説明

非球状シリカゾル、その製造方法および研磨用組成物

【解決手段】動的光散乱法により測定される平均粒子径が3〜150nmの範囲、短径/長径比が0.01〜0.8の範囲、比表面積が10〜800m2/gの範囲にあり、表面
に複数の疣状突起を有する非球状シリカ微粒子が分散媒に分散してなる非球状シリカゾルおよびその製造方法。
【効果】本発明に係る非球状シリカゾルに含まれる非球状シリカ微粒子は、通常の非球状シリカ微粒子とは異なる特異な構造を有することから、本発明に係る非球状シリカゾルは、複合ゾル、充填性、吸油性、電気特性、光学特性あるいは物理特性に優れ、たとえば研磨材および研磨用組成物として有用であり、特に研磨特性の効果において優れる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、核となる非球状シリカ微粒子の表面に複数の疣状突起を有してなる非球状シリカ微粒子が分散媒に分散してなる非球状シリカゾルおよびその製造方法に関するものである。また、本発明は、該非球状シリカゾルを含む研磨用組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
非球状シリカ微粒子が溶媒に分散してなる非球状シリカゾルのうち、非球状シリカ微粒子が球状以外の形状からなる非球状シリカゾルとしては、鎖状、数珠状または長球状のものが知られている。この様な非球状シリカゾルは、例えば、各種研磨剤として使用されている。
【0003】
異形粒子を含む非球状シリカゾルの製造方法としては、特開平1−317115号公報(特許文献1)に、画像解析法による測定粒子径(D1)と窒素ガス吸着法による測定粒
子径(D2)の比D1/D2が5以上であり、D1は40〜500ミリミクロン、そして電子
顕微鏡観察による5〜40ミリミクロンの範囲内の一様な太さで一平面内のみの伸長を有する細長い形状の非晶質コロイダルシリカ粒子が液状媒体中に分散されてなる非球状シリカゾルの製造方法として、(a)所定の活性珪酸のコロイド水溶液に、水溶性のカルシウム塩またはマグネシウム塩などを含有する水溶液を、所定量添加し、混合する工程、(b) 更に、アルカリ金属酸化物、水溶性有機塩基又はそれらの水溶性珪酸塩をSiO2/M2O(但し、Mは上記アルカリ金属原子又は有機塩基の分子を表わす。)モル比として20〜200となるように加えて混合する工程、(c)前工程によって得られた混合物を60〜150℃で0.5〜40時間加熱する工程からなる製造方法が開示されている。
【0004】
特開平4−65314号公報(特許文献2)には、画像解析法による測定粒子径(D1
ミリミクロン)と窒素ガス吸着法による測定粒子径(D2ミリミクロン)の比D1/D2が3以上5未満であって、このD1は40〜500ミリミクロンであり、そして電子顕微鏡観
察による5ミリミクロンより大きいが100ミリミクロン以下の範囲内の一様な太さで一平面内のみの伸長を有する細長い形状の非晶質コロイダルシリカ粒子が液状媒体中に分散されてなるSiO2濃度50重量%以下の安定な非球状シリカゾルの製造方法として、細
長い形状の非球状シリカゾルに活性珪酸の水溶液の添加を始めると、原料ゾルのコロイダルシリカ粒子の崩壊が起らずに、元の細長い形状の粒子表面上に、加えられた活性珪酸がシロキサン結合を介して沈積することによって太さの増大した細長い形状のコロイダルシリカが得られることについて開示されている。
【0005】
特開平4−187512号公報(特許文献3)には、SiO2として0.05〜5.0wt%のアルカリ金属珪酸塩水溶液に、珪酸液を添加して混合液のSiO2/M2O(モル比、Mはアルカリ金属又は第4級アンモニウム)を30〜60とした後に、Ca,Mg,Al,
In,Ti,Zr,Sn,Si,Sb,Fe,Cuおよび希土類金属からなる群から選ばれた1
種または2種以上の金属の化合物を添加し(添加時期は、前記珪酸液添加の前または添加中でも良い)、 この混合液を60℃以上の任意の温度で一定時間維持し、更に珪酸液を
添加して反応液中のSiO2/M2O(モル比)を60〜100としてなる実質的に鎖状形
状の非球状シリカ微粒子が分散したゾルの製造方法が開示されている。
【0006】
特許第3441142号公報(特許文献4)には、電子顕微鏡写真の画像解析により求められる7〜1000nmの長径と 0.3〜0.8 の短径/長径比を有するコロイダルシリカ粒子の数が全粒子中50%以上を占めるシリカの安定なゾルからなる半導体ウェーハーの研磨剤が提案されている。
【0007】
特開平7−118008号公報(特許文献5)には、活性珪酸のコロイド水溶液に、水溶性のカルシウム塩、マグネシウム塩又はこれらの混合物の水溶液を添加し、得られた水溶液にアルカリ性物質を加え、得られた混合物の一部を60℃以上に加熱してヒール液とし、残部をフィード液として、当該ヒール液に当該フィード液を添加し、当該添加の間に、水を蒸発させる事によりSiO2濃度6〜30重量%まで濃縮することよりなる細長い
形状の非球状シリカゾルの製造法が開示されている。
【0008】
特開平8−279480号公報(特許文献6)には、(1)珪酸アルカリ水溶液を鉱酸で中和しアルカリ性物質を添加して加熱熟成する方法、(2)珪酸アルカリ水溶液を陽イオン交換処理して得られる活性珪酸にアルカリ性物質を添加して加熱熟成する方法、(3)エチルシリケート等のアルコキシシランを加水分解して得られる活性珪酸を加熱熟成する方法、または、(4)シリカ微粉末を水性媒体中で直接に分散する方法等によって製造されるコロイダルシリカ水溶液は、通常、4〜1,000nm(ナノメートル)、好ましくは7〜
500nmの粒子径を有するコロイド状シリカ粒子が水性媒体に分散したものであり、SiO2 として0.5〜50重量%、好ましくは0.5〜30重量%の濃度を有する。上記シリカ粒子の粒子形状は、球状、いびつ状、偏平状、板状、細長い形状、繊維状等が挙げられることが記載されている。
【0009】
特開平11−214338号公報(特許文献7)には、コロイダルシリカ粒子を主材とした研磨材を用いるシリコンウェハーの研磨方法であって、蒸留により精製した珪酸メチルを、メタノール溶媒中でアンモニア又はアンモニアとアンモニウム塩を触媒として水と反応させることにより得られるコロイダルシリカ粒子を用い、且つ該コロイダルシリカ粒子の長径/短径比が、1.4以上であることを特徴とするシリコンウェハーの研磨方法が提案されている。
【0010】
国際公開番号WO00/15552(特許文献8)には、平均粒子径10〜80nmの球状コロイダルシリカ粒子とこの球状コロイダルシリカ粒子を接合する金属酸化物含有シリカからなり、画像解析法による測定粒子径(D1)と球状コロイダルシリカ粒子の平均
粒子径(窒素吸着法による測定粒子径/D2)の比D1/D2が3以上であって、このD1は50〜500nmであり、球状コロイダルシリカ粒子が一平面内のみにつながった数珠状コロイダルシリカ粒子が分散されてなる非球状シリカゾルが記載されている。
【0011】
また、その製造方法として、(a)所定の活性珪酸のコロイド水溶液又は酸性非球状シリカゾルに、水溶性金属塩の水溶液を、前記コロイド水溶液又は酸性非球状シリカゾルのSiO2に対して、金属酸化物として1〜10重量%となる量を加えて混合液1を調製す
る工程、(b)前記混合液1に、平均粒子径10〜80nm、pH2〜6の酸性球状非球状シリカゾルを、この酸性球状非球状シリカゾルに由来するシリカ含量(A)とこの混合液1に由来するシリカ含量(B)の比A/B(重量比)が5〜100、かつ、この酸性球状非球状シリカゾルとこの混合液1との混合により得られる混合液2の全シリカ含量(A+B)が混合液2においてSiO2濃度5〜40重量%となる量加えて混合する工程、お
よび、(c)得られた混合液2にアルカリ金属水酸化物、水溶性有機塩基又は水溶性珪酸塩をpHが7〜11となるように加えて混合し、加熱する工程からなる前記非球状シリカゾルの製造方法が記載されている。
【0012】
特開2001−11433号公報(特許文献9)には、SiO2として0.5〜10重
量%を含有し、かつ、pHが2〜6である、活性珪酸のコロイド水溶液に、水溶性のII価又はIII価の金属の塩を単独又は混合して含有する水溶液を、同活性珪酸のコロイド水溶
液のSiO2に対して、金属酸化物(II価の金属の塩の場合はMOとし、III価の金属の塩の場合はM23とする。但し、MはII価又はIII価の金属原子を表し、Oは酸素原子を表
す。)として1〜10重量%となる量を加えて混合し、得られた混合液(1)に、平均粒子径10〜120nm、pH2〜6の酸性球状非球状シリカゾルを、この酸性球状非球状シリカゾルに由来するシリカ含量(A)とこの混合液(1)に由来するシリカ含量(B)の比A/B(重量比)が5〜100、かつ、この酸性球状非球状シリカゾルとこの混合液(1)との混合により得られる混合液(2)の全シリカ含量(A+B)が混合液(2)においてSiO2濃度5〜40重量%となるように加えて混合し混合液(2)にアルカリ金
属水酸化物等をpHが7〜11となるように加えて混合し、得られた混合液(3)を100〜200℃で0.5〜50時間加熱する数珠状の非球状シリカゾルの製造方法が記載されている。
【0013】
特開2001−48520号公報(特許文献10)には、シリカ濃度1〜8モル/リットル、酸濃度0.0018〜0.18モル/リットルで水濃度2〜30モル/リットルの範囲の組成で、溶剤を使用しないでアルキルシリケートを酸触媒で加水分解した後、シリカ濃度が0.2〜15モル/リットルの範囲となるように水で希釈し、次いでpHが7以上となるようにアルカリ触媒を加え加熱して珪酸の重合を進行させて、電子顕微鏡観察による太さ方向の平均直径が5〜100nmであり、長さがその15〜50倍の長さの細長い形状の非晶質シリカ粒子が液状分散体中に分散されている非球状シリカゾルの製造方法が記載されている。
【0014】
特開2001−150334号公報(特許文献11)には、水ガラスなどのアルカリ金属珪酸塩の水溶液を脱陽イオン処理することにより得られるSiO2濃度2〜6重量%程
度の活性珪酸の酸性水溶液に、アルカリ土類金属、例えば、Ca、Mg、Baなどの塩をその酸化物換算で上記活性珪酸のSiO2に対し 100〜1500ppmの重量比で添加し、更にこの液中SiO2/M2O (M は、アルカリ金属原子、NH4 又は第4級アンモニウム基を表す。) モル比が20〜150となる量の同アルカリ物質を添加することにより得られる液を当初ヒール液とし、同様にして得られる2〜6重量%のSiO2濃度と20
〜150 のSiO2/M2O (M は、上記に同じ。) モル比を有する活性珪酸水溶液をチ
ャージ液として、60〜150℃で前記当初ヒール液に前記チャージ液を、1時間当たり、チャージ液SiO2/当初ヒール液SiO2の重量比として0.05〜1.0 の速度で
、液から水を蒸発除去しながら(又はせずに)、添加してなる歪な形状を有する非球状シリカゾルの製造方法が記載されている。
【0015】
特開2003−133267号公報(特許文献12)には、ディッシング(過研磨)を抑制し、基板表面を平坦に研磨することができる研磨用粒子として、平均粒子径が5〜300nmの範囲にある1次粒子が2個以上結合した異形粒子群を含むことを特徴とする研磨用粒子、特には研磨用粒子中の全1次粒子の粒子数に占める、前記異形粒子群を構成する1次粒子の粒子数が5〜100%の範囲にある研磨用粒子が有効でることについて記載がある。
【0016】
特開2004−288732号公報(特許文献13)には、非真球状コロイダルシリカ、酸化剤および有機酸を含有し、残部が水であることを特徴とする半導体研磨用スラリーについて開示されており、その中で、非真球状コロイダルシリカの(長径/短径)が1.2〜5.0のものが提案されており、特開2004−311652号公報(特許文献14)にも同様な非真球状コロイダルシリカが開示されている。
【0017】
また、シリカ−被覆された鎖状非球状シリカゾルについて、特開2002−3212号公報(特許文献15)には、(a)SiO2 として0.05〜5.0重量%のアルカリ金属ケイ酸塩水溶液に、ケイ酸液を添加して混合液のSiO2 /M2 O(モル比、Mはアルカリ金属又は第4級アンモニウム)を30〜60とする工程、(b)前記ケイ酸液添加工程の前、添加工程中または添加工程後に、原子価が2価〜4価の金属の1種または2種以
上の金属化合物を添加する工程、(c)該混合液を60℃以上の任意の温度で一定時間維持する工程、(d)次いで該反応液に再びケイ酸液を添加して反応液中のSiO2/M2O(モル比)を60〜200とする工程、(e)さらに該反応液にアルカリ側でアルカリケイ酸塩水溶液とアルカリアルミン酸塩水溶液とを同時に添加する工程、からなるシリカ−被覆鎖状非球状シリカゾルの製造方法が開示されている。
【0018】
シリカ系微粒子の表面に突起状構造を有する例として、特開平3−257010号公報(特許文献16)には、シリカ粒子表面に電子顕微鏡で観察して、0.2〜5μmのサイズの連続的な凹凸状の突起を有し、平均粒子径が5〜100μm、BET法比表面積が20m2/g以下、且つ、細孔容積が、0.1mL/g以下であるシリカ粒子に関する記載
がある。
【0019】
また、特開2002−38049号公報(特許文献17)には、シード粒子全面に、実質上球状および/または半球状の突起物を有するシリカ系微粒子であって、該突起物が化学結合によりシード粒子に結着していることを特徴とするシリカ系微粒子およびシード粒子全面に、実質上球状および/または半球状の突起物を有するシリカ系微粒子であって、該突起物が化学結合によりシード粒子に結着してなるシリカ系微粒子について記載がある。更に、(A)特定のアルコキシシラン化合物を加水分解、縮合させてポリオルガノシロキサン粒子を生成させる工程、(B)該ポリオルガノシロキサン粒子を、表面吸着剤により表面処理する工程、および(C)上記(B)工程で表面処理されたポリオルガノシロキサン粒子全面に、該アルコキシシラン化合物を用いて突起を形成させる工程、を含むシリカ系微粒子の製造方法について記載がある。
【0020】
また、特開2004−35293号公報(特許文献18)には、シード粒子全面に、実質上球状および/または半球状の突起物を有するシリカ系粒子であって、該突起物が化学結合によりシード粒子に結着しており、かつシード粒子と突起物における10%圧縮時の圧縮弾性率が、それぞれ異なることを特徴とするシリカ系粒子が開示されている。
【0021】
しかしながら、特開平3−257010号公報(特許文献16)に記載の粒子は平均粒子径が5〜100μmのシリカのみからなるものであり、特開2002−38049号公報(特許文献17)で開示されるシリカ系粒子は、その平均粒子径が実質的には0.5〜30μのみが開示されており、特開2004−35293号公報(特許文献18)についても同様である。
【特許文献1】特開平1−317115号公報
【特許文献2】特開平4−65314号公報
【特許文献3】特開平4−187512号公報
【特許文献4】特許第3441142号公報
【特許文献5】特開平7−118008号公報
【特許文献6】特開平8−279480号公報
【特許文献7】特開平11−214338号公報
【特許文献8】国際公開WO00/15552公報
【特許文献9】特開2001−11433号公報
【特許文献10】特開2001−48520号公報
【特許文献11】特開2001−150334号公報
【特許文献12】特開2003−133267号公報
【特許文献13】特開2004−288732号公報
【特許文献14】特開2004−311652号公報
【特許文献15】特開2002−3212号公報
【特許文献16】特開平3−257010号公報
【特許文献17】特開2002−38049号公報
【特許文献18】特開2004−35293号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
本発明は、研磨性等の優れた特性を有し、平均粒子径の小さい、非球状のシリカ微粒子が分散媒に分散してなるシリカゾルおよびその製造方法を提供することを課題とする。 また、該非球状シリカゾルを含む研磨用組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
前記課題を解決する本発明は、動的光散乱法により測定される平均粒子径が3〜200nmの範囲、短径/長径比が0.01〜0.8の範囲、比表面積が10〜800m2/g
の範囲にあり、表面に複数の疣状突起を有する非球状シリカ微粒子が分散媒に分散してなることを特徴とする非球状シリカゾルである。
【0024】
前記非球状シリカゾルの好適な態様として、
前記疣状突起を有する非球状シリカ微粒子の長軸を含む平面上において、前記非球状シリカ微粒子の外縁上の任意の点から、該外縁上の点を通り前記長軸と直交する直線と前記長軸との交点Bまでの距離をY、前記非球状シリカ微粒子の外縁と前記長軸との一方の交点Aから、前記交点Bまでの距離をXとしてX−Y曲線を描いた場合に、該X−Y曲線が複数の極大値を有し、
前記疣状突起を有する非球状シリカ微粒子の長軸を含む平面上において、前記非球状シリカ微粒子の外縁上の任意の点から、該外縁上の点を通り前記長軸と直交する直線と前記長軸との交点Bまでの距離をYとした場合に、前記距離Yの変動係数が5〜50%の範囲にあり、
前記疣状突起を有する非球状シリカ微粒子の個数が、分散質であるシリカ微粒子の全個数の50%以上であり、
前記疣状突起を有する非球状シリカ微粒子が、[SiO4/2]単位から構成される。
【0025】
他の発明は、前記非球状シリカゾルからなる研磨材である。
他の発明は、前記非球状シリカゾルを含むことを特徴とする研磨用組成物である。
他の発明は、強酸の塩からなる電解質の存在下(電解質の当量数を(EE)で表す)、下記A液100質量部(シリカ換算)対して、B液50〜2500質量部(シリカ換算)を添加して非球状シードシリカ微粒子を成長させる際に、アルカリと電解質の当量比(EA/EE)が0.4〜8の範囲となるようにB液を添加することを特徴とする前記非球状シリカゾルの製造方法である。
A液:動的光散乱法により測定される平均粒子径が3〜200nmの範囲、短径/長径比が0.01〜0.8の範囲にある非球状シードシリカ微粒子が分散媒に分散してなる非球状シードシリカゾル
B液:珪酸アルカリ水溶液(B液に含まれるアルカリの当量数を(EA)で表す。)
前記非球状シリカゾルの製造方法の好適な態様として、前記A液に、前記B液および前記電解質を、40〜150℃の温度範囲で15分〜10時間かけてそれぞれ添加し、熟成する。
【0026】
また、他の発明は、水溶性有機溶媒および水を含む混合溶媒の温度範囲を30〜150℃に維持し、この混合溶媒に、1)下記一般式(1)で表される4官能性シラン化合物の水溶性有機溶媒溶液および2)アルカリ触媒溶液を同時に、連続的または断続的に添加し、添加終了後、この液状体を更に30〜150℃の温度範囲に維持することにより、該4官能性シラン化合物を加水分解縮合させて非球状シリカゾルを製造するにあたり、前記4官能性シラン化合物に対する水のモル比を2〜4の範囲にすることを特徴とする前記非球状シリカゾルの製造方法である。
【0027】
【化2】

((1)式中、Rは炭素数2〜4のアルキル基である。)
前記非球状シリカゾルの製造方法の好適な態様として、前記4官能性シラン化合物が、テトラエトキシシランである。
【発明の効果】
【0028】
本発明に係る非球状シリカゾルに含まれる非球状シリカ微粒子は、通常の非球状シリカ微粒子とは異なる特異な構造を有することから、本発明に係る非球状シリカゾルは、複合ゾル、充填性、吸油性、電気特性、光学特性あるいは物理特性に優れ、たとえば研磨材および研磨用組成物として有用であり、特に研磨特性の効果において優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
[非球状シリカゾル]
本発明の非球状シリカゾルは、動的光散乱法により測定される平均粒子径が3〜200nmの範囲、短径/長径比が0.01〜0.8の範囲、比表面積が10〜800m2/g
の範囲にあり、表面に複数の疣状突起を有する非球状シリカ微粒子が分散媒に分散してなることを特徴とするものである。本発明に係る非球状シリカゾルの分散質である非球状シリカ微粒子は、その短径/長径比が0.01〜0.8の範囲にあるものが好適である。この範囲の短径/長径比である場合は、繊維状、柱状、回転楕円体状などの異形状と見做される形状、すなわち球状とは見做されない形状をとるものである。短径/長径比が0.8を超える場合はほぼ球状に近い粒子となる。短径/長径比が0.01未満の場合については、製造が容易でない場合が含まれる。短径/長径比のより好適な範囲は0.1〜0.7であり、より一層好適な範囲は0.12〜0.65である。
【0030】
本発明に係る非球状シリカゾルは、その分散質である非球状シリカ微粒子が、その表面に複数の疣状突起を有する点で、従来の非球状シリカゾルを始めとする非球状シリカゾルと構造上、異なるものである。すなわち、本発明に係る非球状シリカゾルに含まれる非球状シリカ微粒子は、非球形金平糖状シリカ微粒子、あるいは疣状突起被覆非球状シリカ微粒子と言えるものである。この疣状突起の存在により、各種用途、例えば、研磨用途、樹脂または被膜形成用成分の充填材、インク受容層の充填材などの用途において、特異な効果を示すことが可能となる。疣状突起については、例えば、非球状シリカゾルの電子顕微鏡写真にて確認できるものであり、粒子表面に周辺部位より突出した構造または膨らんだ構造をとるものである。
【0031】
本発明に係る非球状シリカ微粒子については、後記したように水硝子などを原料として使用したものであってもよく、アルコキシシランを原料として調製されたものであっても構わない。後者の例としては、例えば、前記非球状シリカ微粒子が、[SiO4/2]単位
から構成されるものであることを特徴とする非球状シリカゾルを挙げることができる。このような非球状シリカゾルの製造方法については、後記する。
【0032】
前記非球状シリカ微粒子については、好適には、前記非球状シリカ微粒子の長軸を含む平面上において、前記非球状シリカ微粒子の外縁上の任意の点から、該外縁上の点を通り前記長軸と直交する直線と前記長軸との交点Bまでの距離をY、前記非球状シリカ微粒子の外縁と前記長軸との一方の交点Aから、前記交点Bまでの距離をXとしてX−Y曲線を描いた場合に、該X−Y曲線が複数の極大値を有することが望ましい。これについては、非球状シリカ微粒子の走査型電子顕微鏡写真(25万倍ないし50万倍)の画像にて、非
球状シリカ微粒子の長軸を定め、長軸の全長を40等分し、当分したそれぞれの地点(点B)と、その点に直交する直線を微粒子の片側に延伸し、微粒子の外縁と交わった点との距離をYとして記録する。また、前記非球状シリカ微粒子の外縁と前記長軸との2つの交点のうちの一方点(点A)と、前記当分したそれぞれの地点(点B)との距離をXとする。前記Yを縦軸、前記Xを横軸とし、各Xに対応するYの値をプロットすることによりX−Y曲線を描き、このX−Y曲線の極大値の個数を計ることができる。本出願においては、非球状シリカ微粒子について、この様な測定を粒子50個について実施し、その極大値の個数の平均が2以上であるものについて、その非球状シリカ微粒子が、前記複数の極大値を有するものと取り扱うこととした。極大値の個数の求め方に関する概略を図1に示した。前記極大値の個数については、好適には2〜10個の範囲であり、より好適には3〜8個の範囲である。なお、極大値の個数については、分析機器による計測により求めても構わない。
【0033】
また、前記非球状シリカ微粒子については、さらに好適には、微粒子の長軸を含む平面上において、前記非球状シリカ微粒子の外縁上の任意の点から、該外縁上の点を通り前記長軸と直交する直線と前記長軸との交点Bまでの距離をYとした場合に、前記距離Yの変動係数が5〜50%の範囲にあることが望ましい。本発明における前記微粒子の外縁から長軸までの距離Yの変動係数の測定については、以下の方法により算定した。
1)長軸の中心点(微粒子の長軸を2等分する位置に位置する)から、同長軸上の片方の微粒子外縁までの距離(長軸半径M)を計測し、長軸上に、中心点から長軸半径Mの長さについて5%刻みで0〜50%までプロットする。
2)前記各プロットにおいて長軸と直交する直線を引き、この直線が片側の微粒子外縁と交差する点から前記プロットまでの距離Yをそれぞれ測定する。
3)微粒子の外縁から長軸までの距離Yについての変動係数(CV値)については、長軸上において、前記中心点から前記長軸半径Mの0〜10%の範囲、0〜20%の範囲、0〜30%の範囲、0〜40%の範囲、0〜50%の範囲でそれぞれ、距離Yの変動係数(CV値)を算出して5種類の変動係数(CV値)を得て、そのうちの最大の変動係数(CV値)を、その粒子における距離Yについての変動係数(CV値)とする。
4)上記1)〜3)の測定を50個の粒子について実施し、その平均値を、非球状シリカ微粒子における距離Yについての変動係数(CV値)として採用した。距離Y値の変動係数の求め方の概略を図2に示した。
【0034】
なお、前記距離Yの変動係数(CV値)は、変動係数(CV値)[%]=(距離Yの標準偏差(σ)/距離Yの平均値(Ya))×100の関係式から求められる。
前記の通り、非球状シリカ微粒子の長軸を含む平面上において、前記非球状シリカ微粒子の外縁上の任意の点から、該外縁上の点を通り前記長軸と直交する直線と前記長軸との交点Bまでの距離をY、前記非球状シリカ微粒子の外縁と前記長軸との一方の交点Aから、前記交点Bまでの距離をXとしてX−Y曲線を描いた場合に、該X−Y曲線が複数の極大値をとる場合は、その非球状シリカ微粒子が疣状突起を有するものであり、その様な非球状シリカ微粒子において、外縁から長軸までの距離Yについての変動係数(CV値)が、5〜50%の範囲である場合は、粒子の外縁から長軸までの距離Yの長さに有意なばらつきがあることを示すものであり、非球状シリカ微粒子表面に起伏があることを示すこととなる。
【0035】
前記極大値の平均個数が2以上であって、外縁から長軸までの距離Yについての変動係数(CV値)が5%未満の場合は、非球状シリカ微粒子表面に起伏はあるものの僅かである場合または実質的に起伏がない場合が含まれる。外縁から長軸までの距離Yについての変動係数(CV値)が、50%以上である場合については調製することが容易ではなく、また、その様な粒子は、構造上、堅牢性に支障がでる場合がある。
【0036】
外縁から長軸までの距離Yについての変動係数(CV値)については、より好適には7〜45%の範囲である。また、一層好適には10〜40%の範囲である。
本発明に係る非球状シリカゾルの分散質である非球状シリカ微粒子の平均粒子径については、動的光散乱法により測定される平均粒子径において3〜200nmの範囲が望ましい。この範囲の平均粒子径であれば、例えば、前記の各用途において、本発明に係る非球状シリカゾルの形状に基づく有効な効果を生じ易い。平均粒子径が200nm超える場合、原料の微粒子の大きさにもよるが、一般にビルトアップ工程が進行し過ぎるため疣状突起が平坦化する傾向が強まる。平均粒子径3nm未満の場合については、原料となる非球状シリカ微粒子の調製が容易ではない。前記動的光散乱法により測定される非球状シリカ微粒子の平均粒子径については、好適には10〜195nmの範囲であり、更に好適には20〜195nmの範囲である。
【0037】
なお、前記の動的光散乱法による平均粒子径範囲が3〜200nmの範囲にある非球状シリカ微粒子については、画像解析法による長軸の平均径が3〜190nmの範囲にある非球状シリカ微粒子が対応する。ここで長軸は、非球状シリカ微粒子の最大径を意味する。また、本出願において、画像解析法とは、走査型電子顕微鏡写真(倍率25万倍ないし50万倍)にて、測定した粒子の最大径を意味する。具体的な測定方法については、実施例にて示した。前記長軸の平均値については、好適には10〜180nmの範囲であり、更に好適には15〜170nmの範囲である。
【0038】
前記非球状シリカ微粒子が分散する溶媒については、水、有機溶媒、またはこれらの混合溶媒のいずれであっても良い。この様な例としては、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、エーテル類、エステル類、ケトン類など水溶性の有機溶媒を挙げることができる。
【0039】
本発明に係る非球状シリカゾルは、前記表面に複数の疣状突起を有する非球状シリカ微粒子を含むシリカ微粒子が分散質として分散媒中に分散してなるものであるが、分散質であるシリカ微粒子のすべてが前記表面に複数の疣状突起を有する非球状シリカ微粒子である必要はない。分散質であるシリカ微粒子の全個数に対する前記表面に複数の疣状突起を有する非球状シリカ微粒子の個数の比率は、高いほど好ましく、50%以上、さらに好適には60%以上であると、該被球状シリカゾルを研磨用途に使用した際に、実用的な研磨速度を得やすく望ましい。
[非球状シリカゾルの第1の製造方法]
本発明に係る非球状シリカゾルの第1の製造方法は、非球状シードシリカ微粒子が分散媒に分散してなる非球状シードシリカゾル(以下、「A液」と称する。)中に、強酸の塩からなる電解質の存在下、珪酸アルカリ水溶液(以下、この珪酸アルカリ水溶液を「B液」と称する。)を添加して核粒子を成長させる際に、A液のシリカ100質量部に対して、B液のシリカ50〜2500質量部を、B液中のアルカリの当量数(EA)と電解質の当量数(EE)の比(EA/EE)が0.4〜8の範囲となるように添加するものである。ここで、非球状シードシリカ微粒子とは、非球状シリカ微粒子のうち、その表面にシリカを成長させることにより、本発明に係る疣状突起を有する非球状シリカ微粒子を製造するのに使用されるシリカ微粒子をいう。
【0040】
以下、本発明の非球状シリカゾルの製造方法について具体的に説明する。
核粒子分散液または珪酸アルカリ水溶液(A液)
A液については動的光散乱法により測定される平均粒子径が3〜200nmの範囲、短径/長径比0.01〜0.8の範囲、比表面積が15〜800m2/gの範囲にある非球
状シリカ微粒子が分散媒に分散してなる非球状シリカゾルが使用される。
【0041】
本発明の非球状シリカゾルの製造方法において、原料として使用される非球状シードシ
リカゾルの製造方法については、格別限定されるものではなく、市販の非球状シリカゾルまたは公知の非球状シリカゾルを適用することができる。公知の非球状シリカゾルは、たとえば以下の製造方法により得ることができる。
【0042】
水溶性珪酸塩の水溶液に対して珪酸液を添加して、SiO2/M2O[Mはアルカリ金属、第3級アンモニウム、第4級アンモニウムまたはグアニジンから選ばれる](モル比)が30〜65の範囲の混合液を調製し、該混合液に60〜200℃の温度で、再度珪酸液を断続的または連続的に添加することによりシリカゾルを調製し、該シリカゾルをpH7〜9の範囲にて、60〜98℃で加熱することを特徴とする異方形状シリカゾルの製造方法(特開2007−153671参照)
平均粒子径が3〜25nmの範囲にあるシリカ微粒子が分散した、pHが2〜8の範囲にあるシリカゾルに、該シリカゾルのシリカ固形分100重量部に対して、ポリ金属塩化合物を0.01〜70重量部添加し、50〜160℃で加熱することを特徴とする異方形状シリカゾルの製造方法(特開2007−153672参照)
平均粒子径が3〜20nmの範囲にあるシリカゾルを脱陽イオン処理してpH2〜5の範囲に調整し、次いで脱陰イオン処理した後、アルカリ性水溶液を添加してpH7〜9に調整した後、60〜250℃で加熱することを特徴とする異方形状シリカゾルの製造方法(特開2007―145633参照)
珪酸液(a)にアルカリ性水溶液を添加してpHを10.0〜12.0に調整し、60〜150℃の温度条件下、珪酸液(b)と2価以上の水溶性金属塩との混合物を連続的にまたは断続的に添加することを特徴とする異方形状シリカゾルの製造方法(特開2007−153692参照)
次の(1)及び(2)の工程による異方形状シリカゾルの製造方法(WO2007/018069参照)。
(1)珪酸塩を酸で中和して得られるシリカヒドロゲルを洗浄することにより、塩類を除去し、SiO2/M2O(M:Na,K,NH3 )のモル比が30〜500となるようにアルカリを添加した後、60〜200℃の範囲に加熱してシリカゾルを得る工程
(2)該シリカゾルをシードゾルとし、必要に応じてアルカリを加え、pH9〜12.5、温度60〜200℃の条件下、珪酸液を連続的にまたは断続的に添加する工程
本発明方法においては、この様な原料非球状シリカゾルを必要に応じて、純水で希釈してシリカ固形分濃度を2〜40%に調整することが望ましい。
【0043】
A液として使用する、非球状シードシリカゾルについては、特にその短径/長径比が0.01〜0.8の範囲にあるシリカゾルであって、得ようとする非球状シリカゾルの分散質である非球状シリカ微粒子より平均粒子径が小さいものあるいは同等のものが使用される。短径/長径比のより好適な範囲は0.1〜0.7であり、より一層好適な範囲は0.12〜0.65である。
【0044】
なお、原料として使用する非球状シリカゾルの分散質である非球状シリカ微粒子については、好適には動的光散乱法による平均粒子径が3〜200nmの範囲にあり、短径/長径比が0.01〜0.8の範囲にあるものが望ましい。また、この様な非球状シリカ微粒子の比表面積については、例えば5〜800m2/gの範囲あるものが好ましい。前記原
料として使用される非球状シリカ微粒子の平均粒子径については、好適には5〜150nmの範囲であり、更に好適には10〜120nmの範囲である。
【0045】
核粒子となる非球状シードシリカゾルの濃度は、非球状シードシリカ微粒子の粒子径によっても異なるがシリカとして0.005〜10質量%、さらには0.01〜5質量%の範囲にあることが好ましい。シリカ濃度が0.005質量%未満の場合は、核粒子となる非球状シードシリカ微粒子が少なすぎて、珪酸アルカリ水溶液(B液)および/または電解質の供給速度を遅くする必要があり、供給速度を低下させない場合は新たな微粒子が発
生し、これが核粒子として作用するために得られるゾルの粒子径分布がブロードになることがあり、非球状シリカゾルの調製上、非効率的となる。核粒子分散液の濃度が10質量%を越えると、濃度が高すぎて珪酸アルカリ水溶液および/または電解質を供給する際に核粒子同士が凝集することがあり、この場合も粒子径分布がブロードになると共に互いに付着した粒子が生成する傾向があるため、非球状シリカゾルの調製にとって好ましくない。
【0046】
非球状シードシリカゾルのpHは8〜12、特に9. 5〜115の範囲にあることが
望ましい。pHが8未満の場合は、核粒子表面の反応性が低いため、供給する珪酸アルカリ(B液)が表面に析出する速度が遅く、このため未反応の珪酸アルカリが増加したり、新たな微粒子が発生し、これが核粒子として作用するために得られるゾルの粒子径分布がブロードになったり、凝集粒子が得られることがあり、非球状シリカゾルの効率的な生成には望ましくない。pHが12を越えると、シリカの溶解度が高くなるためシリカの析出が遅くなり、このため粒子成長が遅くなる傾向がある。
【0047】
上記核粒子分散液のpH調整はアルカリ添加によって行うことができる。具体的には、NaOH、KOHなどのアルカリ金属水酸化物や、アンモニア水、第4級アンモニウムハイドロオキサイド、アミン化合物等を用いることができる。なお、上記核粒子分散液の調製時の温度には特に制限はなく、通常10〜30℃の範囲である。
珪酸アルカリ水溶液(B液)
本発明では、前記A液に、電解質と、珪酸アルカリ水溶液(B液)とを添加してシリカ微粒子の粒子成長を行う。電解質はあらかじめA液中に一部または全部を添加しておくこともできるが、B液の珪酸アルカリ水溶液と共に、それぞれ連続的にあるいは断続的に添加しても良い。
【0048】
B液として使用する珪酸アルカリとしては、LiOH、NaOH、KOH、RbOH、CsOH、NH4 OH、第4級アンモニウムハイドライドなどの珪酸アルカリ塩が挙げられる。この中でも、珪酸ナトリウム(水硝子)、珪酸カリウム等は好適に用いることができる。また、テトラエチルオルソシリケート(TEOS)などの加水分解性有機化合物を過剰のNaOHなどを用いて加水分解して得られる珪酸アルカリ水溶液なども好適である。
【0049】
B液の珪酸アルカリ水溶液を添加する際の分散液の温度は40〜150℃、さらには60〜100℃の範囲にあることが望ましい。温度が40℃未満では、珪酸の反応速度が遅く、未反応の珪酸が多くなったり、所望の大きさの粒子が得られないことがある。分散液の温度が150℃を越えると、操作圧力が高くなり過ぎて装置費用が高くなると共に生産能力が低下し経済性が低下する問題がある。また、反応速度、粒子成長速度を速める効果も実用的には小さい。
【0050】
B液の珪酸アルカリ水溶液の添加量(シリカ換算)は、核粒子を成長させるときの温度や反応時間にもよるが、通常はA液中に含まれるシリカ100質量部に対して、50〜2500質量部の範囲であることが好ましい。50質量部未満では、粒子成長自体が低調であるため、必要な表面粗度を示す非球状シリカゾルを効率的に得ることが容易ではない。2500質量部を超える場合は、核粒子の成長が進行し過ぎるために、表面が平坦化したシリカ微粒子となる傾向が大きくなる。B液の更に好適な添加量(シリカ換算)は、80〜1800質量部の範囲である。
電解質
本発明に用いる電解質としては、従来公知の酸と塩基とからなり水に可溶の塩を用いることができる。特に、強酸の塩からなる電解質は、珪酸アルカリのアルカリを受容することができ、このとき核粒子の粒子成長に用いられる珪酸を生成するので好ましい。このよ
うな強酸の塩からなる水可溶性の電解質としては、硫酸、硝酸、塩酸などの強酸のナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、ルビジウム塩、セシウム塩、アンモニウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩などが挙げられる。また、カリウム明礬、アンモニウム明礬等の硫酸の複塩である明礬も好適である。
【0051】
上記電解質の量は、B液中に含まれるアルカリの当量数(EA)と電解質の当量数(EE)の比(EA/EE)が、0.4〜8、特に0. 4〜5の範囲にとなるようにするこ
とが好ましい。比(EA/EE)が0.4未満の場合は、分散液中の電解質塩濃度が高すぎて、粒子が凝集することがある。比(EA/EE)が8を越えると、電解質の量が少ないため粒子の成長速度が不充分となり、従来の酸性珪酸液を供給して核粒子の粒子成長を行うのと変わるところがない。また、前記した電解質が珪酸アルカリのアルカリを受容して核粒子の粒子成長に用いられる珪酸の生成が少なくなり、所望の粒子径の粒子を得ることができないことがある。
【0052】
前記電解質は、分散液中の電解質の濃度が0.05〜10質量%の範囲にあることが好ましい。また、好適には0.1〜5質量%の範囲が推奨される。このような電解質は、その一部または全部を珪酸アルカリ水溶液(B液)とは別個に添加して良いし、珪酸アルカリ水溶液(B液)と共にそれぞれ連続的にあるいは断続的に添加してもよい。このときの電解質の量も、珪酸アルカリの量と前記した当量数の比の関係にあることが好ましい。
【0053】
なお、A液に添加するB液については、必要に応じて、水で希釈したりあるいは濃縮して珪酸アルカリ水溶液のSiO2 の濃度が0.5〜10質量%、さらには1〜7質量%の範囲となるように調節することが好ましい。SiO2濃度が0.5質量%未満の場合は、
濃度が低すぎて生産効率が低く、また製品としての使用に際して濃縮を必要とすることがある。他方、SiO2濃度が10質量%を越えると、シリカ粒子の凝集が起きる傾向があ
り、均一な粒子径のシリカ粒子が単分散したゾルが得られないことがある。また、B液に電解質または電解質と水を添加してから、A液に供給する場合も、その系中のSiO2 の濃度としては、上記範囲が推奨される。
【0054】
A液にB液を供給して核粒子を成長させる間、所望によりアルカリまたは酸を添加しながら分散液のpHを8〜13、好ましくは10〜12の範囲に維持しても良い。添加するアルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、アンモニア水、あるいはトリエチルアミン、トリエタノールアミンなどのアミン類を用いることができ、酸としては塩酸、硝酸、硫酸、あるいは酢酸などの有機酸を用いることができる。
【0055】
以上のように、強酸の塩からなる電解質の存在下、A液にB液を添加して非球状シードシリカ微粒子を成長させると、表面に複数の疣状突起を有する非球状シリカ微粒子が得られる。
【0056】
B液に由来するシリカについては、核粒子表面に析出するか、あるいは微小シリカ粒子として系中に析出するものと見られが、これらはいずれも相対的に大きな核粒子と電位差があり、核粒子との反応性が高いので、このことが核粒子表面を起伏に富ませ、疣状突起を生成させる要因であるものと推察される。
【0057】
なお、核粒子に対する、電解質および珪酸アルカリの使用量が、本発明で規定される当量比範囲にある場合、シリカ濃度が高く、粒子径が小さい程、電解質による凝集が起こり易いために、低濃度での粒子成長が望ましい。
【0058】
また、A液にB液および電解質を添加する場合には、40〜150℃の温度範囲で15分〜10時間かけてそれぞれ添加することが好ましい。このような条件で添加すると、粒
子の安定性の点で好ましい。
熟成・脱イオン
B液の添加後、必要に応じてこれを熟成する。熟成温度は40〜150℃、好ましくは60〜100℃の範囲とし、熟成時間は熟成温度によっても異なるが30分〜5時間程度である。このような熟成を行うことによって粒子径がより均一で、安定性に優れたシリカゾルを得ることができる。
【0059】
また、所望により、分散液の温度を概ね40℃以下に冷却した後、分散液中のイオンを除去しても良い。分散液中のイオンを除去する方法としては従来公知の方法を採用することができ、例えば、限外濾過膜法、イオン交換樹脂法、イオン交換膜法などの方法が挙げられる。脱イオンは、残存するアニオン量がSiO2 の0.01質量%以下、好ましくは0.005質量%以下とすることが好ましい。残存イオン量が0.01質量%以下であれば、後述する濃度にもよるが、充分な安定性を備えたシリカゾルを得ることができ、多くの用途において不純物の悪影響が見られない。
【0060】
得られたシリカゾルは、必要に応じて濃縮する。濃縮方法としては通常、限外濾過膜法、蒸留法あるいはこれらの組合せからなる方法などが採用され、濃縮後のシリカゾルの濃度はSiO2 に換算して概ね10〜50質量%の範囲である。当該シリカゾルは、使用に際して適宜希釈して、あるいはさらに濃縮して用いられる。
[非球状シリカゾルの第2の製造方法]
アルコキシシランを原料として調製される非球状シリカゾルの製造方法としては、水溶性有機溶媒および水を含む混合溶媒の温度範囲を30〜150℃に維持し、そこに、1)下記一般式(1)で表される4官能性シラン化合物の水溶性有機溶媒溶液および2)アルカリ触媒溶液とを同時に、連続的または断続的に添加し、添加終了後、前記混合溶媒に前記1)および2)を添加して得られる液状体を更に30〜150℃の温度範囲に維持して、熟成することにより、該4官能性シラン化合物を加水分解縮合させてシリカゾルを製造するにあたり、該4官能性シラン化合物に対する水のモル比を2〜4の範囲として、加水分解縮合を行う製造方法が好適に使用される。この製造方法によると、[SiO4/2]単
位から構成される、表面に複数の疣状突起を有する非球状シリカ微粒子が分散媒に分散してなる非球状シリカゾルが得られる。
【0061】
【化3】

((1)式中、Rは炭素数2〜4のアルキル基である。)
特に非球状シリカ微粒子を得るためには、水溶性有機溶媒/水混合溶媒中、30〜150℃の温度範囲にて、4官能性シラン化合物に対し、モル比で2以上、4以下の量の水により加水分解縮合することが必要である。
【0062】
これについては、この条件下においては、4官能性シラン化合物の有する4つのアルコキシ基の反応速度に違いが生じるため、加水分解縮合初期に非球状の歪んだ形状のシリカ微粒子(一次粒子)が形成され、その様な歪んだ一次粒子が二次凝集する結果、表面に疣状突起を有するシリカ微粒子が生成するものと推察される。
【0063】
前記4官能性シラン化合物に対する水のモル比が2未満の場合は、4官能性シラン化合物の有する4個のアルコキシ基が完全に加水分解するモル量より少なくなるため、反応が充分に進行せず、反応中に凝集または沈殿が生じ易くなる。また、4官能性シラン化合物に対する水のモル比が4より大きい場合は、水の量が過剰であるためアルコキシ基の反応速度に、充分な差異が生じないため結果的に球状で表面の起伏に乏しいシリカ微粒子が生
成し易くなる。前記4官能性シラン化合物対する水のモル比の範囲については、好適には2.0〜3.8の範囲が推奨される。更に好適には2.0〜3.6の範囲が推奨される。
【0064】
[4官能性シラン化合物]
本発明に係る製造方法で使用される4官能性シラン化合物とは、次の一般式(1)で表されるアルコキシシラン化合物を意味する。
【0065】
【化4】

((1)式中、Rは炭素数2〜4のアルキル基である。)
前記4官能性シラン化合物としては、具体的には、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシランなどが挙げられる。炭素数5以上のアルコキシシランは、アルコキシ基の立体障害により、実用的な加水分解速度が得られない場合がある。また、テトラメトキシシランの場合は、加水分解反応の反応速度がテトラエトキシシランの場合より速く、実用的にシリカを合成するには望ましくない。実用上は、テトラエトキシシランの使用が推奨される。
【0066】
なお、本発明に係る製造方法において、通常、4官能性シラン化合物は、水溶性有機溶媒に溶解させて使用することが望ましい。水溶性有機溶媒に溶解させて使用するとにより、雰囲気中の水分の影響を低減することができる。4官能性シラン化合物を溶解する水溶性有機溶媒としては、下記の水溶性有機溶媒と同様のものが挙げられる。具体的には、4官能性シラン化合物の水溶性有機溶媒溶液中の4官能性シラン化合物の濃度が、5〜90質量%の範囲のものが好適に使用される。5質量%未満では、反応液中のシリカ濃度が低くなり、実用的とはいえない。90質量%を超える場合は、反応条件にもよるが、反応液中のシリカ濃度が高くなりすぎて、シリカの凝集や沈殿が生じ易くなる。該4官能性シラン化合物の濃度については、好適には10〜60質量%の範囲が推奨される。また、更に好適には20〜40質量%の範囲が推奨される。
【0067】
なお、4官能性シラン化合物の水溶性有機溶媒溶液として、好適にはテトラエトキシシランのエタノール溶液の使用が推奨される。
[水溶性有機溶媒]
本発明に係る製造方法で使用される水溶性有機溶媒としては、前記一般式(1)で表される4官能性シラン化合物を溶解し、水溶性を示す有機溶媒が含まれる。この様な水溶性有機溶媒の例としては、エタノール、イソプロパノール、t−ブタノールなどを挙げることができる。水溶性有機溶媒の選択については、使用する4官能性シラン化合物との相溶性に優れるものが好適に使用される。
【0068】
[水溶性有機溶媒と水の混合溶媒]
水溶性有機溶媒と水の混合溶媒に含まれる水分量については、アルカリ触媒溶液が水分を含有しない場合は、前記4官能性シラン化合物に対する水のモル比の範囲内であることが必要となる。また、アルカリ触媒溶液が水分を含有する場合にあっては、前記混合溶媒に含まれる水分量とアルカリ触媒溶液に含まれる水分量の合計量が、前記4官能性シラン化合物に対する水のモル比の範囲内であることが必要となる。
【0069】
前記混合溶媒についてはこの前提を満たしたものが使用されるが、望ましくは水溶性有機溶媒の濃度が30〜95質量%の範囲(水分が5〜70質量%の範囲)のものが使用される。水溶性有機溶媒の割合が30質量%未満の場合(水分が70質量%以上)は、4官能性シラン化合物の量や加水分解速度によるが、添加された4官能性シラン化合物と混合
溶媒が混ざり難くなり、4官能性シラン化合物がゲル化する場合がある。また、水溶性有機溶媒の割合が95質量%を超える場合(水分が5質量%未満)は、加水分解に使用する水分が過少となる場合がある。水溶性有機溶媒と水の混合溶媒における水溶性有機溶媒の割合については、好適には40〜80質量%の範囲が推奨される。また、更に好適には50〜70質量%の範囲が推奨される。
【0070】
[アルカリ触媒]
本発明に係る製造方法で使用されるアルカリ触媒としては、アンモニア、アミン、アルカリ金属水素化物、第4級アンモニウム化合物、アミン系カップリング剤など、塩基性を示す化合物が用いられる。なお、触媒としてアルカリ金属水素化物を用いることもできるが、前記アルコキシシランのアルコキシ基の加水分解を促進し、このため得られる粒子中に残存アルコキシ基(炭素)が減少しより硬いものとなるため、研磨速度は高いもののスクラッチが発生する場合があり、さらにナトリウム水素化物を使用した場合は、Naの含有量が高くなる問題がある。
【0071】
アルカリ触媒の使用量については、所望の加水分解速度が得られる限り限定されるものではないが、通常は、4官能性シラン化合物1モル当たり、0.005〜1モルの範囲で添加されることが好ましい。更に好ましくは0.01〜0.8モルの範囲となるように添加されていることが推奨される。
【0072】
なお、アルカリ触媒は、通常は水および/または水溶性有機溶媒で希釈して、アルカリ触媒溶液として使用することが好ましい。なお、この水溶性有機触媒に含まれる水分についても、加水分解に寄与するものであるので、当然に加水分解に使用される水分量に算入されるものである。
【0073】
通常は、アルカリ触媒溶液におけるアルカリ触媒濃度については、0.1〜20質量%の範囲が好ましい。0.1質量%未満では、実用的な触媒機能が得られない場合がある。また、20質量%以上の場合、触媒機能が平衡に達する場合が多く、過剰に使用することになる場合がある。
【0074】
アルカリ触媒溶液におけるアルカリ触媒濃度については、より好適には、1〜15質量%の範囲が推奨される。更に好適には、2〜12質量%の範囲が推奨される。
アルカリ触媒については、例えば、アンモニア水溶液、アンモニウム水溶液とエタノールの混合物などが好適に使用できる。
【0075】
[製造工程]
本発明に係るシリカゾルの好適な製造方法について以下に述べるが、本発明に係るシリカゾルの製造方法は、これに限定されるものではない。前記水溶性有機溶媒と水の混合溶媒の温度範囲を30〜150℃に維持し、1)4官能性シラン化合物の水溶性有機溶媒溶液および2)アルカリ触媒の水溶液とを同時に、連続的または断続的に30分から20時間かけて添加する。前記温度範囲については、30℃未満では、加水分解縮合が充分に進行しないため望ましくない。混合溶媒の沸点を超える場合は、オートクレーブなどの耐圧容器を用いて行う事ができるが、150℃を超える場合は、非常に高い圧力がかかるため工業的でないので、望ましくない。
【0076】
この温度範囲については好適には40〜100℃の範囲が推奨される。また、更に好適には、50〜80℃の範囲が推奨される。添加にかける前記の所要時間範囲については、好適には1〜15時間が推奨される。また、更に好適には、2〜10時間が推奨される。
【0077】
前記1)4官能性シラン化合物の水溶性有機溶媒溶液および2)アルカリ触媒の水溶液
については、両者を同時に、連続的にまたは断続的に30分から20時間かけて、前記水溶性有機溶媒と水の混合溶媒に添加することが好ましい。両者の全量を一時に一括添加した場合、加水分解縮合が急激に進行するためゲル状物の発生を招き、シリカ微粒子を得ることができない。
【0078】
本発明に係る製造方法では、前記の通り、4官能性シラン化合物の反応速度の特性を利用してシリカゾルを調製するものである。例えばテトラメトキシシランを使用した場合は、その加水分解反応は、テトラエトキシシランの場合に比べて速いため、テトラエトキシシランの様にシリカゾルを形成することは容易ではない。
【0079】
加水分解縮合に必要な成分の添加が終了した後、所望により30〜150℃にて、0.5〜10時間の範囲で維持し、熟成することが好ましい。
例えば、未反応の4官能性シラン化合物が残存していた場合、熟成することにより、未反応の4官能性シラン化合物の反応を促進し、完結させることができる。なお、未反応の4官能性シラン化合物の残存量によっては、経時でシリカの凝集や沈殿が生じる場合がある。熟成時の前記温度範囲については好適には40〜100℃の範囲が推奨される。また、更に好適には、50〜80℃の範囲が推奨される。前記熟成時間範囲については、好適には1〜9時間が推奨される。また、更に好適には、2〜8時間が推奨される。
オルガノゾル
本発明の非球状シリカゾルは、有機溶媒で置換することによってオルガノゾルを製造することができる。置換方法としては従来公知の方法を採用することができ、有機溶媒の沸点が概ね水より高い場合には、有機溶媒を加えて蒸留することによって得ることができる。また、有機溶媒の沸点が低い場合には本願出願人の出願による特開昭59−8614号公報に開示した限外濾過膜法などによって得ることができる。得られるオルガノゾルの濃度はSiO2に換算して10〜50重量%の範囲である。また、このオルガノゾルは、使
用に際して適宜希釈して、あるいはさらに濃縮して用いることができる。
[研磨材および研磨用組成物]
本発明の非球状シリカゾルは研磨材および研磨用組成物として有用である。
【0080】
具体的には、本発明の非球状シリカゾルは、それ自体で研磨材として適用可能なものであり、更には、他の成分(研磨促進剤等)とともに通常の研磨用組成物を構成することも可能である。
【0081】
本発明に係る研磨用組成物は、前記した非球状シリカ微粒子が溶媒に分散したものである。溶媒としては通常、水を用いるが、必要に応じてメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール類を用いることができ、他にエーテル類、エステル類、ケトン類など水溶性の有機溶媒を用いることができる。研磨用組成物中の非球状シリカ微粒子の濃度は2〜50重量%、さらには5〜30重量%の範囲にあることが好ましい。濃度が2重量%未満の場合は、基材や絶縁膜の種類によっては濃度が低すぎて研磨速度が遅く生産性が問題となることがある。シリカ粒子の濃度が50重量%を越えると研磨材の安定性が不充分となり、研磨速度や研磨効率がさらに向上することもなく、また研磨処理のために分散液を供給する工程で乾燥物が生成して付着することがあり傷(スクラッチ)発生の原因となることがある。
【0082】
本発明に係る研磨用組成物には、被研磨材の種類によっても異なるが、必要に応じて従来公知の過酸化水素、過酢酸、過酸化尿素などおよびこれらの混合物を添加して用いることができる。このような過酸化水素等を添加して用いると被研磨材が金属の場合には効果的に研磨速度を向上させることができる。また、必要に応じて塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、ポリリン酸、アミド硫酸、フッ酸等の酸、あるいはこれら酸のナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩およびこれらの混合物などを添加して用いることができる。この場合
、複数種の材質の被研磨材を研磨する際に、特定成分の被研磨材の研磨速度を速めたり、遅くすることによって、最終的に平坦な研磨面を得ることができる。
【0083】
その他の添加剤として、例えば、金属被研磨材表面に不動態層あるいは溶解抑制層を形成して基材の浸食を防止するためにイミダゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾチアゾールなどを用いることができる。また、上記不動態層を攪乱するためにクエン酸、乳酸、酢酸、シュウ酸、フタル酸、クエン酸等の有機酸あるいはこれらの有機酸塩などの錯体形成材を用いることもできる。有機酸としては、その他に、カルボン酸、有機リン酸、アミノ酸等が挙げられる。カルボン酸の例としては、酢酸、グリコール酸、アスコルビン酸等の一価カルボン酸、蓚酸、酒石酸等の二価カルボン酸、クエン酸等の三価カルボン酸が挙げられ、有機リン酸としては、2−アミノエチルホスホン酸、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、アミノトリ(メチレンホスホン酸)、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)等が挙げられる。また、アミノ酸としては、グリシン、アラニン等が挙げられる。これらの中でも、スクラッチ低減の観点から、無機酸、カルボン酸及び有機リン酸が好ましく、例えば、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸、ポリリン酸、グリコール酸、蓚酸、クエン酸、アミノトリ(メチレンホスホン酸)、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)が適している。これらpHを調整するための酸として使用可能である。
【0084】
研磨材スラリーの分散性や安定性を向上させるためにカチオン系、アニオン系、ノニオン系、両性系の界面活性剤を適宜選択して添加することができる。さらに、上記各添加剤の効果を高めるためなどに必要に応じて酸または塩基を添加して研磨材スラリーのpHを調節することができる。
好適な態様1
動的光散乱法により測定される平均粒子径が3〜200nmの範囲、短径/長径比が0.01〜0.8の範囲、比表面積が10〜800m2/gの範囲にある非球状シリカ微粒
子が分散媒に分散してなる非球状シリカゾルにおいて、該非球状シリカ微粒子が表面に複数の疣状突起を有するものであり、更に前記非球状シリカ微粒子の長軸を含む平面上において、前記非球状シリカ微粒子の外縁上の任意の点から、該外縁上の点を通り前記長軸と直交する直線と前記長軸との交点Bまでの距離をY、前記非球状シリカ微粒子の外縁と前記長軸との一方の交点Aから、前記交点Bまでの距離をXとしてX−Y曲線を描いた場合に、該X−Y曲線が複数の極大値を有することを特徴とする非球状シリカゾル。
【0085】
好適な態様2
動的光散乱法により測定される平均粒子径が3〜200nmの範囲、短径/長径比が0.01〜0.8の範囲、比表面積が10〜800m2/gの範囲にある非球状シリカ微粒
子が分散媒に分散してなる非球状シリカゾルにおいて、該非球状シリカ微粒子が表面に複数の疣状突起を有するものであり、前記非球状シリカ微粒子の長軸を含む平面上において、前記非球状シリカ微粒子の外縁上の任意の点から、該外縁上の点を通り前記長軸と直交する直線と前記長軸との交点Bまでの距離をY、前記非球状シリカ微粒子の外縁と前記長軸との一方の交点Aから、前記交点Bまでの距離をXとしてX−Y曲線を描いた場合に、該X−Y曲線が複数の極大値を有するものであって、更に前記非球状シリカ微粒子の長軸を含む平面上において、前記非球状シリカ微粒子の外縁上の任意の点から、該外縁上の点を通り前記長軸と直交する直線と前記長軸との交点Bまでの距離をYとした場合に、前記Yの変動係数が5〜50%の範囲であることを特徴とする非球状シリカゾル。
【0086】
好適な態様3
動的光散乱法により測定される平均粒子径が3〜200nmの範囲、短径/長径比が0.01〜0.8の範囲、比表面積が10〜800m2/gの範囲にある非球状シリカ微粒
子が分散媒に分散してなる非球状シリカゾルにおいて、該非球状シリカ微粒子が表面に複数の疣状突起を有するものであり、更に前記非球状シリカ微粒子の長軸を含む平面上において、前記非球状シリカ微粒子の外縁上の任意の点から、該外縁上の点を通り前記長軸と直交する直線と前記長軸との交点Bまでの距離をY、前記非球状シリカ微粒子の外縁と前記長軸との一方の交点Aから、前記交点Bまでの距離をXとしてX−Y曲線を描いた場合に、該X−Y曲線が複数の極大値を有することを特徴とする非球状シリカゾルを含む研磨用組成物。
【0087】
好適な態様4
動的光散乱法により測定される平均粒子径が3〜200nmの範囲、短径/長径比が0.01〜0.8の範囲、比表面積が10〜800m2/gの範囲にある非球状シリカ微粒
子が分散媒に分散してなる非球状シリカゾルにおいて、該非球状シリカ微粒子が表面に複数の疣状突起を有するものであり、前記非球状シリカ微粒子の長軸を含む平面上において、前記非球状シリカ微粒子の外縁上の任意の点から、該外縁上の点を通り前記長軸と直交する直線と前記長軸との交点Bまでの距離をY、前記非球状シリカ微粒子の外縁と前記長軸との一方の交点Aから、前記交点Bまでの距離をXとしてX−Y曲線を描いた場合に、該X−Y曲線が複数の極大値を有するものであって、更に前記非球状シリカ微粒子の長軸を含む平面上において、前記非球状シリカ微粒子の外縁上の任意の点から、該外縁上の点を通り前記長軸と直交する直線と前記長軸との交点Bまでの距離をYとした場合に、前記Yの変動係数が5〜50%の範囲にあることを特徴とする非球状シリカゾルを含むことを特徴とする研磨用組成物。
【0088】
好適な態様5
動的光散乱法により測定される平均粒子径が3〜200nmの範囲、短径/長径比が0.01〜0.8の範囲、比表面積が10〜800m2/gの範囲にある非球状シリカ微粒
子が分散媒に分散してなる非球状シリカゾルにおいて、前記非球状シリカ微粒子の長軸を含む平面上において、前記非球状シリカ微粒子の外縁上の任意の点から、該外縁上の点を通り前記長軸と直交する直線と前記長軸との交点Bまでの距離をY、前記非球状シリカ微粒子の外縁と前記長軸との一方の交点Aから、前記交点Bまでの距離をXとしてX−Y曲線を描いた場合に、該X−Y曲線が複数の極大値を有するものであって、更に前記非球状シリカ微粒子の長軸を含む平面上において、前記非球状シリカ微粒子の外縁上の任意の点から、該外縁上の点を通り前記長軸と直交する直線と前記長軸との交点Bまでの距離をYとした場合に、前記Yの変動係数が5〜50%の範囲であることを特徴とする非球状シリカゾル。
[実施例および比較例で用いた分析方法]
[1]動的光散乱法による平均粒子径(D1)の測定方法
動的光散乱法により測定される平均粒子径については、レーザー光による動的光散乱法により、粒子径分布測定装置(Particle Sizing Systems社製:NICOMP MODEL380)を用いて平均粒子径を測定した。
[2]粒子の外縁から長軸までの距離Yの極大値個数の測定方法
非球状シリカ微粒子の走査型電子顕微鏡写真(25万倍ないし50万倍)の画像にて、非球状シリカ微粒子の長軸を定め、長軸の全長を40等分し、当分したそれぞれの地点(点B)と、その点に直交する直線を微粒子の片側に延伸し、微粒子の外縁と交わった点との距離をYとして記録する。また、前記非球状シリカ微粒子の外縁と前記長軸との2つの交点のうちの一方点(点A)と、前記当分したそれぞれの地点(点B)との長さをXとする。前記Yを縦軸、前記Xを横軸とし、各Xに対応するYの値をプロットすることによりX−Y曲線を描き、このX−Y曲線の極大値の個数を計ることができる。
【0089】
本出願においては、非球状シリカ微粒子について、この様な測定を粒子50個について実施し、その極大値の個数の平均をとり、粒子の外縁から長軸までの距離Yの極大値個数
とした。
[3]粒子の外縁から長軸までの距離Yの変動係数(CV値)の算定方法
本発明における前記微粒子の外縁から長軸までの距離Yの変動係数の測定については、以下の方法により算定した。
1) 長軸の中心点から片方の微粒子外縁までの距離(長軸半径M)を計測し、長軸上に、中心点から長軸半径Mについて5%刻みで0〜50%までプロットする。
2) 前記各プロットにおいて長軸と直交する直線を引き、この直線が片側の微粒子外縁と交差する点から前記プロットまでの距離Yをそれぞれ測定する。
3) 微粒子の外縁から長軸までの距離Yについての変動係数(CV値)については、長軸上において、前記中心点から前記長軸半径Mの0〜10%の範囲、0〜20%の範囲、0〜30%の範囲、0〜40%の範囲、0〜50%の範囲でそれぞれの変動係数(CV値)を算出して5種類の変動係数(CV値)を得て、そのうちの最大の変動係数(CV値)を、その粒子における距離Yについての変動係数(CV値)とする。
4) 上記1)〜3)の測定を50個の粒子について実施し、その平均値を、非球状シリカ微粒子における距離Yについての変動係数(CV値)として採用した。
[4]シアーズ法による比表面積測定および平均粒子径測定
1)SiO2として15gに相当する試料をビーカーに採取してから、恒温反応槽(25
℃)に移し、純水を加えて液量を90mlにする。(以下の操作は、25℃に保持した恒温反応槽中にて行った。)
2)pH3.6になるように0.1モル/L塩酸水溶液を加える。
3)塩化ナトリウムを30g加え、純水で150mlに希釈し、10分間攪拌する。
4)pH電極をセットし、攪拌しながら0.1モル/L水酸化ナトリウム溶液を滴下して、pH4.0に調整する。
5)pH4.0に調整した試料を0.1モル/L水酸化ナトリウム溶液で滴定し、pH8.7〜9.3の範囲での滴定量とpH値を4点以上記録して、0.1モル/L水酸化ナトリウム溶液の滴定量をX、その時のpH値をYとして、検量線を作る。
6)次の式(2)からSiO215g当たりのpH4.0〜9.0までに要する0.1モ
ル/L水酸化ナトリウム溶液の消費量V(ml)を求め、後記式(3)に従って比表面積SA[m2/g]を求める。
【0090】
また、平均粒子径D1(nm)は、式(4)から求める。
V=(A×f×100×15)/(W×C) ・・・ (2)
SA=29.0V−28 ・・・ (3)
D1=6000/(ρ×SA) ・・・ (4)
(ここで、ρは粒子の密度(g/cm3)を表す。 シリカの場合は2.2を代入する。

但し、上記式(2)における記号の意味は次の通りである。
A:SiO215g当たりpH4.0〜9.0までに要する0.1モル/L水酸化ナトリ
ウム溶液の滴定量(ml)
f :0.1モル/L水酸化ナトリウム溶液の力価
C :試料のSiO2濃度(%)
W :試料採取量(g)
[5]BET法(窒素吸着法)による比表面積測定
非球状シリカゾル50mlをHNO3でpH3.5に調整し、1−プロパノール40m
lを加え、110℃で16時間乾燥した試料について、乳鉢で粉砕後、マッフル炉にて500℃、1時間焼成し、測定用試料とした。そして、比表面積測定装置(ユアサアイオニクス製、型番マルチソーブ12)を用いて窒素吸着法(BET法)を用いて、窒素の吸着量から、BET1点法により比表面積を算出した。具体的には、試料0.5gを測定セルに取り、窒素30v%/ヘリウム70v%混合ガス気流中、300℃で20分間脱ガス処理を行い、その上で試料を上記混合ガス気流中で液体窒素温度に保ち、窒素を試料に平衡
吸着させる。次に、上記混合ガスを流しながら試料温度を徐々に室温まで上昇させ、その間に脱離した窒素の量を検出し、予め作成した検量線により、非球状シリカゾルの比表面積を算出した。また、得られた比表面積(SA)を前記式(4)に代入して平均粒子径D1を求めた。
[6]短径/長径比の測定方法
走査型電子顕微鏡(株式会社日立製作所製、H−800)により、試料非球状シリカゾルを倍率25万倍(ないしは50万倍)で写真撮影して得られる写真投影図において、粒子の最大径を長軸とし、その長さを測定して、その値を長径(DL)とした。また、長軸上にて長軸を2等分する点を定め、それに直交する直線が粒子の外縁と交わる2点を求め、同2点間の距離を測定し短径(DS)とした。そして、比(DS/DL)を求めた。この測定を任意の50個の粒子について行い、その平均値を短径/長径比とした。なお、ひとつの粒子について、長軸を複数設定可能な場合は、対応する複数の短径長さの平均値を求め、短径の長さ(DS)とした。
[7]非球状シリカ微粒子の割合の測定
「[6]短径/長径比の測定方法」にて短径/長径比の測定対象とした50個の粒子において、下記(i)に該当する粒子と(ii)に該当する粒子との合計数(n)を測定し、[(50−n)/50]×100の値を、分散質である全シリカ微粒子の個数に対する疣状突起を有する非球状シリカ微粒子の個数の割合(%)とした。
(i)短径/長径比が0.01〜0.8の範囲を外れる粒子
(ii)短径/長径比の範囲が0.01〜0.8の範囲であって、疣状突起を有さない粒子
[8]アルミニウム基板に対する研磨特性の評価方法
研磨用スラリーの調製
試料シリカゾルをシリカ濃度20質量%に調整し、H22、HEDP(1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジスルホン酸)および超純水を加えて、シリカ9重量%、H22
0.5重量%、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジスルホン酸0.5重量%の研磨用スラリーを調製し、さらに必要に応じてHNO3を加えて、pH2の研磨用スラリーを調
製した。
被研磨基板
被研磨基板として、アルミニウムデイスク用基板を使用した。このアルミニウムデイスク用基板は、アルミニウム基板にNi−Pを10μmの厚さに無電解メッキ(Ni88%とP12%の組成の硬質Ni−Pメッキ層)をした基板(95mmΦ/25mmΦ−1.27mmt)を使用した。なお、この基板は一次研磨済みで、表面粗さ(Ra)は0.17nmであった。
研磨試験
上記被研磨基板を、研磨装置(ナノファクター(株)製:NF300)にセットし、研磨パッド(ロデール社製「アポロン」)を使用し、基板荷重0.05MPa、テーブル回転速度30rpmで研磨用スラリーを20g/分の速度で5分間供給して研磨を行った。
【0091】
研磨前後の被研磨基材の重量変化を求めて研磨速度〔nm/分〕を計算した。
スクラッチ(線状痕)の測定
スクラッチの発生状況については、アルミニウムディスク用基板を上記と同様に研磨処理した後、超微細欠陥・可視化マクロ装置(VISION PSYTEC社製、製品名:Micro−MAX)を使用し、Zoom15にて全面観察し、65.97cm2に相当
する研磨処理された基板表面のスクラッチ(線状痕)の個数を数えて合計した。
[9]ガラス基板に対する研磨特性の評価方法
研磨用スラリーの調製
試料シリカゾルをシリカ濃度20質量%に調整し、更に超純水および5質量%水酸化ナトリウム水溶液を加えて、シリカ9重量%、pH10.5の研磨用スラリーを調製した。被研磨基板
被研磨基板として、65mmφの強化ガラス製のハードディスク用ガラス基板を使用した。このハードディスク用ガラス基板は、一次研磨済みであり、表面粗さは最大で0.21μmである。
研磨試験
上記被研磨基板を、研磨装置(ナノファクター(株)製:NF300)にセットし、研磨パッド(ロデール社製「アポロン」)を使用し、基板荷重0.18MPa、テーブル回転速度30rpmで研磨用スラリーを20g/分の速度10分間供給して研磨を行った。
【0092】
研磨前後の被研磨基材の重量変化を求めて研磨速度〔nm/分〕を計算した。
スクラッチ(線状痕)の測定
スクラッチの発生状況については、ガラス基板を上記と同様に研磨処理した後、超微細欠陥・可視化マクロ装置(VISION PSYTEC社製、製品名:Micro−MAX)を使用し、Zoom1にて全面観察し、65.97cm2に相当する研磨処理された
基板表面のスクラッチ(線状痕)の個数を数えて合計した。
[10]熱酸化膜に対する研磨特性の評価方法
研磨スラリーの調製
各実施例および各比較例で得たシリカ濃度12.6質量%のシリカゾルに、KOHを添加して、pHを10に調整した。 被研磨基板 被研磨基板として、シリコンウェーハを1050℃でウエット熱酸化させた熱酸化膜基板を使用した。
研磨試験
上記被研磨基板を、研磨装置(ナノファクター(株)製:NF330)にセットし、研磨パッド(ロデール社製「IC-1000」)を使用し、基板荷重0.05MPa、テー
ブル回転速度30rpmで研磨用研磨スラリーを20g/分の速度で5分間供給して研磨を行った。研磨前後の膜厚を短波長エリプソメーターで測定し、研磨速度を計算した。
[合成例1]
還流器および攪拌機付セパラブルフラスコにSiO2濃度24重量%の珪酸ナトリウム
水溶液(SiO2/Na2Oモル比3)18.7g入れ、さらに水837gを添加して、珪酸ナトリウム水溶液855gを調製した。 次に、この珪酸ナトリウム水溶液に、SiO2濃度4.82重量%の珪酸ナトリウム(SiO2/Na2Oモル比3)を陽イオン交換樹
脂塔に通すことにより得られたSiO2濃度4.82重量%の珪酸液(pH2.3、Si
2/Na2Oモル比=1200)を1,067g添加することにより珪酸液と珪酸ナトリ
ウム水溶液からなる混合液(SiO2/Na2Oモル比35)を得た。
【0093】
得られた液を加温し、98℃の温度で30分間熟成した。その後、さら98℃に保持した状態で、この液に前記珪酸液と同じ組成の珪酸液1,162gを4時間かけて添加して
、pH8.9の非球状シリカゾルを得た。この非球状シリカゾルのSiO2/Na2Oモル比は76だった。
【0094】
この非球状シリカゾルのpHが8.5になるように2.5%硫酸水溶液を加え、90℃にて8時間加熱した後、エバポレーターにてSiO2濃度20重量%まで濃縮して非球状
シリカゾルを調製した。
【0095】
この非球状シリカゾルに含まれる非球状シリカ微粒子についてのBET法により測定される比表面積から算定される平均粒子径は12nm、動的光散乱法による平均粒子径は34nmだった。また、この非球状シリカ微粒子の短径/長径比は、0.45、比表面積は220m2/gとなった。
[合成例2]
シリカゾル(BET法により測定された平均粒子径:35nm、比表面積:182m2
/g、SiO2濃度:30重量%)の100gについて、pHが2.3になるまで、強酸
性陽イオン交換樹脂SK1BH(三菱化学社製)0.4Lに空間速度3.1で通液を繰り返
した。次に、強塩基性イオン交換樹脂SANUPC(三菱化学社製)0.4Lに空間速度3.1で通液させ、pHを5.6とした後、pHが7.8になるようにアルカリ性水溶液として5%アンモニア水溶液5.4gを添加した。そして、90℃にて30時間加熱を行なった。この非球状シリカゾルをエバポレーターにてSiO2濃度20重量%まで濃縮して
非球状シリカゾルを調製した。
【0096】
この非球状シリカゾルのBET法により測定された平均粒子径は35nm、動的光散乱法による平均粒子径は70nmとなった。また、この非球状シリカゾルの短径/長径比は0.4、比表面積は180m2/gとなった。
[合成例3]
SiO2濃度が24重量%の珪酸ナトリウム水溶液(SiO2/Na2Oモル比が3.1
)をイオン交換水で希釈して、SiO2濃度が5重量%の珪酸ナトリウム水溶液(pH1
1.3)を1Kg調製した。
【0097】
この珪酸ソーダ水溶液のpHが6.5になるように、硫酸を加えて中和し、常温で1時間保持して、シリカヒドロゲルを調製した。このシリカヒドロゲルをオリバーフィルターにて28%アンモニア水溶液(SiO2固形分の約120倍相当量)で充分に洗浄し、塩
類を除去した。洗浄後の硫酸ナトリウム濃度は、SiO2固形分に対して、0.01%未
満だった。
【0098】
得られたシリカヒドロゲルを純水に分散し(シリカ濃度3重量%)、強力攪拌機にて流動性のあるスラリー状態としたシリカヒドロゲル分散液とし、これに濃度5重量%のNaOH水溶液と28%アンモニア水の1:1混合物をSiO2/Na2Oモル比が75となるように添加し、160℃で1時間加熱した。
【0099】
次に、上記非球状シリカゾル2.09kgに、24%珪酸ナトリウムを0.81kgおよび純水10.93kgを加えて、シードゾル13.83kg(pH11.2)を調製した。このシードゾルの動的光散乱法により測定される平均粒子径は17nmであった。
【0100】
次にこのシードゾルを90℃に維持しながら、これに後記するSiO2濃度4.5重量
%の珪酸液117.2Kgを10時間かけて添加した。添加終了後、室温まで冷却させ、得られた非球状シリカゾルを限外濾過膜でSiO2濃度20重量%まで濃縮した。
【0101】
この非球状シリカゾルのBET法により測定された平均粒子径は50nm、動的光散乱法による平均粒子径ば100nmとなった。また、この非球状シリカゾルの短径/長径比は0.3、比表面積は50m2/gとなった。
[合成例4]
還流器および攪拌機付セパラブルフラスコに、SiO2濃度が24重量%でNa2O濃度が8.16重量%の珪酸ナトリウム水溶液(SiO2/Na2Oモル比3)18.7g入れ、さらに水895gを添加して、珪酸ナトリウム水溶液914gを調製した。
【0102】
次に、この珪酸ナトリウム水溶液に、SiO2濃度4.82重量%の珪酸ナトリウム(
SiO2/Na2Oモル比3)を陽イオン交換樹脂塔に通すことにより得られたSiO2
度4.82重量%の珪酸液(pH2.3、SiO2/Na2Oモル比=1,200)を、3
5℃の温度条件下、1,900g添加することにより、珪酸液と珪酸ナトリウム水溶液か
らなる混合液(SiO2/Na2Oモル比60)を得た。
【0103】
得られた混合液を加温し、80℃の温度で30分間熟成した。80℃に保持した状態で、この液に前記珪酸液と同じ組成の珪酸液329gを2時間かけて添加して、pH8.7の非球状シリカゾルを得た。この非球状シリカゾルのSiO2/Na2Oモル比は、76だ
った。
【0104】
この非球状シリカゾルを70℃にて12時間加熱した後、エバポレーターにてSiO2
濃度20重量%まで濃縮した。この非球状シリカゾルのBET法により測定された比表面積から換算された平均粒子径は6nm、動的光散乱法による平均粒子径は12nmだった。また、短径/長径比の値は0.15、比表面積は455m2/gとなった。
【0105】
以下の実施例は、全て本願特許請求の範囲の条件を満たすものである。
【実施例1】
【0106】
核粒子分散液の調製
合成例1と同様な方法で調製した非球状シリカゾル(動的光散乱法により測定された平均粒子径24nm、短径/長径比0.45、SiO2 濃度20質量%)を純水で希釈した、4170g(SiO2 濃度1質量%)とし、更にシリカゾルのpHが11となるように濃度5質量%の水酸化ナトリウム水溶液を添加した。ついで、シリカゾルの温度を80℃に昇温し、30分間80℃に維持して核粒子分散液(A液)とした。
核粒子の成長
水硝子(洞海化学(株)製:JIS3号水硝子、SiO2 濃度24質量%)575gを水2185gで希釈して、珪酸アルカリ水溶液(B液)2760gを調製した。また、電解質としての硫酸アンモニウム(三菱化学株式会社製)98.0gに水2352gを加えて、電解質水溶液2450gを調製した。そして、温度を80℃に維持した前記核粒子分散液(A液)全量に対して、前記珪酸アルカリ水溶液(B液)および前記電解質水溶液を、それぞれ80℃にて1時間かけて全量添加することにより粒子成長を行った。
【0107】
ここで、B液のアルカリと電解質の当量比EA/EEは1.0であった。ついで、80℃で1時間熟成を行った後、粒子成長した核粒子分散液のpHが9.1になるまで限外濾過膜により洗浄を行った。ついで、濃縮してSiO2 濃度20質量%の非球状シリカゾルを得た。得られた非球状シリカゾルの特徴を表3に記す。また、この非球状シリカゾルについて、前記[8]アルミニウム基板に対する研磨特性の評価方法に従って、評価した結果を表3に記す。(以下、実施例2、3および比較例1、2についても同様に[8]アルミニウム基板に対する研磨特性の評価方法による、評価結果を表3に記した。)なお、非球状シリカゾルの製造条件を表1および2に記す。
【実施例2】
【0108】
核粒子分散液の調製
合成例4と同様な方法で調製した非球状シリカゾル(動的光散乱法により測定された平均粒子径12nm、短径/長径比0.15、SiO2 濃度20質量%)を純水で希釈し、4170g(SiO2 濃度1質量%)とし、更にシリカゾルのpHが11となるように濃度5質量%の水酸化ナトリウム水溶液を添加した。ついで、シリカゾルの温度を65℃に昇温し、30分間65℃に維持して核粒子分散液(A液)とした。
核粒子の成長
水硝子(洞海化学(株)製:JIS3号水硝子、SiO2 濃度24質量%)575gを水2185gで希釈して、珪酸アルカリ水溶液(B液)2760gを調製した。また、電解質としての硫酸アンモニウム(三菱化学株式会社製)98.0gに水2352gを加えて、電解質水溶液2450gを調製した。そして、温度を65℃に維持した前記核粒子分散液(A液)全量に対して、前記珪酸アルカリ水溶液(B液)および前記電解質水溶液を、それぞれ65℃にて1時間かけて全量添加することにより粒子成長を行った。ここで、B液のアルカリと電解質の当量比EA /EE は1.0であった。ついで、65℃で1時間熟成を行った後、粒子成長した核粒子分散液のpHが9.4になるまで限外濾過膜により洗浄を行った。ついで、濃縮してSiO2 濃度20質量%の非球状シリカゾルを得た。
得られた非球状シリカゾルの特徴を表3に記す。なお、非球状シリカゾルの製造条件を表1および2に記す。
【実施例3】
【0109】
核粒子分散液の調製
合成例2と同様な方法で調製した非球状シリカゾル(動的光散乱法により測定された平均粒子径70nm、短径/長径比0.4、SiO2 濃度20質量%)を純水で希釈した、4170g(SiO2 濃度1質量%)とし、更にシリカゾルのpHが11となるように濃度5質量%の水酸化ナトリウム水溶液を添加した。ついで、シリカゾルの温度を95℃に昇温し、30分間、95℃に維持して核粒子分散液(A液)とした。
核粒子の成長
水硝子(洞海化学(株)製:JIS3号水硝子、SiO2 濃度24質量%)575gを水2185gで希釈して、珪酸アルカリ水溶液(B液)2760gを調製した。また、電解質としての硝酸アンモニウム(三菱化学株式会社製)74.2gに水2376gを加えて、電解質水溶液2450.2gを調製した。そして、温度を95℃に維持した前記核粒子分散液(A液)全量に対して、前記珪酸アルカリ水溶液(B液)および前記電解質水溶液を、それぞれ95℃にて1時間かけて全量添加することにより粒子成長を行った。
【0110】
ここで、B液のアルカリと電解質の当量比EA /EE は0.8であった。ついで、95℃で1時間熟成を行った後、粒子成長した核粒子分散液のpHが10になるまで限外濾過膜により、で洗浄を行った。ついで、濃縮してSiO2 濃度20質量%の非球状シリカゾルを得た。得られた非球状シリカゾルの特徴を表3に記す。また、得られた非球状シリカゾルの走査型電子顕微鏡写真(倍率250000倍)を図3に示す。なお、非球状シリカゾルの製造条件を表1および2に記す。
【実施例4】
【0111】
核粒子分散液の調製
合成例3と同様な方法で調製した非球状シリカゾル(動的光散乱法により測定された平均粒子径100nm、短径/長径比0.30、SiO2 濃度20質量%)を純水で希釈し、3890g(SiO2 濃度1質量%)とし、更にシリカゾルのpHが11となるように濃度5質量%の水酸化ナトリウム水溶液を添加した。ついで、シリカゾルの温度を80℃に昇温し、30分間80℃に維持して核粒子分散液(A液)とした。
核粒子の成長
水硝子(洞海化学(株)製:JIS3号水硝子、SiO2 濃度24質量%)588gを水2232gで希釈して、珪酸アルカリ水溶液(B液)2820gを調製した。また、電解質としての硝酸アンモニウム(三菱化学株式会社製)93.3gに水2412gを加えて、電解質水溶液32505.3gを調製した。そして、温度を80℃に維持した前記核粒子分散液(A液)全量に対して、前記珪酸アルカリ水溶液(B液)および前記電解質水溶液を、それぞれ80℃にて1時間かけて全量添加することにより粒子成長を行った。
【0112】
ここで、B液のアルカリと電解質の当量比EA /EE は0.65であった。ついで、80℃で1時間熟成を行った後、限外濾過膜によりpHが9.8になるまで洗浄を行った。ついで、濃縮してSiO2 濃度20質量%の非球状シリカゾルを得た。得られた非球状シリカゾルの特徴を表3に記す。
【0113】
また、得られた非球状シリカゾルについて、前記[9]ガラス基板に対する研磨特性の評価方法にて研磨特性を評価した結果を表3に記す。(以下、実施例5および比較例4についても同様に[9]ガラス基板に対する研磨特性の評価方法による、評価結果を表1に記した。)なお、非球状シリカゾルの製造条件を表1および2に記す。
【実施例5】
【0114】
核粒子分散液の調製
合成例3と同様な方法で調製した非球状シリカゾル(動的光散乱法により測定された平均粒子径100nm、短径/長径比0.30、SiO2 濃度20質量%)を純水で希釈し、3890g(SiO2 濃度1質量%)とし、更にシリカゾルのpHが11となるように濃度5質量%の水酸化ナトリウム水溶液を添加した。ついで、シリカゾルの温度を80℃に昇温し、30分間80℃に維持して核粒子分散液(A液)とした。
核粒子の成長
水硝子(洞海化学(株)製:JIS3号水硝子、SiO2 濃度24質量%)588gを水2232gで希釈して、珪酸アルカリ水溶液(B液)2820gを調製した。また、電解質としての硫酸アンモニウム(三菱化学株式会社製)100.2gに水2405gを加えて、電解質水溶液2505.2gを調製した。そして、温度を80℃に維持した前記核粒子分散液(A液)全量に対して、前記珪酸アルカリ水溶液(B液)および前記電解質水溶液を、それぞれ80℃にて1時間かけて全量添加することにより粒子成長を行った。
【0115】
ここで、B液のアルカリと電解質の当量比EA /EE は1.0であった。ついで、80℃で1時間熟成を行った後、限外濾過膜によりpHが9.2になるまで洗浄を行った。ついで、濃縮してSiO2 濃度20質量%の非球状シリカゾルを得た。得られた非球状シリカゾルの特徴を表3に記す。なお、非球状シリカゾルの製造条件を表1および2に記す。
[比較例1]
核粒子分散液の調製
合成例1と同様な方法で調製した非球状シリカゾル(動的光散乱法により測定された平均粒子径24nm、短径/長径比0.45、SiO2 濃度20質量%)を純水で希釈し、730g(SiO2 濃度1質量%)とし、更にシリカゾルのpHが11となるように濃度5質量%の水酸化ナトリウム水溶液を添加した。ついで、シリカゾルの温度を95℃に昇温し、30分間95℃に維持して核粒子分散液(A液)とした。
核粒子の成長
水硝子(洞海化学(株)製:JIS3号水硝子、SiO2 濃度24質量%)888gを水4400gで希釈して、珪酸アルカリ水溶液(B液)5288gを調製した。また、電解質としての硫酸アンモニウム(三菱化学株式会社製)151.3gに水4800gを加えて、電解質水溶液4951.3gを調製した。そして、温度を95℃に維持した前記核粒子分散液(A液)全量に対して、前記珪酸アルカリ水溶液(B液)および前記電解質水溶液を、それぞれ95℃にて9時間かけて全量添加することにより粒子成長を行った。
【0116】
ここで、B液のアルカリと電解質の当量比EA /EE は1.0であった。ついで、95℃で1時間熟成を行った後、限外濾過膜によりpHが9.8になるまで洗浄を行った。ついで、濃縮してSiO2 濃度20質量%の非球状シリカゾルを得た。得られた非球状シリカゾルの特徴を表3に記す。なお、比較例1については、シリカゾルの比表面積を、窒素吸着法により測定した。
[比較例2]
シリカゾル(触媒化成工業株式会社製:カタロイドSI-40、画像解析法により測定
された平均粒子径21.2nm、SiO2 濃度40.7質量%)に純水を加えてSiO2 濃度20質量%とした。
【実施例6】
【0117】
エタノール593.1g(敷き水)を65℃に加熱して、これにテトラエトキシシラン(
多摩化学製エチルシリケート28、SiO2=28.8重量%)1188gとエタノール2
255gを混合したテトラエトキシラン溶液、及び超純水237.3gと29.1%アンモニア水40.5gを混合したアンモニア希釈液とを同時に6時間かけて連続的に添加し
た。添加終了後さらにこの温度で3時間維持し、熟成した。その後限外ろ過膜で固形分濃度15重量%まで濃縮し未反応のテトラエトキシシランを除去した。さらにロータリーエバポレーターでエタノール、アンモニアをほぼ除去し固形分濃度12.6重量%の非球状シリカゾルを得た。得られた非球状シリカゾルは表3に示される物性を有していた。
【0118】
また、得られた非球状シリカゾルについて、前記[10]熱酸化膜に対する研磨特性の評価方法にて研磨特性を評価した結果を表3に記す。
【実施例7】
【0119】
エタノール593.1g(敷き水)を75℃に加熱して、これにテトラエトキシシラン(
多摩化学製エチルシリケート28、SiO2=28.8重量%)1188gとエタノール2
255gを混合したテトラエトキシラン溶液、及び超純水336.6gと29.1%アンモニア水40.5gを混合したアンモニア希釈液とを同時に6時間かけて連続的に添加した。添加終了後さらにこの温度で3時間維持し、熟成した。その後限外ろ過膜で固形分濃度15重量%まで濃縮し未反応のテトラエトキシシランを除去した。さらにロータリーエバポレーターでエタノール、アンモニアをほぼ除去し固形分濃度12.6重量%の非球状シリカゾルを得た。得られた非球状シリカゾルは表3に示される物性を有していた。
【0120】
また、得られた非球状シリカゾルについて、前記[10]熱酸化膜に対する研磨特性の評価方法にて研磨特性を評価した結果を表3に記す。
【実施例8】
【0121】
エタノール2372.4g(敷き水)を75℃に加熱して、これにテトラエトキシシラン(多摩化学製エチルシリケート28、SiO2=28.8重量%)1188gとエタノール2255gを混合したテトラエトキシラン溶液、及び超純水336.6gと29.1%アンモニア水40.5gを混合したアンモニア希釈液とを同時に6時間かけて連続的に添加した。添加終了後さらにこの温度で3時間維持し、熟成した。その後限外ろ過膜で固形分濃度15重量%まで濃縮し未反応のテトラエトキシシランを除去した。さらにロータリーエバポレーターでエタノール、アンモニアをほぼ除去し固形分濃度12.6重量%の非球状シリカゾルを得た。得られた非球状シリカゾルは表3に示される物性を有していた。
【0122】
また、得られた非球状シリカゾルについて、前記[10]熱酸化膜に対する研磨特性の評価方法にて研磨特性を評価した結果を表3に記す。
[比較例3]
テトラエトキシシラン(多摩化学株式会社製:エチルシリケート28、SiO2 =28質量%)532.5gを、水−メタノール混合溶媒[水とメタノールの重量比=2:8]2450gに溶解させてなるテトラエトキシシラン溶液2982.5gと、濃度0.25質量%のアンモニア水溶液596. 4gとを、60℃に保持した水−メタノール混合溶
媒(純水139.1gとメタノール169.9gからなる)に、同時に20時間かけて添加した。なお、アンモニア/テトラエトキシシラン=0.034(モル比)だった。添加終了後、さらに65℃で、3時間熟成した。
【0123】
その後、限外濾過膜で未反応のテトラエトキシシラン、メタノール、アンモニアをほぼ完全に除去し、両イオン交換樹脂で精製し、ついで限外濾過膜で濃縮し、固形分濃度20質量%のシリカゾルを得た。このシリカゾルに関する測定結果を表1に記す。
【0124】
また、得られたシリカゾルについて、前記[10]熱酸化膜に対する研磨特性の評価方法にて研磨特性を評価した結果を表3に記す。
【0125】
【表1】

【0126】
【表2】

【0127】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0128】
本発明の非球状シリカゾルは、研磨材として高い実用性を有するものである。また、優れた充填性、吸油性、電気特性、光学特性あるいは物理特性を有するが故に、塗料添加剤
、樹脂添加剤、インク受容層の成分、化粧料の成分などへの適用が期待される。
【図面の簡単な説明】
【0129】
【図1】極大値個数の求め方の概略図
【図2】距離Yの変動係数についての求め方の概略図
【図3】実施例3で調製された非球状シリカゾルの走査型電子顕微鏡写真(倍率:250,000倍)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動的光散乱法により測定される平均粒子径が3〜200nmの範囲、短径/長径比が0.01〜0.8の範囲、比表面積が10〜800m2/gの範囲にあり、表面に複数の疣
状突起を有する非球状シリカ微粒子が分散媒に分散してなることを特徴とする非球状シリカゾル。
【請求項2】
前記疣状突起を有する非球状シリカ微粒子の長軸を含む平面上において、前記非球状シリカ微粒子の外縁上の任意の点から、該外縁上の点を通り前記長軸と直交する直線と前記長軸との交点Bまでの距離をY、前記非球状シリカ微粒子の外縁と前記長軸との一方の交点Aから、前記交点Bまでの距離をXとしてX−Y曲線を描いた場合に、該X−Y曲線が複数の極大値を有することを特徴とする請求項1記載の非球状シリカゾル。
【請求項3】
前記疣状突起を有する非球状シリカ微粒子の長軸を含む平面上において、前記非球状シリカ微粒子の外縁上の任意の点から、該外縁上の点を通り前記長軸と直交する直線と前記長軸との交点Bまでの距離をYとした場合に、前記距離Yの変動係数が5〜50%の範囲にあることを特徴とする請求項1または請求項2記載の非球状シリカゾル。
【請求項4】
前記疣状突起を有する非球状シリカ微粒子の個数が、分散質であるシリカ微粒子の全個数の50%以上であることを特徴とする請求項1〜請求項3の何れかに記載の非球状シリカゾル。
【請求項5】
前記疣状突起を有する非球状シリカ微粒子が、[SiO4/2]単位から構成されるもの
であることを特徴とする請求項1〜請求項4の何れかに記載の非球状シリカゾル。
【請求項6】
請求項1〜請求項5の何れかに記載の非球状シリカゾルからなる研磨材。
【請求項7】
請求項1〜請求項5の何れかに記載の非球状シリカゾルを含むことを特徴とする研磨用組成物。
【請求項8】
強酸の塩からなる電解質の存在下(電解質の当量数を(EE)で表す)、下記A液100質量部(シリカ換算)対して、B液50〜2500質量部(シリカ換算)を添加して非球状シードシリカ微粒子を成長させる際に、アルカリと電解質の当量比(EA/EE)が0.4〜8の範囲となるようにB液を添加することを特徴とする請求項1〜請求項5の何れかに記載の非球状シリカゾルの製造方法。
A液:動的光散乱法により測定される平均粒子径が3〜200nmの範囲、短径/長径比が0.01〜0.8の範囲にある非球状シードシリカ微粒子が分散媒に分散してなる非球状シードシリカゾル
B液:珪酸アルカリ水溶液(B液に含まれるアルカリの当量数を(EA)で表す。)
【請求項9】
前記A液に、前記B液および前記電解質を、40〜150℃の温度範囲で15分〜10時間かけてそれぞれ添加し、熟成することを特徴とする請求項8記載の非球状シリカゾルの製造方法。
【請求項10】
水溶性有機溶媒および水を含む混合溶媒の温度範囲を30〜150℃に維持し、この混合溶媒に、1)下記一般式(1)で表される4官能性シラン化合物の水溶性有機溶媒溶液および2)アルカリ触媒溶液を同時に、連続的または断続的に添加し、添加終了後、この液状体を更に30〜150℃の温度範囲に維持することにより、該4官能性シラン化合物を加水分解縮合させて非球状シリカゾルを製造するにあたり、前記4官能性シラン化合物に対する水のモル比を2〜4の範囲にすることを特徴とする請求項5に記載の非球状シリ
カゾルの製造方法。
【化1】

((1)式中、Rは炭素数2〜4のアルキル基である。)
【請求項11】
前記4官能性シラン化合物が、テトラエトキシシランであることを特徴とする請求項10に記載の非球状シリカゾルの製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2009−149493(P2009−149493A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−286618(P2008−286618)
【出願日】平成20年11月7日(2008.11.7)
【出願人】(000190024)日揮触媒化成株式会社 (458)
【Fターム(参考)】