形態2に係る非接触ICカード用インレットの補強板と補強板用接着剤の配置図
【図7】本発明の実施の形態2に係る非接触ICカード用インレットの補強板用接着剤の広がり方を示す模式図
【図8】従来の補強板を用いた非接触ICカード用インレットの構造の例を示す図
【図9】本発明の実施の形態3に係る非接触ICカードの断面図
【符号の説明】
【0031】
1 インレット
2 非接触ICカード
3 カード基材
11 補強板
12 コイルアンテナ
13 アンテナ基板
14 ICチップ
15 補強板用接着剤
16 半導体用接合材
17 接点電極
31,32 中間コア材
33,34 保護層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイルアンテナおよび電極を有するアンテナ基板と、
前記電極に対して、フェースダウンで電気的に接合されたICチップと、
接着剤を介して前記ICチップの回路形成面の反対側に配置される補強板と、
を備え、
前記補強板は、四角形の四隅に丸みをもたせた形状である非接触ICカード用インレット。
【請求項2】
前記補強板は、長方形の四隅に丸みをもたせ、かつ、外形の少なくとも一部に直線部を有する形状であり、長手方向を前記ICチップの長手方向に一致させて配置される請求項1記載の非接触ICカード用インレット。
【請求項3】
請求項1または2記載の非接触ICカード用インレットを内蔵した非接触ICカード。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−286953(P2007−286953A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−114419(P2006−114419)
【出願日】平成18年4月18日(2006.4.18)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】