説明

非水電解液二次電池、及び、その製造方法

【課題】電池のサイクル充放電特性を低下させることなく、非水電解液を短時間で扁平捲回電極体の捲回塗工部内に含浸させることができる非水電解液二次電池の製造方法を提供する。
【解決手段】捲回未塗工部155d,156dのうち、扁平捲回電極体150Aを電池ケース160内に収容する姿勢としたときに集電端子部材120,130を溶接する予定部位または溶接した部位よりも下方に位置する下方未塗工部155f,156fを、切除する。電池ケース160として、下方未塗工部155f,156fを切除した扁平捲回電極体150の切断面150b,150cと軸線AX方向に対向する対向面112b,112fを、これらより上方の位置で捲回未塗工部155d,156dの端面と軸線AX方向に対向する内側面112c,112gよりも、軸線AX方向について電池ケース160の内側に位置させた形態の電池ケース160を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水電解液二次電池、及び、その製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池等の非水電解液二次電池は、携帯機器の電源として、また、電気自動車やハイブリッド自動車などの電源として注目されている。近年、様々な非水電解液二次電池が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−128132号公報
【0004】
特許文献1には、正極、負極、及び、セパレータを扁平形状に捲回してなる扁平捲回電極体(電極群)と、扁平捲回電極体を収容する直方体形状の電池ケースと、集電端子部材(リードエレメント)を備える二次電池が開示されている。集電端子部材は、扁平捲回電極体の軸線方向両端部の位置で、正極の合材層未塗工部(無地部)と上記負極の合材層未塗工部(無地部)とがそれぞれ捲回されてなる捲回未塗工部に溶接されている。詳細には、捲回未塗工部の中央に位置する平坦部に、集電端子部材を溶接している。
【0005】
さらに、特許文献1には、捲回未塗工部の両端部(合材層未塗工部が弧状をなしている上下端部)を切除した後、捲回未塗工部の中央に位置する平坦部に、集電端子部材を溶接する形態が開示されている。捲回未塗工部の端部を切除しておくことで、捲回未塗工部の中央に位置する平坦部に、集電端子部材を良好な状態で接続することができることが記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1等の非水電解液二次電池では、扁平捲回電極体の捲回塗工部内に、非水電解液を含浸させている。具体的には、まず、扁平捲回電極体を電池ケース内に収容した後、注液工程において、扁平捲回電極体を収容した電池ケース内に、非水電解液を注入する。その後、含浸工程において、電池ケース内に注入した非水電解液を、扁平捲回電極体の捲回塗工部内に含浸させる。ここで、捲回塗工部とは、正極の合材層塗工部、負極の合材層塗工部、及び、セパレータが捲回されてなる部位をいう。
【0007】
扁平捲回電極体を収容する直方体形状の電池ケース内に注入した非水電解液は、捲回塗工部の軸線方向両端面(左右端面)を通じて、捲回塗工部の内部に進入する。さらに言えば、捲回塗工部の内部への非水電解液の進入口は、捲回塗工部の軸線方向両端面(左右端面)のみである。しかも、捲回塗工部は、正極(合材層塗工部)、負極(合材層塗工部)、及び、セパレータが密に(ほとんど隙間無く、きつく)捲回されているので、捲回塗工部の内部に非水電解液が浸透し難く、その結果、捲回塗工部内への非水電解液の含浸が完了するまでの時間が長くなっていた。
【0008】
上述のように、捲回塗工部の内部への非水電解液の進入口は、捲回塗工部の軸線方向両端面(左右端面)である。従って、非水電解液を短時間で捲回塗工部内に含浸させるためには、捲回塗工部の軸線方向両端面に対し、非水電解液が接触する部分の面積を増大させるのが好ましい。このためには、例えば、注液工程において、多量の非水電解液を注入して、非水電解液の液面を高くする方法が考えられる。
【0009】
しかしながら、捲回塗工部の内部に含浸される非水電解液の量は限られているので、非水電解液の注入量を増加すると、捲回塗工部の内部に浸透しない余剰電解液の液量が増加する。余剰電解液の液量が増加すると、電池のサイクル充放電特性が大きく低下してしまう。このため、電池ケース内に過剰な非水電解液を注入することは、好ましくなかった。
【0010】
本発明は、かかる現状に鑑みてなされたものであって、電池のサイクル充放電特性を低下させることなく、非水電解液を短時間で扁平捲回電極体の捲回塗工部内に含浸させることができる非水電解液二次電池の製造方法、及び、サイクル充放電特性が良好な非水電解液二次電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様は、正極、負極、及び、セパレータを扁平形状に捲回してなる扁平捲回電極体と、上記扁平捲回電極体を収容する角形の電池ケースと、上記扁平捲回電極体内に含浸している非水電解液と、集電端子部材と、を備え、上記扁平捲回電極体は、上記正極の合材層塗工部、上記負極の合材層塗工部、及び、上記セパレータが捲回されてなる捲回塗工部と、上記扁平捲回電極体の軸線方向両端部に位置し、上記正極の合材層未塗工部と上記負極の合材層未塗工部とがそれぞれ捲回されてなる捲回未塗工部と、を有し、上記集電端子部材は、上記捲回未塗工部に溶接されてなる非水電解液二次電池の製造方法において、上記正極、上記負極、及び、上記セパレータを扁平形状に捲回して扁平捲回電極体を形成する捲回工程と、上記扁平捲回電極体の上記捲回未塗工部のうち、上記扁平捲回電極体を上記電池ケース内に収容する姿勢としたときに上記集電端子部材を溶接する予定部位または溶接した部位よりも下方に位置する下方未塗工部、を切除する切除工程と、上記下方未塗工部を切除した上記扁平捲回電極体を、上記電池ケース内に収容する工程と、上記扁平捲回電極体を収容した上記電池ケース内に、上記非水電解液を注入する注液工程と、上記電池ケース内に注入した上記非水電解液を上記捲回塗工部内に含浸させる含浸工程と、を備え、上記電池ケースとして、当該電池ケースの内側面のうち上記下方未塗工部を切除した上記扁平捲回電極体の切断面と上記軸線方向に対向する対向面を、これより上方の位置で上記捲回未塗工部の端面と上記軸線方向に対向する上方内側面よりも、上記軸線方向について上記電池ケースの内側に位置させた形態の電池ケースを用いる非水電解液二次電池の製造方法である。
【0012】
上述の製造方法では、切除工程において、捲回未塗工部(正極捲回未塗工部と負極捲回未塗工部)のうち、下方未塗工部(下方正極未塗工部と下方負極未塗工部)を切除する。ここで、下方未塗工部とは、扁平捲回電極体を電池ケース内に収容する姿勢としたときに、捲回未塗工部のうち集電端子部材を溶接する予定部位または溶接した部位よりも下方(電池ケースの底面側)に位置する部位である。従って、従来の非水電解液二次電池(すなわち、捲回未塗工部を切除していない電池)において、捲回未塗工部のうち、電池ケースの底面側(下方)に位置する合材層未塗工部であって、集電端子部材を溶接した部位よりも底面側(下方)に位置する部位に相当する。
【0013】
上述の製造方法により製造される非水電解液二次電池では、扁平捲回電極体が、軸線方向を左右方向(水平方向)に一致させた姿勢で、電池ケース内に収容されており、扁平捲回電極体のうち正極等が弧状をなしている部位が、扁平捲回電極体の上端側と下端側に配置されている。従って、捲回後の扁平捲回電極体を電池ケース内に収容する姿勢としたときには、捲回未塗工部のうち合材層未塗工部が弧状をなしている部位が、扁平捲回電極体(捲回未塗工部)の上端側と下端側に配置される。
【0014】
切除工程は、捲回未塗工部に集電端子部材を溶接する前に行っても良いし、捲回未塗工部に集電端子部材を溶接した後に行っても良い。捲回未塗工部に集電端子部材を溶接する前に切除工程を行う場合は、扁平捲回電極体を電池ケース内に収容する姿勢としたときに「捲回未塗工部のうち集電端子部材を溶接する予定部位」よりも下方に位置する下方未塗工部を切除する。また、捲回未塗工部に集電端子部材を溶接した後に切除工程を行う場合は、扁平捲回電極体を電池ケース内に収容する姿勢としたときに「捲回未塗工部のうち集電端子部材を溶接した部位」よりも下方に位置する下方未塗工部を切除する。
【0015】
なお、正極は、正極集電部材(例えば、金属箔)と、その表面に塗工された正極合材層とを有する。従って、正極の合材層未塗工部とは、正極活物質を含む正極合材層を有することなく、正極を構成する正極集電部材(例えば、金属箔)のみからなる部位をいう。一方、正極のうち正極合材層を有する部位(正極集電部材と正極合材層を有する部位)を、正極の合材層塗工部という。
【0016】
また、負極は、負極集電部材(例えば、金属箔)と、その表面に塗工された負極合材層とを有する。従って、負極の合材層未塗工部とは、負極活物質を含む負極合材層を有することなく、負極を構成する負極集電部材(例えば、金属箔)のみからなる部位をいう。一方、負極のうち負極合材層を有する部位(負極集電部材と負極合材層を有する部位)を、負極の合材層塗工部という。
【0017】
また、扁平捲回電極体は、正極の合材層塗工部、負極の合材層塗工部、及び、セパレータが捲回されてなる捲回塗工部と、その一方端に隣接する正極捲回未塗工部(正極合材層未塗工部のみが捲回されてなる部位)と、他方端に隣接する負極捲回未塗工部(負極合材層未塗工部のみが捲回されてなる部位)とを有している。正極捲回未塗工部に正極集電端子部材を溶接し、負極捲回未塗工部に負極集電端子部材を溶接する。
【0018】
捲回未塗工部のうち集電端子部材が溶接されない部位は、切除しても、電池特性に影響がないため、上述の製造方法では、下方未塗工部を切除している。下方未塗工部を切除することにより、従来、下方未塗工部が配置されていた電池ケースの内部空間は、不要になる。
【0019】
そこで、上述の製造方法では、電池ケースとして、当該電池ケースの内側面のうち下方未塗工部を切除した扁平捲回電極体の切断面(扁平捲回電極体の軸線方向を向く切断面)と扁平捲回電極体の軸線方向に対向する面(これを対向面という)を、これより上方(底面側とは反対側)の位置で捲回未塗工部の端面と上記軸線方向(左右方向)に対向する内側面(これを上方内側面という)よりも、上記軸線方向について上記電池ケースの内側(中央側)に位置させた形態の電池ケースを用いることにした。
【0020】
すなわち、電池ケースにおいて、電池ケースの内側面のうち下方正極未塗工部を切除した扁平捲回電極体の第1切断面と上記軸線方向に対向する第1対向面を、これよりも上方の位置で正極捲回未塗工部の端面と軸線方向に対向する第1上方内側面よりも、上記軸線方向について電池ケースの内側に位置させている。さらに、電池ケースの内側面のうち下方負極未塗工部を切除した扁平捲回電極体の第2切断面と上記軸線方向に対向する第2対向面を、これよりも上方の位置で負極捲回未塗工部の端面と軸線方向に対向する第2上方内側面よりも、上記軸線方向について電池ケースの内側に位置させている。
【0021】
このような電池ケースでは、電池ケースの底面(下面)から上記対向面(第1対向面及び第2対向面)の上端に至るまでの電池ケースの内部空間の単位高さ当たりの容量(電池ケースの底面積に一致する)を、これよりも上方の内部空間の単位高さ当たりの容量(従来の直方体形状の電池ケースの底面積に一致する)よりも小さくすることができる。
【0022】
これにより、注液工程において、一定量(規定量)の非水電解液を電池ケース内に注入したとき、上述の形態の電池ケースでは、従来の直方体形状の電池ケース(内面が直方体形状)に比べて、非水電解液の液面を高くすることができる。従って、上述の電池ケースを用いることで、従来の電池ケースを用いる場合に比べて、扁平捲回電極体の捲回塗工部の軸線方向両端面のうち非水電解液が接触する部分の面積(以下、液接触面積ともいう)を、増大させることができる。
【0023】
扁平捲回電極体の捲回未塗工部(正極捲回未塗工部及び負極捲回未塗工部)は、集電部材(正極集電部材及び負極集電部材)が、比較的大きな隙間を空けて捲回されている。このため、電池ケース内に非水電解液を注入すると、直ちに、捲回未塗工部(正極捲回未塗工部及び負極捲回未塗工部)内に非水電解液が進入する。一方、捲回塗工部は、密に(ほとんど隙間なく)捲回されているため、注入した非水電解液は、ゆっくりと捲回塗工部の内部に進入(浸透)することになる。
【0024】
このため、電池ケース内に非水電解液を注入すると、まず、捲回未塗工部の内部空間と扁平捲回電極体の外部(すなわち、捲回塗工部の外部)に、非水電解液が溜まる。その後、捲回塗工部の外部に溜まっている非水電解液は、捲回塗工部の軸線方向両端面を通じて、ゆっくりと、捲回塗工部の内部に浸透してゆく。
【0025】
従って、捲回塗工部端面の液接触面積が大きいほど、非水電解液が捲回塗工部の内部に浸透する速度が速くなり、含浸が完了する(非水電解液が捲回塗工部の内部全体に行き渡る)までの時間を短くすることができる。従って、上述の製造方法では、含浸工程において、非水電解液を短時間で捲回塗工部の内部に含浸させることができる。
【0026】
しかも、上述の製造方法では、非水電解液の液面を高くするため(液接触面積を増大させるため)に、電池ケース内に過剰な非水電解液を注入する必要がないので、電池のサイクル充放電特性を低下させてしまうこともない。
以上より、上述の製造方法によれば、電池のサイクル充放電特性を低下させることなく、非水電解液を短時間で扁平捲回電極体の捲回塗工部内に含浸させることができる。
【0027】
なお、含浸工程では、電池ケース内を減圧した後加圧する操作を、複数回繰り返し行うようにすると良い。これにより、捲回塗工部内への非水電解液の含浸速度を高めることができ、より一層短時間で、非水電解液を捲回塗工部内に含浸させることができるからである。
【0028】
なお、電池ケース内を「減圧した後加圧する」操作としては、例えば、電池ケース内を、大気圧状態から減圧した後、大気圧まで上昇(大気開放)させる操作が挙げられる。
また、含浸工程では、電池ケース内を減圧した後加圧する操作を複数回繰り返し行った後、所定時間、電池ケース内を一定の圧力状態(例えば、大気圧状態)として、放置するようにしても良い。
【0029】
さらに、上記の非水電解液二次電池の製造方法であって、前記電池ケースは、当該電池ケースの壁部のうち前記対向面を有する対向壁部が、前記上方内側面を有する上方壁部よりも、前記軸線方向について上記電池ケースの内側に凹んだ形態とすることにより、上記対向面を上記上方内側面よりも上記軸線方向について上記電池ケースの内側に位置させてなる非水電解液二次電池の製造方法とすると良い。
【0030】
上述の製造方法で用いる電池ケースは、電池ケースの壁部のうち対向面(扁平捲回電極体の切断面と軸線方向に対向する面)を有する対向壁部が、上方内側面(対向面より上方の位置で捲回未塗工部の端面と軸線方向に対向する面)を有する上方壁部よりも、軸線方向(左右方向)について電池ケースの内側に凹んだ形態としている。このような形態とすることで、適切に、対向面を、上方内側面よりも軸線方向について電池ケースの内側に位置させることができる。
【0031】
また、前記の非水電解液二次電池の製造方法であって、前記電池ケースは、直方体形状のケースの内部のうち前記扁平捲回電極体の前記切断面と前記軸線方向に対向する位置に配置されたスペーサーを有し、上記スペーサーの側面であって上記切断面と上記軸線方向に対向する前記対向面が、前記上方内側面よりも上記軸線方向について上記電池ケースの内側に位置してなる非水電解液二次電池の製造方法とすると良い。
【0032】
上述の製造方法で用いる電池ケースは、直方体形状のケースの内部のうち扁平捲回電極体の切断面(下方未塗工部を切除した切断面)と扁平捲回電極体の軸線方向(左右方向)に対向する位置に配置されたスペーサーを有している。このような電池ケースでは、適切に、対向面を上方内側面よりも軸線方向について電池ケースの内側に位置させることができる。具体的には、スペーサーの側面のうち扁平捲回電極体の上記切断面と上記軸線方向に対向する面が、前記対向面となる。これにより、適切に、対向面を、上方内側面よりも軸線方向について電池ケースの内側に位置させることができる。なお、上記スペーサーは、電池ケースの一部(構成部品)である。
【0033】
本発明の他の態様は、正極、負極、及び、セパレータを扁平形状に捲回してなる扁平捲回電極体と、上記扁平捲回電極体を収容する角形の電池ケースと、上記扁平捲回電極体内に含浸している非水電解液と、集電端子部材と、を備え、上記扁平捲回電極体は、上記正極の合材層塗工部、上記負極の合材層塗工部、及び、上記セパレータが捲回されてなる捲回塗工部と、上記扁平捲回電極体の軸線方向両端部に位置し、上記正極の合材層未塗工部と上記負極の合材層未塗工部とがそれぞれ捲回されてなる捲回未塗工部と、を有し、上記集電端子部材は、上記捲回未塗工部に溶接されてなる非水電解液二次電池において、上記捲回未塗工部のうち、上記集電端子部材が溶接されている部位よりも下方に位置する下方未塗工部が、切除されてなり、上記電池ケースの内側面のうち上記下方未塗工部を切除した上記扁平捲回電極体の切断面と上記軸線方向に対向する対向面が、これより上方の位置で上記捲回未塗工部の端面と上記軸線方向に対向する上方内側面よりも、上記軸線方向について上記電池ケースの内側に位置してなる非水電解液二次電池である。
【0034】
上述の非水電解液二次電池は、電池ケースとして、当該電池ケースの内側面のうち下方未塗工部を切除した扁平捲回電極体の切断面(扁平捲回電極体の軸線方向を向く切断面)と扁平捲回電極体の軸線方向に対向する面(これを対向面という)を、これより上方(底面側とは反対側)の位置で捲回未塗工部の端面と上記軸線方向(左右方向)に対向する内側面(これを上方内側面という)よりも、上記軸線方向について上記電池ケースの内側(中央側)に位置させた形態の電池ケースを用いている。
【0035】
すなわち、電池ケースにおいて、電池ケースの内側面のうち下方正極未塗工部を切除した扁平捲回電極体の第1切断面と上記軸線方向に対向する第1対向面を、これよりも上方の位置で正極捲回未塗工部の端面と軸線方向に対向する第1上方内側面よりも、上記軸線方向について電池ケースの内側に位置させている。さらに、電池ケースの内側面のうち下方負極未塗工部を切除した扁平捲回電極体の第2切断面と上記軸線方向に対向する第2対向面を、これよりも上方の位置で負極捲回未塗工部の端面と軸線方向に対向する第2上方内側面よりも、上記軸線方向について電池ケースの内側に位置させている。
【0036】
前述のように、このような形態の電池ケースを用いることで、当該電池を製造する際、含浸工程において、非水電解液を短時間で捲回塗工部の内部に含浸させることができる。従って、電池の製造時間が短縮されるので、上述の非水電解液二次電池は、安価な電池となる。しかも、上述の非水電解液二次電池は、サイクル充放電特性が良好となる。
【0037】
さらに、上記の非水電解液二次電池であって、前記電池ケースの壁部のうち前記対向面を有する対向壁部を、前記上方内側面を有する上方壁部よりも、前記軸線方向について上記電池ケースの内側に凹んだ形態とすることにより、上記対向面が、上記上方内側面よりも上記軸線方向について上記電池ケースの内側に位置してなる非水電解液二次電池とすると良い。
【0038】
上述のような形態の電池ケースを用いることで、当該電池を製造する際、含浸工程において、非水電解液を短時間で捲回塗工部の内部に含浸させることができる。従って、電池の製造時間が短縮されるので、上述の非水電解液二次電池は、安価な電池となる。しかも、上述の非水電解液二次電池は、サイクル充放電特性が良好となる。
【0039】
また、前記の非水電解液二次電池であって、前記電池ケースは、直方体形状のケースの内部のうち前記扁平捲回電極体の前記切断面と前記軸線方向に対向する位置に配置されたスペーサーを有し、上記スペーサーの側面であって上記切断面と上記軸線方向に対向する前記対向面が、前記上方内側面よりも上記軸線方向について上記電池ケースの内側に位置してなる非水電解液二次電池とすると良い。
【0040】
上述のような形態の電池ケースを用いることで、当該電池を製造する際、含浸工程において、非水電解液を短時間で捲回塗工部の内部に含浸させることができる。従って、電池の製造時間が短縮されるので、上述の非水電解液二次電池は、安価な電池となる。しかも、上述の非水電解液二次電池は、サイクル充放電特性が良好となる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】実施例1にかかる非水電解液二次電池の断面図である。
【図2】同非水電解液二次電池のケース本体部の斜視図である。
【図3】同非水電解液二次電池の扁平捲回電極体の斜視図である。
【図4】扁平捲回電極体を構成する正極を示す図である。
【図5】扁平捲回電極体を構成する負極を示す図である。
【図6】実施例1,2にかかる非水電解液二次電池の製造方法の流れを示すフローチャートである。
【図7】実施例1の捲回工程を説明する図である。
【図8】同捲回工程において形成した扁平捲回電極体の斜視図である。
【図9】実施例1の収容工程、注液工程、及び、含浸工程を説明する図であって、組み立て体101の断面図である。
【図10】実施例2にかかる非水電解液二次電池の断面図である。
【図11】同非水電解液二次電池のケース本体部の斜視図である。
【図12】比較例1にかかる非水電解液二次電池の断面図である。
【図13】同非水電解液二次電池のケース本体部の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
(実施例1)
まず、本実施例1の非水電解液二次電池100について説明する。
非水電解液二次電池100は、図1に示すように、角形の電池ケース160と、正極外部端子121と、負極外部端子131とを備える、角形密閉式のリチウムイオン二次電池である。
【0043】
このうち、電池ケース160は、角形の収容空間をなす金属製のケース本体部110と金属製の蓋部170とを有するハードケースである。電池ケース160(ケース本体部110)の内部には、扁平捲回電極体150などが収容されている。
【0044】
扁平捲回電極体150は、シート状の正極155、負極156、及びセパレータ157を扁平形状に捲回した扁平型の捲回電極体である(図3〜図5参照)。本実施例1では、扁平捲回電極体150が、軸線AX方向を左右方向(水平方向)に一致させた姿勢で、電池ケース160内に収容されている(図1参照)。従って、扁平捲回電極体150のうち、正極155、負極156、及びセパレータ157が弧状をなしている部位150f,150gが、扁平捲回電極体150の上端側と下端側に配置されている。
【0045】
正極155は、図4に示すように、長手方向DAに延びる帯状で、アルミニウム箔からなる正極集電部材151と、この正極集電部材151の両面に、それぞれ長手方向DAに延びる帯状に配置された2つの正極合材層152とを有している。正極合材層152は、正極活物質153と、アセチレンブラックからなる導電材と、PVdF(結着剤)とを、89:8:3(重量比)の割合で含んでいる。
【0046】
正極155のうち、正極合材層152が塗工されている部位を、正極合材層塗工部155cという。一方、正極合材層152を有することなく、正極集電部材151のみからなる部位を、正極合材層未塗工部155bという。正極合材層未塗工部155bは、正極155の一方長辺に沿って、正極155の長手方向DAに帯状に延びている。この正極合材層未塗工部155bは、捲回されて渦巻き状をなし、扁平捲回電極体150の軸線方向(図1において左右方向)一方端部(図1及び図3において右端部)に位置している。
なお、本実施形態では、正極活物質153として、LiNi1/3Co1/3Mn1/32を用いている。
【0047】
また、負極156は、図5に示すように、長手方向DAに延びる帯状で、銅箔からなる負極集電部材158と、この負極集電部材158の両面に、それぞれ長手方向DAに延びる帯状に配置された2つの負極合材層159とを有している。負極合材層159は、負極活物質154とSBR(結着剤)とCMC(増粘剤)とを、98:1:1(重量比)の割合で含んでいる。
【0048】
負極156のうち、負極合材層159が塗工されている部位を、負極合材層塗工部156cという。一方、負極合材層159を有することなく、負極集電部材158のみからなる部位を、負極合材層未塗工部156bという。負極合材層未塗工部156bは、負極156の一方長辺に沿って、負極156の長手方向DAに帯状に延びている。この負極合材層未塗工部156bは、捲回されて渦巻き状をなし、扁平捲回電極体150の軸線方向他方端部(図1及び図3において左端部)に位置している。
なお、本実施形態では、負極活物質154として、黒鉛を用いている。
【0049】
扁平捲回電極体150のうち、正極合材層未塗工部155bが捲回されてなる部位を、正極捲回未塗工部155dという(図3参照)。また、扁平捲回電極体150のうち、負極合材層未塗工部156bが捲回されてなる部位を、負極捲回未塗工部156dという。正極捲回未塗工部155dと負極捲回未塗工部156dとは、扁平捲回電極体150の軸線方向端部に位置している。
【0050】
また、扁平捲回電極体150のうち、正極合材層塗工部155c、負極合材層塗工部156c、及び、セパレータ150が捲回されてなる部位を、捲回塗工部150dという(図3参照)。捲回塗工部150dは、正極捲回未塗工部155dと負極捲回未塗工部156dとの間に位置している。捲回塗工部150dの内部には、リチウムイオンを有する非水電解液140を含浸させている。
【0051】
セパレータ157は、PP(ポリプロピレン)/PE(ポリエチレン)/PP(ポリプロピレン)の3層からなるセパレータである。このセパレータ157は、正極155と負極156との間に介在して、これらを離間させている。
【0052】
非水電解液140は、DMC(ジメチルカーボネート)とEMC(エチルメチルカーボネート)と添加剤とを混合した非水溶媒中に、Li塩である六フッ化燐酸リチウム(LiPF6)とEC(エチレンカーボネート)とを溶解した非水電解液である。なお、非水電解液140中のLiPF6のモル濃度は、1.1mol/Lである。また、本実施例1では、電池ケース160内に、非水電解液140を124g注入している。
【0053】
また、扁平捲回電極体150の正極155(具体的には、正極捲回未塗工部155d)には、金属板を加工してなる正極集電端子部材120が溶接されている(図1参照)。詳細には、正極集電端子部材120の正極集電接続部122が、正極捲回未塗工部155dのうち上下方向に見て中央及び上方側の部位に溶接されている。なお、正極集電端子部材120の上端部には、正極外部端子121が一体に形成されている。
【0054】
また、扁平捲回電極体150の負極156(具体的には、負極捲回未塗工部156d)には、金属板を加工してなる負極集電端子部材130が溶接されている(図1参照)。詳細には、負極集電端子部材130の負極集電接続部132が、負極捲回未塗工部156dのうち上下方向に見て中央及び上方側の部位に溶接されている。なお、負極集電端子部材130の上端部には、負極外部端子131が一体に形成されている。
【0055】
ところで、本実施例1では、正極捲回未塗工部155dのうち正極集電端子部材120を溶接する部位(端子溶接部155g)よりも下方に位置する部位(下方正極未塗工部155f、図8参照)を切除している(図3参照)。さらに、負極捲回未塗工部156dのうち負極集電端子部材130を溶接する部位(端子溶接部156g)よりも下方に位置する部位(下方負極未塗工部156f、図8参照)を切除している。
【0056】
なお、扁平捲回電極体150のうち、下方正極未塗工部155fを切除した切断面(扁平捲回電極体150の軸線AX方向を向く切断面、図1において右方向を向く切断面)を、第1切断面150bという。また、扁平捲回電極体150のうち、下方負極未塗工部156fを切除した切断面(扁平捲回電極体150の軸線AX方向を向く切断面、図1において左方向を向く切断面)を、第2切断面150cという。軸線AX方向とは、扁平捲回電極体150の軸線AXに沿った方向をいう。
【0057】
正極捲回未塗工部155dのうち正極集電端子部材120が溶接されない部位は、切除しても、電池特性に影響がない。同様に、負極捲回未塗工部156dのうち負極集電端子部材130が溶接されない部位も、切除しても、電池特性に影響がない。このため、本実施例1では、下方正極未塗工部155f及び下方負極未塗工部156fを切除している。これにより、従来の直方体形状の電池ケース(例えば、図12の電池ケース560)の内部空間のうち、下方正極未塗工部155f及び下方負極未塗工部156fが配置されていた空間部分は、不要になる。
【0058】
そこで、本実施例1では、電池ケース160の形態を、電池ケース160(ケース本体部110)の内側面112のうち、扁平捲回電極体150の第1切断面150bと軸線AX方向(図1において左右方向)に対向する第1対向面112bが、これよりも上方の位置で正極捲回未塗工部155dの端面と軸線AX方向に対向する第1上方内側面112cよりも、軸線AX方向について電池ケース160(ケース本体部110)の内側(図1において左側)に位置する形態とした(図1、図2参照)。
【0059】
さらに、扁平捲回電極体150の第2切断面150cと軸線AX方向(図1において左右方向)に対向する第2対向面112fが、これよりも上方の位置で負極捲回未塗工部156dの端面と軸線AX方向に対向する第2上方内側面112gよりも、軸線AX方向について電池ケース160(ケース本体部110)の内側(図1において右側)に位置する形態とした(図1、図2参照)。
【0060】
詳細には、電池ケース160(ケース本体部110)について、電池ケース160(ケース本体部110)の壁部111のうち第1対向面112bを有する第1対向壁部111bが、第1上方内側面112cを有する第1上方壁部111cよりも、軸線AX方向(図1、図2において左右方向)について電池ケース160の内側(図1、図2において左側)に凹んだ形態としている。
【0061】
さらに、電池ケース160(ケース本体部110)について、第2対向面112fを有する第2対向壁部111fが、第2上方内側面112gを有する第2上方壁部111gよりも、軸線AX方向(図1、図2において左右方向)について電池ケース160の内側(図1、図2において右側)に凹んだ形態としている。
【0062】
なお、本実施例1では、電池ケース160のケース本体部110の内寸を、以下のようにしている。具体的には、図2を参照して説明すると、幅方向(扁平捲回電極体150の軸線方向に一致する方向)の内寸Aを152mm、深さ方向(図2において上下方向)の内寸Bを88mm、奥行きの内寸Cを24mmとしている。
【0063】
さらに、第1対向面112bの高さ寸法D(図2において上下方向寸法)を35mm、第1対向面112bの凹み寸法E(第1上方内側面112cから第1対向面112bまでの軸線AX方向距離に相当)を15mmとしている。さらに、第2対向面112fの高さ寸法F(図2において上下方向寸法)を35mm、第2対向面112bの凹み寸法G(第2上方内側面112gから第2対向面112fまでの軸線AX方向距離に相当)を15mmとしている。
【0064】
このような電池ケース160(ケース本体部110)では、電池ケース160の底面115(下面)から第1対向面112b及び第2対向面112fの上端に至るまでの内部空間S1(図2においてD,Fで示す高さ寸法部分の空間)の単位高さ当たりの容量(電池ケース160の底面積に一致する)を、これよりも上方の内部空間S2の単位高さ当たりの容量(従来の直方体形状の電池ケースの底面積に一致する)よりも小さくすることができる。従って、実施例1の電池ケース160は、従来の直方体形状の電池ケース560(図12、図13参照)に比べて、下方側(底面側)の容量が小さくなる。
【0065】
これにより、後述する注液工程において、一定量(規定量)の非水電解液140を電池ケース内に注入したとき、本実施例1の電池ケース160では、従来の直方体形状の電池ケース560(内面が直方体形状)に比べて、非水電解液140の液面を高くすることができる。従って、本実施例1の電池ケース160を用いることで、従来の電池ケース560を用いる場合に比べて、捲回塗工部150dの軸線方向両端面のうち非水電解液140が接触する部分の面積(液接触面積)を増大させることができる。
【0066】
正極捲回未塗工部155d及び負極捲回未塗工部156dは、正極集電部材151及び負極集電部材158が、比較的大きな隙間を空けて捲回されている。このため、電池ケース160内に非水電解液140を注入すると、直ちに、正極捲回未塗工部155dの内部及び負極捲回未塗工部156dの内部に非水電解液140が進入する。一方、捲回塗工部150dは、密に(ほとんど隙間なく)捲回されているため、注入した非水電解液140は、ゆっくりと捲回塗工部150dの内部に進入(浸透)することになる。
【0067】
このため、電池ケース160内に非水電解液140を注入すると、まず、正極捲回未塗工部155d及び負極捲回未塗工部156dの内部空間と扁平捲回電極体150の外部(すなわち、捲回塗工部150dの外部)に、非水電解液140が溜まる。その後、捲回塗工部150dの外部に溜まっている非水電解液140が、捲回塗工部150dの軸線方向両端面を通じて、ゆっくりと、捲回塗工部150dの内部に浸透してゆく。
【0068】
従って、捲回塗工部150dの軸線方向両端面における液接触面積が大きいほど、非水電解液140が捲回塗工部150dの内部に浸透する速度が速くなり、含浸が完了する(非水電解液140が捲回塗工部150dの内部全体に行き渡る)までの時間を短くすることができる。従って、本実施例1では、後述する含浸工程において、非水電解液140を短時間で捲回塗工部150dの内部に含浸させることができる。
【0069】
しかも、非水電解液140の液面を高くするため(液接触面積を増大させるため)に、電池ケース160内に過剰な非水電解液140を注入する必要がないので、電池のサイクル充放電特性を低下させてしまうこともない。
【0070】
次に、本実施例1にかかる非水電解液二次電池の製造方法について説明する。
図6は、本実施例1にかかる非水電解液二次電池の製造方法の流れを示すフローチャートである。まず、ステップS1(捲回工程)において、正極155、負極156、及び、セパレータ157を扁平形状に捲回して、扁平捲回電極体150A(図8参照)を形成する。
【0071】
具体的には、図4に示すように、帯状の正極集電部材151の表面(両面)に正極合材層152が塗工された正極155を用意する。さらに、図5に示すように、帯状の負極集電部材158の表面(両面)に負極合材層159が塗工された負極156を用意する。
【0072】
次に、図7に示すように、セパレータ157、負極156、セパレータ157、及び正極155を、この順に重ねるようにして捲回する。詳細には、正極155の正極合材層未塗工部155bと負極156の負極合材層未塗工部156bとが、幅方向(図7において左右方向)について互いに反対側に位置するようにして、セパレータ157、負極156、セパレータ157、及び正極155を扁平形状に捲回して、扁平捲回電極体150Aを形成する(図8参照)。
【0073】
次いで、ステップS2(切除工程)に進み、正極捲回未塗工部155dの下方未塗工部155f、及び、負極捲回未塗工部156dの下方未塗工部156fを切除する。ここで、正極捲回未塗工部155dの下方未塗工部155fとは、正極捲回未塗工部155dのうち、扁平捲回電極体150Aを電池ケース160内に収容する姿勢(図8に示す姿勢)としたときに、正極集電端子部材120を溶接する部位(端子溶接部155gという)よりも下方に位置する部位である(図8参照)。また、負極捲回未塗工部156dの下方未塗工部156fとは、負極捲回未塗工部156dのうち、扁平捲回電極体150Aを電池ケース160内に収容する姿勢としたときに、負極集電端子部材130を溶接する部位(端子溶接部156gという)よりも下方に位置する部位である。
これにより、下方未塗工部155f,156fが切除された扁平捲回電極体150(図3参照)が完成する。
【0074】
なお、非水電解液二次電池100では、前述のように、扁平捲回電極体150が、軸線AX方向を左右方向(水平方向)に一致させた姿勢で、電池ケース160内に収容され、扁平捲回電極体150のうち正極155等が弧状をなしている部位150f,150gが、扁平捲回電極体150の上端側と下端側に配置される。従って、扁平捲回電極体150Aを電池ケース160内に収容する姿勢としたときには、正極捲回未塗工部155dのうち正極合材層未塗工部155bが弧状をなしている部位155j,155kが、扁平捲回電極体(捲回未塗工部)の上端側と下端側に配置されると共に、負極捲回未塗工部156dのうち負極合材層未塗工部156bが弧状をなしている部位156j,156kが、扁平捲回電極体(捲回未塗工部)の上端側と下端側に配置される(図8参照)。
【0075】
その後、ステップS3(溶接工程)に進み、扁平捲回電極体150の正極捲回未塗工部155dに、正極集電端子部材120を溶接する。詳細には、正極捲回未塗工部155dの端子溶接部155gに、正極集電端子部材120の正極集電接続部122を溶接する。さらに、扁平捲回電極体150の負極捲回未塗工部156dに、負極集電端子部材130を溶接する。詳細には、負極捲回未塗工部156dの端子溶接部156gに、負極集電端子部材130の負極集電接続部132を溶接する。
【0076】
次に、ステップS4(収容工程)に進み、正極集電端子部材120及び負極集電端子部材130が溶接された扁平捲回電極体150を、ケース本体部110内に収容する。その後、蓋部170でケース本体部110の開口を閉塞し、この状態で、蓋部170とケース本体部110とを溶接する。これにより、電池ケース160内に扁平捲回電極体150が収容された組み立て体101が完成する(図9参照)。なお、蓋部170の中央には、蓋部170を貫通する注液孔170bが形成されている。
【0077】
次いで、ステップS5(注液工程)に進み、組み立て体101の注液孔170bを通じて、非水電解液140を電池ケース160内に注入する。本実施例1では、非水電解液140の注入量を、124g(153.8mL)としている。
なお、注入した非水電解液140は、まず、電池ケース160の内部空間のうち、扁平捲回電極体150の捲回塗工部150dの外部の空間(正極捲回未塗工部155dの内部空間、及び、負極捲回未塗工部156dの内部空間も含む)に溜まる。
【0078】
正極捲回未塗工部155d及び負極捲回未塗工部156dは、正極集電部材151及び負極集電部材158が、比較的大きな隙間を空けて捲回されているため、電池ケース160内に非水電解液140を注入すると、直ちに、正極捲回未塗工部155dの内部及び負極捲回未塗工部156dの内部に非水電解液140が進入する。一方、捲回塗工部150dは、密に(ほとんど隙間なく)捲回されているため、注入した非水電解液140は、その後、ステップS6(含浸工程)において、ゆっくりと捲回塗工部150dの内部に進入(浸透)することになる。
【0079】
次に、ステップS6(含浸工程)に進み、電池ケース160内に注入した非水電解液140、捲回塗工部150dの内部に含浸させる。具体的には、電池ケース160内を減圧した後加圧する操作を、複数回(例えば5回)繰り返し行う。詳細には、真空ポンプ(図示なし)を用いて、電池ケース160の注液孔170bを通じて、電池ケース160内のガスを外部に排出し、電池ケース160内を減圧(例えば、大気圧から100kPa減圧)する。次いで、電池ケース160内を大気圧まで上昇(大気開放)させる。この操作を、複数回(例えば5回)繰り返し行う。これにより、扁平捲回電極体150内への非水電解液140の含浸速度を高めることができる。その後、一定時間、電池ケース160内を大気圧とした状態で放置することで、捲回塗工部150dの内部に非水電解液140を含浸させることができる。
【0080】
次に、注液孔170bを注液蓋175で封止した後、ステップS7(初期充電工程)に進み、非水電解液二次電池の初期充電を行う。例えば、1Cの定電流で、電池電圧値が4.1Vに至るまで充電し、その後、電池電圧値を4.1Vに保持しつつ充電を行い、充電電流値が0.1Aに低下した時点で充電を終了する。これにより、非水電解液二次電池をSOC100%にする。
以上のようにして、非水電解液二次電池100が完成する。
【0081】
なお、1Cは、定格容量値(公称容量値)の容量を有する電池を定電流放電して、1時間で放電終了となる電流値である。本実施例1の非水電解液二次電池100の定格容量(公称容量)は、22.8Ahであるので、1C=22.8Aとなる。
【0082】
(比較例1)
比較例1では、電池ケースとして、従来の直方体形状の電池ケース560(図12参照)を用いて、非水電解液二次電池500を製造した。
【0083】
なお、電池ケース560は、実施例1の電池ケース160と比較して、ケース本体部の壁部を内側に凹ませていない点が異なっており、その他については同様である(図12、図13参照)。具体的には、図13に示すように、ケース本体部510の幅方向の内寸A、深さ方向の内寸B、奥行きの内寸Cを、実施例1のケース本体部110と同様に、152mm、88mm、24mmとしている。従って、比較例1の電池ケース560は、実施例1の電池ケース160に比べて、下方側(底面側)の容量が大きくなっている。
【0084】
また、比較例1では、扁平捲回電極体として、正極捲回未塗工部155dの下方未塗工部155f、及び、負極捲回未塗工部156dの下方未塗工部156fを切除することなく、扁平捲回電極体150Aを用いている。それ以外は、実施例1と同様にして、非水電解液二次電池500を製造した。
【0085】
本比較例1では、直方体形状の電池ケース560(図12参照)を用いているため、注液工程において規定量(具体的には124g)の非水電解液140を電池ケース内に注入したとき、実施例1(電池ケース160)に比べて、非水電解液140の液面が低くなる。従って、捲回塗工部150dの軸線方向両端面のうち非水電解液140が接触する部分の面積(液接触面積)は、実施例1に比べて減少する。このため、後述するように、本比較例1では、実施例1に比べて、非水電解液140の含浸完了時間が長くなった。
【0086】
(比較例2)
比較例2でも、比較例1と同様に、電池ケースとして、従来の直方体形状の電池ケース560(図12参照)を用いている。さらに、比較例1と同様に、扁平捲回電極体として、正極捲回未塗工部155dの下方未塗工部155f、及び、負極捲回未塗工部156dの下方未塗工部156fを切除することなく、扁平捲回電極体150Aを用いている。
【0087】
但し、比較例2では、実施例1及び比較例1と異なり、注液工程において、128g(158.7mL)の非水電解液140を電池ケース内に注入した。このように、過剰な(規定量よりも4g多い)非水電解液140を電池ケース内に注入することで、比較例1に比べて、非水電解液140を電池ケース内に注入したときの液面高さを高くすることができる。従って、捲回塗工部150dの軸線方向両端面のうち非水電解液140が接触する部分の面積(液接触面積)を、比較例1よりも大きくすることができる。このため、後述するように、本比較例2では、比較例1に比べて、非水電解液140の含浸完了時間が短くなる。
上記以外は、実施例1と同様にして、比較例2の非水電解液二次電池500を製造した。
【0088】
(含浸完了時間の調査)
実施例1及び比較例1,2について、以下のようにして、非水電解液の含浸完了時間を調査した。
【0089】
実施例1では、124gの非水電解液140を電池ケース160内に注入し終えたときから、捲回塗工部150dの内部への非水電解液140の含浸が完了するまでの時間(含浸完了時間という)を調査した。詳細には、前述の電池ケース160及び扁平捲回電極体150を用いて、多数の電池を組み立てて用意し、これらの電池にそれぞれ非水電解液140を注入した。その後、それぞれの電池について、上述のように減圧加圧操作を行った後、一定時間が経過する毎に、電池を1つずつ抽出して、捲回塗工部150dの内部への非水電解液140の含浸が完了しているか否かを調査した。
【0090】
なお、含浸完了したか否かの判断は、抽出した電池について初期充電を行い、その後、電池を分解して分析を行って、負極合材層塗工部156cまたはセパレータ157の表面にLiが析出しているか否かで判断した。Liが検出された場合は、未だ、捲回塗工部150dの内部への非水電解液140の含浸が完了していていないと判断することができる。一方、Liが検出されなかった場合は、捲回塗工部150dの内部への非水電解液140の含浸が完了したと判断することができる。このようにして、Liが検出されなかった電池について、非水電解液140を電池ケース160内に注入し終えたときから、当該電池を抽出するまで(初期充電を開始するまで)の経過時間を、含浸完了時間とした。その結果を表1に示す。
【0091】
さらに、比較例1及び比較例2についても、上述のようにして、非水電解液140の含浸完了時間を調査した。これらの結果も表1に示す。
【0092】
【表1】

【0093】
その結果、比較例1では、含浸完了時間が32時間となった。すなわち、非水電解液140を電池ケース560内に注入してから、捲回塗工部150dの内部への非水電解液140の含浸が完了するまでに、32時間を費やした。
【0094】
また、比較例2では、含浸完了時間が20時間となった。すなわち、非水電解液140を電池ケース560内に注入してから、捲回塗工部150dの内部への非水電解液140の含浸が完了するまでに、20時間を費やした。
【0095】
このように、比較例2では、比較例1に比べて、含浸完了時間を12時間短縮することができた。その理由は、比較例2では、注液工程において、比較例1よりも多量(規定量よりも4g多い)の非水電解液140を、電池ケース560内に注入したからである。これにより、比較例2では、比較例1に比べて、非水電解液140を電池ケース内に注入したときの液面高さを高くすることができ、その結果、捲回塗工部150dの軸線方向両端面のうち非水電解液140が接触する部分の面積(液接触面積)を、比較例1よりも大きくすることができたといえる。このため、比較例2では、比較例1に比べて、非水電解液140の含浸完了時間が短くなったといえる。
【0096】
また、実施例1では、含浸完了時間が12時間となった。すなわち、非水電解液140を電池ケース160内に注入してから、捲回塗工部150dの内部への非水電解液140の含浸が完了するまでに、12時間を費やした。
【0097】
このように、実施例1では、比較例1に比べて、含浸完了時間を20時間も短縮することができた。その理由は、実施例1では、電池ケース160(ケース本体部110)について、電池ケース160(ケース本体部110)の壁部111のうち第1対向面112bを有する第1対向壁部111bを、第1上方内側面112cを有する第1上方壁部111cよりも、軸線AX方向について電池ケース160の内側に凹んだ形態としているからである。さらに、第2対向面112fを有する第2対向壁部111fを、第2上方内側面112gを有する第2上方壁部111gよりも、軸線AX方向について電池ケース160の内側に凹んだ形態としているからである(図1、図2参照)。
【0098】
これにより、実施例1の電池ケース160は、従来の直方体形状の電池ケース560(図12、図13参照)に比べて、下方側(底面側)の容量を小さくしている。その結果、非水電解液140を電池ケース内に注入したとき、実施例1では、注液量が同量(124g)であるにも拘わらず、比較例1に比べて、非水電解液140の液面を高くすることができた。
【0099】
これにより、実施例1では、比較例1に比べて、捲回塗工部150dの軸線方向両端面のうち非水電解液140が接触する部分の面積(液接触面積)を増大させることができた。その結果、実施例1では、比較例1に比べて、非水電解液140が捲回塗工部150dの内部に浸透する速度が速くなり、含浸が完了する(非水電解液140が捲回塗工部150dの内部全体に行き渡る)までの時間を短くすることができたといえる。
【0100】
しかも、実施例1では、実施例1よりも注液量の多い比較例2と比べても、含浸完了時間が短くなっている。
以上より、実施例1では、非水電解液140を短時間で捲回塗工部150dの内部に含浸させることができるといえる。これにより、電池の製造時間が短縮されるので、実施例1の非水電解液二次電池100は、安価な電池となる。
【0101】
(サイクル充放電試験)
次に、実施例1及び比較例1,2の非水電解液二次電池について、サイクル充放電試験を行った。
【0102】
具体的には、各々の二次電池について、25℃の温度環境下で、充放電サイクルを行った。具体的には、各々の二次電池をSOC20%の状態とし、まず、200A(8.8C)の一定電流値で、10秒間、充電を行う。次いで、5秒間休止した後、200A(8.8C)の一定電流値で、10秒間、放電を行う。その後、5秒間休止する。この充放電を1サイクルとして、各二次電池について、複数サイクルの充放電を行った。このように、本試験では、ハイレート(8.8C)で、充放電サイクルを行っている。
【0103】
このサイクル充放電試験では、所定サイクル毎に、各二次電池のIV抵抗値を測定し、測定されたIV抵抗値が、初期(サイクル充放電試験前)のIV抵抗値の1.5倍となったときのサイクル数を、劣化サイクル数として求めた。その結果を表1に示す。
【0104】
なお、IV抵抗値は、以下のようにして求めている。具体的には、各々の二次電池について、SOC20%の状態に調整し、25℃の温度環境下で、1Cの一定電流値で、10秒間放電を行い、放電終了時の電池電圧値を測定した。さらに、放電電流値のみを、3C、5C、10Cと異ならせて、それ以外は上記と同様の条件で放電を行って、それぞれの放電電流値による10秒間放電終了時の電池電圧値を測定した。
【0105】
その後、各二次電池について、横軸を放電電流値、縦軸を放電終了時の電池電圧値とした座標平面に、上記の放電により得られたデータをプロットした。そして、各二次電池について、これらのプロットデータに基づいて、最小二乗法により近似直線(一次式)を算出した。その傾きを各二次電池のIV抵抗値として得た。
【0106】
表1に示すように、比較例1では、劣化サイクル数が7500サイクルとなった。すなわち、7500サイクルのハイレート充放電を行うことで、電池のIV抵抗値が、初期値の1.5倍に上昇した。
【0107】
一方、比較例2では、劣化サイクル数が2400サイクルとなった。すなわち、2400サイクルのハイレート充放電を行うことで、電池のIV抵抗値が、初期値の1.5倍に上昇した。このように、比較例2では、比較例1に比べて、劣化サイクル数が1/3以下にまで低下し、サイクル充放電特性が極めて大きく低下した。
【0108】
その要因は、比較例2では、非水電解液140を電池ケース内に注入したときの液面高さを高くするために、比較例1に比べて、多量の(規定量よりも4g多い)非水電解液140を電池ケース内に注入したことにある。過剰な非水電解液140が電池内に存在していることが原因で、ハイレート充放電サイクルにより、早期に、電池の内部抵抗(IV抵抗)が上昇してしまったと考えられる。
【0109】
これに対し、実施例1では、劣化サイクル数が7800サイクルとなった。すなわち、7800サイクルのハイレート充放電を行うことで、電池のIV抵抗値が、初期値の1.5倍に上昇した。このように、実施例1では、劣化サイクル数が比較例1を上回り、サイクル充放電特性が向上した。
【0110】
以上の結果より、実施例1の製造方法では、電池のサイクル充放電特性を低下させることなく(詳細には、サイクル充放電特性を良好にして)、非水電解液を短時間で扁平捲回電極体の捲回塗工部内に含浸させることができたといえる(表1参照)。また、実施例1の電池は、サイクル充放電特性が良好で、且つ、安価な電池であるといえる。
【0111】
(実施例2)
次に、実施例2の非水電解液二次電池200について説明する。本実施例2の非水電解液二次電池200は、実施例1の非水電解液二次電池100と比較して、電池ケースのケース本体部の形態が異なり、その他については同様である(図10、図11参照)。
【0112】
具体的には、本実施例2の電池ケース260(ケース本体部210)は、直方体形状のケースの内部のうち、扁平捲回電極体150の第1切断面150bと軸線AX方向(図10において左右方向)に対向する位置に、スペーサー216を有している。このスペーサー216は、ケース本体部210と一体となって、ケース本体部210の壁部212の一部を構成する。
【0113】
なお、スペーサー216は、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂製で、直方体形状をなしている。スペーサー216の外寸は、14mm(電池ケース260の幅方向寸法、図10において左右方向寸法)×35mm(電池ケース260の高さ方向寸法、図10において上下方向寸法)×24mm(電池ケース260の奥行き方向寸法、図10において紙面に直交する方向の寸法)である。スペーサー216の奥行き寸法は、電池ケース260(ケース本体部210)の奥行き内寸(図11のC寸法)と一致している。
【0114】
このような電池ケース260でも、実施例1の電池ケース160と同様に、適切に、第1対向面212bを、第1上方内側面212cよりも軸線AX方向について電池ケースの内側(図10において左側)に位置させることができる。具体的には、スペーサー216の側面のうち、扁平捲回電極体150の第1切断面150bと軸線AX方向に対向する面(図10において左側を向く面)が、第1対向面212bとなる。この第1対向面212bは、第1上方内側面212cよりも軸線AX方向について電池ケースの内側に位置している(図10参照)。
【0115】
さらに、本実施例2の電池ケース260(ケース本体部210)は、直方体形状の電池ケースの内部のうち、扁平捲回電極体150の第2切断面150cと軸線AX方向(図10において左右方向)に対向する位置にも、スペーサー217を有している。このスペーサー217も、ケース本体部210と一体となって、ケース本体部210の壁部212の一部を構成する。なお、スペーサー217は、スペーサー216と同等品であり、同一形状である。
【0116】
これにより、実施例1の電池ケース160と同様に、適切に、第2対向面212fを、第2上方内側面212gよりも軸線AX方向について電池ケースの内側(図10において右側)に位置させることができる。具体的には、スペーサー217の側面のうち扁平捲回電極体150の第2切断面150cと軸線AX方向に対向する面(図10において右側を向く面)が、第2対向面212fとなる。この第2対向面212fは、第2上方内側面212gよりも軸線AX方向について電池ケースの内側に位置している(図10参照)。
【0117】
なお、本実施例2では、電池ケース260のケース本体部210の内寸を、以下のようにしている。具体的には、図11を参照して説明すると、幅方向(扁平捲回電極体150の軸線方向に一致する方向)の内寸Aを152mm、深さ方向(図11において上下方向)の内寸Bを88mm、奥行きの内寸Cを24mmとしている。
【0118】
さらに、第1対向面212bの高さ寸法D(図11において上下方向寸法)を35mm、第1対向面112bの突出寸法E(第1上方内側面212cから第1対向面212bまでの軸線AX方向距離に相当)を14mmとしている。さらに、第2対向面212fの高さ寸法F(図11において上下方向寸法)を35mm、第2対向面212bの突出寸法G(第2上方内側面212gから第2対向面212fまでの軸線AX方向距離に相当)を14mmとしている。
要するに、本実施例2の電池ケース260は、比較例1の電池ケース560の内部に、スペーサー216,217を配置したものに相当する。
【0119】
このような電池ケース260(ケース本体部210)でも、実施例1の電池ケース160と同様に、底面215(下面)から第1対向面212b及び第2対向面212fの上端に至るまでの内部空間S1(図11においてD,Fで示す高さ寸法部分の空間)の単位高さ当たりの容量(ケース本体部210の底面積に一致する)を、これよりも上方の内部空間S2の単位高さ当たりの容量(比較例1の電池ケース560の底面積に一致する)よりも小さくすることができる。従って、実施例2の電池ケース260は、従来の直方体形状の電池ケース560(図12、図13参照)に比べて、下方側(底面側)の容量が小さくなる。
【0120】
これにより、本実施例2でも、実施例1と同様に、注液工程において、一定量(規定量)の非水電解液140を電池ケース260内に注入したとき、従来の直方体形状の電池ケース560(内面が直方体形状)に比べて、非水電解液140の液面を高くすることができる。従って、本実施例2の電池ケース260を用いることで、従来の電池ケース560を用いる場合に比べて、捲回塗工部の軸線方向両端面のうち非水電解液140が接触する部分の面積(液接触面積)を増大させることができる。
【0121】
従って、本実施例2では、含浸工程において、非水電解液140を短時間で捲回塗工部150dの内部に含浸させることができる。しかも、非水電解液140の液面を高くするため(液接触面積を増大させるため)に、電池ケース260内に過剰な非水電解液140を注入する必要がないので、電池のサイクル充放電特性を低下させてしまうこともない。
【0122】
(含浸完了時間の調査)
実施例2についても、実施例1と同様な方法により、非水電解液140の含浸完了時間を調査した。その結果を表2に示す。なお、本実施例2との比較のため、前述の比較例1,2の結果も、表2に示す。
【0123】
【表2】

【0124】
実施例2では、実施例1と同様に、含浸完了時間が12時間となった。すなわち、非水電解液140を電池ケース260内に注入してから、捲回塗工部150dの内部への非水電解液140の含浸が完了するまでに、12時間を費やした。
【0125】
このように、実施例2では、比較例1に比べて、含浸完了時間を20時間も短縮することができた。その理由は、実施例1と同様である。具体的には、前述のような形態の電池ケース260(ケース本体部210)を用いることで、比較例1に比べて、捲回塗工部150dの軸線方向両端面のうち非水電解液140が接触する部分の面積(液接触面積)を増大させることができたからである。その結果、実施例2では、比較例1に比べて、非水電解液140が捲回塗工部150dの内部に浸透する速度が速くなり、含浸が完了する(非水電解液140が捲回塗工部150dの内部全体に行き渡る)までの時間を短くすることができたといえる。
【0126】
しかも、実施例2では、実施例2よりも注液量の多い比較例2と比べても、含浸完了時間が短くなっている。
以上より、実施例2では、非水電解液140を短時間で捲回塗工部150dの内部に含浸させることができるといえる。これにより、電池の製造時間が短縮されるので、実施例2の非水電解液二次電池200は、安価な電池となる。
【0127】
(サイクル充放電試験)
また、実施例2についても、実施例1と同様な方法により、サイクル充放電を行って、電池のIV抵抗値が、初期(サイクル充放電試験前)のIV抵抗値の1.5倍となったときのサイクル数を、劣化サイクル数として求めた。その結果も表2に示す。
【0128】
実施例2では、劣化サイクル数が7500サイクルとなった。すなわち、7500サイクルのハイレート充放電を行うことで、電池のIV抵抗値が、初期値の1.5倍に上昇した。このように、実施例2では、比較例1に比べて含浸完了時間を大幅に短縮しつつも、劣化サイクル数が比較例1と同等となり、サイクル充放電特性が良好となった。
【0129】
以上の結果より、実施例2では、電池のサイクル充放電特性を低下させることなく、非水電解液を短時間で扁平捲回電極体の捲回塗工部内に含浸させることができたといえる(表2参照)。また、実施例2の電池は、サイクル充放電特性が良好で、且つ、安価な電池であるといえる。
【0130】
以上において、本発明を実施例1,2に即して説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0131】
100,200 非水電解液二次電池
160,260 電池ケース
110,210 ケース本体部
111,211 壁部
111b 第1対向壁部
111c 第1上方壁部
111f 第2対向壁部
111g 第2上方壁部
112,212 内側面
112b,212b 第1対向面
112c,212c 第1上方内側面
112f,212f 第2対向面
112g,212g 第2上方内側面
120 正極集電端子部材
130 負極集電端子部材
170 蓋部
170b 注液孔
140 非水電解液
150 扁平捲回電極体
150b 第1切断面
150c 第2切断面
150d 捲回塗工部
155 正極
155b 正極合材層未塗工部
155c 正極合材層塗工部
155d 正極捲回未塗工部
155f 下方正極未塗工部
156 負極
156b 負極合材層未塗工部
156c 負極合材層塗工部
156d 負極捲回未塗工部
156f 下方負極未塗工部
157 セパレータ
216,217 スペーサー
AX 軸線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極、負極、及び、セパレータを扁平形状に捲回してなる扁平捲回電極体と、
上記扁平捲回電極体を収容する角形の電池ケースと、
上記扁平捲回電極体内に含浸している非水電解液と、
集電端子部材と、を備え、
上記扁平捲回電極体は、
上記正極の合材層塗工部、上記負極の合材層塗工部、及び、上記セパレータが捲回されてなる捲回塗工部と、
上記扁平捲回電極体の軸線方向両端部に位置し、上記正極の合材層未塗工部と上記負極の合材層未塗工部とがそれぞれ捲回されてなる捲回未塗工部と、を有し、
上記集電端子部材は、上記捲回未塗工部に溶接されてなる
非水電解液二次電池の製造方法において、
上記正極、上記負極、及び、上記セパレータを扁平形状に捲回して扁平捲回電極体を形成する捲回工程と、
上記扁平捲回電極体の上記捲回未塗工部のうち、上記扁平捲回電極体を上記電池ケース内に収容する姿勢としたときに上記集電端子部材を溶接する予定部位または溶接した部位よりも下方に位置する下方未塗工部、を切除する切除工程と、
上記下方未塗工部を切除した上記扁平捲回電極体を、上記電池ケース内に収容する工程と、
上記扁平捲回電極体を収容した上記電池ケース内に、上記非水電解液を注入する注液工程と、
上記電池ケース内に注入した上記非水電解液を上記捲回塗工部内に含浸させる含浸工程と、を備え、
上記電池ケースとして、当該電池ケースの内側面のうち上記下方未塗工部を切除した上記扁平捲回電極体の切断面と上記軸線方向に対向する対向面を、これより上方の位置で上記捲回未塗工部の端面と上記軸線方向に対向する上方内側面よりも、上記軸線方向について上記電池ケースの内側に位置させた形態の電池ケースを用いる
非水電解液二次電池の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の非水電解液二次電池の製造方法であって、
前記電池ケースは、当該電池ケースの壁部のうち前記対向面を有する対向壁部が、前記上方内側面を有する上方壁部よりも、前記軸線方向について上記電池ケースの内側に凹んだ形態とすることにより、上記対向面を上記上方内側面よりも上記軸線方向について上記電池ケースの内側に位置させてなる
非水電解液二次電池の製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載の非水電解液二次電池の製造方法であって、
前記電池ケースは、
直方体形状のケースの内部のうち前記扁平捲回電極体の前記切断面と前記軸線方向に対向する位置に配置されたスペーサーを有し、
上記スペーサーの側面であって上記切断面と上記軸線方向に対向する前記対向面が、前記上方内側面よりも上記軸線方向について上記電池ケースの内側に位置してなる
非水電解液二次電池の製造方法。
【請求項4】
正極、負極、及び、セパレータを扁平形状に捲回してなる扁平捲回電極体と、
上記扁平捲回電極体を収容する角形の電池ケースと、
上記扁平捲回電極体内に含浸している非水電解液と、
集電端子部材と、を備え、
上記扁平捲回電極体は、
上記正極の合材層塗工部、上記負極の合材層塗工部、及び、上記セパレータが捲回されてなる捲回塗工部と、
上記扁平捲回電極体の軸線方向両端部に位置し、上記正極の合材層未塗工部と上記負極の合材層未塗工部とがそれぞれ捲回されてなる捲回未塗工部と、を有し、
上記集電端子部材は、上記捲回未塗工部に溶接されてなる
非水電解液二次電池において、
上記捲回未塗工部のうち、上記集電端子部材が溶接されている部位よりも下方に位置する下方未塗工部が、切除されてなり、
上記電池ケースの内側面のうち上記下方未塗工部を切除した上記扁平捲回電極体の切断面と上記軸線方向に対向する対向面が、これより上方の位置で上記捲回未塗工部の端面と上記軸線方向に対向する上方内側面よりも、上記軸線方向について上記電池ケースの内側に位置してなる
非水電解液二次電池。
【請求項5】
請求項4に記載の非水電解液二次電池であって、
前記電池ケースの壁部のうち前記対向面を有する対向壁部を、前記上方内側面を有する上方壁部よりも、前記軸線方向について上記電池ケースの内側に凹んだ形態とすることにより、上記対向面が、上記上方内側面よりも上記軸線方向について上記電池ケースの内側に位置してなる
非水電解液二次電池。
【請求項6】
請求項4に記載の非水電解液二次電池であって、
前記電池ケースは、
直方体形状のケースの内部のうち前記扁平捲回電極体の前記切断面と前記軸線方向に対向する位置に配置されたスペーサーを有し、
上記スペーサーの側面であって上記切断面と上記軸線方向に対向する前記対向面が、前記上方内側面よりも上記軸線方向について上記電池ケースの内側に位置してなる
非水電解液二次電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−97980(P2013−97980A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−239035(P2011−239035)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】