説明

非接触ICカード用基材、非接触ICカード、および非接触ICカード用基材の製造方法

【課題】反り返しおよび厚みが厚くなり過ぎることを防止することができるとともに、ICチップとアンテナとの良好な電気的接続を確保することができる非接触ICカード用基材を提供する。
【解決手段】非接触ICカード用基材20は、非接触通信媒体30と、非接触通信媒体の両側にそれぞれ積層されたスペーサシート22と、を備えている。非接触通信媒体は、非導電性の基材シート32と、基材シート上に形成されたアンテナ34と、アンテナに接続されるとともに基材シートに固定されたICチップ42と、を有している。スペーサシートには、非接触通信媒体のICチップを受ける受け部24が形成されている。基材シートのICチップ周辺に、基材シートを貫通する切り込み50が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部装置(例えば、リーダ・ライタ)と非接触でデータの送受信を行うことができる非接触ICカード、非接触ICカードに用いられる非接触ICカード用基材、および非接触ICカード用基材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、リーダ・ライタ等の外部装置と非接触でデータの送受信を行う非接触ICカードが広く普及している。このような非接触ICカードは、通常、アンテナを形成されたシートと、アンテナに接続されるとともにシート上に固定されたICチップと、を有する非接触通信媒体(情報保持媒体)に、シート状の部材を熱圧着することにより製造される(例えば、特許文献1)。
【0003】
熱圧着を用いた製造方法を採用する場合、熱膨張による反り返りを防止するため、非接触通信媒体のシートを中心として対称となるように非接触ICカードが構成されることが重要となる。特許文献1に開示されている一般的な方法においては、非接触通信媒体の両側にスペーサシートをそれぞれ熱圧着して非接触ICカード用基材をまず製造し、その後、非接触ICカード用基材の両側に外装シート(印刷シート)をそれぞれ熱圧着してICカードが製造される。
【0004】
なお、非接触ICカードの中には、ICチップに接続された外部端子を有し、非接触状態に加えて接触状態においても、外部装置とデータの送受信を行うことができるようになっているものも存在する。このような非接触ICカードは「ハイブリッドカード」と呼ばれることもあり、上述した非接触ICカード用基材から製造され得る。本願における非接触ICカードという用語は、このような非接触状態だけでなく接触状態においても外部装置と通信可能なICカードをも含む概念であり、同様に、本願における非接触ICカード用基材という用語は、非接触状態だけでなく接触状態においても外部装置と通信可能なICカード用の基材をも含む概念である。
【特許文献1】特開2004−318606号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1において用いられている各スペーサシートには、非接触通信媒体のシート上に固定された1つのICチップを受けるための貫通孔がそれぞれ形成されている。そして、得られた非接触ICカード用基材においては、ICチップが配置されていない側のスペーサシートの貫通孔内に、ICチップの一部とシートのICチップを支持する部分が入り込んでおり、非接触通信媒体のシートを中心とした対称性を可能な限り確保し、加えて、非接触ICカードの厚みが厚くなり過ぎることを防止するようになっている。
【0006】
しかしながら、このような製造方法により得られた非接触ICカードについて本願発明者らが鋭意研究を重ねたところ、ICチップとシートに形成されたアンテナとの電気的な接続が損なわれているものが多数存在し、このような不良品の一発生原因が、ICチップが配置されていない側のスペーサシートの貫通孔内にICチップおよびシートを押し込む際におけるシートの変形にあることが見出された。
【0007】
本願発明はこのような点を考慮してなされたものであり、反り返しおよび厚みが厚くなり過ぎることを防止することができるとともに、ICチップとアンテナとの良好な電気的な接続を確保することができる非接触ICカード用基材、非接触ICカード、および非接触ICカード用基材の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による非接触ICカード用基材は、非導電性の基材シートと基材シート上に形成されたアンテナとアンテナに接続されたICチップとを有する非接触通信媒体と、非接触通信媒体の両側にそれぞれ積層されたスペーサシートであって、非接触通信媒体のICチップを受ける受け部が形成された一対のスペーサシートと、を備え、基材シートのICチップ周辺に、切り込みが形成されていることを特徴とする。
【0009】
このような非接触ICカード用基材によれば、非接触ICカード用基材の反り返しおよび厚みが厚くなり過ぎることを防止することができるとともに、ICチップとアンテナとの良好な電気的な接続を確保することができる。また、切り込みによって、基材シートのICチップを支持する部分における変形を抑制することができる。
【0010】
本発明による非接触ICカード用基材において、受け部は、スペーサシートに形成された貫通孔、またはスペーサシートに形成された凹部からなるようにしてもよい。
【0011】
また、本発明による非接触ICカード用基材において、切り込みの少なくとも一部分が受け部に対面するように切り込みが形成されているようにしてもよい。
【0012】
さらに、本発明による非接触ICカード用基材において、切り込みが、基材シートのICチップ外方にICチップの輪郭に沿って配置されているようにしてもよい。
【0013】
さらに、本発明による非接触ICカード用基材において、基材シートに複数の切り込みが形成され、複数の切り込みはICチップを少なくとも部分的に囲むように配置されているようにしてもよい。
【0014】
さらに、本発明による非接触ICカード用基材において、基材シートに、ICチップを三方から囲む切り込みが形成されているようにしてもよい。
【0015】
あるいは、基材シートに、ICチップを挟んで延びる一対の切り込みが形成されているようにしてもよい。
【0016】
あるいは、ICチップが平面視において略方形状の輪郭を有し、基材シートに、ICチップの三つの端縁の各外方にそれぞれ配置された三つの切り込みが形成されているようにしてもよい。この場合、三つの切り込みのうち中央に設けられた中央切り込みの両端部が、それぞれ、中央切り込みの両側に設けられた一対の側方切り込みの一方の端部と近接して配置されているようにしてもよい。
【0017】
本発明による非接触ICカードは、上述したいずれかの非接触ICカード用基材を備えていることを特徴とする。
【0018】
このような非接触ICカードによれば、非接触ICカードの反り返しおよび厚みが厚くなり過ぎることを防止することができるとともに、ICチップとアンテナとの良好な電気的な接続を確保することができる。また、切り込みによって、基材シートのICチップを支持する部分における変形を抑制することができる。
【0019】
本発明による非接触ICカードにおいて、非接触ICカードが、非接触ICカード用基材の両側に積層される一対の外装シートをさらに備えるようにしてもよい。
【0020】
本発明による非接触ICカード用基材の製造方法は、非導電性の基材シートと基材シート上に形成されたアンテナとアンテナに接続されたICチップとを有する非接触通信媒体であって、基材シートのICチップ周辺に切り込みが形成されている非接触通信媒体の両側に、非接触通信媒体のICチップを受ける受け部が形成された一対のスペーサシートを、受け部がICチップと対面するようにして、重ね合わせる工程と、非接触通信媒体と、非接触通信媒体の両側に重ね合わされたスペーサシートと、を加熱しながら押圧する熱圧着工程と、を備えたことを特徴とする。
【0021】
このような非接触ICカード用基材の製造方法によれば、基材シートのICチップを支持する部分における変形を抑制しながら、基材シートのICチップを支持する部分とICチップとを、非接触ICカード用基材の厚み方向に沿って移動させることができる。これにより、非接触ICカード用基材の反り返しおよび厚みが厚くなり過ぎることを防止することができるとともに、ICチップとアンテナとの良好な電気的な接続を確保することができる。また、このようにして製造された非接触ICカード用基材によれば、切り込みによって、基材シートのICチップを支持する部分における変形を抑制することができる。これにより、ICチップとアンテナとの良好な電気的な接続を維持することができる。
【0022】
本発明による非接触ICカード用基材の製造方法において、基材シートに、基材シートを貫通する切り込みであって、少なくとも一部分が受け部に対面するように配置されICチップを三方から囲む切り込みが形成されており、重ね合わせる工程あるいは熱圧着工程において、基材シートの切り込みに囲まれる部分の少なくとも一部分が、基材シートの他の部分に対し、非接触ICカード用基材の厚さ方向に沿ってずれた位置に配置されるようにしてもよい。
【0023】
また、本発明による非接触ICカード用基材の製造方法において、ICチップが平面視において略方形状の輪郭を有し、基材シートに、ICチップの三つの端縁の各外方にそれぞれ配置された基材シートを貫通する三つの切り込みが形成され、三つの切り込みのうち中央に設けられた中央切り込みの両端部は、それぞれ、中央切り込みの両側に設けられた一対の側方切り込みの一方の端部と近接して配置されており、熱圧着工程において、中央切り込みの両端部と側方切り込みの一方の端部とが接続されるように基材シートが破れ、これにより、基材シートの接続された三つの切り込みに囲まれる部分の少なくとも一部分が、基材シートの他の部分に対し、非接触ICカード用基材の厚さ方向に沿ってずれた位置に配置されるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、基材シートに形成された切り込みによって、基材シートのICチップを支持する部分における変形を抑制することができる。これにより、非接触ICカード用基材および非接触ICカードの反り返しおよび厚みが厚くなり過ぎることを防止することができるとともに、ICチップとアンテナとの良好な電気的な接続を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、図面を参照して本発明の一実施の形態について説明する。
【0026】
図1乃至図11は本発明による非接触ICカード、非接触ICカード用基材、および非接触ICカード用基材の製造方法の一実施の形態を示す図である。
【0027】
このうち図1は非接触ICカードを示す斜視図であり、図2は図1のII−II線に沿った断面図であり、図3は非接触ICカード用基材を示す上面図であり、図4は非接触通信媒体を示す斜視図であり、図5は図4のV−V線に沿った断面図であり、図6は図4のVI−VI線に沿った断面図であり、図7は非接触通信媒体の他の例を示す斜視図である。
【0028】
まず、主に図1乃至図8を用い、非接触ICカード10および非接触ICカード用基材20について説明する。
【0029】
図1乃至図8に示すように、本実施の形態における非接触ICカード用基材20は、非導電性の基材シート32と基材シート32上に形成されたアンテナ34とアンテナ34に電気的に接続される(導通する)とともに基材シート32上に設けられたICチップ42とを有する非接触通信媒体(情報保持媒体)30と、非接触通信媒体30の両側にそれぞれ積層されたスペーサシート22であって、非接触通信媒体30のICチップ42を受ける受け部24が形成された一対のスペーサシート22,22と、を備えている。また、本実施の形態における非接触ICカード10は、非接触ICカード用基材20と、非接触ICカード用基材20の両側に積層された一対の外装シート12,12と、を備えている。このような非接触ICカード10は外部装置(リーダ・ライタ等)と非接触状態で通信することができるようになっており、リーダ・ライタ等を用い、アンテナ34を介してICチップ42内に記録されたデータ(情報)を読みとる、あるいは、ICチップ42内に新たなデータ(情報)を書き込むことができる。
【0030】
このうち外装シート12は、薄板状に形成され、非導電性のPETや紙等からなっている。この外装シート12は非接触ICカード10の外表面をなし、非接触通信媒体30、とりわけ非接触通信媒体30のICチップ42を外部との接触等から保護する機能を有している。外装シート12の表面には、非接触ICカードの用途に応じ、種々の印刷が施されていることが多い。通常、外装シート12の厚さは、200〜250μm程度である。なお、非接触ICカード用基材20の両側に積層される一対の外装シート12,12は、互いに同一な構成からなっている。
【0031】
図2に示すように、本実施の形態において、外装シート12は接着剤18を介して非接触ICカード用基材20のスペーサシート22に接着固定されている。なお、用いられる接着剤18の種類は特に限定されず、例えば、エポキシ系やポリエステル系の熱可塑性樹脂からなる接着剤を用いることができる。
【0032】
次に、非接触ICカード用基材20のスペーサシート22について説明する。
【0033】
スペーサシート22は、外装シート12と同様に、薄板状に形成され、非導電性のPETや紙等からなっている。図2および図3に示すように、スペーサシート22に形成された受け部24は、スペーサシート22を貫通する貫通孔によって形成されている。通常、スペーサシート22の厚さは、100〜150μm程度である。また、本実施の形態におけるスペーサシート22は、図8から理解できるように、外装シート12と同一の外輪郭を有しているが、このような態様に特に限定されるものではない。なお、非接触通信媒体30の両側に積層される一対のスペーサシート22,22は、互いに同一な構成からなっている。
【0034】
図2に示すように、本実施の形態において、スペーサシート22は接着剤28を介して非接触通信媒体30に接着固定されている。なお、用いられる接着剤28の種類は特に限定されず、例えば、エポキシ系やポリエステル系の熱可塑性樹脂からなる接着剤を用いることができる。
【0035】
次に、非接触ICカード用基材20の非接触通信媒体30についてさらに詳述する。
【0036】
上述したように、また、図4に示されているように、非接触通信媒体30は、非導電性の基材シート32と、基材シート32上に形成されたアンテナ34と、アンテナ34に電気的に接続され(導通し)、基材シート32から突出するとともに基材シート32に対して固定されたICチップ42と、を有している。このような非接触通信媒体30は、ICタグと呼ばれることもあり、外部装置(リーダ・ライタ等)と非接触状態で通信することができる。外部装置(リーダ・ライタ等)を用いれば、アンテナ34を介してICチップ42に記録された情報を読み出したり、アンテナ34を介してICチップ42に新たな情報を書き込んだりすることができる。
【0037】
したがって、ICチップ42には、少なくとも非接触通信媒体30のこのような機能を果たすためのIC回路が書き込まれている。図3に示すように、ICチップ42は、平面視において、略方形状、さらに詳しくは略矩形状、さらに詳しくは略正方形状の輪郭を有している。また、図5に示すように、ICチップ42は、IC回路が書き込まれたICチップ本体43aと、ICチップ本体43aの基材シート32側の面から突出し、ICチップ本体43aのIC回路と電気的に接続された(導通された)一対の接続電極(バンプとも呼ぶ)43b,43bと、を有している。通常用いられているICチップ42のICチップ本体43aの厚さは200μm程度であり、接続電極43bの突出長さは20μm程度である。また、通常用いられているICチップ42(ICチップ本体43a)の一端縁の長は1mm程度である。
【0038】
一方、ICチップ42と電気的に接続されるアンテナ34は、例えば紙やPETからなる非導電性の基材シート32上に形成される。本実施の形態における基材シート32は、図8から理解できるように、外装シート12およびスペーサシート22と同一の外輪郭を有しているが、このような態様に特に限定されるものではない。
【0039】
本実施の形態における、アンテナ34は、図4に示すように、コイル状アンテナとして形成されており、ICチップ42との接続に用いられる接続部36aを含むコイル状部分36と、コイル状部分36の最内周端部36bと最外周端部36cとを電気的に接続させる(短絡させる)ためのブリッジ部材37と、を有している。このうちコイル状部分36は、例えば、スクリーン印刷機を用いて導電性インキを基材シート32上に塗布することにより、あるいは基材シート32上に銅やアルミニウム等からなる導電性箔を転写することにより、あるいは基材シート32上に積層された銅やアルミニウム等からなる導電性箔にエッチングを施して所望の形状にパターニングすること等により、基材シート32上に形成され得る。コイル状部分36の厚さは、通常、20〜50μm程度となっている。
【0040】
また、本実施の形態におけるブリッジ部材37は、図6に示すように、非導電性のブリッジ基材37bと、ブリッジ基材37b上に固定された導電性のブリッジ導電体37aと、を有している。ブリッジ導電体37aは、ブリッジ基材37bの両端から突出するように延びている。ブリッジ導電体37aの突出した両端部はコイル状部分36の最内周端部36bと最外周端部36cとに接触し、これにより、ブリッジ導電体37aを介してコイル状部分36の最内周端部36bと最外周端部36cとが電気的に接続されている(短絡されている)。また、コイル状部分36の最内周端部36bおよび最外周端部36c以外の部分はブリッジ基材37bに覆われており、ブリッジ導電体37aによって短絡されることが防止されている。このようなブリッジ部材37のブリッジ基材37bの厚さは30〜100μm程度とすることができ、また、ブリッジ導電体37aの厚さは20〜50μm程度とすることができる。
【0041】
なお、このようなブリッジ部材37の構成は、コイル状部分36への接続方法も含め、単なる例示に過ぎず、既知である種々のブリッジ部材の構成およびコイル状部分36への接続方法を採用することができる。
【0042】
図5に示すように、ICチップ42は、その接続電極43bがアンテナ34の接続部36aの端部と対面しかつ接触するようにして、基材シート32上に配置されている。また、ICチップ42は、例えばエポキシ系の熱硬化性樹脂からなる接着剤48を用いることにより、アンテナ34を介して基材シート32に対して固定されている。このような構成によって、ICチップ42がアンテナ34に電気的に接続されるとともに基材シート32に固定されている。ただし、ICチップ42とアンテナ34との間の電気的接続は、このような方法に限定されず種々の方法によって達成することができる。例えば、超音波接合による電気的接続であってもよく、あるいは導電性または異方性導電性接着剤を介した電気的接続であってもよい。
【0043】
ところで、非接触状態での通信に用いられる電磁波によっては、アンテナ34が図4乃至図6に示す例とは異なるように構成され、例えば、図7に示すように、一対の略棒状からなる導電体38によって形成されることもある。図7の例において、アンテナ34は、一対の略棒状からなる導電体38,38と、各導電体38から延び出てICチップ42との接続に用いられる接続部36aと、を有しており、いわゆるダイポールアンテナとして機能するようになっている。図7に示すアンテナ34は、上述したコイル状部分36と同様の方法で、基材シート32上に形成することができる。
【0044】
また、図3および図4によく示されているように、基材シート32には、基材シート32のICチップ42周辺に、基材シート32を貫通する切り込み50が形成されている。図3に示すように、本実施の形態において、切り込み50は、基材シート32のICチップ42の輪郭に沿ってICチップ42外方を、さらに詳しくは、略正方形状の輪郭を有するICチップ42の三つの端縁に沿ってICチップ42外方を、延びている。すなわち、切り込み50は、平面視においてコ字状形状を有し、ICチップ42を三方から囲むように配置されている。したがって、基材シート32の切り込み50に囲まれる部分32aは、その他の部分(切り込みに囲まれていない部分)32bから三方において切り離され、その他の部分32bと一方のみで連結されている。そして、図3および図4に示すように、上述したアンテナ34の接続部36aは、この連結された部分を横切って、切り込み50に囲まれた部分32aと、その他の部分32bと、の間を延びている。すなわち、本実施の形態において、平面視において方形状の輪郭を有するICチップ42の一つの端縁から、アンテナ34の一対の接続部36aが外方に延び出ている。
【0045】
また、図3に示すように、非接触通信媒体30にスペーサシート22が積層された際、両端部を除いた切り込み50の大部分が、非接触通信媒体30の受け部24に対面し、受け部24内に配置されるようになっている。したがって、ICチップ42は、受け部24内に舌状に突出する基材シート32の切り込み50に囲まれる部分32aの一部分上に支持されている。これにより、一対のスペーサシート22,22間に非接触通信媒体30が狭持された場合であっても、基材シート32の切り込み50に囲まれた部分32aのうちICチップ42を支持する部分(本実施の形態においては、基材シート32のICチップ42と対面する部分)32cはスペーサシート22によって拘束されず、切り込み50に囲まれていない部分(上述したその他の部分)32bに対し、非接触ICカード用基材20の厚さ方向(図2の紙面における上下方向)に沿って移動する(ずれる)ことができる。この結果、図2に示すように、本実施の形態における非接触ICカード用基材20においては、基材シート32の切り込み50に囲まれる部分32aのうちICチップ42を固定支持する部分32cは変形されることなく、基材シート32の切り込み50に囲まれていない部分32bに対し、非接触ICカード用基材20の厚さ方向に沿ってずれた位置に配置されている。
【0046】
このような本実施の形態においては、同一形状からなる一対のスペーサシート22,22間の略中央にICチップ42が配置され、スペーサシート22の厚さを有効に利用してICチップ42の厚みを吸収するようになっている。したがって、非接触ICカード用基材20の対称性を十分確保しつつ、非接触ICカード用基材20の厚みが厚くなり過ぎることを防止することができるようになっている。また、基材シート32のICチップ42を支持する部分32cは変形、例えば、弓状に折り曲げられていない。したがって、アンテナ34とICチップ42との間における良好な電気的な接続を確保することができる。
【0047】
次に、主に図8乃至図10を用いてこのような非接触ICカード用基材20および非接触ICカード10の製造方法について説明する。
【0048】
まず、上述した、非接触通信媒体30および一対のスペーサシート22を準備する。そして、非接触通信媒体30の両側に接着剤28を介してスペーサシート22を、受け部24がICチップ42と対面するようにして配置し(図8)、重ね合わせる。
【0049】
次に、図9に示すように、重ね合わされた非接触通信媒体30と一対のスペーサシート22,22とを、受け台62と押圧ヘッド64とを有した熱圧着機60へ載置する。その後、熱圧着機60により、非接触通信媒体30と、非接触通信媒体30の両側に接着剤28を介して重ね合わされたスペーサシート22と、を加熱しながら押圧する。
【0050】
このとき、基材シート32がある程度の剛性を有していれば、図9に示すように、ICチップ42が一方のスペーサシート22の貫通孔(受け部)24から突出している。したがって、図9に示すように、押圧ヘッド64は、まず、ICチップ42に接触し、これを受け台62に向けて押圧し始める。
【0051】
基材シート32に切り込み50が形成されていない非接触ICカード10aおよび非接触ICカード用基材20a(図20)であれば、一対のスペーサシート12,12によって狭持された基材シート32が、ICチップ42を介して基材シート32のICチップ42が配置されていない側に重ね合わされたスペーサシート22の受け部24に向けて押圧され、変形させられる。そして、図20に示すように、基材シート32の変形によってICチップ42が非接触ICカード用基材20の厚さ方向(図20の紙面における上下方向)に沿って移動させられる。この結果、基材シート32のICチップ42を支持する部分32cおよびICチップ42が、2枚のスペーサシート22,22の受け部24内に収納されるようになる。このとき、図20に示すように、受け部24内に配置された基材シート32は弓なりに曲げられる。これにともない、基材シート32上に形成されたアンテナ34の接続部36aも弓なりに曲げられる。これにより、ICチップ42の接続電極43bがアンテナ34の接続部36aから剥がれ、接続電極43bと接続部36aとの接触面積が減少する虞がある。また、ICチップ42の接続電極43bがアンテナ34の接続部36aから完全に剥がれてしまい、ICチップ42とアンテナ34との電気的接続が完全に損なわれてしまう虞すらある。
【0052】
一方、本実施の形態によれば、上述したように、基材シート32のICチップ42を固定支持する部分32cは、切り込み50によって、切り込みに囲まれていない部分32bから三方を切り離された状態で、受け部24内に舌状に突出している。したがって、一対のスペーサシート22,22間に非接触通信媒体30が狭持された場合であっても、基材シート32のうちICチップ42を支持する部分32cは、スペーサシート22によって拘束されることなく、受け部24内において厚さ方向に沿って移動することができる。そして、受け部24内に配置された基材シート32のうちのICチップ42を支持する部分32cは、ICチップ自身の剛性およびICチップ42との間に介在する接着剤48(図5)によって、受け部24内に配置された基材シート32のうちの他の部分よりも剛性(変形抵抗)が高くなっている。
【0053】
これらにより、押圧ヘッド64によってICチップ42が押し込まれると、受け部24内に配置された基材シート32のうち、ICチップ42を支持する部分32c以外の部分が変形する。したがって、基材シート32のうちICチップ42を支持する部分32cは変形することなく、ICチップ42とともに、ICチップ42が配置されていない側のスペーサシート22の受け部24内に配置されるようになる。そして、最終的には、図10に示すように、一対のスペーサシート22,22の貫通孔24内にICチップ42および基材シート32のICチップ42を支持する部分32cが、収納されるようになる。このため、この工程において、ICチップ42とアンテナ34との電気的接合が損なわれること、ましてや、ICチップ42とアンテナ34との間の接続抵抗値が増大してしまうことを防止することができる。
【0054】
このようにして、一対のスペーサシート22,22と非接触通信媒体42とが接着剤28を介して接着固定(熱圧着)され、非接触ICカード用基材20が得られる。このような非接触ICカード用基材20においては、基材シート20を中心として略対称な構成となっているため、温度上昇時(加熱時)の熱膨張および温度低下時の熱収縮に起因する反り返りが抑制される。また、ICチップ42および基材シート32のICチップ42を支持する部分32cを、スペーサシート22の受け部24内で移動させて、一対のスペーサシート22の受け部24内の略中央に収容することができるので、非接触ICカード用基材20の厚みが厚くなり過ぎることを防止することができる。
【0055】
次に、このようにして得られた非接触ICカード用基材20の両側に、接着剤18を介して一対の外装シート12,12をそれぞれ重ね合わせる。その後、非接触ICカード用基材20と外装シート12とを接着剤18を介して加熱しながら押圧し、非接触ICカード用基材20と外装シート12とを接着剤18を介して接着固定(熱圧着)する。この場合、上述した熱圧着機60と同一構成からなる熱圧着機を用いることができる。そして、必要に応じて外装シート12の表面に印刷等の処理を施すことにより、非接触ICカード10が得られる。
【0056】
得られる非接触ICカード10は、反り返しおよび厚みが厚くなり過ぎることが防止されるとともに、ICチップ42とアンテナ34との間の良好な電気的な接続が確保された非接触ICカード用基材20を用いて製造されている。この結果、得られた非接触ICタグ10においても、反り返しおよび厚みが厚くなり過ぎることが防止されるとともに、ICチップ42とアンテナ34との間の良好な電気的な接続が維持されている。
【0057】
また、基材シート32に切り込み50が形成されていない非接触ICカード10aおよび非接触ICカード用基材20aによれば、図20に示すように、基材シート32の曲がりに対する変形抵抗に起因した復元力により、ICチップ42を押し上げる力が発生する。したがって、外装シート12の表面にうねりや凹凸が生じ、外装シート12への精密な印刷等が阻害される虞がある。しかしながら、本実施の形態によれば、基材シート32に切り込み50が形成され、基材シート32のICチップ42を支持する部分32cは、基材シート32の切り込み50に囲まれていない部分32bに、限られた領域でのみしか連結されていない。したがって、基材シート32の切り込みに囲まれていない部分32bに対する基材シート32のICチップ42を支持する部分32cの変形についての変形抵抗力は格段に低下されている。このため、外装シート12の表面にうねりや凹凸が生じさせてしまうことを防止することができる。
【0058】
さらに、図11を用いて以下に説明するよう、このような非接触ICカード10および非接触ICカード用基材20においては、切り込み50によって、取扱中に生ずる基材シート32のICチップ42を支持する部分32cの変形をも抑制することができる。したがって、製造後においても、ICチップ42とアンテナ34との間の良好な電気的接続を維持することができる。なお、図11においては、説明の容易のため、スペーサシート22および外装シート12を省略している。
【0059】
例えば、非接触ICカード10および非接触ICカード用基材20の取扱中に何らかの力が作用して、図11(a)に示すような曲げモーメントが非接触通信媒体30に加えられたとする。図11(c)に示す基材シート32に切り込み50が形成されていない非接触通信媒体30aにおいては、ICチップ42を支持する部分32cも含め基材シート32が全体的に弓なり曲げられる。この場合、ICチップ42の接続電極43bとアンテナ34の接続部34aとの接触面積が減少し、さらには、ICチップ42とアンテナ34との電気的接続が完全に損なわれてしまう虞すらある。
【0060】
一方、本実施の形態による非接触ICカード10および非接触ICカード用基材20においては、基材シート32のICチップ42周辺に切り込み50が形成されているので、図11(b)に示すように、基材シート32のICチップ42を支持する部分32cに作用するはずの力が切り込み50により吸収される。これにより、基材シート32のICチップ42を支持する部分32cに作用する力が弱められ、基材シート32のICチップ42を支持する部分32cが大きく変形してしまうことを抑制することができる。したがって、本実施の形態における非接触ICカード10および非接触ICカード用基材20は優れた耐曲げ性を有していると言え、取扱中に作用される力によってICチップ42とアンテナ34との間の電気的接続が損なわれてしまうことを抑制することができる。
【0061】
なお、このような切り込み50の作用を考慮すると、非接触ICカード用基材20および非接触ICカード10の曲げ剛性が小さい断面と平行に、切り込み50が設けられていることが好ましい。これにより、非接触ICカード用基材20および非接触ICカード10中により生じやすい曲げ変形を有効に吸収することができ、ICチップ42とアンテナ34との間の良好な電気的接続を維持することができる。
【0062】
非接触ICカード用基材20および非接触ICカード10は、通常、平面視において略方形状、詳しくは矩形状、さらに詳しくは長方形状の輪郭を有する。このため、長方形状の長辺および短辺に平行な軸を中心とした曲がりが、非接触ICカード用基材20および非接触ICカード10に生じやすい。したがって、これらの曲がりを有効に吸収することができるよう、切り込み50が長方形状の輪郭の長辺および短辺の各々に平行な部分を含んでいることが好ましい。
【0063】
以上のように本実施の形態によれば、スペーサシート22が両側に積層された非接触通信媒体30の基材シート32のICチップ42周辺に、基材シート32を貫通する切り込み50が形成されている。この切り込み50よって、基材シート32のICチップ42を支持する部分32cの変形を抑制することができる。したがって、非接触ICカード用基材20または非接触ICカード10の製造中において、基材シート32のICチップ36を支持する部分32cとICチップ42とを、基材シート32の切り込み50に囲まれていない部分32bに対して厚さ方向に沿って移動させる際に、基材シート32のICチップ36を支持する部分32cが弓なり変形することを抑制することができる。このため、ICチップ42とアンテナ34との良好な電気的接続を害することなく、基材シート32のICチップ36を支持する部分32cとICチップ42とを、基材シート32のICチップ42が配置されていない側に重ね合わされたスペーサシート22の受け部24内へずらし入れることができる。これにより、非接触ICカード用基材20および非接触ICカード10の反り返しおよび厚みが厚くなり過ぎることを防止することができるとともに、ICチップ42とアンテナ34との良好な電気的な接続を確保することができる。
【0064】
また、非接触ICカード用基材20および非接触ICカード10の製造後の取扱中において、非接触ICカード用基材20および非接触ICカード10に曲げモーメントが加えられたとしても、基材シート32のICチップ36を支持する部分32cへの曲げ作用を切り込み50によって吸収することができる。したがって、ICチップ42とアンテナ34との良好な電気的な接続を維持することができる。
【0065】
また、本実施の形態によれば、切り込み50が受け部24に対面するよう形成されている。したがって、基材シート32のICチップ36を保持する部分32cにおける変形を切り込み50によって有効に低減させることができる。これにより、ICチップ42とアンテナ34とのより良好な電気的な接続を確保することができる。
【0066】
さらに、本実施の形態によれば、切り込み50がICチップ42を三方から囲むようになっている。したがって、非接触ICカード用基材20および非接触ICカード10の製造中に、基材シート32のICチップ42を支持する部分32cを弓なりに曲げてしまうことなく、基材シート32のICチップ36を支持する部分32cとICチップ42とを、非接触ICカード用基材20または非接触ICカード10の厚み方向に移動させることができる。したがって、ICチップ42とアンテナ34とのより良好な電気的な接続を確保することができる。
【0067】
さらに、本実施の形態によれば、切り込み50が、基材シート32のICチップ42外方にICチップ42の輪郭に沿って配置されている。したがって、基材シート32のICチップ42を支持する部分32cにおける変形をより正確に抑制することができ、これにより、ICチップ42とアンテナ34とのより良好な電気的な接続を確保することができる。
【0068】
なお、上述した実施の形態に関し、本発明の要旨の範囲内で種々の変更が可能である。以下、変形例の一例について説明する。
【0069】
まず、上述した実施の形態においては、基材シート32にICチップ42を三方から囲む切り込み50が形成されている例を示したが、これに限られない。上述したように、切り込みが形成されていれば、基材シート32のICチップ42を支持する部分32cに生ずる変形を抑制することができる。したがって、例えば、ICチップ42を少なくとも部分的に囲むように配置された複数の切り込みを、基材シート32に形成するようにしてもよい。
【0070】
以下、図12乃至図17を用いて、基材シート32に設けられる切り込みの具体的な変形例について説明する。ただし、これらの変形は、アンテナの構成とともに切り込みの構成が変形されるものであって、切り込みおよびアンテナ以外の構成は、図1乃至図11を用いて説明した実施の形態と略同一である。図12乃至図17において、図1乃至図11に示す実施の形態と同一部分には同一符号を付し、重複する詳細な説明を省略する。
【0071】
まず、図12に示す、切り込みの変形例1について説明する。
【0072】
変形例1におけるアンテナ34の構成は、上述した実施の形態と同様の構成となっている。一方、本変形例においては、基材シート32に、ICチップ42の三つの端縁の各外方にそれぞれ配置された三つの切り込み52が形成されている。三つの切り込み52のうち中央に設けられた中央切り込み52aの両端部は、それぞれ、中央切り込み52aの両側に設けられた一対の側方切り込み52b,52bの一方の端部と近接して配置されている。したがって、図12に示されているように、三つの切り込み52a,52b,52bは、ICチップ42の輪郭に沿って略コ字状に沿って配置されており、ICチップ42を三方から囲むようになっている。
【0073】
このような変形例においては、基材シート32の切り込み52に囲まれた部分32aに大きな力が加えられた場合に、基材シート32が破断し(破れ)、中央切り込み52aの両端部と側方切り込み52b,52bの一方の端部とが接続され、上述した切り込み50(特に図3)が形成されるようになっていることも有用である。
【0074】
例えば、上述した非接触ICカード用基材20の製造工程における熱圧着工程以前(より詳しくは、熱圧着機60によって押圧される以前)において、切り込み52が中央切り込み52aと一対の側方切り込み52b,52bとから構成され、その後、熱圧着工程における押圧ヘッド62の押圧によって中央切り込み52aと一対の側方切り込み52b,52bとが接続されるようにすることが好ましい。
【0075】
この場合、熱圧着工程以前においては、切り込み52に囲まれる部分32aがその他の部分32bに対して自由に揺動することを防止することができる。したがって、非接触通信媒体20を完全な一枚のシートと同様に容易に取り扱うことができる。このことは、極めて柔軟な材料を基材シート32に用いた場合に、非接触通信媒体30の取扱性を格段に向上させることができるといった点で有用である。一方、得られた非接触ICカード10あるいは非接触ICカード用基材20は上述した実施の形態と同一の極めて顕著な作用効果を奏することができる。
【0076】
なお、中央切り込み52aの両端部と側方切り込み52b,52bの一方の端部との離間長さや、中央切り込み52aの両端部と側方切り込み52b,52bの一方の端部との形状を適切に設計することにより、基材シート32の切り込み52に囲まれた部分32aに大きな力が加えられた場合に、中央切り込み52aと側方切り込み52b,52bとを有する切り込み52(図12)から切り込み50(図3)が形成されるようにすることができる。
【0077】
次に、図13に示す変形例2について説明する。変形例2におけるアンテナ34の接続部36aは、平面視において方形状(より詳しくは矩形状)の輪郭を有するICチップ42の対向する端縁から各外方に延び出ている。一方、本変形例における切り込み54は、アンテナ34の接続部36aが延び出ていないICチップ42の端縁の外方に配置され、該端縁に沿ってICチップ42を挟んで対向して延びる一対の切り込み54a,54aを有している。
【0078】
また、図14に示す変形例3におけるアンテナ34の接続部36aは、変形例2と同様に、平面視において方形状の輪郭を有するICチップ42の対向する端縁から各外方に延び出ている。一方、変形例3における切り込み56は平面視において略コ字状の形状を有する一対の切り込み56a,56aを有している。図14に示すように、一対の切り込み56a,56aは互いにコ字の開口部分(開放部分)を向かい合わせるようにして配置されており、アンテナ34の接続部36aは、一対の切り込み56a,56aのコ字の端部間を通過している。したがって、切り込み56はICチップ42を、接続部36aが延び出ていない端縁の側から囲むとともに、接続部36aが延び出ている端縁の側からも部分的に囲むようになっている。
【0079】
さらに、図15に示す変形例4におけるアンテナ34の接続部36aは、変形例2および変形例3と同様に、平面視において方形状の輪郭を有するICチップ42の対向する端縁から各外方に延び出ている。一方、変形例4においては、接続部36aが延び出ているICチップ42の対向する一対の端縁の各外方に、連続して配置された2つ以上(図示する例では2つ)の切り込み57a,57bがそれぞれ形成されている。すなわち、ICチップ42の一方の側(図15の紙面における上側)に連続して配置された2つ以上(図示する例では2つ)の切り込み57a,57aと、ICチップ42の他方の側(図15の紙面における下側)に連続して配置された2つ以上(図示する例では2つ)の切り込み57b,57bと、によって本変形例の切り込み57が形成されている。そして、アンテナ34の接続部36aは、ICチップ42を支持する部分32cから、連続して配置された切り込み57a,57a(57b,57b)間を通過し外方へ延び出ている。言い換えると、アンテナ34の各接続部36aは、一方の側に配置された切り込み57a,57a間、および他方の側に配置された切り込み57b,57b間のいずれかを通過している。
【0080】
さらに、図16に示す変形例5におけるアンテナ34の接続部36aは、変形例2乃至変形例4と同様に、平面視において方形状の輪郭を有するICチップ42の対向する端縁から各外方に延び出ている。一方、変形例5における切り込み57は、接続部36aが延び出ているICチップ42の対向する一対の端縁の各外方に、連続して配置された2つ以上(図示する例では2つ)の切り込み57a,57bがそれぞれ形成されるとともに、さらに、該一対の端縁とは異なるICチップ42の別の対向する一対の端縁の各外方にもそれぞれ切り込み58c,58dが形成されている。すなわち、ICチップ42の一方の側(図16の紙面における上側)に連続して配置された2つ以上(図示する例では2つ)の切り込み57a,57aと、ICチップ42の他方の側(図16の紙面における下側)に連続して配置された2つ以上(図示する例では2つ)の切り込み57b,57bと、一方の側の切り込み57aと他方の側の切り込み57bとの間を延びる一対の切り込み58c,58dであってICチップ42を挟んで配置された一対の切り込み58c,58dと、によって本変形例の切り込み58が形成されている。そして、アンテナ34の接続部36aは、ICチップ42を支持する部分32cから、連続して配置された各切り込み58a,58a(58b,58b)間を通過し外方へ延び出ている。言い換えると、アンテナ34の各接続部36aは、一方の側に配置された切り込み57a,57a間、および他方の側に配置された切り込み57b,57b間のいずれかを通過している。
【0081】
さらに、図17に示す変形例6におけるアンテナ34の接続部36aは、平面視において方形状の輪郭を有するICチップ42の隣接する端縁からそれぞれ外方に延び出ている。一方、本変形例における切り込み59は、アンテナ34の接続部36aが延び出ていないICチップ42の端縁の外方に配置され、該端縁に沿ってL字状に延びている。
【0082】
さらにまた、上述してきた種々の切り込みを、連続して配置された貫通孔によって点線状に形成するよう変形することもできる。
【0083】
また、上述した実施の形態および上述した変形例において、切り込みが基材シート32を貫通している例を示したが、これに限られず、切り込みが基材シート32を貫通しないようにしてもよい。基材シート32を貫通しない切り込みによっても、基材シート32のICチップ42を支持する部分32cにおける変形を抑制することができる。なお、このような変形例においては、基材シート32の一方の面のみに基材シート32を貫通しない切り込みを形成するようにしてもよいし、基材シート32の両方の面に切り込みを形成するようにしてもよい。また、基材シート32の両面に切り込みを形成する場合には、切り込みを対向して配置するようにしてもよいし、一方の面と他方の面とで切り込みの構成(形状)が異なるようにすることもできる。
【0084】
さらに、上述した実施の形態においては、図2によく示されているように、ICチップ42の厚みが2枚のスペーサシート22,22の合計厚みと略同一となっている例を示したが、これに限られない。例えば、図18に示すように、スペーサシート22の受け部24内に平板状の厚み調整部材66を収納し、この厚み調整部材66によって、ICチップ42とスペーサシート22との厚みの相違を調整するようにしてもよい。また、スペーサシート22の受け部24内に接着剤を充填し、これにより、スペーサシート22の受け部24とICチップ42との隙間を埋めるとともに、受け部24内にICチップ42を固定するようにしてもよい。
【0085】
なお、図18に示す変形例において、スペーサシート22の受け部24内に厚み調整部材66が収納され、スペーサシート22の受け部24内の隙間が接着剤によって埋められている点のみにおいて、図1乃至図11に示す実施の形態と異なり、他は略同一である。したがって、図18において同一部分に同一符号を付すとともに、重複する詳細な説明は省略する。
【0086】
さらに、上述した実施の形態においては、スペーサシート22の受け部24が、スペーサシート22を貫通する貫通孔によって形成されている例を示したが、これに限られない。例えば、図19に示すように、受け部25が、スペーサシート22の非接触通信媒体30に面する側に形成された凹部からなるようにしてもよい。このような本変形例においては、スペーサシート22からICチップ42が露出していない。したがって、外装シート12の積層が省略されたとしてもスペーサシート22によってICチップ42を防護することができ、また、スペーサシート22の表面に印刷を施すことができる。つまり、非接触通信媒体30と、凹部からなる受け部25を有したスペーサシート22と、有する非接触ICカード用基材20に印刷等を施すことによって、外装シート12をさらに積層することなく非接触ICカード用基材20をそのまま非接触ICカード10として用いることができる。
【0087】
なお、図19に示す変形例において、スペーサシート22の受け部25が凹部からなる点のみにおいて、図1乃至図11に示す実施の形態と異なり、他は略同一である。したがって、図19において同一部分に同一符号を付すとともに、重複する詳細な説明は省略する。
【0088】
さらに、上述した実施の形態においては、基材シート32の片側面のみにアンテナ34が形成されている例を示したが、これに限られず、両側面にアンテナ34が形成されてもよい。この場合、非接触ICカード10および非接触ICカード用基材20の基材シート32を中心とした対称性がより確保され、反り返りをより防止することができる。なお、基材シート32の両側面にアンテナ34を形成した場合、アンテナ34を二つともICチップ42に接続するようにしてもよいし、アンテナ34を一つだけICチップ42に接続し、もう一つのアンテナを単なるダミーとしてもよい。アンテナ34を二つともICチップ42に接続すると、非接触通信媒体30の通信能力を増強することができるという利点がある。
【0089】
さらに、上述した実施の形態においては、基材シート32、スペーサシート22、および外装シート12が同サイズの輪郭を有する例を示したが、これに限られない。例えば、各シート32,22,12の大きさが異なってもよい。また、外装シート12やスペーサシート22はシート状(薄板状)からなることに厳密に限定されるものではなく、縁部が突出した断面略コ字状あるいは断面略L字状を有する略薄板材を用いて構成することもできる。この場合、突出した縁部の内方に他のシートを配置するようにしてもよい。
【0090】
さらに、上述した実施の形態においては、接着剤18を介して外装シート12と非接触ICカード用基材20とが熱圧着され、接着剤28を介してスペーサシート22と非接触通信媒体30とが熱圧着された例を示したが、これに限られない。例えば、接着剤18,28に変えて、同種の材料からなる接着シートを用いるようにしてもよい。さらには、外装シート12やスペーサシート22の材料として、熱融着性を有した材料を採用するようにしてもよい。この場合、接着剤を介在させることなく、熱融着によって、外装シート12と非接触ICカード用基材20とを熱圧着すること、あるいは、スペーサシート22と非接触通信媒体30とを熱圧着することができる。
【0091】
さらに、上述した実施の形態において、基材シート32の一方の面上にアンテナ34およびICチップ42が設けられている例を示したが、アンテナ34とICチップ42との導通が確保される限りにおいてこれに限られず、アンテナ34およびICチップ42が別々の面上に設けられるようにしてもよい。
【0092】
以上、上述した実施の形態に関するいくつかの変形例を説明してきたが、当然に、複数の変形例を適宜組み合わせて適用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】本発明による非接触ICカードの一実施の形態を示す斜視図。
【図2】図1のII−II線に沿った断面図。
【図3】本発明による非接触ICカード用基材の一実施の形態を示す上面図。
【図4】非接触通信媒体を示す斜視図。
【図5】図4のV−V線に沿った断面図。
【図6】図4のVI−VI線に沿った断面図。
【図7】非接触通信媒体の他の例を示す斜視図。
【図8】本発明による非接触ICカードおよび非接触ICカード用基材の製造方法の一実施の形態を示す概略図。
【図9】非接触ICカード用基材の製造方法を示す概略図。
【図10】非接触ICカード用基材の製造方法を示す概略図。
【図11】非接触ICカードおよび非接触ICカード用基材の作用を説明する図。
【図12】非接触通信媒体の変形例を示す上面図。
【図13】非接触通信媒体の変形例を示す上面図。
【図14】非接触通信媒体の変形例を示す上面図。
【図15】非接触通信媒体の変形例を示す上面図。
【図16】非接触通信媒体の変形例を示す上面図。
【図17】非接触通信媒体の変形例を示す上面図。
【図18】図2に対応する図であって、非接触ICカードおよび非接触ICカード用基材の変形例を示す断面図。
【図19】図2に対応する図であって、非接触ICカードおよび非接触ICカード用基材の変形例を示す断面図。
【図20】図2に対応する図であって、基材シートに切り込みが形成されていない非接触ICカードおよび非接触ICカード用基材を示す断面図。
【符号の説明】
【0094】
10 非接触ICカード
12 外装シート
20 非接触ICカード用基材
22 スペーサシート
24 受け部(貫通孔)
25 受け部(凹部)
30 非接触通信媒体
32 基材シート
32a 切り込みに囲まれた部分
32b その他の部分
32c ICチップ支持する部分
34 アンテナ
42 ICチップ
50,52,54,56,57,58,59 切り込み

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非導電性の基材シートと、前記基材シート上に形成されたアンテナと、前記アンテナに接続されたICチップと、を有する非接触通信媒体と、
前記非接触通信媒体の両側にそれぞれ積層されたスペーサシートであって、前記非接触通信媒体の前記ICチップを受ける受け部が形成された一対のスペーサシートと、を備え、
前記基材シートのICチップ周辺に、切り込みが形成されていることを特徴とする非接触ICカード用基材。
【請求項2】
前記受け部は、前記スペーサシートに形成された貫通孔、または前記スペーサシートに形成された凹部からなることを特徴とする請求項1に記載の非接触ICカード用基材。
【請求項3】
前記切り込みは、その少なくとも一部分が前記受け部に対面するように形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の非接触ICカード用基材。
【請求項4】
前記切り込みは、前記基材シートの前記ICチップ外方に前記ICチップの輪郭に沿って配置されていること特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の非接触ICカード用基材。
【請求項5】
前記基材シートに複数の切り込みが形成され、前記複数の切り込みは前記ICチップを少なくとも部分的に囲むように配置されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の非接触ICカード用基材。
【請求項6】
前記基材シートに、前記ICチップを三方から囲む切り込みが形成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の非接触ICカード用基材。
【請求項7】
前記基材シートに、前記ICチップを挟んで延びる一対の切り込みが形成されていること特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の非接触ICカード用基材。
【請求項8】
前記ICチップは平面視において略方形状の輪郭を有し、
前記基材シートに、前記ICチップの三つの端縁の各外方にそれぞれ配置された三つの切り込みが形成されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の非接触ICカード用基材。
【請求項9】
前記三つの切り込みのうち中央に設けられた中央切り込みの両端部は、それぞれ、前記中央切り込みの両側に設けられた一対の側方切り込みの一方の端部と近接して配置されていることを特徴とする請求項8に記載の非接触ICカード用基材。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか一項に記載の非接触ICカード用基材を備えたことを特徴とする非接触ICカード。
【請求項11】
前記非接触ICカード用基材の両側に積層される一対の外装シートをさらに備えたことを特徴とする請求項10に記載の非接触ICカード。
【請求項12】
非導電性の基材シートと前記基材シート上に形成されたアンテナと前記アンテナに接続されたICチップとを有する非接触通信媒体であって、前記基材シートのICチップ周辺に切り込みが形成されている非接触通信媒体の両側に、前記非接触通信媒体の前記ICチップを受ける受け部が形成された一対のスペーサシートを、前記受け部が前記ICチップと対面するようにして、重ね合わせる工程と、
前記非接触通信媒体と、前記非接触通信媒体の両側に重ね合わされたスペーサシートと、を加熱しながら押圧する熱圧着工程と、を備えたことを特徴とする非接触ICカード用基材の製造方法。
【請求項13】
前記基材シートに、前記基材シートを貫通する切り込みであって、少なくとも一部分が前記受け部に対面するように配置され前記ICチップを三方から囲む切り込みが形成されており、
前記重ね合わせる工程、あるいは前記熱圧着工程において、前記基材シートの切り込みに囲まれる部分の少なくとも一部分が、前記基材シートの他の部分に対し、非接触ICカード用基材の厚さ方向に沿ってずれた位置に配置されることを特徴とする請求項12に記載の非接触ICカード用基材の製造方法。
【請求項14】
前記ICチップは平面視において略方形状の輪郭を有し、前記基材シートに、前記ICチップの三つの端縁の各外方にそれぞれ配置された前記基材シートを貫通する三つの切り込みが形成され、前記三つの切り込みのうち中央に設けられた中央切り込みの両端部は、それぞれ、前記中央切り込みの両側に設けられた一対の側方切り込みの一方の端部と近接して配置されており、
前記熱圧着工程において、前記中央切り込みの両端部と前記側方切り込みの一方の端部とが接続されるように前記基材シートが破れ、これにより、前記基材シートの前記接続された三つの切り込みに囲まれる部分の少なくとも一部分が、前記基材シートの他の部分に対し、非接触ICカード用基材の厚さ方向に沿ってずれた位置に配置されることを特徴とする請求項12に記載の非接触ICカード用基材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2007−310472(P2007−310472A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−136564(P2006−136564)
【出願日】平成18年5月16日(2006.5.16)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】